説明

焦電型赤外線検出素子、焦電型赤外線撮像素子および焦電型赤外線撮像装置

【課題】本発明は、従来の光チョッパを用いない一方で、従来の光チョッパを用いた構成のように、より均一な温度分布で間欠的に焦電部分を加熱することができる焦電型赤外線検出素子、焦電型赤外線撮像素子および焦電型赤外線撮像装置を提供する。
【解決手段】本発明の焦電型赤外線撮像素子1Aは、強誘電体材料を備え、焦電効果を利用することによって、受光した赤外線に基づく電気信号を出力する複数の焦電部11と、複数の焦電部11のそれぞれに熱を与えるためのヒータ部12と、ヒータ部12を複数の焦電部11の受光側に配置するように、ヒータ部12を支持する担持部13とを備え、ヒータ部12は、複数の焦電部11における各受光面全面を少なくとも覆う大きさであり、ヒータ部12と担持部13は、前記赤外線を透過する材料で形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦電効果によって赤外線を検出する焦電型赤外線検出素子に関する。そして、本発明は、赤外線で被写体を撮像する焦電型赤外線撮像素子およびこの焦電型赤外線撮像素子を備える焦電型赤外線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線検出素子(赤外線センサ)は、赤外線を受光し、この受光した赤外線に基づいて電気信号を出力する素子である。この赤外線検出素子は、人間では直接感知することができない赤外線領域の光を検出することができ、このため、暗闇でも対象物を非接触で検出することができ、また、対象物の温度を測定することができる。このような赤外線検出素子は、例えば人感センサ等の熱放射物体の検知センサ、物体の熱分布を画像として出力するサーモグラフィー、いわゆるナイトビジョン(暗視装置)等の様々な製品に応用されている。特に、車両に搭載されるナイトビジョンは、例えばライトによる可視光視界に加えて夜間の視界を拡大することによって安全走行に寄与することができる。
【0003】
このような赤外線検出素子は、その動作原理によって、量子型と熱型との2種類に大別される。この量子型赤外線検出素子は、例えば半導体のPN接合で生じる、光エネルギーを電気エネルギーへ直接的に変換する光起電力効果を利用することによって、赤外線を検出する素子である。熱型赤外線検出素子は、赤外線を受光することによって生じる熱で該素子が温められ、該素子温度の変化によって変化する電気的な性質を検知することによって、赤外線を検出する素子である。この熱型赤外線検出素子は、異なる物体に温度差を与えることによって起電力を生じる現象である熱起電力効果を利用したサーモパイル、温度変化により生じる電気抵抗変化を利用したサーミスターやボロメータ、温度変化によって誘電体の分極が変化する現象である焦電効果を利用した焦電型赤外線検出素子が知られている。
【0004】
図5は、特許文献1に開示されている焦電型赤外線センサの構成を示す図である。図6は、特許文献2に開示されている焦電型赤外線センサの構成を示す図である。
【0005】
この焦電型赤外線検出素子は、焦電効果の原理から、該素子温度が変化する場合に、その出力が得られるものである。このため、従来では、焦電型赤外線検出素子に入射される赤外線を入り切りする光チョッパが焦電型赤外線検出素子に用いられている。すなわち、例えば、特許文献1に開示されているように、図5において、強誘電体膜1002の両面に電極1003、1004を形成した構造の焦電センサ1001における受光側に、光チョッパ1006が配置される。そして、電極1003は、抵抗R0を介して電極1004に接続され、この抵抗R0の両端には、この両端の電位を測定するための演算増幅器1005が設けられる。このような構成の赤外線検出装置1000では、対象物から放射された赤外線であって焦電センサ1001に入射される赤外線は、光チョッパ1006によってオン/オフ(透過/遮断、入り切り)され、この赤外線が入射された場合における強誘電体膜1002の温度変化を、抵抗R0の両端の電位の変化として検出することによって、対象物から放射された赤外線の強度が検出される。
【0006】
このような構成の焦電型赤外線検出素子では、光チョッパを必要とするため、その駆動機構も必要となり、素子の大型化や消費電力の増大を招いてしまう。そこで、光チョッパを用いることなく、赤外線を検出する焦電型赤外線検出素子が、例えば、特許文献2に開示されている。
【0007】
この特許文献2に開示の焦電型赤外線センサ2000は、図6に示すように、基板2002上に第1絶縁膜2003を介して、第1焦電素子用電極2004、焦電素子2005および第2焦電素子用電極2006がこの順に積層して形成される。基板2002には、積層された第1焦電素子用電極2004、焦電素子2005および第2焦電素子用電極2006の積層領域直下の領域に、第1絶縁膜2003が露出する孔2002aが形成されている。そして、焦電素子2005の加熱のための発熱体である焦電素子加熱用抵抗2008、レーザダイオード2008aまたは発光ダイオード2008bが、焦電素子2005近傍で基板2002に支持脚2031で連結して固定された第2の基板2032上に、孔2002aに対向して配置されている。前記焦電素子加熱用抵抗2008には、タングステン(W)等の金属が用いられる。このような構成の焦電型赤外線センサ2000は、特許文献2によれば、焦電素子加熱用抵抗2008等にパルス電流を通電することによって、焦電素子2005を間欠的に加熱することができ、この結果、従来のようなチョッピングを行うことなく、焦電素子2005を一定温度に間欠的に変化されることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−019013号公報
