説明

焼網用剥がしヘラ

【課題】ユーザーが、被調理物を、身崩れ等を起こさせることなく綺麗な状態で焼網から剥がすことができると共に、片手でも簡単に焼網から剥がすことができる焼網用剥がしヘラを提供する。
【解決手段】本発明は、複数の線材11が並設された焼網10に載置され焙焼された被調理物9を、当該焼網10から剥がし取るための焼網用剥がしヘラである。平板部3の前端に、当該平板部3を水平とした状態で前斜め上方に向けて櫛状部4が連接されたヘラ本体部6と、ヘラ本体部6の後端に、前記平板部3を水平とした状態で略水平または後斜め上方に向けて連接された把持部7とを備え、櫛状部4は、前後に沿って形成された複数の線材挿入用溝部41を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼網に載置され焙焼された被調理物を、当該焼網から剥がし取るための焼網用剥がしヘラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、焼網に載置され焙焼された被調理物を、当該焼網から剥がし取るための焼網用剥がしヘラが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に示された焼網用剥がしヘラは、平板部(特許文献1のヘラ部2)の前端に、前斜め下方に向けて連接されたかき上げ縁が設けられており、このかき上げ縁は、焼網の線材が挿入される切欠(特許文献1の線材挿入切欠5)を有している。
【0003】
焼網に載置され焙焼された被調理物が当該焼網に熱凝着した場合などに、ユーザーは、この焼網用剥がしヘラを、その切欠に焼網の線材を挿入するようにして配置し、当該線材に沿って前方に移動させる。すると焼網用剥がしヘラは、線材の上面に当接した切欠の奥部が線材に熱凝着した被調理物を剥がしながら、かき上げ縁が被調理物を前方に向けて押し出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−248057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように特許文献1の焼網用剥がしヘラは、平板部の前端に設けられたかき上げ縁が、下方に向けて連接されているから、上記のように、ユーザーによって線材に沿わせて移動された場合、その焼網用剥がしヘラは、被調理物を前方に押し出してしまう。このためユーザーは、例えば、右手で焼網用剥がしヘラを把持すると共に、左手で箸等を把持し、この左手の箸を使って被調理物の移動を規制しながら、右手の焼網用剥がしヘラを被調理物に向けて移動させていた。
【0006】
このため、移動を規制するための箸が被調理物に食い込むことで身崩れ等を起こすことがあるという問題があった。そのうえ特許文献1の焼網用剥がしヘラでは、ユーザーは、被調理物を盛り付けるための皿を一方の手で持ちながら、他方の手で焼網用剥がしヘラを使って、当該皿に被調理物を盛り付けることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ユーザーが、被調理物を、身崩れ等を起こさせることなく綺麗な状態で焼網から剥がすことができると共に、片手でも簡単に焼網から剥がすことができる焼網用剥がしヘラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の焼網用剥がしヘラは以下の構成となっている。
【0009】
本発明は、複数の線材11が並設された焼網10に載置され焙焼された被調理物9を、当該焼網10から剥がし取るための焼網用剥がしヘラである。平板部3の前端に、当該平板部3を水平とした状態で前斜め上方に向けて櫛状部4が連接されたヘラ本体部6と、ヘラ本体部6の後端に、前記平板部3を水平とした状態で略水平または後斜め上方に向けて連接された把持部7とを備え、櫛状部4は、前後に沿って形成され複数の線材挿入用溝部41を有している。
【0010】
