説明

煙突効果問題の低減のための室内加圧方法及び加圧装置

高層オフィスビルの平面構造上、高層部で必然的に発生する、エレベーターホール及び室内の間の区画ドアの不完全閉鎖現象、及びエレベータードアの開放時の強風の発生を最小化することができる、煙突効果問題の低減のための室内事務空間の加圧方法及び加圧装置を提供することを課題とする。本発明は、区画ドアの耐圧性能及びエレベータードアの開放時の通過風速の低減目標に応じて室内事務空間の加圧程度を決定し、これに基づいて、加圧に必要な給気風量及びエレベーターシャフトからの排気風量を算出する、煙突効果問題の低減のための室内事務空間の加圧方法及び加圧装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高層ビルの高層部で発生する煙突効果による問題の低減方法に関するものであって、より詳しくは、中性帯を固定して室内を加圧する方法で、エレベータードア及び区画ドアに作用する圧力を低減させることにより、一般的な形態の高層オフィスビルの高層部で必然的に発生するエレベーターホール及び室内の間の区画ドアの不完全閉鎖現象、及びエレベータードアの開放時の強風発生のような煙突効果問題を最小化するための室内加圧方法及び加圧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物の高層部で発生する煙突効果の大きさは、建物の内外部の温度差及び建物の高さによって決定されるものであって、建物の内外部の温度差が大きくなるほど、そして建物が高くなるほど、煙突効果の大きさ及びそれに伴う問題が大きくなる。
【0003】
したがって、最近の建物の高層化の傾向に伴って、煙突効果による各種問題の発生が深刻化しており、このような問題により、建築物が竣工された後で追加補完作業が必要になるなど、実質的な追加費用が発生している。
【0004】
前記煙突効果によって、エレベーター、玄関などの各種ドアにおける開閉困難及び動作異常、隙間風及び空気漏れによる熱源負荷の増加及び温熱快適性の低下、防災上の脆弱性の増大、建物の内部の汚染の拡散などの問題が発生する。
【0005】
前記煙突効果の問題は、煙突効果によって発生する圧力差が建物の特定の区画に集中的に作用する場合、及び建物の区画の気密性能が低い場合に主に発生する。
【0006】
一般的な高層ビルの場合、建物の平面的特性により、エレベーターホール及び室内を区分する区画ドアの空気が漏れる面積が他の区画に比べて相対的に小さいため、大部分の煙突効果圧力が作用するようになる。
【0007】
そのために、冬期の高層ビルの高層部では、室内側にドアが開放される区画ドアが開放後に完全に閉鎖されずに開放された状態に維持されるようになり、結果的には、区画としての役割を果たすことができないため、エレベータードアが開放される場合に通過風速が極端に大きくなる。
【0008】
このような問題に対応するために、一般に、区画を追加して作用圧力を分散したり、当該ドアのドアクローザーを調整するなど建築計画的な方法で完全閉鎖を誘導しているが、建物の使用上の側面を考慮し、作用圧力の大きさを考慮すると、現実的な効果を期待するのは難しい。
【0009】
また、設備的な加圧方式及び減圧方式が対応方案として検討されてもいるが、加圧及び減圧を行う対象空間に対する圧力特性などを考慮しない従来の方式では、必然的に2次的問題が発生する。例えば、ある空間を対象に加圧を行うと、空気流入側の空間とは圧力差が低減して空気流入量も低減するが、空気流出側の空間とは圧力差が増加して空気流動量も増加して、問題の発生程度を倍加させたり、または新たな問題が発生する原因となる恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するために発明されたものであって、本発明の目的は、高層ビルの中性帯を固定して室内事務空間を直接加圧して、エレベータードア及び区画ドアに作用する圧力を低減させることにより、エレベーターホール及び室内の間の区画ドアの不完全閉鎖現象、及びエレベータードアの開放時の強風発生のような煙突効果問題の低減のための室内加圧方法及び加圧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、加圧が行われる空間及び隣接空間の間の圧力及び空気流動量に対する変化特性を考慮して、加圧による2次的問題が発生しないように加圧対象空間を設定する、煙突効果問題の低減のための室内加圧方法及び加圧装置を提供する。
