説明

照射装置及び読取装置

【課題】入射角を変えるために光源やその反射光を読み取る光学系を機械的に移動させなくても、質感を再現するための情報を被読取物から読み取ることができるようにする。
【解決手段】照射部100は、第1光源110と、第2光源120と、第3光源130と、支持部材140とを備える。第2光源120は、被読取物O表面の凹凸を読み取るために用いられ、第3光源130は、被読取物Oの光沢を読み取るために用いられる。第2光源120は、第1光源110及び第3光源130よりも読取位置Pに近く、第3光源130は、第1光源110及び第2光源120よりも読取位置Pから遠い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射装置及び読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、被読取物の表面の質感を再現するためには、被読取物の読み取りを通常(45°前後)と異なる入射角の光によって行う必要がある。特許文献1には、反射光を読み取る光学系を移動可能にすることによって複数の入射角に対応するマルチアングルスキャナが記載されている。
【特許文献1】特開2005−331934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、入射角を変えるために光源やその反射光を読み取る光学系を機械的に移動させなくても、質感を再現するための情報を被読取物から読み取ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る照射装置は、被読取物からの反射光に基づいて当該被読取物を表す画像情報を生成するために光を照射する照射装置であって、所定方向にある幅を有する被読取物を支持する支持手段と、前記所定方向について、前記支持手段が支持する被読取物と平行になるように設けられ、前記所定方向と直交する方向について、一端が他端より当該被読取物に接近して設けられる光源支持部材と、前記光源支持部材に支持されて、前記支持手段が支持する被読取物の読取位置に光を照射する複数の光源とを備え、前記複数の光源は、前記光源支持部材において、各々が前記所定方向と直交する方向について隣り合うように設けられ、前記一端寄りの光源は、前記読取位置に照射される光の強度が前記他端寄りの光源よりも大である構成を特徴とする。
あるいは、本発明に係る照射装置は、被読取物からの反射光に基づいて当該被読取物を表す画像情報を生成するために光を照射する照射装置であって、所定方向にある幅を有する被読取物を支持する支持手段と、前記所定方向について、前記支持手段が支持する被読取物と平行になるように設けられ、前記所定方向と直交する方向について、一端が他端より当該被読取物に接近して設けられる光源支持部材と、前記光源支持部材に支持されて、前記支持手段が支持する被読取物の読取位置に光を照射する複数の光源とを備え、前記複数の光源は、前記光源支持部材において、各々が前記所定方向と直交する方向について隣り合うように設けられ、前記一端寄りの光源は、前記読取位置に照射される光の強度が前記他端寄りの光源よりも小である構成を特徴とする。
【0005】
本発明に係る照射装置において、前記複数の光源は、それぞれ、前記所定方向と直交する方向に所定の幅の発光領域を有し、第1の光源と、前記第1の光源より前記一端寄りにある第2の光源と、前記第1の光源より前記他端寄りにある第3の光源とを含み、前記第1の光源の発光領域の幅が前記第2及び第3の光源の発光領域の幅よりも大である構成を採用してもよい。
本発明に係る照射装置において、前記光源支持部材は、前記一端寄りの光源と前記読取位置との距離が前記他端寄りの光源と当該読取位置との距離よりも小となるように前記複数の光源を支持する構成を採用してもよい。
本発明に係る照射装置において、前記第1の光源は、前記読取位置に対する入射角が30°〜60°であり、前記第2の光源は、前記読取位置に対する入射角が65°〜75°であり、前記第3の光源は、前記読取位置に対する入射角が5°〜15°である構成を採用してもよい。
本発明に係る照射装置は、前記一端寄りの光源が前記他端寄りの光源より高輝度である構成を採用してもよい。
本発明に係る照射装置は、前記光源が面光源である構成を採用してもよい。
【0006】
本発明に係る読取装置は、上述した照射装置と、前記読取位置からの反射光に基づいて当該読取位置の画像を表す画像データを生成する生成手段とを備えることを特徴とする。
