説明

焦点調節装置、光学機器、レンズ鏡筒、及び、焦点調節方法

【課題】マニュアルフォーカス制御に移行した場合にも正確な合焦動作を行うことが可能な焦点調節装置、光学機器、レンズ鏡筒、及び、焦点調節方法を提供する。
【解決手段】焦点調節装置に、焦点調節用のフォーカスレンズ群(22)を有する光学系(21)と、手動動作に応じて前記フォーカスレンズ群(22)を焦点調節する焦点調節部(23)と、前記光学系(21)の焦点調節状態を検出する焦点検出部(16)と、前記焦点調節状態に応じて、前記フォーカスレンズ群(22)を焦点調節する駆動部(30)と、前記焦点調節部(23)によって前記焦点調節状態がほぼ合焦の状態となった場合に、前記駆動部によって前記フォーカスレンズ群(22)を焦点調節制御する制御部(27)と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系の焦点を調節する焦点調節装置、光学機器、レンズ鏡筒、及び、焦点調節方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オートフォーカス制御を行う状態で、マニュアルフォーカス制御のための操作部材を操作することにより、オートフォーカス制御からマニュアルフォーカス制御に移行するカメラがあった。(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平2−253214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のカメラでは、オートフォーカスによる焦点調節が困難な被写体の場合にマニュアルフォーカス制御に移行することで、目的の被写体に焦点調節することが可能になるが、その焦点調節精度は、撮影者の技量によるところが大きく、正確な合焦制御を達成できないという問題があった。
本発明は、マニュアルフォーカス制御に移行した場合にも正確な合焦動作が可能な焦点調節装置、光学機器、レンズ鏡筒、及び、焦点調節方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施例に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、焦点調節用のフォーカスレンズ群(22)を有する光学系(21)と、手動動作に応じて前記フォーカスレンズ群を焦点調節する焦点調節部(23)と、前記光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出部(16)と、前記焦点調節状態に応じて、前記フォーカスレンズ群を焦点調節する駆動部(30)と、前記焦点調節部によって前記焦点調節状態がほぼ合焦の状態となった場合に、前記駆動部によって前記フォーカスレンズ群を焦点調節制御する制御部(27)と、を備える焦点調節装置である。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載の焦点調節装置において、前記制御部(27)は、前記焦点調節部(23)によって前記焦点調節状態がほぼ合焦の状態となった後は、前記焦点調節部による焦点調節量に基づいて前記駆動部(30)を制御すること、を特徴とする焦点調節装置である。
請求項3の発明は請求項1又は請求項2に記載の焦点調節装置において、前記焦点調節部(23)と前記駆動部(30)とは、差動機構(31)を介して前記フォーカスレンズ群(22)を駆動すること、を特徴とする焦点調節装置である。
請求項4の発明は、請求項1か請求項3までのいずれか1項に記載の焦点調節装置において、前記焦点調節部(23)の操作量を検出する操作量検出部(24)を備え、前記制御部(27)は、前記操作量検出部による単位時間あたりの前記操作量が所定の量よりも大きい場合、前記駆動部(30)による制御を禁止すること、を特徴とする焦点調節装置である。
【0006】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の焦点調節装置を備える光学機器である。
【0007】
請求項6の発明は、請求項5に記載の光学機器において、前記光学系による像の構図変更量を検出する検出部(33)を備え、前記制御部(27)は、前記検出部による構図変更量が所定の量よりも大きい場合、前記駆動部(30)による制御を禁止すること、を特徴とする光学機器である。
【0008】
