説明

無線LANシステム、通信装置、設定情報の共有方法

【課題】無線LANに係る通信設定について、ユーザの利便性を向上する。
【解決手段】無線LANシステム20は、アクセスポイントAPと無線端末STAとを備えている。アクセスポイントAPは、無線通信を行う第1の無線LANインタフェース140と、電源の入力を受け付ける電源入力部160と、電源を出力するサービスコンセントである電源出力部180とを備える。無線端末STAは、無線通信を行う第2の無線LANインタフェース240と、電源入力部260とを備える。アクセスポイントAPは、電源出力部180に無線端末STAの電源入力部260が接続されたことを検知すると、設定情報を親機から子機に提供する設定処理の親機側の処理の実行を開始する。無線端末STAは、アクセスポイントAPを介して供給される電源によって起動すると、設定処理の子機側の処理の実行を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LAN通信を行う通信装置間で設定情報を共有する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LANが普及している。無線LANでは、通信を行う通信装置の間で無線通信の設定に関する設定情報を共有化する必要がある。例えば、無線LANがIEEE802.11に準拠して構築される場合、通信装置間で少なくともSSID(Service Set Identifier)を共有する必要がある。また、暗号化通信を行う場合には、暗号化方式や暗号鍵などの情報を通信装置間で共有する必要がある。
【0003】
こうした設定情報の共有化を容易に行える技術として、例えば、AOSS(AirStation One-Touch Secure System、株式会社バッファローの登録商標)やWPS(Wi-Fi Protected Setup)が知られている。これらの技術では、ユーザがボタンを押下したり、WEBブラウザを介してWEB設定画面にアクセスしたりして、無線親機(以下、単に親機ともいう)と無線子機(以下、単に子機ともいう)とに所定の指示を与えると、当該親機と子機との間で無線通信を行って設定情報を共有することができる。これによって、設定情報をユーザが手動操作で入力する場合と比べて、ユーザの利便性を向上させることができる。しかしながら、通信技術の知識に乏しい者にとっては、親機と子機とに所定の指示を与えることは、必ずしも容易であるとは限らず、改善の余地を残していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−110670号公報
【特許文献2】特開2009−94852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の問題の少なくとも一部を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、無線LANに係る通信設定について、ユーザの利便性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]第1の有線コネクタを有する第1の通信装置と、前記第1の有線コネクタに適合する第2の有線コネクタを有する第2の通信装置とを備え、無線通信の設定に関する情報を含む設定情報を共有する設定処理を、該第1の通信装置と該第2の通信装置との間で実行可能に構成された無線LANシステムであって、
前記第1の通信装置は、
前記無線通信を行う第1の無線LANインタフェースと、
前記第1の有線コネクタに前記第2の有線コネクタが接続された場合に、該第2の通信装置と前記無線通信を行って、前記設定処理の一方の当事者としての処理である第1の処理を実行する第1の実行部と
を備え、
前記第2の通信装置は、
前記無線通信を行う第2の無線LANインタフェースと、
前記第2の有線コネクタに前記第1の有線コネクタが接続された場合に、前記第1の通信装置と前記無線通信を行って、前記設定処理の他方の当事者としての処理である第2の処理を実行する第2の実行部と
を備えた
無線LANシステム。
【0008】
かかる構成の無線LANシステムによれば、ユーザが、起動された第1の通信装置の第1の有線コネクタと、第2の通信装置の第2の有線コネクタとを接続するだけで、第1の通信装置と第2の通信装置との間で設定処理が実行され、第1の通信装置と第2の通信装置との間で自動的に設定情報を共有することができる。つまり、ユーザは、第1の通信装置および第2の通信装置の接続操作のみを行えば、自動的に通信設定を行うことができるので、通信設定に係るユーザの利便性が向上する。
【0009】
[適用例2]適用例1記載の無線LANシステムであって、前記第1の有線コネクタは、コンセントであり、前記第2の有線コネクタは、電源プラグであり、前記第1の通信装置は、更に、電源の入力を前記第1の通信装置の電源として受け付ける電源入力部と、前記コンセントを有し、該コンセントを介して前記第2の通信装置に電源を出力する電源出力部と、前記コンセントへの前記電源プラグの接続を検出する検出部とを備え、前記第1の実行部は、前記コンセントへの前記電源プラグの接続が検出された場合に前記第1の処理を実行し、前記第2の実行部は、前記コンセントを介して前記電源出力部から電源を受けて前記第2の通信装置が起動した場合に前記第2の処理を実行する無線LANシステム。
【0010】
かかる構成の無線LANシステムによれば、ユーザが、起動された第1の通信装置に第2の通信装置を接続して、第2の通信装置を起動させるだけで、第1の通信装置と第2の通信装置との間で設定処理が実行され、第1の通信装置と第2の通信装置との間で自動的に設定情報を共有することができる。つまり、ユーザは、第1の通信装置および第2の通信装置の電源投入操作のみを行えば、自動的に通信設定を行うことができるので、通信設定に係るユーザの利便性が向上する。
【0011】
[適用例3]適用例1または適用例2記載の無線LANシステムであって、前記第2の実行部は、前記第2の処理の実行に先立って、前記無線通信の接続関係を確立するための接続要求を前記第1の通信装置に送信し、前記第1の通信装置は、更に、前記接続要求を受信し、該受信した接続要求の受信信号強度が所定の範囲内にない場合に、該受信した接続要求の送信元を前記設定処理の他方の当事者とした前記第1の処理の完遂を禁止する第1の禁止部を備えた無線LANシステム。
【0012】
かかる構成の無線LANシステムは、第2の通信装置が、第2の処理の実行に先立って、無線通信の接続関係を確立するための接続要求を第1の通信装置に送信する。ここで、第1の通信装置と第2の通信装置との間で設定処理が実行される際には、第1の通信装置と第2の通信装置とは、その接続形態に起因して、近接した位置関係で設置されるので、接続要求の受信信号強度は、距離減衰がほとんど生じず、両装置の離隔距離によって生じるバラツキも小さい。このため、接続要求の受信信号強度によって、接続要求の送信元が電源出力部に接続された通信装置であるか否かを判断することができる。かかる点を利用して、第1の通信装置は、接続要求を受信し、受信した接続要求の受信信号強度が所定の範囲内にない場合に、受信した接続要求の送信元との間での第1の処理の完遂を禁止するので、設定場所が所定以上に離れた通信装置、すなわち、電源出力部に接続されていない通信装置との間で設定処理が完遂されることを抑制することができる。その結果、第1の通信装置と、ユーザが意図しない通信装置との間で設定情報が共有されることを抑制することができる。
【0013】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか記載の無線LANシステムであって、前記第1の通信装置は、更に、前記第1の無線LANインタフェースを用いて行う前記無線通信の送信出力を制御する第1の出力制御部を備え、前記第1の出力制御部は、前記第1の通信装置が前記第1の処理としての無線通信を行う際に、前記第2の通信装置との間でデータ通信を行う通常通信時よりも前記送信出力を低減する無線LANシステム。
【0014】
かかる構成の無線LANシステムにおいて、第1の通信装置は、通常通信時よりも送信出力を低減して、第1処理としての無線通信を行うので、設定処理に係る無線通信の電波到達範囲が限定される。したがって、設定場所が所定以上に離れた通信装置、すなわち、電源出力部に接続されていない通信装置との間で設定処理が実行されることを抑制することができる。その結果、第1の通信装置と、ユーザが意図しない通信装置との間で設定情報が共有されることを抑制することができる。
【0015】
[適用例5]適用例4記載の無線LANシステムであって、前記第1の出力制御部は、前記設定情報が共有された第1の通信装置と第2の通信装置との少なくとも一方が所定の設置場所に移動されることが予測されるタイミングで、前記第1の通信装置の送信出力を前記通常通信時の送信出力として定められたレベルに設定し直す無線LANシステム。
【0016】
かかる構成の無線LANシステムにおいて、第1の通信装置は、設定情報が共有された第1の通信装置及び/または第2の通信装置が所定の設置場所に移動されることが予測されるタイミングで、送信出力を通常通信時のレベルに設定し直す。したがって、設定情報が共有された後に、ユーザが第1の通信装置や第2の通信装置を意図する本来の使用場所に移動させて設置した際に、第1の通信装置は、第1の通信装置と第2の通信装置との間に所定の離隔距離があっても適正に通信可能な送信出力で第2の通信装置に通信パケットを送信することができる。