本発明に係る読取装置において、前記画像情報の画質を指定する指定手段と、前記複数の光源による照射を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記指定手段により指定される画質に応じて、前記複数の光源のうちの照射を行う光源を異ならせる構成を採用してもよい。
本発明に係る読取装置において、前記読取位置を前記被読取物の前記所定方向に対して直交する方向に移動させる移動手段と、前記複数の光源による照射を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記移動手段による移動が高速である場合に、当該移動が低速である場合よりも照射を行う前記光源の数を増加させる構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、入射角を変えるために光源やその反射光を読み取る光学系を機械的に移動させなくても、質感を再現するための情報を被読取物から読み取ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態である読取装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、読取装置10は、照射部100と、読取部200と、光源駆動部300と、読取駆動部400と、操作部500と、制御部600と、画像処理部700とを備える。照射部100は、被読取物に光を照射する光源を有し、読取部200は、この光源から照射された光の反射光を受光して被読取物を表す画像情報を生成する。光源駆動部300は、照射部100による光の照射のオン・オフを行う駆動回路を備える。読取駆動部400は、読取部200内部の機械的な移動を行うモータを備える。操作部500は、ボタン等の操作子を備え、ユーザからの操作を受け付ける。操作部500は、ユーザの操作を表す操作情報を制御部600に供給する。制御部600は、光源駆動部300及び読取駆動部400に制御情報を供給することにより、これらを介して照射部100及び読取部200の動作を制御する制御回路を備える。制御部600は、操作部500から供給される操作情報に応じて動作する。画像処理部700は、読取部200により生成された画像情報に基づいて画像データを生成する画像処理回路を備える。画像処理部700は、生成した画像データを外部装置に出力する。ここにおいて、外部装置とは、例えば、記憶装置やコンピュータ装置である。
【0009】
図2は、読取部200の構成を示す図である。同図に示すように、読取部200は、プラテンガラス210と、フルレートキャリッジ220と、ハーフレートキャリッジ230と、結像レンズ240と、ラインセンサ250とを備える。プラテンガラス210は、光を透過する板状の部材であり、その上面において被読取物(図中のO)を支持する。本実施形態において、被読取物は、図中の矢印A方向に長辺を有し、図2の紙面垂直方向に短辺を有する長方形のシート状物であるとするが、被読取物の形状がこれに限定されるわけではない。フルレートキャリッジ220は、読取駆動部400により駆動され、図中の矢印Aの方向に往復移動される。フルレートキャリッジ220の内部には、後述する構成の照射部100やミラー221が設けられている。すなわち、フルレートキャリッジ220は、照射部100からの光の照射位置(すなわち読取位置)を移動させる。ハーフレートキャリッジ230は、読取駆動部400により駆動され、図中の矢印Aの方向に往復移動される。ハーフレートキャリッジ230は、フルレートキャリッジ220の移動に伴って移動され、その移動速度は、フルレートキャリッジ220の移動速度の半分である。ハーフレートキャリッジ230は、ミラー231及び232を備え、被読取物からの反射光を図中の一点鎖線で示す方向に反射させる。この反射光は、基本的には拡散反射光であるが、拡散反射光の成分と正反射光(鏡面反射光)の成分とを含む場合がある。正反射光の成分を含む場合については、後述する。
【0010】
結像レンズ240は、被読取物からの反射光をラインセンサ250の位置に結像する。ラインセンサ250は、結像レンズ240により結像された反射光を受光する受光素子を複数備え、その受光量に応じた画像情報を生成する。本実施形態において、ラインセンサ250は、複数の色成分について画像信号を生成し、これらを合成することにより画像情報を得る。本実施形態のラインセンサ250は、レッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)の3色の色成分の画像信号をそれぞれ生成する。ここにおいて、R、G及びBの色成分の波長域は、それぞれ、400〜500、500〜580及び575〜700(nm)程度である。