請求項7の発明は、焦点調節用のフォーカスレンズ群(22)を有する光学系(21)と、手動動作に応じて前記フォーカスレンズ群を焦点調節する焦点調節部(23)と、前記光学系の焦点調節状態に応じて前記フォーカスレンズ群を焦点調節する駆動部(30)と、前記焦点調節部によって前記焦点調節状態がほぼ合焦の状態となった場合に、前記駆動部によって前記フォーカスレンズ群を焦点調節制御する制御部(27)と、を備えるレンズ鏡筒である。
【0009】
請求項8の発明は、請求項7に記載のレンズ鏡筒において、前記レンズ鏡筒に加わる振れを検出する振れ検出部(33)を備え、前記制御部(27)は、前記振れ検出部によって検出される振れが所定値よりも大きい場合、前記駆動部(30)による制御を禁止すること、を特徴とするレンズ鏡筒である。
請求項9の発明は、手動操作と駆動源によって移動可能なフォーカスレンズ群(22)を有する光学系(21)を焦点調節する焦点調節方法であって、前記手動操作によって前記フォーカスレンズ群を移動し、前記光学系の焦点調節状態を検出し、前記焦点調節状態がほぼ合焦の状態となった場合に、前記駆動源によって前記フォーカスレンズ群を制御すること、を特徴とする焦点調節方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マニュアルフォーカス制御に移行した場合にも正確な合焦動作が可能な焦点調節装置、光学機器、レンズ鏡筒、及び、焦点調節方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態をあげて、さらに詳しく説明する。
図1は、第1実施形態のカメラシステム1のブロック図である。
図1に示すように、カメラシステム1は、オートフォーカス(以下「AF」という。)機能を有するシステムであり、デジタル一眼レフカメラであるカメラボディ10と、カメラボディ10にバヨネット結合等により着脱可能に装着される交換レンズ20とから構成される。カメラボディ10と交換レンズ20とは、交換レンズ20装着時に、電気接点(図示せず)により電気的に接続され、相互に信号に伝達をすることができる。
【0012】
カメラボディ10は、ミラー11と、スクリーン12と、ペンタダハプリズム13と、撮像素子14と、サブミラー15と、デフォーカス量検出器16と、ボディ側制御部17とを備えている。
ミラー11は、交換レンズ20からの光束を、被写体観察時には、反射してペンタダハプリズム13の方向に導き、露光時には、撮影光路から退避して撮像素子14の方向に導くクイックリターンミラーである。ミラー11は、その一部がハーフミラーになっており、交換レンズ20からミラー11を透過した光束を、サブミラー15の方向に導く。
スクリーン12は、ミラー11からの被写体の光束を結像するためのスクリーンであり、結像された被写体像は、ペンタダハプリズム13により正立像に変換され、撮影者によって観察可能となる。スクリーン12上には、測距点に対応した測距点指標12a〜12k(後述する)が設けられている。スクリーン12の測距点指標12a〜12kは、「前ピン」「後ピン」「ほぼ合焦」「合焦」「測距不能」に対応した色にLED等を用いて照明されることで、デフォーカス量検出器16より得た測距情報を、撮影者に伝達する。
【0013】
撮像素子14は、露光時に結像された被写体像を電気信号に変換するものであり、例えばCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementar Metal Oxide Semiconductor)等の光電変換素子である。
サブミラー15は、ミラー11のハーフミラー部分を透過してきた光を反射して、デフォーカス量検出器16の方向に導くための部材である。
デフォーカス量検出器16は、ミラー11、サブミラー15によって導かれた被写体光束に基づいて、後述する撮影光学系21の焦点調節状態を検出するための焦点検出モジュールである。デフォーカス量検出器16は、例えばイメージセンサアレイによる位相差検出方式等により、撮影光学系21のデフォーカス量を検出する。
ボディ側制御部17は、カメラボディ10を統括的に制御するための制御部であり、CPU(中央処理装置)等から構成される。ボディ側制御部17の動作の詳細については、後述する。
【0014】
交換レンズ20は、撮影光学系21と、MF(マニュアルフォーカス)操作環23と、MF操作環回転量検出器24と、フォーカスポジション検出器25と、ズームポジション検出器26と、レンズ側制御部27と、モータドライバ29と、AFモータ30と、差動機構31と、合焦機構32と、振れセンサ33とを備えている。
