説明

焼結鉱製造装置及び焼結鉱製造方法

【課題】暗騒音の影響を受けることなく、振動篩により生じる住宅など建具の振動(2次振動)の発生を抑制する。
【解決手段】音圧レベル計10により、第1及び第2の振動篩5及び6による低周波騒音の影響を受ける住宅付近方向の音圧レベルを計測し、音圧レベルがしきい値以上のときには暗騒音により2次振動が生じる可能性があると判断して(ステップS2、S3)、目標生産量を指定された基準生産量Pmよりも減少させ、第1振動篩5及び第2振動篩6の振動速度を低下させることで音圧レベルの低下を図る(ステップS4〜S6)。所定の減産時間t1の間減産させた後、減産時間t1における減産量の総和を挽回するように増産時間t2の間、基準生産量Pmよりも目標生産量を増加させることで(ステップS7〜S9)、焼結鉱の最終的な生産量はそのままで、音圧レベルの低下を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結工場において、特に低周波騒音の発生源となる焼結鉱振動篩から発生する騒音を低減させるようにした焼結鉱製造装置及び焼結鉱製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結工場の焼結鉱振動篩から発生する超低音は空気を伝わって住宅など建具の振動(2次振動)を招き、苦情の一因となる。
この2次振動に対する一般的な対策としては、コンクリートなどの剛性の高い物質で完全な密室を形成し、この密室により騒音源を囲う方式が用いられる。しかしながら、この方法の場合、工事費用が高くなり過ぎるという欠点があった。
そのため、複数の振動篩の駆動源周波数を位相制御する手段を設け、この位相制御する手段により各振動篩の振動の位相調整を行なうことにより、総合的な音圧レベルを低減する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願平10−212130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の振動篩の振動の位相制御を行なう方法では、騒音の発生源である振動篩からの音圧レベルを一定に下げることはできるが、大気の風の影響や焼結工場以外の暗騒音が増大した場合にこの暗騒音の増大によって住宅へ到達する音圧レベルが高くなる可能性がある。
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、暗騒音の影響を受けることなく、振動篩により生じる住宅など建具の振動(2次振動)の発生を抑制することの可能な焼結鉱製造装置及び焼結鉱製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1にかかる焼結鉱製造装置は、焼結鉱を生成する焼結鉱生成手段と、前記焼結鉱生成手段での前記焼結鉱の生産量が目標生産量となるように前記焼結生成手段を制御する制御手段と、前記焼結鉱生成手段で生成した前記焼結鉱を分級する焼結鉱振動篩と、所定方向の音圧レベルを検出する音圧レベル検出手段と、当該音圧レベル検出手段で検出された音圧レベルが、例えば2次振動を発生させると予測される予め設定されたしきい値以上であると判定すると前記目標生産量を調整する目標生産量調整手段と、を備えることを特徴としている。
【0006】
また、請求項2にかかる焼結鉱製造装置は、前記目標生産量調整手段は、前記目標生産量として指定された生産量を基準生産量とし、前記音圧レベルが前記しきい値以上であるときは予め設定した減産期間の間、前記基準生産量を前記音圧レベルに応じた量だけ減産した減産生産量を、前記目標生産量として設定し、前記減産期間経過後、所定の増産期間の間、前記基準生産量よりも生産量が多い増産生産量を前記目標生産量として設定し、前記減産期間における前記焼結鉱の減産量の総和と前記増産期間における前記焼結鉱の増産量の総和とが一致するように、前記増産期間及び前記増産生産量の少なくとも一方を設定することを特徴としている。
【0007】
