焦点検出装置および撮像装置
【課題】被写体の輝度が低い場合でも、精度良く焦点検出することができる焦点検出装置を提供する。
【解決手段】光学系による像面内の複数位置に設定された複数の焦点検出位置に対応する光束を受光して受光信号を出力する受光手段161dと、前記受光信号に基づいて、前記光学系の焦点状態を検出する焦点検出手段163と、被写体に照明光を照射する照射手段140と、前記照射手段140により前記照明光を照射した際に得られる前記受光信号に基づいて、前記複数の焦点検出位置を複数のグループに分類する第1分類手段170と、前記複数のグループのうち、少なくとも1つのグループに含まれる焦点検出位置に対する前記焦点状態に基づいて、前記グループに含まれる焦点検出位置を分類する第2分類手段170と、を備えることを特徴とする焦点検出装置。
【解決手段】光学系による像面内の複数位置に設定された複数の焦点検出位置に対応する光束を受光して受光信号を出力する受光手段161dと、前記受光信号に基づいて、前記光学系の焦点状態を検出する焦点検出手段163と、被写体に照明光を照射する照射手段140と、前記照射手段140により前記照明光を照射した際に得られる前記受光信号に基づいて、前記複数の焦点検出位置を複数のグループに分類する第1分類手段170と、前記複数のグループのうち、少なくとも1つのグループに含まれる焦点検出位置に対する前記焦点状態に基づいて、前記グループに含まれる焦点検出位置を分類する第2分類手段170と、を備えることを特徴とする焦点検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点検出装置および撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、焦点検出エリアに対して得られるデフォーカス量に基づいて、複数の焦点検出エリアを複数のグループに分け、複数のグループの中から主要被写体に対応するグループを選択し、選択されたグループに属する複数の焦点検出エリアの中から、焦点調節に用いるための焦点検出エリアを決定する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−65206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、被写体に対する焦点状態を適切に検出するために、デフォーカス量の信頼性が高い焦点検出エリアのみをグループ分けの対象とするものであり、被写体の輝度が低い場合には、信頼性が高いデフォーカス量を得ることが困難となり、グループ分けの対象から多くの焦点検出エリアが除かれてしまい、結果として、被写体に対する焦点検出精度が不十分となる場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、被写体の輝度が低い場合でも、精度良く焦点検出することができる焦点検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下の解決手段によって上記課題を解決する。なお、発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、この符号は発明の理解を容易にするためだけのものであって発明を限定する趣旨ではない。
【0007】
[1]本発明に係る焦点検出装置は、光学系による像面内の複数位置に設定された複数の焦点検出位置に対応する光束を受光して受光信号を出力する受光手段(161d)と、前記受光信号に基づいて、前記光学系の焦点状態を検出する焦点検出手段(163)と、被写体に照明光を照射する照射手段(140)と、前記照射手段により前記照明光を照射した際に得られる前記受光信号に基づいて、前記複数の焦点検出位置を複数のグループに分類する第1分類手段(170)と、前記複数のグループのうち、少なくとも1つのグループに含まれる焦点検出位置に対する前記焦点状態に基づいて、前記グループに含まれる焦点検出位置を分類する第2分類手段(170)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
[2]上記焦点検出装置に係る発明において、前記第1分類手段(170)は、前記照明光の照射時の受光信号と非照射時の受光信号との差に応じて、前記複数の焦点検出位置を複数のグループに分類し、前記第2分類手段(170)は、前記複数グループのうち、前記差が大きいグループに属する焦点検出位置を、分類の対象とするように構成することができる。
【0009】
[3]上記焦点検出装置に係る発明において、前記第1分類手段(170)は、前記照射手段(140)により前記照明光を照射した際に得られる前記受光信号、および前記複数の焦点検出位置に対する前記焦点状態に基づいて、前記複数の焦点検出位置を複数のグループに分類するように構成することができる。
【0010】
[4]上記焦点検出装置に係る発明において、第1の判定基準を用いて、前記焦点検出手段(163)により検出された焦点状態の信頼性の判定を行うとともに、前記第1の判定基準よりも信頼性ありと判定されやすい第2の判定基準を用いて、前記第2分類手段(170)により分類の対象とされた焦点検出位置に対する焦点状態の信頼性の判定を行う判定手段(170)を備えるように構成することができる。
【0011】
[5]上記焦点検出装置に係る発明において、前記判定手段(170)は、前記照明光の種類に応じて、前記第2の判定基準を変更するように構成することができる。
【0012】
[6]上記焦点検出装置に係る発明において、前記判定手段(170)は、前記光が均一な強度の光である場合には、前記光がコントラストを含む光である場合と比較して、前記第2の判定基準を、信頼性ありと判定されやすく設定するように構成することができる。
【0013】
[7]上記焦点検出装置に係る発明において、前記焦点検出手段(163)は、前記第1分類手段(170)による分類結果に応じて、前記焦点状態を再検出するように構成することができる。
【0014】
[8]上記焦点検出装置に係る発明において、前記複数の焦点検出位置のうち、所定以上の明るさを有する第1の位置を抽出する抽出手段(170)と、前記第1の位置を除く第2の位置に対応した前記受光手段の受光信号に基づいて、前記受光手段(161d)の蓄積条件を決定する決定手段(162)と、を備え、前記焦点検出手段(163)は、前記決定手段で決定された蓄積条件で蓄積された受光信号に基づいて、前記再検出処理を行うように構成することができる。
【0015】
[9]本発明に係る撮像装置は、上記焦点検出装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被写体の輝度が低い場合でも、精度良く焦点検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本実施形態に係るカメラ1を示すブロック図である。
【図2】図2は、焦点検出モジュール161の構成例を示す図である。
【図3】図3は、撮像光学系の撮影画面内に設定された複数の焦点検出エリアの配置例を示す図である。
【図4】図4は、撮像光学系の撮影画面内に設定された複数の焦点検出エリアと焦点検出モジュール161のラインセンサ161dとの対応関係を説明するための図である。
【図5】図5は、第1実施形態に係るカメラ1の動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は、撮像光学系の撮影画面内で撮像された被写体の一場面例を示す図である。
【図7】図7は、図6に示す撮像光学系の撮影画面内で撮像された被写体と、撮像光学系の撮影画面内に設定された複数の焦点検出エリアとの対応関係の一例を示す図である。
【図8】図8は、第1実施形態に係るデフォーカス量演算処理を示すフローチャートである。
【図9】図9は、第1実施形態に係る自動選択AF処理を示すフローチャートである。
【図10】図10は、第2実施形態に係るカメラ1の動作を示すフローチャートである。
【図11】図11は、第2実施形態に係る再蓄積判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下においては、本発明を一眼レフデジタルカメラに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。ただし本発明は、銀塩フィルムカメラなどのその他の撮像装置にも適用することができる。
【0019】
≪第1実施形態≫
図1は、本実施形態に係る一眼レフデジタルカメラ1を示すブロック図であり、本発明の焦点検出装置および撮像装置に関する構成以外のカメラの一般的構成については、その図示と説明を一部省略する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の一眼レフデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラボディ100とレンズ鏡筒200とを備え、カメラボディ100とレンズ鏡筒200とは着脱可能に結合される。
【0021】
レンズ鏡筒200には、レンズ211,212,213、および絞り220を含む撮影光学系が内蔵されている。
【0022】
フォーカスレンズ212は、レンズ鏡筒200の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、エンコーダ260によってその位置が検出されつつレンズ駆動モータ230によってその位置が調節される。
【0023】
このフォーカスレンズ212の光軸L1に沿う移動機構の具体的構成は特に限定されない。一例を挙げれば、レンズ鏡筒200に固定された固定筒に回転可能に回転筒を挿入し、この回転筒の内周面にヘリコイド溝(螺旋溝)を形成するとともに、フォーカスレンズ212を固定するレンズ枠の端部をヘリコイド溝に嵌合させる。そして、レンズ駆動モータ230によって回転筒を回転させることで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ212が光軸L1に沿って直進移動することになる。なお、レンズ鏡筒200にはフォーカスレンズ212以外のレンズ211,213が設けられているが、ここではフォーカスレンズ212を例に挙げて本実施形態を説明する。
【0024】
上述したようにレンズ鏡筒200に対して回転筒を回転させることによりレンズ枠に固定されたフォーカスレンズ212は光軸L1方向に直進移動するが、その駆動源としてのレンズ駆動モータ230がレンズ鏡筒200に設けられている。レンズ駆動モータ230と回転筒とは、たとえば複数の歯車からなる変速機で連結され、レンズ駆動モータ230の駆動軸を何れか一方向へ回転駆動すると所定のギヤ比で回転筒に伝達され、そして、回転筒が何れか一方向へ回転することで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ212が光軸L1の何れかの方向へ直進移動することになる。なお、レンズ駆動モータ230の駆動軸が逆方向に回転駆動すると、変速機を構成する複数の歯車も逆方向に回転し、フォーカスレンズ212は光軸L1の逆方向へ直進移動することになる。
【0025】
フォーカスレンズ212の位置はエンコーダ260によって検出される。既述したとおり、フォーカスレンズ212の光軸L1方向の位置は回転筒の回転角に相関するので、たとえばレンズ鏡筒200に対する回転筒の相対的な回転角を検出すれば、その位置を求めることができる。
【0026】
本実施形態のエンコーダ260としては、回転筒の回転駆動に連結された回転円板の回転をフォトインタラプタなどの光センサで検出して、回転数に応じたパルス信号を出力するものや、固定筒と回転筒の何れか一方に設けられたフレキシブルプリント配線板の表面のエンコーダパターンに、何れか他方に設けられたブラシ接点を接触させ、回転筒の移動量(回転方向でも光軸方向の何れでもよい)に応じた接触位置の変化を検出回路で検出するものなどを用いることができる。
【0027】
絞り220は、上記撮影光学系を通過して、カメラボディ100に備えられた撮像素子110に至る光束の光量を制限するとともにボケ量を調整するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能に構成されている。絞り220による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された適切な開口径が、カメラ制御部170からレンズ制御部250を介して絞り駆動部240へ送信されることにより行われる。また、開口径の調節は、カメラボディ100に設けられた操作部150を介したマニュアル操作により、設定された開口径がカメラ制御部170からレンズ制御部250を介して絞り駆動部240へ送信されることによっても行われる。なお、絞り220の開口径は図示しない絞り開口センサにより検出され、レンズ制御部250で現在の開口径が認識される。
【0028】
一方、カメラボディ100は、被写体からの光束を撮像素子110、ファインダ135、測光センサ137および焦点検出モジュール161へ導くためのミラー系120を備える。このミラー系120は、回転軸123を中心にして被写体の観察位置と撮像位置との間で所定角度だけ回転するクイックリターンミラー121と、このクイックリターンミラー121に軸支されてクイックリターンミラー121の回動に合わせて回転するサブミラー122とを備える。図1においては、ミラー系120が被写体の観察位置にある状態を実線で示し、被写体の撮像位置にある状態を二点鎖線で示す。
【0029】
ミラー系120は、被写体の観察位置にある状態では光軸L1の光路上に挿入される一方で、被写体の撮像位置にある状態では光軸L1の光路から退避するように回転する。
【0030】
クイックリターンミラー121はハーフミラーで構成され、被写体の観察位置にある状態では、被写体からの光束(光軸L1)の一部の光束(光軸L2,L3)を当該クイックリターンミラー121で反射してファインダ135および測光センサ137に導き、一部の光束(光軸L4)を透過させてサブミラー122へ導く。これに対して、サブミラー122は全反射ミラーで構成され、クイックリターンミラー121を透過した光束(光軸L4)を焦点検出モジュール161へ導く。
【0031】
したがって、ミラー系120が観察位置にある場合は、被写体からの光束(光軸L1)はファインダ135、測光センサ137および焦点検出モジュール161へ導かれ、撮影者により被写体が観察されるとともに、露出演算やフォーカスレンズ212の焦点調節状態の検出が実行される。そして、撮影者がレリーズボタンを全押しするとミラー系120が撮影位置に回動し、被写体からの光束(光軸L1)は全て撮像素子110へ導かれ、撮影した画像データを図示しないメモリに保存する。
【0032】
クイックリターンミラー121で反射された被写体からの光束(光軸L2)は、撮像素子110と光学的に等価な面に配置された焦点板131に結像し、ペンタプリズム133と接眼レンズ134とを介して観察可能になっている。このとき、透過型液晶表示器132は、焦点板131上の被写体像に焦点検出エリアマークなどを重畳して表示するとともに、被写体像外のエリアにシャッター速度、絞り値、撮影枚数などの撮影に関する情報を表示する。これにより、撮影者は、撮影準備状態において、ファインダ135を通して被写体およびその背景ならびに撮影関連情報などを観察することができる。
【0033】
測光センサ137は、二次元カラーCCDイメージセンサなどで構成され、撮影の際の露出値を演算するため、撮影画面を複数の領域に分割して領域ごとの輝度に応じた測光信号を出力する。測光センサ137で検出された信号はカメラ制御部170へ出力され、自動露出制御に用いられる。
【0034】
AF照明光発光部140は、測光センサ137の出力に基づいて、カメラ制御部170からの制御信号によって制御される。AF照明光発光部140により照射される照明光は、例えば、全体に均一の強度を有する照明光であってもよいし、所定のコントラストパターンを有する照明光であってもよく、その種類は特に限定されない。
【0035】
操作部150は、例えば、シャッターレリーズボタン、およびカメラ1の各種動作モードを設定するためのモード設定スイッチなどを備えており、操作部150により、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換や、オートフォーカスモードのうち焦点調節に用いるための焦点検出エリアを自動で選択する自動選択AFモードを選べるようになっている。また、シャッターレリーズボタンのスイッチは、ボタンの半押しでONとなる第1スイッチSW1と、ボタンの全押しでONとなる第2スイッチSW2とを含む。
【0036】
焦点検出モジュール161は、被写体光を用いた位相差検出方式による自動合焦制御を実行するための焦点検出素子であり、サブミラー122で反射した光束(光軸L4)の、撮像素子110の撮像面と光学的に等価な位置に固定されている。
【0037】
図2は、図1に示す焦点検出モジュール161の構成例を示す図である。本実施形態の焦点検出モジュール161は、コンデンサレンズ161a、一対の開口が形成された絞りマスク161b、一対の再結像レンズ161cおよび一対のラインセンサ161dを有する。また、図示していないが、本実施形態のラインセンサ161dは、撮像光学系の予定焦点面近傍に配置されたマイクロレンズと、このマイクロレンズに対して配置された光電変換素子とを有する画素が複数配列された画素列を備えている。フォーカスレンズ212の射出瞳の異なる一対の領域を通る一対の光束を、一対のラインセンサ161dに配列された各画素で受光することで、一対の像信号を取得することができる。そして、一対のラインセンサ161dで取得した一対の像信号の位相ずれを、後述する周知の相関演算によって求めることにより焦点調節状態を検出することができる。
【0038】
例えば、図2に示すように、被写体Pが撮像素子110の等価面(予定結像面)161eで結像すると合焦状態となるが、フォーカスレンズ212が光軸L1方向に移動することで、結像点が等価面161eより被写体側にずれたり(前ピンと称される)、カメラボディ側にずれたりすると(後ピンと称される)、ピントずれの状態となる。