【特許文献2】特開2004−279103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前記特許文献2に開示の焦電型赤外線センサ2000では、焦電素子2005を間欠的に加熱するために、タングステン等の焦電素子加熱用抵抗2008や、レーザダイオード2008aや、発光ダイオード2008bが焦電素子2005の受光側に用いられているが、これらは、赤外線が透過し難く、焦電素子2005における赤外線の受光を阻害している。より具体的には、焦電素子加熱用抵抗2008では、タングステン自体によって赤外線が吸収もしくは反射されてしまう。また、レーザダイオード2008aおよび発光ダイオード2008bでは、素子に配設される電極等によって赤外線が吸収もしくは反射されてしまう。
【0010】
そこで、前記特許文献2に開示の焦電型赤外線センサ2000において、焦電素子2005の受光面全面を焦電素子加熱用抵抗2008、レーザダイオード2008aまたは発光ダイオード2008bによって覆わないように、焦電素子加熱用抵抗2008、レーザダイオード2008aまたは発光ダイオード2008bを、リング形状としたり、焦電素子2005の受光面における中央領域の一部分を覆う形状としたりすることが考えられる。しかしながら、このような形状では、焦電素子2005の開口率が低下してしまう。また、このような形状では、焦電素子加熱用抵抗2008、レーザダイオード2008aまたは発光ダイオード2008bによる加熱によって、焦電素子2005に温度分布が生じてしまい、従来の光チョッパを用いた構成のように、焦電素子2005の温度分布を均一にすることが難しい。
【0011】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、従来の光チョッパを用いない一方で、従来の光チョッパを用いた構成のように、より均一な温度分布で間欠的に焦電部分を加熱することができる焦電型赤外線検出素子を提供することである。そして、本発明の目的は、このような焦電型赤外線撮像素子およびこの焦電型赤外線撮像素子を用いた焦電型赤外線撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる焦電型赤外線検出素子は、強誘電体材料を備え、焦電効果を利用することによって、受光した赤外線に基づく電気信号を出力する焦電部と、前記焦電部に熱を与えるためのヒータ部と、前記ヒータ部を前記焦電部の受光側に配置するように、前記ヒータ部を支持する担持部とを備え、前記ヒータ部は、前記焦電部の受光面全面を少なくとも覆う大きさであり、前記ヒータ部と前記担持部とは、前記赤外線を透過する材料で形成されることを特徴とする。
【0013】
このような構成の焦電型赤外線検出素子では、ヒータ部が焦電部の受光面全面を少なくとも覆う大きさであり、ヒータ部と担持部とが赤外線を透過する材料で形成される。このため、このような構成の焦電型赤外線検出素子は、前記ヒータ部によって焦電部の受光面全体を均一に加熱することができるとともに、対象物から放射される赤外線を前記ヒータ部および前記担持部を介して焦電部の受光面全体で受光することができる。したがって、このような構成の焦電型赤外線検出素子は、従来の光チョッパを用いない一方で、従来の光チョッパを用いた構成のように、より均一な温度分布で間欠的に焦電部を加熱することができる。
【0014】
また、他の一態様では、上述の焦電型赤外線検出素子において、前記ヒータ部は、前記担持部を形成する材料の組成を変更することによって形成されることを特徴とする。
【0015】
このような構成の焦電型赤外線検出素子は、ヒータ部が担持部を形成する材料の組成を変更することによって形成されるので、より薄く構成することができ、また、部品点数を低減することができる。
【0016】
また、他の一態様では、これら上述の焦電型赤外線検出素子において、前記担持部と協同して前記ヒータ部および前記焦電部を封止する封止部材をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
このような構成の焦電型赤外線検出素子は、ヒータ部および焦電部が封止部材によって封止されるので、これらヒータ部および焦電部の汚損を防止することができ、また、ヒータ部を焦電部により近接させて配置することができる。
【0018】
また、他の一態様では、これら上述の焦電型赤外線検出素子において、前記担持部における前記ヒータ部を支持する部分を除く部分に、封止された空間における真空度を維持するために気体状の粒子を捉えるゲッターをさらに備えることを特徴とする。
【0019】
このような構成の焦電型赤外線検出素子は、ゲッター(Getter)をさらに備えるので、封止された空間を所定の真空度の真空とした場合に、前記所定の真空度を維持することが可能となる。
【0020】
また、本発明の他の一態様にかかる焦電型赤外線撮像素子は、これら上述のいずれかの焦電型赤外線検出素子を複数備える。
【0021】
このような構成の焦電型赤外線撮像素子では、ヒータ部が焦電部の受光面全面を少なくとも覆う大きさであり、ヒータ部と担持部とが赤外線を透過する材料で形成される。このため、このような構成の焦電型赤外線撮像素子は、前記ヒータ部によって焦電部の受光面全体を均一に加熱することができるとともに、対象物から放射される赤外線を前記ヒータ部および前記担持部を介して焦電部の受光面全体で受光することができる。したがって、このような構成の焦電型赤外線撮像素子は、従来の光チョッパを用いない一方で、従来の光チョッパを用いた構成のように、より均一な温度分布で間欠的に焦電部を加熱することができる。
【0022】
