説明

無電解銅めっき被膜形成方法

【課題】 めっき層と不導体表面とが強固に密着しており、平滑なめっき層を得ることができて、めっき耐久性や装飾性のより高いめっき被膜が形成された製品を得ることができる無電解銅めっき被膜形成方法を提供する。
【解決手段】
無電解銅めっき液に、通常の使用量の10倍程度の濃度である50mg/l〜10g/lとなるように1価の銅の安定剤を添加し、又は、通常の使用量の10倍程度の濃度である0.01〜0.1mol/lとなるようにアミン系の錯化剤を添加し、pH11〜13、温度20〜70℃で無電解銅めっきを行う無電解銅めっき被膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い密着性と表面平滑性を有する無電解銅めっき被膜を得ることができる無電解銅めっき被膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不導体製品に導電性や金属光沢を付与する方法として、不導体製品に真空中で金属を蒸着する方法、金属をスパッタリングする方法、あるいは無電解めっきする方法等が知られている。無電解めっきとは、溶液中の金属イオンを化学的に還元析出させ、素材表面に金属被膜を形成させる方法をいい、電力によって電解析出させる電気めっきと異なり樹脂等の絶縁体にも金属被膜を形成させることができる。
【0003】
ところが、無電解めっき処理によって形成されためっき被膜は、素材表面に対する付着強度が十分でないという問題がある。そのため、無電解めっきをする場合、その前処理として、樹脂の表面を化学的にエッチング処理を行う表面粗化、極性基付与、及び触媒化の処理をして、無電解めっきを行っている。表面粗化及び極性基付与のためのエッチング処理には、主に、クロム酸、硫酸や過マンガン酸等の薬品が用いられていた。ところが、樹脂として、例えばABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂を用いて、上記のような薬品によりエッチング処理を施すと、ブタジエン成分が溶解して、表面に孔径が数μm程度の大きなラフネスを形成し、その上に無電解めっきを施しためっき表面は平滑性に問題があり、今後需要が見込まれている微細配線用のプリント基板や装飾等に用いるには限界があった。また、エッチング処理に用いるこれらの薬品は、環境汚染の原因となり、廃液処理に莫大な処理費がかかるといった問題もあった。
【0004】
そこで、環境問題から、上記のような薬品は使用することなく、樹脂表面のラフネスを小さくすることができて、めっき層との高い密着力を得ることができる無電解めっき被膜形成のための前処理が望まれていた。そして、このような薬品を使用することなく、表面におけるラフネスを小さくすることができる無電解めっき前処理方法として、TiO2等の光触媒を含有する液中に樹脂を浸漬し紫外線照射すると、樹脂表面に、極性基付与ができて、孔径30nm程度のラフネスとすることができて、この小さな孔を有する表面に無電解めっきを行うと、この孔によるナノアンカー効果により優れた密着性と平滑なめっき層が得られることが、開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、無電解めっきにおいては、無電解ニッケルめっきと無電解銅めっきが主に行われている。無電解ニッケルめっきにおいては、樹脂基板などに高い密着力を得ることができ、特許文献1に記載されているようなTiO2等の光触媒を含有する液中にABS樹脂を浸漬し紫外線照射して表面処理して無電解銅めっきを行うと、同条件で形成した無電解ニッケルめっきに比して4割程度の密着力しか得られない。(したがって、この発明の実施例では、ニッケルめっき層を形成させたのち、銅めっき層を形成している。)
これは、無電解ニッケルめっきにおいては、還元剤として次亜りん酸ナトリウムやジメチルアミンボラン(DMAB)を用いるので、ニッケルが析出する際に、りんやホウ素が共析される。このような半金属が共析されることにより析出ニッケル粒子が微細化される。一方、無電解銅めっきにおいては、次亜りん酸ナトリウムの触媒としての機能が低いので、ホルムアルデヒドやグリオキシル酸を還元剤に用いるので、銅析出中に発生する水素がめっき層に吸蔵されるのみであるので、析出銅粒子が大きくなる。
【0006】
