説明

無電極放電ランプ

【課題】バルブの部位によらずに、均一な色で発光させる。
【解決手段】バルブ2の外管4又は内管5に、複数の蛍光体の混合物からなる外管発光体7又は内管発光体8を配設し、発光体中の各蛍光体の配合比率を、バルブ2の部位毎に変化させる。特に、放電プラズマP中の放電ガスからは青色の可視光が強く放射されるので、誘導コイル12に近接する領域Bでは青色蛍光体の配合比率を低くした。また、それ以外の領域では、内管4と外管5の結合部2aから離間した領域Aでは緑色蛍光体の配合比率を低くし、結合部2aに近接した領域Cでは赤色蛍光体の配合比率を低くした。これにより、放電プラズマPからの発光と発光体からの発光を合わせた光の色が、バルブ2の部位によらず均一化されるので、バルブ2の部位による発光色のばらつきを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電極放電ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されたような、外管及4び内管5からなるバルブ2と、内管5の内部に配設された誘導コイル12とを備えた無電極放電ランプ1がある(図3(a)参照)。このような無電極放電ランプ1では、誘導コイル12に高周波電流を通電すると、バルブ2内部に高周波電磁界が発生し、バルブ2内部に封入された放電ガスが電離されて、誘導コイル12の周りに略円環状に放電プラズマPが形成される。この放電プラズマP中の放電ガスから放射された紫外線は、バルブ2表面に配設された蛍光体によって可視光に変換され、バルブ2外部に放射される。このように、無電極放電ランプ1は内部に電極を持たない構造となっているため、電極の劣化による不点灯がなく、一般の蛍光灯に比べて長寿命であるという特徴がある。
【0003】
このような無電極放電ランプ1の放電ガスとしては、一般に、紫外領域に強いピークを持つ水銀蒸気が用いられる。また、バルブ2表面に配設される蛍光体としては、水銀の放射光(紫外光)を吸収して発光する蛍光体であって、赤色光を発する赤色蛍光体、緑色光を発する緑色蛍光体、及び青色光を発する青色蛍光体の3種の蛍光体を、適宜の配合比率で混合し、所望の色(白色等)の光を発するようにした混合物が用いられる。図2(a)に、水銀を含む放電ガスのスペクトルを、図2(c)に、従来の無電極放電ランプ1で使われる蛍光体のスペクトルを、それぞれ示す。図2(c)の蛍光体は、赤色蛍光体として3価のユーロピウムにより活性化された酸化イットリウム(YOX)、緑色蛍光体として3価のセリウム及び3価のテルビウムにより活性化されたランタンりん酸塩(LAP)、青色蛍光体として2価のユーロピウムにより活性化されたバリウムマグネシウムアルミン酸塩(BAM)の、3種の蛍光体を混合して、白色の光を発するようにした混合物である。
【0004】
上記のような無電極放電ランプ1の発光に寄与する光としては、主に、外管4の内表面に配設された蛍光体から放射される可視光及び、内管5の外表面に配設された蛍光体から放射される可視光があるが、その他に放電プラズマP中の放電ガスからも可視光が放射されており、ランプ1の発光に寄与している。すなわち、バルブ2外表面の特定部位から放射される光は、その部位に到達した上記3種の光の足し合わせで表される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−241634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、バルブ2内部の放電プラズマPは誘導コイル12による電磁界によって励起されるため、バルブ2内部の空間における放電プラズマPの強度分布は、この空間における電磁界の強度分布に依存する。すなわち、上記放電プラズマPの分布の態様は、図3(a)に示すように誘導コイル12付近のP1が最も強く、次にP2、そしてP3のように、誘導コイル12から離れるに従って徐々に弱くなる。そして、この放電プラズマPの強度分布は、放電ガスが放射する紫外光及び可視光の強度分布と略一致すると考えられる。ここで、バルブ2に配設された蛍光体の発光強度は、その配設部位における紫外光の強度に依存するので、紫外光がバルブ2内部で強度分布を有するときには、蛍光体の発光強度もバルブ2の部位によって異なることになる。また、放電ガスから放射される可視光の強度も、放電プラズマPの強度分布に依存してバルブ2の部位毎に異なる。従って、蛍光体起因の可視光と放電プラズマP起因の可視光の強度比は、バルブ2の部位によって異なっている。また、図2で示したように蛍光体と放電ガスのスペクトルは大きく異なっているので、両者の強度比が異なると、両者を合わせた光のスペクトルも異なってくる。