また、本発明の他の一態様にかかる焦電型赤外線撮像素子は、強誘電体材料を備え、焦電効果を利用することによって、受光した赤外線に基づく電気信号を出力する複数の焦電部と、前記複数の焦電部のそれぞれに熱を与えるためのヒータ部と、前記ヒータ部を前記複数の焦電部の受光側に配置するように、前記ヒータ部を支持する担持部とを備え、前記ヒータ部は、前記複数の焦電部における各受光面全面を少なくとも覆う大きさであり、前記ヒータ部と前記担持部は、前記赤外線を透過する材料で形成されることを特徴とする。
【0023】
このような構成の焦電型赤外線撮像素子では、ヒータ部が複数の焦電部における各受光面全面を少なくとも覆う大きさであり、ヒータ部と担持部とが赤外線を透過する材料で形成される。このため、このような構成の焦電型赤外線撮像素子は、前記ヒータ部によって複数の焦電部における各受光面全体を均一に加熱することができるとともに、対象物から放射される赤外線を前記ヒータ部および前記担持部を介して複数の焦電部における各受光面全体で受光することができる。したがって、このような構成の焦電型赤外線撮像素子は、従来の光チョッパを用いない一方で、従来の光チョッパを用いた構成のように、より均一な温度分布で間欠的に各焦電部をそれぞれ加熱することができる。
【0024】
また、他の一態様では、上述の焦電型赤外線撮像素子において、前記ヒータ部は、前記担持部を形成する材料の組成を変更することによって形成されることを特徴とする。
【0025】
このような構成の焦電型赤外線撮像素子は、ヒータ部が担持部を形成する材料の組成を変更することによって形成されるので、より薄く構成することができ、また、部品点数を低減することができる。
【0026】
また、他の一態様では、これら上述の焦電型赤外線撮像素子において、前記担持部と協同して前記ヒータ部および前記複数の焦電部を封止する封止部材をさらに備えることを特徴とする。
【0027】
このような構成の焦電型赤外線撮像素子は、ヒータ部および複数の焦電部が封止部材によって封止されるので、これらヒータ部および各焦電部の汚損を防止することができ、また、ヒータ部を焦電部により近接させて配置することができる。
【0028】
また、他の一態様では、これら上述の焦電型赤外線撮像素子において、前記担持部における前記ヒータ部を支持する部分を除く部分に、封止された空間における真空度を維持するために気体状の粒子を捉えるゲッターをさらに備えることを特徴とする。
【0029】
このような構成の焦電型赤外線撮像素子は、ゲッター(Getter)をさらに備えるので、封止された空間を所定の真空度の真空とした場合に、前記所定の真空度を維持することが可能となる。
【0030】
また、本発明の他の一態様にかかる焦電型赤外線撮像装置は、これら上述のいずれかの焦電型赤外線撮像素子と、前記焦電型赤外線撮像素子の出力に基づいて画像形成を行う画像形成部とを備えることを特徴とする。
【0031】
このような構成の焦電型赤外線撮像装置は、これら上述のいずれかの焦電型赤外線撮像素子を用いるので、従来の光チョッパを用いない一方で、従来の光チョッパを用いた構成のように、より均一な温度分布で間欠的に各焦電部をそれぞれ加熱することができる。
【0032】
また、他の一態様では、上述の焦電型赤外線撮像装置において、前記焦電型赤外線撮像素子の受光面上に物体の赤外線の光学像を形成する撮像光学系をさらに備えることを特徴とする。
【0033】
このような構成の焦電型赤外線撮像装置は、撮像光学系をさらに備えるので、対象物体から放射される赤外線をより確実に焦電型赤外線撮像素子へ導光することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明にかかる焦電型赤外線検出素子、焦電型赤外線撮像素子および焦電型赤外線撮像装置は、従来の光チョッパを用いない一方で、従来の光チョッパを用いた構成のように、より均一な温度分布で間欠的に焦電部を加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態における焦電型赤外線撮像素子の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態の焦電型赤外線撮像素子における焦電部の構成を示す図である。
【図3】第2実施形態における焦電型赤外線撮像素子の構成を示す図である。
【図4】第3実施形態における焦電型赤外線撮像装置の構成を示す図である。
【図5】特許文献1に開示されている焦電型赤外線センサの構成を示す図である。
【図6】特許文献2に開示されている焦電型赤外線センサの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。また、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0037】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における焦電型赤外線撮像素子の構成を示す図である。図1(A)は、ヒータ部13へ電力を供給していない場合を示し、図1(B)は、ヒータ部13へ電力を供給している場合を示す。図2は、第1実施形態の焦電型赤外線撮像素子における焦電部の構成を示す図である。
【0038】
図1において、第1実施形態における焦電型赤外線撮像素子1Aは、複数の焦電部11(11−1、11−2、11−3、・・・)と、ヒータ部12と、担持部13とを備えている。そして、図1に示す例では、焦電型赤外線撮像素子1Aは、図略の電源装置からヒータ部12へ電力を供給するための一対の電極15−1、15−2および複数の焦電部11が2次元アレイ状に配設されこれら複数の焦電部11を支持する基板14をさらに備えている。
【0039】
焦電部11は、強誘電体材料を備え、焦電効果を利用することによって、受光した赤外線に基づく電気信号を出力する素子である。焦電部11の詳細は、後述する。
