説明

無線LANシステム、通信装置、設定情報を共有する方法

【課題】通信装置間において設定情報を共有する場合におけるユーザの利便性を向上させることのできる技術を提供する。
【解決手段】通信装置は、無線LANを構成するために必要な情報を含む設定情報を他の通信装置との間で共有する共有処理を、無線通信によって実行可能である。通信装置は、他の通信装置を共有処理を実行する対象の候補として特定する特定部と、当該通信装置と候補として特定された他の通信装置との間でのみ共有処理の実行を許容する予約処理を実行する予約処理部と、予約処理が完了したことを報知する報知部と、予約処理が完了した状態で、共有処理の一方の当事者としての処理である第1の共有処理の実行の指示をユーザから受け付ける指示受付部と、第1の共有処理の実行の指示を受け付けた場合に、候補として特定された他の通信装置との間において、第1の共有処理を実行する共有処理部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LANシステム、通信装置及び設定情報を共有する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LANが普及している。無線LANでは、通信を行う通信装置の間で無線通信の設定に関する設定情報を共有する必要がある。例えば、無線LANがIEEE802.11に準拠して構築される場合、通信装置間で少なくともSSID(Service Set Identifier)を共有する必要がある。また、暗号化通信を行う場合には、暗号化方式や暗号鍵などの情報を通信装置間で共有する必要がある。
【0003】
こうした設定情報の共有化を容易に行える技術として、例えば、WPS(Wi-Fi Protected Setup)やAOSS(AirStation One-Touch Secure System、株式会社バッファローの登録商標)が知られている。これらの技術では、ユーザがボタンを押下したり、WEBブラウザを介してWEB設定画面にアクセスして無線親機(以下、単に親機ともいう)と無線子機(以下、単に子機ともいう)とに所定の指示を与えると、当該親機と子機との間で無線通信を行って設定情報を共有することができる。これによって、設定情報をユーザが手動操作で入力する場合と比べて、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0004】
しかしながら、ユーザが通信装置に上記のWPSやAOSSを実行させているときに、例えば隣家の第三者が同時に、通信装置にWPSやAOSSを実行させていると、ユーザの子機が第三者の親機に接続されてしまう可能性や、あるいは第三者の子機がユーザの親機に接続されてしまうといった可能性があった。
【0005】
また、ユーザが通信装置にWPSやAOSSを実行させているときに、実際にどの装置間で設定情報の共有が行なわれているのか、すなわち、ユーザの意図する装置間で適切に設定情報の共有が行なわれているのか、ユーザにとっては認識しにくいという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−088389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、通信装置間において設定情報を共有する場合におけるユーザの利便性を向上させることのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するために、以下の形態または適用例を取ることが可能である。
【0009】
[適用例1]
第1の通信装置と第2の通信装置とを備える無線LANシステムであって、
前記第1の通信装置と前記第2の通信装置とは、無線LANを構成するために必要な情報を含む設定情報を共有する共有処理を、無線通信によって実行可能であり、
前記第1の通信装置は、
前記第2の通信装置を、前記共有処理を実行する対象の候補として特定する第1の特定部と、
当該第1の通信装置と前記候補として特定された第2の通信装置との間でのみ前記共有処理の実行を許容する第1の予約処理を実行する第1の予約処理部と、
前記第1の予約処理が完了したことを報知する第1の報知部と、
前記第1の予約処理が完了した状態で、前記共有処理の一方の当事者としての処理である第1の共有処理の実行の指示をユーザから受け付ける第1の指示受付部と、
前記第1の共有処理の実行の指示を受け付けた場合に、前記候補として特定された第2の通信装置との間において、前記第1の共有処理を実行する第1の共有処理部と
を備え、
前記第2の通信装置は、
前記第1の通信装置を、前記共有処理を実行する対象として特定する第2の特定部と、
当該第2の通信装置と前記特定された第1の通信装置との間でのみ前記共有処理の実行を許容する第2の予約処理を実行する第2の予約処理部と、
前記第2の予約処理が完了したことを報知する第2の報知部と、
前記第2の予約処理が完了した状態で、前記共有処理の他方の当事者としての処理である第2の共有処理の実行の指示をユーザから受け付ける第2の指示受付部と、
前記第2の共有処理の実行の指示を受け付けた場合に、前記特定された第1の通信装置との間において、前記第2の共有処理を実行する第2の共有処理部と
を備える
無線LANシステム。
この構成によれば、ユーザは、報知部を確認することによって、どの通信装置が共有処理の対象の候補となっているのかを容易に確認することができる。さらに、共有処理が実行される前に、通信装置の間で予約処理が行われ、ユーザは、予約処理が完了した通信装置を確認することができるため、ユーザの意図しない通信装置間で設定情報の共有(交換)が行なわれてしまうことを抑制することができる。したがって、この構成によれば、通信装置間において設定情報を共有する場合におけるユーザの利便性を向上させることができる。
【0010】
[適用例2]
適用例1に記載の無線LANシステムであって、
前記第1の特定部は、前記候補として特定された第2の通信装置と同一の設定情報を有する他の通信装置も、前記共有処理を実行する対象の候補として特定し、
前記第1の共有処理実行部は、前記特定された候補のうち、前記第2の共有処理の実行の指示を先に受け付けた方の通信装置との間において、前記第1の共有処理を実行する、
無線LANシステム。
この構成によれば、複数の通信装置が共有処理を実行する対象の候補となるので、ユーザは、第2の共有処理の実行の指示を容易に出すことのできる通信装置を選択することができる。例えば、ユーザは、自身から最も近くに配置されている通信装置を選択して、第2の共有処理の実行の指示を出すことができる。
【0011】
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の無線LANシステムであって、
前記第1及び第2の報知部は、前記予約処理が完了したことを示す光を発する光源を含む、
無線LANシステム。
この構成によれば、ユーザは、予約処理が完了したことを容易に認識することができる。
【0012】
[適用例4]
適用例3に記載の無線LANシステムであって、
前記第1及び第2の指示受付部は、ボタンであり、
前記光源は、前記ボタンの内側に配置されており、前記光源が発する光が前記ボタンの外側から視認可能となるように構成されている、
無線LANシステム。