【0007】
図3(b)に、図3(a)に示すバルブ2表面の各点a〜gにおける発光色を測定して、xy色度図(以下、単に色度図という)上に表したものを示す。また表1には、各点a〜gにおける発光色の、色度図上での座標を示している。ここで各点a〜gは、バルブ2の天頂にあたる点aを基準点として、点aから各点までの距離を鉛直方向成分と水平方向成分に分けたときの鉛直方向成分(例えば点cであれば、図3(a)中に示したL)の値を用いて、表1内で規定されている。図3(b)より、点a、b、cでは比較的緑色に、点d、e、fでは比較的青色に、点gでは比較的赤色に発光していることがわかる。
【0008】
【表1】

【0009】
本来、バルブ2表面における発光の色は、バルブ2の部位によらず一定となることが望ましい。しかし、従来の無電極放電ランプ1では、上述のように放電ガスから放射される可視光と蛍光体から放射される可視光の強度比が、バルブ2の部位毎に異なっているため、図3に示したように、バルブ2の部位によって発光色に差異が生じることとなっていた。
【0010】
なお、特許文献1には、複数の蛍光体を混合してなる発光体を外管の表面及び内管の表面に配設し、外管に配設する発光体中の各蛍光体の配合比率と、内管に配設する発光体中の各蛍光体の配合比率を、互いに異ならせた無電極放電ランプが記載されている。本従来例によれば、外管の発光体からの光と内管の発光体からの光を互いに補償して、所望の色の光を得ることができる。しかし本従来例は、放電ガスからの発光を補償するものではなく、ランプ全体での発光色を均一にするという課題の解決に効果を奏するものではない。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものであり、ランプ表面の部位による発光色の差異を抑制し、各部位での発光の色むらを抑えて、光の品質を向上させた無電極放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、透光性材料により形成された外管及び、この外管の外面から当該外管の内部に落ち窪んだ管状であって結合部で当該外管と結合された内管を有し、内部に水銀などの放電ガスが封入されたバルブと、前記内管の内部に配設されて前記バルブ内部に誘導電磁界を発生させる誘導コイルとを備え、この誘導コイルにより発生する電磁界の作用によって、前記放電ガスを電離させて当該誘導コイルの周囲に略円環状の放電プラズマを形成し、この放電プラズマが発する光によって、前記外管及び前記内管の前記放電ガスに接する表面に配設された発光体を発光させる無電極放電ランプにおいて、前記発光体は、異なる波長の光を発する複数種類の蛍光体を所定の配合比率で混合した混合物であって、前記外管に配設される前記発光体中の各蛍光体の配合比率が、前記バルブ外表面における発光の色が略均一になるように、当該外管の部位毎に異なっていることを特徴とする。
【0013】
請求項1の発明では、複数の蛍光体を混合してなる発光体を外管表面に配設し、外管の部位毎に、発光体中の各蛍光体の配合比率を適宜変化させている。そしてこの変化のさせ方は、放電ガスからの発光と発光体からの発光を合わせた光の色が、バルブ表面の各部位において略均一になるようになっている。これにより、バルブ表面の発光色むらを抑制し、バルブの各部位から略均一な色の光を得ることができる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1記載の無電極放電ランプにおいて、前記外管に配設される前記発光体は、少なくとも、赤色光を発する赤色蛍光体と、緑色光を発する緑色蛍光体と、青色光を発する青色蛍光体の3種の蛍光体を含む混合物であって、前記外管のうち、当該外管を前記放電プラズマからの距離によって少なくとも3つの領域に分けた場合に、この放電プラズマからの距離が相対的に最も近い領域では、その表面に配設される前記発光体中の青色蛍光体の配合比率が、当該外管の他の領域よりも低いことを特徴とする。