【0040】
ヒータ部12は、これら複数の焦電部11のそれぞれに熱を与えるための素子である。このため、ヒータ部12は、これら複数の焦電部11における各受光面全面を少なくとも覆う大きさ(面積)を有している。ヒータ部12は、本実施形態では、通電することによってジュール熱を発生する電気的な抵抗体である。
【0041】
担持部13は、ヒータ部12を複数の焦電部11の受光側に所定の距離だけ離間して配置するように、ヒータ部12を支持する部材である。本実施形態では、例えば、複数の焦電部11を支持する前記基板14およびヒータ部12を支持する該担持部13が焦電型赤外線撮像素子1Aの図略の筐体(ハウジング)に取り付けられて固定されることによって、ヒータ部12と複数の焦電部11の受光面とは、所定の距離だけ離間して配置される。
【0042】
そして、本実施形態の焦電型赤外線撮像素子1Aでは、これらヒータ部12と担持部13は、赤外線を透過する材料で形成される。ここで、透過とは、50%より多くの光が該材料を透過することをいうが、もちろん、焦電型赤外線撮像素子1Aの受光感度を向上するために、透過率が高いほどより好ましい。
【0043】
これらヒータ部12および担持部13を形成する材料は、例えば、赤外線を透過する半導体材料、より具体的には、比較的高い透過率を赤外線の波長領域に持つシリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)である。特にゲルマニウムは、赤外線に対しほぼ透明である。そして、ヒータ部12は、担持部13の一方主面に例えば燐(P;n型ドーパントの一例)やホウ素(B;p型ドーパントの一例)等の不純物を所定の濃度でドープすることによって形成される。このようなヒータ部12の抵抗率は、周知の通り、不純物の濃度に応じて決まる。このように本実施形態では、ヒータ部12は、担持部13を形成する材料の組成を変更することによって形成される。また、このよう構成のヒータ部12に対し、一対の電極15−1、15−2は、不純物をドープした不純物添加領域(ヒータ部12)の両端上に例えば蒸着等によって例えばアルミニウムや金等の導体金属で薄膜状に形成される。なお、ヒータ部12は、担持部13とは別体の抵抗体であってこの抵抗体を担持部13の一方主面に取り付けることで構成され、また、一対の電極15−1、15−2は、例えばワイヤーボンディング等によって該抵抗体に接続された導体線であってもよい。
【0044】
そして、ヒータ部12が形成された担持部13は、ヒータ部12が焦電部11により近接するように、このヒータ部12が形成された一方主面を複数の焦電部11の各受光面側に向けて(このヒータ部12が形成された一方主面と複数の焦電部11の各受光面とを互いに対向させて)配置される。
【0045】
次に、焦電部11について説明する。焦電部11は、例えば、図2に示すように、基板111と、基板111上に積層形成された第1絶縁層112と、第1絶縁層112上に積層形成された下部電極層113と、下部電極層113上に積層形成された強誘電体層114と、強誘電体層114上に積層形成された上部電極115とを備える。
【0046】
基板111は、加工性や熱伝導性の観点から、例えばシリコンで形成される。第1絶縁層112は、本実施形態では、基板111をシリコンで形成していることから、シリコン酸化膜(SiO、二酸化シリコン)、より具体的にはシリコン熱酸化膜で形成される。下部電極層113は、上部電極層115と対となって強誘電体層114で生じる電位を取り出すための電極であり、強誘電体層114を支持するとともに強誘電体層114の熱をバランスよく断熱および放熱するように機能し、例えば、白金で形成される。強誘電体層114は、後述するように、対象物からの熱と対象物およびヒータ部12からの熱とを切り換えて受光するため、対象物からの熱を受光している期間あるいは対象物およびヒータ部12からの熱を受光している期間(受光期間)では断熱されていることが好ましく、対象物からの熱の受光から対象物およびヒータ部12からの熱の受光へ切り換える期間(切換期間)、あるいは、対象物およびヒータ部12からの熱の受光から対象物からの熱の受光へ切り換える期間(切換期間)では速やかに放熱されることが好ましい。特に放熱性よりも断熱性が重視され、断熱性と放熱性とのバランスが適宜に設計される。下部電極層113は、電気伝導性がよいだけでなく、このような相反する特性を比較的バランスよく実現する必要があり、このような観点から、下部電極層113の材料は、上記の通り白金が好ましい。強誘電体層114は、焦電効果を利用することによって、受光した赤外線に基づく電気信号を出力する部材であり、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O;PZT)やチタン酸バリウム(BaTiO)やPLT(Pb,La)TiO)等である。PZTの場合では、下部電極層113との界面での結晶面が(100)の菱面体晶となるように、強誘電体層114は、下部電極層113上に形成される。上部電極層115は、下部電極層113と対となって強誘電体層114で生じる電位を取り出すための電極であり、例えば、Ti/Pt/AuやTi/Auで形成される。
【0047】
これら第1絶縁層112、下部電極層113、強誘電体層114および上部電極層115は、例えば、平面視にて矩形形状である。そして、下部電極層113は、他の配線と電気的に接続するために、一方端で外方に延びる下部電極端子部113aを有しており、また、上部電極層115は、他の配線と電気的に接続するために、前記一方端と対向する他方端で第1絶縁層112に達するまで外方に延びる上部電極端子部115aを有している。そして、この上部電極端子部115a下には、下部電極層113と絶縁するために、第2絶縁層116が形成されている。すなわち、第2絶縁層116は、強誘電体層114の一方端部外縁であって下部電極層113上に積層形成されている。第2絶縁層116は、例えばCVD法によって形成されたパリレン絶縁膜等である。なお、上部電極層115上には、例えば金ブラックなどの赤外線吸収に優れた、赤外線吸収層がさらに設けられてもよい。
