説明

焼酎粕廃液の処理装置および処理方法

【課題】 大掛かりな装置や動力源を要することなく、エネルギー消費を軽減させた焼酎粕廃液の処理装置および処理方法を提供すること。
【解決手段】 麦焼酎の焼酎粕廃液に米糠、ふすま等の穀類の糠を混入して攪拌する攪拌槽2と、穀類の糠が混合された焼酎粕廃液を縦方向に平行に配列された板材33の表面に沿って流下させながら送風して水分を蒸発させて濃縮する濃縮装置3と、濃縮された焼酎粕廃液が流し込まれる浅い複数のトレイ5を備え、複数のトレイ5を間隔をあけて多層に配置し、各トレイ相互の隙間に通風して乾燥させて上記トレイ上でシート状の固形物に形成する乾燥装置4とにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼酎粕廃液中の水分を蒸発させて焼酎粕を粒状または粉状にして、家畜の飼料として活用を図る焼酎粕廃液の処理装置および処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
さつま芋を主原料とする芋焼酎の製造過程においては、蒸留工程で多量の焼酎粕廃液が発生する。この焼酎粕廃液を乾燥させて飼料化することが、下記特許文献などに開示されているが、この飼料の価格が輸入飼料よりも高価なものになるので、焼酎粕廃液を海洋投棄していたが、海洋汚染のために海洋投棄も規制されている。
【特許文献1】特開平11−262382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
焼酎粕廃液の用途として農業用肥料が考えられる。しかし、単位面積当たりの畑土に混ぜる焼酎粕廃液の量に限度があり、しかも焼酎粕廃液を土に混ぜ込むために多くの労力を要する。また、焼酎粕廃液を鶏糞などと混合して発酵させて堆肥化する方法は、発酵に基づく悪臭の発生と、堆肥化するまでに長時間を要するなどの問題があった。
【0004】
夏期においては、蒸留工程で発生した焼酎粕廃液は、2日間で腐敗が進行して悪臭を発生するので、できるだけ短期間内に乾燥させて保存可能または運搬可能な形態にしなければならない。
【0005】
また、焼酎粕廃液を飼料として活用するには、輸入飼料よりも廉価なものでなければならないので、少ないエネルギーで処理しなければならない。
【0006】
そこで、この発明は、大がかりな装置を要することなく、少ない電力費や燃料費で芋焼酎粕廃液や麦焼酎粕廃液を乾燥させて飼料化するために考えられたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の芋焼酎粕廃液の処理装置は、さつま芋を主原料とする芋焼酎粕廃液を攪拌する攪拌槽と、この芋焼酎粕廃液を縦方向に平行に配列された板材の表面に沿って流下させながら通風して水分を蒸発させて濃縮する濃縮装置と、濃縮された芋焼酎粕廃液が流し込まれる浅い複数のトレイを備え、該複数のトレイを間隔をあけて多層に配置し、各トレイ相互の隙間に通風して乾燥させて上記トレイ上でシート状の固形物に形成する乾燥装置とにより構成される。
【0008】
この発明の麦焼酎粕廃液の処理装置は、麦を主原料とする麦焼酎粕廃液に米糠、ふすま等の穀類の糠を混合して攪拌する攪拌槽と、穀類の糠が混合された麦焼酎粕廃液を縦方向に平行に配列された板材の表面に沿って流下させながら通風して水分を蒸発させて濃縮する濃縮装置と、濃縮された上記麦焼酎粕廃液が流し込まれる浅い複数のトレイを備え、該複数のトレイを間隔をあけて多層に配置し、各トレイ相互の隙間に通風して乾燥させて上記トレイ上でシート状の固形物に形成する乾燥装置とにより構成される。
【0009】
この発明の芋焼酎粕廃液の処理方法は、さつま芋を主原料とする芋焼酎粕廃液を攪拌する攪拌工程と、この芋焼酎粕廃液を縦方向に平行に配列された板材の表面に沿って流下させながら通風して水分を蒸発させて濃縮する濃縮工程と、間隔をあけて多層に配置した複数の浅いトレイに濃縮された上記芋焼酎粕廃液を注入し、各トレイ相互の隙間に通風して乾燥させて上記トレイ上でシート状の固形物に形成する乾燥工程とにより構成される。