【0015】
請求項2の発明では、外管を少なくとも3つの領域に分けた場合に放電プラズマからの距離が最も近い領域において、外管に配設される発光体中の青色蛍光体の配合比率を、当該外管の他の領域よりも低くしている。放電プラズマ中の放電ガスからは青色の可視光が強く放射される。よって、放電プラズマに最も近い領域で青色蛍光体の配合比率を低くすることで、放電ガスからの光と発光体からの光を合わせた光の色が均一化され、バルブ表面の発光色むらを抑制することができる。
【0016】
請求項3の発明は、請求項2記載の無電極放電ランプにおいて、前記外管の領域のうちで、前記放電プラズマからの距離が相対的に最も近い領域と比較して、前記内管との結合部から離間する領域では、その表面に配設される前記発光体中の緑色蛍光体の配合比率が、当該外管の他の領域よりも低く、前記外管の領域のうちで、前記放電プラズマからの距離が相対的に最も近い領域と比較して、前記内管との結合部に近接する領域では、その表面に配設される前記発光体中の赤色蛍光体の配合比率が、当該外管の他の領域よりも低いことを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明では、結合部から離間する領域では、外管に配設される発光体中の緑色蛍光体の配合比率を低くし、また結合部に近接する領域では、外管に配設される発光体中の赤色蛍光体の配合比率を低くしている。従来の無電極放電ランプでは、結合部から離間する領域では比較的緑色に発光し、結合部に近接する領域では比較的赤色に発光していた。よって、上記のように蛍光体の配合比率を設定することで、バルブ表面の発光色むらを抑制することができる。
【0018】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか記載の無電極放電ランプにおいて、前記内管に配設される前記発光体中の各蛍光体の配合比率が、前記バルブ外表面における発光の色が略均一になるように、当該内管の部位毎に異なっていることを特徴とする。
【0019】
請求項4の発明では、複数の蛍光体を混合してなる発光体を内管表面に配設し、内管の部位毎に、発光体中の各蛍光体の配合比率を適宜変化させている。そしてこの変化のさせ方は、放電ガスからの発光と発光体からの発光を合わせた光の色が、バルブ表面の各部位において略均一になるようになっている。これにより、バルブ表面の発光色むらを抑制し、バルブの各部位から略均一な色の光を得ることができる。
【0020】
請求項5の発明は、請求項4記載の無電極放電ランプにおいて、前記内管に配設される前記発光体は、少なくとも、赤色光を発する赤色蛍光体と、緑色光を発する緑色蛍光体と、青色光を発する青色蛍光体の3種の蛍光体を含む混合物であって、前記内管のうち、当該内管を前記放電プラズマからの距離によって少なくとも3つの領域に分けた場合に、この放電プラズマからの距離が相対的に最も近い領域では、その表面に配設される前記発光体中の青色蛍光体の配合比率が、当該内管の他の領域よりも低いことを特徴とする。
【0021】
請求項5の発明では、内管を少なくとも3つの領域に分けた場合に放電プラズマからの距離が最も近い領域において、内管に配設される発光体中の青色蛍光体の配合比率を、当該内管の他の領域よりも低くしている。これにより、請求項2の発明と同様に、放電プラズマからの光と発光体からの光を合わせた光の色が均一化され、バルブ表面の発光色むらを抑制することができる。
【0022】
請求項6の発明は、請求項5記載の無電極放電ランプにおいて、前記内管の領域のうちで、前記放電プラズマからの距離が相対的に最も近い領域と比較して、前記外管との結合部から離間する領域では、その表面に配設される前記発光体中の緑色蛍光体の配合比率が、当該内管の他の領域よりも低く、前記内管の領域のうちで、前記放電プラズマからの距離が相対的に最も近い領域と比較して、前記外管との結合部に近接する領域では、その表面に配設される前記発光体中の赤色蛍光体の配合比率が、当該内管の他の領域よりも低いことを特徴とする。