そして、前記したような、ABS樹脂の表面を光触媒と紫外線照射で前処理して、表面に微細なラフネスが形成されているような改質層を有する樹脂に無電解めっきした場合、無電解ニッケルめっきのように、粒子が微細化されている場合、改質層の微細なラフネスの底部まで入りこむことができて、樹脂表面とめっき層とが高い密着性を得ることができる。しかし、無電解銅めっきの場合のように大きい粒子は改質層のラフネスの底部まで、入りこむことができないので、十分な密着力を得ることができない。
【0007】
図1は、ABS樹脂に対して表面改質した後、無電解めっきを施した際、改質層に対するめっき金属の析出状態を示す模式図であり、(a)は無電解ニッケルめっきを施したものであり、(b)は無電解銅めっきを施したものである。この図から、無電解ニッケルめっきの場合には、改質層の底部にまでニッケルが析出しているが、無電解銅めっきでは、改質層の底部にまで銅が到達せず部分的にしか析出していない。これにより、密着力の差(アンカー効果の差)が生じていると考えられる。
【0008】
【特許文献1】国際公開03/021005号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、めっき層と不導体表面とが強固に密着しており、平滑なめっき層を得ることができて、めっき耐久性や装飾性のより高いめっき被膜が形成された製品を得ることができる無電解銅めっき被膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する本発明は、第1に、無電解銅めっき液に、通常の使用量の10倍程度の濃度である50mg/l〜10g/lとなるように1価の銅の安定剤を添加し、pH11〜13、温度20〜70℃で無電解銅めっきを行うことを特徴とする無電解銅めっき被膜形成方法である。この発明において、1価の銅の安定剤として、2−2’ジピリジル、アゾ染料及びチオ尿素が好ましいものとして例示される。さらにアゾ染料としてジフェニルカルバジドが例示され、チオ尿素としてテトラメチルチオ尿素が例示される。
【0011】
第2に、無電解銅めっき液に、通常の使用量の10倍程度の濃度である0.01〜0.1mol/lとなるようにアミン系の錯化剤を添加し、pH11〜13、温度20〜70℃で無電解銅めっきを行うことを特徴とする無電解銅めっき被膜形成方法である。この発明において、アミン系錯化剤が、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミンが好ましいものとして例示される。
【0012】
第3に、上記無電解銅めっき被膜形成方法よって形成された無電解銅めっき被膜上に、さらに電気めっきを行うめっき被膜形成方法である。
【0013】
第4に、上記無電解銅めっき被膜形成方法よって形成された無電解銅めっき被膜上に、さらに無電解めっきを行うめっき被膜形成方法であり、この発明において、形成された無電解銅めっき被膜上に、形成させる無電解めっきは、高速無電解銅めっきであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、無電解銅めっき層と不導体表面とが強固に密着していて、平滑なめっき層が得られ、めっき耐久性や装飾性のより高いめっき被膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明について詳細に説明する。
ここで無電解銅めっきの機構について述べる。前記のように無電解銅めっきにおいては、還元剤としてホルムアルデヒドが通常用いられており、硫酸銅を含む溶液に、銅の還元剤としてホルムアルデヒドを使用しためっき液を用いて無電解銅めっきを行う場合、次の反応により銅が析出し、不導体表面上に無電解銅めっきが施される。
Cu2++2HCHO+4OH- → Cu+2HCOO-+2H2O+H2
このとき、下記の反応式で示されるような副反応が起こる。
(a) 2HCHO+OH- → CH3OH+HCOO-
(b) 2Cu2++HCHO+5OH- → Cu2O+HCOO-+3H2O
【0016】
(a)式はメタノールと蟻酸が生成するホルムアルデヒドの不均化反応であり、(b)式の反応では銅イオンが金属銅に還元されずに1価の銅(亜酸化銅Cu2O)が生成する。亜酸化銅Cu2Oが生成すると下記の反応式で示される不均化反応で溶液内に銅が析出し、めっき液の安定性が低下する。
