説明

焦点調節装置および撮像装置

【課題】焦点調節を行う焦点検出エリアを適切に決定する。
【解決手段】結像光学系の画面20内に設定された複数の焦点検出エリアで撮影光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出手段と、結像光学系による結像画像を撮像する撮像手段の撮像画像に基づいて、画面20内の主要被写体領域(22)を認識する被写体認識手段とを備え、主要被写体領域(22)に対応する焦点検出エリアで合焦判定を行った結果、合焦状態の焦点検出エリアがなかった場合には、前回の焦点調節時に焦点調節を行った焦点検出エリア(23)における合焦判定結果に基づいて、焦点調節を行う焦点検出エリアを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焦点調節装置と撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
追尾対象の画像を基準パターンとして記憶しておき、撮像画像から基準パターンに近似する画像を検出して追尾対象の位置を検出し、焦点調節の行う焦点検出エリアを追尾対象の位置へ移動するようにした焦点調節装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この出願の発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−215040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の焦点調節装置では、追尾対象の被写体を誤認識した場合や、撮影画面内の追尾対象の位置で焦点検出不能になった場合に、最適なAFエリア位置を決定できないという問題がある。
本発明は、焦点調節のための焦点検出エリアを適切に決定することができる焦点調節装置および撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る焦点調節装置は、結像光学系の画面内に設定された複数の焦点検出エリアで位相差による前記結像光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出手段と、前記結像光学系による結像画像を撮像する撮像手段の撮像画像に基づいて、前記画面内の主要被写体領域を認識する被写体認識手段と、前記焦点検出手段により検出された前記各焦点検出エリアの焦点調節状態と、前記被写体認識手段により認識された前記主要被写体領域とに基づいて、前記複数の焦点検出エリアの中から前記結像光学系の焦点調節制御を行う焦点検出エリアを決定するエリア決定手段と、前記エリア決定手段により決定された焦点検出エリアの焦点調節状態に基づいて前記結像光学系の焦点調節制御を行う焦点調節制御手段と、前記焦点調節制御手段による焦点調節制御に用いられた焦点検出エリアの位置情報を記憶する記憶手段とを備え、前記焦点調節制御手段は、前記結像光学系の焦点調節制御を繰り返し行い、前記エリア決定手段は、前記主要被写体領域に含まれる焦点検出エリアにおいて合焦判定できなかった場合には、前記記憶された位置情報に対応する前記主要被写体領域外にある焦点検出エリアの合焦判定結果に基づいて焦点調節制御を行う焦点検出エリアを決定すると共に、当該決定された焦点検出エリアの位置情報を前記記憶手段へ記憶更新することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、焦点調節を行う焦点検出エリアを適切に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施の形態のカメラの構成を示す断面図
【図2】撮影光学系の撮影画面内に設定された焦点検出エリア(AFエリア)を示す図
【図3】被写体認識機能により検出された主要被写体領域が図2に示す撮影画面上を移動する様子を示す図
【図4】各探索領域に含まれるAFエリアを示す図
【図5】一実施の形態の焦点調節動作を示すフローチャート
【図6】一実施の形態の変形例の焦点調節動作を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の焦点調節装置を備えた撮像装置を一眼レフデジタルカメラに適用した一実施の形態を説明する。なお、本願発明は一眼レフデジタルカメラに限定されず、被写体認識装置と位相差検出方式の焦点調節装置(以下、位相差AFと呼ぶ)を備えたあらゆる種類のカメラに適用することができる。