焼網10に載置され焙焼された被調理物9が当該焼網10に凝着した場合、ユーザーは、線材挿入用溝部41に焼網10の線材11を挿入すると共に、当該線材挿入用溝部41の奥部42を線材11に当接した状態で、本発明の焼網用剥がしヘラを被調理物9の手前に配置し、櫛状部4を被調理物9の下方に位置させる。その状態から、線材挿入用溝部41の奥部42と線材11との接点を支点として、把持部7を下方に回動させると、櫛状部4が被調理物9の広い範囲を略均等な力で持ち上げるから、被調理物9が身崩れ等を起こさず綺麗な状態で持ち上げられる。
【0011】
また、平板部3を水平とした状態で略水平または後斜め上方に向けて把持部7が連接されているから、櫛状部4が線材11の上方に位置するまで移動したとしても、把持部7と線材11との間に空間が設けられる。つまり、被調理物9が持ち上げられた後にも、さらに把持部7を下方に回動させることができるから、平板部3と櫛状部4との連接した谷間部分51に被調理物9を簡単に移動させることができる。この結果、被調理物9の安定した支持を得ることができる。これによりユーザーは、安心して焼網用剥がしヘラを片手で上方へ持ち上げることができ、被調理物9を皿などに移動させるときにも、当該被調理物9の落下を防止しつつ当該皿に盛り付けることができる。
【0012】
また本発明の焼網用剥がしヘラは、前記櫛状部4が平板状であると共に、線材挿入用溝部41の奥部42が、前記櫛状部4と平板部3との連接部分よりも前方に位置するものであるのが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、前記櫛状部4と平板部3との連接部分には線材挿入用溝部4が存在しないから、焼網用剥がしヘラ全体の構造が、平面を主体としたシンプルな形状となる。
【0014】
また本発明の焼網用剥がしヘラは、前記把持部7の後端から前記線材挿入用溝部41の奥部42までの距離が、前記櫛状部4の前端から前記線材挿入用溝部41の奥部42までの距離よりも長いものであるのが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、線材挿入用溝部41の奥部42を支点として把持部7を回動させた場合、てこの原理により、把持部7を下方に移動させる力よりも大きな力で被調理物9を下方から持ち上げることとなる。このため、ユーザーは、小さな力で線材11から被調理物9を剥がすことができる。また、把持部7を早く下方に移動させたとしても、櫛状部4はそれよりもゆっくりと上方に向かって移動するから、被調理物9をゆっくりと剥がすことができ、一層被調理物9の身崩れ等を防ぐことができる。
【0016】
また本発明の焼網用剥がしヘラは、前記線材挿入用溝部41に前記線材11が挿入され、且つ当該線材11が線材挿入用溝部41の奥部42に当接した状態において、前記線材挿入用溝部41のそれぞれの奥部42を結ぶ仮想線80と櫛状部4の幅方向の端縁との交差する部分が、当該端縁のすぐ外側の線材11に対し第1の寸法L1を介して位置するように形成され、前記櫛状部4の各櫛刃43の幅方向の端縁が、当該端縁のすぐ外側の線材11に対し第2の寸法L2を介して位置するように形成され、前記第1の寸法L1が前記第2の寸法L2よりも小さく形成されたものであるのが好ましい。
【0017】
このように本発明の焼網用剥がしヘラは、線材挿入用溝部41に線材11が挿入されると、櫛状部4の幅方向の端縁のすぐ外側の線材11によって、左右方向の移動が規制されるから、横ぶれが防止される。そのうえ、線材挿入用溝部41と線材11との接点を支点として把持部7を下方に回動させても、櫛状部4の各櫛刃43が線材11に引っ掛ることなくスムーズに移動するから、被調理物9を簡単に焼網10から剥がすことができる。
【0018】
また本発明の焼網用剥がしヘラは、前記櫛状部4の各櫛刃43の上面に当該櫛刃43に沿って凸条44が形成されているのが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、櫛状部4の各櫛刃43と被調理物9との接触面積を減らすことができるから、被調理物9を焼網10から持ち上げた後、ユーザーは、平板部3と櫛状部4との連接した谷間部分51に被調理物9を移動させる際に、スムーズに被調理物9を移動させることができる。