【0011】
図3は、フルレートキャリッジ220内部の構成を示す図であり、照射部100の構成を示す図である。同図に示すように、照射部100は、第1光源110と、第2光源120と、第3光源130と、支持部材140とを備える。第1光源110、第2光源120及び第3光源130は、それぞれ、被読取物に向けて光を照射する。第1光源110、第2光源120及び第3光源130が照射する光は、拡散光であってよいが、その主たる照射方向は、図中の一点鎖線が示す方向である。すなわち、第1光源110、第2光源120及び第3光源130は、図中の点Pに向かう光をそれぞれ照射している。この点Pのことを、以下では「読取位置」という。本実施形態において、第1光源110、第2光源120及び第3光源130は、いずれも面光源であり、有機EL(electroluminescence)素子により構成されている。ミラー221は、読取位置からの反射光をハーフレートキャリッジ230に向けて反射させる。この反射光は、被読取物に対して垂直である。すなわち、この反射光の反射角は、0°である。
【0012】
支持部材140は、第1光源110、第2光源120及び第3光源130を支持する部材である。支持部材140は、曲面状であり、上端が下端よりもプラテンガラス210に接近している。すなわち、支持部材140の上端は、その下端よりも被読取物に接近している。支持部材140は、第1光源110、第2光源120及び第3光源130の照射方向が読取位置を向くような形状を有している。例えば、第1光源110、第2光源120及び第3光源130は、支持部材140に支持されているときに、その発光面に対して定義される法線が読取位置に向かうように構成される。図3において、支持部材140は、その上端に向かうほど読取位置に近く、その下端に向かうほど読取位置から遠くなるような形状を有している。
【0013】
本実施形態において、第1光源110、第2光源120及び第3光源130の光の入射角(読取位置からの法線に対して入射光がなす角度)は、次のとおりである。すなわち、第1光源110の光の入射角は、45°であり、第2光源120の光の入射角は、70°であり、第3光源130の光の入射角は、10°である。ただし、第1光源110、第2光源120及び第3光源130の光の入射角は、これらに限定されない。例えば、第1光源110の光の入射角は、30°〜60°程度であってよい。同様に、第2光源120の光の入射角は、65°〜75°であってよく、第3光源130の光の入射角は、5°〜15°程度であってよい。
【0014】
なお、照射部100及び読取部200は、図2又は図3に示すような構成を紙面垂直方向に連続的に有している。すなわち、照射部100及び読取部200の各部は、被読取物に応じた所定の幅を紙面垂直方向に有している。よって、支持部材140は、この幅方向について被読取物を平行になるように構成されている。
【0015】
図4は、照射部100を図3の紙面垂直方向について示す図である。同図に示すように、第1光源110は、支持部材140のほぼ中央にある。また、第2光源120は、第1光源110より上端寄りにあり、第3光源130は、第1光源110より下端寄りにある。第1光源110、第2光源120及び第3光源130は、図中の矢印B方向に互いに平行になるように設けられており、この方向に対する幅が互いに等しくなっている。また、第1光源110、第2光源120及び第3光源130は、図中の矢印C方向、すなわち図中の矢印B方向に直交する方向に所定の幅を有しており、ハッチングにより図示する帯状の領域の全体において発光する。第1光源110の発光領域の面積は、第2光源120及び第3光源130の発光領域の面積よりも大である。すなわち、第1光源110は、図中の矢印C方向について、第2光源120及び第3光源130よりも幅が広くなっている。
【0016】
読取装置10の構成は、以上のとおりである。この構成のもと、読取装置10においては、ユーザからの指示に応じて画像データを生成する。読取装置10は、画像データを生成するモードとして、次の3種類のモードを有する。すなわち、読取装置10は、標準の画像データを生成する「ノーマルモード」、標準の画像データよりも被読取物の凹凸感を認識できる画像データを生成する「凹凸強調モード」、標準の画像データよりも被読取物の光沢感を認識できる画像データを生成する「光沢強調モード」のいずれかで画像データを生成する。ユーザは、操作部500を操作することにより、これらのいずれかのモードを指定する。読取装置10は、画像データを生成するとき、指定されたモードに応じて読み取りの態様を異ならせる。