(c) Cu2O+H2O → Cu+Cu2++2OH-
【0017】
この不均化反応では、めっき液中に銅金属が析出するために、その析出物により、めっき液が破壊される。そして、従来、この不均化反応で生じる1価の銅を錯体化して安定化するために種々の添加剤が使用されている。例えば、1価の銅イオンを安定化するためには、キレート剤を用いる方法が考えられ、2−2’ジピリジルは、その代表的な錯化剤であり、広く用いられている。通常、この2−2’ジピリジルは、めっき液中に10mg/l 程度添加している。しかしこの添加量では1価の銅の安定化効果が低く、本発明者等の検討の結果、錯化剤を通常の使用量の10倍程度の濃度とすればよいことが分かった。そして、錯化剤のうち1価の銅の安定剤として用いているものでは、50mg/l〜10g/lとなるように、好ましくは90mg/l〜3g/lとなるように添加する。アミン系錯化剤の場合には0.01〜0.1mol/lとなるように、好ましくは0.02〜0.05mol/lとなるように添加して、無電解銅めっきを行うと不均化反応で生じる1価の銅が錯体化して安定化することが分かった。
【0018】
これは、1価の銅の錯化剤である2−2’ジピリジルを通常の10倍添加することにより、析出界面近傍でフリーの銅イオンが極端に減少し、析出界面でフリーの銅イオンが極端に減少することにより、結晶成長より、核発生が優先して生じ、その結果、微細な粒子が析出する。粒子が微細化することにより、改質表面層の深部までに銅が析出してナノアンカー効果が発揮され、高い密着力(1.0kgf/cm以上)を得ることができるためと考察される。そして、上記、特許文献1に記載されているように、TiO2等の光触媒を含有する液中にABS樹脂を浸漬し紫外線照射して表面処理して形成された改質層に対して、すなわち微細なラフネスに対して、ナノアンカー効果が発揮される。このように表面処理した改質層に対して本発明の無電解銅めっき被膜形成方法を適用すると、ナノアンカー効果が特に発揮されて好ましい。しかし、他の表面処理によるものに対しても、ABS以外の他の樹脂や、ガラス板にも適用することができる。
【0019】
本発明において、1価の銅の安定剤としては、2−2’ジピリジル及びアゾ染料、チオ尿素等が挙げられ、これらのうち1種以上が用いられる。アゾ染料としてはジフェニルカルバジトが好ましいものとして挙げられ、チオ尿素としてはテトラメチルチオ尿素が好ましいものとして挙げられる。アミン系の錯化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサアミンなどが挙げられ、これらのうち1種以上が用いられる。
【0020】
本発明において、めっき用の樹脂としては、ABS樹脂、エポキシ樹脂、液晶ポリマー(液晶ポリエステル系)、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PBT(ポリブチレンテテフタレート)樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、AN(アクリロニトリル)樹脂、PMMA(ポリメチルメタアクリレート)樹脂、PA(ポリアセタール)樹脂、ポリエステル樹脂、POM(ポリオキシメチレン)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、及びポリフェニルサルフアイド樹脂などが例示される。
【0021】
本発明で使用する無電解銅めっき液は、金属塩、錯化剤、安定剤、還元剤、界面活性剤、pH調整剤等を主成分として含有する。金属塩としては硫酸銅、銅−EDTA錯体、酸化銅、塩化銅等が挙げられ、硫酸銅が好ましい。前記した以外の錯化剤としては、EDTA、クワドロール等が挙げられる。還元剤としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキシル酸等が挙げられる。pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ剤が挙げられる。さらに、本発明で使用する無電解銅めっき液には、通常の無電解銅めっきに使用する添加剤を使用することができる。
【0022】
無電解銅めっき条件は、無電解銅めっき液のpHが11〜13、好ましくは11.5〜12.5で、室温から70℃、すなわち20〜70℃、好ましくは50〜70℃で、無電解めっきを行う。