【0017】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれか記載の無線LANシステムであって、前記第2の通信装置は、更に、前記第2の無線LANインタフェースを用いて行う前記無線通信の送信出力を制御する第2の出力制御部を備え、前記第2の出力制御部は、前記第2の通信装置が前記第2の処理としての無線通信を行う際に、前記第1の通信装置との間でデータ通信を行う通常通信時よりも前記送信出力を低減する無線LANシステム。
【0018】
かかる構成の無線LANシステムにおいて、第2の通信装置は、通常通信時よりも送信出力を低減して、第2処理としての無線通信を行うので、設定処理に係る無線通信の電波到達範囲が限定される。したがって、設定場所が所定以上に離れた通信装置、すなわち、第1の通信装置以外の通信装置との間で設定処理が実行されることを抑制することができる。その結果、第2の通信装置と、ユーザが意図しない通信装置との間で設定情報が共有されることを抑制することができる。
【0019】
[適用例7]適用例6記載の無線LANシステムであって、前記第2の出力制御部は、前記設定情報が共有された第1の通信装置と第2の通信装置との少なくとも一方が所定の設置場所に移動されることが予測されるタイミングで、前記第2の通信装置の送信出力を前記通常通信時の送信出力として定められたレベルに設定し直す無線LANシステム。
【0020】
かかる構成の無線LANシステムにおいて、第2の通信装置は、設定情報が共有された第1の通信装置及び/または第2の通信装置が所定の設置場所に移動されることが予測されるタイミングで、送信出力を通常通信時のレベルに設定し直す。したがって、設定情報が共有された後に、ユーザが第1の通信装置や第2の通信装置を意図する本来の使用場所に移動させて設置した際に、第2の通信装置は、第1の通信装置と第2の通信装置との間に所定の離隔距離があっても適正に通信可能な送信出力で第1の通信装置に通信パケットを送信することができる。
【0021】
[適用例8]適用例1ないし適用例7のいずれか記載の無線LANシステムであって、前記第1の通信装置は、更に、前記第1の処理の実行前に、自己の存在を報知するための報知フレームを送信する報知部を備え、前記第2の通信装置は、更に、前記報知フレームを受信し、該受信した報知フレームの受信信号強度が所定の範囲内にない場合に、該受信した報知フレームの送信元を前記設定処理の一方の当事者とした前記第2の処理の完遂を禁止する第2の禁止部を備えた無線LANシステム。
【0022】
かかる構成の無線LANシステムにおいて、第1の通信装置は、第1の処理の実行前に、自己の存在を報知するための報知フレームを送信する。ここで、報知フレームの受信信号強度は、上述した接続要求と同様に、距離減衰がほとんど生じず、両装置の離隔距離によって生じるバラツキも小さい。このため、報知フレームの受信信号強度によって、報知フレームの送信元が第1の通信装置であるか否かを判断することができる。かかる点を利用して、第2の通信装置は、報知フレームを受信し、受信した報知フレームの受信信号強度が所定の範囲内にない場合に、受信した報知フレームの送信元との間での第2の処理の完遂を禁止するので、設定場所が所定以上に離れた通信装置、すなわち、第1の通信装置以外の通信装置との間で設定処理が実行されることを抑制することができる。その結果、第2の通信装置と、ユーザが意図しない通信装置との間で設定情報が共有されることを抑制することができる。
【0023】
[適用例9]適用例8記載の無線LANシステムであって、前記報知部は、所定の識別情報を含ませて、前記報知フレームを送信し、前記第2の禁止部は、前記受信した報知フレームの受信信号強度が前記所定の範囲内にある場合であっても、該受信した報知フレームに前記識別情報が含まれていない場合には、該受信した報知フレームの送信元を前記設定処理の一方の当事者とした前記第2の処理の完遂を禁止する無線LANシステム。
【0024】
かかる構成の無線LANシステムにおいて、第1の通信装置は、所定の識別情報を含ませて、報知フレームを送信する。また、第2の通信装置は、報知フレームを受信し、受信した報知フレームの受信信号強度が所定の範囲内にある場合であっても、受信した報知フレームに前記識別情報が含まれていない場合には、受信した報知フレームの送信元との間での第2の処理の完遂を禁止する。したがって、第2の通信装置と近接する位置に設置された通信装置が報知フレームを送信しても、第2の通信装置と、設定処理の当事者でない通信装置との間で設定情報が共有されることを抑制することができる。その結果、第2の通信装置と、ユーザが意図しない通信装置との間で設定情報が共有されることを抑制することができる。
【0025】
また、本発明は、上述した無線LANシステムのほか、適用例10〜17の通信装置、適用例18,19の設定情報の共有方法、通信装置が実行するプログラム、当該プログラムを記録した記憶媒体等としても実現することができる。勿論、これらの実現形態に対しても、適用例3〜適用例9の構成を付加することも可能である。
【0026】
[適用例10]無線通信の設定に関する情報を含む設定情報を他の通信装置との間で共有可能とする設定処理を、該他の通信装置との間で実行可能に構成された通信装置であって、前記無線通信を行う無線LANインタフェースと、第1の有線コネクタと、前記第1の有線コネクタに適合する前記他の通信装置の第2の有線コネクタが接続された場合に、該他の通信装置と前記無線通信を行って、前記設定処理の一方の当事者としての処理を実行する実行部とを備えた通信装置。
【0027】
[適用例11]適用例10記載の通信装置であって、前記第1の有線コネクタは、コンセントであり、前記第2の有線コネクタは、電源プラグであり、前記通信装置は、電源の入力を前記通信装置の電源として受け付ける電源入力部と、前記コンセントを有し、該コンセントを介して前記他の通信装置に電源を出力する電源出力部と、前記コンセントへの前記電源プラグの接続を検出する検出部とを備え、前記実行部は、前記コンセントへの前記電源プラグの接続が検出された場合に、前記設定処理の一方の当事者としての処理を実行する通信装置。
【0028】
[適用例12]適用例10または適用例11記載の通信装置であって、前記他の通信装置が、前記設定処理の他方の当事者としての処理の実行に先立って、前記無線通信の接続関係を確立するために送信した接続要求を受信し、該受信した接続要求の受信信号強度が所定の範囲内にない場合に、該受信した接続要求の送信元を前記設定処理の他方の当事者とした前記設定処理の一方の当事者としての処理の完遂を禁止する禁止部を更に備えた通信装置。
【0029】
[適用例13]適用例10ないし適用例12のいずれか記載の通信装置であって、更に、前記無線LANインタフェースを用いて行う前記無線通信の送信出力を制御する出力制御部を備え、前記出力制御部は、前記通信装置が前記設定処理の一方の当事者としての処理としての無線通信を行う際に、前記他の通信装置との間でデータ通信を行う通常通信時よりも前記送信出力を低減する通信装置。
【0030】
[適用例14]無線通信の設定に関する情報を含む設定情報を他の通信装置との間で共有可能とする設定処理を、該他の通信装置との間で実行可能に構成された通信装置であって、前記無線通信を行う無線LANインタフェースと、有線コネクタと、前記有線コネクタに適合する前記他の通信装置のコネクタが接続された場合に、前記他の通信装置と前記無線通信を行って、前記設定処理の一方の当事者としての処理を実行する実行部とを備えた通信装置。
【0031】
[適用例15]適用例14記載の通信装置であって、前記実行部は、前記有線コネクタを介して電源を受けて前記通信装置が起動した場合に、前記設定処理の一方の当事者としての処理を実行する通信装置。
【0032】
[適用例16]適用例14または適用例15記載の通信装置であって、更に、前記無線LANインタフェースを用いて行う前記無線通信の送信出力を制御する出力制御部を備え、前記出力制御部は、前記通信装置が前記設定処理の一方の当事者としての処理としての無線通信を行う際に、前記他の通信装置との間でデータ通信を行う通常通信時よりも送信出力を低減する通信装置。
【0033】
[適用例17]適用例14ないし適用例16のいずれか記載の通信装置であって、前記他の通信装置が、前記設定処理の他方の当事者としての処理の実行前に、自己の存在を報知するために送信した報知フレームを前記通信装置が受信し、該受信した報知フレームの受信信号強度が所定の範囲内にない場合に、該受信した報知フレームの送信元を前記設定処理の他方の当事者とした前記設定処理の一方の当事者としての処理の完遂を禁止する禁止部を更に備えた通信装置。
【0034】
[適用例18]第1の有線コネクタを有する第1の通信装置と、前記第1のコネクタに適合する第2のコネクタを有する第2の通信装置との間で無線通信の設定に関する情報を含む設定情報を共有可能とする設定処理を、該第1の通信装置と該第2の通信装置との間で実行する設定情報の共有方法であって、前記第1の有線コネクタに前記第1の有線コネクタが接続されたことを契機として、前記第1の通信装置により、前記設定処理の一方の当事者としての第1の処理を実行する工程と、前記第2の有線コネクタに前記第1の有線コネクタが接続されたことを契機として、前記第2の通信装置により、前記設定処理の他方の当事者としての第2の処理を実行する工程とを備える設定情報の共有方法。