【0017】
ノーマルモードが指定されたとき、読取装置10の制御部600は、被読取物のスキャンを1回行わせる。ここにおいて、スキャンとは、被読取物の全面が読み取られるように読取位置を移動させる動作をいう。このとき、制御部600は、照射部100のうち第1光源110のみを駆動させる。すなわち、照射部100は、第1光源110を点灯させ、第2光源120及び第3光源130を消灯させる。画像処理部700は、このとき生成された画像情報を用いて画像データを生成する。なお、以下においては、第1光源110を点灯させることにより生成される画像情報のことを、「ノーマル画像情報」という。
【0018】
一方、凹凸強調モードが指定されたとき、読取装置10の制御部600は、被読取物のスキャンを2回行わせる。このとき、制御部600は、1回目のスキャンにおいて、照射部100のうち第1光源110のみを駆動させ、2回目のスキャンにおいて、照射部100のうち第2光源120のみを駆動させる。画像処理部700は、このとき生成された2つの画像情報を用いて画像データを生成する。2つの画像情報の一方は、ノーマル画像情報であり、他方は、第2光源120を点灯させることにより生成される画像情報である。この他方の画像情報のことを、以下においては「凹凸画像情報」という。
【0019】
凹凸画像情報は、他の画像情報に比べ、被読取物の表面の凹凸感をよく表す情報である。なぜならば、凹凸画像情報は、光の入射角が比較的大であるため、被読取物の表面の凹凸に起因して生じる陰影が顕著となるからである。凹凸強調モードにおいては、この凹凸画像情報とノーマル画像情報とを組み合わせたものが画像データとなる。この画像データを取得した外部装置は、凹凸画像情報とノーマル画像情報とを組み合わせて解析することにより、凹凸画像情報を有しない場合よりも被読取物の表面の凹凸を精度良く認識することが可能となる。
【0020】
また、光沢強調モードが指定されたとき、読取装置10の制御部600は、被読取物のスキャンを2回行わせる。このとき、制御部600は、1回目のスキャンにおいて、照射部100のうち第1光源110のみを駆動させ、2回目のスキャンにおいて、照射部100のうち第3光源130のみを駆動させる。画像処理部700は、このとき生成された2つの画像情報を用いて画像データを生成する。2つの画像情報の一方は、ノーマル画像情報であり、他方は、第3光源130を点灯させることにより生成される画像情報である。この他方の画像情報のことを、以下においては「光沢画像情報」という。
【0021】
光沢画像情報は、他の画像情報に比べ、被読取物の表面の光沢感をよく表す情報である。なぜならば、光沢画像情報は、光の入射角が比較的小であり、0°により近いため、被読取物の表面が光沢を有する場合に、反射光に正反射光に起因する成分が含まれやすくなるからである。光沢強調モードにおいては、この光沢画像情報とノーマル画像情報とを組み合わせたものが画像データとなる。この画像データを取得した外部装置は、光沢画像情報とノーマル画像情報とを組み合わせて解析することにより、光沢画像情報を有しない場合よりも被読取物の表面の光沢を精度良く認識することが可能となる。
【0022】
なお、正反射光成分は、正反射方向、すなわち入射角に等しい方向にピークを有するが、入射角に等しい方向のみにあるわけではない。
図5は、正反射光の強度分布を示す図である。同図において、横軸は、反射角の入射角に対するずれを示しており、縦軸は、光の強度を示している。一般に、正反射光成分のピークの強度Iは、光沢度(光沢の度合い)の高い物体表面ほど高く、正反射光成分が生じる幅Wは、光沢度の高い物体表面ほど小さい。ゆえに、光沢度の低い物体表面においては、強度Iが低くなるとともに、幅Wが広くなる。よって、読み取られる反射光が適当に正反射光成分を含むように第3光源130の入射角を設定すれば、完全な正反射方向の反射光でなくとも被読取物の表面の光沢度を求めることが可能となる。
【0023】
このように、本実施形態の読取装置10によれば、ノーマル画像情報に基づく第1の画像データと、ノーマル画像情報及び凹凸画像情報に基づく第2の画像データと、ノーマル画像情報及び光沢画像情報に基づく第3の画像データとを生成することが可能である。すなわち、読取装置10は、被読取物の質感に係る画質をユーザの指定に応じて異ならせることが可能である。