【0039】
なお、被写体Pの結像点が等価面161eより被写体側にずれると、一対のラインセンサ161dで検出される一対の像信号の間隔Wが、合焦状態の間隔Wと比べて短くなり、逆に被写体Pの結像点がカメラボディ100側にずれると、一対のラインセンサ161dで検出される一対の像信号の間隔Wが、合焦状態の間隔Wに比べて長くなる。
【0040】
すなわち、合焦状態では一対のラインセンサ161dで検出される像信号が、それぞれのラインセンサ161dの中心に対して重なるが、非合焦状態ではラインセンサ161dの中心に対して像信号がずれ、すなわち位相差が生じるので、この位相差(ずれ量)に応じた量だけフォーカスレンズ212を移動させることでピントを合わせることができる。
【0041】
ここで、撮影光学系の撮影画面50内に設定された複数の焦点検出エリアの配置例を図3に示す。図3に示すように、撮影光学系の撮影画面50内には複数の焦点検出エリアAFPが設定されており、本実施形態において、焦点検出モジュール161には、各焦点検出エリアAFPに対応して、後述するように、一対のラインセンサ161dが複数備えられており、これにより、各焦点検出エリアAFPにおける像信号を取得できるようになっている。本実施形態では、図3にAFP1〜51で示すように、51点の焦点検出エリアAFPが設けられ、それぞれの位置が撮像素子110の撮像範囲の所定位置に対応している。なお、焦点検出エリアAFPの個数および配置は、図3に示す態様に限定されるものではない。
【0042】
また、撮影光学系の撮影画面50内に設定された複数の焦点検出エリアと、焦点検出モジュール161のラインセンサ161dとの対応関係を図4に示す。図4に示すように、本実施形態では、ラインセンサ161d1〜161d11の合計11個のラインセンサを備え、ラインセンサ161d1がAFP1〜5に対応して設けられており、ラインセンサ161d2がAFP6〜10に対応して設けられており、同様に、ラインセンサ161d3〜161d11がAFP11〜51にそれぞれ対応して設けられている。なお、各ラインセンサ161d1〜161d11はそれぞれ一対(2個)のラインセンサから構成されているが、図4においては、各ラインセンサ161d1〜161d11を構成する一対のラインセンサのうち一方のラインセンサのみを示している。さらに、図4に示すように、ラインセンサ161d10の各領域161d10a〜161d10cは、焦点検出エリアAFP46〜48に対応しており、ラインセンサ161d10の領域161d10aで光束を受光して得られた像信号はAFP47に対応する像信号として出力され、ラインセンサ161d10の領域161d10bで光束を受光して得られた像信号はAFP46に対応する像信号として出力され、ラインセンサ161d10の領域161d10cで光束を受光して得られた像信号はAFP48に対応する像信号として出力される。同様に、各一対のラインセンサ161d1〜161d9、161d11における各領域(不図示)も、焦点検出エリアAFP1〜45、49〜51にそれぞれ対応しており、各一対のラインセンサ161d3〜161d11の各領域で受光した像信号が各焦点検出エリアAFP1〜45、49〜51に対応する像信号として出力される。
【0043】
図1に戻り、AF−CCD制御部162は、オートフォーカスモードにおいて、焦点検出モジュール161のラインセンサ161dのゲインや蓄積時間などの蓄積条件を制御するものであり、焦点検出モジュール161に備えられた複数対のラインセンサ161dにて検出された像信号を各焦点検出エリアに対応させて読み出し、読み出した像信号をカメラ制御部170およびデフォーカス演算部163へ出力する。
【0044】
ここで、上述したように、焦点検出モジュール161の一対のラインセンサ161dは、それぞれ複数の焦点検出エリアAFPに対応するように設けられており、AF−CCD制御部162は、各一対のラインセンサ161dごとにゲインや蓄積時間などの蓄積条件を制御する。すなわち、同じ一対のラインセンサ161dに対応する複数の焦点検出エリアに対応する複数の像信号が、同じ蓄積条件で得られるようになっている。例えば、図4に示す例において、AFP46〜48は同じ一対のラインセンサ161d10に対応しているため、AF−CCD制御部162は、一対のラインセンサ161d10の蓄積条件を制御することで、AFP46〜48に対応する像信号を同じ蓄積条件で得ることになる。なお、ゲインや蓄積時間などの蓄積条件を制御する方法は特に限定されないが、例えば、図4に示す例において、AF−CCD制御部162は、ラインセンサ161d10の各領域161d10a〜161d10cから得た像信号に基づいて、AFP46〜48にそれぞれ対応する像信号の輝度を判断し、AFP46〜48にそれぞれ対応する像信号の輝度うち最も高い像信号の輝度に応じて、このラインセンサ161d10のゲインおよび蓄積時間を制御する方法が挙げられる。
【0045】
デフォーカス演算部163は、AF−CCD制御部162から送られてきた各焦点検出エリアに対応した一対の像信号のずれ量をデフォーカス量に変換し、これをレンズ駆動量演算部164へ出力する。
【0046】
レンズ駆動量演算部164は、デフォーカス演算部163から送られてきたデフォーカス量に基づいて、当該デフォーカス量に応じたレンズ駆動量Δdを演算し、これをレンズ駆動制御部165へ出力する。
【0047】
レンズ駆動制御部165は、レンズ駆動量演算部164から送られてきたレンズ駆動量Δdに基づいて、レンズ駆動モータ230を駆動し、フォーカスレンズ212の位置を調整する。
【0048】
撮像素子110は、カメラボディ100の、被写体からの光束の光軸L1上であって、レンズ211,212,213を含む撮影光学系の予定焦点面に設けられ、その前面にシャッター111が設けられている。この撮像素子110は、複数の光電変換素子が二次元に配置されたものであって、二次元CCDイメージセンサ、MOSセンサまたはCIDなどのデバイスから構成することができる。撮像素子110で光電変換された画像信号は、カメラ制御部170で画像処理されたのち図示しないメモリに保存される。なお、撮影画像を格納するメモリは内蔵型メモリやカード型メモリなどで構成することができる。
【0049】
カメラ制御部170はマイクロプロセッサとメモリなどの周辺部品から構成され、撮像素子110から画像信号を読み出すとともに、必要に応じて所定の情報処理を施し、図示しないメモリに出力する。この他にも、カメラ制御部170は、撮影画像情報の補正、レンズ鏡筒200の焦点調節状態の検出、および絞り調節状態の検出など、カメラ1全体の制御を司る。
【0050】
さらに、本実施形態において、カメラ制御部170は、測光センサ137からの出力に基づいて、AF照明光発光部140による焦点検出用の照明光の照射の制御を行う。また、カメラ制御部170は、後述するように、焦点検出用の照明光を照射している状態における像信号の輝度と焦点検出用の照明光を照射していない状態における像信号の輝度との差に基づく焦点検出エリアのグループ分け(1段目のグループ分け)や、焦点検出エリアのデフォーカス量に基づく焦点検出エリアのグループ分け(2段目のグループ分け)を行う。
【0051】
次に、図5を参照して、本実施形態に係るカメラ1の動作例を説明する。図5は、本実施形態に係るカメラ1の動作を示すフローチャートである。なお、以下においては、オートフォーカスモードのうち、焦点調節に用いるための焦点検出エリアを自動で選択する自動選択AFモードが選択されている場合を例示して説明する。
【0052】
まず、ステップS101で、カメラ制御部170により、電源がオンであり、かつ、オートフォーカスモードのうち自動選択AFモードが選択されていることが確認された上で、ステップS102に進み、焦点検出モジュール161のラインセンサ161dによる電荷の蓄電が行われる。ラインセンサ161dで蓄電された信号情報は、AF−CCD制御部162により、撮像光学系の撮影画面50内に設定された各焦点検出エリアに対応して読み出され、カメラ制御部170に出力される。なお、本実施形態では、AF−CCD制御部162により、各一対のラインセンサ161d1〜161d11ごとに、蓄積条件が制御される。すなわち、各一対のラインセンサ161d1〜161d11のそれぞれに対応する複数の焦点検出エリアに対応して得られた複数の像信号の輝度のうち、最も高い像信号の輝度に応じて、ラインセンサ161dの蓄積条件が制御される。
【0053】
ステップS103では、カメラ制御部170により、シャッターレリーズボタンの半押し(第1スイッチSW1のオン)がされたか否か判断される。第1スイッチSW1がオンであると判断された場合はステップS104に進み、第1スイッチSW1がオンではないと判断された場合はステップS101に戻り、第1スイッチSW1がオンされるまで、焦点検出モジュール161のラインセンサ161dによる蓄電と、蓄積された信号情報の出力とが、繰り返し行われる。
【0054】
次に、ステップS104では、カメラ制御部170により、測光センサ137からの出力に基づいて、被写体の輝度値が所定値未満であるか否か判断される。被写体の輝度値が所定値未満であると判断された場合は、被写体の輝度が焦点状態を検出するために十分ではないと判断され、焦点検出用の照明光を照射するために、ステップS105に進み、一方、被写体の輝度が所定値以上であると判断された場合は、ステップS111に進む。
【0055】
ステップS105では、被写体の輝度が焦点状態を検出するために十分ではないと判断されているため、カメラ制御部170からAF照明光発光部140に対し、焦点検出用の照明光を照射するよう制御信号が送出され、AF照明光発光部140により焦点検出用の照明光の照射が開始される。そして、続くステップS106では、AF照明光発光部140により焦点検出用の照明光が照射されている状態で、焦点検出モジュール161のラインセンサ161dによる電荷の蓄電が行われる。ラインセンサ161dで蓄電された信号情報は、AF−CCD制御部162により、撮像光学系の撮影画面50内に設定された各焦点検出エリアAFPに対応して読み出され、カメラ制御部170およびデフォーカス演算部163へと出力される。そして、ステップS107に進み、AF照明光発光部140による焦点検出用の照明光の照射が終了される。なお、ステップS106においては、焦点検出用の照明光が照射されている状態で得られた測光センサ137の出力に基づいて、AF−CCD制御部162により、ゲインや蓄積時間など蓄積条件が制御される。
【0056】
ステップS108では、カメラ制御部170により、後述するように、焦点検出用の照明光を照射している状態で得られた像信号の輝度と、焦点検出用の照明光を照射していない状態で得られた像信号の輝度とが比較される。そして、続くステップS109では、ステップS108の比較結果に基づいて、撮像光学系の撮影画面内に設定された複数の焦点検出エリアが、被写体領域グループSGと背景領域グループBGとに分類される(1段目のグループ分け)。ここで、ステップS109では、撮像光学系の撮影画面内に設定された複数の焦点検出エリアのうち、焦点検出用の照明光の照射範囲に存在する被写体に対応する焦点検出エリアが、被写体領域グループSGに分類され、焦点検出用の照明光の照射範囲に被写体が存在しない領域、すなわち背景に対応する焦点検出エリアが、背景領域グループBGに分類される。
【0057】
具体的には、ステップS108では、ステップS102において焦点検出用の照明光を照射していない状態(照明光非照射時)で得られた焦点検出エリアに対応する像信号と、ステップS106において焦点検出用の照明光を照射している状態(照明光照射時)で得られた焦点検出エリアに対応する像信号とに基づいて、照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度と照明光照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度との差が、所定値S以上であるか否か判断される。そして、ステップS109において、照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度と照明光照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度との差が所定値S以上である焦点検出エリアは、焦点検出用の照明光の照射範囲に存在する被写体に対応する焦点検出エリアであると判断され、被写体領域グループSGに分類される。一方、照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度と照明光照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度との差が所定値S未満である焦点検出エリアは、焦点検出用の照明光の照射範囲に被写体が存在せず、背景に対応する焦点検出エリアであると判断され、背景領域グループBGに分類される。
【0058】
ここで、図6は、撮像光学系の撮影画面50内で撮像された被写体の一場面例を示す図であり、図7は、図6に示す撮像光学系の撮影画面50内で撮像された被写体と撮像光学系の撮影画面50内に設定された複数の焦点検出エリアとの対応関係の一例を示す図である。なお、図6および図7においては、撮像光学系の撮影画面50内に、第1被写体(人物)と第2被写体(樹木)が撮像された場面を例示している。例えば、図6および図7に示す例において、図6に示す第1被写体および第2被写体が、焦点検出用の照明光の照射範囲に存在する場合、ステップS105において焦点検出用の照射光の照射が開始されることで、図6に示す第1被写体および第2被写体が照射光により照射されることになる。そのため、図7に示すように、第1被写体に対応する焦点検出エリアAFP1,3,5,6,8,10、および第2被写体に対応する焦点検出エリアAFP4,12,14,21〜25,32,34,44については、ステップS102で得られた照明光非照射時の焦点検出エリアAFPに対応する像信号の輝度と、ステップS106で得られた照明光照射時の焦点検出エリアAFPに対応する像信号の輝度との差が所定値S以上と判断され、被写体領域グループSGに分類されることになる。一方、第1被写体および第2被写体以外の領域、すなわち背景に対応する焦点検出エリアAFP2,7,9,11,13,15〜20,26〜31,33,35〜43,45〜51については、照射光が照射可能な領域に被写体が存在せず、ステップS105において焦点検出用の照射光の照射が開始されても、得られる像信号の輝度は照明光の照射開始前後で変わらないため、ステップS102で得られた照明光非照射時の焦点検出エリアAFPに対応する像信号の輝度と、ステップS106で得られた照明光照射時の焦点検出エリアAFPに対応する像信号の輝度との差が所定値S未満と判断され、背景領域グループBGに分類されることになる。
【0059】
次に、ステップS110では、ステップS109で分類されたグループごとに、焦点検出エリアのデフォーカス量を演算するデフォーカス量演算処理が行われる。以下において、図8を参照して、ステップS110のデフォーカス量演算処理について説明する。図8は、本実施形態に係るデフォーカス量演算処理を示すフローチャートである。
【0060】
まず、ステップS201では、デフォーカス演算部163により、被写体領域グループSGに属する各焦点検出エリアに対応して検出された一対の像信号に基づいて、位相差検出方式による像ズレ量が演算され、被写体領域グループSGに属する各焦点検出エリアのデフォーカス量が算出される。
【0061】
ここで、デフォーカス量演算処理(相関演算処理)の一例を簡単に説明する。
【0062】
各焦点検出エリアに対応する一対のラインセンサ161dは、それぞれ複数の光電変換画素から構成されており、複数の出力信号列a[1],...,a[n]、b[1],...b[n]を出力する。そして、この一対の出力信号列の内の、所定範囲のデータを相対的に所定のデータ分kずつシフトしながら相関演算を行う。
C(k)=Σ|a(n+k)−b(n)| …(1)
なお、上記式(1)において、Σ演算はnについての累積演算(相和演算)を示し、像ずらし量kに応じてa(n+k)、b(n)のデータが存在する範囲に限定される。また、像ずらし量kは整数であり、ラインセンサ161dに配列された画素列の画素間隔を単位としたシフト量である。なお、上記式(1)の演算結果においては、一対のデータの相関が高いシフト量kにおいて、相関量C(k)は極小(小さいほど相関度が高い)になる。
【0063】
次に、以下の下記式(2)〜(5)に示す3点内挿の手法を用いて、連続的な相関量に対する極小値C(x)を与えるシフト量xを求める。なお、下記式に示すC(kj)は、上記式(1)で得られた相関量C(k)のうち最も小さい値である。
D={C(kj−1)−C(kj+1)}/2 …(2)
C(x)= C(kj)−|D| …(3)
x=kj+D/SLOP …(4)
SLOP=MAX{C(kj+1)−C(kj),C(kj−1)−C(kj)} …(5)
【0064】
そして、デフォーカス量dfは上記シフト量xから次式によって算出される。
df=Kf・x …(6)
なお、上記式(6)において、Kfはラインセンサ161dの光電変換画素のピッチ幅によって定まる定数である。
【0065】
このように得られたデフォーカス量は、カメラ制御部170に出力され、カメラ制御部170により、信頼性があるか否か判定される。デフォーカス量の信頼性の判定は、下記式(7)〜(9)に示す条件を満たすか否かで判定される。
C(x)<C1 …(7)
SLOP>E1 …(8)
C(x)/SLOP<G1 …(9)
上記式(7)〜(9)において、C1、E1、G1はそれぞれデフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値である。一対の像信号の相関度が低い場合は、内挿された相関量の極小値C(x)の値が大きくなる。したがって、極小値C(x)が所定の判定基準値C1未満の場合は、算出されたデフォーカス量の信頼性は高いものと判定される。また、SLOPはコントラストに比例した値となるため、SLOPが所定の判定基準値E1よりも大きい場合は、被写体が高コントラストであり、算出されたデフォーカス量の信頼性が高いものと判定される。さらに、C(x)を像信号のコントラストで規格化するために、コントラストに比例した値となるSLOPでC(x)を除した値が所定の判定基準値G1未満の場合、算出されたデフォーカス量の信頼性が高いものと判定される。