【0048】
そして、上部電極層116および下部電極層113を外部の配線に電気的に接続して強誘電体層114で生じる電位を外部に取り出すために、前記上部電極層116の上部電極端子部116aと電気的に接続される貫通電極117−1が基板111および第1絶縁層112を貫通して形成され、この下部電極層113の下部電極端子部113aと電気的に接続される貫通電極117−2が基板111および第1絶縁層112を貫通して形成されている。
【0049】
また、基板111には、積層された下部電極層113、強誘電体層114および上部電極層115における積層領域直下の領域に、下部電極層113が露出する開口(下部電極層113が外部に臨む開口)である開口部APが形成されている。
【0050】
このような構造の焦電部11は、赤外線の波長を勘案して、例えば、平面視にて、一辺が十数μm〜数十μmの矩形である。なお、基板111、第1絶縁層112、下部電極層113、強誘電体層114、上部電極層115および第2絶縁層116は、上述の材料に限定されるものではなく、適宜な他の材料であってもよい。
【0051】
このような構成の焦電型赤外線撮像素子1Aは、ヒータ部12に通電しない環境温度状態と、ヒータ部12に通電する加熱状態とを切り換えることによって対象物から放射される赤外線を個々の焦電部11で検出し、各焦電部11の出力に基づいて対象物を撮像する。
【0052】
より具体的には、ヒータ部12に通電しない環境温度状態では、ヒータ部12は、電気エネルギーが供給されていないため、ジュール熱を発生しない。そして、担持部13およびヒータ部12は、赤外線を透過する材料によって形成され、さらに、ヒータ部12は、複数の焦電部11(11−1、11−2、11−3、・・・)における各受光面全面を少なくとも覆う大きさである。このため、図1(A)に示すように、対象物から放射された赤外線(対象物放射赤外線)は、担持部13およびヒータ部12を透過し、複数の焦電部11の各受光面に達し、複数の焦電部11は、それぞれ、この対象物放射赤外線を担持部13およびヒータ部12を介して受光する。この結果、複数の焦電部11は、それぞれ、この対象物放射赤外線に応じた温度(対象物起因温度)となって、この温度に応じた分極状態となる。ここで、仮に、対象物放射赤外線が例えば減衰等の影響をヒータ部12によって受ける場合でも、上述のように、ヒータ部12は、複数の焦電部11における各受光面全面を少なくとも覆う大きさであるので、複数の焦電部11は、それぞれ、同様に影響を受けた対象物放射赤外線を受光することができる。なお、この環境温度状態は、従来の光チョッパでオン/オフ(透過/遮断)する場合におけるオン(透過)状態に相当する。
【0053】
一方、ヒータ部12に通電する加熱状態では、ヒータ部12は、電気エネルギーが供給されるため、ジュール熱を発生し、赤外線(ヒータ部放射赤外線)を放射する。そして、ヒータ部12は、複数の焦電部11(11−1、11−2、11−3、・・・)における各受光面全面を少なくとも覆う大きさである。このため、図1(B)に示すように、ヒータ部放射赤外線に、担持部13およびヒータ部12を介した対象物放射赤外線を加えた放射線(対象物放射赤外線+ヒータ部放射赤外線)が、一様に、複数の焦電部11における各受光面にそれぞれ到達し、複数の焦電部11は、それぞれ、この赤外線(対象物放射赤外線+ヒータ部放射赤外線)を受光する。この結果、焦電部11は、これら対象物放射赤外線およびヒータ部放射赤外線の和の赤外線に応じた温度(ヒータ部付加温度)となって、この温度に応じた分極状態となる。なお、この加熱状態は、従来の光チョッパでオン/オフ(透過/遮断)する場合におけるオフ(遮断)状態に相当する。
【0054】
したがって、このような構成の焦電型赤外線撮像素子1Aでは、環境温度状態から過熱状態へ、あるいは、過熱状態から環境温度状態へ切り換えることによって、対象物起因温度とヒータ部付加温度との差に応じた電気信号が焦電部11より出力される。このため、ヒータ部12に供給される電気エネルギーを所定の一定値に設定することによって、ヒータ部12のヒータ部放射赤外線が一定となり、このような構成の焦電型赤外線撮像素子1Aは、ヒータ部12のヒータ部放射赤外線を基準として対象物の温度を検出することができる。
【0055】
このように本実施形態の焦電型赤外線撮像素子1Aでは、ヒータ部12が複数の焦電部11における各受光面全面を少なくとも覆う大きさであり、ヒータ部12と担持部13とが赤外線を透過する材料で形成されるので、本実施形態の焦電型赤外線撮像素子1Aは、ヒータ部12によって複数の焦電部11における各受光面全体を均一に加熱することができるとともに、対象物から放射される赤外線をヒータ部12および担持部13を介して複数の焦電部11における各受光面全体で受光することができる。したがって、本実施形態の焦電型赤外線撮像素子1Aは、従来の光チョッパを用いない一方で、従来の光チョッパを用いた構成のように、より均一な温度分布で間欠的に各焦電部11をそれぞれ加熱することができる。
【0056】
また、本実施形態の焦電型赤外線撮像素子1Aでは、ヒータ部12は、担持部13を形成する材料の組成を変更することによって形成されている。このため、本実施形態の焦電型赤外線撮像素子1Aは、ヒータ部12が担持部13を形成する材料の組成を変更することによって形成されるので、より薄く構成することができ、また、部品点数を低減することができる。
【0057】
