説明

煙突破壊装置のガイド

【課題】煙突を上端部から破壊する際に、煙突破壊装置を破壊位置に確実に案内して位置決めする煙突破壊装置のガイドを提供する。
【解決手段】煙突破壊装置71の側面に対構造の基板部2a,2bを固定する。各基板部2a,2bには破壊対象となる煙突の厚みに合わせて固定位置を調整し得るように長孔7a,7bが形成され、煙突の破壊位置を両側から跨ぐようにして挟む位置決め部材3a,3bが固定されている。従って、破壊対象となる煙突の厚みに合わせた寸法で煙突破壊装置71に基板部2a,2bを固定すると、位置決め部材3a,3bの間隔Gの間で煙突を跨ぐようになり、煙突破壊装置71が位置決めされる。また、位置決め部材3a,3b間には調整部材4が設けられているので、設定された間隔Gを確実に保持することができ、且つガイド1に掛かる荷重による変形等を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突を上端部からカッターにより挟み込んで破壊する際に用いて好適な煙突破壊装置のガイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場のスクラップ・アンド・ビルドを行う場合などにおいて、煙突を破壊しなければならないことがある。このような場合、従来は図7に示すような煙突破壊装置71を用いて煙突を破壊している。
ここで煙突破壊装置71は、クレーン等に上下及び横方向に移動自在に、また捩じり操作をもできるように取り付けられていて、煙突破壊を行う場合、想像線で示したように煙突72の上端に位置決めされ、次いで一対のカッター73a,73bを駆動して煙突72を破壊するものである。
【0003】
即ち、煙突破壊装置71は、図示していないクレーン等に取り付けるための連結部74の下部に機体75を一体に設け、その内部に前記カッター73a,73bを駆動するための例えば油圧シリンダー76a,76b等を配設したものである。機体75には一対の固定軸77a,77bが固定され、各固定軸77a,77bには油圧シリンダー76a,76bの一端が回動自在に取り付けられ、その他端に伸縮自在に設けられたシリンダーロッド78a,78bはカッター73a,73bの一端に連結されている。
【0004】
機体75には一対の固定軸79a,79bが固定され、各固定軸79a,79bに一対のカッター73a、73bの一端が回動自在に取り付けられている。そして、シリンダーロッド78a,78bが矢印A方向に駆動したとき実線で示したようにカッター73a,73bを閉じ、矢印B方向に駆動されたとき想像線で示す如く開くように構成されている。
前記のようなカッター73a,73bの開閉操作は、パイプ81を介して供給される油圧制御により行われるものであり、機体75及び前記各種部材はカバー82によって覆われている。
【0005】
前記煙突破壊装置71により煙突72を破壊する場合、クレーン等よって煙突破壊装置71を煙突72の上端の破壊位置に運び、パイプ81を介して油圧シリンダー76a,76bに油圧を掛け、シリンダーロッド78a,78bを矢印B方向に駆動し、一対のカッター73a,73bを想像線で示したように開く。
そして、一対のカッターを煙突72の破壊位置である上端縁部を跨ぐように位置決めし、この状態で再度油圧制御を行ってシリンダーロッド78a,78bを矢印A方向に駆動し、カッターを煙突72に食い込ませて破壊する。破壊により生じたコンクリートの固まり等は、煙突72の内部や外部に落下する。
以上のようにして、一箇所の破壊が終了すると、一対のカッター73a,73bを再度開き、煙突破壊装置71全体を横方向にずらし、隣接する位置で前記破壊動作を繰り返していく。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
煙突破壊を行う場合、油圧制御を行うオペレータは地上で遠隔操作を行う。従って、煙突72が例えば20m〜30mもある高さの場合は、破壊位置の情況を近くで目視することができない。このため、前記位置合わせ作業について半ば感を働かせながら行うことになり、位置決め作業に手間が掛かっていた。また、破壊作業の進捗情況も近くで確認することができず、確実な破壊作業が困難であった。
更に、或る位置の破壊作業が終了すると、煙突破壊装置71を横にずらして隣接する位置の破壊を行うのであるが、煙突破壊装置71が少し浮いただけでも一対のカッター73a,73bが煙突72から上端から外れてしまい、このような場合には、位置合わせ作業をやり直す必要があり、作業効率が悪かった。