【0012】
本発明が提案する煙突効果問題の低減のための室内加圧方法は、区画ドアの耐圧性能及びエレベータードアの開放時の適正な通過風速水準に応じて室内事務空間の加圧程度を決定する第1段階;前記第1段階で決定された加圧程度に基づいて、加圧に必要な給気風量及びエレベーターシャフトからの排気風量を算出する第2段階;前記第2段階で算出された給気/排気風量に基づいて、室内を加圧及び調整する第3段階;を含む煙突効果問題の低減のための室内加圧方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、建物の加圧対象階の室内に外気を供給することができるようにダクト設備を含む室内給気装置;
前記建物のエレベーターシャフトの空気を建物の外部に排気することができるようにダクト設備を含むエレベーターシャフト排気装置;
前記建物の室内給気装置による給気風量及びエレベーターシャフト排気装置による排気風量を測定する給気/排気風量センサー;
前記建物のエレベーターシャフト、室内、及び外部に設置されて、建物のエレベーターシャフト、室内、及び外部の絶対圧力を測定する絶対圧力センサー;
前記給気/排気風量センサー及び絶対圧力センサーの測定値の伝達を受けて、建物の加圧対象階の室内及びエレベーターシャフトの間の圧力差を算出して、室内が設定された加圧分だけ加圧されるようにし、建物の非加圧階の室内及びエレベーターシャフトの間の圧力差を算出して、中性帯が移動しないように前記室内給気装置及びエレベーターシャフト排気装置の運転条件の調整を指示する自動制御装置;
前記室内給気装置に設置されて、建物の加圧対象階の室内に供給される外気を予熱することができるように構成される給気温度制御装置;
前記建物の室内加圧装置の非運転時に、室内給気装置及びエレベーターシャフト排気装置による空気の流動を防止するために設置されるダンパー;
前記自動制御装置に測定データを伝達するように構成されると共に、前記室内給気装置及びエレベーターシャフト排気装置の運転条件の決定、及び給気温度制御装置の予熱負荷の調整のために外気の温度を測定する外気温度センサー;
を含む煙突効果問題の低減のための室内加圧装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明による煙突効果問題の低減のための室内加圧方法及び加圧装置は、中性帯を固定して室内を加圧することが可能であるので、室内加圧方法及び加圧装置の適用による非加圧階に対する2次的問題が発生しないようにしつつ、エレベータードア及び区画ドアに作用する圧力を低減させることが可能になり、高層オフィスビルで必然的に発生するエレベーターホール及び室内の間の区画ドアの不完全閉鎖現象、及びエレベータードアの開放時の強風発生のような煙突効果問題を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例による高層ビルの室内事務空間を加圧する方法及び装置を説明するための外気及び室内の垂直的圧力分布、及び圧力制御の概念を示した図である。
【図2】本発明の実施例による高層ビルの室内事務空間を加圧する方法及び装置を説明するための室内加圧装置の基本構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の望ましい実施例について、添付した図面を参照して、段階別に詳しく説明する。本実施例では、高層ビルの高層部の一部の階で加圧を行うことを例に挙げて説明する。
【0017】
図1は、本発明による高層ビルの室内事務空間を加圧する方法及び装置を説明するための外気及び室内の垂直的圧力分布、及び圧力制御の概念を示した図であり、図2は、本発明による高層ビルの室内事務空間を加圧する方法及び装置を説明するための室内加圧装置の基本構成を示した図である。
【0018】
<加圧対象空間の決定>
本発明では、高層ビルの室内空間を加圧対象空間に設定して、室内加圧による圧力移動(圧力低減対象区画で低減される圧力が圧力低減非対象区画に移動する現象)を外壁に誘導するので、煙突効果に関連した内部区画での2次的問題が発生しないようになる。
【0019】
<第1段階>
当該建物(本発明を適用するための建物:以下、「建物」と記載する)のエレベーターホール及び室内の間の区画ドアの耐圧性能を把握し、エレベータードアの開放時の通過風速を測定して、適正な通過風速水準を設定した後、これらに基づいて、加圧対象階の室内に対する加圧程度を算出する。加圧程度の算出に関する一連の検討方法及び順序は、次の通りである。