撮影光学系21は、焦点調節用のフォーカスレンズ群22(図1には、簡略して1枚のレンズを示す。)の他、ズームレンズ群等(図示せず)から構成される。フォーカスレンズ群22、ズームレンズ群は、光軸Oに沿った方向(以下「光軸方向」という)に移動可能に交換レンズ20に収容されている。
MF操作環23は、交換レンズ20の外周部に回転自在に設けられた円筒状の部材であり、撮影者の手動動作に応じて、差動機構31、合焦機構32を介してフォーカスレンズ群22を光軸方向に移動し、撮影光学系21の焦点調節をする。
MF操作環回転量検出器24は、MF操作環23の回転角と方向とを検出することにより、MF操作環23の操作量を検出するためのセンサである。
【0015】
フォーカスポジション検出器25は、フォーカスレンズ群22の光軸方向の位置を検出するためのセンサである。ズームポジション検出器26は、ズームレンズ群の光軸方向の位置を検出することにより撮影光学系21の焦点距離を求めるためのセンサである。
【0016】
レンズ側制御部27は、交換レンズ20を統括的に制御するための制御部であり、CPU等から構成される。レンズ側制御部27は、モータ回転角計算器28を有している。
モータ回転角計算器28は、フォーカスポジション検出器25、デフォーカス量検出器16、カメラボディ10で設定された絞り値の情報に基づき、AFモータ30の回転角を計算するための演算処理部である。モータ回転角計算器28は、フォーカスポジション検出器25の出力に応じて、フォーカスレンズ群22の位置を確認する。また、モータ回転角計算器28は、デフォーカス量検出器16のデフォーカス量の出力に応じて、フォーカスレンズ群22を合焦位置へと移動するために必要なAFモータ30の回転角を計算する。
なお、レンズ側制御部27は、後述するように、通常のAFの制御モードの他に、MF操作環23によって焦点調節状態がほぼ合焦の状態となった後は、AFによる合焦動作を利用してフォーカスレンズ群22を合焦位置へと制御する制御モードを有する。以下、この制御モードを「第1モード」という。
【0017】
モータドライバ29は、AFモータ30を駆動するためのドライバICである。
AFモータ30は、フォーカスレンズ群22を光軸方向に移動するための、例えば、超音波モータやDCモータ等である。AFモータ30は、差動機構31を介して、合焦機構32に接続されている。また、MF操作環23も差動機構31を介して合焦機構32に接続されている。つまり、AFモータ30による駆動量とMF操作環23による駆動量との差動でフォーカスレンズ群22を駆動するように構成されている。
【0018】
合焦機構32は、例えば、カム筒、直進筒等から構成され、MF操作環23、AFモータ30から駆動力が伝達されることにより、レンズ枠(図示せず)に保持されたフォーカスレンズ群22を、光軸方向に移動する。
振れセンサ33は、交換レンズ20(撮影光学系21)の振れを計測するために交換レンズ20に加わる角速度を検出する角速度センサ等である。振れセンサ33は、通常は、交換レンズ20の振れを検出し、特定のレンズを駆動して振れにともなう像ブレを補正するために用いられるが、本実施形態では、この他に撮影光学系21による像の構図変更量を検出するために用いられる。すなわち、撮影者が構図を変更したためにカメラシステム1が振られた場合にも、カメラシステム1が振られた量(振り量)を振れセンサ33により検出し、レンズ側制御部27が構図変更量を判定することができる。
【0019】
図2は、カメラシステム1の前述した第1モード選択時の動作を示すフローチャートである。図3、図4は、カメラシステム1のファインダの表示例及び構図の例を示す図である。
最初にステップ(以下「S」という。)1において、撮影者がカメラボディ10又は交換レンズ20のモード切換操作部(図示せず)を操作して、第1モードを選択することにより処理が開始される。撮影者が測距点切換操作部(図示せず)を操作して被写体に対応した測距点を選択すると、ボディ側制御部17は、測距点を認識する。ここでは、図3に示すように、測距点指標12a〜12kのなかから測距点指標12aを選択し、撮影画面内の人物41の顔部41aに対して合焦制御する場合を説明する。