【0023】
請求項6の発明では、結合部から離間する領域では、内管に配設される発光体中の緑色蛍光体の配合比率を低くし、また結合部に近接する領域では、内管に配設される発光体中の赤色蛍光体の配合比率を低くしている。これにより、請求項3の発明と同様に、バルブ表面の発光色むらを抑制することができる。
【0024】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか記載の無電極放電ランプにおいて、前記発光体は、少なくとも、3価のユーロピウムにより活性化された酸化イットリウム(YOX)と、3価のセリウム及び3価のテルビウムにより活性化されたランタンりん酸塩(LAP)と、2価のユーロピウムにより活性化されたバリウムマグネシウムアルミン酸塩(BAM)の、3種の蛍光体を含むことを特徴とする。
【0025】
請求項7の発明によれば、発光体中の蛍光体としてYOX、LAP、BAMを用いることにより、請求項1〜6の発明と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、ランプ表面の部位による発光色の差異を抑制し、各部位での発光の色むらを抑えて、光の品質を向上させた無電極放電ランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態の断面図である。
【図2】(a)は、プラズマによって励起された、水銀蒸気を含む放電ガスのスペクトルを表す図、(b)は、(a)の可視光領域の拡大図、(c)は、従来の無電極放電ランプに使用される発光体のスペクトルを表す図である。
【図3】(a)は、電球形の無電極放電ランプにおいて、誘導コイルに高周波電流を通電したときに、バルブ内部に形成されるプラズマの強度分布を表す図、(b)は、従来の電球形の無電極放電ランプにおいて、(a)中に示したバルブの各点a〜gでの発光色を、色度図上に表した図である。
【図4】従来の無電極放電ランプに使用される発光体から、1種の蛍光体の配合比率を1%増加させ、他の1種の蛍光体の配合比率を1%減少させたときに、その発光色が色度図上でどの程度座標移動するかを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、図1の上側を上、図1の下側を下と規定する。
【0029】
本実施形態の無電極放電ランプ1は、バルブ2と、パワーカプラ3とを備えている。
【0030】
バルブ2は、略電球状の外管4と、外管4の内部に落ち窪んだ円筒状で上端が塞がれた内管5とを備え、内管5の上端底面中央部からは、内管5の内部を通って排気管6が突設されている。外管4と内管5とは、共にガラスなどの透光性材料から形成され、結合部2aで結合されて一体となっている。そして、外管4の内表面には外管発光体7が配設され、内管5の外表面には内管発光体8が配設されている。この外管発光体7及び内管発光体8は、YOX(赤色蛍光体)、LAP(緑色蛍光体)、BAM(青色蛍光体)の3種の蛍光体を混合した混合物である。排気管6は、バルブ2の内部から空気を排気すると共に、このバルブ2の内部に、水銀蒸気を含む放電ガス及び希ガスなどを充填するために用いられる。また、排気管6の中央部近傍には、バルブ2内部の水銀蒸気圧を制御するためのアマルガム9が配設されている。
【0031】
パワーカプラ3は、円筒状の放熱シリンダ10と、放熱シリンダ10の上端近傍に嵌装された円筒状のフェライトコア11と、フェライトコア11の外周部に巻回された誘導コイル12とを備えている。パワーカプラ3の各部は略環状の断面を有し、その外径は、内管5の内径よりも若干小さくなるように設定されている。また放熱シリンダ10の内径は、排気管6の外径よりも若干大きくなるように設定されている。このパワーカプラ3は、筒状の放熱シリンダ10の内部に排気管6を挿通し、バルブ2の下端に設けられた口金13に結合されて、バルブ2に嵌装される。
【0032】