この構成によれば、ユーザは、光源によって発光しているボタンを押下すればよいので、設定情報を共有する場合における作業手順を容易に認識することができる。また、ユーザは、通信装置が暗所に設置されている場合であっても、押下すべきボタンの位置を容易に把握することができる。
【0013】
[適用例5]
適用例3または適用例4に記載の無線LANシステムであって、
前記光源は、LEDである、
無線LANシステム。
この構成によれば、光源の寿命を長くすることができるとともに、光源の消費電力を低減することができる。
【0014】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5に記載の無線LANシステムであって、
前記第1の特定部は、通信装置から送信される電波強度に基づいて、前記共有処理を実行する対象の候補を特定する、
無線LANシステム。
この構成によれば、第1の通信装置は、電波強度に基づいて、適切な通信装置を候補として特定することができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、以下の適用例で示すように、通信装置、設定情報を共有する方法、または通信装置の機能を実現するための集積回路、コンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【0016】
[適用例7]
無線LANを構成する複数の通信装置のうちの一の通信装置であり、前記無線LANを構成するために必要な情報を含む設定情報を他の通信装置との間で共有する共有処理を、無線通信によって実行可能な通信装置であって、
前記他の通信装置を、前記共有処理を実行する対象の候補として特定する第1の特定部と、
当該通信装置と前記候補として特定された他の通信装置との間でのみ前記共有処理の実行を許容する第1の予約処理を実行する第1の予約処理部と、
前記第1の予約処理が完了したことを報知する第1の報知部と、
前記第1の予約処理が完了した状態で、前記共有処理の一方の当事者としての処理である第1の共有処理の実行の指示をユーザから受け付ける第1の指示受付部と、
前記第1の共有処理の実行の指示を受け付けた場合に、前記候補として特定された他の通信装置との間において、前記第1の共有処理を実行する第1の共有処理部と
を備える、通信装置。
【0017】
[適用例8]
複数の通信装置のうちの一の通信装置とともに無線LANを構成する他の通信装置であり、前記無線LANを構成するために必要な情報を含む設定情報を前記一の通信装置との間で共有する共有処理を、無線通信によって実行可能な通信装置であって、
前記一の通信装置を、前記共有処理を実行する対象として特定する第2の特定部と、
当該通信装置と前記特定された一の通信装置との間でのみ前記共有処理の実行を許容する第2の予約処理を実行する第2の予約処理部と、
前記第2の予約処理が完了したことを報知する第2の報知部と、
前記第2の予約処理が完了した状態で、前記共有処理の一方の当事者としての処理である第1の共有処理に対応する他方の当事者としての処理である第2の共有処理の実行の指示をユーザから受け付ける第2の指示受付部と、
前記第2の共有処理の実行の指示を受け付けた場合に、前記特定された一の通信装置との間において、前記第2の共有処理を実行する第2の共有処理部と
を備える、通信装置。
【0018】
[適用例9]
無線LANを構成するために必要な情報を含む設定情報を第1及び第2の通信装置の間で無線通信によって共有する方法であって、
前記第1の通信装置が、前記第2の通信装置を前記共有処理を実行する対象の候補として特定するとともに、当該候補として特定された第2の通信装置との間でのみ前記共有処理の実行を許容する第1の予約処理を実行し、当該第1の予約処理が完了したことを報知する工程と、
前記第2の通信装置が、前記第1の通信装置を前記共有処理を実行する対象として特定するとともに、当該特定された第1の通信装置との間でのみ前記共有処理の実行を許容する第2の予約処理を実行し、当該第2の予約処理が完了したことを報知する工程と、
前記第1の通信装置が、前記第1の予約処理が完了した状態で、前記共有処理の一方の当事者としての処理である第1の共有処理の実行の指示をユーザから受け付ける工程と、
前記第2の通信装置が、前記第2の予約処理が完了した状態で、前記共有処理の他方の当事者としての処理である第2の共有処理の実行の指示をユーザから受け付ける工程と、
前記第1の通信装置が、前記第1の共有処理の実行の指示を受け付けた場合に、前記候補として特定された第2の通信装置との間において、前記第1の共有処理を実行する工程と、
前記第2の通信装置が、前記第2の共有処理の実行の指示を受け付けた場合に、前記特定された第1の通信装置との間において、前記第2の共有処理を実行する工程と
を備える、方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例としての無線LANシステム1000の概略構成を示す説明図である。
【図2】無線端末STAの概略構成を示す説明図である。
【図3】アクセスポイントAP1の概略構成を示す説明図である。
【図4】自動設定処理が実行される場面において想定されるアクセスポイントAP1の周囲の環境を示す説明図である。
【図5】自動設定処理の流れの概要を示すフローチャートである。
【図6】対象候補特定フェーズの詳細な処理の流れを示す説明図である。
【図7】予約フェーズにおける詳細な処理の流れを示す説明図である。
【図8】共有処理フェーズの詳細な処理の流れを示す説明図である。
【図9】予約解除フェーズの詳細な処理の流れを示す説明図である。
【図10】無線端末STAのファンクションボタン60が押下された場合における予約解除フェーズの詳細な処理の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.実施例:
A1.無線LANシステム1000の概略構成:
A2.設定情報を共有するための処理:
A3.実施例の効果:
B.変形例:
【0021】
A.第1実施例:
A1.無線LANシステム1000の概略構成:
図1は、本発明の一実施例としての無線LANシステム1000の概略構成を示す説明図である。無線LANシステム1000は、アクセスポイントAP1と無線端末STAとを備えており、このアクセスポイントAP1と無線端末STAとの間で無線LANによる通信が行なわれる。アクセスポイントAP1は、子機(無線端末)間の通信を中継する親機機能と、有線LANと無線LANとを接続するブリッジ機能とを備えている。無線端末STAは、子機機能と、有線LANと無線LANとを接続するブリッジ機能とを備えた、いわゆる、イーサネットコンバータ(イーサネットは登録商標)である。
【0022】
アクセスポイントAP1は、有線LANポートを備えており、当該有線LANポートには、有線LANケーブルを介して、有線LANポートを備えた電子機器ED1が接続されている。電子機器ED1は、本実施例では、ネットワーク対応型のブルーレイプレイヤー(Blu−rayは登録商標)である。無線端末STAは、有線LANポートを備えており、当該有線LANポートには、有線LANケーブルを介して、有線LANポートを備えた電子機器ED2が接続されている。電子機器ED2は、本実施例では、ネットワーク対応型のテレビである。
【0023】
