説明

照光型入力装置

【課題】静電容量式センサからなる座標入力手段の分解能が高く、また、製造の歩留まりが高い上に、センサの感度が確保されている照光型入力装置を提供する。
【解決手段】本発明の照光型入力装置1は、最外層に配置され、透明な板に文字又は記号12が表示されたキー部材10と、キー部材10の裏面側に配置された非導電性の導光板20と、導光板20の裏面側に配置され、静電容量式センサからなる座標入力手段30と、導光板20に光学的に接続された光源60とを具備する。本発明の照光型入力装置1においては、導光板20のキー部材10側の面に凸部21が複数形成されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯電話、個人用携帯情報端末(PDA)、携帯オーディオプレイヤ等に備え付けられる照光型入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話機、個人用携帯情報端末(PDA)、携帯オーディオプレイヤ等では、座標入力が可能な照光型入力装置を備えることがある。
座標入力が可能な照光型入力装置としては、例えば、特許文献1に、最外層に配置されたキー部材110と、キー部材110の裏面に配置された座標入力手段130と、座標入力手段130の裏面に配置された光源160とを具備する入力装置100が開示されている(図5参照)。特許文献1に記載の座標入力手段130としては、離間した一対の電極を複数備え、指が接近した際の電極間の電界変化によって生じた電極間の静電容量変化を検知して座標入力する静電容量式センサが用いられている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の座標入力手段130では、光源160で発した光をキー部材110側に導くための貫通孔131を形成しなければならなかった。そのため、センサの密度を低くせざるを得ず、分解能が低くなるという問題を有していた。また、貫通孔131の形成により座標入力手段130の強度が低くなるため、照光型入力装置100を製造する際に座標入力手段130が破断して、歩留まりが低くなるという問題を有していた。
【0004】
そこで、座標入力手段に貫通孔を形成しない方法が検討されている。例えば、特許文献2に記載の、発光層の両面に電極層が配置されたEL素子を有するキー部材を適用して、キー部材自体に光源を持たせる方法が考えられる。
【特許文献1】特開2006−107091号公報
【特許文献2】特開2004−193060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、照光型入力装置に特許文献2に記載のキー部材を適用した場合には、EL素子を構成する電極層がシールド層になり、座標入力手段の電極間の電界が減衰するため、センサの感度が低下することがあった。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、静電容量式センサからなる座標入力手段の分解能が高く、また、製造の歩留まりが高い上に、センサの感度が確保されている照光型入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成を含む。
[1] 最外層に配置され、透明な板に文字又は記号が表示されたキー部材と、キー部材の裏面側に配置された非導電性の導光板と、導光板の裏面側に配置され、静電容量式センサからなる座標入力手段と、導光板に光学的に接続された光源とを具備することを特徴とする照光型入力装置。
[2] 導光板のキー部材側の面に、凸部が複数形成されていることを特徴とする[1]に記載の照光型入力装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の照光型入力装置は、静電容量式センサからなる座標入力手段の分解能が高く、また、製造の歩留まりが高い上に、センサの感度が確保されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の照光型入力装置の一実施形態例について説明する。
図1および図2に、本実施形態例の照光型入力装置を示す。本実施形態例の照光型入力装置1は、最外層に配置されたキー部材10と、キー部材10の裏面側に配置された導光板20と、導光板20の裏面側に配置された座標入力手段30と、座標入力手段30の裏面側に配置され、凸部41を有する押圧シート40と、台座51上に設置され、押圧シート40の凸部41に接触する金属ドーム50と、導光板20に光学的に接続された光源60と、キー部材10、導光板20、座標入力手段30、押圧シート40、金属ドーム50および光源60を収納する筐体70とを具備する。
【0009】
[キー部材]
キー部材10は、透明な板11に文字又は記号12が表示されたものである。また、本実施形態例におけるキー部材10は、表面側に溝13が形成されて各キー14,14・・・に区分され、また、押しボタン状になっている。
透明な板11としては、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、透明ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン等の透明樹脂製の板、ガラス板などが使用される。
透明な板11は、透明性を損なわない範囲で、顔料や染料等の着色剤を含んで着色されていてもよい。
【0010】
本実施形態例における文字又は記号12は、白抜き印刷により形成されている。白抜き印刷とは、文字又は記号12の輪郭が形成されるように、文字又は記号12以外の部分を遮光性インクにより印刷することである。なお、図面においては、文字の輪郭内が塗りつぶされているが、塗りつぶされた部分が白抜きになっている。
印刷方法としては、例えば、スクリーン印刷などが適用される。文字又は記号12の部分には、透明インクが印刷されていても構わない。