本実施形態の誘導コイル12に高周波電流を通電すると、バルブ2の内部に高周波電磁界が発生する。このとき、バルブ2内部に充填された放電ガスは、この高周波電磁界のエネルギーを受けて電離し、誘導コイル12の周囲に円環状の放電プラズマPを形成する。この放電プラズマPの強度分布は、バルブ2内部の空間における電磁界の強度分布に依存し、図1に示すように、誘導コイル12近傍が最も強く(P1)、誘導コイル12から離れるに従って(P2、P3)徐々に弱くなる。この放電プラズマP中では、放電ガスが励起発光して紫外光及び可視光を放射する。このうちで、可視光は外管4を透過して外部に放射され、また紫外光は、外管発光体7あるいは内管発光体8により可視光に変換され、外部に放射される。これにより、本実施形態に係る無電極放電ランプ1は発光する。
【0033】
本実施形態は、外管発光体7中の3種の蛍光体の配合比率を、外管4の部位によって変化させることにより、バルブ2表面の各部位における発光の色を略均一にしている。以下、この蛍光体配合比率の変化のさせ方について説明する。
【0034】
放電プラズマP中の放電ガスから放射される可視光は、図2(b)に示すように、主として青色〜緑色の成分からなる。よって、放電プラズマP起因の可視光と発光体起因の可視光を合わせた光の色は、放電プラズマP起因の可視光の比率が小さくなるに従って、青→緑→赤と推移する。そして、略電球状の無電極放電ランプ1では、放電プラズマPの強度は図3(a)に示すように分布しているので、放電ガスから放射される可視光も同様の強度分布を持つと考えられる。
【0035】
すなわちバルブ2を、放電ガスからの発光強度の分布に従って、比較的青色に発光する放電プラズマPに最も近接している領域B(図3(a)では点d、e、fに対応)と、比較的緑色に発光する領域Bよりも上部の領域A(図3(a)では点a、b、cに対応)と、比較的赤色に発光する領域Bよりも下部の領域C(図3(a)では点gに対応)の、3つの領域に分けることができる。よって、領域AではLAP(緑色蛍光体)の配合比率を低下させ、領域BではBAM(青色蛍光体)の配合比率を低下させ、領域CではYOX(赤色蛍光体)の配合比率を低下させることで、バルブ2表面の部位による発光色のばらつきを抑制することができる。
【0036】
次に、各領域A、B、Cにおいて、外管発光体7中の蛍光体の配合比率をどの程度変化させればよいかを、色度図を用いて算出する。以下、説明の便宜上、各領域の発光色を図3のc点の発光色に略一致させる場合を説明するが、他の点を基準としてもよい。
【0037】
図4は、従来の無電極放電ランプ1において使用される外管発光体7から、各蛍光体の配合比率を変化させた場合における、発光色の色度座標上の変位を表す。すなわち、3種の蛍光体YOX(R、赤色蛍光体)、LAP(G、緑色蛍光体)、BAM(B、青色蛍光体)のうち、1種の配合比率(外管発光体7全体に対するこの蛍光体の配合比率)を固定し、別の1種の配合比率を1%増加させ、残り1種の配合比率を1%減少させたときに、発光体からの発光色が色度図上でどの程度座標移動するかを表すものである。その値を、表2に示す。ここで[RG]は、YOXの配合比率を1%増加させ、LAPの配合比率を1%減少させ、BAMの配合比率を固定したときの、色度座標上の変位を表すベクトルであり、当該配合比率の変化によって、元の発光体と比較して色度図上でx方向に0.001378、y方向に−0.00155だけシフトした色の光を発することを表している。同様に、[GB]はYOXの配合比率を固定して、LAPの配合比率を1%増加させ、BAMの配合比率を1%減少させたときの、色度座標上の変位を表すベクトル、[BR]はYOXの配合比率を1%減少させ、LAPの配合比率を固定して、BAMの配合比率を1%増加させたときの、色度座標上の変位を表すベクトルである。
【0038】
【表2】

【0039】