無線LANシステム1000では、アクセスポイントAP1と無線端末STAとがインフラストラクチャモードによる無線通信を行うことによって、電子機器ED1と電子機器ED2との通信を実現している。例えば、ブルーレイプレイヤーが再生する映像データ及び音声データをネットワーク対応型テレビが表示することにより、ユーザは、ブルーレイプレイヤーから離れた場所にあるネットワーク対応型テレビによって映像及び音声を視聴することができる。
【0024】
図2は、無線端末STAの概略構成を示す説明図である。無線端末STAは、CPU10と、フラッシュROM20と、RAM30と、第1の無線LAN通信部40と、有線LANインタフェース50と、ファンクションボタン60と、WPSボタン70とを備えている。
【0025】
CPU10は、フラッシュROM20に記憶されたファームウェア等のプログラムをRAM30に展開して実行することで、無線端末STAの動作全般を制御する。また、CPU10は、所定のプログラムを実行することにより、第1の特定部11、第1の予約処理部12、第1の共有処理部13としても機能する。これらの各機能部の詳細については後述する。
【0026】
第1の無線LAN通信部40は、無線LANに準拠した無線通信を行うための回路であり、無線端末STAを子機として機能させる。この第1の無線LAN通信部40は、変調器やアンプ、アンテナといったハードウェアを備えており、外部への電波の送信や外部からの電波の受信が可能である。本実施例では、第1の無線LAN通信部40は、IEEE802.11に準拠して構成されている。なお、第1の無線LAN通信部40は、CPU10の制御によって、仮想的に子機と親機の2つの論理デバイスとして同時に機能してもよいし、排他的に機能してもよい。
【0027】
有線LANインタフェース50は、無線端末STAを有線LANに接続するためのインタフェースである。本実施例では、有線LANインタフェース50は、IEEE802.3規格に準拠して構成されている。この有線LANインタフェース50は、有線LANポートを備え、当該有線LANポートに電子機器ED2が接続される。
【0028】
ファンクションボタン60は、無線端末STAに対して種々の動作を実行させる場合に利用されるボタンである。本実施例では、ユーザがファンクションボタン60を押下すると、後述する自動設定処理が開始される。
【0029】
WPSボタン70は、後述する自動設定処理において利用されるボタンである。本実施例では、自動設定処理において、ユーザがWPSボタン70を押下すると、後述する第1の共有処理が開始される。WPSボタン70は、半透明のプラスチックで形成されており、WPSボタン70の内側には、LED72が設けられている。このため、LED72が発する光は、WPSボタン70の外側から視認することができる。このLED72は、自動設定処理における無線端末STAの動作状態を報知する。本実施例では、自動設定処理において、後述する予約処理が完了すると、LED72が点灯する。
【0030】
図3は、アクセスポイントAP1の概略構成を示す説明図である。アクセスポイントAP1は、CPU110と、フラッシュROM120と、RAM130と、第2の無線LAN通信部140と、有線LANインタフェース150と、ファンクションボタン160と、WPSボタン170とを備えている。
【0031】
CPU110は、フラッシュROM120に記憶されたファームウェア等のプログラムをRAM130に展開して実行することで、アクセスポイントAP1の動作全般を制御する。また、CPU110は、所定のプログラムを実行することにより、第2の特定部111、第2の予約処理部112、第2の共有処理部113としても機能する。これらの各機能部の詳細については後述する。
【0032】
第2の無線LAN通信部140は、無線LANに準拠した無線通信を行うための回路であり、アクセスポイントAP1を親機として機能させる。この第2の無線LAN通信部140は、変調器やアンプ、アンテナといったハードウェアを備えており、外部への電波の送信や外部からの電波の受信が可能である。本実施例では、第2の無線LAN通信部140は、IEEE802.11に準拠して構成されている。なお、第2の無線LAN通信部140は、CPU110の制御によって、仮想的に親機と子機の2つの論理デバイスとして同時に機能してもよいし、排他的に機能してもよい。
【0033】
有線LANインタフェース150は、アクセスポイントAP1を有線LANに接続するためのインタフェースである。本実施例では、有線LANインタフェース150は、IEEE802.3規格に準拠して構成されている。この有線LANインタフェース150は、有線LANポートを備え、当該有線LANポートに電子機器ED1が接続される。
【0034】
ファンクションボタン160は、アクセスポイントAP1に対して種々の動作を実行させる場合に利用されるボタンである。
【0035】
WPSボタン170は、後述する自動設定処理において利用されるボタンである。本実施例では、自動設定処理において、ユーザがWPSボタン170を押下すると、後述する第2の共有処理が開始される。WPSボタン170は、半透明のプラスチックで形成されており、WPSボタン170の内側には、LED172が設けられている。このため、LED172が発する光は、WPSボタン170の外側から視認することができる。このLED172は、自動設定処理におけるアクセスポイントAP1の動作状態を報知する。本実施例では、自動設定処理において、後述する予約処理が完了すると、LED172が点灯する。
【0036】
A2.設定情報を共有するための処理:
子機としての無線端末STAと、親機としてのアクセスポイントAP1との間で実行される自動設定処理について説明する。自動設定処理とは、無線LANシステム1000を構築するために必要な情報を含む設定情報を、WPSに準拠して、無線端末STAとアクセスポイントAP1との間で共有するための一連の処理である。本実施例では、設定情報は、ESSID(Extended Service Set Identifier)、認証方式、暗号化方式、暗号鍵(暗号鍵を生成するための情報を含む)等を含んでいる。
【0037】
図4は、自動設定処理が実行される場面において想定されるアクセスポイントAP1の周囲の環境を示す説明図である。アクセスポイントAP1の周囲には、アクセスポイントAP1と同様の構成を有するアクセスポイントAP2及びアクセスポイントAP3が配置されている。アクセスポイントAP2は、アクセスポイントAP1と同様に、ファンクションボタン260と、LED272を内蔵するWPSボタン270とを備えている。同様に、アクセスポイントAP3は、ファンクションボタン360と、LED372を内蔵するWPSボタン370とを備えている。なお、実際には、アクセスポイントAP1の周囲には、アクセスポイントAP1やアクセスポイントAP2等との間で無線LANを構成する無線端末が存在しているが、説明の便宜上省略している。
【0038】
本実施例では、アクセスポイントAP1のグループIDは「A」であり、アクセスポイントAP2のグループIDは「B」であり、アクセスポイントAP3のグループIDは「A」である。ここで、「グループID」とは、1組の設定情報(ESSID、認証方式、暗号化方式、暗号鍵等の組み合わせ)に対して1つ付与されるユニークな値である。すなわち、同一のグループIDを有していることは、同一の設定情報を有していることを意味する。本実施例では、アクセスポイントAP1とアクセスポイントAP3は、同一のグループID「A」を有しているため、同一の設定情報を有している。