【0023】
本発明によって得られた無電解銅めっき製品は、板状のものにめっきしたものはプリント配線基板、フレキシブルプリント基板等として用いられ、微粒子状のものにめっきしたものは導電性微粒子として、これをビヒクル中に分散させたものは、導電性接着剤や塗料等として用いられる。またプリント配線板として用いる場合、基板上にめっき層と絶縁層を交互に積層した多層構造としてもよい。また、めっきされた不導体製品は金属光沢を有していてめっき被膜は素材表面に強固に付着しており平滑であるので、例えば、車輌、情報機器、事務機器等の部品や装飾品等にも用いることができる。
【0024】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されない。
【実施例1】
【0025】
(表面処理)
不導体製品として、ABS樹脂で作製したプリント用基板(25×100mm)を用いた。水溶液に半導体粉末である、平均粒径0.5μmのアナターゼ型二酸化チタンを0.1重量%となるように加え、マグネチックスターラーで攪拌し、均一に分散懸濁させた液を得た。ABS樹脂基板を該液に浸漬し、該液中で水銀灯を光源とした波長380nm以下の紫外光を10分間照射し、ABS樹脂基板の表面処理を行った。
【0026】
(無電解銅めっき)
上記のようにして得られた表面改質ABS樹脂プリント用基板を下記無電解銅めっき液に浸漬し、60℃で15分間無電解銅めっきを行った。
無電解銅めっき液A:硫酸銅を0.03mol/l、EDTAを0.05mol/l、PEG1000を0.1g/l、グリオキシル酸を0.2mol/l、2−2’ジビリジルを200mg/l含有し、水酸化カリウムにてpHを12.3に調整したもの。
無電解銅めっき液B:無電解銅めっき液Aでグリオキシル酸の代わりにホルマリン0.2mol/lを用いたもの。
【0027】
無電解銅めっき液A及び無電解銅めっき液Bを用いて得られためっき層と基板表面との密着力はいずれも1.0kgf/cm以上であった。密着力は、無電解めっき後に、めっき層から基板に達する切り込みを1cm幅で入れ、引っ張り試験機にてめっき被膜の付着強度を測定した。
【実施例2】
【0028】
下記組成の無電解めっき液を調製し、実施例1と同様にして表面処理したエポキシ樹脂製プリント用基板を下記液に浸漬し、60℃で15分間無電解銅めっきを行った。
無電解銅めっき液C:硫酸銅を0.03mol/l、EDTAを0.05mol/l、PEG1000を0.1g/l、グリオキシル酸を0.2mol/l、2−2’ジビリジルを10mg/l、エチレンジアミンを0.05mol/l含有し、水酸化カリウムにてpHを12.5に調整したもの。
無電解銅めっき液D:無電解銅めっき液Cでグリオキシル酸の代わりにホルマリン0.2mol/lを用いたもの。
【0029】
無電解銅めっき液C及び無電解銅めっき液Dを用いて得られためっき層と基板表面との密着力はいずれも1.0kgf/cm以上であった。
【実施例3】
【0030】
下記組成の無電解めっき液を調製し、実施例1と同様にして表面処理したポリイミド樹脂フレキシブルプリント用基板(25×100mm)を下記液に浸漬し、60℃で15分間無電解銅めっきを行った。
無電解銅めっき液E:硫酸銅を0.03mol/l、EDTAを0.05mol/l、PEG1000を0.1g/l、グリオキシル酸を0.2mol/l、2−2’ジビリジル5mg/l、ジエチレントリアミンを0.03mol/l含有し、水酸化カリウムにてpHを12.5に調整したもの。
無電解銅めっき液F:無電解銅めっき液Eでグリオキシル酸の代わりにホルマリン0.2mol/lを用いたもの。
【0031】
無電解銅めっき液E及び無電解銅めっき液Fを用いて得られためっき層と基板表面との密着力はいずれも1.0kgf/cm以上であった。
【実施例4】
【0032】
下記組成の無電解めっき液を調製し、実施例1と同様にして表面処理したウレタン樹脂プリント用基板を下記液に浸漬し、60℃で15分間無電解銅めっきを行った。
無電解銅めっき液G:硫酸銅を0.03mol/l、EDTAを0.05mol/l、PEG1000を0.1g/l、グリオキシル酸を0.2mol/l、トリエチレンテトラミンを0.03mol/l含有し、水酸化カリウムにてpHを12.3に調整したもの。
無電解銅めっき液H:無電解銅めっき液Gでグリオキシル酸の代わりにホルマリン0.2 mol/lを用いたもの。