白抜き印刷は、透明な板11のいずれか一方の面に施されていればよいが、両方の面に施されていても構わない。
【0011】
キー部材10の最も薄い部分の厚みは0.1mm以上であることが好ましい。キー部材10の最も薄い部分の厚みが0.1mm以上であれば、キー部材10の強度を充分に確保できる。
また、キー部材10の最も厚い部分の厚みは0.5mm以下であることが好ましい。キー部材10の最も厚い部分の厚みが0.5mm以下であれば、薄型の照光型入力装置1としての薄さの要求を満たすことができる。
【0012】
[導光板]
導光板20は、非導電性の板からなり、光源60から入射した光を導波させるものである。ここでいう非導電性とは、体積固有抵抗が10Ω・cm以上のことである。
本実施形態例の照光型入力装置1のように、キー部材10が押し込まれる場合には、導光板20としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、シリコーン樹脂、ポリイミド、軟質のポリアクリレート等の透明樹脂からなり、かつ、可撓性を有する板が使用される。
【0013】
本実施形態例の導光板20のキー部材10側(表面側)の面には、凸部21,21・・・が複数形成されている。また、凸部21は、キー部材10の文字又は記号12の位置に対応して配置されている。
この凸部21はスペーサとしての役割を果たすため、キー部材10と導光板20とが離間して、空気層80が形成される。
また、凸部21では、導光板20内を導波する光が散乱して漏光する。すなわち、光の出射口になっている。
【0014】
凸部21の高さは0.02〜2.0mmであることが好ましい。凸部21の高さが0.02mm以上であれば、空気層80を確実に形成できる。空気層80と導光板20との屈折率差は大きいため、空気層80を確実に形成できれば、導光板20の光導波性を充分に確保できる。また、凸部21の高さが2.0mm以下であれば、キー部材10の輝度を高くできる。
【0015】
また、導光板20のキー部材10側の面には、導光板20内を導波する光を拡散させる光拡散部が形成されていることが好ましい。光拡散部でも導光板20内を導波する光が漏光するため、光拡散部が形成されていれば、キー部材10に向けて出射させる光の量を増やすことができる。
光拡散部の形態としては、例えば、凹み、多数の溝などが挙げられる。また、光拡散剤を含む光拡散シートを貼着して光拡散部としてもよい。
【0016】
本発明では、導光板20の凸部21および光拡散部を漏光部と総称する。漏光部の配置間隔は、輝度を均一化できることから、光源60から離れる程、短いことが好ましい。また、漏光部の大きさも、配置間隔と同様の理由から、光源60から離れる程、大きいことが好ましい。
【0017】
導光板20の厚みは0.05〜0.3mmであることが好ましい。導光板20の厚みが0.05mm以上であれば、強度を高くでき、0.3mm以下であれば、充分な可撓性を確保でき、また、キー部材10を押したときの押し込み感をより確保できる。
【0018】
[座標入力手段]
座標入力手段30は、静電容量式センサからなる。静電容量式センサとしては、例えば、基材の一方の面に複数設けられた第1の電極ユニットと、基材の他方の面に複数設けられた第2の電極ユニットとを有し、第1の電極ユニットは、X方向に沿って形成された一対の線状の電極を備え、第2の電極ユニットは、Y方向に沿って形成された一対の線状の電極を備えるものが挙げられる。この静電容量式センサでは、第1の電極ユニットおよび第2の電極ユニットの一対の電極に電圧を印加して、電極間に電界を発生させる。そして、第1の電極ユニットにより検知した電界の変化から、キー部材10を操作している指のX方向座標を求め、第2の電極ユニットにより検知した電界の変化から、指のY方向座標を求める。
【0019】
本実施形態例における座標入力手段30の基材は、樹脂フィルムからなり、可撓性を有している。樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
基材の厚さは10〜50μmであることが好ましい。基材の厚さが10μm以上であれば、座標入力手段30の強度を充分に確保でき、50μm以下であれば、可撓性に関して問題ないものとすることができる。
【0020】
[押圧シート]
押圧シート40は、キー部材10が押された際に生じた導光板20および座標入力手段30の撓みを金属ドーム50に伝達して、押圧するものである。
本実施形態例では、押圧シート40の裏面側の、文字又は記号12に対応した位置に凸部41を有している。この凸部41により金属ドーム50を押圧するようになっている。
【0021】
凸部41の高さは50〜500μmであることが好ましい。凸部41の高さが50μm以上であれば、押圧力を金属ドーム50に確実に伝達でき、500μm以下であれば、照光型入力装置1を薄くできる。
【0022】
押圧シート40の材質としては、例えば、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0023】
押圧シート40の厚みは0.1〜0.3mmであることが好ましい。押圧シート40の厚みが0.1mm以上であれば、押圧シート40の強度を充分に確保でき、0.3mm以下であれば、可撓性に関しても問題ないものとすることができる。
【0024】
[金属ドーム]
金属ドーム50は、中空の金属製半球であり、押圧シート40の凸部41に押圧された際に頂部が凹み、かつ、その押圧に対して反発するものである。このような金属ドーム50により、キー部材10を押したときに押し込み感が生じるようになっている。
また、金属ドーム50を電極として利用し、金属ドーム50内に内部電極を設けて、スイッチを構成してもよい。
【0025】
[光源]
光源60としては、例えば、発光ダイオード(LED)、冷陰極管(FL管)等が使用される。