S2において、撮影者が、スクリーン12に結像する像の状態に基づいて目視で顔部41aが合焦するようにMF操作環23を操作すると、MF操作環回転量検出器24がMF操作環23の回転を検出し、ボディ側制御部17に信号を出力する。これに応じて、ボディ側制御部17は、MF操作環23が回転していると判断し(S2:YES)、S3に進む。一方、MF操作環23が操作されない場合(S2:NO)、ボディ側制御部17は、MF操作環回転量検出器24からの出力を待機する。
【0020】
S3において、ボディ側制御部17は、デフォーカス量検出器16によるデフォーカス量を検出し、S4に進んでファインダ内の焦点表示をONとし、デフォーカス量に基づく焦点調節状態を、撮影者が視認可能にする。
S5において、ボディ側制御部17は、撮影者のMF操作環23の操作によって測距点12aに対するデフォーカス量がほぼ合焦とみなせる範囲に入ったか否を判断する。ボディ側制御部17は、デフォーカス量がほぼ合焦とみなせる範囲に入ったと判断した場合(S5:YES)、測距点12aに対してほぼ合焦とみなせる状態であることに対応した測距情報をスクリーン12に表示後、S6に進む。一方、ボディ側制御部17は、ほぼ合焦とみなせる範囲に入っていない場合(S5:NO)、S2からの処理を繰り返す。ここで、ほぼ合焦とみなせる範囲とは、ボディ側制御部17が合焦したと判断する範囲よりもデフォーカス量が大きいが、所定の範囲内にある焦点状態をいう。
【0021】
S6において、レンズ側制御部27は、振れセンサ33の出力から判断されるカメラシステム1の振り量をリセットし、この状態の構図を、基準の構図に設定する。
S7において、レンズ側制御部27は、MF操作環回転量検出器24の出力に基づいて、MF操作環23の回転速度が規定速度以内かを判断する。例えば、撮影者が合焦させる対象を、顔部41aから後方の空に変更したい場合、MF操作環23を無限遠方向に、速い速度で回転すればよい。これに応じて、レンズ側制御部27は、MF操作環回転量検出器24の出力から、MF操作環23の回転速度が規定速度以内ではないと判断し(S7:NO)、S20に進んで一定時間AFによる合焦動作を禁止してからS2からの処理を繰り返す。このように、カメラシステム1は、MF操作環回転量検出器24の出力に基づく単位時間あたりの操作量が所定の量よりも大きい場合、AFによる合焦動作を禁止する。これにより、撮影者は、特定の被写体に焦点調節している状態からの他の被写体に合焦させる操作を、容易に行うことができる。
一方、レンズ側制御部27は、MF操作環23の回転速度が規定速度以内ある場合(S7:YES)、S8に進む。
【0022】
S8において、レンズ側制御部27は、振れセンサ33の出力に基づく角速度が所定値以上になった場合、つまり、カメラシステム1の振り量が規定以内から外れ、構図変更量が所定の量よりも大きいと判断される場合(S8:NO)、S30に進んでAFによる合焦動作を禁止し、その後S2からの処理を繰り返す。このように振れセンサ33を構図変更量を検出するためのセンサとして利用することにより、カメラシステム1は、構図変更にともなう操作を容易にすることができる。
一方、レンズ側制御部27は、カメラシステム1の振り量が規定以内の場合(S8:YES)、S9に進む。
【0023】
S9において、レンズ側制御部27は、デフォーカス量検出器16の出力に基づいて、デフォーカス量が急激に変化していないと判断した場合(S9:NO)、S10に進む。
【0024】
S10において、レンズ側制御部27は、AFによる合焦動作を開始する。ここで、AFによる合焦動作とは、レンズ側制御部27がデフォーカス量検出器16の出力に基づいて焦点調節状態を判断してAFモータ30を制御する動作である。
【0025】
このように、レンズ側制御部27は、MF操作環23の操作により、デフォーカス量がほぼ合焦範囲とみなせる範囲に入った後は(S5:YES)、MF操作環速度の検出(S7)等の処理を経て、S10に進んでAFによる合焦動作によりフォーカスレンズ群22を移動する。これにより、カメラシステム1は、マニュアルフォーカスで焦点合わせをしている場合にも、AFによる合焦動作を有効に用いた援助により、正確な合焦動作を遂行することができる。
S10以降、レンズ側制御部27は、レリーズボタン(図示せず)が操作され露光を指示するレリーズ信号が出力されるまで、S7からの処理を繰り返す。
【0026】
一方、S9において、レンズ側制御部27は、デフォーカス量がほぼ合焦とみなせる範囲から突然外れたと判断した場合(S9:YES)、S40に進んで一定時間AFによる合焦動作を禁止した後、S7からの処理を繰り返す。