【0024】
また、これらの画像データを生成する場合において、読取装置10は、入射角を変えるために光源やその反射光を読み取る光学系を機械的に移動させる必要がないため、かかる移動に要する構成を必要としない。よって、本実施形態の読取装置10は、かかる移動に要する構成を備える場合に比べ、装置を小型にしたり、低コストにしたり、故障をさせにくくしたりすることが可能である。
【0025】
また、本実施形態の読取装置10は、第3光源130と読取位置との距離が、第1光源110と読取位置との距離よりも大きくなるように構成されている。このようにすることで、第1光源110が照射する光量と第3光源130が照射する光量とが同等である場合においても、第3光源130から照射された光の読取位置における強度を第1光源110から照射された光のそれよりも小さくすることができる。第3光源130から照射された光の反射光は、図4に示したように、光沢度が高い場合に急峻なピークを呈するため、強度が過大であるとラインセンサ250の受光可能な強度を超え、正確な強度を特定できないおそれがある。すなわち、本実施形態のように構成することにより、ラインセンサ250が出力する信号のダイナミックレンジを必要以上に広くしたりすることなく、適切な光沢画像情報を読み取ることが可能になるのである。
なお、第3光源130の発光領域の面積を第1光源110のそれよりも小さくすることによっても、同様の効果が得られている。
【0026】
また、本実施形態の読取装置10は、第2光源120と読取位置との距離が、第1光源110と読取位置との距離よりも小さくなるように構成されている。照明光の入射角が大きくなると、被読取物表面に対する照明効率が低下し、また、プラテンガラス210の界面反射に起因する照射光量の損失が大きくなること等により、被読取物からの反射光の光量が減少する傾向があるが、本実施形態のように構成することにより、かかる光量の減少を補償する効果がある。
【0027】
[第2実施形態]
本実施形態は、照射に関する構成が上述した第1実施形態と異なるが、その他の構成は第1実施形態と同様である。そこで、以下においては、主として第1実施形態と異なる点を説明する。また、本実施形態と第1実施形態とで共通の事項については、その説明を適宜省略する。なお、説明の便宜上、本実施形態の読取装置を「読取装置20」といい、第1実施形態の読取装置10と区別する。
【0028】
図6は、本実施形態の照射部の構成を示す図である。本実施形態の読取装置20は、上述した読取装置10の照射部100に代えてこの照射部800を採用するものである。同図に示すように、照射部800は、第1光源810と、第2光源820と、第3光源830と、第4光源840と、第5光源850と、支持部材860とを備える。第1光源810〜第5光源850は、その設けられた位置が相異なるが、構造は共通である。第1光源810〜第5光源850は、そのサイズや発光領域の面積も同一である。支持部材860は、第1光源810〜第5光源850を支持する部材である。支持部材860は、読取位置を中心とした円の弧と重なるような円弧状の形状を有する。すなわち、本実施形態の第1光源810〜第5光源850は、読取位置までの距離がすべて同一となっている。
【0029】
第1光源810の光の入射角は、10°程度である。第2光源820の光の入射角は、30°程度である。第3光源830の光の入射角は、45°程度である。第4光源840の光の入射角は、60°程度である。第5光源850の光の入射角は、75°程度である。
【0030】
以上の構成のもと、読取装置20は、第1実施形態と同様の「ノーマルモード」、「凹凸強調モード」及び「光沢強調モード」に「高光量モード」を加えた4種類のモードで動作する。ノーマルモードが指定されたとき、読取装置20は、第2光源820、第3光源830及び第4光源840を同時に点灯させるとともに、第1光源810及び第5光源850を消灯させ、被読取物のスキャンを1回行う。以下においては、このように第2光源820、第3光源830及び第4光源840を点灯させることにより生成される画像情報のことを、「ノーマル画像情報」という。
【0031】
凹凸強調モードが指定されたとき、読取装置20は、被読取物のスキャンを2回行う。読取装置20は、1回目のスキャンにおいては、第2光源820、第3光源830及び第4光源840を点灯させ、ノーマル画像情報を生成する。次いで、読取装置20は、2回目のスキャンにおいては、第4光源840及び第5光源850を点灯させ、第1光源810、第2光源820及び第3光源830を消灯させる。この2回目のスキャンによって生成される画像情報を、以下においては「凹凸画像情報」という。