【0035】
[適用例19]適用例18記載の設定情報の共有方法であって、前記第1の通信装置は、前記第1の有線コネクタを有し、前記第1の有線コネクタを介して電源を外部に出力する電源出力部を備え、前記第2の通信装置は、前記第1の有線コネクタおよび前記第2の有線コネクタを介して前記第1の通信装置から供給される電源によって前記第2の通信装置が起動したことを契機として前記第2の処理を実行する設定情報の共有方法。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例としての無線LANシステム20の概略構成を示す説明図である。
【図2】アクセスポイントAPの概略構成を示す説明図である。
【図3】無線端末STAの概略構成を示す説明図である。
【図4】自動設定処理におけるアクセスポイントAPと無線端末STAとの接続関係を示す説明図である。
【図5】アクセスポイントAPで実行される親機としての自動設定処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】無線端末STAで実行される子機としての自動設定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
A.実施例:
本発明の実施例について説明する。
A−1.無線LANシステム20の概略構成:
図1は、本発明の実施例としての無線LANシステム20の概略構成を示す説明図である。無線LANシステム20は、アクセスポイントAPと無線端末STAとを備えている。このアクセスポイントAPと無線端末STAとの間で無線LANが構築される。アクセスポイントAPは、子機(無線端末)間の通信を中継する親機機能と、有線LANと無線LANとを接続するブリッジ機能とを備えている。このアクセスポイントAPは、請求項の第1の通信装置に該当する。無線端末STAは、子機機能と、有線LANと無線LANとを接続するブリッジ機能とを備えた、いわゆる、イーサネットコンバータ(イーサネットは登録商標)である。この無線端末STAは、請求項の第2の通信装置に該当する。
【0038】
アクセスポイントAPは、1つの有線LANポートを備えており、当該有線LANポートには、有線LANケーブルを介して、有線LANポートを備えた電子機器ED1が接続されている。電子機器ED1は、本実施例では、ネットワーク対応型のブルーレイプレイヤである。無線端末STAは、1つの有線LANポートを備えており、当該有線LANポートには、有線LANケーブルを介して、有線LANポートを備えた電子機器ED2が接続されている。電子機器ED2は、本実施例では、ネットワーク対応型のテレビである。
【0039】
かかる無線LANシステム20では、アクセスポイントAPと無線端末STAとがインフラストラクチャモードによる無線通信を行うことによって、電子機器ED1と電子機器ED2との通信を実現している。例えば、ユーザは、電子機器ED1で再生する映像データを電子機器ED2に表示させて視聴することができる。
【0040】
上述した無線LANシステム20のネットワーク構成は一例に過ぎず、無線端末STAやアクセスポイントAPは複数台であってもよい。また、アクセスポイントAPや無線端末STAが備える有線LANポートは、複数であってもよいし、有線LANポートを備えない構成であってもよい。また、アクセスポイントAPは、ルータを介するなどして外部ネットワークに接続されていてもよいし、複数の無線端末に接続される構成であってもよい。無線LANシステム20は、少なくとも親機機能を有する通信装置と、少なくとも子機機能を備える通信装置とを備えていればよい。
【0041】
無線LANシステム20を構成するアクセスポイントAPの概略構成を図2に示す。図示するように、アクセスポイントAPは、CPU110、フラッシュROM120、RAM130、第1の無線LANインタフェース140、有線LANインタフェース150、電源入力部160、電源回路165、検出回路170、電源出力部180、LED190を備えている。
【0042】
CPU110は、フラッシュROM120に記憶されたファームウェア等のプログラムをRAM130に展開して実行することで、アクセスポイントAPの動作全般を制御する。また、CPU110は、所定のプログラムを実行することにより、第1の実行部111、第1の禁止部112、報知部113、第1の出力制御部114としても機能する。第1の実行部111の機能は、親機と子機との間で非対称な処理を実行して、無線通信の設定に関する設定情報を自動的に共有化するAOSS機能を含んでいる。なお、これらの各機能部の詳細については後述する。
【0043】
第1の無線LANインタフェース140は、親機としてのインタフェースである。この第1の無線LANインタフェース140は、無線LANに準拠した無線通信を行うための制御回路であり、変調器やアンプ、アンテナといったハードウェアを備えている。第1の無線LANインタフェース140は、外部への電波の送信や外部からの電波の受信が可能な状態で、アクセスポイントAPに内蔵されている。本実施例では、第1の無線LANインタフェース140は、IEEE802.11に準拠して構成されている。なお、第1の無線LANインタフェース140は、CPU110の制御によって、仮想的に親機と子機の2つの論理デバイスとして同時に機能してもよいし、排他的に機能してもよい。
【0044】
有線LANインタフェース150は、有線LANに接続するためのインタフェースである。本実施例では、有線LANインタフェース150は、IEEE802.3規格に準拠している。この有線LANインタフェース150は、1つの有線ポートを備え、電子機器ED1に接続される。
【0045】
電源入力部160は、電源プラグを備えた電源コネクタである。この電源入力部160は、商用電源CPのコンセントに接続されることで、アクセスポイントAPの電源を受け付ける。この電源入力部160は、電源回路165に接続されている。電源回路165は、AC−DCコンバータを備えており、電源入力部160が受け付けた交流電力を直流電力に変換するとともに、所定の電圧に降圧して、アクセスポイントAPの各部に供給する。なお、電源入力部160は、交流電力を直流電力に変換するACアダプタを介して、直流電力を受け付ける構成としてもよい。また、電源は、特に限定するものではなく、例えば、商用電源に代えて、燃料電池や太陽電池などの出力を用いてもよい。
【0046】
また、電源入力部160は、電源出力部180に接続されている。電源出力部180は、電源入力部160が受け付けた電源を外部に出力するサービスコンセントである。検出回路170は、電源入力部160と電源出力部180とを結ぶ電源ラインに並列に介装され、電源出力部180に他の装置の電源プラグが接続されたことを検知して、CPU110に出力する。本実施例においては、検出回路170は、電流センサであり、電源出力部180に接続された装置側に電流が流れることを監視して、電源出力部180への他の装置の接続を検知する構成とした。ただし、接続検知方法は、特に限定するものではなく、電気的に検知する方法のほか、機械的、あるいは、光学的に検知する構成であってもよい。例えば、電源出力部180から突出して設けたボタンが、電源出力部180への他の装置の接続によって押し下げられ、これを検知する構成としてもよいし、フォトインタラプタなどを用いて検知してもよい。
【0047】
LED190は、後述する自動設定処理におけるアクセスポイントAPの動作状態を報知する手段である。本実施例においては、後述する自動設定処理が開始されると、CPU110は、LED190を赤色に点灯させる。そして、CPU110は、当該自動設定処理によって無線端末STAに設定情報を提供し、無線端末STAから設定情報の設定か完了した旨の通知を受信すると、LED190を緑色に点灯させる。ただし、報知の手法は特に限定するものではなく、点滅と点灯とによって、上記の2つの動作状態を報知してもよい。もとより、報知手段は、発光手段に限らず、ディスプレイなどに文字を表示する構成などであってもよい。
【0048】
無線LANシステム20を構成する無線端末STAの概略構成を図3に示す。図示するように、無線端末STAは、CPU210、フラッシュROM220、RAM230、第2の無線LANインタフェース240、有線LANインタフェース250、電源入力部260、電源回路265、LED290を備えている。
【0049】
CPU210は、フラッシュROM220に記憶されたファームウェア等のプログラムをRAM230に展開して実行することで、無線端末STAの動作全般を制御する。また、CPU210は、所定のプログラムを実行することにより、第2の実行部211、第2の禁止部212、第2の出力制御部213としても機能する。第2の実行部211の機能は、AOSS機能を含んでいる。なお、これらの各機能部の詳細については後述する。
【0050】
第2の無線LANインタフェース240は、子機としてのインタフェースである。この第2の無線LANインタフェース240は、無線LANに準拠した無線通信を行うための制御回路であり、変調器やアンプ、アンテナといったハードウェアを備えている。第2の無線LANインタフェース240は、外部への電波の送信や外部からの電波の受信が可能な状態で、無線端末STAに内蔵されている。本実施例では、第2の無線LANインタフェース240は、IEEE802.11に準拠して構成されている。なお、第2の無線LANインタフェース240は、CPU210の制御によって、仮想的に子機と親機の2つの論理デバイスとして同時に機能してもよいし、排他的に機能してもよい。