【0066】
なお、一対の像信号の相関度が低く、シフト範囲で相関量C(k)の落ち込みがない場合は、極小値C(x)を求めることができず、このような場合は焦点検出不能と判定される。
【0067】
このように、ステップS201においては、被写体領域グループSGに属する各焦点検出エリアのデフォーカス量が算出され、算出されたデフォーカス量の信頼性が判定される。なお、信頼性ありと判定されたデフォーカス量に対応する焦点検出エリアは、後述するように、ステップS205において焦点検出エリアを再分類する際や、ステップS301において焦点検出エリアを複数のデフォーカス量グループに分類(2段目のグループ分け)する際に用いられることになる。
【0068】
続くステップS202では、カメラ制御部170により、被写体領域グループSGに属する全ての焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出されたか否か判断される。被写体領域グループSGに属する全ての焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出されたと判断された場合は、ステップS203に進み、一方、被写体領域グループSGに属する全ての焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出されていないと判断された場合は、被写体領域グループSGに属する全ての焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出されるまで、デフォーカス量の算出が繰り返される。
【0069】
次いで、ステップS203では、カメラ制御部170により、背景領域グループBGに属する各焦点検出エリアについて、ステップS201と同様に、デフォーカス量が算出されるとともに、算出されたデフォーカス量の信頼性が判定され、信頼性ありと判定されたデフォーカス量がカメラ制御部170に出力される。そして、ステップS204では、ステップS202と同様に、背景領域グループBGに属する全ての焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出されたか否か判断される。そして、背景領域グループBGに属する全ての焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出されたと判断された場合は、ステップS205に進み、一方、背景領域グループBGに属する全ての焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出されていないと判断された場合は、背景領域グループBGに属する全ての焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出されるまで、デフォーカス量の算出が繰り返される。なお、ステップS201およびステップS203は並行して行ってもよいし、ステップS203をステップS201よりも先に行ってもよい。
【0070】
ステップS205では、ステップS201およびステップS203で算出された各焦点検出エリアのデフォーカス量に基づいて、焦点検出エリアが、被写体領域グループSGまたは背景領域グループBGに再分類される。焦点検出エリアのデフォーカス量に基づいて、焦点検出エリアを、被写体領域グループSGと背景領域グループBGとに再分類する方法は特に限定されないが、例えば、被写体領域グループSG(または背景領域グループBG)に分類された複数の焦点検出エリアのデフォーカス量の平均値を求めて、被写体領域グループSG(または背景領域グループBG)に属す売る焦点検出エリアのデフォーカス量と、算出されたデフォーカス量の平均値との差が所定値以上である場合に、この焦点検出エリアを、被写体領域グループSG(または背景領域グループBG)から背景領域グループBG(または被写体領域グループSG)に再分類する構成としてもよい。
【0071】
これにより、例えば、撮影者による手ぶれなどにより、同一の焦点検出エリアに対応する像信号が、ステップS102における照明光非照射時に得られた像信号と、ステップS106における照明光照射時に得られた像信号とで、異なる被写体に対応するものとなった場合など、照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度と照明光照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度との差だけでは、焦点検出エリアを適切に分類できない場合であっても、各焦点検出エリアのデフォーカス量に基づいて、焦点検出エリアを被写体領域グループSGまたは背景領域グループBGに再分類することで、各焦点検出エリアを被写体領域グループSGと背景領域グループBGとに適切に分類することができる。
【0072】
図5に戻り、ステップS112では、焦点調節に用いるための焦点検出エリアを選択する自動選択AF処理が行われる。以下において、図9を参照して、ステップS112の自動選択AF処理について説明する。図9は、本実施形態に係る自動選択AF処理を示すフローチャートである。
【0073】
まず、ステップS301では、カメラ制御部170により、被写体領域グループSGに対応する複数の焦点検出エリアが、これら焦点検出エリアのデフォーカス量に基づいて、さらに複数のデフォーカス量グループに分類される(2段目のグループ分け)。また、本実施形態では、焦点検出エリアをデフォーカス量グループに適切に分類するため、デフォーカス量の信頼性を判定するための所定の判定基準値に基づいて信頼性ありと判定されたデフォーカス量に対応する焦点検出エリアのみが、デフォーカス量グループに分類される。以下においては、焦点検出エリアのデフォーカス量に基づいて、複数の焦点検出エリアを複数のデフォーカス量グループに分類する具体的な方法について、説明する。
【0074】
すなわち、まず、カメラ制御部170は、被写体領域グループSGに属する各焦点検出エリアのデフォーカス量Xi(i=1〜N)から、デフォーカス量の集合の分散vを下記式(10)に従って、算出する。
v=Σ(Xi−Xave)2/N …(10)
上記式(10)において、XaveはN個のデフォーカス量の平均値であり、Σはi=1〜Nの総和を表す。また、撮影画面50内の51個全ての焦点検出エリアAFPで、デフォーカス量が検出されるとは限らず、焦点状態の検出が不能な焦点検出エリアがある場合や、デフォーカス量が得られても信頼性判定の結果、信頼性なしとされる場合もある。そのため、本実施形態では、デフォーカス量の集合の分散vを、これらを除いたN個の焦点検出エリアAFPのデフォーカス量に基づき、上記式(10)に従って算出する。
【0075】
次いで、N個のデフォーカス量の集合のバラツキ度合いを表す量としての標準偏差σを下記式(11)に従って、算出する。
σ=√(v) …(11)
【0076】
そして、この集合のバラツキ度合いを表す標準偏差σを用いて、N個のデフォーカス量Xi(i=1〜N)をグループ分けするためのデフォーカス幅Hを下記式(12)により決定する。
H=α・σ …(12)
上記式(12)において、αは係数であり、通常は0.4〜0.6程度が適当である。
【0077】
次いで、上記にて得られたグループ分け用のデフォーカス幅Hを用いて次の手順で、デフォーカス量のグループ分けが行われる。まず、デフォーカス量の検出されたN個の焦点検出エリアAFPのデフォーカス量Xi(i=1〜N)を、値が小さい順、すなわち、至近側のデフォーカス量から順に並べる。そして、順に並べたデフォーカス量について、相前後するデフォーカス量の差が、グループ分け用のデフォーカス幅H以下である場合に、相前後するデフォーカス量は互いに同じデフォーカス量グループに属するものとし、その一方で、相前後するデフォーカス量の差が、グループ分け用のデフォーカス幅Hよりも大きい場合に、相前後するデフォーカス量は互いに別のデフォーカス量グループに属するものと判断する。
【0078】
例えば、図6および図7に示す例において、第1被写体(人物)までの撮影距離が短く、第2被写体(樹木)までの撮影距離が長い場合、被写体領域グループSGに属する各焦点検出エリアのデフォーカス量を並べると、第1被写体に対応する焦点検出エリアAFP(AFP1,3,5,6,8,10)のデフォーカス量、次いで、第2被写体に対応する焦点検出エリアAFP(AFP4,12,14,21〜25,32,34,44)のデフォーカス量の順に並ぶことになる。この場合において、第1被写体に対応する焦点検出エリアAFP(AFP1,3,5,6,8,10)のデフォーカス量と、第2被写体に対応する焦点検出エリアAFP(AFP4,12,14,21〜25,32,34,44)のデフォーカス量との間の差が、グループ分け用のデフォーカス幅Hより大きくなり、第1被写体に対応する焦点検出エリア(AFP1,3,5,6,8,10)と、第2被写体に対応する焦点検出エリア(AFP4,12,14,21〜25,32,34,44)とが異なるデフォーカス量グループに分類されることになる。
【0079】
次いで、ステップS302では、カメラ制御部170により、ステップS301でグループ分けされた複数のデフォーカス量グループのうちから、デフォーカス量グループの選択が行われる。デフォーカス量グループの選択方法としては、特に限定されず、周知の方法を適用することができるが、主要被写体を捕捉している可能性の高いデフォーカス量グループを選択するような方法が好ましく、たとえば、最も至近側のデフォーカス量グループを選択する方法や、撮影画面50内において、中央部分に位置する焦点検出エリアAFPを含むデフォーカス量グループを選択する方法などが挙げられる。
【0080】
例えば、図6および図7に示す例において、第1被写体(人物)までの撮影距離が短く、第2被写体(樹木)までの撮影距離が長い場合、第1被写体に対応するデフォーカス量グループおよび第2被写体に対応するデフォーカス量グループの中から、至近側のデフォーカス量グループである第1被写体に対応するデフォーカス量グループが、主要被写体を捕捉している可能性の高いデフォーカス量グループとして選択される。
【0081】
ステップS303では、カメラ制御部170により、ステップS302で選択されたデフォーカス量グループに属する焦点検出エリアから、焦点調節に用いるための焦点検出エリアの選択が行われる。なお、焦点調節に用いるための焦点検出エリアの選択方法としては、特に限定されないが、選択されたデフォーカス量グループに属する複数の焦点検出エリアのうち、最も至近側にある焦点検出エリアを選択する方法や、選択されたデフォーカス量グループに属する複数の焦点検出エリアのうち、撮影画面50内において、中央部分に位置する焦点検出エリアを選択する方法などが挙げられる。
【0082】
例えば、図6および図7に示す例において、第1被写体に対応するデフォーカス量グループに属する焦点検出エリアAFP1,3,5,6,8,10のうち、撮影画像50の中央部分に位置するAFP1が焦点調節に用いるための焦点検出エリアとして決定される。
【0083】
ステップS304では、ステップS303において、被写体領域グループSGに属する複数の焦点検出エリアの中から焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定されたか否かの判定が行われる。焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定された場合には、図9に示す自動選択AF処理を終了し、図5に示すステップS113に進む。一方、焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定されなかった場合には、背景領域グループBGに属する複数の焦点検出エリアの中から、焦点調節に用いるための焦点検出エリアを決定するため、ステップS305に進む。なお、焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定されなかった場合としては、たとえば、被写体領域グループSGに属する全ての焦点検出エリアについて焦点状態の検出が不能であった場合や、デフォーカス量が得られた焦点検出エリアがあった場合でも、信頼性判定の結果、信頼性なしとされた場合などが挙げられる。
【0084】
ステップS305では、カメラ制御部170により、背景領域グループBGに属する各焦点検出エリアのデフォーカス量に基づいて、これら背景領域グループBGに属する複数の焦点検出エリアが、さらに複数のデフォーカス量グループに分類される(2段目のグループ分け)。なお、ステップS305において背景領域グループBGに属する複数の焦点検出エリアを、デフォーカス量に基づいて、複数のデフォーカス量グループに分類する方法は、ステップS301において被写体領域グループSGに属する複数の焦点検出エリアを、デフォーカス量に基づいて、複数のデフォーカス量グループに分類する方法と同様の方法で行うことができる。
【0085】
そして、ステップS306およびS307では、背景領域グループBGに対応する焦点検出エリアについて、ステップS302およびステップS303と同様に、デフォーカス量グループが選択され(ステップS306)、焦点調節に用いるための焦点検出エリアが選択される(ステップS307)。これにより、図9に示す自動選択AF処理を終了し、図5に示すステップS113に進む。
【0086】
ステップS113では、ステップS112の自動選択AF処理において焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定されたか否か判定される。すなわち、図9に示すステップS303において被写体領域グループSGに属する複数の焦点検出エリアのうち焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定された場合、または、ステップS307において背景領域グループBGに属する複数の焦点検出エリアのうち焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定されたか否か判定される。焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定されたと判定された場合はステップS114に進み、一方、焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定されなかったと判定された場合はステップS116に進む。
【0087】
ステップS114では、レンズ駆動量演算部164により、焦点調節に用いるための焦点検出エリアのデフォーカス量に応じたレンズ駆動量Δdが演算され、算出されたレンズ駆動量Δdがレンズ駆動制御部165へ出力される。
【0088】
そして、ステップS115では、レンズ駆動制御部165により、ステップS114で算出されたレンズ駆動量Δdに基づいて、レンズ制御部250を介して、フォーカスレンズ駆動モータ230へ駆動指令が送出され、フォーカスレンズ212の駆動が行われる。
【0089】
一方、ステップS113において、焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定されていないと判定された場合、ステップS116に進み、スキャン動作が行われる。具体的には、レンズ駆動制御部250により、フォーカスレンズ駆動モータ230へレンズ駆動信号の送出が行われ、これにより、フォーカスレンズ212を所定方向へ駆動させながら、各焦点検出エリアについてデフォーカス量の演算を行うことにより、焦点状態の探索が行われる。ステップS116のスキャン動作が終了すると、ステップS117に進み、合焦判定が行われる。
【0090】
ステップS117では、カメラ制御部170により、合焦判定が行われる。例えば、本実施形態では、焦点調節用の焦点検出エリアのデフォーカス量が所定値以下となった場合に、合焦と判定される。合焦と判定された場合には、ステップS118に進み、一方、合焦と判定されなかった場合には、ステップS103に戻り、合焦するまで、上述した処理が繰り返される。
【0091】
ステップS118では、カメラ制御部170により、シャッターレリーズボタンの全押し(第2スイッチSW2のオン)がされたか否か判断される。第2スイッチSW2がオンであると判断された場合はステップS119へ進み、撮像素子110により、画像の撮像が行われる。これにより、主要被写体に焦点の合った画像が撮像され、撮像された画像が、カメラ制御部170に送信されて所定の処理が施された後、画像データとして、図示しないメモリに記憶される。一方、ステップS118で、第2スイッチSW2がオフであると判断された場合はステップS103に戻り、第2スイッチSW2がオンされるまで、上述した処理が繰り返される。
【0092】
本実施形態においては、被写体の輝度が低く、ステップS104で被写体の輝度値が所定値未満と判断された場合(ステップS104=YES)には、上述したように、カメラ1が動作する。
一方、被写体の輝度が高く、ステップS104で被写体の輝度値が所定値以上と判断された場合(ステップS104=NO)には、焦点検出エリアに対応する像信号の輝度に基づく焦点検出エリアの分類(1段目のグループ分け)が行なわれず、ステップS111に進む。ステップS111では、全ての焦点検出エリアについて、上述したステップS201のデフォーカス量の演算方法と同様の方法でデフォーカス量が算出され、デフォーカス量の信頼性が判定される。そして、ステップS112では、全ての焦点検出エリアのうち信頼性ありと判定されたデフォーカス量に対応する焦点検出エリアが、算出されたデフォーカス量に基づいて、複数のデフォーカス量グループに分類される。なお、第1実施形態においては、焦点検出用の照明光を照射している状態で得られたデフォーカス量の信頼性を判定する場合(ステップS201,S203)と、焦点検出用の照明光を照射していない状態で得られたデフォーカス量の信頼性を判定する場合(ステップS111)とで、同じ判定基準値を用いて、デフォーカス量の信頼性の判定を行っている。