さらに、請求項3にかかる焼結鉱製造装置は、複数の前記焼結鉱振動篩と、前記各焼結鉱振動篩を個別に駆動する駆動手段と、前記焼結鉱振動篩毎に当該焼結鉱振動篩の周波数及び振幅を検出しこれに応じた信号を出力する振動検出手段と、前記振動検出手段の出力信号に基づき、前記駆動手段を介して前記焼結鉱振動篩の振動の位相制御を行なう位相制御手段と、を備え、当該位相制御手段は、前記複数の焼結鉱振動篩の位相差が、前記複数の焼結鉱振動篩から発生する音圧レベルを最小とする位相差角となるように前記位相制御を行なうことを特徴としている。
【0008】
また、本発明の請求項4にかかる焼結鉱製造方法は、目標生産量相当の焼結鉱を生成するように焼結鉱生成手段を制御し、生成された焼結鉱を焼結鉱振動篩で分級するようにした焼結鉱製造方法であって、所定方向の音圧レベルを検出し、当該音圧レベルが、例えば2次振動を発生させると予測される予め設定されたしきい値以上であると判定されるときには、予め設定した減産期間の間、前記焼結鉱の目標生産量として指定された基準生産量を前記音圧レベルに応じた量だけ減産させた後、所定の増産期間の間、前記基準生産量よりも生産量を増産させ、前記増産期間及び前記増産期間における生産量の少なくとも何れか一方を、前記減産期間における前記焼結鉱の減産量の総和と前記増産期間における前記焼結鉱の増産量の総和とが一致するように調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定方向の音圧レベルが予め設定されたしきい値以上であるときには焼結鉱の目標生産量が調整され、例えば目標生産量を減少させることにより焼結鉱振動篩の振動速度が減速される。これにより音圧レベルが低下する方向に変化しすなわち音圧レベルが抑制されるため、大気の風の影響など、暗騒音が増大した場合であってもこれに伴って音圧レベルが増加し2次振動が生じることを抑制することができる。
【0010】
特に、目標生産量を、指定された基準生産量よりも減少させた後、この生産量の減産量相当を挽回するように基準生産量よりも増加させるようにし、目標生産量を変化させてはいるが、目標生産量を変化させない場合と変化させた場合とで焼結鉱の最終的な生産量は同等となるようにしたため、生産量の低下を伴うことなく音圧レベルを低下させることができる。
さらに、焼結鉱振動篩の位相制御を行うことによっても、音圧レベルの低下を図るようにしたため、大気の風の影響などの暗騒音によって音圧レベルが増大した場合だけでなく、定常的に生じる焼結鉱振動篩の音圧レベルの低減をも図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した焼結鉱製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】総括制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】位相制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】音圧レベルと減産量との対応を表す特性図である。
【図5】本発明の動作説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用した焼結鉱製造装置の一例を示す全体構成図である。
図1において、1は焼結原料が挿入された焼結原料ホッパ、2は焼結原料ホッパ1から所定量の焼結原料を切り出すための原料切り出し装置である。
前記焼結原料としては、例えば製鉄所に入荷した2種以上の粉鉱石を複数の層に山積みしてから払い出すヤードブレンディングによって混合した主原料、石灰石、生石灰などの副原料、粉コークス及び返鉱などで構成される。
【0013】
原料切り出し装置2により焼結原料ホッパ1から切り出された焼結原料は焼結機3に連続的に装入される。焼結機3に装入された焼結原料は図示しない点火炉で上面表層に点火され、焼成されて焼結鉱が形成される。形成された焼結鉱は焼結クーラー4に連続的に装入され、冷却された後、図示しないクラッシャなどで粉砕処理され、例えば第1の振動篩5及びこの第1の振動篩5よりも篩目の小さい第2の振動篩6により分級される。そして、所定の大きさ以上の焼結鉱を成品焼結鉱とし、それ以外の焼結鉱を返鉱とするようになっている。
【0014】
前記原料切り出し装置2は、例えばロータリフィーダで構成され、ロータリフィーダの回転数を制御することにより切り出し量を制御するようになっている。ロータリフィーダの回転数は原料切り出し装置駆動モータ2aの回転数を制御することにより可変となっている。この原料切り出し装置駆動モータ2aは原料切り出し装置速度制御装置12により制御される。