【0051】
有線LANインタフェース250は、有線LANに接続するためのインタフェースである。本実施例では、有線LANインタフェース250は、IEEE802.3規格に準拠している。この有線LANインタフェース250は、1つの有線ポートを備え、電子機器ED2に接続される。
【0052】
電源入力部260は、電源プラグを備え、電源プラグのみが無線端末STAの筐体から突出した電源コネクタである。この電源入力部260は、無線端末STAの電源としての商用電源のコンセントに接続されることで、無線端末STAの電源を受け付ける。また、電源入力部260は、アクセスポイントAPの電源出力部180に接続されることで、無線端末STAの電源を受け付けることもできる。この電源入力部260は、電源回路265に接続されている。電源回路265は、AC−DCコンバータを備えており、電源入力部260が受け付けた交流電力を直流電力に変換するとともに、所定の電圧に降圧して、無線端末STAの各部に供給する。なお、アクセスポイントAPの電源入力部160が直流電力を受け付ける場合は、電源入力部260も直流電力を受け付ける構成としてもよい。
【0053】
LED290は、後述する自動設定処理における無線端末STAの動作状態を報知する手段である。本実施例においては、後述する自動設定処理が開始されると、CPU210は、LED290を赤色に点灯させる。そして、CPU210は、当該自動設定処理によって無線端末STAに設定情報が設定されると、LED290を緑色に点灯させる。かかる報知手段は、LED190と同様に、種々の報知の態様を採用することが可能である。
【0054】
A−2.自動設定処理:
親機としてのアクセスポイントAPと、子機としての無線端末STAとで実行される自動設定処理について説明する。ここでの自動設定処理とは、無線LANシステム20を構築するために、AOSSに準拠して、接続を行う無線LAN装置間で共有する設定情報をアクセスポイントAPから無線端末STAに自動設定する処理である。本実施例の自動設定処理では、図4に示すように、電源入力部160を商用電源CPのコンセントに接続して起動させたアクセスポイントAPの電源出力部180に無線端末STAの電源入力部260を接続し、無線端末STAの電源を投入し起動させると、アクセスポイントAPと無線端末STAとは、相互に相手方をペアリング相手として認識し、アクセスポイントAPが設定情報を無線端末STAに自動的に設定する。こうして、設定情報を設定した無線端末STAは、一旦電源を切って、図1に示したように、本来の設置場所に設置された後、再度電源が投入されて使用される。なお、本実施例では、設定情報は、ESSID(Extended Service Set Identifier)、暗号化方式、暗号鍵(暗号鍵を生成するための情報を含む)を含んでいる。
【0055】
本実施例の自動設定処理の詳細について説明する。自動設定処理は、親機と子機とで非対称な処理として実行されるため、以下では、親機が実行する処理と子機が実行する処理とに分けて説明する。
【0056】
A−2−1.親機側の自動設定処理:
アクセスポイントAPにおいて実行される親機としての自動設定処理について説明する。親機としての自動設定処理の流れを図5に示す。本実施例においては、親機としての自動設定処理は、アクセスポイントAPの電源入力部160に電源が接続され、アクセスポイントAPが起動することによって開始される。自動設定処理が開始されると、図5に示すように、アクセスポイントAPのCPU110は、まず、電源出力部180に他の装置の電源プラグが接続されたことを検出回路170からの出力によって検知するまで待機する(ステップS310)。ここでは、CPU110は、電源出力部180への無線端末STAの接続を待機することとなる。
【0057】
そして、接続を検知すると(ステップS310:YES)、CPU110は、アクセスポイントAPとしての通常の動作モードから接続要求待機モードへ移行する(ステップS320)。この接続要求待機モードでは、CPU110は、報知部113の処理として、通常モードと同様に、第1の無線LANインタフェース140を用いてビーコンを定期的に送信する。このビーコンは、アクセスポイントAPが自機の存在を他の無線LAN装置に報知するための報知フレームとしての意味を有している。接続要求待機モードが通常モードと異なる点は、ビーコンに当該モード専用のSSID(以下、専用SSIDともいう)を含ませて送信する点である。この専用のSSIDは、アクセスポイントAPが後述する設定処理の実行待機状態であることを示す識別情報としての意味を有している。なお、報知フレームは、IEEE802.11で規定されたビーコンを利用することに限らず、独自のプロトコルに基づいて送信する構成としてもよい。なお、ステップS320の処理が開始されると、CPU110は、LED190を赤色に点灯させる。
【0058】
接続要求待機モードに移行すると、CPU110は、無線端末STAから接続要求(アソシエーションリクエスト)を受信したか否かを判断する(ステップS330)。ここでの接続要求とは、専用SSIDを含む接続要求である。この接続要求は、後述するステップS570によって無線端末STAが送信するものである。判断の結果、接続要求を受信していなければ(ステップS330:NO)、CPU110は、接続要求待機モードに移行してから所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS340)。その結果、所定時間を経過していれば(ステップS340:YES)、CPU110は、自動設定処理を終了する。一方、所定時間を経過していなければ(ステップS340:NO)、CPU110は、処理を上記ステップS330に戻す。
【0059】
一方、接続要求を受信していれば(ステップS330:YES)、CPU110は、受信した接続要求の受信信号強度(以下、RSSI(Received Signal Strength Indication)ともいう)は、所定範囲内にあるか否かを判断する(ステップS350)。この判断は、受信した接続要求が、電源出力部180に接続された無線端末STA、つまり、ペアリング相手としての無線端末STAによって送信されたものであるか否かを判断するものである。無線端末STAの電源入力部260は、アクセスポイントAPの電源出力部180に接続されているから、無線端末STAとアクセスポイントAPとは極めて近接した位置関係にあり、両装置間で無線通信を行った場合のRSSIの距離減衰は極めて僅かであり、両装置の離隔距離によって生じるバラツキも小さい。このため、接続要求の送信出力を予め所定値に定めておけば、電源出力部180に接続された無線端末STAが送信した接続要求のRSSIの値は、ほぼ一定の値となるので、RSSIが所定範囲内にあれば、受信した接続要求が、電源出力部180に接続された無線端末STAから送信されたものであると精度良く判断することができる。
【0060】
本実施例では、所定範囲内とは、所定値以上であることとした。すなわち、RSSIが所定値以上である場合に、受信した接続要求が、電源出力部180に接続された無線端末STAから送信されたものであると判断する構成とした。無線端末STA以外の子機が送信した接続要求をアクセスポイントAPが受信したとしても、当該接続要求は、無線端末STAが送信した接続要求よりも大きな距離減衰が生じるので、RSSIが相対的に小さくなる。本実施例の構成とすれば、このような無線端末STA以外の子機が送信した接続要求を確実に排除することができる。例えば、アクセスポイントAPにおいて自動設定処理が開始された直後に、電波到達範囲内に存在するユーザが意図しない子機、例えば、第三者の子機に対してAOSS動作の開始指示が与えられたとしても、当該第三者の子機が送信する接続要求を排除することができる。
【0061】
判断の結果、受信した接続要求のRSSIが所定の範囲内になければ(ステップS350:NO)、当該接続要求は、電源出力部180に接続された無線端末STAから送信されたものではないということである。したがって、CPU110は、第1の禁止部112の処理として、この接続要求を無視し、処理を上記ステップS330に戻す。この処理は、受信した接続要求に基づいて、後述する設定処理の完遂を禁止する意味を持つ。一方、受信した接続要求のRSSIが所定の範囲内にあれば(ステップS350:YES)、当該接続要求は、電源出力部180に接続された無線端末STAから送信されたものであるということである。そこで、CPU110は、接続要求の送信元MACアドレスをRAM130に登録する(ステップS360)。このようにMACアドレスが登録されると、CPU110は、以後、登録されたMACアドレス以外を送信元MACアドレスとする接続要求に対して応答を行わない。
【0062】
MACアドレスを登録すると、CPU110は、登録したMACアドレスを有する無線端末STAにアソシエーションレスポンスを送信して、無線端末STAと接続関係を確立する(ステップS370)。そして、CPU110は、第1の実行部111の処理として、親機としての設定処理を実行する(ステップS380)。このステップS380で行われる無線端末STAとの無線通信においては、CPU110は、第1の出力制御部114の処理として、通常通信時よりも送信出力を低減する制御を行う。通常通信とは、自動設定処理によって、アクセスポイントAPと無線端末STAとの間で設定情報が設定され、アクセスポイントAPと無線端末STAとが共有した設定情報に基づいて接続関係を確立した後に行うデータ通信(データフレームの通信)をいう。アクセスポイントAPと無線端末STAとは、極めて近接した位置関係にあるので、送信出力は、例えば、電波到達距離が数メートル程度となる出力とすることができる。
