説明

照光式スイッチ

【課題】スイッチに既存の空間に光源を配置することで外形寸法の大型化を防止し、配置位置の制約や鍵付セレクタスイッチのセキュリティ機能の低下を招くことなく、部品の共通化による部品点数の削減を実現する。
【解決手段】アダプタ3を介してタンブラー錠2を収納する本体1内で、アダプタ3と本体の内側面との間に存在する間隙7の中間部に、光源4をアダプタ3の入射部31に対向させて配置した。光源4の光は、入射部31からアダプタ3の内部に入射し、アダプタ3内で反射し、本体1とタンブラー錠2との間で照光式スイッチ10の前面側に出射する。アダプタ3から出射する光によってタンブラー錠2の鍵穴23の位置が正確に認識される。光源4は、基板6に実装されて既存の間隙に配置されるため、本体1内に光源4を配置するための空間を別途設ける必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、押しボタンスイッチ機構や鍵付セレクタスイッチ機構等のスイッチ機構の周囲から前面側に光を照射する照光式スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
制御盤等に配置されるスイッチとして、前面側に光を照射し、操作すべき操作部の位置を容易に認識できるようにした照光式スイッチがある。スイッチ機構として、押しボタンを備えた押しボタンスイッチでは、押しボタンの内部に光源を収納し、押しボタンの操作部を透光性部材によって構成することで、操作部の前面側に光を照射することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところが、スイッチ機構として特定の操作者のみが操作できるタンブラー錠を備えた鍵付セレクタスイッチ(例えば、特許文献2参照。)では、鍵穴を備えた内筒の前面が操作部であるため、操作部を透光性部材によって構成することができない。
【0004】
そこで、鍵付セレクタスイッチでは、内筒を回転自在に収納した外筒と本体との間に配置されるアダプタを透光性部材によって構成し、スイッチ内部の光源の光をアダプタの内部を経由して前面に照射するようにしている。スイッチの内部からの光により、操作部の周囲が照明される。
【特許文献1】特開2000−338906号公報
【特許文献2】特開平11−025809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の照光式スイッチでは、スイッチ機構とその背面側に位置する接点部との間に光源を配置していたため、前後長が長くなる問題があった。このため、照光機能のないスイッチと照光式スイッチとで筐体を共用することができず、部品点数が増加する。また、配置場所の制約から前後長を十分に長くできない場合には、スイッチ機構の前後長を短くしなければならない。特に、鍵付セレクタスイッチでは、タンブラーの配置数が減少し、タンブラー錠のセキュリティ機能が低下する問題がある。
【0006】
この発明の目的は、スイッチに既存の空間に光源を配置することで外形寸法の大型化を防止することができ、配置位置の制約や鍵付セレクタスイッチのセキュリティ機能の低下を招くことなく、部品の共通化による部品点数の削減を実現しつつ、操作部を照明することができる照光式スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の照光式スイッチは、本体、アダプタ、光源を備えている。本体は、スイッチ機構を収納する筒状を呈している。アダプタは、スイッチ機構と本体の内側面との間に配置されてスイッチ機構を内側面との間に間隙を設けて保持し、透光性材料で構成された導光部を含み、導光部の外側面における軸方向の中間部に入射部が形成されている。アダプタは、入射部から導光部に入射した光をスイッチ機構と本体の内側面との間の前面側に出射させる。光源は、間隙内の入射部に対向する位置に配置される。光源から照射された光は、入射部からアダプタの導光部内に入射し、スイッチ機構と本体の内側面との間の前面側に出射する。光源は、スイッチ機構と本体の内側面との間に既存の間隙に配置されており、光源の有無によって本体の外形寸法が変化することはない。
【0008】
この発明の照光式スイッチは、光源及び光源の駆動回路を実装した基板であってアダプタの外側面に沿って無端状に形成された基板をさらに備えることができる。スイッチ機構と本体の内側面との間に既存の間隙に基板を配置することで、照光式スイッチが容易に組み立てられる。
【0009】
また、本体に間隙に連通する開口部を備え、基板に開口部を貫通する延出部を備えることで、光源の駆動信号を外部から容易に供給できる。
【0010】
さらに、アダプタに導光部を複数形成し、各導光部に対応する複数の光源を備え、各光源を互いに独立して駆動できるようにすることで、種々の表示パターンの照明光を照射することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、スイッチ機構と本体の内側面との間に既存の間隙に配置した光源から照射された光を、入射部からアダプタ内に入射させ、スイッチ機構と本体の内側面との間の前面側に出射させることができる。光源の有無によって本体の外形寸法が変化することがなく、光源を備えても外形寸法の大型化を生じない。配置位置の制約や鍵付セレクタスイッチのセキュリティ機能の低下を招くことなく、部品の共通化による部品点数の削減を実現しつつ、操作部を照明することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、この発明の実施形態に係る照光式スイッチの縦断面図である。照光式スイッチ10は、本体1、タンブラー錠2、アダプタ3、2個の光源4、操作ユニット5を備えている。