【0020】
また本発明の焼網用剥がしヘラは、前記把持部7が、前記平板部3の後端を上方に屈曲することで形成されているのが好ましい。
【0021】
このような構成によれば、把持部7を把持する手が線材11に接触するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の焼網用剥がしヘラによれば、ユーザーが、被調理物を、身崩れ等を起こさせることなく綺麗な状態で焼網から剥がすことができると共に、片手でも簡単に焼網から剥がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態の焼網用剥がしヘラを示し(a)は平面図であり(b)は正面図である。
【図2】同上の使用例を説明するための平面図である。
【図3】焼網で被調理物を焙焼したときの線材に被調理物が熱凝着した状態を示す断面図である。
【図4】同上の実施形態の焼網用剥がしヘラの使用例を説明するための正面図である。
【図5】同上の実施形態の焼網用剥がしヘラの使用例を説明するための正面図である。
【図6】同上の実施形態の焼網用剥がしヘラの使用例を説明するための正面図である。
【図7】同上の実施形態の焼網用剥がしヘラの使用例を説明するための正面図である。
【図8】同上の使用例の焼網を示し、(a)は平面図であり(b)は正面図であり(c)は側面図である。
【図9】他の実施形態の焼網用剥がしヘラを示し(a)は平面図であり(b)は正面図である。
【図10】同上の実施形態の焼網用剥がしヘラの使用例を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。図1には本実施形態の焼網用剥がしヘラ20を示し、図2,図4〜7には本実施形態の焼網用剥がしヘラ20の使用例を示している。また図8には、本使用例に使用する焼網10を示す。なお、本実施形態の焼網用剥がしヘラ20を説明するに当たり、便宜上、焼網10の線材11に沿った方向を前後方向、その前後方向に直角な方向を幅方向(左右方向)とし、特に、把持部7から櫛状部4に向かう方向を前方と定義する。
【0025】
本実施形態の焼網用剥がしヘラ20は、焼網10に載置され焙焼された魚等の被調理物9を、当該焼網10から綺麗に剥がし、焼網10から持ち上げるために使用されるものである。焼網10は、その上面に載置された被調理物9を焙焼するために用いられるものであり、例えば、グリル付きこんろのグリル庫内に収容されて使用される。本使用例における焼網10は、断面円形の線材11から構成されており、図8に示されるように、平面視略矩形状をした枠体14と、被調理物9が載置される載置部15とを有している。この載置部15は、直線状の複数の線材11が同ピッチ(本実施形態では線材11の中心間のピッチ寸法P=18mm)に並設されたものであり、被調理物9との接触面積を極力小さくするために線材11が使用されている。なお、この焼網10がグリル庫内にて使用される場合は、この焼網10の下方に受け皿が配設される。例えば、この受け皿は、グリル庫に対し焼網10と共に引き出し自在とされる。
【0026】
焼網用剥がしヘラ20は、図1に示されるように、焼網10から被調理物9を剥がすヘラ本体部6と、このヘラ本体部6の後端に連接された把持部7とを備えている。このヘラ本体部6は、平板部3と、この平板部3の前端に連接された櫛状部4とを有している。本実施形態の焼網用剥がしヘラ20は、所定の形状に成形された1枚の偏平板がプレス加工されており、すなわち各部が曲げ加工されることで形成されている。なお、本実施形態のこの偏平板には、厚さ0.8ミリのSUS430の鋼材が使用されている。
【0027】
平板部3は、図1に示されるように、偏平な板状に形成されており、後端に近づく程幅狭となっている。平板部3は、この幅狭となった後端から把持部7が連接されている。本実施形態の焼網用剥がしヘラ20は、平板部3の後端を把持しやすいように幅狭に形成された部分が把持部7とされており、平板部3の前端を屈曲させることで、その屈曲部分よりも前方の部分が櫛状部4とされている。なお本実施形態では、平板部3と把持部7と連接部分の幅寸法L3が30mmとなっており、平板部3と櫛状部4との連接部分(屈曲部分)の幅寸法L4が104.5mmとなっている。