【0020】
(1)一つの階に対して、室内空調条件(具体的には、給気風量及び排気風量の調節による加圧条件及び減圧条件)を変動させながら、区画ドアの不完全閉鎖現象が発生する作用圧力差条件を測定したり、中性帯の上部に相当する階の区画ドアの不完全閉鎖現象の発生有無及び作用圧力差を測定して、エレベーターホール及び室内の間の区画ドアの耐圧性能を把握する。ここで、区画ドアの耐圧性能とは、不完全閉鎖現象が発生しない作用圧力差条件を意味する。
【0021】
(2)建物の各階のエレベータードアの開放時の通過風速を測定し、強風による不快感許容程度(苦情の発生有無)を考慮して、エレベータードアの開放時の適正な通過風速水準を決定する。同時に、適正な水準の通過風速が発生する条件下でのエレベーターシャフト及びエレベーターホールの間の圧力差を測定する。
【0022】
(3)区画ドアの不完全閉鎖現象及びエレベータードアの開放時に通過風速による苦情が発生する階に対して、エレベーターシャフト、エレベーターホール、及び室内などの各々の区画空間に対する絶対圧力を測定し、各々の区画が有する圧力分担率を算出する。
【0023】
(4)前記(3)で算出された圧力分担率、及び冬期の設計用外気温度条件及び室内温度条件(最大室内外温度差の発生条件)での煙突効果(外気及びシャフトの間の圧力差)を考慮して、各区画空間の絶対圧力及び各区画が分担する圧力差を算出する。設計用温度条件での煙突効果は、中性帯の位置及び中性帯からの距離を把握して算定する。
【0024】
(5)前記(3)で算出された圧力分担率を考慮して、前記(1)の区画ドアの耐圧性能及び前記(2)の適正な通過風速水準でのエレベーターシャフト及びエレベーターホールの間の圧力差の両方の条件を満たすための設計用温度条件での室内の絶対圧力を算出する。ここで、前記(3)で算出された圧力分担率を考慮するというのは、エレベータードアの区画及びエレベーターホール及び室内の間の区画ドアに対する元来の圧力分担率をエレベーターシャフト及び室内の間の圧力差を基準にして再調整するという意味であり、この時、エレベーターシャフトの中性帯は固定されているとする。
【0025】
本発明では、室内加圧によって低減されるエレベーターシャフトから室内側への流出風量分だけエレベーターシャフトから外部に直接排気させる方法によって、中性帯の移動を防止している(図1参照)。
【0026】
前記中性帯を固定する理由は、一部の階に対する室内加圧によってエレベーターシャフトから室内側への流出風量が低減すると、中性帯が下部側に移動するようになり、室内加圧を行わない階における問題の発生強度が大きくなって、2次的問題が発生することがあるためである。
【0027】
(6)前記(4)で算出された設計用室内外温度条件での室内の絶対圧力(P1)及び前記(5)で算出された条件を満たすための室内の絶対圧力(P2)により、室内加圧程度を決定する。つまり、両方の差(P1−P2)が室内加圧程度となる。
【0028】
<第2段階>
前記第1段階で決定された室内加圧程度に基づいて、加圧に必要な給気風量及びエレベーターシャフトからの排気風量を算出する。給気風量及び排気風量の算出に関する一連の検討方法及び順序は、次の通りである。
【0029】
(1)建物の一部の区画に対する空気が漏れる面積を測定する。空気が漏れる面積の測定は、区画規模などを考慮すれば、エレベーターホール及び室内の間の区画ドアを対象にするのが容易である。
【0030】
(2)前記(1)で測定された区画の空気が漏れる面積及び前記第1段階の(3)で算出された圧力分担率により、残りの区画の空気が漏れる面積を算出する。
【0031】
(3)前記(1)及び(2)で測定及び算出された空気が漏れる面積条件及び建物の設計用室内外温度条件に対するシミュレーションを行って、問題発生階における各区画空間の間の空気流動量(Q1)を把握する。
【0032】
(4)前記(3)で把握された各区画を通過する空気流動量(Q1)及びこの時の室内及び外気の間の圧力差(ΔP1_io)を下記の計算式1に代入した後、計算式1のその他の条件(αA、g、γ)が固定された状態で、ΔP1_ioが前記第1段階の(6)で決定された室内加圧程度(P2−P1)分だけ増加されたΔP2_ioに変更される時の増加された空気流動量(Q2)を算出する。ここで、Q2は計算式2を利用して容易に算出することができる。