なお、上述では、対象物を撮像するべく、基板14に2次元アレイ状に配設された複数の焦電部11を備えた焦電型赤外線撮像素子1Aであったが、対象物の赤外線を検出だけであれば、1個の焦電部11を備えた焦電型赤外線検出素子であってもよい。もちろん、この焦電型赤外線検出素子は、1個の焦電部11の他に、上述の焦電型赤外線撮像素子1Aと同様のヒータ部12、担持部13、基板14および一対の電極15−1、15−2を備え、焦電部11が1個である点を除き、上述の焦電型赤外線撮像素子1Aと同様に構成される。そして、このような1個の焦電部11を備えた焦電型赤外線検出素子を2次元アレイ状に複数備えることによって、対象物を赤外線で撮像する焦電型赤外線撮像素子が構成されてもよい。
【0058】
次に、別の実施形態について説明する。
【0059】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態における焦電型赤外線撮像素子の構成を示す図である。第2実施形態における焦電型赤外線撮像素子1Bは、第1実施形態の焦電型赤外線撮像素子に1Aに対し、パッケージ化したものである。
【0060】
この第2実施形態における焦電型赤外線撮像素子1Bは、例えば、図3に示すように、複数の焦電部11(11−1、11−2、11−3、・・・)と、ヒータ部12と、担持部13と、担持部13と協同してヒータ部12および焦電部11を封止する封止部材16とを備えている。そして、図3に示す例では、焦電型赤外線撮像素子1Bは、図略の電源装置からヒータ部12へ電力を供給するための一対の電極15−1、15−2および複数の焦電部11が2次元アレイ状に配設されこれら複数の焦電部11を支持する基板14をさらに備えている。これら第2実施形態の焦電型赤外線撮像素子1Bにおける複数の焦電部11、ヒータ部12、担持部13、基板14および電極15は、第1実施形態の焦電型赤外線撮像素子1Aにおける複数の焦電部11、ヒータ部12、担持部13、基板14および電極15とそれぞれ同様であるので、その説明を省略する。
【0061】
封止部材16は、複数の焦電部11およびこれら複数の焦電部11を配設した基板14を収容するための収容凹部CPを形成した部材である。収容凹部CPの周壁における解放端部の端面に、ヒータ部12を形成した前記一方主面を収容凹部CP側に向けて担持部13が接着固定される。これによって封止部材16は、担持部13と協同してヒータ部12および焦電部11を封止する。
【0062】
より具体的には、封止部材16は、有底短高であって断面矩形形状の筒状部材であり、例えばセラミック等によって形成される。この封支部材16の内底面には、複数の焦電部11を配設した基板14が固定される。この封止部材16の外周は、担持部13の外周と略同じ大きさであり、この筒状の封止部材16における解放端側(天井端側)には、前記解放端を閉塞するように、その周面の解放端側の端面に、例えば半田等によってヒータ部12を形成した前記一方主面を底側に向けて担持部13が接着固定される。これによって封止部材16は、担持部13と協同してヒータ部12および焦電部11を封止する。そして、封止部材16には、ヒータ部12上に形成された前記一対の電極15−1、15−2のそれぞれに電気的に接続された一対のヒータ部用配線161−1、161−2が封止部材16の底部を貫通するように形成されている。また、封止部材16には、その底部を貫通するように複数の信号用配線163(163−1、163−2、・・・)が形成されており、これら複数の信号用配線163のそれぞれに接続された複数の電極パッド162(162−1、162−2、・・・)が封止部材16の内底面に形成されている。そして、複数の焦電部11における各信号出力線が複数の電極パッド162に例えばワイヤーボンディング等によってそれぞれ接続されている。
【0063】
そして、本実施形態では、封止部材16は、担持部13と協同してヒータ部12および焦電部11を所定の真空度で封止しており、前記所定の真空度を維持するべく、担持部13における、ヒータ部12を形成した前記一方主面上には、担持部13におけるヒータ部12を支持する部分を除く部分に、本実施形態では、ヒータ部12を形成した領域を除く領域に、その封止された内側空間における真空度を維持するための、気体状の粒子を捉えるゲッター17が配設されている。より具体的には、矩形形状のヒータ部12における、前記一対の電極15−1、15−2が形成された両端を除く両側端に、側端から所定の距離だけ離隔して側端に沿うように、一対のゲッター17−1、17−2が担持部13の前記一方主面上に帯状に形成されている。ゲッター17は、例えばチタン(Ti)等の金属膜であり、原子や分子、あるいはそれらのイオンの気体状の粒子を吸着することによって捉え、前記所定の真空度を維持するように機能する。
【0064】
このような構成の第2実施形態における焦電型赤外線撮像素子1Bは、第1実施形態の焦電型赤外線撮像素子1Bにおける作用効果に加え、ヒータ部12および複数の焦電部11が封止部材16によって封止されるので、これらヒータ部12および各焦電部11の汚損を防止することができ、また、ヒータ部を焦電部により近接させて配置することができる。
【0065】
さらに、本実施形態の焦電型赤外線撮像素子1Bは、ゲッター17をさらに備えるので、封止された空間を所定の真空度の真空とした場合に、前記所定の真空度を維持することが可能となる。
【0066】
そして、この第2実施形態の場合も第1実施形態の場合と同様に、対象物の赤外線を検出だけであれば、1個の焦電部11を備えた焦電型赤外線検出素子であってもよい。もちろん、この焦電型赤外線検出素子は、1個の焦電部11の他に、上述の焦電型赤外線撮像素子1Bと同様のヒータ部12、担持部13、基板14、一対の電極15−1、15−2および封止部材16を備え、焦電部11が1個である点を除き、上述の焦電型赤外線撮像素子1Bと同様に構成される。そして、このような1個の焦電部11を備えた焦電型赤外線検出素子を2次元アレイ状に複数備えることによって、対象物を赤外線で撮像する焦電型赤外線撮像素子が構成されてもよい。