【0093】
以上のように、本実施形態では、焦点検出用の照明光が照射されていない状態で得られた焦点検出エリアに対する像信号の輝度と、焦点検出用の照明光が照射されている状態で得られた焦点検出エリアに対する像信号の輝度との差に基づいて、各焦点検出エリアが、焦点検出用の照射光の照射範囲に存在する被写体に対応するエリアであるのか、それとも、焦点検出用の照射光の照射範囲に被写体が存在しない領域、すなわち背景に対応するエリアであるのかを判断し、各焦点検出エリアを、照射光の照射範囲に存在する被写体に対応する焦点検出エリアからなる被写体領域グループSGと背景に対応する焦点検出エリアからなる背景領域グループBGとに分類する(1段目のグループ分け)。さらに、本実施形態では、被写体領域グループSGおよび背景領域グループBGの各グループごとに、複数の焦点検出エリアを、これら焦点検出エリアのデフォーカス量に基づいて、さらに複数のデフォーカス量グループに分ける(2段目のグループ分け)。特に、被写体領域グループSGに属する複数の焦点検出エリアを複数のデフォーカス量グループに分け(2段目のグループ分け)、複数のデフォーカスグループの中から主要な被写体を補足する可能性が高いデフォーカス量グループを選択し、このグループの中から焦点調節に用いるための焦点検出エリアを決定することで、被写体に対応する焦点検出エリアを適切にデフォーカス量グループの分類(2段目のグループ分け)の対象とすることができる。これにより、複数の焦点検出エリアを複数のデフォーカス量グループに適切に分類することができ、主要な被写体に対応するデフォーカス量グループを適切に選択することができるため、焦点調節に用いるための焦点検出エリアを適切に決定することができる。そして、その結果、被写体に対する焦点状態の検出を適切に行うことができる。
【0094】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。第2実施形態では、図1に示すカメラ1において、図10に示すように、ステップS411およびステップS412において、再蓄積判定処理を行うこと以外は第1実施形態と同様である。以下において、図10および図11を参照して、第2実施形態に係る再蓄積判定処理について説明する。なお、図10は第2実施形態に係るカメラ1の動作を示すフローチャート、図11は第2実施形態に係る再蓄積判定処理を示すフローチャートである。
【0095】
ステップS401〜ステップS410においては、第1実施形態のステップS101〜ステップS110と同様に、照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度と照明光照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度との差に基づいて、各焦点検出エリアが、被写体領域グループSGと背景領域グループBGとに分類され(1段目のグループ)、これら焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出される。そして、ステップS410においてデフォーカス量演算処理が行なわれた後、ステップS411に進む。ステップS411では、ラインセンサ161dの蓄積条件を変更して像信号の蓄積を再度行うか否かを判定する再蓄積判定処理が行われる。以下、図11を参照して、ステップS411の再蓄積判定処理について説明する。
【0096】
まず、ステップS501では、この再蓄積判定処理が一度でも行われたか否か判断される。再蓄積判定処理が一度でも行われたと判断された場合は、ステップS506に進み、再蓄積不要と判定された後、図11に示す再蓄積判定処理を終了し、図10のステップS412に進む。一方、再蓄積判定処理が一度も行われていないと判断された場合は、ステップS502に進む。
【0097】
ステップS502では、カメラ制御部170により、被写体領域グループSGに少なくても1つの焦点検出エリアが分類されているか否か判断される。被写体領域グループSGに少なくても1つの焦点検出エリアが分類されていると判断された場合は、ステップS506に進み、再蓄積不要と判定された後、図11の再蓄積判定処理を終了し、図10に示すステップS412に進む。一方、被写体領域グループSGに焦点検出エリアが分類されていないと判断された場合は、ラインセンサ161dの蓄積条件を変更して像信号の蓄積を行うため、ステップS503に進む。
【0098】
ステップS503では、AF照射光発光部140により、焦点検出用の照明光の照射が開始される。そして、続くステップS504では、AF−CCD制御部162により、ラインセンサ161dの蓄積条件が変更される。以下において、ラインセンサ161dの蓄積条件を変更する一例について説明する。
【0099】
例えば、AF−CCD制御部162により、各焦点検出エリアについて、ステップS402で得られた照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度、およびステップS406で得られた照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度がともに所定値L以上であるか否か判断される。照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度、および照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度がともに所定値L以上である場合、この焦点検出エリアは、光源などの高輝度な被写体に対応する焦点検出エリアであると判断され、蓄積条件の対象となる焦点検出エリアから除かれる。すなわち、この焦点検出エリアを除く残りの焦点検出エリアに対応する像信号の輝度に基づいて、蓄積条件が決定される。
【0100】
例えば、図4に示す例において、一対のラインセンサ161d10に対応する焦点検出エリアAFP46〜48のうちAFP47が光源などの高輝度な被写体に対応しており、ステップS402で得られた照明光非照射時のAFP47に対応する像信号の輝度、およびステップS406で得られた照明光非照射時のAFP47の輝度がともに所定値L以上である場合、ラインセンサ161d10の蓄積条件が、AFP47に対応する像信号の輝度に応じた蓄積条件から、このAFP47を除いたAFP46およびAFP48に対応する像信号の輝度のうち、最も高い像信号の輝度に応じた蓄積条件に変更される。なお、ラインセンサ161d10以外の他のラインセンサ161d1〜161d9、161d11についても、同様の方法で、蓄積条件が変更される。
【0101】
ステップS504において蓄積条件を変更した後は、ステップS505に進み、再蓄積必要と判定された後、図11の再蓄積処理を終了し、図10に示すステップS412に進む。
【0102】
ステップS412では、カメラ制御部170により、ステップS411の再蓄積判定処理の判定結果に基づいて、再蓄積を行うか否か判断される。再蓄積必要と判断された場合は、ステップS406に戻り、変更された蓄積条件に従って、像信号の再蓄積が行われる。一方、再蓄積不要と判断された場合は、ステップS414に進み、第1実施形態と同様に、自動選択AF処理が行われる。なお、ステップS412で再蓄積必要と判断され、像信号の再蓄積を行った後においても、被写体領域グループSGに焦点検出エリアが分類されていない場合は、ステップS414で自動選択AF処理を行わずに、ステップS418に進み、スキャン動作を行ってもよい。
【0103】
以上のように、第2実施形態では、被写体領域グループSGに焦点検出エリアが分類されていない場合に、照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度および照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度がともに所定値L以上となる焦点検出エリアを除き、残った焦点検出エリアに対応する像信号の輝度に基づいて、ラインセンサ161dの蓄積条件を変更し、変更した蓄積条件で像信号の再蓄積を行う。ここで、図4に示すように、各一対のラインセンサ161dは複数の焦点検出エリアにそれぞれ対応しており、AF−CCD制御部162は、一対のラインセンサ161dに対応する複数の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度のうち、最も高い像信号の輝度に応じて、ラインセンサ161dの蓄積条件を制御している。そのため、光源などの高輝度な被写体に対応する焦点検出エリアが存在する場合、この焦点検出エリアに対応するラインセンサ161dの蓄積条件は、この光源などの像信号の輝度に応じて制御されることとなり、他の焦点検出エリアにおける像信号を適切に検出することができなくなる場合がある。このような場合でも、第2実施形態によれば、光源などの高輝度な被写体に対応する焦点検出エリアを除いてラインセンサ161dの蓄積条件を制御することで、焦点検出エリアを被写体領域グループSGと背景領域グループBGとに適切に分類することができ、結果として、被写体に対する焦点状態を適切に検出することができる。
【0104】
≪第3実施形態≫
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、図1に示すカメラ1において、図8に示すステップS201でデフォーカス量の信頼性を判定する際に、デフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値を変更すること以外は第1実施形態と同様である。以下において、第3実施形態におけるデフォーカス量の信頼性を判定する具体的な方法について説明する。
【0105】
すなわち、上述したように、第1実施形態では、デフォーカス量の信頼性を判定する際(ステップS201,S203,S111)には、一律に、内挿された相関量の極小値であるC(x)およびコントラストに比例する値であるSLOPが、所定の値である判定基準値C1,E1,G1との関係において、下記式(7)〜(9)の条件を満たすデフォーカス量を信頼性ありと判定している。
C(x)<C1 …(7)
SLOP>E1 …(8)
C(x)/SLOP<G1 …(9)
【0106】
これに対し、第3実施形態においては、ステップS201において、焦点検出用の照明光を照射している状態で得られた、被写体領域グループSGに属する焦点検出エリアのデフォーカス量の信頼性を判定する場合には、デフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値を信頼性ありと判定されやすい値に変更し、デフォーカス量の信頼性を判定する。
【0107】
具体的には、下記式(13)〜(15)に示すように、上記式(7)の判定基準値C1を判定基準値C1よりも信頼性ありと判定されやすい判定基準値C2に変更し、上記式(8)の判定基準値E1を判定基準値E1よりも信頼性ありと判定されやすい判定基準値E2に変更し、上記式(9)の判定基準値G1を判定基準値G1よりも信頼性ありと判定されやすい判定基準値G2に変更する。そして、C(x)およびSLOPが、これら判定基準値C2,E2,G2との関係で、下記式(13)〜(15)の条件を満たすデフォーカス量を信頼性ありと判定する。
C(x)<C2 (但し、C1<C2) …(13)
SLOP>E2 (但し、E1>E2) …(14)
C(x)/SLOP<G2 (但し、G1<G2) …(15)
【0108】
なお、上記式(13)〜(15)に示すデフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値C2,E2,G2としては、予め決められた値を用いてもよいし、あるいは、焦点検出用の照明光の種類に応じて、判定基準値C2,E2,G2を決定する構成としてもよい。焦点検出用の照明光の種類に応じて、判定基準値C2,E2,G2を決定する構成としては、例えば、焦点検出用の照明光が所定のコントラストパターンを有する場合は、被写体に所定のコントラストが生成され、デフォーカス量を検出しやすくなるため、焦点検出用の照明光が均一の強度を有する場合と比較して、デフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値C2,E2,G2を、信頼性ありと判定されやすい値に変更するよう構成してもよい。
【0109】
また、ステップS201に加え、ステップS203において背景領域グループBGに属する焦点検出エリアに対応するデフォーカス量の信頼性を判定する場合に、デフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値を変更する構成としてもよい。この場合、例えば、ステップS203でデフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値C3,E3,G3を、ステップS111において焦点検出用の照明光を照射していない状態で得られたデフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値C1,E1,G1よりも信頼性ありと判定されやすく、かつ、ステップS201において被写体領域グループSGに対応する焦点検出エリアのデフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値C2,E2,G2よりも信頼性ありと判定されにくい値に変更する構成としてもよい。
【0110】
以上のように、本実施形態では、ステップS201においてAF照明光発光部140により焦点検出用の照明光を照射している状態で得られた、被写体領域グループSGに属する焦点検出エリアのデフォーカス量の信頼性を判定する場合には、AF照明光発光部140により焦点検出用の照明光を照射していない状態で得られたデフォーカス量の信頼性を判定する場合と比べて、信頼性ありと判定されやすい判定基準値を用いて、デフォーカス量の信頼性を判定する。ここで、焦点検出用の照明光を照射した状態で得られたデフォーカス量、特に、照明光の照射範囲に存在する被写体に対応する被写体領域グループSGに属する焦点検出エリアのデフォーカス量は、焦点検出用の照明光を照射していない状態で得られたデフォーカス量と比べて、ノイズの影響が低いため、信頼性ありと判定されやすい判定基準値を用いてデフォーカス量の信頼性を判定することで、デフォーカス量グループの分類の対象となるデフォーカス量の信頼性を担保しつつ、より多くの焦点検出エリアをデフォーカス量グループの分類の対象とすることができ、その結果、被写体に対する焦点状態を適切に検出することができる。
【0111】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0112】
1…カメラ
100…カメラボディ
110…撮像素子
140…AF照明光発光部
161…焦点検出モジュール
162…AF−CCD制御部
163…デフォーカス演算部
164…レンズ駆動量演算部
165…レンズ駆動制御部
170…カメラ制御部
200…レンズ鏡筒
212…フォーカスレンズ
230…レンズ駆動モータ
250…レンズ制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点検出装置および撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、焦点検出エリアに対して得られるデフォーカス量に基づいて、複数の焦点検出エリアを複数のグループに分け、複数のグループの中から主要被写体に対応するグループを選択し、選択されたグループに属する複数の焦点検出エリアの中から、焦点調節に用いるための焦点検出エリアを決定する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−65206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、被写体に対する焦点状態を適切に検出するために、デフォーカス量の信頼性が高い焦点検出エリアのみをグループ分けの対象とするものであり、被写体の輝度が低い場合には、信頼性が高いデフォーカス量を得ることが困難となり、グループ分けの対象から多くの焦点検出エリアが除かれてしまい、結果として、被写体に対する焦点検出精度が不十分となる場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、被写体の輝度が低い場合でも、精度良く焦点検出することができる焦点検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下の解決手段によって上記課題を解決する。なお、発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、この符号は発明の理解を容易にするためだけのものであって発明を限定する趣旨ではない。
【0007】
[1]本発明に係る焦点検出装置は、光学系による像面内の複数位置に設定された複数の焦点検出位置に対応する光束を受光して受光信号を出力する受光手段(161d)と、前記受光信号に基づいて、前記光学系の焦点状態を検出する焦点検出手段(163)と、被写体に照明光を照射する照射手段(140)と、前記照射手段により前記照明光を照射した際に得られる前記受光信号に基づいて、前記複数の焦点検出位置を複数のグループに分類する第1分類手段(170)と、前記複数のグループのうち、少なくとも1つのグループに含まれる焦点検出位置に対する前記焦点状態に基づいて、前記グループに含まれる焦点検出位置を分類する第2分類手段(170)と、を備えることを特徴とする。
【0008】
[2]上記焦点検出装置に係る発明において、前記第1分類手段(170)は、前記照明光の照射時の受光信号と非照射時の受光信号との差に応じて、前記複数の焦点検出位置を複数のグループに分類し、前記第2分類手段(170)は、前記複数グループのうち、前記差が大きいグループに属する焦点検出位置を、分類の対象とするように構成することができる。