【0033】
【数1】

【0034】
ここで、:空気流動量(m/h)、:流量係数(通常0.6〜0.7程度)、:開口面積(cm)、:相当開口面積(cm)、:重力加速度(≒9.8m/s)、:空気の比重量(kgf/m)、:室間の圧力差(mmAq)
【0035】
【数2】

【0036】
(5)前記(3)で把握された各区画を通過する空気流動量(Q1)及びこの時のエレベーターシャフト及び室内の間の圧力差(ΔP1_io)を前記の計算式1に代入した後、計算式1の前記その他の条件が固定された状態で、ΔP1_ioが前記第1段階の(6)で決定された室内加圧程度(P2−P1)分だけ低減されたΔP2_ioに変更される時の低減された空気流動量(Q3)を算出する。ここで、Q3は、計算式3を利用して容易に算出することができる。
【0037】
【数3】

【0038】
(6)ここで、Q2−Q3が室内加圧に必要な給気風量となる。
【0039】
(7)ここで、Q1−Q3がエレベーターシャフトから外部への排気風量となる。
【0040】
<第3段階>
前記第2段階で決定された室内加圧のための給気風量及びエレベーターシャフトから外部への排気風量に基づいて、中性帯を固定して室内加圧を行う。室内加圧の実施における基本原則及び注意事項は、次の通りである。
【0041】
(1)前記第2段階の(6)及び(7)で算出された給気風量及び排気風量は、実際の空気が漏れる面積の分布など建物の状態によって誤差が発生することがあるので、給気/排気ファンの選定及び適用時に余裕風量を確保して調整を行う必要がある。
【0042】
(2)室内加圧を行う階が複数である場合には、各階に対する加圧程度及び加圧風量を別途に設定して運用することもでき、室内加圧を行う最上階を基準にして加圧程度及び加圧風量を設定して一括運用することもできる。
【0043】
(3)冬期の外気温度条件の変化に応じた建物の煙突効果の変化特性(圧力変化特性)を考慮して、室内加圧が必要な外気温度範囲を設定して運用する。特に、前記(2)の一括運用の場合には、室内加圧によって決定される区画ドアなどの作用圧力が階別に相異するので、室内加圧が必要な外気温度範囲を各階別に設定しなければならない。
【0044】
(4)また、室内加圧が必要な外気温度範囲内での外気温度条件に対する加圧程度及び加圧風量を設定して運用する。外気温度条件に対する加圧程度及び加圧風量は、前記<第1段階>及び<第2段階>の方法に基づいて算出する。
【0045】
(5)本発明では、一般的な空調方式に基づいて、空調条件による室内圧力の変動が発生しないことを基本条件とした室内加圧方法及び加圧装置が提示されており、空調条件による室内圧力に変動が発生する場合には、加圧程度及び給気/排気風量の設定時に、室内加圧の実施時の実際の影響程度を考慮する必要がある。
【0046】
<本発明の煙突効果問題の低減のための室内加圧装置の概要>
本発明による室内圧力制御のための装置の概要を図2に示したが、本装置は、室内給気装置1、エレベーターシャフト排気装置2、給気/排気風量センサー3、室内外及びエレベーターシャフトの絶対圧力センサー4、自動制御装置5、給気温度制御装置6、ダクト設備7、ダンパー8、外気温度センサー9などが基本構成である。装置の作動概要は、次の通りである。
【0047】
(1)本発明による室内加圧方法により設定された加圧程度及び給気/排気風量に基づいて、室内給気装置1によって室内に給気が行われ、同時に、エレベーターシャフト排気装置2によってエレベーターシャフトから外部への排気が行われる。前記室内給気装置1及びエレベーターシャフト排気装置2は、一般的に広く使用されている給気ファンまたは排気ファンを使用することができるので、詳細な説明は省略する。
【0048】
(2)室内給気装置1による給気量及びエレベーターシャフト排気装置2による排気量は、給気/排気風量センサー3の信号の伝達を受けた自動制御装置5によって調節される。
【0049】
(3)自動制御装置5には、本発明による室内加圧方法により設定された加圧程度及び給気/排気風量に関する情報が入力されており、最初の作動時には、外気温度センサー9によって測定された外気温度情報及び設定された給気/排気風量情報に応じて室内給気装置1及びエレベーターシャフト排気装置2の運転を指示するようになる。
【0050】
