説明

焼成器における受皿用マット

【課題】 ガスレンジ等の焼成器によって魚を焼成する際に、滴下する油分を受皿内に滞留させることなく且つ燃焼させることなく吸収、保有すると共に、魚をこんがりと焼成することができる受皿用マットを提供する。
【解決手段】 紙材1aの上面にアルミ箔1bを層着してなるシート状物1を谷部10と山部11とが交互に連続してなる断面波形状に形成して、このシート状物1を紙材からなる吸油シート材2の上面に重ね合わせてその谷部10を接着することにより受皿用マットを形成してあり、魚を焼成する際に、滴下する油分を谷部10内を通じてこの谷部10の両端開口部10a、10a から上記吸油シート材2に導出、吸収させると共に、山部11の下方空間部内の低温雰囲気によって滴下する油分が燃焼するのを防止しながらアルミ箔1bによって熱源からの赤外線を反射させ、魚をこんがりと焼成するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスレンジや電気オーブン等の焼成器内で魚を焼く際に、受皿内に敷設して魚から滴下する油分を吸収するための受け皿用マットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガスレンジや電気オーブン等の焼成器によって魚を焼く場合、魚から滲み出して滴下する油分で受皿が汚損されるのをできるだけ少なくするために、下方に配設している受皿内に水を張っておき、この水面上に油分を滴下させるようにしているが,使用後における受皿内の水と油との処理が困難となり、そのまま廃棄すると河川等が汚染されることになる。このため、例えば、特許文献1に記載されているように、多数の小孔を設けているアルミ箔からなる偏平な袋体内に油分を吸着する膨張黒鉛からなる吸着材を充填した油吸着マットが考案されている。また、同様に、特許文献2に記載されているように、孔の開いたアルミ箔を表面層として使用し、孔の開いていないアルミ箔を下層としてこれらのアルミ箔間に油分を吸収するパルプ等からなるシートを一体に介在させてなるマットが開発されている。
【0003】
そして、このように構成したマットは受皿内に敷設され、焼成中の魚から滴下する油分をその表層側のアルミ箔に穿設している小孔を通じて膨張黒鉛からなる吸着材やパルプ等からなるシートに吸着、保持させる一方、熱源から放射される熱の一部をアルミ箔によって反射させてその輻射熱により魚体の下面側も加熱、焼成するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平4−23487号公報
【特許文献2】特開平10−151075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記受皿用マットにおいては、焼成中の魚から滲み出す油分が、マット表層側のアルミ箔上に滴下すると、このアルミ箔の表面が平坦な面に形成されているために、例えアルミ箔に穿設している小孔上に滴下しても油滴がアルミ箔の表面上で飛散して一部しか小孔を通じて吸着材等に吸着させることができず、その上、飛散した油分は集合させられることなくそのまま熱源からの加熱によって高温下しているアルミ箔の表面上に滞留して熱源からの放射熱に曝され、この放射熱によって直ちに燃焼して火炎や煙が発生し、その火炎によって魚が焦がされて味覚が低下するといった問題点があった。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、焼成時に魚から滴下する油分を集合させ、且つ、この油分が燃焼するのを抑制しながら吸油シート材に円滑に吸収させることができると共に、魚をこんがりと焼成することができる焼成器における受皿用マットを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の焼成器における受皿用マットは、請求項1に記載したように、紙や不織布等からなる基材の上面全面にアルミ箔を層着してなるシート状物と、このシート状物の下面に配設した一定厚みの吸油シート材とからなり、上記シート状物は凹円弧状に湾曲した谷部と凸円弧状に湾曲した山部とが交互に連続した断面波形状に形成されてあり、このシート状物における谷部の外底面を吸油シート材の上面に一体に接着していることを特徴とする。
【0008】
このように構成した焼成器におけるグリルの受皿用マットにおいて、請求項2に係る発明は、シート状物に設けている谷部と山部の長さよりも吸油シート材の幅を広くしてこの吸油シート材の両側端部をシート状物に設けている谷部と山部の長さ方向の両端から外側方に突出させていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、凹円弧状の谷部と凸円弧状の山部とを連続形成しているシート状物の下面に吸油シート材を一体に設けてなるマットをアルミ製皿体内に配設するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の焼成器における受皿用マットによれば、上面全面にアルミ箔を層着してなるシート状物と、このシート状物の下面に配設した一定厚みの吸油シート材とからなるマットであって、上記シート状物は凹円弧状に湾曲した谷部と凸円弧状に湾曲した山部とが交互に連続した断面波形状に形成されてあり、このシート状物における谷部の外底面を吸油シート材の上面に一体に接着しているので、このマットを焼成器内の底部に出し入れ自在に配されている受皿内に敷設して焼成器により魚を焼成すると、ガスバーナや電気ヒータ等の熱源からの赤外線がシート状物表面のアルミ箔からなる凸円弧状に湾曲した山部で反射して魚体の下面をこんがりと焼成することができるばかりでなく、魚から滲み出る油分がシート状物表面に滴下すると、このシート状物における凹円弧状に湾曲した谷部内に強制的に流動させて集合させることができ、集合した油分をこの谷部の両端開口部から受皿内に導入して該受皿に敷設している吸油シート材に確実に吸収させることができる。