【0009】
[3]上記焦点検出装置に係る発明において、前記第1分類手段(170)は、前記照射手段(140)により前記照明光を照射した際に得られる前記受光信号、および前記複数の焦点検出位置に対する前記焦点状態に基づいて、前記複数の焦点検出位置を複数のグループに分類するように構成することができる。
【0010】
[4]上記焦点検出装置に係る発明において、第1の判定基準を用いて、前記焦点検出手段(163)により検出された焦点状態の信頼性の判定を行うとともに、前記第1の判定基準よりも信頼性ありと判定されやすい第2の判定基準を用いて、前記第2分類手段(170)により分類の対象とされた焦点検出位置に対する焦点状態の信頼性の判定を行う判定手段(170)を備えるように構成することができる。
【0011】
[5]上記焦点検出装置に係る発明において、前記判定手段(170)は、前記照明光の種類に応じて、前記第2の判定基準を変更するように構成することができる。
【0012】
[6]上記焦点検出装置に係る発明において、前記判定手段(170)は、前記光が均一な強度の光である場合には、前記光がコントラストを含む光である場合と比較して、前記第2の判定基準を、信頼性ありと判定されやすく設定するように構成することができる。
【0013】
[7]上記焦点検出装置に係る発明において、前記焦点検出手段(163)は、前記第1分類手段(170)による分類結果に応じて、前記焦点状態を再検出するように構成することができる。
【0014】
[8]上記焦点検出装置に係る発明において、前記複数の焦点検出位置のうち、所定以上の明るさを有する第1の位置を抽出する抽出手段(170)と、前記第1の位置を除く第2の位置に対応した前記受光手段の受光信号に基づいて、前記受光手段(161d)の蓄積条件を決定する決定手段(162)と、を備え、前記焦点検出手段(163)は、前記決定手段で決定された蓄積条件で蓄積された受光信号に基づいて、前記再検出処理を行うように構成することができる。
【0015】
[9]本発明に係る撮像装置は、上記焦点検出装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被写体の輝度が低い場合でも、精度良く焦点検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本実施形態に係るカメラ1を示すブロック図である。
【図2】図2は、焦点検出モジュール161の構成例を示す図である。
【図3】図3は、撮像光学系の撮影画面内に設定された複数の焦点検出エリアの配置例を示す図である。
【図4】図4は、撮像光学系の撮影画面内に設定された複数の焦点検出エリアと焦点検出モジュール161のラインセンサ161dとの対応関係を説明するための図である。
【図5】図5は、第1実施形態に係るカメラ1の動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は、撮像光学系の撮影画面内で撮像された被写体の一場面例を示す図である。
【図7】図7は、図6に示す撮像光学系の撮影画面内で撮像された被写体と、撮像光学系の撮影画面内に設定された複数の焦点検出エリアとの対応関係の一例を示す図である。
【図8】図8は、第1実施形態に係るデフォーカス量演算処理を示すフローチャートである。
【図9】図9は、第1実施形態に係る自動選択AF処理を示すフローチャートである。
【図10】図10は、第2実施形態に係るカメラ1の動作を示すフローチャートである。
【図11】図11は、第2実施形態に係る再蓄積判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下においては、本発明を一眼レフデジタルカメラに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。ただし本発明は、銀塩フィルムカメラなどのその他の撮像装置にも適用することができる。
【0019】
≪第1実施形態≫
図1は、本実施形態に係る一眼レフデジタルカメラ1を示すブロック図であり、本発明の焦点検出装置および撮像装置に関する構成以外のカメラの一般的構成については、その図示と説明を一部省略する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の一眼レフデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラボディ100とレンズ鏡筒200とを備え、カメラボディ100とレンズ鏡筒200とは着脱可能に結合される。
【0021】
レンズ鏡筒200には、レンズ211,212,213、および絞り220を含む撮影光学系が内蔵されている。
【0022】
フォーカスレンズ212は、レンズ鏡筒200の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、エンコーダ260によってその位置が検出されつつレンズ駆動モータ230によってその位置が調節される。
【0023】
このフォーカスレンズ212の光軸L1に沿う移動機構の具体的構成は特に限定されない。一例を挙げれば、レンズ鏡筒200に固定された固定筒に回転可能に回転筒を挿入し、この回転筒の内周面にヘリコイド溝(螺旋溝)を形成するとともに、フォーカスレンズ212を固定するレンズ枠の端部をヘリコイド溝に嵌合させる。そして、レンズ駆動モータ230によって回転筒を回転させることで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ212が光軸L1に沿って直進移動することになる。なお、レンズ鏡筒200にはフォーカスレンズ212以外のレンズ211,213が設けられているが、ここではフォーカスレンズ212を例に挙げて本実施形態を説明する。
【0024】
上述したようにレンズ鏡筒200に対して回転筒を回転させることによりレンズ枠に固定されたフォーカスレンズ212は光軸L1方向に直進移動するが、その駆動源としてのレンズ駆動モータ230がレンズ鏡筒200に設けられている。レンズ駆動モータ230と回転筒とは、たとえば複数の歯車からなる変速機で連結され、レンズ駆動モータ230の駆動軸を何れか一方向へ回転駆動すると所定のギヤ比で回転筒に伝達され、そして、回転筒が何れか一方向へ回転することで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ212が光軸L1の何れかの方向へ直進移動することになる。なお、レンズ駆動モータ230の駆動軸が逆方向に回転駆動すると、変速機を構成する複数の歯車も逆方向に回転し、フォーカスレンズ212は光軸L1の逆方向へ直進移動することになる。
【0025】
フォーカスレンズ212の位置はエンコーダ260によって検出される。既述したとおり、フォーカスレンズ212の光軸L1方向の位置は回転筒の回転角に相関するので、たとえばレンズ鏡筒200に対する回転筒の相対的な回転角を検出すれば、その位置を求めることができる。
【0026】
本実施形態のエンコーダ260としては、回転筒の回転駆動に連結された回転円板の回転をフォトインタラプタなどの光センサで検出して、回転数に応じたパルス信号を出力するものや、固定筒と回転筒の何れか一方に設けられたフレキシブルプリント配線板の表面のエンコーダパターンに、何れか他方に設けられたブラシ接点を接触させ、回転筒の移動量(回転方向でも光軸方向の何れでもよい)に応じた接触位置の変化を検出回路で検出するものなどを用いることができる。
【0027】
絞り220は、上記撮影光学系を通過して、カメラボディ100に備えられた撮像素子110に至る光束の光量を制限するとともにボケ量を調整するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能に構成されている。絞り220による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された適切な開口径が、カメラ制御部170からレンズ制御部250を介して絞り駆動部240へ送信されることにより行われる。また、開口径の調節は、カメラボディ100に設けられた操作部150を介したマニュアル操作により、設定された開口径がカメラ制御部170からレンズ制御部250を介して絞り駆動部240へ送信されることによっても行われる。なお、絞り220の開口径は図示しない絞り開口センサにより検出され、レンズ制御部250で現在の開口径が認識される。
【0028】
一方、カメラボディ100は、被写体からの光束を撮像素子110、ファインダ135、測光センサ137および焦点検出モジュール161へ導くためのミラー系120を備える。このミラー系120は、回転軸123を中心にして被写体の観察位置と撮像位置との間で所定角度だけ回転するクイックリターンミラー121と、このクイックリターンミラー121に軸支されてクイックリターンミラー121の回動に合わせて回転するサブミラー122とを備える。図1においては、ミラー系120が被写体の観察位置にある状態を実線で示し、被写体の撮像位置にある状態を二点鎖線で示す。
【0029】
ミラー系120は、被写体の観察位置にある状態では光軸L1の光路上に挿入される一方で、被写体の撮像位置にある状態では光軸L1の光路から退避するように回転する。
【0030】
クイックリターンミラー121はハーフミラーで構成され、被写体の観察位置にある状態では、被写体からの光束(光軸L1)の一部の光束(光軸L2,L3)を当該クイックリターンミラー121で反射してファインダ135および測光センサ137に導き、一部の光束(光軸L4)を透過させてサブミラー122へ導く。これに対して、サブミラー122は全反射ミラーで構成され、クイックリターンミラー121を透過した光束(光軸L4)を焦点検出モジュール161へ導く。
【0031】
したがって、ミラー系120が観察位置にある場合は、被写体からの光束(光軸L1)はファインダ135、測光センサ137および焦点検出モジュール161へ導かれ、撮影者により被写体が観察されるとともに、露出演算やフォーカスレンズ212の焦点調節状態の検出が実行される。そして、撮影者がレリーズボタンを全押しするとミラー系120が撮影位置に回動し、被写体からの光束(光軸L1)は全て撮像素子110へ導かれ、撮影した画像データを図示しないメモリに保存する。
【0032】
クイックリターンミラー121で反射された被写体からの光束(光軸L2)は、撮像素子110と光学的に等価な面に配置された焦点板131に結像し、ペンタプリズム133と接眼レンズ134とを介して観察可能になっている。このとき、透過型液晶表示器132は、焦点板131上の被写体像に焦点検出エリアマークなどを重畳して表示するとともに、被写体像外のエリアにシャッター速度、絞り値、撮影枚数などの撮影に関する情報を表示する。これにより、撮影者は、撮影準備状態において、ファインダ135を通して被写体およびその背景ならびに撮影関連情報などを観察することができる。
【0033】
測光センサ137は、二次元カラーCCDイメージセンサなどで構成され、撮影の際の露出値を演算するため、撮影画面を複数の領域に分割して領域ごとの輝度に応じた測光信号を出力する。測光センサ137で検出された信号はカメラ制御部170へ出力され、自動露出制御に用いられる。
【0034】
AF照明光発光部140は、測光センサ137の出力に基づいて、カメラ制御部170からの制御信号によって制御される。AF照明光発光部140により照射される照明光は、例えば、全体に均一の強度を有する照明光であってもよいし、所定のコントラストパターンを有する照明光であってもよく、その種類は特に限定されない。
【0035】
操作部150は、例えば、シャッターレリーズボタン、およびカメラ1の各種動作モードを設定するためのモード設定スイッチなどを備えており、操作部150により、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換や、オートフォーカスモードのうち焦点調節に用いるための焦点検出エリアを自動で選択する自動選択AFモードを選べるようになっている。また、シャッターレリーズボタンのスイッチは、ボタンの半押しでONとなる第1スイッチSW1と、ボタンの全押しでONとなる第2スイッチSW2とを含む。
【0036】
焦点検出モジュール161は、被写体光を用いた位相差検出方式による自動合焦制御を実行するための焦点検出素子であり、サブミラー122で反射した光束(光軸L4)の、撮像素子110の撮像面と光学的に等価な位置に固定されている。
【0037】
図2は、図1に示す焦点検出モジュール161の構成例を示す図である。本実施形態の焦点検出モジュール161は、コンデンサレンズ161a、一対の開口が形成された絞りマスク161b、一対の再結像レンズ161cおよび一対のラインセンサ161dを有する。また、図示していないが、本実施形態のラインセンサ161dは、撮像光学系の予定焦点面近傍に配置されたマイクロレンズと、このマイクロレンズに対して配置された光電変換素子とを有する画素が複数配列された画素列を備えている。フォーカスレンズ212の射出瞳の異なる一対の領域を通る一対の光束を、一対のラインセンサ161dに配列された各画素で受光することで、一対の像信号を取得することができる。そして、一対のラインセンサ161dで取得した一対の像信号の位相ずれを、後述する周知の相関演算によって求めることにより焦点調節状態を検出することができる。
【0038】
例えば、図2に示すように、被写体Pが撮像素子110の等価面(予定結像面)161eで結像すると合焦状態となるが、フォーカスレンズ212が光軸L1方向に移動することで、結像点が等価面161eより被写体側にずれたり(前ピンと称される)、カメラボディ側にずれたりすると(後ピンと称される)、ピントずれの状態となる。
【0039】
なお、被写体Pの結像点が等価面161eより被写体側にずれると、一対のラインセンサ161dで検出される一対の像信号の間隔Wが、合焦状態の間隔Wと比べて短くなり、逆に被写体Pの結像点がカメラボディ100側にずれると、一対のラインセンサ161dで検出される一対の像信号の間隔Wが、合焦状態の間隔Wに比べて長くなる。
【0040】
すなわち、合焦状態では一対のラインセンサ161dで検出される像信号が、それぞれのラインセンサ161dの中心に対して重なるが、非合焦状態ではラインセンサ161dの中心に対して像信号がずれ、すなわち位相差が生じるので、この位相差(ずれ量)に応じた量だけフォーカスレンズ212を移動させることでピントを合わせることができる。
【0041】
ここで、撮影光学系の撮影画面50内に設定された複数の焦点検出エリアの配置例を図3に示す。図3に示すように、撮影光学系の撮影画面50内には複数の焦点検出エリアAFPが設定されており、本実施形態において、焦点検出モジュール161には、各焦点検出エリアAFPに対応して、後述するように、一対のラインセンサ161dが複数備えられており、これにより、各焦点検出エリアAFPにおける像信号を取得できるようになっている。本実施形態では、図3にAFP1〜51で示すように、51点の焦点検出エリアAFPが設けられ、それぞれの位置が撮像素子110の撮像範囲の所定位置に対応している。なお、焦点検出エリアAFPの個数および配置は、図3に示す態様に限定されるものではない。
【0042】
また、撮影光学系の撮影画面50内に設定された複数の焦点検出エリアと、焦点検出モジュール161のラインセンサ161dとの対応関係を図4に示す。図4に示すように、本実施形態では、ラインセンサ161d1〜161d11の合計11個のラインセンサを備え、ラインセンサ161d1がAFP1〜5に対応して設けられており、ラインセンサ161d2がAFP6〜10に対応して設けられており、同様に、ラインセンサ161d3〜161d11がAFP11〜51にそれぞれ対応して設けられている。なお、各ラインセンサ161d1〜161d11はそれぞれ一対(2個)のラインセンサから構成されているが、図4においては、各ラインセンサ161d1〜161d11を構成する一対のラインセンサのうち一方のラインセンサのみを示している。さらに、図4に示すように、ラインセンサ161d10の各領域161d10a〜161d10cは、焦点検出エリアAFP46〜48に対応しており、ラインセンサ161d10の領域161d10aで光束を受光して得られた像信号はAFP47に対応する像信号として出力され、ラインセンサ161d10の領域161d10bで光束を受光して得られた像信号はAFP46に対応する像信号として出力され、ラインセンサ161d10の領域161d10cで光束を受光して得られた像信号はAFP48に対応する像信号として出力される。同様に、各一対のラインセンサ161d1〜161d9、161d11における各領域(不図示)も、焦点検出エリアAFP1〜45、49〜51にそれぞれ対応しており、各一対のラインセンサ161d3〜161d11の各領域で受光した像信号が各焦点検出エリアAFP1〜45、49〜51に対応する像信号として出力される。
【0043】
図1に戻り、AF−CCD制御部162は、オートフォーカスモードにおいて、焦点検出モジュール161のラインセンサ161dのゲインや蓄積時間などの蓄積条件を制御するものであり、焦点検出モジュール161に備えられた複数対のラインセンサ161dにて検出された像信号を各焦点検出エリアに対応させて読み出し、読み出した像信号をカメラ制御部170およびデフォーカス演算部163へ出力する。
【0044】
ここで、上述したように、焦点検出モジュール161の一対のラインセンサ161dは、それぞれ複数の焦点検出エリアAFPに対応するように設けられており、AF−CCD制御部162は、各一対のラインセンサ161dごとにゲインや蓄積時間などの蓄積条件を制御する。すなわち、同じ一対のラインセンサ161dに対応する複数の焦点検出エリアに対応する複数の像信号が、同じ蓄積条件で得られるようになっている。例えば、図4に示す例において、AFP46〜48は同じ一対のラインセンサ161d10に対応しているため、AF−CCD制御部162は、一対のラインセンサ161d10の蓄積条件を制御することで、AFP46〜48に対応する像信号を同じ蓄積条件で得ることになる。なお、ゲインや蓄積時間などの蓄積条件を制御する方法は特に限定されないが、例えば、図4に示す例において、AF−CCD制御部162は、ラインセンサ161d10の各領域161d10a〜161d10cから得た像信号に基づいて、AFP46〜48にそれぞれ対応する像信号の輝度を判断し、AFP46〜48にそれぞれ対応する像信号の輝度うち最も高い像信号の輝度に応じて、このラインセンサ161d10のゲインおよび蓄積時間を制御する方法が挙げられる。