【0033】
無電解銅めっき液G及び無電解銅めっき液Hを用いて得られためっき層と基板表面との密着力はいずれも1.0kgf/cm以上であった。
【実施例5】
【0034】
下記組成の無電解めっき液を調製し、実施例1と同様にして表面処理したポリイミド樹脂フレキシブルプリント用基板(25×100mm)を下記液に浸漬し、60℃で15分間無電解銅めっきを行った。
無電解銅めっき液I:硫酸銅を0.03mol/l、EDTAを0.05mol/l、PEG1000を0.1g/l、グリオキシル酸を0.2mol/l、テトラエチレンペンタミンを0.02mol/l含有し、水酸化カリウムにてpHを12.5に調整したもの。
無電解銅めっき液J:無電解銅めっき液Iでグリオキシル酸の代わりにホルマリン0.2mol/lを用いたもの。
【0035】
無電解銅めっき液I及び無電解銅めっき液Jを用いて得られためっき層と基板表面との密着力はいずれも1.0kgf/cm以上であった。
【実施例6】
【0036】
下記組成の無電解めっき液を調製し、実施例1と同様にして表面処理したABS樹脂プリント用基板を下記液に浸漬し、65℃で15分間無電解銅めっきを行った。
無電解銅めっき液K:硫酸銅を0.03mol/l、EDTAを0.05mol/l、PEG1000を0.1g/l、グリオキシル酸を0.2mol/l、2−2’ジビリジルを10mg/l、ペンタエチレンヘキサアミンを0.02mol/l含有し、水酸化カリウムにてpHを12.5に調整したもの。
無電解銅めっき液L:無電解銅めっき液Kでグリオキシル酸の代わりにホルマリン0.2mol/lを用いたもの。
【0037】
無電解銅めっき液K及び無電解銅めっき液Lを用いて得られためっき層と基板表面との密着力はいずれも1.0kgf/cm以上であった。
【実施例7】
【0038】
下記組成の無電解めっき液を調製し、実施例1と同様にして表面処理したエポキシ樹脂プリント用基板(25×100mm)を用い、下記液に浸漬し、60℃で15分間無電解銅めっきを行った。
無電解銅めっき液M:硫酸銅を0.03mol/l、EDTAを0.05mol/l、PEG1000を0.1g/l、グリオキシル酸を0.2mol/l、ジフェニルカルバジドを0.02mol/l含有し、水酸化カリウムにてpHを12.5に調整したもの。
無電解銅めっき液N:無電解銅めっき液Mでグリオキシル酸の代わりにホルマリン0.2mol/lを用いたもの。
【0039】
無電解銅めっき液M及び無電解銅めっき液Nを用いて得られためっき層と基板表面との密着力はいずれも1.0kgf/cm以上であった。
【実施例8】
【0040】
下記組成の無電解めっき液を調製し、実施例1と同様にして表面処理した液晶ポリマープリント用基板(25×100mm)を用い、下記液に浸漬し、60℃で15分間無電解銅めっきを行った。
無電解銅めっき液O:硫酸銅を0.03mol/l、EDTAを0.05mol/l、PEG1000を0.1g/l、グリオキシル酸を0.2mol/l、テトラメチルチオ尿素を0.02mol/l含有し、水酸化カリウムにてpHを12.5に調整したもの。
無電解銅めっき液P:無電解銅めっき液Oでグリオキシル酸の代わりにホルマリン0.2mol/lを用いたもの。
【0041】
無電解銅めっき液O及び無電解銅めっき液Pを用いて得られためっき層と基板表面との密着力はいずれも1.0kgf/cm以上であった。
〔比較例1〕
【0042】
下記組成の無電解めっき液を調製し、実施例1と同様にして表面処理したABS製プリント用基板(25×100mm)を下記液に浸漬し、60℃で15分間無電解銅めっきを行った。
無電解銅めっき液Q:硫酸銅を0.03mol/l、EDTAを0.05mol/l、PEG1000を0.1g/l、グリオキシル酸を0.2mol/l、2−2’ジビリジルを10mg/l含有し、水酸化カリウムにてpHを12.3に調整したもの。
無電解銅めっき液R:無電解銅めっき液Qでグリオキシル酸の代わりにホルマリン0.2mol/lを用いたもの。
【0043】
無電解銅めっき液Q及び無電解銅めっき液Rを用いて得られためっき層と基板表面との密着力はいずれも0.4kgf/cm程度であった。
〔比較例2〕
【0044】
下記組成の無電解めっき液を調製し、実施例1と同様にして表面処理したABS製プリント用基板(25×100mm)を下記液に浸漬し、60℃で15分間無電解銅めっきを行った。