【0063】
CPU110は、設定処理を完遂して、無線端末STAに設定情報を提供すると、無線端末STAから設定情報の設定が完了したことを示す完了通知を受信し、LED190を点灯させて、設定情報の設定が完了したことをユーザに報知する(ステップS390)。報知を行うと、CPU110は、第1の出力制御部114の処理として、送信出力を通常通信時の送信出力として設定されたレベルに設定し直す(ステップS400)。つまり、本実施例では、設定処理によって設定情報の共有が完了した時点で、低減した送信出力を復帰させる。こうして、自動設定処理は終了となる。このように、アクセスポイントAPは、電源出力部180への無線端末STAの接続を検知したことを契機として、設定処理を実行する。なお、上述の実施態様では、電源出力部180に電子機器を接続した場合にも、アクセスポイントAPは、自動設定処理を開始することとなるが、この場合、無線端末STA側の自動設定処理が実行されないので、設定処理が完遂することはない。
【0064】
A−2−2.子機側の自動設定処理:
無線端末STAにおいて実行される子機としての自動設定処理について説明する。子機としての自動設定処理の流れを図6に示す。子機としての自動設定処理は、無線端末STAの電源が投入され、無線端末STAが起動することによって開始される。本実施例においては、ユーザが、無線端末STAの電源入力部260をアクセスポイントAPの電源出力部180に接続して、無線端末STAの電源投入ボタンを押下し、無線端末STAを起動させることによって開始される。ただし、無線端末STAの電源入力部260をアクセスポイントAPの電源出力部180に接続して、無線端末STAが電源の供給を受け付けることを契機として、自動的に無線端末STAが起動され、自動設定処理が開始されてもよい。自動設定処理が開始されると、図6に示すように、無線端末STAのCPU210は、まず、ビーコンの検出を開始する(ステップS510)。この処理は、パッシブスキャンによって親機を検索する処理である。アクセスポイントAPは、上記ステップS320によってビーコンを送信するので、無線端末STAは、アクセスポイントAPが送信したビーコンを検出することとなる。なお、ステップS510の処理が開始されると、CPU210は、LED290を赤色に点灯させる。
【0065】
ビーコンの検出を開始すると、CPU210は、ビーコンを受信したか否かを判断する(ステップS520)。判断の結果、ビーコンを受信していなければ(ステップS520:NO)、CPU210は、ビーコンの検出を開始してから所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS530)。その結果、所定時間を経過していれば(ステップS530:YES)、CPU210は、自動設定処理を終了する。一方、所定時間を経過していなければ(ステップS530:NO)、CPU210は、処理を上記ステップS520に戻す。
【0066】
一方、ビーコンを受信していれば(ステップS520:YES)、CPU210は、検出したビーコンに含まれるSSIDが専用SSIDであるか否かを判断する(ステップS540)。その結果、専用SSIDでなければ(ステップS540:NO)、ビーコンを送信した親機は、無線端末STAのペアリング相手として接続要求待機モードに移行した親機ではないということである。そこで、CPU210は、第2の禁止部212の処理として、このビーコンを無視し、処理を上記S520に戻す。この処理は、後述する設定処理の完遂を禁止する意味を持つ。
【0067】
一方、専用SSIDを含むビーコンが検出されていれば(ステップS540:YES)、ビーコンの送信元は、接続要求待機モードに移行した親機である。したがって、CPU210は、さらに、受信した専用SSIDを含むビーコンのRSSIが所定範囲内にあるか否かを判断する(ステップS550)。この判断は、受信したビーコンが、無線端末STAの電源入力部260に接続されたアクセスポイントAP、つまり、ペアリング相手としてのアクセスポイントAPによって送信されたものであるか否かを判断するものである。この判断手法は、上記ステップS350と同様の考え方に基づいている。
【0068】
本実施例においては、所定範囲内とは、所定値以上であることとした。すなわち、RSSIが所定値以上である場合に、受信したビーコンが、電源入力部260に接続されたアクセスポイントAPから送信されたものであると判断する構成とした。こうすれば、アクセスポイントAP以外の親機が送信したビーコンを確実に排除することができる。例えば、無線端末STAにおいて自動設定処理が開始された直後に、電波到達範囲内に存在するユーザが意図しない親機、例えば、第三者の親機に対してAOSS動作の開始指示が与えられたとしても、当該第三者の親機が送信する専用SSIDを含むビーコンを排除することができる。
【0069】
判断の結果、受信したビーコンのRSSIが所定の範囲内になければ(ステップS550:NO)、当該ビーコンは、電源入力部260に接続されたアクセスポイントAPから送信されたものではないということである。したがって、CPU210は、第2の禁止部212の処理として、このビーコンを無視し、処理を上記S520に戻す。この処理は、後述する設定処理の完遂を禁止する意味を持つ。一方、受信したビーコンのRSSIが所定の範囲内にあれば(ステップS550:YES)、当該ビーコンは、電源入力部260に接続されたアクセスポイントAPから送信されたものであるということである。そこで、CPU210は、ビーコンの送信元MACアドレスをRAM230に登録する(ステップS560)。このようにMACアドレスが登録されると、CPU210は、以後、登録されたMACアドレス以外を宛先MACアドレスとする接続要求の送信を行わない。
【0070】
MACアドレスを登録すると、CPU210は、登録したMACアドレスを有するアクセスポイントAPに接続要求を送信して、アクセスポイントAPと接続関係を確立する(ステップS570)。そして、CPU210は、第2の実行部211の処理として、子機としての設定処理を実行する(ステップS580)。このステップS580で行われるアクセスポイントAPとの無線通信においては、CPU210は、第2の出力制御部213の処理として、通常通信時よりも送信出力を低減する制御を行う。この送信出力を低減する構成は、上記ステップS380と同様の考え方に基づく。ステップS580によって、CPU210は、設定処理を完遂して、自機に設定情報を設定する。なお、本実施例では、CPU210は、設定情報を不揮発性メモリであるフラッシュROM220に記憶して、設定する構成とした。
【0071】
自機に設定情報が設定されると、CPU210は、LED290を緑色に点灯させて、設定情報の設定が完了したことをユーザに報知する(ステップS590)。報知を行うと、CPU210は、第2の出力制御部213の処理として、送信出力を通常通信時の送信出力として設定されたレベルに設定し直す(ステップS600)。つまり、本実施例では、設定処理によって設定情報の共有が完了した時点で、低減した送信出力を復帰させる。こうして、自動設定処理は終了となる。このように、無線端末STAは、アクセスポイントAPを介して供給される電源によって起動したことを契機として設定処理を実行する。なお、上述の実施態様では、電源入力部260を商用電源に接続して、無線端末STAを起動した場合にも、無線端末STAは、自動設定処理を開始することとなるが、この場合、アクセスポイントAP側の自動設定処理が実行されないので、設定処理が完遂することはない。
【0072】
こうして、設定情報が無線端末STAに設定されると、ユーザは、無線端末STAの電源を一旦切って、無線端末STAをアクセスポイントAPから取り外し、所望の使用場所に設置して、無線端末STAの電源を再投入すればよい。こうすれば、無線端末STAのCPU210は、フラッシュROM220に記憶された設定情報を読み出して、アクセスポイントAPとの通信を行うことができる。同様に、アクセスポイントAPも設置場所を移動させても差し支えない。
【0073】
A−3.効果:
かかる構成の無線LANシステム20は、アクセスポイントAPと無線端末STAとが、AOSSによって設定情報を共有可能とする設定処理を実行可能に構成されている。アクセスポイントAPは、電源の入力を受け付ける電源入力部160と、無線端末STAに電源を出力する電源出力部180とを備えており、電源出力部180への無線端末STAの接続を検知した場合に、無線端末STAと無線通信を行って、設定処理の一方の当事者としての処理である親機としての自動設定処理を実行する。また、無線端末STAは、電源の入力を受け付けて起動した場合に、アクセスポイントAPと無線通信を行って、設定処理の他方の当事者としての処理である子機としての設定処理を実行する。したがって、ユーザが、起動されたアクセスポイントAPの電源出力部180に無線端末STAを接続して、無線端末STAを起動させるだけで、アクセスポイントAPと無線端末STAとの間で設定処理が実行され、アクセスポイントAPと無線端末STAとの間で自動的に設定情報を共有することができる。つまり、ユーザは、アクセスポイントAPおよび無線端末STAの電源投入操作のみを行えば、自動的に通信設定を行うことができるので、通信設定に係るユーザの利便性が向上する。