例えば、領域Aを代表する点として図3(a)のa点を選び、この表2の値を用いて、a点の発光色をc点の発光色とほぼ同じ色にするための配合比補正量を算出する。まず表1より、a点とc点の座標差は[−0.0004、−0.0055]である。この座標差を、図4に示したベクトルのうち2つのベクトルの和によって表す。例えば[GB]と[BR]を用いると、[−0.0004、−0.0055]=−1.56[GB]−1.09[BR]となる。ここで、−1.56[GB]は、G即ちLAPの配合比率を−1.56%、B即ちBAMの配合比率を+1.56%変化させることを意味し、−1.09[BR]は、B即ちBAMの配合比率を−1.09%、R即ちYOXの配合比率を+1.09%変化させることを意味する。よって、この2ベクトルの和から、3種の蛍光体[YOX、LAP、BAM]の配合比率を、それぞれ[+1.09%、−1.56%、+0.47%]変化させることで、a点の発光色をc点の発光色とほぼ同一にできることがわかる。同様の計算により、e点の発光色をc点の発光色とほぼ同一にするには、3種の蛍光体[YOX、LAP、BAM]の配合比率を、それぞれ[+1.17%、−0.60%、−0.57%]変化させればよく、g点の発光色をc点の発光色とほぼ同一にするには、3種の蛍光体[YOX、LAP、BAM]の配合比率を、それぞれ[−4.71%、+4.91%、−0.20%]変化させればよいことがわかる。
【0040】
よって、領域Aでは、緑色即ちLAPの配合比率を1.56%程度減少させ、残り2種の配合比率を適宜調整した外管発光体7Aを用い、領域Bでは、青色即ちBAMの配合比率を0.57%程度減少させ、残り2種の配合比率を適宜調整した外管発光体7Bを用い、領域Cでは、赤色即ちYOXの配合比率を4.71%程度減少させ、残り2種の配合比率を適宜調整した外管発光体7Cを用いることで、バルブ2外面における発光色のばらつきを抑えることができる。なお、本実施形態では3種の蛍光体の配合比率の和は常に100%であるので、「残り2種の配合比率を適宜調整する」とは、特定の1種の配合比率を減少させるときに残り2種の配合比率の和を増加させて、3種の蛍光体の配合比率の和が100%となるように調整することをいう。
【0041】
なお、一般の無電極放電ランプ1では、バルブ2の各部位からの発光色はバルブ2の形状、発光体の厚さや変換効率、誘導コイル12に流す電流値など、様々な条件によって変わってくるので、各条件が変わる毎に領域A、B、Cの分け方は異なってくる。また、各蛍光体の配合比率をどの程度変化させるかについても、上記のような条件に依存する。よって、ある無電極放電ランプ1において、領域の分け方や配合比率の変化量を決定するには、予め、外管4に従来の外管発光体7を配設した当該無電極放電ランプ1を製造し、バルブ2表面上の複数の点での発光色を測定した上で、領域などを決める必要がある。しかし、略電球状の無電極放電ランプ1では、その内部に形成される放電プラズマPの強度分布の大まかな傾向は、変わらないと考えられる。よって、発光色の測定が困難な場合などには、図1に示すように、最も簡単な領域の分け方として、バルブ2を誘導コイル12に正対する領域Bと、領域Bよりもバルブ2の天頂側の領域Aと、領域Bよりも結合部2a側の領域Cとに分け、各領域での各蛍光体の配合比率を上記計算結果の程度増減させるとしてもよい。これにより、ある程度発光色のばらつきを抑制することができる。
【0042】
上記の説明では、発光色の大まかな分類によってバルブ2を3つの領域A、B、Cに分けたが、バルブ2をさらに細かな領域に分けて、各領域ごとに蛍光体の配合比率を調整することで、上記説明の場合よりもさらに発光色のばらつきを抑制することができる。
【0043】
また、上記説明では外管発光体7の配合比率を変化させた場合を考えたが、同様にして内管発光体8の配合比率を変化させることにより、発光色のばらつきを抑制することができる。特に、内管発光体8は、円筒状という単純な形状を有する内管5の外面に配設される。よって、外管発光体7の配合比率を領域毎に変化させるよりも、工法上容易に行うことができるという利点がある。
【0044】
勿論、外管発光体7中の各蛍光体の配合比率と、内管発光体8中の各蛍光体の配合比率を、共に調整してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 無電極放電ランプ
2 バルブ
4 外管
5 内管
7 外管発光体
7A 緑色蛍光体の配合比率が低い外管発光体
7B 青色蛍光体の配合比率が低い外管発光体
7C 赤色蛍光体の配合比率が低い外管発光体
8 内管発光体
12 誘導コイル