【0039】
このグループIDは、アクセスポイント内において、設定情報が変更される毎に更新される。本実施例では、グループIDとして、GUID(Globally Unique Identifier)が用いられている。なお、実際のグループID(GUID)は128ビットの値であるが、本明細書では説明の便宜上、グループID「A」等のように簡易的に表示する。以下では、ユーザが、無線端末STAと、アクセスポイントAP1との間で自動設定処理を実行する場合について説明する。
【0040】
図5は、自動設定処理の流れの概要を示すフローチャートである。なお、自動設定処理の詳細については、後述する。ユーザが無線端末STAのファンクションボタン60を押下すると(ステップS100)、対象候補特定フェーズが開始される。
【0041】
対象候補特定フェーズ(ステップS200)では、無線端末STAの第1の特定部11は、受信信号強度(以下、RSSI(Received Signal Strength Indication)値ともいう)に基づいて、アクセスポイントAP1を共有処理の対象の候補として特定する。さらに、無線端末STAの第1の特定部11は、アクセスポイントAP1と同一のグループIDであるアクセスポイントAP3も、共有処理の対象の候補として特定する。なお、共有処理とは、無線端末とアクセスポイントとの間で、設定情報を共有(交換)する処理をいう。
【0042】
アクセスポイントAP1の第2の特定部111は、無線端末STAを共有処理の対象として特定する。同様に、アクセスポイントAP3の第2の特定部(図示せず)も、無線端末STAを共有処理の対象として特定する。対象候補特定フェーズが完了すると、予約フェーズに移行する。
【0043】
予約フェーズ(ステップS300)では、無線端末STAの第1の予約処理部12は、共有処理の対象の候補(アクセスポイントAP1及びアクセスポイントAP3)に対して予約処理を行う。第1の予約処理部12が行う予約処理とは、無線端末STAと共有処理の対象の候補以外との間で共有処理が実行されるのを制限するとともに、無線端末STAと共有処理の対象の候補との間でのみ共有処理が実行されるようにする処理をいう。予約処理が完了すると、無線端末STAのLED72が点灯する。
【0044】
アクセスポイントAP1の第2の予約処理部112は、共有処理の対象(無線端末STA)に対して予約処理を行う。第2の予約処理部112が行う予約処理とは、アクセスポイントAP1と共有処理の対象以外との間で共有処理が実行されるのを制限するとともに、アクセスポイントAP1と共有処理の対象との間でのみ共有処理が実行されるようにする処理をいう。同様に、アクセスポイントAP3の第2の予約処理部(図示せず)は、共有処理の対象(無線端末STA)に対して予約処理を行う。予約処理が完了すると、アクセスポイントAP1のLED172及びアクセスポイントAP3のLED372が点灯する。予約フェーズが完了すると、共有処理フェーズに移行する。
【0045】
共有処理フェーズ(ステップS400)では、ユーザが無線端末STAのWPSボタン70を押下するとともに、アクセスポイントAP1のWPSボタン170を押下すると、無線端末STAの第1の共有処理部13は、共有処理の一方の当事者としての処理である第1の共有処理を実行し、アクセスポイントAP1の第2の共有処理部113は、共有処理の他方の当事者としての処理である第2の共有処理を実行する。すなわち、無線端末STAとアクセスポイントAP1との間で共有処理が実行され、設定情報が共有される。共有処理が完了すると、無線端末STAの第1の予約処理部12及びアクセスポイントAP1の第2の予約処理部112は、予約を解除する。共有処理フェーズが完了すると、予約解除フェーズに移行する。
【0046】
予約解除フェーズ(ステップS500)では、無線端末STAは、予約解除リクエストを送信する。予約解除リクエストを受信したアクセスポイントAP3は、予約を解除する。以下では、各フェーズの詳細な処理の流れについて説明する。
【0047】
図6は、対象候補特定フェーズの詳細な処理の流れを示す説明図である。ユーザが無線端末STAのファンクションボタン60を押下すると(ステップS102)、無線端末STAは、プローブリクエストをブロードキャストする(ステップS202)。プローブリクエストを受信した各アクセスポイントは、プローブレスポンスのベンダー拡張領域(ベンダー独自のIE(Information element))に「自身のグループID」を含めて送信する。
【0048】
本実施例では、アクセスポイントAP1は、プローブレスポンスのベンダー拡張領域に「グループID:A」を含めて送信する(ステップS204)。同様に、アクセスポイントAP2は、プローブレスポンスのベンダー拡張領域に「グループID:B」を含めて送信し(ステップS206)、アクセスポイントAP3は、プローブレスポンスのベンダー拡張領域に「グループID:A」を含めて送信する(ステップS208)。
【0049】
各アクセスポイントからのプローブレスポンスを受信した無線端末STAは、プローブレスポンスのRSSI値に基づいて、共有処理の対象の候補となるアクセスポイントを特定する(ステップS210)。具体的には、例えば、無線端末STAは、RSSI値が所定値以上であり、かつ、RSSI値が最も大きいアクセスポイントを、共有処理の対象の候補として特定する。この理由は、装置間の距離が近いほどRSSI値が大きいという傾向があるため、このようにすれば、無線端末STAからの距離が近いアクセスポイントを、共有処理の対象の候補とすることができるからである。
【0050】
本実施例では、アクセスポイントAP1から送信されたプローブレスポンスのRSSI値が所定値以上であり、かつ、RSSI値が最も大きい場合について説明する。したがって、本実施例では、無線端末STAは、アクセスポイントAP1を共有処理の対象の候補として特定する。
【0051】
さらに、本実施例では、無線端末STAは、アクセスポイントAP1と同一のグループID「A」であるアクセスポイントAP3も、共有処理の対象の候補として特定する。換言すれば、無線端末STAは、グループID「A」のアクセスポイントを、共有処理の対象の候補として特定する。
【0052】
なお、アクセスポイントが既に他の無線端末との間で予約処理を完了していれば、当該アクセスポイントは、プローブレスポンスのベンダー拡張領域に「予約済み」、「自身のグループID」、「予約済みの無線端末のMACアドレス」を含めて送信する。
【0053】
また、アクセスポイントから送信されたプローブレスポンスのベンダー拡張領域に、他の無線端末に対する予約処理が完了している旨の情報が含まれている場合には、無線端末STAにおける対象候補特定フェーズはエラー終了する。具体的には、例えば、アクセスポイントAP1から送信されたプローブレスポンスのベンダー拡張領域に、「予約済み」、「グループID:A」、「他の無線端末のMACアドレス」が含まれている場合には、無線端末STAにおける対象候補特定フェーズはエラー終了する。
【0054】
なお、この図6において円で囲まれた「A1」等の記号は、図7の同一の記号の箇所へ処理が続いていることを意味する。図7以降の図面においても同様である。
