説明

照明システム

【課題】複数の光源を順次点滅させて人を誘導するシステムとして、設置できる光源の数にほとんど制約がないシステムを提供する。
【解決手段】4台のLED照明器具1e〜hのそれぞれに、LED2〜13が直線状に配列されている。LED照明器具1e〜hは、LED照明器具1h→LED照明器具1g→LED照明器具1e→LED照明器具1fの順番に配置されている。制御装置は、この順番にLED照明器具1e〜hを点灯及び消灯させる。上記制御装置は、LED照明器具1e〜hのそれぞれを点灯させる場合、点灯させるLED照明器具に配列されたLED2〜13を、直前に点灯させたLED照明器具に近い順に4個ずつ点灯させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明システムに関するものである。本発明は、特に、LED照明器具を用いた照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の施設、建築物等には、火災・地震等の災害が発生したとき、それらの施設、建築物等の中に滞在する人を安全に屋外へ避難誘導するための設備として、消防法に基づく誘導灯がある。誘導灯は施設、建築物等の避難経路ならびに最終避難口に設置し、緑色の灯火により避難口のある場所又は避難の方向を避難者に知らせるものである。しかし、これらの表示は固定的なものであり刻々と変化する火災の状況に応じた避難方向の指示表示が求められていた。また、誘導灯の表示面は火災による煙が発生すると視認を妨げられ、少し離れると避難者が避難の方向を見失うおそれがあった。そのため、通路の床面あるいは壁面下部に連続的に灯具(光源)を配列して逐次点灯を行い、あたかも光が走行しているように視認させて、その光の進む方向に沿って避難すれば避難口に至ることができる光走行式の避難誘導装置(光走行式避難誘導システム)と呼ばれるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、LED照明はLEDの発光効率の向上により、蛍光灯に代わる光源として注目されており、LEDを用いた照明器具も急速に市場を広げている。LED照明器具には、基板の長手方向に沿ってライン状に複数個のLEDチップが実装されたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−326383号公報
【特許文献2】特開2002−299697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の光走行式の避難誘導装置は、実用性が低く、高価なものであり、設置が義務づけられているものでないため、実際に設置されることが少ないという課題があった。また、設置されるとしても、灯具1つあたりのサイズやコストが大きいため、非常時の避難路に沿って設置できる灯具の数に制約があり、非常時において視認性の高い避難誘導装置を提供することが難しいという課題があった。また、従来の光走行式の避難誘導装置はシステムとして設置しないと効果がないため、複雑な配線やアドレス設定等が必要であるという課題があった。
【0006】
本発明は、例えば、複数の光源を順次点滅させて人を誘導するシステムとして、設置できる光源の数にほとんど制約がないシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様に係る照明システムは、
光を発する複数の発光素子が配列された複数の照明器具であって、所定の順番に配置された複数の照明器具と、
前記複数の照明器具を前記所定の順番に繰り返し点灯及び消灯させる制御装置であって、前記複数の照明器具のそれぞれを点灯させる場合、点灯させる照明器具に配列された複数の発光素子を、直前に点灯させた照明器具に近い順に所定の数ずつ点灯させる制御装置と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一の態様では、照明器具を設置する場所や用途等に合わせて、照明器具の数を増やしたり、発光素子の数を増やしたりすることで、自由に光源の数を増やすことができるため、視認性の高い照明システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)実施の形態1に係るLED照明器具の斜視図、(b),(c)実施の形態1の変形例に係るLED照明器具の斜視図、(d)実施の形態1の変形例に係る有機EL照明器具の斜視図。