無電解銅めっき液S:硫酸銅を0.03mol/l、EDTAを0.05mol/l、PEG1000を0.1g/l、グリオキシル酸を0.2mol/l、2−2’ジビリジルを10mg/l、エチレンジアミンを0.001mol/l含有し、水酸化カリウムにてpHを12.5に調整したもの。
無電解銅めっき液T:無電解銅めっき液Sでグリオキシル酸の代わりにホルマリン0.2mol/lを用いたもの。
【0045】
無電解銅めっき液S及び無電解銅めっき液Tを用いて得られためっき層と基板表面との密着力はいずれも0.4kgf/cm程度であった。
【実施例9】
【0046】
実施例1で得られた無電解銅めっきを行ったABS樹脂プリント用基板上に、荏原ユージライト社製の添加剤UBAC-EPを4ml/l添加した一般的な市販の硫酸銅めっき液を用いて厚さ20μmに電気銅めっきを行った。得られためっき層と基板表面との密着力は1.0kgf/cm以上であった。
【実施例10】
【0047】
実施例1で得られた無電解銅めっきを行ったABS樹脂プリント用基板上に、さらに市販の高速無電解銅めっき液を用いて厚さ20μmに高速無電解めっきを行った。得られためっき層と基板表面との密着力は1.0kgf/cm以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の無電解銅めっき被膜形成方法によって得られた、めっきされた不導体製品は、不導体製品の表面とめっき層とが強固に結合しており、平滑な表面層を有しているので、高い精密性が求められる、車輌、情報機器、事務機器、装飾品等に有効に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】ABS樹脂に対して表面改質した後、無電解めっきを施した際、改質層に対するめっき金属の析出状態を示す模式図であり、(a)は無電解ニッケルめっきを施したものであり、(b)は無電解銅めっきを施したものであり、密着力の相違とアンカー効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解銅めっき液に、通常の使用量の10倍程度の濃度である50mg/l〜10g/lとなるように1価の銅の安定剤を添加し、pH11〜13、温度20〜70℃で無電解銅めっきを行うことを特徴とする無電解銅めっき被膜形成方法。
【請求項2】
1価の銅の安定剤が、2−2’ジピリジル、アゾ染料及びチオ尿素のうちから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載の無電解銅めっき被膜形成方法。
【請求項3】
アゾ染料がジフェニルカルバジドであることを特徴とする請求項2記載の無電解銅めっき被膜形成方法。
【請求項4】
チオ尿素がテトラメチルチオ尿素であることを特徴とする請求項2記載の無電解銅めっき被膜形成方法。
【請求項5】
無電解銅めっき液に、通常の使用量の10倍程度の濃度である0.01〜0.1mol/lとなるようにアミン系の錯化剤を添加し、pH11〜13、温度20〜70℃で無電解銅めっきを行うことを特徴とする無電解銅めっき被膜形成方法。
【請求項6】
アミン系錯化剤が、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミンのうちから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項5記載の無電解銅めっき被膜形成方法。
【請求項7】
さらに、電気めっきを行うことを特徴とする請求項1又は5記載の無電解銅めっき被膜形成方法。
【請求項8】
さらに、無電解めっきを行うことを特徴とする請求項1又は5記載の無電解銅めっき被膜形成方法。
【請求項9】
無電解めっきが高速無電解銅めっきであることを特徴とする請求項8記載の無電解銅めっき被膜形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−63652(P2007−63652A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254254(P2005−254254)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(502273096)株式会社関東学院大学表面工学研究所 (52)
【Fターム(参考)】