【0055】
図7は、予約フェーズにおける詳細な処理の流れを示す説明図である。無線端末STAは、プローブリクエストのベンダー拡張領域に「予約リクエスト」、「予約先グループID:A」を含めてブロードキャストする(ステップS302)。プローブリクエストを受信した各アクセスポイントは、自身のグループIDと、ベンダー拡張領域に含まれる予約先グループIDとを比較する(ステップS304)。
【0056】
グループIDが一致した場合には、各アクセスポイントは、当該プローブリクエストを送信した無線端末を、共有処理の対象として特定し(ステップS306)、当該無線端末に対して予約処理を実行する(ステップS307)。予約処理が完了すると、各アクセスポイントは、自身に設けられたLEDを点灯させ(ステップS308)、プローブレスポンスのベンダー拡張領域に「予約済み」、「自身のグループID」、「予約受け付け済みの無線端末のMACアドレス」を含めて送信する(ステップS310)。
【0057】
一方、グループIDが一致しなかった場合には、各アクセスポイントは、プローブレスポンスのベンダー拡張領域に「自身のグループID」を含めて送信する(ステップS312)。
【0058】
本実施例では、グループIDが一致したアクセスポイントAP1及びアクセスポイントAP3は、無線端末STAを、共有処理の対象として特定し(ステップS306)、無線端末STAに対して予約処理を実行する(ステップS307)。本実施例では、アクセスポイントAP1及びアクセスポイントAP3は、予約処理として、予約リクエストを含んだプローブリクエストに含まれているMACアドレスの無線端末以外とは共有処理を実行しないように制限をかけるとともに、予約リクエストを含んだプローブリクエストに含まれているMACアドレスの無線端末に対してのみ、共有処理の実行を許容する。具体的には、例えば、アクセスポイントは、予約処理として、共有処理の実行を制限する対象となるMACアドレスのリスト及び共有処理の実行を許容する対象となるMACアドレスのリストを一時的に作成してもよい。
【0059】
予約処理が完了すると、アクセスポイントAP1及びアクセスポイントAP3は、自身のLED172,372を点灯させ(ステップS308)、プローブレスポンスのベンダー拡張領域に「予約済み」、「グループID:A」、「予約受け付け済みの無線端末STAのMACアドレス」を含めて送信する(ステップS310)。
【0060】
一方、グループIDが一致しなかったアクセスポイントAP2は、無線端末STAからの予約リクエストを受け付けず、すなわち、無線端末STAに対して予約処理を実行せず、プローブレスポンスのベンダー拡張領域に「グループID:B」を含めて送信する(ステップS312)。
【0061】
アクセスポイントAP1からのプローブレスポンスを受信した無線端末STAは、アクセスポイントAP1に対して予約処理を実行する(ステップS313)。本実施例では、無線端末STAは、予約処理として、「予約済み」を含んだプローブレスポンスに含まれているMACアドレスのアクセスポイント以外とは共有処理を実行しないように制限をかけるとともに、「予約済み」を含んだプローブレスポンスに含まれているMACアドレスのアクセスポイントに対してのみ、共有処理の実行を許容する。具体的には、例えば、無線端末は、予約処理として、共有処理の実行を制限する対象となるMACアドレスのリスト及び共有処理の実行を許容する対象となるMACアドレスのリストを一時的に作成してもよい。予約処理が完了すると、無線端末STAは、自身のLED72を点灯させる(ステップS314)。
【0062】
さらに、本実施例では、無線端末STAは、アクセスポイントAP3からのプローブレスポンスも受信し、アクセスポイントAP3に対しても予約処理を実行する(ステップS315)。すなわち、無線端末STAは、グループIDが「A」のアクセスポイントに対して予約処理を実行する。
【0063】
なお、所定時間(例えば120秒)が経過しても、無線端末STAが、「予約済み」を含んだプローブレスポンスを受信しない場合には、無線端末STAにおける予約フェーズは、エラー終了する。
【0064】
また、予約フェーズでは、無線端末STAは、ファンクションボタン60の押下を受け付ける。予約フェーズにおいてユーザがファンクションボタン60を押下すると、無線端末STAは、予約解除リクエストをプローブリクエストのベンダー拡張領域に含めてブロードキャストする。無線端末STAのファンクションボタン60が押下された場合の動作については後述する。
【0065】
また、アクセスポイントから送信されたプローブレスポンスのベンダー拡張領域に、他の無線端末に対する予約処理が完了している旨の情報が含まれている場合には、無線端末STAは、予約解除リクエストをプローブリクエストのベンダー拡張領域に含めてブロードキャストし、無線端末STAにおける予約フェーズは、エラー終了する。
【0066】
また、アクセスポイントAP2が、無線端末STAからのプローブリクエスト(S302)を受信する前から、既に無線端末STAに対する予約処理が完了していた場合、すなわち、アクセスポイントAP2における無線端末STAに対する予約の解除が失敗していた場合であれば、アクセスポイントAP2は、当該予約を解除する。
【0067】
図8は、共有処理フェーズの詳細な処理の流れを示す説明図である。本実施例では、予約フェーズが完了すると、無線端末STAのLED72と、アクセスポイントAP1のLED172と、アクセスポイントAP3のLED372が点灯した状態となる。この状態で、ユーザが無線端末STAのWPSボタン70を押下すると(ステップS402)、無線端末STAは、プローブリクエストをブロードキャストする(ステップS404)。すなわち、無線端末STAは、各アクセスポイントのWPSボタンの押下の有無を確認するために、プローブリクエストをブロードキャストする。
【0068】
プローブリクエストを受信したアクセスポイントは、自身のWPSボタンが押下されているか否かを示す情報をプローブレスポンスのベンダー拡張領域に含めて送信する。図8に示した例では、1回目のプローブレスポンスでは、まだ全てのアクセスポイントにおいてWPSボタンが押下されていない。したがって、各アクセスポイントAP1,AP2,AP3は、プローブレスポンスのベンダー拡張領域に「WPSボタン未押下」という内容を示す情報を含めて送信する(ステップS406)。
【0069】
その後、ユーザがアクセスポイントのWPSボタンを押下すると(ステップS408)、当該アクセスポイントは、プローブレスポンスのベンダー拡張領域に「WPSボタン押下済」という内容を示す情報を含めて送信する(ステップS410)。本実施例では、アクセスポイントAP1のWPSボタン170が押下された場合について説明する。
【0070】
各アクセスポイントAP1,AP2,AP3から送信されたプローブレスポンスを受信した無線端末STAは、予約済みのアクセスポイントから送信されたプローブレスポンスであるか否かを、作成したMACアドレスのリストを参照して確認するとともに、WPSボタンが押下されているか否かを確認する(ステップS412)。換言すれば、無線端末STAは、予約済みのアクセスポイントから送信されたプローブレスポンスのみを検出対象として、WPSボタンが押下されているか否かを確認する。本実施例では、無線端末STAは、グループIDが「A」であるアクセスポイントAP1及びアクセスポイントAP3から送信されたプローブレスポンスのみを検出対象とし、WPSボタンが押下されているか否かを確認する。