【図2】(a)実施の形態1に係るLED照明器具のLED点灯パターン図、(b),(c)実施の形態1の変形例に係るLED照明器具のLED点灯パターン図。
【図3】(a)実施の形態1に係るLED照明器具の設置例を示す図、(b)実施の形態1の変形例に係るLED照明器具の設置例を示す図。
【図4】図3(a)の例に係るLED照明器具のLED点灯パターン図。
【図5】(a)実施の形態1に係るLED照明器具の構成を示す図、(b)実施の形態2に係るLED照明器具の構成を示す図。
【図6】(a)実施の形態1に係る光走行式避難誘導システムの構成を示すブロック図、(b)実施の形態1の変形例に係る光走行式避難誘導システムの構成を示すブロック図。
【図7】実施の形態1に係るLED照明器具のLED電源回路の構成を示すブロック図。
【図8】実施の形態1に係るLED照明器具のLED電源回路の点灯制御回路部の動作を示すフローチャート。
【図9】実施の形態2に係るLED照明器具の設置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1(a)は、本実施の形態に係るLED照明器具1の斜視図である。図2(a)は、LED照明器具1のLED点灯パターン図である。
【0012】
LED照明器具1には、十分な光源を確保するために複数個のLED2〜13が配置されている。
【0013】
LED照明器具1の内部にはLED2〜13を点灯させるためのLED電源装置が搭載されている。
【0014】
通常時には、図1(a)のLED照明器具1のLED2〜13が点灯し、単なるLED照明として機能する。図1(a)では1つの例として、1つのLED照明器具1に12個のLED2〜13を配置しているが、器具の形状に合わせて、LEDを何個配置してもよい。また、図1(a)ではLEDを1列に直線状に配置しているが、LEDを2列以上に配置したり、リング状に配置したり、その他の形状をなすように配置したりしてもよい。非常時等にLED照明器具1が外部からの信号を受けたときには、図2(a)に示すようにLED2〜13はLED2〜5→LED6〜9→LED10〜13→LED2〜5→・・・の順に順次4個ずつ点灯及び消灯する。LED2〜13が順次4個ずつ点灯及び消灯することで、LED2〜13から発せられる光があたかも走行しているように視認される。
【0015】
図2(b)は、本実施の形態の変形例に係るLED照明器具1のLED点灯パターン図である。
【0016】
この変形例において、非常時等にLED照明器具1が外部からの信号を受けたときには、LED2〜13がLED2→LED3→LED4→LED5→・・・→LED13→LED2→・・・の順に順次1個ずつ点灯及び消灯する。LED2〜13が順次1個ずつ点灯及び消灯することでも、LED2〜13から発せられる光があたかも走行しているように視認される。
【0017】
図2(c)は、本実施の形態の変形例に係るLED照明器具1のLED点灯パターン図である。
【0018】
この変形例において、非常時等にLED照明器具1が外部からの信号を受けたときには、LED2〜13のうち、3個のLEDが常に(正確には、LED2〜4が点灯してからLED11が消灯するまでの間)点灯する。このような点灯パターンにすることで、光源を明るくできるのと同時に、光の走行をよりスムーズに見せることができる。なお、常に点灯するLEDの数は3個に限るものではなく、器具に応じて最適な数を選定すればよい。
【0019】
上記のように、本実施の形態において、点灯パターンは図2(a)に示したものに限るものではなく、器具の形状等によって、光の走行によって避難誘導できる最適な点灯パターンを選定すればよい。本実施の形態のように、LED2〜13を複数個のグループに分けて、グループごとに順次点灯させる場合、点灯したときの光源が明るくなり、視認性が高い照明を提供できるのと同時に、個別にLED2〜13の点灯を制御するよりも簡単に照明制御を行うことができる。
【0020】
図1(a)のLED照明器具1は、天井に設置される。なお、LED照明器具1は、天井のみでなく床面、壁面に設置してもよい。床面等の低い位置に配置することで、火災等で煙が発生した場合には、天井に設置されるよりも視認性に優れたものとなる。
【0021】
図1(b)は、本実施の形態の変形例に係るLED照明器具35の斜視図である。
【0022】