【0015】
前記焼結機3は、例えば焼結原料を装入する無端移動式の焼結機パレットを備えており、この焼結機パレットを巡回させて焼結鉱を形成するようになっている。前記焼結機3には前記焼結機パレットを駆動するための焼結機駆動モータ3aが設けられている。この焼結機駆動モータ3aは焼結機速度制御装置13により駆動制御され、焼結機速度制御装置13は、焼結機駆動モータ3aの駆動制御を行なうと共に、図示しない点火炉の点火制御や、燃焼ガスなどの供給制御など、焼結機3全体の駆動制御を行なう。
【0016】
前記焼結クーラー4は、例えば焼結鉱がトラフに搭載され、風箱より吹き込まれる冷却空気がトラフ台車の通気板を通して高温焼結鉱の間を通過することにより冷却され、トラフが円を3/4周した位置にきたときに冷却が終了するようになっている。前記焼結クーラー4には前記トラフ駆動用の焼結クーラー駆動モータ4aが設けられている。この焼結クーラー駆動モータ4aは焼結クーラー速度制御装置14により駆動制御され、焼結クーラー速度制御装置14は、焼結クーラー駆動モータ4aの駆動制御を行なうと共に、冷却ファンの駆動制御など焼結クーラー4全体の駆動制御を行なう。なお、焼結クーラーの形式はこれに限るものではない。
【0017】
前記第1振動篩5には第1振動篩駆動モータ5aが設けられ、第2振動篩6には第2振動篩駆動モータ6aが設けられている。そして、第1振動篩駆動モータ5aは第1振動篩インバータ5bを介して位相制御装置20により駆動制御され、同様に第2振動篩駆動モータ6aは第2振動篩インバータ6bを介して位相制御装置20により駆動制御される。これにより第1振動篩5及び第2振動篩6は所定周期で且つ所定の振幅で振動する。
また、第1振動篩5には第1振動篩5の振動の周波数及び振幅を直接測定する変位計8が設けられ、同様に、第2振動篩6には第2振動篩6の振動の周波数及び振幅を直接測定するための変位計9が設けられている。これら変位計8及び9の出力信号は位相制御装置20に入力される。
【0018】
前記変位計8、9は、例えばセンサ部と信号処理部とで構成され、例えば特願平10−212130号公報に記載された変位センサと同様の手順で振動の周波数及び振幅に応じた信号を出力する。すなわち、変位計8のセンサ部は例えば第1振動篩5近傍に配置され、第1振動篩5の所定部位に第1振動篩5の振動方向と平行に光を照射し、前記部位からの反射光の強度に応じた電圧信号を出力する。そして、このセンサ部からの電圧信号を信号処理部で信号処理し、第1振動篩5とセンサ部とが最も接近する時点で電圧信号に応じた振幅のパルス信号を出力する。同様に、変位計9のセンサ部は第2振動篩6近傍に配置され、同様の手順で第2振動篩6の振動の周波数及び振幅に応じたパルス信号を出力する。
【0019】
また、適所には所定方向の音圧レベルを計測する音圧レベル計10が設けられ、この音圧レベル計10の出力信号は、FFTアナライザ10aを介して位相制御装置20に入力される。
音圧レベル計10は、その測定方向が、第1振動篩5及び第2振動篩6を発生源とする低周波騒音の影響(例えば建具の振動など)を低減したい住宅付近方向となるように配置され、前記住宅付近方向の音圧レベルを測定する。
【0020】
そして、これら原料切り出し装置速度制御装置12、焼結機速度制御装置13、焼結クーラー速度制御装置14及び位相制御装置20は、総括制御装置30により駆動制御される。
この総括制御装置30は、CRT表示装置30a及び図示しない入力装置を備えており、オペレータにより入力設定される焼結鉱の目標生産量に応じてこの目標生産量相当の焼結鉱を得るために必要な前記各モータの制御目標値やその他必要な制御信号を生成し、これを対応する各制御装置に通知する。これにより、各制御装置を介して焼結鉱製造装置を構成する各部を駆動制御し焼結鉱製造装置全体の総括制御を行なう。
【0021】
次に、上記実施の形態の動作の一例を、図2及び図3のフローチャートを伴って説明する。なお、図2は総括制御装置30で実行される総括制御処理の処理手順の一例を示すフローチャート、図3は位相制御装置20で実行される位相制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