【0010】
この発明の麦焼酎粕廃液の処理方法は、麦焼酎粕廃液に米糠、ふすま等の穀類の糠を混合して攪拌する攪拌工程と、穀類の糠が混合された麦焼酎粕廃液を縦方向に平行に配列された板材の表面に沿って流下させながら通風して水分を蒸発させて濃縮する濃縮工程と、間隔をあけて多層に配置した複数の浅いトレイに濃縮された上記麦焼酎粕廃液を注入し、各トレイ相互の隙間に通風して乾燥させて上記トレイ上でシート状の固形物に形成する乾燥工程とにより構成される。
【発明の効果】
【0011】
この発明の焼酎粕廃液の処理装置および処理方法によると、大掛かりな装置や動力源を要することなく、しかも、水分の蒸発は主として通風によって行われるのでエネルギー消費を軽減させることができる。
【0012】
この発明により処理した芋焼酎の焼酎粕廃液は、栄養価が高く、乾燥されているので保存性がよく、牛などの家畜の嗜好に合った飼料を得ることができる。
【0013】
この発明により処理した麦焼酎の焼酎粕廃液には、米糠、その他穀類の糠が混入されているので栄養価が高く、乾燥されているので保存性がよく、牛などの家畜の嗜好に合った飼料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
この発明の焼酎粕廃液の処理装置を麦焼酎の焼酎粕廃液処理に適用した実施の形態について説明する。
【0015】
図1および図2に示すように、蒸留が終了して蒸留釜から取り出した高温度の麦焼酎粕廃液を貯留する貯留槽1と、この貯留槽1からポンプ11により汲み出された麦焼酎粕廃液に米糠、ふすま等の穀類の糠を混合して攪拌する攪拌槽2と、穀類の糠が混合された焼酎粕廃液を波板33などの板材の表裏両面に沿って低速で流下させながら通風して、30%程度(重量比)の水分を蒸発させて濃縮する濃縮装置3と、この濃縮により粘性を増したペースト状の焼酎粕廃液を多数の浅いトレイ5に流し込んで、間隔をあけて多層に配置し、各トレイ相互の隙間に通風してさらに乾燥させてシート状の固形物に形成する乾燥装置4とにより構成される。
【0016】
攪拌槽2は、図1に示すように、モータ21によって回転する攪拌羽根22を備えており、麦焼酎の焼酎粕廃液に穀類の糠を約10%(重量比)混合して攪拌したのち、底部からポンプ23により濃縮装置3に送るものである。
【0017】
濃縮装置3は、焼酎粕廃液の濃縮工程を行うもので、異なる2方向で切断した図1(a)、(b)の縦断面図に示すように、頂部に水平に配置さて、焼酎粕廃液を流下させるスリット部材31と、このスリット部材31の複数の各スリット32の直下にそれぞれ平行に配置されて波形の屈曲させた複数の波板33と、底部の貯留部34に貯留した焼酎粕廃液をスリット部材31の上に汲み上げる循環ポンプ35と、波板33の表裏両面に沿って低速で流下する焼酎粕廃液に対して横方向に空気を送る第1の送風機36とを備えている。この送風機36の出口側には、風の流れを整える整流板37が配置されている。
【0018】
この濃縮工程においては、表面張力により波板33の表裏両面に沿って流下する焼酎粕廃液は、蒸留釜から取り出された初期の間は温度が高いので、第1の送風機36によって通風すると、焼酎粕廃液中の水分の蒸発を促進させることができる。
【0019】
天候が良く 気温 20〜28℃ 、湿度40〜50%であれば、そのまま通風を継続して濃縮できるが、気温の低い冬場や梅雨時には、循環する焼酎粕廃液を加温するか、送風機36にヒータを設けて温風を送ることが必要である。
【0020】
濃縮装置3において、焼酎粕廃液の循環を繰り返すと、波板33の表面に凝固物が付着して層をなすことがあるが、底部に貯留した濃縮済み焼酎粕廃液をポンプ38(図2参照)によって乾燥装置4へ送り出した後に、次の温度が高い未濃縮の焼酎粕廃液を循環させることにより洗浄して流し落とすことができる。
【0021】