【0067】
次に、別の実施形態について説明する。
【0068】
(第3実施形態)
図4は、第3実施形態における焦電型赤外線撮像装置の構成を示す図である。この第3実施形態における焦電型赤外線撮像装置30は、これら上述の第1または第2実施形態における焦電型赤外線撮像素子1A、1Bを備える撮像装置であり、本実施形態では、焦電型赤外線撮像素子1(1A、1B)の受光面上に物体の赤外線の光学像を形成する撮像光学系と、焦電型赤外線撮像素子1の出力に基づいて画像形成を行う画像形成部とをさらに備えている。
【0069】
より具体的には、例えば、図4に示すように、第3実施形態における焦電型赤外線撮像装置30は、結像のために、撮像光学系21および駆動部34と、撮像機能のために、焦電型赤外線撮像素子1(1A、1B)、画像生成部31、画像データバッファ32および画像形成部33と、全体制御のために、制御部35および記憶部36と、外部との入出力のために、I/F部37とを備えている。
【0070】
撮像光学系21は、焦電型赤外線撮像素子1の受光面上に赤外線による物体(被写体)の光学像を形成する光学素子である。撮像光学系21は、例えば、光学絞り、赤外線に対しレンズ作用(屈折力=1/焦点距離)を持つ1または複数のレンズ、光軸方向にフォーカスのためのレンズを駆動してフォーカシングを行うためのレンズ駆動装置等を備えている。被写体からの赤外線は、撮像光学系21によって焦電型赤外線撮像素子1の受光面上に結像され、赤外線による被写体の光学像となる。
【0071】
焦電型赤外線撮像素子1は、上述した第1および第2実施形態における焦電型赤外線撮像素子1A、1Bのいずれかの素子である。焦電型赤外線撮像素子1は、電気信号を画像信号として画像生成部31に出力する。焦電型赤外線撮像素子1は、制御部35の制御に従って静止画あるいは動画のいずれか一方の撮像、または、焦電型赤外線撮像素子1における各画素の出力信号の読出し(水平同期、垂直同期、転送)などの撮像動作が制御される。
【0072】
画像生成部31は、焦電型赤外線撮像素子1からのアナログ出力信号に対し、増幅処理、デジタル変換処理等を行うと共に、画像全体に対して適正な黒レベルの決定や各種の補正処理等の周知の画像処理を行って、画像信号から画像データを生成する。画像生成部31で生成された画像データは、画像データバッファ32に出力される。
【0073】
画像データバッファ32は、画像データを一時的に記憶するとともに、この画像データに対し画像形成部33によって後述の処理を行うための作業領域として用いられるメモリであり、例えば、揮発性の記憶素子であるRAM(Random Access Memory)などで構成される。
【0074】
画像形成部33は、画像データバッファ32の画像データに基づいて画像形成を行う回路である。画像形成部33は、例えば、画像データバッファ32の画像データに対し、解像度変換や、信号レベルに対し輝度レベルの割り当てあるいは色の割り当て等の所定の画像処理を行う。
【0075】
駆動部34は、制御部35から出力される制御信号に基づいて図略の前記レンズ駆動装置を動作させることによって、所望のフォーカシングを行わせるように撮像光学系21におけるフォーカスのためのレンズを駆動する。
【0076】
制御部35は、例えばマイクロプロセッサおよびその周辺回路などを備えて構成され、焦電型赤外線撮像素子1、画像生成部31、画像データバッファ32、画像形成部33、駆動部34、記憶部36およびI/F部37の各部の動作をその機能に従って制御する。すなわち、この制御部35によって、焦電型赤外線撮像装置1は、被写体の静止画撮影および動画撮影の少なくとも一方の撮影を実行するよう制御される。
【0077】
記憶部36は、制御プログラムや被写体の静止画撮影または動画撮影によって生成された画像データを記憶する記憶回路であり、例えば、不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や、書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)や、RAMなどを備えて構成される。記憶部36は、静止画用および動画用のメモリとしての機能を有する。
【0078】
I/F部37は、外部機器と画像データを送受信するインタフェースであり、例えば、USBやIEEE1394などの規格に準拠したインタフェースである。
【0079】
このような構成の焦電型赤外線撮像装置30の撮像動作に次について説明する。
【0080】
静止画を撮影する場合は、制御部35は、焦電型赤外線撮像素子1に静止画の撮影を行わせるように制御すると共に、駆動部34を介して撮像光学系21における前記レンズ駆動装置を動作させることによってフォーカシングを行う。これにより、ピントの合った赤外線による光学像が焦電型赤外線撮像素子1の受光面に周期的に繰り返し結像され、画像信号が焦電型赤外線撮像素子1から画像生成部31へ出力される。その画像信号は、画像データバッファ32に一時的に記憶され、画像形成部33により画像形成処理が行われた後、その画像信号に基づく画像がディスプレイ(不図示)に表示される。そして、撮影者は、前記ディスプレイを参照することで、主被写体をその画面中の所望の位置に収まるように調整することが可能となる。この状態でいわゆるシャッターボタン(不図示)が押されることによって、静止画用のメモリとしての記憶部36に画像データが格納され、静止画像が得られる。
【0081】