P 放電プラズマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性材料により形成された外管及び、この外管の外面から当該外管の内部に落ち窪んだ管状であって結合部で当該外管と結合された内管を有し、内部に水銀などの放電ガスが封入されたバルブと、前記内管の内部に配設されて前記バルブ内部に誘導電磁界を発生させる誘導コイルとを備え、この誘導コイルにより発生する電磁界の作用によって、前記放電ガスを電離させて当該誘導コイルの周囲に略円環状の放電プラズマを形成し、この放電プラズマが発する光によって、前記外管及び前記内管の前記放電ガスに接する表面に配設された発光体を発光させる無電極放電ランプにおいて、
前記発光体は、異なる波長の光を発する複数種類の蛍光体を所定の配合比率で混合した混合物であって、
前記外管に配設される前記発光体中の各蛍光体の配合比率が、前記バルブ外表面における発光の色が略均一になるように、当該外管の部位毎に異なっていることを特徴とする無電極放電ランプ。
【請求項2】
前記外管に配設される前記発光体は、少なくとも、赤色光を発する赤色蛍光体と、緑色光を発する緑色蛍光体と、青色光を発する青色蛍光体の3種の蛍光体を含む混合物であって、
前記外管のうち、当該外管を前記放電プラズマからの距離によって少なくとも3つの領域に分けた場合に、この放電プラズマからの距離が相対的に最も近い領域では、その表面に配設される前記発光体中の青色蛍光体の配合比率が、当該外管の他の領域よりも低いことを特徴とする請求項1記載の無電極放電ランプ。
【請求項3】
前記外管の領域のうちで、前記放電プラズマからの距離が相対的に最も近い領域と比較して、前記内管との結合部から離間する領域では、その表面に配設される前記発光体中の緑色蛍光体の配合比率が、当該外管の他の領域よりも低く、
前記外管の領域のうちで、前記放電プラズマからの距離が相対的に最も近い領域と比較して、前記内管との結合部に近接する領域では、その表面に配設される前記発光体中の赤色蛍光体の配合比率が、当該外管の他の領域よりも低いことを特徴とする請求項2記載の無電極放電ランプ。
【請求項4】
前記内管に配設される前記発光体中の各蛍光体の配合比率が、前記バルブ外表面における発光の色が略均一になるように、当該内管の部位毎に異なっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の無電極放電ランプ。
【請求項5】
前記内管に配設される前記発光体は、少なくとも、赤色光を発する赤色蛍光体と、緑色光を発する緑色蛍光体と、青色光を発する青色蛍光体の3種の蛍光体を含む混合物であって、
前記内管のうち、当該内管を前記放電プラズマからの距離によって少なくとも3つの領域に分けた場合に、この放電プラズマからの距離が相対的に最も近い領域では、その表面に配設される前記発光体中の青色蛍光体の配合比率が、当該内管の他の領域よりも低いことを特徴とする請求項4記載の無電極放電ランプ。
【請求項6】
前記内管の領域のうちで、前記放電プラズマからの距離が相対的に最も近い領域と比較して、前記外管との結合部から離間する領域では、その表面に配設される前記発光体中の緑色蛍光体の配合比率が、当該内管の他の領域よりも低く、
前記内管の領域のうちで、前記放電プラズマからの距離が相対的に最も近い領域と比較して、前記外管との結合部に近接する領域では、その表面に配設される前記発光体中の赤色蛍光体の配合比率が、当該内管の他の領域よりも低いことを特徴とする請求項5記載の無電極放電ランプ。
【請求項7】
前記発光体は、少なくとも、3価のユーロピウムにより活性化された酸化イットリウム(YOX)と、3価のセリウム及び3価のテルビウムにより活性化されたランタンりん酸塩(LAP)と、2価のユーロピウムにより活性化されたバリウムマグネシウムアルミン酸塩(BAM)の、3種の蛍光体を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の無電極放電ランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−23243(P2011−23243A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168146(P2009−168146)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】