【0009】
一実施の形態のカメラは、人間の顔のテンプレート画像を用いてテンプレートマッチングを行い、撮像素子による撮像画像の中から顔を認識するなど、撮影光学系による結像画像を撮像する撮像素子の撮像画像に基づいて、撮影する主要被写体が結像光学系の撮影画面内のどの領域にあるかを認識する被写体認識機能と、撮影光学系の異なる瞳領域を透過した対の被写体像の位相差を検出することによって、撮影画面内の複数の焦点検出エリアで撮影光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出機能とを備え、被写体認識機能による主要被写体領域と焦点検出機能による各焦点検出エリアの焦点調節状態とに基づいて、撮影光学系の焦点調節を行う焦点検出エリアを決定する。
【0010】
図1は一実施の形態のカメラの構成を示す断面図である。撮影光学系1は被写体像を撮影画面上に結像させるための光学系であり、対物レンズ1a、ズーミングレンズ1b、絞
り1c、フォーカシングレンズ1dなどから構成される。クイックリターンミラー2は、露光前には図示するように撮影光学系1の撮影光路中に置かれ(ミラーダウン)、撮影光学系1を透過した被写体からの光束の一部を反射してファインダ光学系3〜5へ導く。一方、露光時にはクイックリターンミラー2が撮影光路中から退避され(ミラーアップ)、撮影光学系1を透過した被写体からの光束は撮像素子6へ導かれる。クイックリターンミラー2の中央部はハーフミラーになっており、撮影光学系1を透過した被写体からの光束の一部がハーフミラー部を透過してサブミラー7に反射され、位相差AF検出素子8へ導かれる。
【0011】
撮像素子6は、撮影光学系1により結像された被写体像を電気信号に変換して画像信号を出力する。図示を省略するが、撮像素子6の撮像面の前面には赤外光をカットするための赤外カットフィルタや画像の折り返しノイズを防止する光学的ローパスフィルタが配置されている。
【0012】
位相差AF検出素子8は、撮影光学系1からクイックリターンミラー2およびサブミラー7を介して導かれた被写体光をマスク(不図示)により複数対の光束に分けた後、再結像レンズ(不図示)により複数の光電変換素子列(CCD;不図示)上に再結像し、各光電変換素子列から対の被写体像に応じた信号を出力する。AF−CCD制御部9は、位相差AF検出素子8の複数の光電変換素子列の電荷蓄積制御、ゲイン調整、画像データの読み出し制御、画像データの補正などを行う。デフォーカス演算部10は、位相差AF検出素子8から出力される各対の被写体像信号のずれ量を検出し、各焦点検出エリアのずれ量に変換係数を乗じてデフォーカス量に変換する。
【0013】
レンズ駆動量演算部11は、各焦点検出エリアのデフォーカス量をレンズ駆動量に変換し、レンズ駆動制御部12へ出力する。レンズ駆動制御部12は、レンズ駆動用モータ13を駆動制御してフォーカシングレンズ1dの焦点調節を行う。
【0014】
ファインダ光学系はファインダスクリーン3、ペンタダハプリズム4、接眼レンズ5などから構成される。露光前にクイックリターンミラー2からファインダスクリーン3へ導かれた被写体光はファインダスクリーン3上で結像され、この被写体像はペンタダハプリズム4および接眼レンズ5を介して撮影者に観察される。また、ファインダスクリーン3に結像された被写体像はペンタダハプリズム4および測光用レンズ14を介して測光センサ15へ導かれ、被写界を複数の測光領域に分割して各測光領域ごとの被写体の明るさを測定する。
【0015】
測光センサ15は上述した被写体認識機能の撮像素子を兼ねており、撮影光学系1によりファインダスクリーン3上に結像された被写体像を電気信号に変換して画像信号を出力する。なお、測光センサ15を被写体認識機能の撮像素子として用いる代わりに、撮像用の撮像素子6を被写体認識機能の撮像素子として兼用してもよい。あるいは、被写体認識機能に用いる専用の撮像素子を設けてもよい。
【0016】
一実施の形態のカメラのボディおよびレンズ鏡筒には種々の操作部材16が設けられている。この操作部材16には、シャッターレリーズボタン、焦点検出エリアを選択するための十字キースイッチ、焦点調節モード(以下、AFモードと呼ぶ)を選択するためのAFモードスイッチ、各種撮影条件を設定するためのコマンドダイヤルスイッチなどが含まれる。制御装置17はマイクロコンピュータ、メモリ、A/Dコンバータなどを備え、操作部材16から各種情報を入力し、上述した撮像素子6、AF−CCD制御部9、デフォーカス演算部10、レンズ駆動量演算部11、レンズ駆動制御部12などを制御し、カメラのシーケンス制御、焦点検出制御、被写体認識制御、焦点調節制御などを行う。