乾燥装置4は、乾燥工程を行うもので、図2(a)の正面図および図2(b)の縦断面図に示すように、正面を開放した箱状の装置であって、水平に配置された複数のローラー411よりなるトレイ5を載せる複数段の棚41を備えており、この複数段の棚41を囲む第1側面には電動シャッター42が設けられ、この電動シャッター42と対向する第2側面は閉じられており、開放した正面と対向する第3側面には第2の送風機43が設けられている。この第2の送風機43の出口側には、風の流れを整える整流板45が配置されている。
【0022】
複数段の棚41に載せられた各トレイ5に対して、開放された正面側から濃縮済み焼酎粕廃液を注入するノズル44を備えている。このノズル44は、バルブ45および濃縮装置3の下部に結合されたポンプ38を介して接続されている。
【0023】
乾燥装置4の電動シャッター42を設けた第1側面の外側には、レージトング62によって昇降させられるトレイ搬入・搬出装置6が設けられている。このトレイ搬入・搬出装置6の載置台61には、ローラーコンベアまたはベルトコンベアが設けられている。
【0024】
電動シャッター42を開いて、トレイ搬入・搬出装置6により各棚41に空のトレイ5を順次に載せる。このとき、棚41のローラーおよび載置台61のコンベアにより少ない力で容易に搬入することができる。
【0025】
全ての棚41にトレイ5を載せ終わると、開放された正面側から、ポンプ38を動作させながら、バルブ45を順次に開いてノズル44より一定量の濃縮済み焼酎粕廃液を各トレイ5に順次に注入する。
【0026】
各トレイ5に濃縮済み焼酎粕廃液が注入されると、電動シャッター42を閉じて送風機43を動作させ、各トレイ相互の間に通風して濃縮済み焼酎粕廃液の表面から水分を蒸発させる。天候が良く 気温 20〜28℃、 湿度40〜50%であれば、9〜10時間でシート状の固形物に形成することができる。
【0027】
各トレイ5上の濃縮済み焼酎粕廃液が乾燥してシート状の固形物になると、電動シャッター42を開いてトレイ搬入・搬出装置6により各棚41から各トレイ5を順次に取り出し、各トレー5から乾燥したシート状の固形物を剥離する。
【0028】
麦焼酎の焼酎粕廃液には、分解されない繊維質の含有量が少ないので、麦焼酎の焼酎粕廃液に穀類の糠を予め混合しておかなければ、トレイ5を用いた乾燥工程において、焼酎粕廃液の粘度が著しく高くなってトレイから剥離することは困難になるが、麦焼酎粕廃液に穀類の糠を混合しておくと、麦焼酎粕廃液の粘結力が弱まって、ぱさぱさになって容易に剥離することができ、さらに天日乾燥すると容易に粉砕することができる。
【0029】
また、穀類の糠の代わりに、焼酎粕廃液にデンプン粕を約35%(重量比)混合しても同様に処理することができる。
【0030】
さつま芋を主原料とする芋焼酎の焼酎粕廃液には、酵母によって分解されない繊維質の含有量が多いので、穀類の糠やデンプン粕を混入しなくても、トレイ5を用いた乾燥工程において、トレイから容易に剥離することができる。
【0031】
しかし、芋焼酎の焼酎粕廃液は上澄みと沈殿物に分離する傾向があるので、芋焼酎の焼酎粕廃液を攪拌槽2によって充分攪拌しながら濃縮装置3へ供給しなけれならない。したがって、芋焼酎の焼酎粕廃液の処理にも攪拌槽2は必要である。
【0032】
以上で説明した実施の形態においては、各トレイ5に濃縮済み焼酎粕廃液を注入するために、バルブ45を有するノズル44を用いてバルブ45を順次に開いて注入しているが、ポンプ38に可撓性を有する1本のホースを接続して、このホースの先端に1つのノズルを接続し、ノズルを昇降させて各トレイ5へ順次に濃縮済み焼酎粕廃液を注入してもよいのである。
【0033】
また、以上で説明した実施の形態においては、第1側面に電動シャッター42を設けているが、この第1側面に電動シャッター42を設けることなく閉じて、開放した正面側にトレイ搬入・搬出装置6を設けて、正面側よりトレイ搬入・搬出および濃縮済み焼酎粕廃液の注入を行っててもよいのである。