総括制御装置30は、オペレータが図示しない入力装置で焼結鉱の目標生産量を入力するとこれを基準生産量Pmとし、この基準生産量Pm相当の焼結鉱を得るために必要な各部の制御目標値を設定する。例えば、原料切り出し装置2の定量切り出し量に応じた原料切り出し装置駆動モータ2aの駆動速度、焼結機駆動モータ3aの駆動速度、焼結クーラー駆動モータ4aの駆動速度、第1振動篩5及び第2振動篩6の振動周波数及び振幅などを設定すると共にその他必要な制御目標値を設定する。そして、指定された基準生産量Pm及び設定した制御目標値を所定の記憶領域に記憶すると共に、設定した各種制御目標値をそれぞれ対応する制御装置に通知する(図2のステップS1)。
【0022】
これにより、原料切り出し装置速度制御装置12、焼結機速度制御装置13、焼結クーラー速度制御装置14及び位相制御装置20は、総括制御装置30から通知された制御目標値に応じて対応する各部を駆動制御する。
そのため、原料切り出し装置2は所定量の原料の切り出しを行なって焼結原料を焼結機3に装入し、焼結機3はこれを焼成して焼結鉱を形成し、焼結機3から払い出された焼結鉱は焼結クーラー4で冷却された後、第1の振動篩5及び第2の振動篩6により分級される。
【0023】
また、位相制御装置20は、総括制御装置30から通知された制御目標値が通知されると図3のステップS21からステップS22に移行して、第1振動篩インバータ5bを介して第1振動篩駆動モータ5aを駆動制御し、同様に、第2振動篩インバータ6bを介して第2振動篩駆動モータ6aを駆動制御する。さらに、位相制御装置20は各変位計8、9の検出信号を読み込み(ステップS23)、第1振動篩5、第2振動篩6の振動の位相を演算する(ステップS24)。
【0024】
そして、これら第1振動篩5、第2振動篩6の振動の位相差が予め設定した目標位相差θ1となるように第1振動篩インバータ5b及び第2振動篩インバータ6bを制御する(ステップS25)。
前記目標位相差θ1は次のように設定される。つまり、2つの波動の位相差を適切な値に維持することによって、これら2つの波動により発生する音圧レベルを低目に維持することができる。したがって、第1振動篩5及び第2振動篩6による音圧レベルが最小となる位相差を予め実験などにより検出しておき、これを目標位相差θ1として設定する。
【0025】
そして、第1振動篩5及び第2振動篩6の検出信号から得られる位相差と目標位相差θ1とが一致するように第1振動篩インバータ5b又は第2振動篩インバータ6bへのモータの目標回転速度を適宜量だけ増加又は減少させて、第1振動篩5及び第2振動篩6の振動の位相差が目標位相差θ1と一致するように制御する。これにより、第1振動篩インバータ5b又は第2振動篩インバータ6bによって極少の周波数変化を繰り返しながら第1振動篩5又は第2振動篩6の振動周波数が調整され、第1振動篩5及び第2振動篩6の振動の位相差が目標位相差θ1に近づく。このため、これら第1振動篩5及び第2振動篩6による音圧レベルが最小となるように制御されることになり、低周波騒音の音圧レベルが低減される。
【0026】
このように、位相制御装置20が第1振動篩5及び第2振動篩6による低周波騒音低減のための図3に示す位相制御処理を行なう一方、総括制御装置30は、図2のステップS2で、音圧レベル計10の検出信号を位相制御装置20から読み込み、音圧レベル計10で検出された音圧レベルが予め設定したしきい値以上であるかを判断する。
このしきい値は次のように設定される。つまり、上述のように位相差を目標位相差θ1に維持することにより、第1振動篩5及び第2振動篩6による低周波騒音の音圧レベルが最小となるように制御した場合であっても、大気の風の影響や焼結工場以外の暗騒音増大により周辺住宅に到達する音圧レベルが高くなる2次振動が生じることがある。そのため、この2次振動を引き起こす音圧レベルを規制音圧レベルとして予め実験等により検出し、この規制音圧レベルをしきい値としている。
【0027】