【0017】
図2は、撮影光学系1の撮影画面20内に設定された焦点検出エリア(以下、AFエリアと呼ぶ)を示す図である。この一実施の形態では、撮影画面20内に31点のAFエリアを設定した例を示し、各AFエリアに1〜31の番号を付して区別する。なお、焦点検出エリアの個数と配置はこの一実施の形態のものに限定されない。
【0018】
図3は、被写体認識機能により検出された主要被写体領域が図2に示す撮影画面20上を移動する様子を示す図である。図において、破線枠21は前回の焦点調節時に認識された主要被写体領域であり、実線枠22は今回の焦点調節時に認識された主要被写体領域である。また、斜線のハッチングエリア23は、前回の焦点調節時に撮影光学系1の焦点調節を行うAFエリアに決定され、このAFエリアで検出されたデフォーカス量に基づいて撮影光学系1の焦点調節が行われたAFエリア(以下、前回の焦点調節時の採用エリアと呼ぶ)である。
【0019】
表1は、焦点調節を行うAFエリア、すなわち今回の焦点調節時の採用エリアを決定する手順と方法を示す。ここでは、主要被写体位置が図3に示すように移動した場合を例に上げて説明する。
【表1】

また、図4は各探索領域に含まれるAFエリアを示す。表1のAFエリア領域において、第一探索領域は、今回の焦点調節時に被写体認識機能により認識された主要被写体領域である。図3に示す例では、実線枠22で囲まれた領域であり、図4に示すようにAFエリア12,13,18,19(エリア番号は図2参照)が含まれる。この第一探索領域においては、AFエリアからの画像データの読み出し順序は任意であり、領域内のすべてのAFエリアから画像データを読み出す。
【0020】
また、第二探索領域は、前回の焦点調節時の採用エリア、すなわち焦点調節を行ったAFエリアとその周りのAFエリアを包含する領域である。図3に示す例では、斜線のハッチングエリア23が前回の焦点調節時の採用エリアであるから、図4に示すように第二探索領域にはAFエリア21,27,15,22,23,28,16,29,17(エリア番号は図2参照)が含まれる。この第二探索領域においては、AFエリア21,27,15,22,23,28,16,29,17の順に画像データを読み出し、採用エリアを決定した時点で読み出しを終了する。さらに、第三探索領域は、第一探索領域と第二探索領域に含まれない残りのAFエリアを包含する領域である。この第三探索領域においては、該当するAFエリアの中から任意の順序で画像データを読み出し、採用エリアを決定した時点で読み出しを終了する。
【0021】
なお、被写体認識機能により認識された主要被写体領域と焦点検出機能のAFエリアとの包含関係において、AFエリアが主要被写体領域に完全に包含されていなくても、AFエリアの一部が主要被写体領域と重なっていれば包含関係にあるとする。
【0022】
図5は一実施の形態の焦点調節動作を示すフローチャートである。このフローチャートにより、一実施の形態の動作を説明する。ステップ101においてフラグiに0を設定する。フラグiは、第一探索領域内のAFエリアで焦点検出演算を行うか否かを示すフラグであり、第一探索領域内のAFエリアで焦点検出演算を行う場合に0、それ以外の探索領
域内のAFエリアで焦点検出演算を行う場合に1を設定する。第一探索領域から焦点検出演算を開始するので最初はi=0である。
【0023】
ステップ102で、AF−CCD制御部9により各AFエリアの位相差AF検出素子8の電荷蓄積制御とゲイン調整を行う。ステップ103では、表1に示す読み出し順序にしたがって第一探索領域内のAFエリアの位相差AF検出素子8から画像データの読み出しを行う。ステップ104において、デフォーカス量演算部10により画像データに基づいてAFエリアごとに撮影光学系1の焦点調節状態、すなわちデフォーカス量を演算する。
【0024】
ステップ105で、第一探索領域内のすべてのAFエリアで焦点検出演算が終了したか否かを確認する。表1に示すように、第一探索領域ではすべてのAFエリアに対して焦点検出演算を行う。すべてのAFエリアに対する焦点検出演算が終了するまで画像データの読み出しと焦点検出演算を繰り返し、すべてのAFエリアの焦点検出演算が終了したらステップ106へ進む。
【0025】