【0028】
把持部7は、ユーザーが焼網用剥がしヘラ20を使用する際に、掴むための部分である。把持部7は、図1(b)に示されるように、平板部3を水平とした状態で略水平となっている。把持部7は、その後端と平板部3の後端との間の中間部分で且つ幅方向両縁にくびれ部71を有している。また把持部7は、図1(c)に示されるように、断面の形状が下方に湾曲した(下向き凸)形状となっており、平板部3を水平とした状態では、その下端が当該平板部3の下面と同一面上に位置し、且つ当該把持部7の幅方向両縁が平板部3よりも上方に位置するような形状となっている。これにより、本実施形態の焼網用剥がしヘラ20が調理台等の平面に載置された場合であっても、把持部7の下面全面が当該調理台の平面に密着することがなく、ユーザーは把持部7を掴み易いようになっている。なお、本実施形態の焼網用剥がしヘラ20は、把持部7の幅寸法L5が20mm〜30mm程度となっており、断面形状の下方に湾曲した部分が、曲率半径R=22.3mm程度の湾曲となっている。
【0029】
櫛状部4は、平板部3を水平とした状態で、当該平板部3の前端から前斜め上方に向けて連接されている。本実施形態の焼網用剥がしヘラ20は、上述の通り、平板部3の前端を屈曲することで櫛状部4が形成されており、その曲げ角度T2は約30°である。つまり、櫛状部4と平板部3との成す角T1が約150°となっている。
【0030】
この櫛状部4は、前後に沿って形成された複数の線材挿入用溝部41を有している。この線材挿入用溝部41は、焼網10の線材11をその溝内に挿入する部分であり、焼網10の線材11間ピッチと同じピッチとなるように幅方向に複数並設されている。線材挿入用溝部41は、前方から順に、対向する各辺が平行な平行縁45と、後方ほど対向する距離が小さくなるように傾斜したテーパ縁46と、平行縁45の対向する距離よりも径が小さい半円弧状の奥部42とが形成されており、これらは滑らかに連続している。この奥部42は、櫛状部4と平板部3との接合部分(つまり平板部3の前端)に対し、櫛刃基部47を介して位置しており、すなわち平板部3の前端よりも前方に位置している。これにより、ユーザーが焼網用剥がしヘラ20を焼網10上に配置する際に、線材11を線材挿入用溝部41の奥部42内にスムーズに導くことができると共に、奥部42を線材11に密着するように当接させることができるから、把持部7を回動させる際のガタつきを極力小さくできるようになる。
【0031】
各線材挿入用溝部41の間には、複数の櫛刃43が形成されている。この櫛刃43は、平板に線材挿入用溝部41が複数並設されることで、その溝部41間に形成されるものであり、当該線材挿入用溝部41と交互に形成されている。言い換えると、櫛刃43は、平板部3と連続する櫛刃基部47から前方に向けて延設されており、所定の幅を有している。櫛刃43は、その先端が円弧状となっており、角部が丸められている。櫛刃43は、その先端に位置する幅狭部49(本実施形態では、10mmの幅)と、その幅狭部49の後方に連続した幅広部50とから構成されている。本実施形態では、幅狭部49と幅広部50との前後長さの比は、およそ75:25の割合で構成されている。なお、この幅狭部49の幅方向の縁部は、線材挿入用溝部41の平行縁45となっており、幅広部50の幅方向の縁部はテーパ縁46となっている。
【0032】
櫛状部4の両端縁と、線材挿入用溝部41のそれぞれの奥部42(奥部42の中心点)を結ぶ仮想線80との交差部分は、横規制部48となっている。この横規制部48は、図2に示されるように、ユーザーが櫛刃43を線材11間に挿入し、線材11が線材挿入用溝部41の奥部42に当接した状態では、当該横規制部48のすぐ外側の線材11に対し、それぞれ第1の寸法L1(本実施形態では0.5mmの隙間)を介して位置するようになっている。この横規制部48は、少なくとも、線材挿入用溝部41の奥部42から所定寸法前方に位置する部位から、平板部3と櫛状部4との屈曲部分にまで亙る範囲で形成される。本実施形態の横規制部48は、線材挿入用溝部41の奥部42から所定寸法(線材11の直径の2倍=5mm)前方に位置する部位から、平板部3の中間部分に亙って、当該平板部3の左右両縁に形成されている。