【0034】
以上で説明した濃縮装置3および乾燥装置4を設置する建屋には、屋根および壁面に太陽光を透過させる透明なアクリル樹脂板やガラス板を使用して、太陽光により建屋内の温度を上げて省エネルギーの設備とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の焼酎粕廃液の処理装置における濃縮装置の実施形態を示す異なる2方向で切断した縦断面図(a)、(b)である。
【図2】この発明の焼酎粕廃液の処理装置における乾燥装置の実施形態を示す正面図(a)および縦断面図(b)である。
【符号の説明】
【0036】
1 貯留槽
2 攪拌槽
21 モータ
22 攪拌羽根
23 ポンプ
3 濃縮装置
31 スリット部材
32 スリット
33 波板
34 貯留部
35 循環ポンプ
36 第1の送風機
4 乾燥装置
41 棚
411 ローラー
42 電動シャッター
43 第2の送風機
44 ノズル
45 バルブ
5 トレイ
6 トレイ搬入・搬出装置
61 載置台のコンベア
62 レージトング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
さつま芋を主原料とする芋焼酎粕廃液を攪拌する攪拌槽と、
該芋焼酎粕廃液を縦方向に平行に配列された板材の表面に沿って流下させながら通風して水分を蒸発させて濃縮する濃縮装置と、
濃縮された芋焼酎粕廃液が流し込まれる浅い複数のトレイを備え、該複数のトレイを間隔をあけて多層に配置し、各トレイ相互の隙間に通風して乾燥させて上記トレイ上でシート状の固形物に形成する乾燥装置とを具備することを特徴とする焼酎粕廃液の処理装置。
【請求項2】
麦を主原料とする麦焼酎粕廃液に米糠、ふすま等の穀類の糠を混合して攪拌する攪拌槽と、
穀類の糠が混合された麦焼酎粕廃液を縦方向に平行に配列された板材の表面に沿って流下させながら通風して水分を蒸発させて濃縮する濃縮装置と、
濃縮された上記麦焼酎粕廃液が流し込まれる浅い複数のトレイを備え、該複数のトレイを間隔をあけて多層に配置し、各トレイ相互の隙間に通風して乾燥させて上記トレイ上でシート状の固形物に形成する乾燥装置とを具備することを特徴とする焼酎粕廃液の処理装置。
【請求項3】
焼酎粕廃液を流下させる板材が波板であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の焼酎粕廃液の処理装置。
【請求項4】
さつま芋を主原料とする芋焼酎粕廃液を攪拌する攪拌工程と、
該芋焼酎粕廃液を縦方向に平行に配列された板材の表面に沿って流下させながら通風して水分を蒸発させて濃縮する濃縮工程と、
間隔をあけて多層に配置した複数の浅いトレイに濃縮された上記芋焼酎粕廃液を注入し、各トレイ相互の隙間に通風して乾燥させて上記トレイ上でシート状の固形物に形成する乾燥工程とよりなることを特徴とする焼酎粕廃液の処理方法。
【請求項5】
麦焼酎粕廃液に米糠、ふすま等の穀類の糠を混合して攪拌する攪拌工程と、
穀類の糠が混合された麦焼酎粕廃液を縦方向に平行に配列された板材の表面に沿って流下させながら通風して水分を蒸発させて濃縮する濃縮工程と、
間隔をあけて多層に配置した複数の浅いトレイに濃縮された上記麦焼酎粕廃液を注入し、各トレイ相互の隙間に通風して乾燥させて上記トレイ上でシート状の固形物に形成する乾燥工程とよりなることを特徴とする焼酎粕廃液の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−60857(P2009−60857A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231914(P2007−231914)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(507300272)株式会社ECOFUEL (1)
【Fターム(参考)】