光源60は、導光板20に光学的に接続されていればよく、導光板20に固着されている必要はない。なお、本発明において「光学的に接続」とは、光が導波可能になっていることを意味する。
【0026】
[筐体]
筐体70は、キー部材10の表面が露出するように、開口している。
筐体70としては、例えば、樹脂製の成形品等が使用される。筐体70を構成する樹脂としては、例えば、ABS樹脂、ポリカーボネート等が使用される。
【0027】
[動作]
上述した照光型入力装置1では、使用者がキー部材10を押すと、凸部21を介して、導光板20の、押されたキー部材10に対応する部分が押圧されて撓む。また、導光板20の撓みによって、座標入力手段30の、押されたキー部材10に対応する部分も撓む。この導光板20および座標入力手段30の撓みによって、押圧シート40の、押されたキー部材10に対応する部分が押圧され、その結果、押圧シート40の凸部41が金属ドーム50を押し込む。金属ドーム50が押し込まれると、その頂部が凹み、かつ、反発するため、押し込み感が生じる。
金属ドーム50を電極として利用し、金属ドーム50内に内部電極が設けられた場合には、キー部材10を押したときに、金属ドーム50が内部電極に接触して導通し、ONの状態になる。
また、キー部材10を押した際には、座標入力手段30の電極間の電界に変化が生じるため、指が触れた位置の座標を検知できる。その座標の検知を利用することで、例えば、手書き入力できる。また、指がどのキーに触れたのかを判定すれば、キー入力することもできる。
【0028】
上記照光型入力装置1は、例えば、図3に示すように、携帯電話機Pに具備される。また、個人用携帯情報端末(PDA)、携帯オーディオプレイヤ等に具備することもできる。
【0029】
以上説明した実施形態例の照光型入力装置1では、キー部材10の裏面側に、光源60が光学的に接続された導光板20が配置されているため、座標入力手段30に、光を導くための貫通孔を形成する必要がない。そのため、センサの密度を高くでき、分解能を高くできる。また、照光型入力装置1を製造する際に、座標入力手段30が破断しにくく、歩留まりが高くなる。
さらに、照光型入力装置1では、座標入力手段30の表面側にシールド層になるものが配置されていないため、座標入力手段30の電極間の電界が減衰しにくく、センサの感度の低下が防止されている。
【0030】
なお、本発明の照光型入力装置1は、上記実施形態例に限定されない。例えば、上述した実施形態例では、文字又は記号12が白抜き印刷により形成されたが、文字又は記号を遮光性インクにより印刷して形成してもよい。
また、上述した実施形態例では、導光板20のキー部材10側の面に凸部21を有し、キー部材10と導光板20とが離間して空気層80が形成されていたが、凸部21を有していなくてもよい。例えば、キー部材10と導光板20との間に、これらと別個のスペーサを介在させてもよい。
あるいは、導光板20が凸部21を有していない場合には、導光板20のキー部材10側に、空気層80以外の、導光板20より屈折率の大きい物質の層を配置することが好ましい。導光板20のキー部材10側に、導光板20より屈折率の大きい物質の層を配置すれば、凸部21を有していない場合でも、導光板20内にて光が全反射しやすくなるため、光導波性がより高くなる。
導光板20が、キー部材10側の面に凸部21を有していない場合には、キー部材10側の面に光拡散部を形成して、光の出射口を確保する必要がある。
【0031】
また、上記実施形態例では、キー部材10と筐体70とが別個の部材であったが、筐体の一部がキー部材を構成してもよい。すなわち、キー部材が押しボタン状になっていなくてもよい。
例えば、図4に示すように、表面の一部がキー部材71になっている筐体70と、キー部材71の裏面側に配置された導光板20と、導光板20の裏面側に配置された座標入力手段30と、導光板20に光学的に接続された光源60とを具備する照光型入力装置2であってもよい。
座標入力手段30を用いた入力装置では、キー部材を押し込む必要性がないため、筐体の一部をキー部材とし、押しボタン状にしなくても、入力できる。
筐体の一部をキー部材とした場合には、導光板が可撓性を有していなくてもよく、例えば、硬質のアクリル樹脂やガラス板を使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の照光型入力装置の一実施形態例を示す上面図である。
【図2】図1のI−I断面図である。
【図3】図1に示す実施形態例の照光型入力装置を具備する携帯電話機の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明の照光型入力装置の他の実施形態例を示す断面図である。
【図5】従来の照光型入力装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1,2 照光型入力装置
10 キー部材
11 透明な板
12 文字又は記号
13 溝
14 キー
20 導光板
21 凸部
30 座標入力手段
40 押圧シート
41 凸部
50 金属ドーム
51 台座
60 光源
70 筐体
71 キー部材
80 空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層に配置され、透明な板に文字又は記号が表示されたキー部材と、
キー部材の裏面側に配置された非導電性の導光板と、
導光板の裏面側に配置され、静電容量式センサからなる座標入力手段と、
導光板に光学的に接続された光源とを具備することを特徴とする照光型入力装置。
【請求項2】
導光板のキー部材側の面に、凸部が複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の照光型入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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