【0033】
一方、櫛刃43の幅狭部49の幅寸法は、線材11の隙間寸法L6(すなわち、線材11間のピッチから当該線材11の直径を差し引いた寸法)よりも、所定の値だけ小さく形成されている。つまり櫛刃43の幅狭部49の両端縁は、ユーザーが櫛刃43を線材11間に挿入し、線材11が線材挿入用溝部41の奥部42に当接した状態では、当該櫛刃43のすぐ外側の線材11に対し、それぞれ第2の寸法L2(本実施形態では2.75mmの隙間)を介して位置している。
【0034】
すなわち本実施形態の焼網用剥がしヘラ20は、第1の寸法L1が、第2の寸法L2よりも小さくなるように形成されている。
【0035】
また各櫛刃43は、その上面に、当該櫛刃43に沿って凸条44が上方に向けて突設されている。この凸条44は、各櫛刃43の先端から平板部3にかけて連続して設けられており、平板部3と櫛状部4との連接部分(屈曲部分)を跨いで設けられている。なおこの凸条44は、プレス加工にて形成される。
【0036】
本実施形態の焼網用剥がしヘラ20は、図1(b)に示されるように、櫛状部4の前端から線材挿入用溝部41の奥部42までの寸法L7(本実施形態では54mm)が、把持部7の後端から線材挿入用溝部41の奥部42までの寸法L8(本実施形態では151mm)よりも短くなるように形成されている。特に、本実施形態の焼網用剥がしヘラ20では、把持部7の後端から奥部42までの寸法が、櫛状部4の前端から奥部42までの寸法のおよそ3倍となるように設定されている。
【0037】
以上のような構成の焼網用剥がしヘラ20は、次のように使用される。
【0038】
焼網10に載置された被調理物9は、グリル庫等で焙焼されると、図3に示されるように、その自重により、焼網10の線材11が食い込む。そして被調理物9は、この状態でさらに加熱されるため、そのたんぱく質が金属製の線材11に反応し熱凝着してしまう。つまり、被調理物9が線材11に焦げ付いて強固にくっついてしまうという現象が起こる。なお、被調理物9は線材11とは直角方向に載置されている。
【0039】
ユーザーは、本実施形態の焼網用剥がしヘラ20の把持部7を片手で把持し、櫛状部4の櫛刃43の並設方向と線材11の並設方向とを一致させた状態で、被調理物9の後方側において、各櫛刃43を線材11間に挿入する。そして、ユーザーは、焼網用剥がしヘラ20を、櫛状部4の櫛刃43が被調理物9の下方に位置するまで、前方へ向けて移動させる(図2参照)。
【0040】
ユーザーは、線材挿入用溝部41の奥部42を線材11の上面に当接させた状態を保ち、この奥部42と線材11との当接部分を支点として、把持部7を下方に回動させる(図4の状態)。すると、櫛状部4の櫛刃43が被調理物9の下部に当接する。このとき焼網用剥がしヘラ20は、図5に示されるように、櫛状部4が水平よりもやや斜め下方を向いた姿勢となる。
【0041】
ユーザーは、この状態からさらに回動を継続させる。すると櫛刃43は、奥部42を中心に上方に回動し続け、被調理物9を広い範囲で且つ幅方向に略均等な力で、下方から上方に向けて持ち上げる。このとき櫛刃43は、被調理物9と線材11との熱凝着を剥がしながらゆっくり移動する(図6)。本実施形態の焼網用剥がしヘラ20は、櫛状部4と平板部3とが所定の角度(本実施形態では150°)を有するように連接されているから、被調理物9を線材11よりも上方に持ち上げた図6の状態であっても、把持部7と線材11との間に空間が設けられる。したがってユーザーは、被調理物9を線材11よりも上方に持ち上げた状態からも、さらに把持部7を下方に回動させることができるようになる。
【0042】