【0045】
デフォーカス演算部163は、AF−CCD制御部162から送られてきた各焦点検出エリアに対応した一対の像信号のずれ量をデフォーカス量に変換し、これをレンズ駆動量演算部164へ出力する。
【0046】
レンズ駆動量演算部164は、デフォーカス演算部163から送られてきたデフォーカス量に基づいて、当該デフォーカス量に応じたレンズ駆動量Δdを演算し、これをレンズ駆動制御部165へ出力する。
【0047】
レンズ駆動制御部165は、レンズ駆動量演算部164から送られてきたレンズ駆動量Δdに基づいて、レンズ駆動モータ230を駆動し、フォーカスレンズ212の位置を調整する。
【0048】
撮像素子110は、カメラボディ100の、被写体からの光束の光軸L1上であって、レンズ211,212,213を含む撮影光学系の予定焦点面に設けられ、その前面にシャッター111が設けられている。この撮像素子110は、複数の光電変換素子が二次元に配置されたものであって、二次元CCDイメージセンサ、MOSセンサまたはCIDなどのデバイスから構成することができる。撮像素子110で光電変換された画像信号は、カメラ制御部170で画像処理されたのち図示しないメモリに保存される。なお、撮影画像を格納するメモリは内蔵型メモリやカード型メモリなどで構成することができる。
【0049】
カメラ制御部170はマイクロプロセッサとメモリなどの周辺部品から構成され、撮像素子110から画像信号を読み出すとともに、必要に応じて所定の情報処理を施し、図示しないメモリに出力する。この他にも、カメラ制御部170は、撮影画像情報の補正、レンズ鏡筒200の焦点調節状態の検出、および絞り調節状態の検出など、カメラ1全体の制御を司る。
【0050】
さらに、本実施形態において、カメラ制御部170は、測光センサ137からの出力に基づいて、AF照明光発光部140による焦点検出用の照明光の照射の制御を行う。また、カメラ制御部170は、後述するように、焦点検出用の照明光を照射している状態における像信号の輝度と焦点検出用の照明光を照射していない状態における像信号の輝度との差に基づく焦点検出エリアのグループ分け(1段目のグループ分け)や、焦点検出エリアのデフォーカス量に基づく焦点検出エリアのグループ分け(2段目のグループ分け)を行う。
【0051】
次に、図5を参照して、本実施形態に係るカメラ1の動作例を説明する。図5は、本実施形態に係るカメラ1の動作を示すフローチャートである。なお、以下においては、オートフォーカスモードのうち、焦点調節に用いるための焦点検出エリアを自動で選択する自動選択AFモードが選択されている場合を例示して説明する。
【0052】
まず、ステップS101で、カメラ制御部170により、電源がオンであり、かつ、オートフォーカスモードのうち自動選択AFモードが選択されていることが確認された上で、ステップS102に進み、焦点検出モジュール161のラインセンサ161dによる電荷の蓄電が行われる。ラインセンサ161dで蓄電された信号情報は、AF−CCD制御部162により、撮像光学系の撮影画面50内に設定された各焦点検出エリアに対応して読み出され、カメラ制御部170に出力される。なお、本実施形態では、AF−CCD制御部162により、各一対のラインセンサ161d1〜161d11ごとに、蓄積条件が制御される。すなわち、各一対のラインセンサ161d1〜161d11のそれぞれに対応する複数の焦点検出エリアに対応して得られた複数の像信号の輝度のうち、最も高い像信号の輝度に応じて、ラインセンサ161dの蓄積条件が制御される。
【0053】
ステップS103では、カメラ制御部170により、シャッターレリーズボタンの半押し(第1スイッチSW1のオン)がされたか否か判断される。第1スイッチSW1がオンであると判断された場合はステップS104に進み、第1スイッチSW1がオンではないと判断された場合はステップS101に戻り、第1スイッチSW1がオンされるまで、焦点検出モジュール161のラインセンサ161dによる蓄電と、蓄積された信号情報の出力とが、繰り返し行われる。
【0054】
次に、ステップS104では、カメラ制御部170により、測光センサ137からの出力に基づいて、被写体の輝度値が所定値未満であるか否か判断される。被写体の輝度値が所定値未満であると判断された場合は、被写体の輝度が焦点状態を検出するために十分ではないと判断され、焦点検出用の照明光を照射するために、ステップS105に進み、一方、被写体の輝度が所定値以上であると判断された場合は、ステップS111に進む。
【0055】
ステップS105では、被写体の輝度が焦点状態を検出するために十分ではないと判断されているため、カメラ制御部170からAF照明光発光部140に対し、焦点検出用の照明光を照射するよう制御信号が送出され、AF照明光発光部140により焦点検出用の照明光の照射が開始される。そして、続くステップS106では、AF照明光発光部140により焦点検出用の照明光が照射されている状態で、焦点検出モジュール161のラインセンサ161dによる電荷の蓄電が行われる。ラインセンサ161dで蓄電された信号情報は、AF−CCD制御部162により、撮像光学系の撮影画面50内に設定された各焦点検出エリアAFPに対応して読み出され、カメラ制御部170およびデフォーカス演算部163へと出力される。そして、ステップS107に進み、AF照明光発光部140による焦点検出用の照明光の照射が終了される。なお、ステップS106においては、焦点検出用の照明光が照射されている状態で得られた測光センサ137の出力に基づいて、AF−CCD制御部162により、ゲインや蓄積時間など蓄積条件が制御される。
【0056】
ステップS108では、カメラ制御部170により、後述するように、焦点検出用の照明光を照射している状態で得られた像信号の輝度と、焦点検出用の照明光を照射していない状態で得られた像信号の輝度とが比較される。そして、続くステップS109では、ステップS108の比較結果に基づいて、撮像光学系の撮影画面内に設定された複数の焦点検出エリアが、被写体領域グループSGと背景領域グループBGとに分類される(1段目のグループ分け)。ここで、ステップS109では、撮像光学系の撮影画面内に設定された複数の焦点検出エリアのうち、焦点検出用の照明光の照射範囲に存在する被写体に対応する焦点検出エリアが、被写体領域グループSGに分類され、焦点検出用の照明光の照射範囲に被写体が存在しない領域、すなわち背景に対応する焦点検出エリアが、背景領域グループBGに分類される。
【0057】
具体的には、ステップS108では、ステップS102において焦点検出用の照明光を照射していない状態(照明光非照射時)で得られた焦点検出エリアに対応する像信号と、ステップS106において焦点検出用の照明光を照射している状態(照明光照射時)で得られた焦点検出エリアに対応する像信号とに基づいて、照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度と照明光照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度との差が、所定値S以上であるか否か判断される。そして、ステップS109において、照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度と照明光照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度との差が所定値S以上である焦点検出エリアは、焦点検出用の照明光の照射範囲に存在する被写体に対応する焦点検出エリアであると判断され、被写体領域グループSGに分類される。一方、照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度と照明光照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度との差が所定値S未満である焦点検出エリアは、焦点検出用の照明光の照射範囲に被写体が存在せず、背景に対応する焦点検出エリアであると判断され、背景領域グループBGに分類される。
【0058】
ここで、図6は、撮像光学系の撮影画面50内で撮像された被写体の一場面例を示す図であり、図7は、図6に示す撮像光学系の撮影画面50内で撮像された被写体と撮像光学系の撮影画面50内に設定された複数の焦点検出エリアとの対応関係の一例を示す図である。なお、図6および図7においては、撮像光学系の撮影画面50内に、第1被写体(人物)と第2被写体(樹木)が撮像された場面を例示している。例えば、図6および図7に示す例において、図6に示す第1被写体および第2被写体が、焦点検出用の照明光の照射範囲に存在する場合、ステップS105において焦点検出用の照射光の照射が開始されることで、図6に示す第1被写体および第2被写体が照射光により照射されることになる。そのため、図7に示すように、第1被写体に対応する焦点検出エリアAFP1,3,5,6,8,10、および第2被写体に対応する焦点検出エリアAFP4,12,14,21〜25,32,34,44については、ステップS102で得られた照明光非照射時の焦点検出エリアAFPに対応する像信号の輝度と、ステップS106で得られた照明光照射時の焦点検出エリアAFPに対応する像信号の輝度との差が所定値S以上と判断され、被写体領域グループSGに分類されることになる。一方、第1被写体および第2被写体以外の領域、すなわち背景に対応する焦点検出エリアAFP2,7,9,11,13,15〜20,26〜31,33,35〜43,45〜51については、照射光が照射可能な領域に被写体が存在せず、ステップS105において焦点検出用の照射光の照射が開始されても、得られる像信号の輝度は照明光の照射開始前後で変わらないため、ステップS102で得られた照明光非照射時の焦点検出エリアAFPに対応する像信号の輝度と、ステップS106で得られた照明光照射時の焦点検出エリアAFPに対応する像信号の輝度との差が所定値S未満と判断され、背景領域グループBGに分類されることになる。
【0059】
次に、ステップS110では、ステップS109で分類されたグループごとに、焦点検出エリアのデフォーカス量を演算するデフォーカス量演算処理が行われる。以下において、図8を参照して、ステップS110のデフォーカス量演算処理について説明する。図8は、本実施形態に係るデフォーカス量演算処理を示すフローチャートである。
【0060】
まず、ステップS201では、デフォーカス演算部163により、被写体領域グループSGに属する各焦点検出エリアに対応して検出された一対の像信号に基づいて、位相差検出方式による像ズレ量が演算され、被写体領域グループSGに属する各焦点検出エリアのデフォーカス量が算出される。
【0061】
ここで、デフォーカス量演算処理(相関演算処理)の一例を簡単に説明する。
【0062】
各焦点検出エリアに対応する一対のラインセンサ161dは、それぞれ複数の光電変換画素から構成されており、複数の出力信号列a[1],...,a[n]、b[1],...b[n]を出力する。そして、この一対の出力信号列の内の、所定範囲のデータを相対的に所定のデータ分kずつシフトしながら相関演算を行う。
C(k)=Σ|a(n+k)−b(n)| …(1)
なお、上記式(1)において、Σ演算はnについての累積演算(相和演算)を示し、像ずらし量kに応じてa(n+k)、b(n)のデータが存在する範囲に限定される。また、像ずらし量kは整数であり、ラインセンサ161dに配列された画素列の画素間隔を単位としたシフト量である。なお、上記式(1)の演算結果においては、一対のデータの相関が高いシフト量kにおいて、相関量C(k)は極小(小さいほど相関度が高い)になる。
【0063】
次に、以下の下記式(2)〜(5)に示す3点内挿の手法を用いて、連続的な相関量に対する極小値C(x)を与えるシフト量xを求める。なお、下記式に示すC(kj)は、上記式(1)で得られた相関量C(k)のうち最も小さい値である。
D={C(kj−1)−C(kj+1)}/2 …(2)
C(x)= C(kj)−|D| …(3)
x=kj+D/SLOP …(4)
SLOP=MAX{C(kj+1)−C(kj),C(kj−1)−C(kj)} …(5)
【0064】
そして、デフォーカス量dfは上記シフト量xから次式によって算出される。
df=Kf・x …(6)
なお、上記式(6)において、Kfはラインセンサ161dの光電変換画素のピッチ幅によって定まる定数である。
【0065】
このように得られたデフォーカス量は、カメラ制御部170に出力され、カメラ制御部170により、信頼性があるか否か判定される。デフォーカス量の信頼性の判定は、下記式(7)〜(9)に示す条件を満たすか否かで判定される。
C(x)<C1 …(7)
SLOP>E1 …(8)
C(x)/SLOP<G1 …(9)
上記式(7)〜(9)において、C1、E1、G1はそれぞれデフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値である。一対の像信号の相関度が低い場合は、内挿された相関量の極小値C(x)の値が大きくなる。したがって、極小値C(x)が所定の判定基準値C1未満の場合は、算出されたデフォーカス量の信頼性は高いものと判定される。また、SLOPはコントラストに比例した値となるため、SLOPが所定の判定基準値E1よりも大きい場合は、被写体が高コントラストであり、算出されたデフォーカス量の信頼性が高いものと判定される。さらに、C(x)を像信号のコントラストで規格化するために、コントラストに比例した値となるSLOPでC(x)を除した値が所定の判定基準値G1未満の場合、算出されたデフォーカス量の信頼性が高いものと判定される。
【0066】
なお、一対の像信号の相関度が低く、シフト範囲で相関量C(k)の落ち込みがない場合は、極小値C(x)を求めることができず、このような場合は焦点検出不能と判定される。
【0067】
このように、ステップS201においては、被写体領域グループSGに属する各焦点検出エリアのデフォーカス量が算出され、算出されたデフォーカス量の信頼性が判定される。なお、信頼性ありと判定されたデフォーカス量に対応する焦点検出エリアは、後述するように、ステップS205において焦点検出エリアを再分類する際や、ステップS301において焦点検出エリアを複数のデフォーカス量グループに分類(2段目のグループ分け)する際に用いられることになる。
【0068】
続くステップS202では、カメラ制御部170により、被写体領域グループSGに属する全ての焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出されたか否か判断される。被写体領域グループSGに属する全ての焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出されたと判断された場合は、ステップS203に進み、一方、被写体領域グループSGに属する全ての焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出されていないと判断された場合は、被写体領域グループSGに属する全ての焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出されるまで、デフォーカス量の算出が繰り返される。
【0069】
次いで、ステップS203では、カメラ制御部170により、背景領域グループBGに属する各焦点検出エリアについて、ステップS201と同様に、デフォーカス量が算出されるとともに、算出されたデフォーカス量の信頼性が判定され、信頼性ありと判定されたデフォーカス量がカメラ制御部170に出力される。そして、ステップS204では、ステップS202と同様に、背景領域グループBGに属する全ての焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出されたか否か判断される。そして、背景領域グループBGに属する全ての焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出されたと判断された場合は、ステップS205に進み、一方、背景領域グループBGに属する全ての焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出されていないと判断された場合は、背景領域グループBGに属する全ての焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出されるまで、デフォーカス量の算出が繰り返される。なお、ステップS201およびステップS203は並行して行ってもよいし、ステップS203をステップS201よりも先に行ってもよい。
【0070】
ステップS205では、ステップS201およびステップS203で算出された各焦点検出エリアのデフォーカス量に基づいて、焦点検出エリアが、被写体領域グループSGまたは背景領域グループBGに再分類される。焦点検出エリアのデフォーカス量に基づいて、焦点検出エリアを、被写体領域グループSGと背景領域グループBGとに再分類する方法は特に限定されないが、例えば、被写体領域グループSG(または背景領域グループBG)に分類された複数の焦点検出エリアのデフォーカス量の平均値を求めて、被写体領域グループSG(または背景領域グループBG)に属す売る焦点検出エリアのデフォーカス量と、算出されたデフォーカス量の平均値との差が所定値以上である場合に、この焦点検出エリアを、被写体領域グループSG(または背景領域グループBG)から背景領域グループBG(または被写体領域グループSG)に再分類する構成としてもよい。
【0071】