また、動画撮影を行う場合は、制御部35は、焦電型赤外線撮像素子1に動画の撮影を行わせるように制御する。後は、静止画撮影の場合と同様にして、撮影者は、前記ディスプレイ(不図示)を参照することで、撮像装置21を通して得た被写体の像が、その画面中の所望の位置に収まるように調整することができる。前記シャッターボタン(不図示)が押されることによって、動画撮影が開始される。そして、動画撮影時、制御部35は、焦電型赤外線撮像素子1に動画の撮影を行わせるように制御すると共に、駆動部34を介して撮像光学系21における前記レンズ駆動装置を動作させ、フォーカシングを行う。これによって、ピントの合った赤外線による光学像が焦電型赤外線撮像素子1の受光面に周期的に繰り返し結像され、画像信号が焦電型赤外線撮像素子1から画像生成部31へ出力される。その画像信号は、画像データバッファ32に一時的に記憶され、画像形成部33により画像形成処理が行われた後、その画像信号に基づく画像がディスプレイ(不図示)に表示される。そして、もう一度前記シャッターボタン(不図示)を押すことで、動画撮影が終了する。撮影された動画像は、動画用のメモリとしての記憶部36に導かれて格納される。
【0082】
上述では、一般的な光学カメラのようにシャッターボタンの操作によって静止画撮影や動画撮影が行われる態様について説明したが、監視カメラやナイトビジョンのように焦電型赤外線撮像装置30が起動されると、動作中は常時、動画撮影が行われ、この撮影した動画がディスプレイに表示される態様であってもよい。
【0083】
このような構成の焦電型赤外線撮像装置30は、これら上述のいずれかの焦電型赤外線撮像素子1A、1Bを用いるので、従来の光チョッパを用いない一方で、従来の光チョッパを用いた構成のように、より均一な温度分布で間欠的に各焦電部をそれぞれ加熱することができる。
【0084】
また、このような構成の焦電型赤外線撮像装置30は、撮像光学系11をさらに備えるので、被写体の対象物から放射される赤外線をより確実に焦電型赤外線撮像素子1へ導光することができる。
【0085】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0086】
1A、1B 焦電型赤外線撮像素子
11 焦電部
12 ヒータ部
13 担持部
16 封止部材
17 ゲッター
114 強誘電体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強誘電体材料を備え、焦電効果を利用することによって、受光した赤外線に基づく電気信号を出力する焦電部と、
前記焦電部に熱を与えるためのヒータ部と、
前記ヒータ部を前記焦電部の受光側に配置するように、前記ヒータ部を支持する担持部とを備え、
前記ヒータ部は、前記焦電部の受光面全面を少なくとも覆う大きさであり、
前記ヒータ部と前記担持部とは、前記赤外線を透過する材料で形成されること
を特徴とする焦電型赤外線検出素子。
【請求項2】
前記ヒータ部は、前記担持部を形成する材料の組成を変更することによって形成されること
を特徴とする請求項1に記載の焦電型赤外線検出素子。
【請求項3】
前記担持部と協同して前記ヒータ部および前記焦電部を封止する封止部材をさらに備えること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の焦電型赤外線検出素子。
【請求項4】
前記担持部における前記ヒータ部を支持する部分を除く部分に、封止された空間における真空度を維持するために気体状の粒子を捉えるゲッターをさらに備えること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の焦電型赤外線検出素子。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の焦電型赤外線検出素子を複数備える焦電型赤外線撮像素子。
【請求項6】
強誘電体材料を備え、焦電効果を利用することによって、受光した赤外線に基づく電気信号を出力する複数の焦電部と、
前記複数の焦電部のそれぞれに熱を与えるためのヒータ部と、
前記ヒータ部を前記複数の焦電部の受光側に配置するように、前記ヒータ部を支持する担持部とを備え、
前記ヒータ部は、前記複数の焦電部における各受光面全面を少なくとも覆う大きさであり、
前記ヒータ部と前記担持部は、前記赤外線を透過する材料で形成されること
を特徴とする焦電型赤外線撮像素子。
【請求項7】
前記ヒータ部は、前記担持部を形成する材料の組成を変更することによって形成されること
を特徴とする請求項6に記載の焦電型赤外線撮像素子。
【請求項8】
前記担持部と協同して前記ヒータ部および前記複数の焦電部を封止する封止部材をさらに備えること
を特徴とする請求項6または請求項7に記載の焦電型赤外線撮像素子。
【請求項9】
前記担持部における前記ヒータ部を支持する部分を除く部分に、封止された空間における真空度を維持するために気体状の粒子を捉えるゲッターをさらに備えること
を特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の焦電型赤外線撮像素子。
【請求項10】
請求項5ないし請求項9のいずれか1項に記載の焦電型赤外線撮像素子と、
前記焦電型赤外線撮像素子の出力に基づいて画像形成を行う画像形成部とを備えること
を特徴とする焦電型赤外線撮像装置。
【請求項11】
前記焦電型赤外線撮像素子の受光面上に物体の赤外線の光学像を形成する撮像光学系をさらに備えること
を特徴とする請求項10に記載の焦電型赤外線撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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