次いでユーザーは、図6の状態から、把持部7をさらに下方に回動させると、回動の中心が、奥部42から平板部3と櫛状部4との連接部分(屈曲部分)に移動し、この屈曲部分を中心として櫛刃43が上方に回動する。櫛刃43が上方に回動し、所定の角度以上の角度となると、被調理物9が、その自重により櫛状部4と平板部3との連接した谷間部分51に移動する(図7)。このとき、各櫛刃43には、凸条44が設けられているから、櫛刃43と被調理物9との接触面積が少なくなっており、摩擦による抵抗が低減する。これによりスムーズに被調理物9を移動させることができる。
【0043】
次いでユーザーは、当該谷間部分51に移動した被調理物9ごと焼網用剥がしヘラ20を把持しながら持ち上げ、別の位置にある皿に盛り付ける。このとき被調理物9は、平板部3と櫛状部4との連接した谷間部分51に位置するから、安定した状態となり、ユーザーは安心して持ち上げ運ぶことができる。
【0044】
このように、焼網10に載置され焙焼された被調理物9が当該焼網10に凝着したとしても、櫛状部4が被調理物9の下方の広い範囲を、略均等な力で下方から持ち上げるから、ユーザーは、身崩れ等を起こさせず綺麗な状態のまま、被調理物9を焼網10から持ち上げることができる。
【0045】
また被調理物9は、線材11から離れた後、平板部3と櫛状部4との連接した谷間部分51に移動するから、安定した支持が得られる。これによりユーザーは、安心して焼網用剥がしヘラ20を片手で上方に持ち上げることができ、被調理物9を皿などに移動させるときにも、当該被調理物9の落下を防止しつつ、簡単に皿に盛り付けることができる。
【0046】
また本実施形態の焼網用剥がしヘラ20は、把持部7の後端から線材挿入用溝部41の奥部42までの距離が、櫛状部4の前端から線材挿入用溝部41の奥部42までの距離よりも長く形成されているから、線材挿入用溝部41の奥部42を支点として把持部7を回動させた場合、てこの原理により、把持部7を下方に移動させる力よりも大きい力で被調理物9を下方から持ち上げることができる。また、把持部7を早く下方に移動させたとしても、櫛状部4はそれよりもゆっくりと上方に向かって移動するから、被調理物9をゆっくりと剥がすことができ、一層被調理物9の身崩れ等を防ぐことができる。
【0047】
また本実施形態の焼網用剥がしヘラ20は、第1の寸法L1が第2の寸法L2よりも小さくなるように形成されているから、線材挿入用溝部41に線材11が挿入されると、櫛状部4の両端縁のすぐ外側の線材11によって、幅方向の移動が規制されて、横ぶれが防止される。そのうえ、線材挿入用溝部41と線材11との接点を支点として把持部7を下方に回動させても、櫛状部4の各櫛刃43が線材11に引っ掛ることなくスムーズに移動するから、被調理物9を簡単且つ確実に焼網10から剥がすことができる。
【0048】
なお、櫛状部4の下面が、線材11上方と同じ位置になった状態(図6の状態)では、すでに被調理物9が線材11から完全に離れている。このためユーザーは、この状態から焼網用剥がしヘラ20を上方に持ち上げても、被調理物9に身崩れなどの不都合が生じるおそれが無い。したがってユーザーは、被調理物9を櫛状部4上に載せたまま焼網用剥がしヘラ20を上方に持ち上げ、その後櫛状部4の先端を上方に傾け、被調理物9を、櫛状部4と平板部3との連接された谷間部分51に移動させるようにしてもよい。
【0049】
次に、他の実施形態について図9,10に基づいて説明する。なお、本実施形態は図1〜図8に示す実施形態と大部分において同じであるため、同じ部分においては同符号を付して説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0050】
上記実施形態の焼網用剥がしヘラ20は、把持部7が、平板部3を水平とした状態で略水平となるように形成されていた。これに対し本実施形態の焼網用剥がしヘラ21は、把持部7が、平板部3を水平とした状態で後斜め上方に向けて連接されており、具体的には、平板部3の後端を上方に屈曲することで把持部7が形成されている。
【0051】