【0032】
光沢強調モードが指定されたとき、読取装置20は、被読取物のスキャンを2回行う。読取装置20は、1回目のスキャンにおいては、第2光源820、第3光源830及び第4光源840を点灯させ、ノーマル画像情報を生成する。次いで、読取装置20は、2回目のスキャンにおいては、第1光源810を点灯させ、第2光源820、第3光源830、第4光源840及び第5光源850を消灯させる。この2回目のスキャンによって生成される画像情報を、以下においては「光沢画像情報」という。
【0033】
高光量モードが指定されたとき、読取装置20は、第1光源810〜第5光源850のすべてを点灯させ、被読取物のスキャンを1回行う。このとき生成される画像情報は、ノーマル画像情報よりも高い光量で生成されるものである。以下においては、この画像情報を「高光量画像情報」という。
【0034】
読取装置20は、以上のようにして生成された画像情報を用いて画像データを生成する。画像データを生成する要領は、第1実施形態と同様である。
以上のとおり、本実施形態の読取装置20によれば、第1実施形態と同様のモード(ノーマルモード、凹凸強調モード及び光沢強調モード)に加え、高光量モードによる画像データを生成することができる。高光量モードによって生成された画像データは、ノーマルモードによって生成された画像データに比べ、高い光量で読取位置を照射することができる。よって、高光量モードは、被読取物が全体的に高濃度である場合などにおいて、ノーマルモードでは十分な明るさが得られないときに、特に好適である。
【0035】
また、高光量モードにおいては、ノーマルモードに比べ、光源から照射される光量が大であるため、読取位置における光の強度も大である。そうすると、高光量モードにおいては、フルレートキャリッジ220の移動速度をノーマルモードより高速にしても、ノーマルモードの場合と同等の強度の光を読取位置において受けることが可能である。すなわち、制御部600は、高光量モードにおいては、フルレートキャリッジ220の移動速度をノーマルモードより高速にしてもよい。あるいは、制御部600は、フルレートキャリッジ220の移動速度をノーマルモードより高速にする場合に、本実施形態の高光量モードのように、照射を行う光源の数を増加させるようにしてもよい。
【0036】
なお、読取装置20は、凹凸画像情報を生成する場合には、第5光源850のみを点灯させるようにしてもよい。同様に、光沢画像情報を生成する場合には、第1光源810のみを点灯させるようにしてもよい。また、読取装置20は、これらの例に限らず、任意の位置の1又は複数の光源を点灯させ、必要に応じた画像情報を生成するようにしてもよい。
【0037】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態と異なる形態での実施が可能である。以下に示す変形例は、本発明に適用可能な変形の一例である。なお、これらの変形例は、必要に応じて、各々を適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【0038】
(1)変形例1
第1実施形態において、3回のスキャンを行い、それぞれのスキャンにおいて、ノーマル画像情報、凹凸画像情報及び光沢画像情報のいずれかを生成するようにしてもよい。この場合、制御部600は、ノーマル画像情報、凹凸画像情報及び光沢画像情報に基づいて画像データを生成する。このようにすれば、凹凸感及び光沢感の双方を反映させた画像データを得ることができる。
【0039】
(2)変形例2
本発明において、支持部材の形状は、上述した実施形態に開示したものに限定されない。例えば、支持部材の光源が取り付けられる面は、曲面でなくてもよい。また、支持部材は、複数の部材(パーツ)を組み合わせて所望の形状となるようにしてもよい。ここにおいて、所望の形状とは、一端が他端より被読取物に接近した形状であり、典型的には、プラテンガラス210に対して平行でない、傾いた形状である。
【0040】
図7は、支持部材の他の構成を例示する図である。同図に示す支持部材140aは、第1光源110、第2光源120及び第3光源130を支持するものである。ここにおいて、各光源の入射角や読取位置との距離の関係は、第1実施形態と同様である。
【0041】