(4)設定された給気/排気風量情報に応じた室内給気装置1及びエレベーターシャフト排気装置2の運転によっても設定された加圧分だけ加圧されない場合には、自動制御装置5が、入力された設定された加圧程度に関する情報に応じて室内給気装置1及びエレベーターシャフト排気装置2に給気/排気風量の増加を指示する。反対に、加圧程度が超過する場合には、自動制御装置5が、入力された設定された加圧程度に関する情報に応じて室内給気装置1及びエレベーターシャフト排気装置2による給気/排気風量の減少を指示する。
【0051】
(5)室内が設定された加圧分だけ加圧されているか否かは、室内及びエレベーターシャフトの絶対圧力センサー4からの測定値の提供を受けた自動制御装置5が室内及びエレベーターシャフトの間の圧力差を算出して判断し、室内が設定された加圧分だけ加圧された場合には、自動制御装置5によって室内給気装置1及びエレベーターシャフト排気装置2の運転条件が固定される。
【0052】
(6)非加圧階の室内及びエレベーターシャフトの絶対圧力センサー4により測定された測定値の提供を受けた自動制御装置5が非加圧階の室内及びエレベーターシャフトの間の圧力差を算出して、建物の垂直的圧力分布の変動によって中性帯が移動したか否かを判断して、中性帯が移動した場合には、自動制御装置5がエレベーターシャフト排気装置2に排気風量の増加及び減少を指示し、中性帯が元来の位置に回復されれば、自動制御装置5がエレベーターシャフト排気装置2に排気風量の固定運転を指示する。
【0053】
(7)前記(4)及び(5)、そして前記(6)は並行して行われ、室内加圧のための給気風量及びエレベーターシャフトからの排気風量の間の比率を示す計算式4に基づいて、給気/排気風量の両者間の増減量を決定する。
【0054】
【数4】

【0055】
前記計算式4で、
Q1:加圧前の区画空間の間の空気流動量(外壁含む)
Q2:加圧後の外壁を通した空気流動量
Q3:加圧後の区画空間の間の空気流動量(外壁除外)
ΔP1_io:加圧前の室内及び外気の間の圧力差
ΔP2_io:加圧後の室内及び外気の間の圧力差
ΔP1_si:加圧前のエレベーターシャフト及び室内の間の圧力差
ΔP2_si:加圧後のエレベーターシャフト及び室内の間の圧力差を示す。
【0056】
(8)室内給気装置1によって室内に供給される空気は、給気温度制御装置6によって室内の設定温度まで予熱され、給気/排気風量センサー3による実際の給気風量情報及び外気温度センサー9による外気温度情報により、給気に対する予熱負荷が調整される。前記給気温度制御装置6は、一般的に建物に設置される空調装置及び空気を予熱することができるヒーターなどを使用することができるので、詳細な説明は省略する。
【0057】
また、建物に設置された既設の空調装置に風量及び予熱負荷に関する余裕容量が確保されている場合には、これを活用することも可能である。
【0058】
(9)自動制御装置5に入力されている室内加圧が必要な外気温度範囲に関する情報、及び外気温度条件に対する加圧程度及び給気/排気風量に関する情報に応じて外気温度センサー9の温度測定信号の提供を受けた自動制御装置5が装置を運転するか否か及び運転条件を判断し、装置の運転が必要でない場合には、自動制御装置5の指示に従ってダンパー8によって全てのダクト設備7が閉鎖される。
【0059】
(10)その他にも、エレベーターシャフト排気装置2に関連した外気側に接するダクト設備7に対する断熱施工によって、結露の発生を防止する必要がある。
【符号の説明】
【0060】
1 室内給気装置
2 エレベーターシャフト排気装置
3 給気/排気風量センサー
4 絶対圧力センサー
5 自動制御装置
6 給気温度制御装置
7 ダクト設備
8 ダンパー
9 外気温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高層オフィスビルで必然的に発生する煙突効果問題を低減させるための方法であって、
外壁によって区画された室内空間を加圧対象空間として、室内加圧による圧力移動を外壁に誘導することを特徴とする、煙突効果問題の低減のための室内加圧方法。
【請求項2】
建物のエレベーターホール及び室内の間の区画ドアの耐圧性能を把握し、エレベータードアの開放時の通過風速を測定して、適正な通過風速水準を設定した後、これらに基づいて、加圧対象階の室内に対する加圧程度を決定する第1段階;