ステップ106において、焦点検出演算のデフォーカス量に基づいて焦点調節を行うための採用エリアを決定する。まず、各AFエリアのデフォーカス量Dfvが次式を満足するか否かの合焦判定する。
Dfthmin≦Dfv≦Dfthmax ・・・(1)
(1)式において、DfthminとDfthmaxは合焦位置の目標位置に対する下限値と上限値である。(1)式に示す合焦判定条件を満たし、かつデフォーカス量Dfvが最小のAFエリアを採用エリアとする。なお、デフォーカス量Dfvが最小のAFエリアは、前回の焦点調節時と同一の被写体を捕捉している可能性が高いAFエリアである。
【0026】
ステップ107では採用エリアを決定することができたか否かを確認し、採用エリアを決定したらステップ111へ進み、決定できなかった場合はステップ108へ進む。採用エリアを決定できなかった場合は、ステップ108でフラグi=1か否か、つまり第二探索領域または第三探索領域におけるエリア決定処理が開始されているか否かを確認し、第二または第三探索領域におけるエリア決定処理が開始されていない場合はステップ109へ進み、フラグiに1を設定する。その後、ステップ103へ戻り、第二または第三探索領域内のAFエリアに対して上述した処理を繰り返す。
【0027】
一方、すでに第二探索領域または第三探索領域における処理を開始している場合には、ステップ110で第二探索領域および第三探索領域における焦点検出演算とエリア決定処理が終了したか否かを確認する。第二探索領域および第三探索領域の焦点検出演算とエリア決定処理が終了していない場合はステップ103へ戻り、第二または第三探索領域内のAFエリアに対して上述した処理を繰り返す。
【0028】
ステップ110において第二および第三探索領域で焦点検出演算とエリア決定処理を終了した場合には、いずれの探索領域のAFエリアでも適当なデフォーカス量が得られず、採用エリアを決定できなかったので、この一実施の形態では前回の焦点調節時の採用エリアである図3のハッチングエリア23、つまりAFエリア21を今回の焦点調節時の採用エリアとする。
【0029】
採用エリアの決定処理後のステップ111において、決定した採用エリアで検出されたデフォーカス量に基づいて現在のレンズ位置から目標とするレンズ位置までのレンズ駆動量を演算する。続くステップ112ではレンズ駆動制御部12により目標とするレンズ位置までフォーカシングレンズ1dを駆動する。ステップ113では、焦点調節を行う採用エリアに決定され、実際に焦点調節を行ったAFエリアを次の焦点調節時の基準となるAFエリアとし、その位置情報を制御装置17のメモリに記憶する。
【0030】
このように、一実施の形態によれば、撮影光学系1の撮影画面内に設定された複数のAFエリアで撮影光学系1のデフォーカス量を検出する焦点検出機能と、撮影光学系1による結像画像を撮像する測光センサ15の撮像画像に基づいて、撮影画面内の主要被写体領域を認識する被写体認識機能とを備え、主要被写体領域に対応するAFエリアで合焦判定を行った結果、合焦状態のAFエリア(合焦エリア)がなかった場合には、前回の焦点調節時に焦点調節を行ったAFエリアとその周辺のAFエリアにおける合焦判定結果に基づいて、焦点調節を行うAFエリア(採用エリア)を決定するようにしたので、主要被写体領域に対応するAFエリアで合焦エリアが見つからなかった場合でも、最適な採用エリアを効率よく、短時間で決定することができる。
【0031】
なお、主要被写体領域に対応するAFエリアで合焦エリアが見つからなかった場合に、まず、前回の焦点調節時に焦点調節を行ったAFエリアにおける合焦判定結果に基づいて採用エリアを決定し、合焦エリアが見つからなかった場合には、さらに前回の焦点調節時に焦点調節を行ったAFエリアの周辺のAFエリアにおける合焦判定結果に基づいて、採用エリアを決定するようしてもよい。
【0032】
また、一実施の形態によれば、前回の焦点調節時に焦点調節を行ったAFエリアからその周辺のAFエリアの順に合焦判定を行い、合焦エリアが検出された時点で合焦判定を終了するとともに、最初に合焦状態であると判定されたAFエリアを焦点調節を行う焦点検出エリアに決定するようにしたので、最適な採用エリアをさらに効率よく、素早く決定することができる。
【0033】
さらに、一実施の形態によれば、前回の焦点調節時に焦点調節を行ったAFエリアとその周辺のAFエリアの中に合焦エリアがなかった場合には、主要被写体領域に対応するAFエリアおよび前回の焦点調節時に焦点調節を行ったAFエリアとその周辺のAFエリアを除く残りのAFエリアで合焦判定を行い、合焦エリアが検出された時点で合焦判定を終了するとともに、最初に合焦状態であると判定されたAFエリアを焦点調節を行うAFエリアに決定するようにしたので、最適な採用エリアを効率よく、確実に決定することができる。