【0007】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、煙突破壊に際し、破壊位置への煙突破壊装置の位置決めを容易に行うことが出できるうえに、破壊作業を確実に行い得る煙突破壊装置のガイドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、下記構成により達成される。
油圧、気圧等の動力源によりカッターを駆動して煙突を破壊する煙突破壊装置を前記煙突の破壊位置にガイドし位置決めする煙突破壊装置のガイドにおいて、前記煙突破壊装置の外側面のうちの少なくとも一側面に取り付けられる対構造の基板部と、前記対構造の基板部のそれぞれに固定されて前記煙突を内側面及び外側面から挟み込む位置決め部材と、前記位置決め部材間の間隔を任意に設定するとともに設定された間隔を保持する間隔調整部材と、を備えたことを特徴とする煙突破壊装置のガイド(請求項1)。
【0009】
上記煙突破壊装置のガイドによれば、煙突破壊装置の一側面に、煙突の破壊位置を内側面及び外側面から挟み込むように、換言すれば煙突の縁部を跨ぐ棒状の位置決め部材を設けた対構造の基盤部が取り付けられる。従って、煙突破壊に先立って、前記位置決め部材を煙突の破壊位置に跨がせれば、その位置に煙突破壊装置が案内され、且つその位置に位置決めされるので、破壊作業を効率よく行うことができる。
しかも、前記位置決め部材は、その間隔を間隔調整部材により任意に設定できるので、煙突の厚みに合わせて変更することができる上に強度を向上させることができる。
【0010】
前記煙突破壊装置の外側面のうちの相互に対向する側面のそれぞれに前記対構造の基板部を取り付け、且つ前記対構造の基板部の片方同士を前記側面とは異なる側面において連結部材により固定したことを特徴とする煙突破壊装置のガイド(請求項2)。
【0011】
上記煙突破壊装置のガイドによれば、煙突破壊装置の両側に基板部を取り付け、煙突破壊装置の両側に前記位置決め部材が配設される。従って、煙突破壊装置は両側から位置決めされることになり、前記煙突破壊装置のガイド及び位置決め作用がより一層確実に行われることになる。
しかも、前記位置決め部材を固定した基板部の端部は、連結部材により連結固定されるので、全体として枠型になりガイド全体の強度が向上する。
また、所定位置の破壊終了後は、そのままガイドを横にずらすだけで次の破壊位置にガイドすることができる。
【0012】
前記煙突破壊装置の外側面への前記対構造の基板部の取り付けを、前記基板部に設けた長孔と取り付けネジとにより所望位置に位置合わせ可能としたことを特徴とする煙突突破壊装置のガイド(請求項3)。
【0013】
上記煙突破壊装置のガイドによれば、前記基板部に設けた前記長孔の長さ分に応じて煙突破壊装置への取り付け位置を変更することができ、大きさの異なる煙突破壊装置への対応が容易になる。また、前記位置決め部材間の間隔調整をも行い得るので、破壊位置の厚さに対応することができ、ガイドの汎用性、使用方法の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明したように、本発明によれば、煙突破壊に先立ってガイドに設けた位置決め部材を煙突の破壊位置に跨らせることにより、煙突破壊装置を破壊位置に確実かつ容易に位置決めすることができる。そして、位置決めに続いて破壊作業に移行できるので、煙突破壊装置の位置決め、破壊作業を一連の作業として効率よく、且つ確実に行うことができる。
また、位置決め部材の間隔は、対構造の基盤部の取り付け位置の調整、調整部材により任意に変更できるので、破壊対象となる煙突の厚さの如何に関わらず、前記位置決め、破壊作業を行うことができ、ガイドの汎用性、使用方法の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態である煙突破壊装置のガイドの全体構成を示す斜視図、図2は煙突破壊装置のガイドの要部構成を示す側面図、図3は煙突破壊装置のガイドの要部構成を示す他の側面図、図4は煙突破壊装置のガイドの構成及び作用を示す要部の平面図である。
【0016】
先ず、図1 〜図4を参照して本実施形態における煙突破壊装置のガイド1(以下、単にガイドと略称する)の構成を説明する。なお、ガイド1は煙突破壊装置に着脱自在に取り付けられるものであり、煙突破壊装置としては、従来例で参照したものを適宜援用する。また、本実施形態において、ガイド1は煙突破壊装置の両側面に対称的に取り付けられるものであるから、両側面の構成については共通の符号を付して説明する。