前記第1段階で決定された室内加圧程度に基づいて、加圧に必要な給気風量及びエレベーターシャフトから外部への排気風量を算出する第2段階;
前記第2段階で算出された室内加圧のための給気風量及びエレベーターシャフトからの排気風量に基づいて、中性帯を固定して室内加圧を行って調整する第3段階;
を含む、煙突効果問題の低減のための室内加圧方法。
【請求項3】
前記室内加圧方法は、一部の階に対する室内加圧及び中性帯の移動による非加圧階における問題の発生強度の増加などの2次的問題発生に対応するために、室内加圧によって低減されるエレベーターシャフトから室内側への流出風量と同一な量の空気をエレベーターシャフトから外部に排気することによって中性帯を固定することを特徴とする、請求項2に記載の煙突効果問題の低減のための室内加圧方法。
【請求項4】
建物の加圧対象階の室内に外気を供給することができるようにダクト設備を含む室内給気装置;
前記建物のエレベーターシャフトの空気を建物の外部に排気することができるようにダクト設備を含むエレベーターシャフト排気装置;
前記建物の室内給気装置による給気風量及びエレベーターシャフト排気装置による排気風量を測定する給気/排気風量センサー;
前記建物のエレベーターシャフト、室内、外部に設置されて、建物のエレベーターシャフト、室内、外部の絶対圧力を測定する絶対圧力センサー;
前記給気/排気風量センサー及び絶対圧力センサーの測定値の伝達を受けて、建物の加圧対象階の室内及びエレベーターシャフトの間の圧力差を算出して、室内が設定された加圧分だけ加圧されるようにし、建物の非加圧階の室内及びエレベーターシャフトの間の圧力差を算出して、中性帯が移動しないように前記室内給気装置及びエレベーターシャフト排気装置の運転条件の調整を指示する自動制御装置;
前記室内給気装置に設置されて、建物の加圧対象階の室内に供給される外気を予熱することができるようにする給気温度制御装置;
前記建物の室内加圧装置の非運転時に、室内給気装置及びエレベーターシャフト排気装置による空気の流動を防止するために設置されるダンパー;
前記自動制御装置に測定データを伝達することができるように構成されると共に、前記室内給気装置及びエレベーターシャフト排気装置の運転条件の決定及び給気温度制御装置の予熱負荷の調整のために外気の温度を測定する外気温度センサー;
を含む、煙突効果問題の低減のための室内加圧装置。
【請求項5】
前記室内加圧装置は、室内加圧によってエレベーターシャフトから室内側への流出風量の低減による中性帯の移動を防止するために、非加圧階の室内及びエレベーターシャフトの間の圧力差による建物の垂直的圧力分布を測定して、エレベーターシャフトから外部への排気量を増加及び減少させることを特徴とする、請求項4に記載の煙突効果問題の低減のための室内加圧装置。
【請求項6】
前記室内加圧装置は、室内加圧程度の調整及び中性帯の移動に対する調整を並行して行うために、室内加圧のための室内給気装置の給気風量及び中性帯の移動調整のためのエレベーターシャフト排気装置の排気風量の間の比率を下記の計算式によって決定することを特徴とする、請求項4に記載の煙突効果問題の低減のための室内加圧装置。
【数1】

前記計算式で、
Q1:加圧前の区画空間の間の空気流動量(外壁含む)
Q2:加圧後の外壁を通した空気流動量
Q3:加圧後の区画空間の間の空気流動量(外壁除外)
ΔP1_io:加圧前の室内及び外気の間の圧力差
ΔP2_io:加圧後の室内及び外気の間の圧力差
ΔP1_si:加圧前のエレベーターシャフト及び室内の間の圧力差
ΔP1_si:加圧後のエレベーターシャフト及び室内の間の圧力差

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−532440(P2010−532440A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519161(P2010−519161)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【国際出願番号】PCT/KR2008/004798
【国際公開番号】WO2010/002063
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(510005269)サムスン・シー・アンド・ティー・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】