【0034】
《発明の一実施の形態の変形例》
被写体認識機能による主要被写体領域が前回の焦点調節時から移動しない場合には、前回の焦点調節時の採用エリアを優先エリアとする一実施の形態の変形例を説明する。
【0035】
図6は変形例の焦点調節動作を示すフローチャートである。なお、図5に示す処理と同様な処理を行うステップに対しては同一のステップ番号を付して相違点を中心に説明する。第一探索領域内の全AFエリアの演算終了後、ステップ201で被写体認識機能による主要被写体領域が前回の焦点調節時の領域から変化しているか否かを判別する。主要被写体領域の変化がある場合はステップ106へ進み、上述したエリア決定処理を行う。
【0036】
一方、主要被写体領域の移動がない場合はステップ202進み、前回の焦点調節時の採用エリアで検出されたデフォーカス量Dfvに対しては上記(1)式に代えて下記(2)式により合焦判定を行う。なお、前回の採用エリアが第一から第三のどの探索領域にあっても(2)式による合焦判定を行う。
1.5Dfthmin≦Dfv≦1.5Dfthmax ・・・(2)
前回の焦点調節時の採用エリア以外のAFエリアで検出されたデフォーカス量Dfvに対しては、上記(1)式により合焦判定を行う。(2)式は、上記(1)式に比べて合焦位置の目標位置に対する許容量が大きくなっており、前回の採用エリアが他のAFエリアに比べて今回の採用エリアに決定される確率が高くなる。
【0037】
前回の採用エリアで検出されたデフォーカス量Dfvが(2)式を満たす場合は、前回の採用エリアを今回もまた採用エリアとする。一方、前回の採用エリアのデフォーカス量Dfvが(2)式を満たさない場合は、残りのAFエリアの内、デフォーカス量Dfvが上記(1)式を満たし、かつ最小のデフォーカス量Dfvを示すAFエリアを今回の焦点調節時の採用エリアとする。
【0038】
このように、一実施の形態の変形例によれば、主要被写体領域に対応するAFエリアに対しては、デフォーカス量が(1)式に示す合焦判定範囲内にあり、かつ最小のデフォーカス量のAFエリアを合焦エリアと判定するとともに、主要被写体領域に対応するAFエリア以外のAFエリアに対しては、デフォーカス量が(1)式に示す合焦判定範囲内にあるAFエリアを合焦エリアと判定し、前回と今回の焦点調節時において主要被写体領域が変化していない場合には、前回の焦点調節時に焦点調節を行ったAFエリアに対する合焦判定範囲を(2)式に示すように広くするようにした。これにより、主要被写体領域が移動しなかった場合に、前回の採用エリアを今回の焦点調節時の採用エリアに選ばれ易くし、AFエリアが敏感に動いてしまうのを防止することができる。
【0039】
なお、上記一実施の形態の変形例において、図6ステップ202において、前回の採用エリアが第一から第三のどの探索領域にあっても、前回の採用エリアに対しては(2)式による合焦判定を行うこととした。
しかしながら、前回の採用エリアが第一探索領域に含まれるAFエリアであった場合(すなわち、主要被写体領域に含まれるAFエリアであった場合)、前回の採用エリアに対してだけでなく、主要被写体領域に含まれる複数のAFエリア(前回の採用エリアも含む)すべてに対して(2)式による合焦判定を行ってもよい。すなわち、主要被写体領域に含まれるAFエリアすべてに対して目標位置に対する許容量を大きくし、主要被写体領域内のAFエリアが採用エリアに決定される確率を高くする。
【符号の説明】
【0040】
1 撮影光学系
8 位相差AF検出素子
10 デフォーカス量演算部
11 レンズ駆動量演算部
12 レンズ駆動制御部
15 測光センサ
17 制御装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結像光学系の画面内に設定された複数の焦点検出エリアで位相差による前記結像光学系の焦点調節状態を検出する焦点検出手段と、
前記結像光学系による結像画像を撮像する撮像手段の撮像画像に基づいて、前記画面内の主要被写体領域を認識する被写体認識手段と、
前記焦点検出手段により検出された前記各焦点検出エリアの焦点調節状態と、前記被写体認識手段により認識された前記主要被写体領域とに基づいて、前記複数の焦点検出エリアの中から前記結像光学系の焦点調節制御を行う焦点検出エリアを決定するエリア決定手段と、