この変形例において、LED照明器具35は、平面視で四角形状をなす。LED照明器具35には、複数個のLED36が5行×4列に配置されている。例えば、通常時には、全てのLED36が点灯し、非常時等に外部からの信号を受けたときには、左の列から順に順次4個(1列)ずつのLED36が点灯及び消灯する。
【0023】
図1(c)は、本実施の形態の変形例に係るLED照明器具37の斜視図である。
【0024】
この変形例において、LED照明器具37は、平面視で円形状をなす。LED照明器具37には、複数個のLED38が5行×4列に配置されている。例えば、通常時には、全てのLED38が点灯し、非常時等に外部からの信号を受けたときには、左の列から順に順次4個(1列)ずつのLED38が点灯及び消灯する。
【0025】
上記のように、本実施の形態において、LED照明器具1は、四角形状や円形状のものに複数個のLED36,38を配置したものであってもよい。四角形状や円形状にすることによって、本実施の形態でLED2〜13が1列であるのに対し、縦横ともに複数列になるため、非常時等に外部からの信号を受けたときには、縦横ともに光が走行しているような点灯パターンにすることができる。
【0026】
図1(d)は、本実施の形態の変形例に係る有機EL照明器具58の斜視図である。
【0027】
この変形例において、有機EL照明器具58には、複数個の有機EL59〜62が配置されている。例えば、通常時には、有機EL59〜62が点灯し、非常時等に外部からの信号を受けたときには、有機EL59〜62が有機EL59→有機EL60→有機EL61→有機EL62の順に順次1個ずつ点灯及び消灯する。
【0028】
上記のように、本実施の形態において、LED2〜13の代わりに有機EL59〜62等を用いてもよい。光源の種類は、LED2〜13、有機EL59〜62に限らない(例えば、無機ELでもよい)が、即時点灯、点滅による寿命の短縮がないような光源が望ましい。
【0029】
本実施の形態では、LED照明器具1が複数設置され、それぞれのLED照明器具1が隣接するLED照明器具1と連動して点灯及び消灯する。
【0030】
図3(a)は、LED照明器具1の設置例を示す図である。図4は、この例に係るLED照明器具1のLED点灯パターン図である。
【0031】
この例において、LED照明器具1a〜1hは、図1(a)に示した、LED2〜13がライン状に配置された複数のLED照明器具1である。LED照明器具1a〜1hは、通路の天井等に設置されている。例えば、LED照明器具1hが設置された箇所付近から避難する人を非常口47に誘導する場合には、LED照明器具1h→LED照明器具1g→LED照明器具1e→LED照明器具1f→LED照明器具1h→・・・の順番にLED照明器具1のLED2〜13が順次点灯する。このとき、それぞれのLED照明器具1は、図4に示すように、隣接するLED照明器具1と連動して、連続的に光が走行しているようにLED2〜13を点灯させる。これにより、LED2〜13の発する光は器具単体ではなく、隣接する器具を含めて、光が走行しているように見せて、避難する人を非常口47まで光の走行により誘導することができる。なお、この例では、必須ではないが、それぞれのLED照明器具1が一定の周期で点灯及び消灯を繰り返すため、繰り返しがない場合と比べて誘導の効果が高まる。
【0032】
図3(b)は、本実施の形態の変形例に係るLED照明器具1の設置例を示す図である。
【0033】
この変形例において、LED照明器具1a〜1hは、図3(a)の例と同様に、図1(a)に示した、LED2〜13がライン状に配置された複数のLED照明器具1である。LED照明器具1iは、図1(b)に示した、複数のLED36が複数列に配置されたLED照明器具35である。LED照明器具1iも、通路の天井等に設置されている。例えば、LED照明器具1hが設置された箇所付近から避難する人を非常口47に誘導する場合には、LED照明器具1h→LED照明器具1g→LED照明器具1i→LED照明器具1e→LED照明器具1f→LED照明器具1h→・・・の順番にLED照明器具1のLED2〜13,36が順次点灯する。このとき、LED照明器具1iでは、複数のLED36のうち、LED照明器具1gに近くLED照明器具1eから遠いものほど先に点灯し、LED照明器具1gから遠くLED照明器具1eに近いものほど後に点灯するようにする。このように、LED照明器具1iは、十字路で光が右折するようにLED36を点灯させる。なお、全てのLED36を点灯させる必要はない。LED照明器具1i以外のLED照明器具1は、図3(a)の例と略同様に、隣接するLED照明器具1と連動して、連続的に光が走行しているようにLED2〜13を点灯させる。これにより、LED2〜13,36の発する光は器具単体ではなく、隣接する器具を含めて、光が走行しているように見せて、避難する人を非常口47まで光の走行により誘導することができる。