図8は、第2実施形態の照射部800の変形例である。同図に示す照射部800aは、第2実施形態と同様の支持部材860に加え、支持部材860aを備え、支持部材860aは、第6光源810aと、第7光源820aと、第8光源830aと、第9光源840aと、第10光源850aとを備える。照射部800aは、読取位置からの法線に対して線対称となる構成を有している。すなわち、支持部材860aは、その移動方向に対して支持部材860と逆向きに設けられている点を除けば、支持部材860と同じ構成である。また、第6光源810a〜第10光源850aも、第1光源810〜第5光源850と同様の構成である。
【0042】
この構成において、照射部800aは、ノーマル画像情報を生成する場合には、第2光源820、第3光源830、第4光源840、第7光源820a、第8光源830a及び第9光源840aを点灯させる。また、照射部800aは、凹凸画像情報を生成する場合には、第4光源840及び第5光源850又は第9光源840a及び第10光源850aを点灯させ、光沢情報を生成する場合には、第1光源810及び第6光源810aを点灯させる。
【0043】
照射部800aのような構成を採用することにより、読取位置における光の強度をより増加させることが可能である。よって、かかる構成によれば、より高速なスキャンを容易にしたり、被読取物をより鮮明に読み取ることができる画像データを得たりすることが可能となる。また、照射部800aのように読取位置の前方と後方の双方から光を照射することにより、表面に凹凸のある被読取物であってもその陰影を抑制した画像データを得ることが可能となる。
【0044】
(3)変形例3
本発明において、読取位置における光の強度を調整するためには、光源との距離を調整したり、発光領域の面積を調整したりすることに加え、光源の輝度を調整してもよい。すなわち、光源は、調光機能、すなわち照射する光の輝度を調整する機能を有していてもよいし、各々の輝度があらかじめ異なるように設定されていてもよい。例えば、第1実施形態において、第1光源810、第2光源820及び第3光源830の発光領域を等しくするとともに、各々の読取位置までの距離を等しくし、第2光源820を他よりも高輝度にし、第3光源830を他よりも低輝度にするように構成することができる。
【0045】
(4)変形例4
本発明において、光源は、有機EL素子に限定されず、また、面光源にも限定されない。例えば、光源は、発光ダイオードを複数並べたものであってもよい。また、光源は、白色の光源である必要はなく、被読取物を読み取ることが可能な色であれば、いかなる色であってもよい。
さらに、光源は、支持部材上に光沢画像情報を読み取るためのものを有しない構成であったり、あるいは、支持部材上に凹凸画像情報を読み取るためのものを有しない構成であってもよい。
【0046】
(5)変形例5
本発明の移動手段は、光源を移動させるものに限らない。本発明の移動手段は、読取位置を移動させるものであれば、被読取物を移動させるものであってもよい。例えば、被読取物をローラ状の部材で挟持し、これを回転させて被読取物を移動させれば、かかるローラ状の部材は、支持手段と移動手段とを兼ねる。
【0047】
(6)変形例6
本発明は、読取装置としてではなく、照射部100や照射部800を、被読取物に光を照射するための照射装置として特定してもよい。また、本発明は、読取装置を備える画像形成装置(プリンタ、複写機等)として特定してもよい。特に、本発明は、既存のフラットベッド型のスキャナとほぼ同様の構造を有しているため、画像形成装置への適用が比較的容易である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】読取装置の構成を示すブロック図
【図2】読取部の構成を示す図
【図3】照射部の構成を示す図
【図4】照射部の構成を示す図
【図5】正反射光の強度分布を示す図
【図6】照射部の構成を示す図
【図7】支持部材の構成を例示する図
【図8】照射部の構成を示す図
【符号の説明】
【0049】
10…読取装置、100…照射部、110…第1光源、120…第2光源、130…第3光源、140…支持部材、200…読取部、300…光源駆動部、400…読取駆動部、500…操作部、600…制御部、700…画像処理部、800…照射部、810…第1光源、820…第2光源、830…第3光源、840…第4光源、850…第5光源、860…支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被読取物からの反射光に基づいて当該被読取物を表す画像情報を生成するために光を照射する照射装置であって、