【0074】
また、無線LANシステム20は、無線端末STAが、子機としての設定処理の実行に先立って、無線通信の接続関係を確立するための接続要求をアクセスポイントAPに送信する。そして、アクセスポイントAPは、接続要求を受信し、受信した接続要求のRSSIが所定の範囲内にない場合に、受信した接続要求の送信元との間での親機としての自動設定処理の完遂を禁止するので、設定場所が所定以上に離れた通信装置、すなわち、電源出力部180に接続されていない子機との間で設定処理が完遂されることを抑制することができる。その結果、アクセスポイントAPと、ユーザが意図しない親機との間で設定情報が共有されることを抑制し、セキュリティを向上させることができる。
【0075】
また、無線LANシステム20において、アクセスポイントAPは、親機としての設定処理以外の処理として行う無線通信よりも送信出力を低減して、親機としての設定処理としての無線通信を行うので、設定処理に係る無線通信の電波到達範囲が限定される。したがって、設定場所が所定以上に離れた通信装置、すなわち、電源出力部180に接続されていない子機との間で設定処理が実行されることを抑制することができる。その結果、アクセスポイントAPと、ユーザが意図しない子機との間で設定情報が共有されることを抑制し、セキュリティを向上させることができる。
【0076】
また、無線LANシステム20において、無線端末STAは、子機としての設定処理以外の処理として行う無線通信よりも送信出力を低減して、子機としての設定処理としての無線通信を行うので、設定処理に係る無線通信の電波到達範囲が限定される。したがって、設定場所が所定以上に離れた通信装置、すなわち、電源の供給を受け付けたアクセスポイントAP以外の親機との間で設定処理が実行されることを抑制することができる。その結果、無線端末STAと、ユーザが意図しない親機との間で設定情報が共有されることを抑制することができる。
【0077】
また、無線LANシステム20において、アクセスポイントAPは、設定処理によって設定情報の共有が完了した時点で、低減した送信出力を通常通信時のレベルに設定し直す。同様に、無線端末STAも設定処理によって設定情報の共有が完了した時点で、低減した送信出力を通常通信時のレベルに設定し直す。したがって、設定情報が共有された後に、アクセスポイントAPや無線端末STAをユーザが意図する本来の使用場所に移動させて設置した際に、アクセスポイントAPと無線端末STAとの間に所定の離隔距離があっても、適正な送信出力で好適に通信を行うことができる。
【0078】
また、無線LANシステム20において、アクセスポイントAPは、親機としての設定処理の実行前に、自己の存在を報知するための報知フレームを送信する。そして、無線端末STAは、報知フレームを受信し、受信した報知フレームのRSSIが所定の範囲内にない場合に、子機としての設定処理の完遂を禁止するので、設定場所が所定以上に離れた通信装置、すなわち、電源の供給を受け付けたアクセスポイントAP以外の親機との間で設定処理が実行されることを抑制することができる。その結果、無線端末STAと、ユーザが意図しない親機との間で設定情報が共有されることを抑制することができる。しかも、アクセスポイントAPは、IEEE802.11に規定されるビーコンを報知フレームとして送信するので、構成が簡単である。
【0079】
また、無線LANシステム20において、アクセスポイントAPは、所定の識別情報としての専用SSIDを含ませて、ビーコンを送信する。また、無線端末STAは、ビーコンを受信し、受信した報知フレームのRSSIが所定の範囲内にある場合であっても、受信したビーコンに専用SSIDが含まれていない場合には、子機としての設定処理の完遂を禁止する。したがって、無線端末STAと近接する位置に設置された親機がビーコンを送信しても、無線端末STAと、設定処理の当事者として予定していない親機との間で設定情報が共有されることを抑制することができる。
【0080】
B:変形例:
上述した実施形態の変形例について説明する。
B−1.変形例1:
上述した実施形態においては、電源入力部260は、電源プラグのみが無線端末STAの筐体から突出した形状として示したが、筐体から延出したケーブルの先端部に電源プラグを備えた電源コネクタであってもよい。また、電源入力部260は、直接的に電源プラグを備えていなくてもよい。例えば、一端にのみ電源プラグを備えた電源ケーブルの他端を接続可能な接続コネクタであってもよいし、電源プラグを備えた着脱式の電源コネクタを接続可能な接続コネクタであってもよい。ケーブルを介してアクセスポイントAPと無線端末STAとが接続される場合には、ケーブルは、短いものを採用することが望ましい。こうすれば、自動設定処理の実行時におけるアクセスポイントAPと無線端末STAとの離隔距離を小さくすることができ、上記ステップS350,S550における判断精度を向上させることができる。また、離隔距離が小さいほど、上記ステップS380,S580における送信出力を低減して、誤ったペアリング相手との間で設定処理が完遂することを抑制する効果を高めることができる。
【0081】
B−2.変形例2:
上述の実施形態においては、アクセスポイントAPと無線端末STAとで、新規に無線LANシステム20を構築する場合の自動設定処理について説明したが、自動設定処理は、既に構築された無線LANシステム20に新たに通信装置を追加設置する場合や、通信装置の交換を行う場合などにも適用可能であることは勿論である。例えば、設置済みのアクセスポイントAPの電源出力部180に、新規に追加する無線端末STAの電源入力部260を接続して、当該アクセスポイントAPと無線端末STAとに自動設定処理を実行させてもよい。この場合、アクセスポイントAPは、先に実行された自動設定処理によって設置済みの無線端末STAに提供した設定情報と同一内容の情報、例えば、ESSIDや暗号化方式の情報を含んだ設定情報を、新規に追加する無線端末STAに提供してもよい。こうすれば、無線LANシステム20を構成する通信装置の各々に対して、通信設定を再度行う必要がない。
【0082】
あるいは、親機機能と子機機能とを有するアクセスポイントAPを新規に追加して、WDS(Wireless Distribution System)によって、親機間で通信パケットの中継処理を行う場合、当該アクセスポイントAPの子機機能によって、設置済みのアクセスポイントAPとの間で自動設定処理を実行して、設置済みの無線端末STAに提供した設定情報と同一内容の情報を含んだ設定情報を、新規に追加するアクセスポイントAPに提供すれば、設置済み、または、新規に追加するアクセスポイントAPのいずれかが通信不能な状態になっても、通信不能なアクセスポイントAPを除いた中継ルートで無線パケットの中継を行うことができる。
【0083】
B−3.変形例3:
上述の実施形態においては、アクセスポイントAPは、電源出力部180への他の装置の接続を契機として、自動設定処理を開始する構成とした。また、無線端末STAは、電源を受け付けて起動することを契機として、自動設定処理を開始する構成とした。ただし、アクセスポイントAPや無線端末STAは、自動設定処理の実行の可否を受け付ける受付手段を備えていてもよい。例えば、アクセスポイントAPや無線端末STAは、当該可否を受け付けるディップスイッチを備え、ディップスイッチが「可」の入力状態にある場合にのみ、上述のタイミングで自動設定処理を実行する構成としてもよい。また、受付手段は、スイッチに限らず、アクセスポイントAPや無線端末STAがディスプレイを備え、当該ディスプレイにGUI(Graphical User Interface)を表示する構成であってもよいし、WEBブラウザを介して受け付ける構成であってもよい。こうすれば、ユーザがアクセスポイントAPや無線端末STAに自動設定処理を実行させる意図がない場合には、自動設定処理の実行を省略でき、処理を効率化することができる。
【0084】
B−4.変形例4:
上述したアクセスポイントAPおよび無線端末STAは、従来の手法によってAOSSに基づいた設定処理を実行する構成を排除するものではない。例えば、アクセスポイントAPおよび無線端末STAは、AOSSボタンの押し下げや、WEBブラウザを介した指示を受け付けることにより設定処理を開始する構成を付加的に備えていてもよい。こうすれば、設定処理を実行するためのユーザ操作の選択肢が増えるので、ユーザの利便性が向上する。
【0085】
B−5.変形例5:
上述したアクセスポイントAPおよび無線端末STAは、予め定められたアクセスポイントAPと無線端末STAの組み合わせにおいてのみ、電源出力部180と電源入力部260とが接続可能に構成されていてもよい。かかる構成は、例えば、アクセスポイントAPと無線端末STAとの少なくとも一方に部分的に突出した形状を備え、他方に当該突出形状が収容される形状を備えることによって実現することができる。具体的には、例えば、電源出力部180に所定の凸形状を設け、電源入力部260の対応する位置に、当該凸形状と勘合する凹形状を設ければ、電源出力部180に無線端末STA以外の装置が備える通常の電源プラグを接続しようとしても、凸部が邪魔になり、接続することができない。したがって、電源出力部180に電源入力部260以外が接続されることがないので、アクセスポイントAPに予定外の装置が接続されて、アクセスポイントAPにおいて自動設定処理が開始されることがない。このとき、電源入力部260は、凹形状を備えているだけであるから、他のコンセントに接続可能であり、無線端末STAの使用に制約が生じることはない。かかる突出または収容形状は、電源出力部180や電源入力部260に設けてもよいし、アクセスポイントAPや無線端末STAの筐体を形成する面のうち、電源出力部180や電源入力部260が設けられる面と同一面に設けられてもよい。