【0017】
ガイド1は、煙突破壊装置71の両側面に取り付けられる対構造の基板部2a,2bと、各基板部2a,2bの側面に縦方向に固定された棒状の位置決め部材3a,3bと、前記位置決め部材3a,3b間の間隔Gを任意に設定し得るとともに設定した間隔Gを安定に保持する調整部材4とを備えている。なお、調整部材4は、1本のボルト5と複数のナット6とにより構成されている。
【0018】
また、各基板部2a,2bの上端部には、横方向に長手状の長孔7a,7bが形成されている。各長孔7a,7bは、各基板部2a,2bを煙突破壊装置71に、より具体的には従来例で説明した機体75の両側面にネジ止めする際に、横方向の位置合わせを行うためのものである。この位置合わせと前記調整部材4とにより、間隔Gが設定され且つ保持される。間隔Gは、煙突の破壊位置の厚みtに対応して設定されるので、長孔7a,7b及び調整部材4の間隔設定、間隔保持作用は重要である。
【0019】
各基板部2a,2bの横方向の両端部にも長孔8a,8bが形成されているが、これらは表裏の関係にある各基盤部2a,2b同士を連結部材9a,9bを介して一体に連結するためのものであり、連結はネジ10a,10bの締め付けにより行われる。この構成により、ガイド1は全体として枠型になり、強度が向上する。従って、煙突破壊時に大きな力がかかっても容易に変形せず、煙突破壊を確実に行い得るようになる。各基盤部2a,2bの側面には板状の補強部材11a,11bが設けられ、各基盤部2a,2b及び各位置決め部材3a,3bに溶接されている。この構成により、煙突破壊時における各基板部2a,2bの変形を防止でき、ガイド1全体の強度向上を図ることができる。
【0020】
前記ガイド1は、図2〜図4に示すように前記煙突破壊装置71に取り付けられる。前記煙突破壊装置71を構成する機体75の両側には、図3及び図4に示すようにボス12a,12bが設けられ、その頂部には図示しないネジ孔が形成されている。このボス12a,12bに各基板部2a,2bに形成した長孔7a,7bを当て付け、ネジ13a,13bを締め付ける。
但し、締め付け固定に先立って位置決め部材3a,3bの間の間隔Gが、破壊対象となる煙突72の厚みt以上になるように寸法設定する必要がある。この寸法設定や固定方法には種々あるが、以下にその一例を説明する。
【0021】
即ち、煙突破壊に際しては、各図に示すように位置決め部材3a,3b間の隙間Gに煙突72の上端部が入り込むように、換言すれば位置決め部材3a,3bが煙突72の上端部を跨ぐようにする。このため、図4に示すように煙突72の内径(直径)が例えば1500mm、厚みtが例えば100mmであれば、2対の位置決め部材3a,3bは幅Wを介して煙突72の上端(円弧状部分)を斜めに跨ぐことになり、間隔Gは100mm以上に設定する必要がある。
【0022】
この寸法は現物合わせでもよく、予め概算で計算しておいてもよい。何れにしても、決定された間隔Gに合わせるべく、長孔7a,7bを利用して各基板部2a,2bを左右に移動させて位置決め部材3a,3b間が間隔G以上になるように寸法合わせを行い、ネジ13a,13bにより仮止めする。次いで調整部材4を構成するボルト5,ナット6により位置決め部材3a,3b間の寸法を間隔G以上に合わせ、ナット6を締め付けて固定する。この状態で位置決め部材3a,3b間の寸法が変動することはなく、次にネジ13a,13bを締め付けることにより、位置決め部材3a,3b間を一定の寸法に保持したまま、基板部2a,2bと一体に煙突破壊装置71に固定される。
そして、前記連結部材9a,9bにより各基板部2a,2bが連結され、全体として枠型のガイド1が煙突破壊装置71に一体化される。
【0023】
次に、前記ガイド1の使用形態を説明する。
前記のように、煙突破壊装置71にガイド1を取り付けた後、クレーンにより煙突72の破壊位置の上方に吊り上げ、図2〜図4に示したように煙突72の上端部に位置決め部材3a,3bを跨がせる。このとき4本の位置決め部材(3a、3b)のうち少なくとも2〜3個ないしは全部が煙突と接触して、カッターによる切断作用の反力支点となり、かつカッターの煙突からの滑り止め効果を発揮する。この結果、図2に示すように、カッター73a,73bが煙突72の破壊位置を両側、即ち煙突72の外側と内側から挟むようになる。この状態で前記同様にカッター73a,73bを駆動することにより、カッター73a,73bが煙突72に食い込み、煙突破壊が行われる。