これにより、例えば、撮影者による手ぶれなどにより、同一の焦点検出エリアに対応する像信号が、ステップS102における照明光非照射時に得られた像信号と、ステップS106における照明光照射時に得られた像信号とで、異なる被写体に対応するものとなった場合など、照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度と照明光照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度との差だけでは、焦点検出エリアを適切に分類できない場合であっても、各焦点検出エリアのデフォーカス量に基づいて、焦点検出エリアを被写体領域グループSGまたは背景領域グループBGに再分類することで、各焦点検出エリアを被写体領域グループSGと背景領域グループBGとに適切に分類することができる。
【0072】
図5に戻り、ステップS112では、焦点調節に用いるための焦点検出エリアを選択する自動選択AF処理が行われる。以下において、図9を参照して、ステップS112の自動選択AF処理について説明する。図9は、本実施形態に係る自動選択AF処理を示すフローチャートである。
【0073】
まず、ステップS301では、カメラ制御部170により、被写体領域グループSGに対応する複数の焦点検出エリアが、これら焦点検出エリアのデフォーカス量に基づいて、さらに複数のデフォーカス量グループに分類される(2段目のグループ分け)。また、本実施形態では、焦点検出エリアをデフォーカス量グループに適切に分類するため、デフォーカス量の信頼性を判定するための所定の判定基準値に基づいて信頼性ありと判定されたデフォーカス量に対応する焦点検出エリアのみが、デフォーカス量グループに分類される。以下においては、焦点検出エリアのデフォーカス量に基づいて、複数の焦点検出エリアを複数のデフォーカス量グループに分類する具体的な方法について、説明する。
【0074】
すなわち、まず、カメラ制御部170は、被写体領域グループSGに属する各焦点検出エリアのデフォーカス量Xi(i=1〜N)から、デフォーカス量の集合の分散vを下記式(10)に従って、算出する。
v=Σ(Xi−Xave)2/N …(10)
上記式(10)において、XaveはN個のデフォーカス量の平均値であり、Σはi=1〜Nの総和を表す。また、撮影画面50内の51個全ての焦点検出エリアAFPで、デフォーカス量が検出されるとは限らず、焦点状態の検出が不能な焦点検出エリアがある場合や、デフォーカス量が得られても信頼性判定の結果、信頼性なしとされる場合もある。そのため、本実施形態では、デフォーカス量の集合の分散vを、これらを除いたN個の焦点検出エリアAFPのデフォーカス量に基づき、上記式(10)に従って算出する。
【0075】
次いで、N個のデフォーカス量の集合のバラツキ度合いを表す量としての標準偏差σを下記式(11)に従って、算出する。
σ=√(v) …(11)
【0076】
そして、この集合のバラツキ度合いを表す標準偏差σを用いて、N個のデフォーカス量Xi(i=1〜N)をグループ分けするためのデフォーカス幅Hを下記式(12)により決定する。
H=α・σ …(12)
上記式(12)において、αは係数であり、通常は0.4〜0.6程度が適当である。
【0077】
次いで、上記にて得られたグループ分け用のデフォーカス幅Hを用いて次の手順で、デフォーカス量のグループ分けが行われる。まず、デフォーカス量の検出されたN個の焦点検出エリアAFPのデフォーカス量Xi(i=1〜N)を、値が小さい順、すなわち、至近側のデフォーカス量から順に並べる。そして、順に並べたデフォーカス量について、相前後するデフォーカス量の差が、グループ分け用のデフォーカス幅H以下である場合に、相前後するデフォーカス量は互いに同じデフォーカス量グループに属するものとし、その一方で、相前後するデフォーカス量の差が、グループ分け用のデフォーカス幅Hよりも大きい場合に、相前後するデフォーカス量は互いに別のデフォーカス量グループに属するものと判断する。
【0078】
例えば、図6および図7に示す例において、第1被写体(人物)までの撮影距離が短く、第2被写体(樹木)までの撮影距離が長い場合、被写体領域グループSGに属する各焦点検出エリアのデフォーカス量を並べると、第1被写体に対応する焦点検出エリアAFP(AFP1,3,5,6,8,10)のデフォーカス量、次いで、第2被写体に対応する焦点検出エリアAFP(AFP4,12,14,21〜25,32,34,44)のデフォーカス量の順に並ぶことになる。この場合において、第1被写体に対応する焦点検出エリアAFP(AFP1,3,5,6,8,10)のデフォーカス量と、第2被写体に対応する焦点検出エリアAFP(AFP4,12,14,21〜25,32,34,44)のデフォーカス量との間の差が、グループ分け用のデフォーカス幅Hより大きくなり、第1被写体に対応する焦点検出エリア(AFP1,3,5,6,8,10)と、第2被写体に対応する焦点検出エリア(AFP4,12,14,21〜25,32,34,44)とが異なるデフォーカス量グループに分類されることになる。
【0079】
次いで、ステップS302では、カメラ制御部170により、ステップS301でグループ分けされた複数のデフォーカス量グループのうちから、デフォーカス量グループの選択が行われる。デフォーカス量グループの選択方法としては、特に限定されず、周知の方法を適用することができるが、主要被写体を捕捉している可能性の高いデフォーカス量グループを選択するような方法が好ましく、たとえば、最も至近側のデフォーカス量グループを選択する方法や、撮影画面50内において、中央部分に位置する焦点検出エリアAFPを含むデフォーカス量グループを選択する方法などが挙げられる。
【0080】
例えば、図6および図7に示す例において、第1被写体(人物)までの撮影距離が短く、第2被写体(樹木)までの撮影距離が長い場合、第1被写体に対応するデフォーカス量グループおよび第2被写体に対応するデフォーカス量グループの中から、至近側のデフォーカス量グループである第1被写体に対応するデフォーカス量グループが、主要被写体を捕捉している可能性の高いデフォーカス量グループとして選択される。
【0081】
ステップS303では、カメラ制御部170により、ステップS302で選択されたデフォーカス量グループに属する焦点検出エリアから、焦点調節に用いるための焦点検出エリアの選択が行われる。なお、焦点調節に用いるための焦点検出エリアの選択方法としては、特に限定されないが、選択されたデフォーカス量グループに属する複数の焦点検出エリアのうち、最も至近側にある焦点検出エリアを選択する方法や、選択されたデフォーカス量グループに属する複数の焦点検出エリアのうち、撮影画面50内において、中央部分に位置する焦点検出エリアを選択する方法などが挙げられる。
【0082】
例えば、図6および図7に示す例において、第1被写体に対応するデフォーカス量グループに属する焦点検出エリアAFP1,3,5,6,8,10のうち、撮影画像50の中央部分に位置するAFP1が焦点調節に用いるための焦点検出エリアとして決定される。
【0083】
ステップS304では、ステップS303において、被写体領域グループSGに属する複数の焦点検出エリアの中から焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定されたか否かの判定が行われる。焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定された場合には、図9に示す自動選択AF処理を終了し、図5に示すステップS113に進む。一方、焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定されなかった場合には、背景領域グループBGに属する複数の焦点検出エリアの中から、焦点調節に用いるための焦点検出エリアを決定するため、ステップS305に進む。なお、焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定されなかった場合としては、たとえば、被写体領域グループSGに属する全ての焦点検出エリアについて焦点状態の検出が不能であった場合や、デフォーカス量が得られた焦点検出エリアがあった場合でも、信頼性判定の結果、信頼性なしとされた場合などが挙げられる。
【0084】
ステップS305では、カメラ制御部170により、背景領域グループBGに属する各焦点検出エリアのデフォーカス量に基づいて、これら背景領域グループBGに属する複数の焦点検出エリアが、さらに複数のデフォーカス量グループに分類される(2段目のグループ分け)。なお、ステップS305において背景領域グループBGに属する複数の焦点検出エリアを、デフォーカス量に基づいて、複数のデフォーカス量グループに分類する方法は、ステップS301において被写体領域グループSGに属する複数の焦点検出エリアを、デフォーカス量に基づいて、複数のデフォーカス量グループに分類する方法と同様の方法で行うことができる。
【0085】
そして、ステップS306およびS307では、背景領域グループBGに対応する焦点検出エリアについて、ステップS302およびステップS303と同様に、デフォーカス量グループが選択され(ステップS306)、焦点調節に用いるための焦点検出エリアが選択される(ステップS307)。これにより、図9に示す自動選択AF処理を終了し、図5に示すステップS113に進む。
【0086】
ステップS113では、ステップS112の自動選択AF処理において焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定されたか否か判定される。すなわち、図9に示すステップS303において被写体領域グループSGに属する複数の焦点検出エリアのうち焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定された場合、または、ステップS307において背景領域グループBGに属する複数の焦点検出エリアのうち焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定されたか否か判定される。焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定されたと判定された場合はステップS114に進み、一方、焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定されなかったと判定された場合はステップS116に進む。
【0087】
ステップS114では、レンズ駆動量演算部164により、焦点調節に用いるための焦点検出エリアのデフォーカス量に応じたレンズ駆動量Δdが演算され、算出されたレンズ駆動量Δdがレンズ駆動制御部165へ出力される。
【0088】
そして、ステップS115では、レンズ駆動制御部165により、ステップS114で算出されたレンズ駆動量Δdに基づいて、レンズ制御部250を介して、フォーカスレンズ駆動モータ230へ駆動指令が送出され、フォーカスレンズ212の駆動が行われる。
【0089】
一方、ステップS113において、焦点調節に用いるための焦点検出エリアが決定されていないと判定された場合、ステップS116に進み、スキャン動作が行われる。具体的には、レンズ駆動制御部250により、フォーカスレンズ駆動モータ230へレンズ駆動信号の送出が行われ、これにより、フォーカスレンズ212を所定方向へ駆動させながら、各焦点検出エリアについてデフォーカス量の演算を行うことにより、焦点状態の探索が行われる。ステップS116のスキャン動作が終了すると、ステップS117に進み、合焦判定が行われる。
【0090】
ステップS117では、カメラ制御部170により、合焦判定が行われる。例えば、本実施形態では、焦点調節用の焦点検出エリアのデフォーカス量が所定値以下となった場合に、合焦と判定される。合焦と判定された場合には、ステップS118に進み、一方、合焦と判定されなかった場合には、ステップS103に戻り、合焦するまで、上述した処理が繰り返される。
【0091】
ステップS118では、カメラ制御部170により、シャッターレリーズボタンの全押し(第2スイッチSW2のオン)がされたか否か判断される。第2スイッチSW2がオンであると判断された場合はステップS119へ進み、撮像素子110により、画像の撮像が行われる。これにより、主要被写体に焦点の合った画像が撮像され、撮像された画像が、カメラ制御部170に送信されて所定の処理が施された後、画像データとして、図示しないメモリに記憶される。一方、ステップS118で、第2スイッチSW2がオフであると判断された場合はステップS103に戻り、第2スイッチSW2がオンされるまで、上述した処理が繰り返される。
【0092】
本実施形態においては、被写体の輝度が低く、ステップS104で被写体の輝度値が所定値未満と判断された場合(ステップS104=YES)には、上述したように、カメラ1が動作する。
一方、被写体の輝度が高く、ステップS104で被写体の輝度値が所定値以上と判断された場合(ステップS104=NO)には、焦点検出エリアに対応する像信号の輝度に基づく焦点検出エリアの分類(1段目のグループ分け)が行なわれず、ステップS111に進む。ステップS111では、全ての焦点検出エリアについて、上述したステップS201のデフォーカス量の演算方法と同様の方法でデフォーカス量が算出され、デフォーカス量の信頼性が判定される。そして、ステップS112では、全ての焦点検出エリアのうち信頼性ありと判定されたデフォーカス量に対応する焦点検出エリアが、算出されたデフォーカス量に基づいて、複数のデフォーカス量グループに分類される。なお、第1実施形態においては、焦点検出用の照明光を照射している状態で得られたデフォーカス量の信頼性を判定する場合(ステップS201,S203)と、焦点検出用の照明光を照射していない状態で得られたデフォーカス量の信頼性を判定する場合(ステップS111)とで、同じ判定基準値を用いて、デフォーカス量の信頼性の判定を行っている。
【0093】
以上のように、本実施形態では、焦点検出用の照明光が照射されていない状態で得られた焦点検出エリアに対する像信号の輝度と、焦点検出用の照明光が照射されている状態で得られた焦点検出エリアに対する像信号の輝度との差に基づいて、各焦点検出エリアが、焦点検出用の照射光の照射範囲に存在する被写体に対応するエリアであるのか、それとも、焦点検出用の照射光の照射範囲に被写体が存在しない領域、すなわち背景に対応するエリアであるのかを判断し、各焦点検出エリアを、照射光の照射範囲に存在する被写体に対応する焦点検出エリアからなる被写体領域グループSGと背景に対応する焦点検出エリアからなる背景領域グループBGとに分類する(1段目のグループ分け)。さらに、本実施形態では、被写体領域グループSGおよび背景領域グループBGの各グループごとに、複数の焦点検出エリアを、これら焦点検出エリアのデフォーカス量に基づいて、さらに複数のデフォーカス量グループに分ける(2段目のグループ分け)。特に、被写体領域グループSGに属する複数の焦点検出エリアを複数のデフォーカス量グループに分け(2段目のグループ分け)、複数のデフォーカスグループの中から主要な被写体を補足する可能性が高いデフォーカス量グループを選択し、このグループの中から焦点調節に用いるための焦点検出エリアを決定することで、被写体に対応する焦点検出エリアを適切にデフォーカス量グループの分類(2段目のグループ分け)の対象とすることができる。これにより、複数の焦点検出エリアを複数のデフォーカス量グループに適切に分類することができ、主要な被写体に対応するデフォーカス量グループを適切に選択することができるため、焦点調節に用いるための焦点検出エリアを適切に決定することができる。そして、その結果、被写体に対する焦点状態の検出を適切に行うことができる。
【0094】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。第2実施形態では、図1に示すカメラ1において、図10に示すように、ステップS411およびステップS412において、再蓄積判定処理を行うこと以外は第1実施形態と同様である。以下において、図10および図11を参照して、第2実施形態に係る再蓄積判定処理について説明する。なお、図10は第2実施形態に係るカメラ1の動作を示すフローチャート、図11は第2実施形態に係る再蓄積判定処理を示すフローチャートである。
【0095】
ステップS401〜ステップS410においては、第1実施形態のステップS101〜ステップS110と同様に、照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度と照明光照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度との差に基づいて、各焦点検出エリアが、被写体領域グループSGと背景領域グループBGとに分類され(1段目のグループ)、これら焦点検出エリアについてデフォーカス量が算出される。そして、ステップS410においてデフォーカス量演算処理が行なわれた後、ステップS411に進む。ステップS411では、ラインセンサ161dの蓄積条件を変更して像信号の蓄積を再度行うか否かを判定する再蓄積判定処理が行われる。以下、図11を参照して、ステップS411の再蓄積判定処理について説明する。
【0096】
まず、ステップS501では、この再蓄積判定処理が一度でも行われたか否か判断される。再蓄積判定処理が一度でも行われたと判断された場合は、ステップS506に進み、再蓄積不要と判定された後、図11に示す再蓄積判定処理を終了し、図10のステップS412に進む。一方、再蓄積判定処理が一度も行われていないと判断された場合は、ステップS502に進む。
【0097】
ステップS502では、カメラ制御部170により、被写体領域グループSGに少なくても1つの焦点検出エリアが分類されているか否か判断される。被写体領域グループSGに少なくても1つの焦点検出エリアが分類されていると判断された場合は、ステップS506に進み、再蓄積不要と判定された後、図11の再蓄積判定処理を終了し、図10に示すステップS412に進む。一方、被写体領域グループSGに焦点検出エリアが分類されていないと判断された場合は、ラインセンサ161dの蓄積条件を変更して像信号の蓄積を行うため、ステップS503に進む。