【0086】
また、電源出力部180と電源入力部260とを接続した際に、上述した自動設定処理に対応した機器であることをアクセスポイントAPと無線端末STAの少なくとも一方が認識可能に構成され、当該対応装置が接続されたと認識した場合にのみ、自動設定処理を実行する構成としてもよい。かかる構成は、例えば、上述した突出形状および収容形状によって、突出形状が収容形状に収容されたことを機械的、または、光学的な方法で検知して実現してもよい。あるいは、RFID(Radio Frequency Identification)などを用いて、電気的に検知してもよい。こうすれば、電源出力部180に単に電子機器が接続された場合や、電源入力部260が商用電源に直接的に接続された場合などに、ユーザの意図に反して、自動設定処理が開始されることがないので、処理を効率化することができる。
【0087】
B−6.変形例6:
上述の実施形態では、アクセスポイントAPや無線端末STAは、設定処理に係る無線通信を通常通信時よりも送信出力を低減し、設定処理によって設定情報の共有が完了した時点で送信出力を復帰させる構成を例示した。アクセスポイントAPと無線端末STAとは、無線通信機器であるから、アクセスポイントAPの電源出力部180と無線端末STAの電源入力部260とを接続するのは、あくまで、設定情報を共有させるためであり、設定情報の共有が完了した後には、本来的には、アクセスポイントAPと無線端末STAとは離れた場所で使用される。したがって、設定情報の共有が完了した時点は、アクセスポイントAPおよび/または無線端末STAが所定の設置場所に移動されることが予測されるタイミングとして捉えることができる。
【0088】
かかる設置場所に移動されることが予測されるタイミングとしては、上述の例のほか、種々の具体的な態様とすることができる。例えば、設定情報の共有が完了し、かつ、無線端末STAの電源が一旦切られ、電源が再投入された時点で、無線端末STAは、送信出力を復帰させてもよい。無線端末STAの電源が再投入されたということは、無線端末STAが所定の設置場所に設置された可能性が高いからである。あるいは、設定情報の共有が完了し、かつ、アクセスポイントAPから受信した通信パケット、例えば、ビーコンのRSSIが所定の値以下であることを検出した時点で、無線端末STAは、送信出力を復帰させてもよい。RSSIが所定の値以下であるということは、アクセスポイントAPおよび/または無線端末STAが移動され、アクセスポイントAPと無線端末STAとの離間距離が長くなったことを意味するからである。これらの構成としても、アクセスポイントAPと無線端末STAとが、共有した設定情報をもとに接続関係を確立し、データフレームのやりとりを行う際には、送信出力が復帰することになるので、好適に無線通信を行うことができる。
【0089】
あるいは、アクセスポイントAPが電源出力部180から無線端末STAが取り外されたことを検知した時点で、アクセスポイントAPは、送信出力を復帰させてもよい。アクセスポイントAPは、検出回路170によって無線端末STAの取り外しを容易に検知することができる。こうしても上述の効果を奏する。しかも、ユーザがアクセスポイントAPおよび/または無線端末STAを移動させる直前まで、送信出力を低減した状態が継続されることとなるので、アクセスポイントAPが送信出力を低減してビーコンを送信する期間が相対的に長くなる。アクセスポイントAPおよび/または無線端末STAが設置場所に移動されるまでは、アクセスポイントAPと無線端末STAとの関係では、ビーコンは不要であるため、かかる構成とすれば、アクセスポイントAPと無線端末STAとの通信に影響を与えることなく、ビーコン送信に係るアクセスポイントAPの消費電力を低減することができる。
【0090】
B−7.変形例7:
上述した実施形態においては、無線端末STAとして、イーサネットコンバータを例示したが、無線端末STAの実現形態は、特に限定するものではなく、子機機能を有する通信装置であればよい。こうした通信装置は、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)などであってもよい。また、アクセスポイントAPや無線端末STAは、種々の電子機器に搭載されたものであってもよい。あるいは、種々の家電製品に接続して、家電製品に無線通信機能を提供する無線通信アダプタなどであってもよい。
【0091】
B−8.変形例8:
上述の実施形態においては、親機としてのアクセスポイントAPが電源出力部180を備える構成としたが、無線端末STAが電源出力部を備える構成であってもよい。かかる場合には、無線端末STAは、電源出力部への接続を検知した際に設定処理を実行し、アクセスポイントAPは、電源の供給を受けて起動した場合に設定処理を実行する構成とすればよい。
【0092】
B−9.変形例9:
上述の実施形態においては、設定処理を実現するためのプロトコルとして、AOSSを用いたが、当該プロトコルは、特に限定するものではなく、例えば、WPSなどを用いてもよい。また、当該プロトコルは、親機と子機との間で非対称に実行されるプロトコルに限定するものではない。例えば、例えばマスタとスレーブとの関係のように、非対称な地位が定められた無線通信装置間で実行されるプロトコルを用いるものであってもよい。あるいは、例えば、2つの子機の間で実行されるプロトコルが開発される場合には、当該プロトコルに適用しても差し支えない。
【0093】
B−10.変形例10:
上記実施形態では、2つの通信装置が電源配線(コンセント/プラグ)を介して接続された場合に自動設定動作が開始されるものとしていた。この代わりに、電源配線以外の有線コネクタを介して2つの通信装置が接続された場合に自動設定動作が開始されるものとしてもよい。このような有線コネクタとしては、USBコネクタやイーサネットコネクタなどを利用可能である。電源配線以外の有線コネクタを用いた場合にも、上述の実施形態や変形例とほぼ同様の効果が得られる。また、電源配線以外の有線コネクタについても、上述した各種の変形例を適用可能である。但し、有線コネクタとしては、電源を供給できるコネクタを用いることが好ましい。こうすれば、この有線コネクタを介して第1の通信装置から第2の通信装置に電源が供給されるので、第2の通信装置に他の電源を接続する必要が無いという利点がある。なお、電源が供給されない有線コネクタを介して2つの通信装置を接続する場合には、2つの通信装置のそれぞれに、その有線コネクタに他の有線コネクタが接続されたことを検出する検出回路(検出部)を設けることが好ましい。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態における本発明の構成要素のうち、独立クレームに記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略、または、組み合わせが可能である。また、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明は、無線LANシステムや通信装置としての構成のほか、設定情報の共有方法、そのプログラム、当該プログラムを記録した記憶媒体等としても実現することができる。
【符号の説明】
【0095】
20…無線LANシステム
110…CPU
111…第1の実行部
112…第1の禁止部
113…報知部
114…第1の出力制御部
120…フラッシュROM
130…RAM
140…第1の無線LANインタフェース
150…有線LANインタフェース
160…電源入力部
165…電源回路
170…検出回路
180…電源出力部
190…LED
210…CPU
211…第2の実行部
212…第2の禁止部
213…第2の出力制御部
220…フラッシュROM
230…RAM
240…第2の無線LANインタフェース
250…有線LANインタフェース
260…電源入力部
265…電源回路
290…LED
AP…アクセスポイント
STA…無線端末
ED1,ED2…電子機器
CP…商用電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の有線コネクタを有する第1の通信装置と、前記第1の有線コネクタに適合する第2の有線コネクタを有する第2の通信装置とを備え、無線通信の設定に関する情報を含む設定情報を共有する設定処理を、該第1の通信装置と該第2の通信装置との間で実行可能に構成された無線LANシステムであって、
前記第1の通信装置は、
前記無線通信を行う第1の無線LANインタフェースと、
前記第1の有線コネクタに前記第2の有線コネクタが接続された場合に、該第2の通信装置と前記無線通信を行って、前記設定処理の一方の当事者としての処理である第1の処理を実行する第1の実行部と
を備え、
前記第2の通信装置は、