前記エリア決定手段により決定された焦点検出エリアの焦点調節状態に基づいて前記結像光学系の焦点調節制御を行う焦点調節制御手段と、
前記焦点調節制御手段による焦点調節制御に用いられた焦点検出エリアの位置情報を記憶する記憶手段とを備え、
前記焦点調節制御手段は、前記結像光学系の焦点調節制御を繰り返し行い、
前記エリア決定手段は、前記主要被写体領域に含まれる焦点検出エリアにおいて合焦判定できなかった場合には、前記記憶された位置情報に対応する前記主要被写体領域外にある焦点検出エリアの合焦判定結果に基づいて焦点調節制御を行う焦点検出エリアを決定すると共に、当該決定された焦点検出エリアの位置情報を前記記憶手段へ記憶更新することを特徴とする焦点調節装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焦点調節装置において、
前記エリア決定手段は、前記記憶された位置情報に対応する焦点検出エリアにおける合焦判定結果に加え、その焦点検出エリアの周辺の焦点検出エリアにおける合焦判定結果に基づいて、焦点調節制御を行う焦点検出エリアを決定することを特徴とする焦点調節装置。
【請求項3】
請求項2に記載の焦点調節装置において、
前記エリア決定手段は、前記記憶された位置情報に対応する焦点検出エリアからその周辺の焦点検出エリアの順に合焦判定を行い、合焦状態の焦点検出エリアが検出された時点で合焦判定を終了するとともに、最初に合焦状態であると判定された焦点検出エリアを焦点調節制御を行う焦点検出エリアに決定することを特徴とする焦点調節装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の焦点調節装置において、
前記エリア決定手段は、前記記憶された位置情報に対応する焦点検出エリアとその周辺の焦点検出エリアの中に合焦状態の焦点検出エリアがなかった場合には、前記主要被写体領域に含まれる焦点検出エリアおよび前記記憶された位置情報に対応する焦点検出エリアとその周辺の焦点検出エリアを除く残りの焦点検出エリアで合焦判定を行い、合焦状態の焦点検出エリアが検出された時点で合焦判定を終了するとともに、最初に合焦状態であると判定された焦点検出エリアを焦点調節制御を行う焦点検出エリアに決定することを特徴とする焦点調節装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の焦点調節装置において、
前記エリア決定手段は、前記各焦点検出エリアでの合焦判定は、焦点調節状態を示すデフォーカス量が所定範囲内にあるか否かに基づいて行うことを特徴とする焦点調節装置。
【請求項6】
請求項5に記載の焦点調節装置において、
前記エリア決定手段は、前記主要被写体領域に含まれる焦点検出エリアに対しては、前記デフォーカス量が前記所定範囲内にあり、かつ最小のデフォーカス量の焦点検出エリアを合焦状態であると判定し、前記主要被写体領域に含まれない焦点検出エリアに対しては、前記デフォーカス量が前記所定範囲内にある焦点検出エリアを合焦状態であると判定することを特徴とする焦点調節装置。
【請求項7】
請求項5に記載の焦点調節装置において、
前記エリア決定手段は、前回と今回の焦点調節時において前記主要被写体領域が変化していない場合には、前記記憶された位置情報に対応する焦点検出エリアに対する前記所定範囲を広くすることを特徴とする焦点調節装置。
【請求項8】
請求項7に記載の焦点調節装置において、
前記エリア決定手段は、前記主要被写体領域に含まれる複数の焦点検出エリアに対する前記所定範囲を広くすることを特徴とする焦点調節装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の焦点調節装置を備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−128441(P2012−128441A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23067(P2012−23067)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【分割の表示】特願2007−150546(P2007−150546)の分割
【原出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】