【0013】
本体1は、前面及び背面が開放した円筒形状を呈し、内部にアダプタ3を介してタンブラー錠2を収納している。
【0014】
タンブラー錠2は、外筒21内に内筒22を回転自在に備えている。内筒22には前面に開口した鍵穴23が形成されている。外筒21には軸方向に沿って複数枚のタンブラーが配置されている。鍵穴23に鍵を挿入すると、タンブラーが半径方向の外側に移動し、外筒21内で内筒22を回転させることができる。
【0015】
アダプタ3は、タンブラー錠2と本体1の内側面との間に配置されている。アダプタ3は、透光性材料で構成された導光部30A,30Bを備えている。アダプタ30は、導光部30A,30Bを含む全体を透光性材料で構成してもよい。導光部30A,30Bは、タンブラー錠2の周囲に沿って一例として2分割にして構成されており、1本の直径を対称軸として対称形状にされている。導光部は、タンブラー錠2の周囲に沿って3個以上に分割してもよい。アダプタ3の前面側は、タンブラー錠2と本体1の内側面との間で、照光式スイッチ10の前面に露出している。アダプタ3は、軸方向の中間部で本体1の内側面との間に間隙7を形成している。
【0016】
間隙7の前面側には、パッキン11が配置されている。アダプタ3の背面側の内側面と内筒2の外側面との間には、パッキン12が配置されている。パッキン11,12は、外部からの塵埃の侵入を防止する。アダプタ3の外周面の中間部には、入射部31が半径方向に延出して形成されている。
【0017】
操作ユニット5は、円筒カム51、操作プレート53、ベース54、固定ネジ55を含む。円筒カム51は、固定ネジ55を介して内筒22の背面に固定される。円筒カム51は、内筒2と一体的に回転する。操作プレート53は、円筒カム51のカム形状に応じて軸方向に移動する。ベース54は、操作プレート53を保持する。
【0018】
操作ユニットの背面には、図示しない接点部が装着される。操作プレート53は、軸方向の移動によって接点部の可動接点に選択的に当接する。可動接点は、操作プレート53が当接するか否かに応じて、固定接点に接触又は離間する。内筒22の回転位置に応じて、接点部が開閉する。
【0019】
タンブラー錠2、操作ユニット5及び接点部が、この発明のスイッチ機構である鍵付セレクタスイッチ機構に相当する。
【0020】
図2は、図1中のX−X部の正面断面図である。図2では、タンブラー錠2を省略している。2個の光源4のそれぞれは、一例としてLEDであり、基板6に実装されている。基板6は、光源4の駆動回路を構成する抵抗62やダイオード63等の部品も実装している。
【0021】
基板6は、無端状である環状を呈しており、間隙7内でタンブラー錠2の全周にわたって位置している。基板6の外周の一部から、延出部61が半径方向に延出している。本体1には、周面の一部に間隙7に貫通した開口部8が形成されている。延出部61は、開口部8を経由して照光式スイッチ10の外部に露出している。基板において少なくとも延出部61は、フレキシブル基板によって構成されている。延出部61を含む基板6にプリントされた配線により、照光式スイッチ10の外部から光源4に駆動信号が印加される。
【0022】
基板6は、間隙7内でアダプタ3の入射部31と本体1の隔壁71との間に位置している。アダプタ3の周面の複数の箇所(図2に示す例では2箇所)には、保持部32が突出して形成されている。保持部32は、基板6の軸方向の移動を規制する。保持部32により、基板6が照光式スイッチ10内で大きく変位することを防止できる。
【0023】
照光式スイッチ10を組み立てる際には、まず、本体1の前面側から本体1の内部に基板6を挿入する。このとき、延出部61を開口部8に貫通させる。次いで、アダプタ3の外側面にパッキン11を装着し、アダプタ3の内部にタンブラー錠2を収納させ、このアダプタ3を本体1の前面から本体1の内部に収納する。この後、内筒22の背面に円筒カム51を取付ネジ55によって取り付け、操作プレート53を収納した操作ユニット5を本体1の背面に装着する。
【0024】
光源4を駆動回路とともに基板6に実装することで、照光式スイッチ10の組立作業を簡略化することができる。
【0025】
本体1内に基板6を挿入する作業を省略することで、照光式スイッチ10を非照光とすることができる。したがって、照光式スイッチ10は、非照光のスイッチと同一の構成部品で作成することができ、基板6を除いて非照光のスイッチの構成部品と異なる部品を準備する必要がない。このため、照光式スイッチ10は、タンブラー錠2の軸方向の長さを短縮することなく非照光のスイッチと同一の寸法形状に形成することができる。配置位置の制約や鍵付セレクタスイッチのセキュリティ機能の低下を招くことなく、部品の共通化による部品点数の削減を実現しつつ、操作部を照明することができる。
【0026】
なお、本体1は、円筒形状に限るものではなく、少なくとも前面において開放し、内部にアダプタ3を介してスイッチ機構を収納する種々の形状とすることができる。
【0027】
基板6に実装する光源4の個数は、2個に限るものではなく、照光式スイッチ10の前面における照光状態に応じて適宜増減することができる。
【0028】
図3は、照光式スイッチ10の部分切欠き斜視図である。図4は、照光式スイッチ10の導光部における配光状態を示す図である。透光性材料からなる導光部30Aの一部には、入射部31Aが形成されている。入射部31Aには光源4が対向している。光源4の光は、導光部30A内を反射して前面から照射される。導光部30Bにおいても同様に、入射部31Bに対向する光源4の光が、導光部30B内を反射して前面から照射される。