【0071】
予約済みのアクセスポイントからWPSボタンが押下された旨の情報を含むプローブレスポンスを受信した場合には、無線端末STAは、当該アクセスポイントに対して第1の共有処理を開始する(ステップS414)。本実施例では、アクセスポイントAP1が「WPSボタン押下済み」という内容を示す情報をプローブレスポンスのベンダー拡張領域に含めて送信しているため、無線端末STAは、アクセスポイントAP1に対して第1の共有処理を開始する。具体的には、無線端末STAは、アクセスポイントAP1に対して接続要求を行なって、第1の共有処理を開始する。
【0072】
アクセスポイントAP1は、無線端末STAが共有処理の対象として予約済みであるか否かを、作成したMACアドレスのリストを参照して確認し(ステップS416)、予約済みであった場合には、当該無線端末STAに対して第2の共有処理を開始する(ステップS418)。具体的には、アクセスポイントAP1は、無線端末STAからの接続要求を受け入れて、第2の共有処理を開始する。
【0073】
このようにして、無線端末STAとアクセスポイントAP1との間において共有処理が実行される(ステップS420)。この共有処理は、WPSのキー交換プロトコルに準拠しており、無線端末STAとアクセスポイントAP1との間で設定情報の交換が行われる。共有処理が完了すると、無線端末STAは、接続を解除するとともに、予約を解除して(ステップS422)、自身のLED72を消灯させる(ステップS424)。同様に、アクセスポイントAP1も、接続を解除するとともに、予約を解除して(ステップS426)、自身のLED172を消灯させる(ステップS428)。
【0074】
なお、LED72が点灯してから所定時間(例えば120秒)が経過しても、ユーザが無線端末STAのWPSボタン70を押下しない場合には、無線端末STAは、予約を解除するとともに、後述する予約解除リクエストをプローブリクエストのベンダー拡張領域に含めてブロードキャストし、自身のLED72を消灯させる。
【0075】
また、LED172が点灯してから所定時間(例えば120秒)が経過しても、ユーザがアクセスポイントAP1のWPSボタン170を押下しない場合には、アクセスポイントAP1は、予約を解除し、自身のLED172を消灯させる。アクセスポイントAP3についても、同様である。
【0076】
また、予約フェーズと同様に、共有処理フェーズにおいても、無線端末STAは、ファンクションボタン60の押下を受け付ける。共有処理フェーズにおいてユーザがファンクションボタン60を押下すると、無線端末STAは、予約を解除するとともに、予約解除リクエストをプローブリクエストのベンダー拡張領域に含めてブロードキャストする。無線端末STAのファンクションボタン60が押下された場合の動作については後述する。
【0077】
また、ユーザが、アクセスポイントAP1のWPSボタン170を押下した後に、アクセスポイントAP3のWPSボタン370を押下したとしても、無線端末STAとアクセスポイントAP1との間でのみ共有処理が実行され、無線端末STAとアクセスポイントAP3との間では共有処理が実行されないように制限をかけることとしてもよい。すなわち、無線端末STAは、先にWPSボタンが押下されたアクセスポイントに対してのみ、第1の共有処理を実行するように制限をかけることとしてもよい。
【0078】
図9は、予約解除フェーズの詳細な処理の流れを示す説明図である。共有処理が完了した無線端末STAは、予約解除リクエストをプローブリクエストのベンダー拡張領域に含めてブロードキャストする(ステップS502)。予約解除リクエストを受信したアクセスポイントAP3は、予約を解除し(ステップS504)、LED372を消灯させるとともに(ステップS506)、「グループID:A」をプローブレスポンスに含めて送信する(ステップS508)。
【0079】
なお、共有処理が完了し、既に予約を解除しているアクセスポイントAP1は、「グループID:A」をプローブレスポンスに含めて送信する(ステップS510)。また、予約を受け付けていないアクセスポイントAP2は、「グループID:B」をプローブレスポンスに含めて送信する(ステップS512)。このようにして、設定情報を共有するための自動設定処理が終了する。
【0080】
図10は、無線端末STAのファンクションボタン60が押下された場合における予約解除フェーズの詳細な処理の流れを示す説明図である。この図10に示した例では、図7に示した予約フェーズが完了した状態で、無線端末STAのファンクションボタン60がユーザによって押下された場合について説明する。すなわち、アクセスポイントAP1のLED172と、アクセスポイントAP3のLED372と、無線端末STAのLED72とが点灯した状態で、無線端末STAのファンクションボタン60がユーザによって押下された場合について説明する。
【0081】
ユーザが無線端末STAのファンクションボタン60を押下すると(ステップS602)、無線端末STAは、予約を解除し(ステップS603)、自身のLED72を消灯させるとともに(ステップS604)、予約解除リクエストをプローブリクエストのベンダー拡張領域に含めてブロードキャストする(ステップS606)。
【0082】
予約解除リクエストを受信したアクセスポイントAP1は、予約を解除し(ステップS608)、LED172を消灯させるとともに(ステップS610)、「グループID:A」をプローブレスポンスのベンダー拡張領域に含めて送信する(ステップS612)。同様に、予約解除リクエストを受信したアクセスポイントAP3は、予約を解除し(ステップS614)、LED372を消灯させるとともに(ステップS616)、「グループID:A」をプローブレスポンスのベンダー拡張領域に含めて送信する(ステップS618)。また、予約処理を行っていないアクセスポイントAP2は、「グループID:B」をプローブレスポンスのベンダー拡張領域に含めて送信する(ステップS620)。
【0083】
無線端末STAは、予約解除リクエストをブロードキャストしてから所定時間(例えば10秒)が経過すると、再び対象候補特定フェーズに移行し、共有処理の対象の候補を、次の候補に切り替える。具体的には、例えば、RSSI値が2番目に大きなアクセスポイントを、次の候補として特定する。
【0084】
なお、アクセスポイントは、パケットのドロップ等により、予約解除リクエストがアクセスポイントに到達しなかった場合であっても、所定時間(例えば120秒)経過後に、予約を解除する。
【0085】
また、アクセスポイントは、予約処理を実行済みの無線端末から新たな予約リクエストを受信した場合であって、当該予約リクエストに含まれるグループIDが自身のグループIDと異なっている場合には、当該予約を解除する。ただし、アクセスポイントは、予約処理を実行済みの無線端末とは異なる無線端末からの予約解除リクエストを受信した場合であっても、当該予約は解除しない。
【0086】
A3.実施例の効果:
本実施例における無線LANシステム1000では、ユーザが、無線端末STAのファンクションボタン60を押下すると、アクセスポイントAP1、アクセスポイントAP3及び無線端末STAのLEDが点灯する。したがって、ユーザは、LEDの点灯の有無を確認することによって、どのアクセスポイントが共有処理の対象の候補となっているのかを容易に確認することができる。さらに、共有処理が実行される前に、無線端末とアクセスポイントとの間で予約処理が行われ、予約処理が完了した装置のLEDが点灯するため、ユーザの意図しない装置間で設定情報の共有(交換)が行なわれてしまうことを抑制することができる。
【0087】
また、アクセスポイントAP1とアクセスポイントAP3の両方のLEDが点灯するため、ユーザは、押下しやすい方の装置のWPSボタンを選択して押下することができる。例えば、ユーザは、自身から最も近くに配置されている通信装置のWPSボタンを選択して押下することができる。なお、アクセスポイントAP1とアクセスポイントAP3は、同一のグループIDであるため、ユーザがどちらのWPSボタンを押下しても、無線端末STAは、同一の設定情報を取得することができる。
【0088】
さらに、ユーザは、LEDが発光しているWPSボタンを押下すればよいので、作業手順を容易に認識することができる。また、LEDは、WPSボタンに内蔵された状態で点灯するため、無線端末やアクセスポイントが暗所に設置されている場合であっても、ユーザは、押下すべきWPSボタンの位置を容易に把握することが可能となる。
【0089】
このように、本実施例によれば、通信装置間において設定情報を共有する場合におけるユーザの利便性を向上させることができる。
【0090】
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0091】
変形例1:
上記実施例では、無線端末STAは、同一のグループIDである2つのアクセスポイントAP1,AP3を共有処理の対象の候補として特定したが、無線端末STAは、アクセスポイントAP1のみを共有処理の対象の候補として特定してもよい。この場合には、グループIDに基づいた処理を省略することができる。また、グループIDの代わりに、BSSID(Basic Service Set Identifier)等をアクセスポイントの識別子として用いてもよい。
【0092】
変形例2:
上記実施例では、自動設定処理は、無線端末STAのファンクションボタン60が押下されてから開始されていたが、無線端末STAは、設定情報の共有化が完了していない場合には、常に、対象候補特定フェーズにおけるプローブリクエストをブロードキャストするものとしてもよい。この場合には、対象候補特定フェーズにおいて用いられるRSSI値の閾値を、非常に大きな値に設定しておくことが好ましい。この理由は、例えば、隣家の第三者の通信装置との間で設定情報の共有処理が開始されてしまうことを抑制することができるからである。
【0093】
変形例3:
上記実施例では、無線端末STA及びアクセスポイントAP1,AP2,AP3は、予約処理が完了したことを報知する手段として、LEDを備えていたが、この代わりに、またはこれに加えて、予約処理が完了したことを表示するディスプレイや、予約処理が完了したことを音声によって報知するスピーカー等を備えていてもよい。
【0094】
また、上記実施例では、LEDは、WPSボタンに内蔵されていたが、LEDは、WPSボタンとは異なる位置に設けられていても良い。また、LEDの代わりに、有機発光ダイオード(Organic light-emitting diode)や電球等の光源を用いてもよい。
【0095】
変形例4:
上記実施例では、無線端末STA及びアクセスポイントAP1,AP2,AP3は、共有処理の実行の指示をユーザから受け付ける手段として、WPSボタンを備えていたが、この代わりに、またはこれに加えて、タッチパネルや、WEBブラウザを介してユーザからの指示を受け付ける機能を備えていてもよい。
【0096】
変形例5:
上記実施例における無線LANシステム1000のネットワーク構成は一例に過ぎず、無線端末STAやアクセスポイントAPは複数台であってもよい。また、アクセスポイントAP1及び無線端末STAは、有線LANポートを複数備えていてもよいし、有線LANポートを備えていなくてもよい。また、アクセスポイントAP1は、ルータを介するなどして外部ネットワークに接続されていてもよいし、複数の無線端末に接続されていてもよい。無線LANシステム1000は、少なくとも親機機能を有する通信装置と、少なくとも子機機能を備える通信装置とを備えていればよい。
【0097】
変形例6:
上記実施例では、無線端末STAとして、イーサネットコンバータを例示したが、無線端末STAの実現形態は、特に限定されるものではなく、子機機能を有する通信装置であればよい。こうした通信装置は、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)などであってもよい。また、アクセスポイントAP及び無線端末STAは、種々の電子機器に搭載されたものであってもよい。あるいは、アクセスポイントAP及び無線端末STAは、種々の家電製品に接続されて、家電製品に無線通信機能を提供する無線通信アダプタなどであってもよい。
【0098】
変形例7:
上記実施例では、共有処理を実現するためのプロトコルとして、WPSが用いられていたが、当該プロトコルは、特に限定されるものではなく、例えば、AOSSなどが用いられてもよい。また、共有処理を実現するためのプロトコルは、親機と子機との間で非対称に実行されるプロトコルに限定されるものではない。すなわち、共有処理を実現するためのプロトコルとしては、マスタとスレーブとの関係のように、非対称な地位が定められた無線通信装置間で実行されるプロトコルが用いられてもよい。あるいは、共有処理を実現するためのプロトコルとしては、例えば、2つの子機の間で実行されるプロトコルが用いられてもよい。
【0099】
変形例8:
上記実施例では、アクセスポイントは、自身のグループID等をプローブレスポンスに含めて送信していたが、アクセスポイントは、自身のグループID等をビーコンに含めて送信してもよい。こうすれば、無線端末STAがパッシブスキャン方式を利用している場合であっても、自動設定処理を実行することができる。
【0100】
変形例9:
上記実施例においてソフトウェアで実現されている機能の一部をハードウェアで実現してもよく、あるいは、ハードウェアで実現されている機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0101】
10…CPU
11…第1の特定部
12…第1の予約処理部
13…第1の共有処理部
20…フラッシュROM
30…RAM
40…第1の無線LAN通信部
50…有線LANインタフェース
60…ファンクションボタン
70…WPSボタン
72…LED
110…CPU
111…第2の特定部
112…第2の予約処理部
113…第2の共有処理部
120…フラッシュROM
130…RAM
140…第2の無線LAN通信部
150…有線LANインタフェース
160…ファンクションボタン
170…WPSボタン
172…LED
260…ファンクションボタン
270…WPSボタン
272…LED
360…ファンクションボタン
370…WPSボタン
372…LED
1000…無線LANシステム
ED1…電子機器
ED2…電子機器
AP1…アクセスポイント
AP2…アクセスポイント
AP3…アクセスポイント