そして、ステップS3の処理で音圧レベル計10からの音圧レベルがしきい値よりも小さいとき引き続き焼結鉱の生産量として設定された基準生産量Pmに応じて各部を駆動制御するが、音圧レベル計10からの音圧レベルがしきい値以上であるときには、2次振動が生じる可能性があると判断してステップS4に移行し、検出した音圧レベルに応じた減産量Δp1を図4の特性図から特定する。
【0028】
この図4は、音圧レベルと減産量Δp1との対応を表す特性図であって、横軸は音圧レベル、縦軸は減産量Δp1〔T/hr〕である。音圧レベルが規制音圧レベルより小さいときには減産量Δp1は零となり、音圧レベルが規制音圧レベル以上となると、音圧レベルが大きいときほど減産量Δp1は大きくなり且つ音圧レベルが大きいときほど減産量Δp1の増加幅が大きくなるように設定される。
【0029】
そして、図4の特性図から特定した音圧レベルに応じた減産量Δp1を、基準生産量Pmから減算しこれを減産生産量P1とする。そして、この減産生産量P1を目標生産量とし、この減産生産量P1相当の焼結鉱を生産するための各部の制御目標値を上記ステップS1での処理と同様の手順で設定し、これを減産制御目標値として各制御装置に通知する(ステップS5)。
このため各制御装置は通知された減産制御目標値に応じて各部を制御する。
【0030】
その結果、第1及び第2振動篩5、6では、生産量が減少した分だけ第1振動篩駆動モータ5a、第2振動篩駆動モータ6aが減速され、これにより音圧レベルが下がる方向に変化するため、音圧レベルは減少傾向となり低周波騒音の発生が回避される。また、減産量Δp1だけ減産されているため、図5の時点m1〜m2に示すように、焼結鉱の生産量は、基準生産量Pmから減産生産量P1に減少する。なお、図5において、横軸は経過時間、縦軸は生産量〔T/hr〕である。
したがって、暗騒音が増大した場合であっても、この暗騒音の増大に伴い発生する2次振動を的確に抑制することができ、すなわち、第1及び第2の振動篩5、6の低周波騒音による2次振動の発生を抑制することができる。
【0031】
そしてこのように、オペレータにより指定された基準生産量Pmよりも生産量の少ない減産生産量P1を目標生産量として稼働する状態が予め設定した減産時間t1〔hr〕の間継続すると、総括制御装置30は図2のステップS6からステップS7に移行し、焼結鉱の減産を終了し、今度は減産に伴い生産量が減少した分だけ増産するための、増産量Δp2及び増産時間t2を特定する。
【0032】
なお、前記減産時間t1は、例えば前記暗騒音の継続時間に応じて設定される。
前記増産量Δp2は、例えば次式(1)から演算し、増産時間t2は次式(2)から演算する。
増産量Δp2〔T/hr〕=基準生産量Pm〔T/hr〕×α ……(1)
増産時間t2
=減産量Δp1〔T/hr〕×減産時間t1〔hr〕/増産量Δp2〔T/hr〕
……(2)
なお、(1)式中のαは予め設定した1よりも小さい係数である。この係数αは、増産量Δp2と基準生産量Pmとの和を増産生産量P2としたとき、この増産生産量P2相当の焼結鉱を生産した場合であっても2次振動の発生を抑制し得る値に設定される。
【0033】
前記(1)、(2)式から増産量Δp2及び増産時間t2を演算すると、総括制御装置30は、図2のステップS8に移行し、増産量Δp2と基準生産量Pmとの和を増産生産量P2として演算し、この増産生産量P2を目標生産量とし、この増産生産量P2相当の焼結鉱を生産するための各部の制御目標値を上記ステップS1での処理と同様の手順で設定し、これを増産制御目標値として各制御装置に通知する。
このため、各制御装置は、通知された増産制御目標値に応じて各部を制御する。そのため、図5の時点m2〜m3に示すように、焼結鉱の生産量は増加し基準生産量Pmよりも多くなる。
【0034】
そして、この増産生産量P2を目標生産量とする稼働は増産時間t2の間継続され、増産時間t2は、図5の時点m1〜m2の減産生産量P1に基づく稼働に伴う減少分相当を挽回し得る値に設定されるため、増産時間t2が経過した時点m3で、前記減少分相当を挽回したことになる。
また、増産生産量P2は前記(1)式に基づき設定し、(1)式中のαを、増産生産量P2を目標生産量とした稼働時に2次振動の発生を抑制し得る値に設定しているため、速度増加分は小さく、すなわちゆっくり増産されることになる。
【0035】