【0029】
前述のように、導光部30A,30Bは、タンブラー錠2の周囲に沿って一例として2分割にして構成されている。図4(A)に示すように、導光部30A,30Bのそれぞれの背面側は、複数の反射面を階段状に配置した傾斜面で構成されている。導光部30A,30Bの前面側に配置されているパッキン11は、透光性材料によって構成されている。
【0030】
2個の光源4から照射さた光は、図4(B)に示すように、導光部30A,30Bのそれぞれによって個別に前面から外部に照射される。また、図4(C)及び(D)に示すように、タンブラー錠2の回転位置に応じて、左側のみ又は右側のみから光照射させることができる。さらに、2個の光源4の光の色を変えることにより、又は、導光部30A,30Bを異なる色に着色することで、左右から異なる色の光を照射することもできる。
【0031】
図5は、この発明の照光式スイッチの別の使用状態を示す図である。この発明の照光式スイッチをセレクタスイッチ100に適用した場合、ハンドル101の操作位置に応じてアダプタ3の前面側への光の照射状態を変化させることができる。例えば、図5(A)〜(C)に示すように、ハンドル101が中立位置にある場合には、光を照射せず、ハンドル101が左側又は右側に操作された際に、アダプタ3の左側又は右側のみから光を照射する。
【0032】
また、導光部の形状及び分割数、並びに光源の個数を適宜変更することで、図5(D)〜(G)に示すように、アダプタ3におけるハンドル101の複数の操作位置に対向する部分のみから光を照射するようにしてもよく、図5(H)〜(J)に示すように、ハンドル101の操作量に応じた範囲から光を照射するようにしてもよい。
【0033】
これらの場合に、セレクタスイッチ100からハンドル101の操作位置に応じた操作信号の入力を受けて非制御装置に駆動データを出力する制御部が、セレクタスイッチ100の複数の光源のうちで入力された操作信号に応じた光源に対する駆動信号をセレクタスイッチ100に出力する。
【0034】
アダプタ3の前面は、タンブラー錠2の外周部に位置しているため、光源4から照射された光によってタンブラー錠2の鍵穴23の位置が容易に認識され、鍵を正確に挿入することができる。
【0035】
アダプタ3における導光部30の形状は、タンブラー錠2の周囲に沿って複数に分割した構成に限るものではなく、一体の円筒形にしてもよい。
【0036】
アダプタ3を透光性の低い材料で構成することにより、非照光のスイッチとして用いる場合にも外観に違和感を与えることなく、全ての構成部品を共用することができる。
【0037】
照光式スイッチ10に備えるスイッチ機構は、タンブラー錠2で構成したものに限らず、押しボタンスイッチやセレクタスイッチ等で構成したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の実施形態に係る照光式スイッチ10の縦断面図である。
【図2】図1中のX−X部の横断面図である。
【図3】照光式スイッチ10の部分切欠き斜視図である。
【図4】照光式スイッチ10の導光部における配光状態を示す図である。
【図5】この発明の照光式スイッチの別の使用状態を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 本体
2 タンブラー錠
3 アダプタ
4 光源
5 操作ユニット
6 基板
7 間隙
8 開口部
10 照光式スイッチ
21 外筒
22 内筒
23 鍵穴
61 延出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ機構を収納する筒状体の本体と、前記スイッチ機構と前記本体の内側面との間に配置されて前記スイッチ機構を前記内側面との間に間隙を設けて保持するアダプタと、を備えたスイッチであって、
前記アダプタは、透光性材料で構成された導光部を含み、前記導光部には外側面における軸方向の中間部に入射部が形成されており、前記入射部から内部に入射した光を前記スイッチ機構と前記本体の内側面との間の前面側に出射させ、
前記間隙内の前記入射部に対向する位置に配置される光源を備えた照光式スイッチ。
【請求項2】
前記光源及び前記光源の駆動回路を実装した基板であって前記アダプタの外側面に沿って無端状に形成された基板を備えた請求項1に記載の照光式スイッチ。
【請求項3】
前記本体は、前記間隙に連通する開口部を備え、
前記基板は、前記開口部を貫通する延出部を備えた請求項2に記載の照光式スイッチ。
【請求項4】
前記アダプタは光学的に互いに独立した複数の導光部を備え、前記複数の導光部のそれぞれの入射部に対向する複数の光源であって互いに独立して駆動可能な複数の光源を備えた請求項1乃至3のいずれかに記載の照光式スイッチ。
【請求項5】
前記スイッチ機構は、外筒内に内筒を回転自在に収納した鍵付セレクタスイッチ機構である請求項1乃至4のいずれかに記載の照光式スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−135332(P2008−135332A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321750(P2006−321750)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】