所定方向にある幅を有する被読取物を支持する支持手段と、
前記所定方向について、前記支持手段が支持する被読取物と平行になるように設けられ、前記所定方向と直交する方向について、一端が他端より当該被読取物に接近して設けられる光源支持部材と、
前記光源支持部材に支持されて、前記支持手段が支持する被読取物の読取位置に光を照射する複数の光源とを備え、
前記複数の光源は、
前記光源支持部材において、各々が前記所定方向と直交する方向について隣り合うように設けられ、
前記一端寄りの光源は、前記読取位置に照射される光の強度が前記他端寄りの光源よりも大である
ことを特徴とする照射装置。
【請求項2】
被読取物からの反射光に基づいて当該被読取物を表す画像情報を生成するために光を照射する照射装置であって、
所定方向にある幅を有する被読取物を支持する支持手段と、
前記所定方向について、前記支持手段が支持する被読取物と平行になるように設けられ、前記所定方向と直交する方向について、一端が他端より当該被読取物に接近して設けられる光源支持部材と、
前記光源支持部材に支持されて、前記支持手段が支持する被読取物の読取位置に光を照射する複数の光源とを備え、
前記複数の光源は、
前記光源支持部材において、各々が前記所定方向と直交する方向について隣り合うように設けられ、
前記一端寄りの光源は、前記読取位置に照射される光の強度が前記他端寄りの光源よりも小である
ことを特徴とする照射装置。
【請求項3】
前記複数の光源は、
それぞれ、前記所定方向と直交する方向に所定の幅の発光領域を有し、
第1の光源と、前記第1の光源より前記一端寄りにある第2の光源と、前記第1の光源より前記他端寄りにある第3の光源とを含み、
前記第1の光源の発光領域の幅が前記第2及び第3の光源の発光領域の幅よりも大である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の照射装置。
【請求項4】
前記光源支持部材は、
前記一端寄りの光源と前記読取位置との距離が前記他端寄りの光源と当該読取位置との距離よりも小となるように前記複数の光源を支持する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の照射装置。
【請求項5】
前記第1の光源は、前記読取位置に対する入射角が30°〜60°であり、
前記第2の光源は、前記読取位置に対する入射角が65°〜75°であり、
前記第3の光源は、前記読取位置に対する入射角が5°〜15°である
ことを特徴とする請求項3に記載の照射装置。
【請求項6】
前記一端寄りの光源が前記他端寄りの光源より高輝度であることを特徴とする請求項1又は3ないし5のいずれかに記載の照射装置。
【請求項7】
前記光源が面光源であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の照射装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の照射装置と、
前記読取位置からの反射光に基づいて当該読取位置の画像を表す画像データを生成する生成手段と
を備えることを特徴とする読取装置。
【請求項9】
前記画像情報の画質を指定する指定手段と、
前記複数の光源による照射を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記指定手段により指定される画質に応じて、前記複数の光源のうちの照射を行う光源を異ならせる
ことを特徴とする請求項8に記載の読取装置。
【請求項10】
前記読取位置を前記被読取物の前記所定方向に対して直交する方向に移動させる移動手段と、
前記複数の光源による照射を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記移動手段による移動が高速である場合に、当該移動が低速である場合よりも照射を行う前記光源の数を増加させる
ことを特徴とする請求項8に記載の読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−284012(P2009−284012A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131045(P2008−131045)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】