例えば、図4に示すように、測距点指標12bの位置にある花42のしべ部42aに対して合焦状態を得ている場合に、風等によって葉43が測距点指標12b内に入ってきてしまったときには、デフォーカス量が突然大きくなる。この場合、レンズ側制御部27は、一定時間(例えば、数秒間程度)AFによる合焦動作を禁止して、この葉43に撮影光学系21が不用意に合焦しようとするのを防止する。これにより、風が止んでしべ部42aが測距点指標12b内に戻った場合に、レンズ側制御部27は、速やかに焦点調節を再開することができる。
このようなデフォーカス量の変化に応じた制御は、被写体が低コントラストであるために合焦位置を判定しにくい場合、焦点を合わせたい対象が測距範囲に対して小さい場合、焦点を合わせたい対象の前後に障害物が存在する場合等に有効である。
【0027】
以上のS7〜S10の処理が繰り返し行われることにより、AFによる合焦動作が繰り返され、測距点にある被写体までの距離が変化しても合焦動作を継続的に行う、いわゆる、コンティニュアスAFモードとしての動作が行われる。
【0028】
ところで、通常のカメラシステムは、ファインダの大きさには限界があり、目視でのフォーカシング(マニュアルフォーカス)には限界がある。また、開放絞り時における撮像面への入射光束とファインダスクリーンへの入射光束との違いから、球面収差の大きいレンズは、撮像面とファインダスクリーンとで最良像面位置が異なる可能性がある。さらに、ファインダスクリーン及び撮像面位置の結像面は、製造公差により厳密には一致しないことも考えられる。
本実施形態のカメラシステム1は、マニュアフォーカスの感覚を与えながらも、最終の合焦動作をAFによる合焦動作によって、前述のような問題はなく、合焦動作を正確に遂行することができる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態のカメラシステム1は、MF操作環23の操作により、デフォーカス量がほぼ合焦の範囲に入った後には、AFによる合焦動作を行う。これにより、撮影者にマニュアフォーカスで焦点合わせをしているような感覚を与えながら、AFによる合焦動作を利用して援助を行うので、合焦動作を正確に遂行することができる。
また、カメラシステム1は、MF操作環23の単位時間当たりの操作量に応じて、オートフォーカスによる焦点調節を制限することにより、焦点調節する対象を変更する操作を簡単かつ迅速に行うことができる。さらに、振り量に応じてAFによる合焦動作を禁止することにより、構図を変更しても、被写体の合焦状態を維持することができる。
【0030】
[第2実施形態]
次に、本発明を適用したカメラシステムの第2実施形態について説明する。
第2実施形態のカメラシステム2は、第1実施形態のカメラシステム1における第1モードとは異なるフォーカスモードとして新たに第2モードを設けたものである。この第2モードは、MF操作環23の操作中に、デフォーカス量が合焦とみなせる範囲に入ったときに焦点調節状態を維持するモードである。
なお、以下の説明において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。また、カメラシステム2は、カメラシステム1と同様の構成であるので、構成部品として、図1に示したものを用い、また、構図の例として、図3を用いて説明する。
【0031】
図5は、カメラシステム2の第2モード選択時の動作を示すフローチャートである。
最初に、S101において、撮影者が操作部(図示せず)を操作して、第2モードを選択することにより処理が開始する。例えば、図3に示すように、後方の空に合焦している状態から、顔部41aに合焦させる場合に撮影者は、測距点指標12aを選択し、主要な撮影対象である顔部41aが測距点指標12aに入るように構図を決定する。
S102〜S104については、第1実施形態のS2〜S4の処理と同様なので、説明を省略する。
S105において、レンズ側制御部27は、撮影者のMF操作環23の操作にともなうデフォーカス量検出器16の出力に基づいて、デフォーカス量が合焦とみなせる範囲であると判断した場合(S105:YES)、ファインダ内の合焦判定表示を「合焦」に対応した表示にした後、S106に進む。一方、レンズ側制御部27は、合焦とみなせる範囲でない場合(S105:NO)、S102からの処理を繰り返す。
【0032】