このとき、この増産時間t2の間は各部のモータは加速されることになり、特に低周波騒音源となる第1振動篩5及び第2振動篩6も加速されることになるが、増産量Δp2の演算に用いる係数αは、この第1振動篩5及び第2振動篩6の加速に伴う音圧レベルの増加に伴う2次振動の発生を抑制するように設定しているため、増産生産量P2を目標生産量として稼働することによって音圧レベルが増加しても2次振動が生じることを回避することができる。
【0036】
そして、増産時間t2が経過したとき、ステップS9からステップS1に戻り、所定の記憶領域に記憶していたオペレータにより設定された基準生産量Pm及びこれに対応する制御目標値を読み出し、基準生産量Pmを目標生産量とし、読み出した制御目標値を各制御装置に通知する。
このため、各制御装置は、通知された基準生産量Pmに応じた制御目標値に応じて各部を制御し、これによって、図5の時点m3以後、焼結鉱の生産量は基準生産量Pmに維持される。
【0037】
このように、第1振動篩5及び第2振動篩6の振動周波数の位相差が目標位相差θ1となるように制御することによって、第1振動篩5及び第2振動篩6による定常的な低周波騒音を低減することができると共に、さらに、所定の測定方向の音圧レベルがしきい値以上であるときには、第1振動篩駆動モータ5a、第2振動篩駆動モータ6aを減速することによって、暗騒音等により単発的に生じる2次振動を抑制することができるため、第1振動篩5及び第2振動篩6による低周波騒音をより確実に低減することができる。
また、音圧レベル低下のために焼結鉱の生産量を減産してはいるが、減産の後に増産しており、最終的には過不足なくオペレータにより設定された基準生産量Pm相当の焼結鉱を生成することができるため、生産量に影響を与えることなく低周波騒音を低減することができる。
【0038】
なお、上記実施の形態においては、目標生産量を減産生産量P1として稼働することに伴う減産量を挽回し得る、増産量Δp2及び増産時間t2を演算する場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、増産量Δp2を予め所定値に設定しておく。この所定値は例えば、増産量Δp2から特定される増産生産量P2を目標生産量として稼働した場合に、音圧レベルが2次振動を発生させる音圧レベルに達することのない値に設定する。そして、増産量Δp2を所定値とした場合に、減産生産量P1を目標生産量として稼働したことに伴う減産量を挽回し得る増産時間t2を演算するようにしてもよい。逆に、増産時間t2を予め所定値に設定しておき、増産量Δp2を、前記減産量に応じて調整するようにしてもよい。この場合には、増産量Δp2を、増産量Δp2から特定される増産生産量P2を目標生産量として稼働した場合に、音圧レベルが2次振動を発生させる音圧レベルに達することのない値に制限する等の処理を行なう必要がある。
【0039】
また、上記実施の形態においては、第1振動篩5及び第2振動篩6の振動の位相差の制御による定常的な低周波騒音の低減と、音圧レベル計10で計測した音圧レベルに基づく、特定方向の音圧レベルの低減との両方を行なう場合について説明したがこれに限るものではない。前記特定方向の音圧レベルの低減だけを行なうようにしてもよく、また、前記定常的な低周波騒音に加え、さらに、例えば第1振動篩5及び第2振動篩6の振動周波数を一致させることにより、うなりの発生を低減する等、他の低周波騒音低減のための処理を共に実行するようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施の形態においては、第1の振動篩5と第2及び第2の振動篩6の2つの振動篩を備えた場合について説明したが、2つに限るものではなく振動篩が1つの場合、或いは振動篩が3以上である場合であっても適用することができる。
また、上記実施の形態においては、減産量Δp1、減産時間t1、増産量Δp2、増産時間t2を、図4の特性図や、前記(1)及び(2)式に基づき設定する場合について説明したが、これに限るものではなく、2次振動の発生を抑制することが可能な減産量Δp1及び減産時間t1であり、また、この減産に伴う生産量の減少分を挽回し得る増産量Δp2及び増産時間t2であればどのような手順で設定してもよい。
【0041】