【0011】
さらに、シート状物における凸円弧状に湾曲した山部の下面と吸油シート材との対向面間には受皿上方の雰囲気から遮断された空間部が形成されてあり、この空間部はシート状物の下面を形成している紙や不織布等の基材によって覆われていて周りの雰囲気温度よりも低温度の空間となっているため、シート状物における上記谷部に集合、滞留する油分の温度上昇を抑制することができ、油分が熱源からの加熱によって燃焼するのを防止しながら谷部の両端開口部から受皿内に敷設している吸油シート材に吸収させることができ、吸油効率を高めることができる。
【0012】
また、請求項2に係る発明によれば、上記シート状物に設けている谷部と山部の長さよりも吸油シート材の幅を広くしてこの吸油シート材の両側端部をシート状物に設けている谷部と山部の長さ方向の両端から外側方に突出させているので、魚の焼成時に魚から滴下して上記シート状物における谷部内に集合した油分が谷部の両端開口部から受皿内に流出する際に、受皿の内底面上に直接流出することなく、この受皿上に敷設してシート状物の両端から外側方に突出している吸油シート材上に流出させてこの吸油シート材に確実に吸収、保持させることができ、従って、吸油シート材による吸油効率が向上すると共に、油分による受皿の汚損を少なくして使用後の掃除も容易に行うことができる。
【0013】
さらに、請求項3に係る発明によれば、凹円弧状の谷部と凸円弧状の山部とを連続形成しているシート状物の下面に吸油シート材を一体に設けてなる上記マットをアルミ製皿体内に配設するように構成しているので、魚の焼成時に、吸油シート材に吸収されることなく吸油シート材から外部に漏洩した油分をアルミ製皿体内に確実に保有させることができ、従って、このアルミ製皿体を敷設させている受皿が油分によって汚損されるのを確実に防止することができると共に油分によって手を汚すことなくマットをこのアルミ製皿体と共に容易に廃棄処分することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明受皿用マットの一部省略斜視図。
【図2】その一部の拡大縦断正面図。
【図3】使用状態を示す簡略縦断正面図。
【図4】本発明受皿用マットの別な実施例を示す一部省略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1、図2において、焼成器における受皿用マットAは、一定厚みを有する基材1aの上面全面にアルミ箔1bを層着してなるシート状物1を、一定厚みを有する平面矩形状の吸油シート材2の上面に重ね合わせて、この吸油シート材2上に該シート状物1の基材1aを一体に接着することによって構成されている。
【0016】
シート状物1の基材1aとしてはクラフト紙などの紙材を使用しているが、紙材に限らず不織布や軟質合成樹脂シート材であってもよく、要するに、アルミ箔1bとのラミネートが可能で、且つ、次に述べるように連続波形状に成形した際に、その形状を保持でき、その上、吸油シート材2と容易に且つ強固に接着可能な材質であればよい。このシート状物1は、凹円弧状に湾曲した谷部10と凸円弧状に湾曲した山部11とがこのシート状物1の長さ方向に交互に連続した断面波形状に形成されている。なお、谷部10と山部11とはその長さ方向をシート状物1の全幅に亘って真っ直ぐに向けた状態で形成されてあり、谷部10の両端開口部10a 、10a を外方に向かって全面的に開口させている。
【0017】
そして、このように断面波形状に形成したシート状物1は、上記吸油シート材2の上面にその谷部11の外底面を接着3することによってシート状物1上に一体に積層されている。吸油シート材2としては、吸油層を形成できる材料であればよく、本実施例においてはクラフト紙などの吸油性を有する紙材を使用しているが、パルプ製品や多孔質材料から形成してもよい。
【0018】
この吸油シート材2の大きさは、図3に示すように、焼成器20におけるグリル21の受皿22内に略全面に亘って敷設可能な大きさであればよく、また、この吸油シート材2上の上記シート状物1は図1に示すように、吸油シート材2と平面同大、同形に形成しているが、図4に示すように、谷部10や山部11の長さ方向の幅を吸油シート材2の幅よりも僅かに小幅に形成して、吸油シート材2の両側端部2a、2aを谷部10の上記両端開口部10a 、10aの開口端下方から外側方に突出させ、魚の焼成時に魚から滴下する油分が谷部10内を通じてこの谷部10の両端開口部10a 、10a から流出した際に、吸油シート材2の両側端部上に流出させて受皿内に直接流出させないように構成しておいてよい。
【0019】