前記無線通信を行う第2の無線LANインタフェースと、
前記第2の有線コネクタに前記第1の有線コネクタが接続された場合に、前記第1の通信装置と前記無線通信を行って、前記設定処理の他方の当事者としての処理である第2の処理を実行する第2の実行部と
を備えた
無線LANシステム。
【請求項2】
請求項1記載の無線LANシステムであって、
前記第1の有線コネクタは、コンセントであり、
前記第2の有線コネクタは、電源プラグであり、
前記第1の通信装置は、更に、
電源の入力を前記第1の通信装置の電源として受け付ける電源入力部と、
前記コンセントを有し、該コンセントを介して前記第2の通信装置に電源を出力する電源出力部と、
前記コンセントへの前記電源プラグの接続を検出する検出部と
を備え、
前記第1の実行部は、前記コンセントへの前記電源プラグの接続が検出された場合に前記第1の処理を実行し、
前記第2の実行部は、前記コンセントを介して前記電源出力部から電源を受けて前記第2の通信装置が起動した場合に前記第2の処理を実行する
無線LANシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の無線LANシステムであって、
前記第2の実行部は、前記第2の処理の実行に先立って、前記無線通信の接続関係を確立するための接続要求を前記第1の通信装置に送信し、
前記第1の通信装置は、更に、前記接続要求を受信し、該受信した接続要求の受信信号強度が所定の範囲内にない場合に、該受信した接続要求の送信元を前記設定処理の他方の当事者とした前記第1の処理の完遂を禁止する第1の禁止部を備えた
無線LANシステム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか記載の無線LANシステムであって、
前記第1の通信装置は、更に、前記第1の無線LANインタフェースを用いて行う前記無線通信の送信出力を制御する第1の出力制御部を備え、
前記第1の出力制御部は、前記第1の通信装置が前記第1の処理としての無線通信を行う際に、前記第2の通信装置との間でデータ通信を行う通常通信時よりも前記送信出力を低減する
無線LANシステム。
【請求項5】
請求項4記載の無線LANシステムであって、
前記第1の出力制御部は、前記設定情報が共有された第1の通信装置と第2の通信装置との少なくとも一方が所定の設置場所に移動されることが予測されるタイミングで、前記第1の通信装置の送信出力を前記通常通信時の送信出力として定められたレベルに設定し直す
無線LANシステム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか記載の無線LANシステムであって、
前記第2の通信装置は、更に、前記第2の無線LANインタフェースを用いて行う前記無線通信の送信出力を制御する第2の出力制御部を備え、
前記第2の出力制御部は、前記第2の通信装置が前記第2の処理としての無線通信を行う際に、前記第1の通信装置との間でデータ通信を行う通常通信時よりも前記送信出力を低減する
無線LANシステム。
【請求項7】
請求項6記載の無線LANシステムであって、
前記第2の出力制御部は、前記設定情報が共有された第1の通信装置と第2の通信装置との少なくとも一方が所定の設置場所に移動されることが予測されるタイミングで、前記第2の通信装置の送信出力を前記通常通信時の送信出力として定められたレベルに設定し直す
無線LANシステム。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか記載の無線LANシステムであって、
前記第1の通信装置は、更に、前記第1の処理の実行前に、自己の存在を報知するための報知フレームを送信する報知部を備え、
前記第2の通信装置は、更に、前記報知フレームを受信し、該受信した報知フレームの受信信号強度が所定の範囲内にない場合に、該受信した報知フレームの送信元を前記設定処理の一方の当事者とした前記第2の処理の完遂を禁止する第2の禁止部を備えた
無線LANシステム。
【請求項9】
請求項8記載の無線LANシステムであって、
前記報知部は、所定の識別情報を含ませて、前記報知フレームを送信し、
前記第2の禁止部は、前記受信した報知フレームの受信信号強度が前記所定の範囲内にある場合であっても、該受信した報知フレームに前記識別情報が含まれていない場合には、該受信した報知フレームの送信元を前記設定処理の一方の当事者とした前記第2の処理の完遂を禁止する
無線LANシステム。
【請求項10】
無線通信の設定に関する情報を含む設定情報を他の通信装置との間で共有可能とする設定処理を、該他の通信装置との間で実行可能に構成された通信装置であって、
前記無線通信を行う無線LANインタフェースと、
第1の有線コネクタと、
前記第1の有線コネクタに適合する前記他の通信装置の第2の有線コネクタが接続された場合に、該他の通信装置と前記無線通信を行って、前記設定処理の一方の当事者としての処理を実行する実行部と
を備えた通信装置。
【請求項11】
請求項10記載の通信装置であって、
前記第1の有線コネクタは、コンセントであり、
前記第2の有線コネクタは、電源プラグであり、
前記通信装置は、
電源の入力を前記通信装置の電源として受け付ける電源入力部と、
前記コンセントを有し、該コンセントを介して前記他の通信装置に電源を出力する電源出力部と、
前記コンセントへの前記電源プラグの接続を検出する検出部と
を備え、
前記実行部は、前記コンセントへの前記電源プラグの接続が検出された場合に、前記設定処理の一方の当事者としての処理を実行する
通信装置。
【請求項12】
請求項10または請求項11記載の通信装置であって、
前記他の通信装置が、前記設定処理の他方の当事者としての処理の実行に先立って、前記無線通信の接続関係を確立するために送信した接続要求を受信し、該受信した接続要求の受信信号強度が所定の範囲内にない場合に、該受信した接続要求の送信元を前記設定処理の他方の当事者とした前記設定処理の一方の当事者としての処理の完遂を禁止する禁止部を更に備えた
通信装置。
【請求項13】
請求項10ないし請求項12のいずれか記載の通信装置であって、
更に、前記無線LANインタフェースを用いて行う前記無線通信の送信出力を制御する出力制御部を備え、
前記出力制御部は、前記通信装置が前記設定処理の一方の当事者としての処理としての無線通信を行う際に、前記他の通信装置との間でデータ通信を行う通常通信時よりも前記送信出力を低減する
通信装置。
【請求項14】
無線通信の設定に関する情報を含む設定情報を他の通信装置との間で共有可能とする設定処理を、該他の通信装置との間で実行可能に構成された通信装置であって、
前記無線通信を行う無線LANインタフェースと、
有線コネクタと、
前記有線コネクタに適合する前記他の通信装置のコネクタが接続された場合に、前記他の通信装置と前記無線通信を行って、前記設定処理の一方の当事者としての処理を実行する実行部と
を備えた通信装置。
【請求項15】
請求項14記載の通信装置であって、
前記実行部は、前記有線コネクタを介して電源を受けて前記通信装置が起動した場合に、前記設定処理の一方の当事者としての処理を実行する
通信装置。
【請求項16】
請求項14または請求項15記載の通信装置であって、
更に、前記無線LANインタフェースを用いて行う前記無線通信の送信出力を制御する出力制御部を備え、
前記出力制御部は、前記通信装置が前記設定処理の一方の当事者としての処理としての無線通信を行う際に、前記他の通信装置との間でデータ通信を行う通常通信時よりも送信出力を低減する
通信装置。
【請求項17】
請求項14ないし請求項16のいずれか記載の通信装置であって、
前記他の通信装置が、前記設定処理の他方の当事者としての処理の実行前に、自己の存在を報知するために送信した報知フレームを前記通信装置が受信し、該受信した報知フレームの受信信号強度が所定の範囲内にない場合に、該受信した報知フレームの送信元を前記設定処理の他方の当事者とした前記設定処理の一方の当事者としての処理の完遂を禁止する禁止部を更に備えた
通信装置。
【請求項18】
第1の有線コネクタを有する第1の通信装置と、前記第1のコネクタに適合する第2のコネクタを有する第2の通信装置との間で無線通信の設定に関する情報を含む設定情報を共有可能とする設定処理を、該第1の通信装置と該第2の通信装置との間で実行する設定情報の共有方法であって、
前記第1の有線コネクタに前記第1の有線コネクタが接続されたことを契機として、前記第1の通信装置により、前記設定処理の一方の当事者としての第1の処理を実行する工程と、
前記第2の有線コネクタに前記第1の有線コネクタが接続されたことを契機として、前記第2の通信装置により、前記設定処理の他方の当事者としての第2の処理を実行する工程と
を備える設定情報の共有方法。
【請求項19】
請求項18記載の設定情報の共有方法であって、
前記第1の通信装置は、前記第1の有線コネクタを有し、前記第1の有線コネクタを介して電源を外部に出力する電源出力部を備え、
前記第2の通信装置は、前記第1の有線コネクタおよび前記第2の有線コネクタを介して前記第1の通信装置から供給される電源によって前記第2の通信装置が起動したことを契機として前記第2の処理を実行する
設定情報の共有方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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