本実施形態の焼網用剥がしヘラ21は、線材11に熱凝着した被調理物9を焼網10から剥がし取るため、奥部42を支点にして把持部7を下方に回動させるところまでは上記実施形態と同じである。しかし本実施形態の焼網用剥がしヘラ21は、被調理物9を焼網10の線材11から完全に浮き上がらせた後、櫛状部4と平板部3との連接した谷間部分51(屈曲部分)に被調理物9を移動させる際に利点がある。ユーザーは、線材11から被調理物9が離れた後、上記実施形態における使用例と同様に、把持部7をさらに下方に回動させる。このときユーザーは、平板部3が線材11の上面に当接するまで回動させても、把持部7が平板部3を水平とした状態で後斜め上方に向けて連接されているから、把持部7と線材11との間には空間が存在する。つまり、仮にユーザーが把持部7を勢いよく回動させたとしても、把持部7を持つ手が線材11に触れることを防ぐことができるから、火傷を防いだり手の汚れを防いだりすることができる。
【0052】
以上、本発明の焼網用剥がしヘラを上記実施形態に基づいて説明したが、本発明の焼網用剥がしヘラは、焼網であれば、グリル付きこんろに使用される焼網に限らず広く適用可能である。また、上記実施形態では、櫛状部4と平板部3と把持部7とがいずれも屈曲により形成されていたが、本発明の焼網用剥がしヘラにおいては、これらが連接されていればよく、屈曲成形をすることは必ずしも必要な構成ではない。
【0053】
また、上記実施形態の焼網用剥がしヘラについては、便宜上、前後方向と幅方向(左右方向)とを定義して説明したが、本発明の焼網用剥がしヘラの構成や使用においては、上記使用例において定義した方向のみに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0054】
10 焼網
11 線材
20 焼網用剥がしヘラ
3 平板部
4 櫛状部
41 線材挿入用溝部
42 奥部
43 櫛刃
44 凸条
6 ヘラ本体部
7 把持部
80 仮想線
L1 第1の寸法
L2 第2の寸法
9 被調理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線材が並設された焼網に載置され焙焼された被調理物を、当該焼網から剥がし取るための焼網用剥がしヘラであって、
平板部の前端に、当該平板部を水平とした状態で前斜め上方に向けて櫛状部が連接されたヘラ本体部と、
ヘラ本体部の後端に、前記平板部を水平とした状態で略水平または後斜め上方に向けて連接された把持部と
を備え、
櫛状部は、前後に沿って形成された複数の線材挿入用溝部を有している
ことを特徴とする焼網用剥がしヘラ。
【請求項2】
前記櫛状部が平板状であると共に、
線材挿入用溝部の奥部が、前記櫛状部と平板部との連接部分よりも前方に位置するものである、請求項1記載の焼網用剥がしヘラ。
【請求項3】
前記把持部の後端から前記線材挿入用溝部の奥部までの距離が、前記櫛状部の前端から前記線材挿入用溝部の奥部までの距離よりも長いものである、請求項1または請求項2のいずれかに記載の焼網用剥がしヘラ。
【請求項4】
前記線材挿入用溝部に前記線材が挿入され、且つ当該線材が線材挿入用溝部の奥部に当接した状態において、
前記線材挿入用溝部のそれぞれの奥部を結ぶ仮想線と櫛状部の幅方向の端縁との交差する部分が、当該端縁のすぐ外側の線材に対し第1の寸法を介して位置するように形成され、
前記櫛状部の各櫛刃の幅方向の端縁が、当該端縁のすぐ外側の線材に対し第2の寸法を介して位置するように形成され、
前記第1の寸法が前記第2の寸法よりも小さく形成されたものである、請求項1または請求項3のいずれか一項に記載の焼網用剥がしヘラ。
【請求項5】
前記櫛状部の各櫛刃の上面に当該櫛刃に沿って凸条が形成されている、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の焼網用剥がしヘラ。
【請求項6】
前記把持部が、前記平板部の後端を上方に屈曲することで形成されている、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の焼網用剥がしヘラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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