このように構成した受皿用マットAは、そのままガスレンジや電気オーブン等の焼成器20におけるグリル21の受皿22内に敷設して使用してもよいが、図3に示すように、アルミシート或いはアルミ箔でもって皿体4を成形し、このアルミ製皿体4内に収容して、上記受皿22内に配設することが望ましい。なお、アルミ製皿体4としては、受皿用マットAを使用する際に、アルミシート或いはアルミ箔を適宜大きさに切断して皿状に形成してもよく、また、予め、アルミ製皿体4を製造しておき、このアルミ製皿体4を上記受皿用マットAと組み合わせておいてもよい。
【0020】
上記のように、グリル21の受皿22内に受皿用マットAを敷設した状態にして焼成器20により、グリル21内の金網24上に載置している魚Bを焼成すると、電気ヒータ等の熱源23からの加熱によって魚Bから滲み出た油分が受皿用マットAにおける連続波形状に湾曲しているシート状物1のアルミ箔1bからなる凹凸上面に滴下し、山部11上に滴下した油分は山部11の傾斜面を伝って谷部10内に入って谷部10の内底面上に滞留、集合すると共に、谷部10の両端開口部10a 、10a 側に向かって流動して、この両端開口部10a 、10a から受皿22内に向かって流出し、受皿22に敷設している吸油シート材2によって直ちに吸収、保持させることができる。
【0021】
また、受皿用マットAをアルミ製皿体4内に敷設してこのアルミ製皿体4を受皿22内に配設した場合には、受皿用マットAのシート状物1上に滴下した油分は、谷部10の両端開口部10a 、10a から受皿22内に流出することなくこのアルミ製皿体4内に流出させて、受皿22を汚損することなくアルミ製皿体4内で吸油シート材2に油分を吸収、保持させることができ、使用後、受皿用マットAをアルミ製皿体4内に収容した状態で廃棄処理することができる。
【0022】
さらに、受皿用マットAとして図4に示すように、吸油シート材2の両側端部2a、2aがシート状物1の両側端から突出していて、この突出端部2a、2a上にシート状物1における谷部10の両端開口部10a 、10a を臨ませているマットを使用すると、シート状物1における谷部10の両端開口部10a 、10a から流出する油分を、吸油シート材2の両側端部2a、2a上に流出させてこの吸油シート材2に吸収、保持させることができる。
【0023】
一方、上方から魚Bを焼成する熱源23から発せられる赤外線が、受皿用マットAにおける上方に向けて露呈しているシート状物1のアルミ箔1bよりなる凸円弧状に湾曲した山部11の表面で反射してその輻射熱により魚Bを下側からも加熱し、魚Bを全面的にこんがりと焼成することができる。
【0024】
さらに、シート状物1における凸円弧状に湾曲した山部11の下面と吸油シート材2の上面との対向面間で形成されている空間部5は、山部11によって上方のグリル内の雰囲気から遮断されていると共に上記赤外線はアルミ箔1bによって反射してこの空間部5内に到達しなく、その上、この空間部5の内壁面を形成している山部11の下面はアルミ箔よりも熱伝導率の低い紙等の基材1aによって形成されているので周りの雰囲気温度よりも低温度となっており、そのため、この空間部5によってシート状物1における上記谷部10に集合、滞留する油分の、熱源23の照射による温度上昇を抑制することができ、従って、油分の燃焼による火炎の発生や煙の発生を防止しながら魚Bを万遍なく焼成することができる。
【符号の説明】
【0025】
A 受皿用マット
1 シート状物
1a 基材
1b アルミ箔
2 吸油シート材
4 アルミ製皿体
5 空間部
10 谷部
10a 、10a 両端開口部10
11 山部
20 焼成器
21 グリル
22 受皿
23 熱源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙や不織布等からなる基材の上面全面にアルミ箔を層着してなるシート状物と、このシート状物の下面に配設した一定厚みの吸油シート材とからなり、上記シート状物は凹円弧状に湾曲した谷部と凸円弧状に湾曲した山部とが交互に連続した断面波形状に形成されてあり、このシート状物における谷部の外底面を吸油シート材の上面に一体に接着していることを特徴とする焼成器における受皿用マット。
【請求項2】
シート状物に設けている谷部と山部の長さよりも吸油シート材の幅を広くしてこの吸油シート材の両側端部をシート状物に設けている谷部と山部の長さ方向の両端から外側方に突出させていることを特徴とする請求項1に記載の焼成器における受皿用マット。
【請求項3】
凹円弧状の谷部と凸円弧状の山部とを連続形成しているシート状物の下面に吸油シート材を一体に設けてなるマットをアルミ製皿体内に配設するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の焼成器における受皿用マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−220595(P2011−220595A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89341(P2010−89341)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000176707)三菱アルミニウム株式会社 (446)
【Fターム(参考)】