STA…無線端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信装置と第2の通信装置とを備える無線LANシステムであって、
前記第1の通信装置と前記第2の通信装置とは、無線LANを構成するために必要な情報を含む設定情報を共有する共有処理を、無線通信によって実行可能であり、
前記第1の通信装置は、
前記第2の通信装置を、前記共有処理を実行する対象の候補として特定する第1の特定部と、
当該第1の通信装置と前記候補として特定された第2の通信装置との間でのみ前記共有処理の実行を許容する第1の予約処理を実行する第1の予約処理部と、
前記第1の予約処理が完了したことを報知する第1の報知部と、
前記第1の予約処理が完了した状態で、前記共有処理の一方の当事者としての処理である第1の共有処理の実行の指示をユーザから受け付ける第1の指示受付部と、
前記第1の共有処理の実行の指示を受け付けた場合に、前記候補として特定された第2の通信装置との間において、前記第1の共有処理を実行する第1の共有処理部と
を備え、
前記第2の通信装置は、
前記第1の通信装置を、前記共有処理を実行する対象として特定する第2の特定部と、
当該第2の通信装置と前記特定された第1の通信装置との間でのみ前記共有処理の実行を許容する第2の予約処理を実行する第2の予約処理部と、
前記第2の予約処理が完了したことを報知する第2の報知部と、
前記第2の予約処理が完了した状態で、前記共有処理の他方の当事者としての処理である第2の共有処理の実行の指示をユーザから受け付ける第2の指示受付部と、
前記第2の共有処理の実行の指示を受け付けた場合に、前記特定された第1の通信装置との間において、前記第2の共有処理を実行する第2の共有処理部と
を備える
無線LANシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線LANシステムであって、
前記第1の特定部は、前記候補として特定された第2の通信装置と同一の設定情報を有する他の通信装置も、前記共有処理を実行する対象の候補として特定し、
前記第1の共有処理実行部は、前記特定された候補のうち、前記第2の共有処理の実行の指示を先に受け付けた方の通信装置との間において、前記第1の共有処理を実行する、
無線LANシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の無線LANシステムであって、
前記第1及び第2の報知部は、前記予約処理が完了したことを示す光を発する光源を含む、
無線LANシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の無線LANシステムであって、
前記第1及び第2の指示受付部は、ボタンであり、
前記光源は、前記ボタンの内側に配置されており、前記光源が発する光が前記ボタンの外側から視認可能となるように構成されている、
無線LANシステム。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の無線LANシステムであって、
前記光源は、LEDである、
無線LANシステム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5に記載の無線LANシステムであって、
前記第1の特定部は、通信装置から送信される電波強度に基づいて、前記共有処理を実行する対象の候補を特定する、
無線LANシステム。
【請求項7】
無線LANを構成する複数の通信装置のうちの一の通信装置であり、前記無線LANを構成するために必要な情報を含む設定情報を他の通信装置との間で共有する共有処理を、無線通信によって実行可能な通信装置であって、
前記他の通信装置を、前記共有処理を実行する対象の候補として特定する第1の特定部と、
当該通信装置と前記候補として特定された他の通信装置との間でのみ前記共有処理の実行を許容する第1の予約処理を実行する第1の予約処理部と、
前記第1の予約処理が完了したことを報知する第1の報知部と、
前記第1の予約処理が完了した状態で、前記共有処理の一方の当事者としての処理である第1の共有処理の実行の指示をユーザから受け付ける第1の指示受付部と、
前記第1の共有処理の実行の指示を受け付けた場合に、前記候補として特定された他の通信装置との間において、前記第1の共有処理を実行する第1の共有処理部と
を備える、通信装置。
【請求項8】
複数の通信装置のうちの一の通信装置とともに無線LANを構成する他の通信装置であり、前記無線LANを構成するために必要な情報を含む設定情報を前記一の通信装置との間で共有する共有処理を、無線通信によって実行可能な通信装置であって、
前記一の通信装置を、前記共有処理を実行する対象として特定する第2の特定部と、
当該通信装置と前記特定された一の通信装置との間でのみ前記共有処理の実行を許容する第2の予約処理を実行する第2の予約処理部と、
前記第2の予約処理が完了したことを報知する第2の報知部と、
前記第2の予約処理が完了した状態で、前記共有処理の一方の当事者としての処理である第1の共有処理に対応する他方の当事者としての処理である第2の共有処理の実行の指示をユーザから受け付ける第2の指示受付部と、
前記第2の共有処理の実行の指示を受け付けた場合に、前記特定された一の通信装置との間において、前記第2の共有処理を実行する第2の共有処理部と
を備える、通信装置。
【請求項9】
無線LANを構成するために必要な情報を含む設定情報を第1及び第2の通信装置の間で無線通信によって共有する方法であって、
前記第1の通信装置が、前記第2の通信装置を前記共有処理を実行する対象の候補として特定するとともに、当該候補として特定された第2の通信装置との間でのみ前記共有処理の実行を許容する第1の予約処理を実行し、当該第1の予約処理が完了したことを報知する工程と、
前記第2の通信装置が、前記第1の通信装置を前記共有処理を実行する対象として特定するとともに、当該特定された第1の通信装置との間でのみ前記共有処理の実行を許容する第2の予約処理を実行し、当該第2の予約処理が完了したことを報知する工程と、
前記第1の通信装置が、前記第1の予約処理が完了した状態で、前記共有処理の一方の当事者としての処理である第1の共有処理の実行の指示をユーザから受け付ける工程と、
前記第2の通信装置が、前記第2の予約処理が完了した状態で、前記共有処理の他方の当事者としての処理である第2の共有処理の実行の指示をユーザから受け付ける工程と、
前記第1の通信装置が、前記第1の共有処理の実行の指示を受け付けた場合に、前記候補として特定された第2の通信装置との間において、前記第1の共有処理を実行する工程と、
前記第2の通信装置が、前記第2の共有処理の実行の指示を受け付けた場合に、前記特定された第1の通信装置との間において、前記第2の共有処理を実行する工程と
を備える、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−147159(P2012−147159A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2873(P2011−2873)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(390040187)株式会社バッファロー (378)
【Fターム(参考)】