そして、所定位置の破壊に続いて隣接位置を破壊する場合は、クレーンを操作して位置決め部材3a,3bが煙突72を跨いだままで横方向にずらせるようにする。この結果、煙突破壊装置71とガイド1とが一体に移動し、移動を停止した次の所定位置に煙突破壊装置71が位置決めされ、直ちに次の破壊作業を継続することができる。従って、本発明のガイド1を適用することにより、煙突破壊装置71の位置決め、煙突破壊作業を効率よく行うことができる。
【0024】
以上に本発明の実施形態を説明したが、本発明は前記に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
例えば、一対の位置決め部材3a,3bの長さを変更し得るように構成してもよい。即ち、図5で基板部2aについて例示したように、基板部2aの位置決め部材3aの取り付け位置に、縦方向に長い長孔15a,15bを形成し、ネジ16a,16bによって締め付け固定する。この構成によれば、実線或いは想像線で示すように破壊位置の情況に応じて位置決め部材3aの長さ調整を行い得る。
【0025】
更に、連結部材9a,9bについても、寸法調整可能な構成にすることができる。即ち、図6に例示するように、連結部材9aをL字状に形成した2枚の板材17a,17bにより構成し、板材17aにネジ孔18を形成するとともに、板材17bに長孔19を形成する。そして、ネジ孔18と長孔19を合わせ、煙突破壊装置の寸法に合う位置でネジ21により板材17a,17bを締め付け固定する。
この構成によれば、前記長孔7a,7b,8a,8bの寸法調整作用と相俟って、外形寸法の異なる煙突破壊装置に取り付けることができ、ガイド1の汎用性が向上し、使用方法がよくなる。
また、位置決め部材3a,3bについては、煙突72との接触面を角型から円弧面に変えてもよい。
なお、煙突破壊装置71へのガイド1の取り付け方法も前記に限定されない。即ち、煙突破壊装置71の各部寸法、必要な間隔Gが予めわかっている場合は、図1に示すように組み立てておき、煙突破壊装置71の上部、或いは下部から被せ、前記同様にネジ13a,13bにより締め付け固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態を示す煙突破壊装置のガイドの斜視図である。
【図2】煙突破壊装置へのガイドの取り付け状態を示す側面図である。
【図3】煙突破壊装置へのガイドの取り付け状態を示す他の側面図である。
【図4】ガイドの位置決め作用を示す平面図である。
【図5】位置決め部材の変形例を示す斜視図である。
【図6】連結部材の変形例を示す斜視図である。
【図7】従来の煙突破壊装置の構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 煙突破壊装置のガイド
2a,2b 基板部
3a,3b 位置決め部材
4 調整部材
5 ボルト
6 ナット
7a,7b 長孔
8a,8b 長孔
9a,9b 連結部材
10a,10b ネジ
11a,11b 補強部材
12a,12b ボス
13a,13b ネジ
15a,15b 長孔
17a,17b 板材
71 煙突破壊装置
72 煙突
73a,73b 一対のカッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧、気圧等の動力源によりカッターを駆動して煙突を破壊する煙突破壊装置を前記煙突の破壊位置にガイドし位置決めする煙突破壊装置のガイドにおいて、前記煙突破壊装置の外側面のうちの少なくとも一側面に取り付けられる対構造の基板部と、前記対構造の基板部のそれぞれに固定されて前記煙突を内側面及び外側面から挟み込む位置決め部材と、前記位置決め部材間の間隔を任意に設定するとともに設定された間隔を保持する間隔調整部材と、を備えたことを特徴とする煙突破壊装置のガイド。
【請求項2】
前記煙突破壊装置の外側面のうちの相互に対向する側面のそれぞれに前記対構造の基板部を取り付け、且つ前記対構造の基板部の片方同士を前記側面とは異なる側面において連結部材により固定したことを特徴とする請求項1記載の煙突破壊装置のガイド。
【請求項3】
前記煙突破壊装置の外側面への前記対構造の基板部の取り付けを、前記基板部に設けた長孔と取り付けネジとにより所望位置に位置合わせ可能としたことを特徴とする請求項1記載の煙突破壊装置のガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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