S106において、レンズ側制御部27は、MF操作環回転量検出器24の出力に基づいて、MF操作環23の回転速度が規定速度以内であるか否かを判断する。このステップは、第1実施形態におけるS9と同様なステップである。MF操作環23の回転速度が規定速度以内である場合(S106:YES)には、S107に進む。一方、MF操作環23の回転速度が規定速度を超えている場合(S106:NO)には、S120に進んでAFモータによるフォーカスレンズ群の駆動を禁止し、S102からの処理を繰り返す。
【0033】
S107では、レンズ側制御部27は、MF操作環回転量検出器24の出力に基づいて、MF操作環23の操作量の検出を継続する。
S108では、レンズ側制御部27は、S107において検出されたMF操作環23の操作量に対応したフォーカスレンズ群22の駆動量を、MF操作環23の単位回転当たりのフォーカスレンズ群22の駆動量に基づき演算する。
S109では、S108において演算したフォーカスレンズ群22の駆動量に基づき、AFモータ30を駆動してフォーカスレンズ群22を駆動する。ただし、このステップでAFモータ30を駆動してフォーカスレンズ群22を駆動する方向は、MF操作環23を操作したことによりフォーカスレンズ群22が移動する方向とは逆の方向である。すなわち、MF操作環23を操作したことにより移動するフォーカスレンズ群22の移動を相殺するようにAFモータ30を駆動してフォーカスレンズ群22を駆動(相殺駆動)する。S109において相殺駆動をした後は、S106からの動作を繰り返す。
【0034】
S105においてデフォーカス量が合焦とみなせる範囲であると判断され(S105:YES)、ファインダ内の合焦判定表示が「合焦」に対応した表示になったときに、MF操作環23を操作している撮影者が操作を止めれば、合焦状態が維持される。しかし、撮影者がMF操作環23の操作を継続してしまうと、デフォーカス量が合焦とみなせる範囲を超えてしまうおそれがある。そこで、本実施形態における第2モードでは、S107〜S109の動作を行い、一度合焦とみなせる範囲にデフォーカス量が入った後は、撮影者によるMF操作環23の操作に関わらず、焦点調節状態を維持する相殺駆動を行い、撮影者を補助することとした。
なお、本実施形態では、合焦とみなせる状態になった後には、相殺駆動を行い合焦状態を維持することとしたが、AFによる合焦動作をより積極的に活用してもよい。すなわち、レンズ側制御部27は、一度、測距点指標12aに重なる顔部41aに対して合焦とみなせる状態となった後に、被写体の移動等にともない顔部41aが移動した場合に、デフォーカス量に基づいたAFによる合焦動作を実行して、合焦状態を維持してもよい。
【0035】
以上説明したように、本実施形態のカメラシステム2は、撮影者がMF操作環23を操作することにより、デフォーカス量が合焦とみなせる範囲に入った場合に、この状態を維持することにより、撮影者に、マニュアルフォーカスにより焦点調節をしているような感覚を与えながら合焦動作を正確に遂行することができる。
【0036】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
第1実施形態において、レンズ側制御部27は、デフォーカス量が合焦とみなせる範囲に入った後は、AFによる合焦動作のみを行う例を示したが、これに限定されない。例えば、レンズ側制御部27は、AFによる合焦動作に加え、第2実施形態と同様に、MF操作環23による焦点調節量を相殺する駆動量に基づいてAFモータ30を制御してもよい。
【0037】
また、第1実施形態において、デフォーカス量がほぼ合焦とみなせる範囲に入った後、いわゆる、コンティニュアスモードとして動作する例を示したが、これに限定されない。例えば、デフォーカス量がほぼ合焦とみなせる範囲に入った後、S6〜S7の処理を行わずAFによる合焦動作(S10)を行い合焦とみなせる範囲に入った場合に、フォーカスレンズ群22の位置を保持する、いわゆる、シングルモードと同様な動作を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1実施形態のカメラシステム1のブロック図である。
【図2】第1実施形態の第1モード選択時の動作を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態のファインダの表示例及び構図の例を示す図である。