なお、上記実施の形態において、原料切り出し装置2、焼結機3、焼結クーラー4が焼結鉱生成手段に対応し、原料切り出し装置速度制御装置12、焼結機速度制御装置13、焼結クーラー速度制御装置14、位相制御装置20が制御手段に対応し、第1振動篩5及び第2振動篩6が焼結鉱振動篩に対応し、音圧レベル計10が音圧レベル検出手段に対応し、総括制御装置30で実行される図2のステップS2からステップS9の処理が目標生産量調整手段に対応している。
また、第1振動篩駆動モータ5a及び第2振動篩駆動モータ6aが駆動手段に対応し、変位計8及び9が振動検出手段に対応し、位相制御装置20及び第1振動篩インバータ5b、第2振動篩インバータ6bが位相制御手段に対応している。
【符号の説明】
【0042】
2 原料切り出し装置
3 焼結機
4 焼結クーラー
5 第1振動篩(焼結鉱振動篩)
6 第2振動篩(焼結鉱振動篩)
8、9 変位計
10 音圧レベル計(音圧レベル検出手段)
12 原料切り出し装置速度制御装置
13 焼結機速度制御装置
14 焼結クーラー速度制御装置
20 位相制御装置
30 総括制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結鉱を生成する焼結鉱生成手段と、
前記焼結鉱生成手段での前記焼結鉱の生産量が目標生産量となるように前記焼結生成手段を制御する制御手段と、
前記焼結鉱生成手段で生成した前記焼結鉱を分級する焼結鉱振動篩と、
所定方向の音圧レベルを検出する音圧レベル検出手段と、
当該音圧レベル検出手段で検出された音圧レベルが予め設定されたしきい値以上であると判定すると前記目標生産量を調整する目標生産量調整手段と、を備えることを特徴とする焼結鉱製造装置。
【請求項2】
前記目標生産量調整手段は、前記目標生産量として指定された生産量を基準生産量とし、
前記音圧レベルが前記しきい値以上であるときは予め設定した減産期間の間、前記基準生産量を前記音圧レベルに応じた量だけ減産した減産生産量を、前記目標生産量として設定し、
前記減産期間経過後、所定の増産期間の間、前記基準生産量よりも生産量が多い増産生産量を前記目標生産量として設定し、
前記減産期間における前記焼結鉱の減産量の総和と前記増産期間における前記焼結鉱の増産量の総和とが一致するように、前記増産期間及び前記増産生産量の少なくとも一方を設定することを特徴とする請求項1記載の焼結鉱製造装置。
【請求項3】
複数の前記焼結鉱振動篩と、
前記各焼結鉱振動篩を個別に駆動する駆動手段と、
前記焼結鉱振動篩毎に当該焼結鉱振動篩の周波数及び振幅を検出しこれに応じた信号を出力する振動検出手段と、
前記振動検出手段の出力信号に基づき、前記駆動手段を介して前記焼結鉱振動篩の振動の位相制御を行なう位相制御手段と、を備え、
当該位相制御手段は、前記複数の焼結鉱振動篩の位相差が、前記複数の焼結鉱振動篩から発生する音圧レベルを最小とする位相差角となるように前記位相制御を行なうことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の焼結鉱製造装置。
【請求項4】
目標生産量相当の焼結鉱を生成するように焼結鉱生成手段を制御し、生成された焼結鉱を焼結鉱振動篩で分級するようにした焼結鉱製造方法であって、
所定方向の音圧レベルを検出し、
当該音圧レベルが予め設定されたしきい値以上であると判定されるときには、予め設定した減産期間の間、前記焼結鉱の目標生産量として指定された基準生産量を前記音圧レベルに応じた量だけ減産させた後、所定の増産期間の間、前記基準生産量よりも生産量を増産させ、
前記増産期間及び前記増産期間における生産量の少なくとも何れか一方を、前記減産期間における前記焼結鉱の減産量の総和と前記増産期間における前記焼結鉱の増産量の総和とが一致するように調整することを特徴とする焼結鉱製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−67943(P2012−67943A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211303(P2010−211303)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】