【0098】
ステップS503では、AF照射光発光部140により、焦点検出用の照明光の照射が開始される。そして、続くステップS504では、AF−CCD制御部162により、ラインセンサ161dの蓄積条件が変更される。以下において、ラインセンサ161dの蓄積条件を変更する一例について説明する。
【0099】
例えば、AF−CCD制御部162により、各焦点検出エリアについて、ステップS402で得られた照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度、およびステップS406で得られた照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度がともに所定値L以上であるか否か判断される。照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度、および照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度がともに所定値L以上である場合、この焦点検出エリアは、光源などの高輝度な被写体に対応する焦点検出エリアであると判断され、蓄積条件の対象となる焦点検出エリアから除かれる。すなわち、この焦点検出エリアを除く残りの焦点検出エリアに対応する像信号の輝度に基づいて、蓄積条件が決定される。
【0100】
例えば、図4に示す例において、一対のラインセンサ161d10に対応する焦点検出エリアAFP46〜48のうちAFP47が光源などの高輝度な被写体に対応しており、ステップS402で得られた照明光非照射時のAFP47に対応する像信号の輝度、およびステップS406で得られた照明光非照射時のAFP47の輝度がともに所定値L以上である場合、ラインセンサ161d10の蓄積条件が、AFP47に対応する像信号の輝度に応じた蓄積条件から、このAFP47を除いたAFP46およびAFP48に対応する像信号の輝度のうち、最も高い像信号の輝度に応じた蓄積条件に変更される。なお、ラインセンサ161d10以外の他のラインセンサ161d1〜161d9、161d11についても、同様の方法で、蓄積条件が変更される。
【0101】
ステップS504において蓄積条件を変更した後は、ステップS505に進み、再蓄積必要と判定された後、図11の再蓄積処理を終了し、図10に示すステップS412に進む。
【0102】
ステップS412では、カメラ制御部170により、ステップS411の再蓄積判定処理の判定結果に基づいて、再蓄積を行うか否か判断される。再蓄積必要と判断された場合は、ステップS406に戻り、変更された蓄積条件に従って、像信号の再蓄積が行われる。一方、再蓄積不要と判断された場合は、ステップS414に進み、第1実施形態と同様に、自動選択AF処理が行われる。なお、ステップS412で再蓄積必要と判断され、像信号の再蓄積を行った後においても、被写体領域グループSGに焦点検出エリアが分類されていない場合は、ステップS414で自動選択AF処理を行わずに、ステップS418に進み、スキャン動作を行ってもよい。
【0103】
以上のように、第2実施形態では、被写体領域グループSGに焦点検出エリアが分類されていない場合に、照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度および照明光非照射時の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度がともに所定値L以上となる焦点検出エリアを除き、残った焦点検出エリアに対応する像信号の輝度に基づいて、ラインセンサ161dの蓄積条件を変更し、変更した蓄積条件で像信号の再蓄積を行う。ここで、図4に示すように、各一対のラインセンサ161dは複数の焦点検出エリアにそれぞれ対応しており、AF−CCD制御部162は、一対のラインセンサ161dに対応する複数の焦点検出エリアに対応する像信号の輝度のうち、最も高い像信号の輝度に応じて、ラインセンサ161dの蓄積条件を制御している。そのため、光源などの高輝度な被写体に対応する焦点検出エリアが存在する場合、この焦点検出エリアに対応するラインセンサ161dの蓄積条件は、この光源などの像信号の輝度に応じて制御されることとなり、他の焦点検出エリアにおける像信号を適切に検出することができなくなる場合がある。このような場合でも、第2実施形態によれば、光源などの高輝度な被写体に対応する焦点検出エリアを除いてラインセンサ161dの蓄積条件を制御することで、焦点検出エリアを被写体領域グループSGと背景領域グループBGとに適切に分類することができ、結果として、被写体に対する焦点状態を適切に検出することができる。
【0104】
≪第3実施形態≫
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、図1に示すカメラ1において、図8に示すステップS201でデフォーカス量の信頼性を判定する際に、デフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値を変更すること以外は第1実施形態と同様である。以下において、第3実施形態におけるデフォーカス量の信頼性を判定する具体的な方法について説明する。
【0105】
すなわち、上述したように、第1実施形態では、デフォーカス量の信頼性を判定する際(ステップS201,S203,S111)には、一律に、内挿された相関量の極小値であるC(x)およびコントラストに比例する値であるSLOPが、所定の値である判定基準値C1,E1,G1との関係において、下記式(7)〜(9)の条件を満たすデフォーカス量を信頼性ありと判定している。
C(x)<C1 …(7)
SLOP>E1 …(8)
C(x)/SLOP<G1 …(9)
【0106】
これに対し、第3実施形態においては、ステップS201において、焦点検出用の照明光を照射している状態で得られた、被写体領域グループSGに属する焦点検出エリアのデフォーカス量の信頼性を判定する場合には、デフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値を信頼性ありと判定されやすい値に変更し、デフォーカス量の信頼性を判定する。
【0107】
具体的には、下記式(13)〜(15)に示すように、上記式(7)の判定基準値C1を判定基準値C1よりも信頼性ありと判定されやすい判定基準値C2に変更し、上記式(8)の判定基準値E1を判定基準値E1よりも信頼性ありと判定されやすい判定基準値E2に変更し、上記式(9)の判定基準値G1を判定基準値G1よりも信頼性ありと判定されやすい判定基準値G2に変更する。そして、C(x)およびSLOPが、これら判定基準値C2,E2,G2との関係で、下記式(13)〜(15)の条件を満たすデフォーカス量を信頼性ありと判定する。
C(x)<C2 (但し、C1<C2) …(13)
SLOP>E2 (但し、E1>E2) …(14)
C(x)/SLOP<G2 (但し、G1<G2) …(15)
【0108】
なお、上記式(13)〜(15)に示すデフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値C2,E2,G2としては、予め決められた値を用いてもよいし、あるいは、焦点検出用の照明光の種類に応じて、判定基準値C2,E2,G2を決定する構成としてもよい。焦点検出用の照明光の種類に応じて、判定基準値C2,E2,G2を決定する構成としては、例えば、焦点検出用の照明光が所定のコントラストパターンを有する場合は、被写体に所定のコントラストが生成され、デフォーカス量を検出しやすくなるため、焦点検出用の照明光が均一の強度を有する場合と比較して、デフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値C2,E2,G2を、信頼性ありと判定されやすい値に変更するよう構成してもよい。
【0109】
また、ステップS201に加え、ステップS203において背景領域グループBGに属する焦点検出エリアに対応するデフォーカス量の信頼性を判定する場合に、デフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値を変更する構成としてもよい。この場合、例えば、ステップS203でデフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値C3,E3,G3を、ステップS111において焦点検出用の照明光を照射していない状態で得られたデフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値C1,E1,G1よりも信頼性ありと判定されやすく、かつ、ステップS201において被写体領域グループSGに対応する焦点検出エリアのデフォーカス量の信頼性を判定するための判定基準値C2,E2,G2よりも信頼性ありと判定されにくい値に変更する構成としてもよい。
【0110】
以上のように、本実施形態では、ステップS201においてAF照明光発光部140により焦点検出用の照明光を照射している状態で得られた、被写体領域グループSGに属する焦点検出エリアのデフォーカス量の信頼性を判定する場合には、AF照明光発光部140により焦点検出用の照明光を照射していない状態で得られたデフォーカス量の信頼性を判定する場合と比べて、信頼性ありと判定されやすい判定基準値を用いて、デフォーカス量の信頼性を判定する。ここで、焦点検出用の照明光を照射した状態で得られたデフォーカス量、特に、照明光の照射範囲に存在する被写体に対応する被写体領域グループSGに属する焦点検出エリアのデフォーカス量は、焦点検出用の照明光を照射していない状態で得られたデフォーカス量と比べて、ノイズの影響が低いため、信頼性ありと判定されやすい判定基準値を用いてデフォーカス量の信頼性を判定することで、デフォーカス量グループの分類の対象となるデフォーカス量の信頼性を担保しつつ、より多くの焦点検出エリアをデフォーカス量グループの分類の対象とすることができ、その結果、被写体に対する焦点状態を適切に検出することができる。
【0111】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0112】
1…カメラ
100…カメラボディ
110…撮像素子
140…AF照明光発光部
161…焦点検出モジュール
162…AF−CCD制御部
163…デフォーカス演算部
164…レンズ駆動量演算部
165…レンズ駆動制御部
170…カメラ制御部
200…レンズ鏡筒
212…フォーカスレンズ
230…レンズ駆動モータ
250…レンズ制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系による像面内の複数位置に設定された複数の焦点検出位置に対応する光束を受光して受光信号を出力する受光手段と、
前記受光信号に基づいて、前記光学系の焦点状態を検出する焦点検出手段と、
被写体に照明光を照射する照射手段と、
前記照射手段により前記照明光を照射した際に得られる前記受光信号に基づいて、前記複数の焦点検出位置を複数のグループに分類する第1分類手段と、
前記複数のグループのうち、少なくとも1つのグループに含まれる焦点検出位置に対する前記焦点状態に基づいて、前記グループに含まれる焦点検出位置を分類する第2分類手段と、を備えることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焦点検出装置において、
前記第1分類手段は、前記照明光の照射時の受光信号と非照射時の受光信号との差に応じて、前記複数の焦点検出位置を複数のグループに分類し、
前記第2分類手段は、前記複数グループのうち、前記差が大きいグループに属する焦点検出位置を、分類の対象とすることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の焦点検出装置において、
前記第1分類手段は、前記照射手段により前記照明光を照射した際に得られる前記受光信号、および前記複数の焦点検出位置に対する前記焦点状態に基づいて、前記複数の焦点検出位置を複数のグループに分類することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の焦点検出装置において、
第1の判定基準を用いて、前記焦点検出手段により検出された焦点状態の信頼性の判定を行うとともに、前記第1の判定基準よりも信頼性ありと判定されやすい第2の判定基準を用いて、前記第2分類手段により分類の対象とされた焦点検出位置に対する焦点状態の信頼性の判定を行う判定手段を備えることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の焦点検出装置において、
前記判定手段は、前記照明光の種類に応じて、前記第2の判定基準を変更することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の焦点検出装置において、
前記判定手段は、前記光が均一な強度の光である場合には、前記光がコントラストを含む光である場合と比較して、前記第2の判定基準を、信頼性ありと判定されやすく設定することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の焦点検出装置において、
前記焦点検出手段は、前記第1分類手段による分類結果に応じて、前記焦点状態を再検出することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の焦点検出装置において、
前記複数の焦点検出位置のうち、所定以上の明るさを有する第1の位置を抽出する抽出手段と、
前記第1の位置を除く第2の位置に対応した前記受光手段の受光信号に基づいて、前記受光手段の蓄積条件を決定する決定手段と、を備え、
前記焦点検出手段は、前記決定手段で決定された蓄積条件で蓄積された受光信号に基づいて、前記再検出処理を行うことを特徴とする焦点検出装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の焦点検出装置を備えた撮像装置。
【請求項1】
光学系による像面内の複数位置に設定された複数の焦点検出位置に対応する光束を受光して受光信号を出力する受光手段と、
前記受光信号に基づいて、前記光学系の焦点状態を検出する焦点検出手段と、
被写体に照明光を照射する照射手段と、
前記照射手段により前記照明光を照射した際に得られる前記受光信号に基づいて、前記複数の焦点検出位置を複数のグループに分類する第1分類手段と、
前記複数のグループのうち、少なくとも1つのグループに含まれる焦点検出位置に対する前記焦点状態に基づいて、前記グループに含まれる焦点検出位置を分類する第2分類手段と、を備えることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焦点検出装置において、
前記第1分類手段は、前記照明光の照射時の受光信号と非照射時の受光信号との差に応じて、前記複数の焦点検出位置を複数のグループに分類し、
前記第2分類手段は、前記複数グループのうち、前記差が大きいグループに属する焦点検出位置を、分類の対象とすることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の焦点検出装置において、
前記第1分類手段は、前記照射手段により前記照明光を照射した際に得られる前記受光信号、および前記複数の焦点検出位置に対する前記焦点状態に基づいて、前記複数の焦点検出位置を複数のグループに分類することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の焦点検出装置において、
第1の判定基準を用いて、前記焦点検出手段により検出された焦点状態の信頼性の判定を行うとともに、前記第1の判定基準よりも信頼性ありと判定されやすい第2の判定基準を用いて、前記第2分類手段により分類の対象とされた焦点検出位置に対する焦点状態の信頼性の判定を行う判定手段を備えることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の焦点検出装置において、
前記判定手段は、前記照明光の種類に応じて、前記第2の判定基準を変更することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の焦点検出装置において、
前記判定手段は、前記光が均一な強度の光である場合には、前記光がコントラストを含む光である場合と比較して、前記第2の判定基準を、信頼性ありと判定されやすく設定することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の焦点検出装置において、
前記焦点検出手段は、前記第1分類手段による分類結果に応じて、前記焦点状態を再検出することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の焦点検出装置において、
前記複数の焦点検出位置のうち、所定以上の明るさを有する第1の位置を抽出する抽出手段と、
前記第1の位置を除く第2の位置に対応した前記受光手段の受光信号に基づいて、前記受光手段の蓄積条件を決定する決定手段と、を備え、
前記焦点検出手段は、前記決定手段で決定された蓄積条件で蓄積された受光信号に基づいて、前記再検出処理を行うことを特徴とする焦点検出装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の焦点検出装置を備えた撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−133559(P2011−133559A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290894(P2009−290894)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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