【図4】第1実施形態のファインダの表示例及び構図の例を示す図である。
【図5】第2実施形態の第2モード選択時の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1,2…カメラシステム、10…カメラボディ、11…ミラー、12…スクリーン、12a〜12k…測距点指標、14…撮像素子、16…デフォーカス量検出器、17…ボディ側制御部、21…撮影光学系、22…フォーカスレンズ群、23…MF操作環、24…MF操作環回転量検出器、27…レンズ側制御部、28…モータ回転角計算器、30…AFモータ、31…差動機構、32…合焦機構、33…振れセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点調節用のフォーカスレンズ群を有する光学系と、
手動動作に応じて前記フォーカスレンズ群を焦点調節する焦点調節部と、
前記光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出部と、
前記焦点調節状態に応じて、前記フォーカスレンズ群を焦点調節する駆動部と、
前記焦点調節部によって前記焦点調節状態がほぼ合焦の状態となった場合に、前記駆動部によって前記フォーカスレンズ群を焦点調節制御する制御部と、
を備える焦点調節装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焦点調節装置において、
前記制御部は、前記焦点調節部によって前記焦点調節状態がほぼ合焦の状態となった後は、前記焦点調節部による焦点調節量に基づいて前記駆動部を制御すること、
を特徴とする焦点調節装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の焦点調節装置において、
前記焦点調節部と前記駆動部とは、差動機構を介して前記フォーカスレンズ群を駆動すること、
を特徴とする焦点調節装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の焦点調節装置において、
前記焦点調節部の操作量を検出する操作量検出部を備え、
前記制御部は、前記操作量検出部による単位時間あたりの前記操作量が所定の量よりも大きい場合、前記駆動部による制御を禁止すること、
を特徴とする焦点調節装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の焦点調節装置を備える光学機器。
【請求項6】
請求項5に記載の光学機器において、
前記光学系による像の構図変更量を検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記検出部による構図変更量が所定の量よりも大きい場合、前記駆動部による制御を禁止すること、
を特徴とする光学機器。
【請求項7】
焦点調節用のフォーカスレンズ群を有する光学系と、
手動動作に応じて前記フォーカスレンズ群を焦点調節する焦点調節部と、
前記光学系の焦点調節状態に応じて前記フォーカスレンズ群を焦点調節する駆動部と、
前記焦点調節部によって前記焦点調節状態がほぼ合焦の状態となった場合に、前記駆動部によって前記フォーカスレンズ群を焦点調節制御する制御部と、
を備えるレンズ鏡筒。
【請求項8】
請求項7に記載のレンズ鏡筒において、
前記レンズ鏡筒の振れを検出する振れ検出部を備え、
前記制御部は、前記振れ検出部によって検出される振れが所定値よりも大きい場合、前記駆動部による制御を禁止すること、
を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項9】
手動操作と駆動源によって移動可能なフォーカスレンズ群を有する光学系を焦点調節する焦点調節方法であって、
前記手動操作によって前記フォーカスレンズ群を移動し、
前記光学系の焦点調節状態を検出し、
前記焦点調節状態がほぼ合焦の状態となった場合に、前記駆動源によって前記フォーカスレンズ群を制御すること、
を特徴とする焦点調節方法。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−176242(P2008−176242A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12037(P2007−12037)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】