【0034】
図5(a)は、LED照明器具1の構成を示す図である。このうち、平面図は、天井に設置するLED照明器具1の底面を見た図である。側面図は、左側がLED照明器具1の内部構造を長手方向の側面から見た図、右側がLED照明器具1を短手方向の側面から見た図である。
【0035】
LED照明器具1は、LED2〜13、LED2〜13の固定と電気的接続をする基板102を備える。LED2〜13と基板102とでLEDモジュールが構成されている。LED照明器具1は、さらに、LED2〜13を点灯させるためのLED電源回路103、LED電源回路103とLEDモジュールを接続するLEDモジュール出力配線104、外部の商用電源からLED電源回路103に電力を供給するための電源線105、LED電源回路103に外部信号を入力するための外部信号線106、LED2〜13間を接続しているLED配線107を備える。LED電源回路103に電力が供給されると、LEDモジュール出力配線104より、所定の電圧もしくは電流が流れることでLED2〜13が点灯する。本実施の形態では、図2(a)や図4に示した点灯パターンを実現するため、LED電源回路103から4個のLEDごとにLEDモジュール出力配線104が接続されている。これにより、定常時は12個全てのLED2〜13が点灯しているが、外部信号線106より非常時であることを示す外部信号が入力された場合には、12個のLED2〜13のうち、LEDモジュール出力配線104ごとに接続された任意の4個のLEDを点灯させることができる。なお、定常時においても省エネを目的として、非常時とは異なる外部信号を入力し、この外部信号によりLED2〜13のいくつかを消灯させるようにしてもよい。
【0036】
LED2〜13の点灯を制御する外部信号線106の外部信号としては、直流電圧信号やPWM(パルス幅変調)信号を用いる。例えば外部信号線106の外部信号は、LED電源回路103を構成している電子部品であるマイコンで処理する。例えば外部信号線106の外部信号として、0V(無電圧)の信号が印加された場合、LED電源回路103のマイコンがLED2〜13を点灯させる。一方、外部信号線106の外部信号として、非常時を知らせる数Vの電圧の信号が印加された場合、LED電源回路103のマイコンが前述した点灯パターンでLED2〜13を点滅させる。このようにLED電源回路103のマイコンを動作させることで、万が一非常時に外部信号線106に信号を入力している外部信号装置(後述する制御装置)が動作しなくなった場合、少なくとも全てのLED2〜13が点灯するため、照明としての機能は果たすことができる。
【0037】
LED照明器具1内には、さらに、蓄電池101が内蔵されている。これにより、LED照明器具1は、商用電源からの電力の供給が妨げられた場合でも、蓄電池101を電源として駆動することができる。非常時には、火災のみでなく、地震等によって停電となる場合もある。LED2〜13による光走行は非常時に使用するものであるから、LED照明器具1は、商用電源から電力の供給が妨げられた場合にも動作できることが望ましい。したがって、LED照明器具1が蓄電池101を備えることで、より実用性の高い照明器具を提供することができる。
【0038】
図6(a)は、光走行式避難誘導システム200の構成を示すブロック図である。
【0039】
光走行式避難誘導システム200は、複数の煙感知器202と、これらの煙感知器202が接続された自動火災報知設備受信機203を備える。また、光走行式避難誘導システム200は、自動火災報知設備受信機203に接続された避難誘導用LED照明器具制御装置207と、複数のLED照明器具1を備える。これらのLED照明器具1のうち、少なくとも1つのLED照明器具1は避難誘導用LED照明器具制御装置207に接続され、それ以外は隣接する別のLED照明器具1に接続されている。
【0040】
図3(a)の例を用いると、避難経路の始点にあるLED照明器具1a,1c,1hは、避難誘導用LED照明器具制御装置207に接続される。そして、他のLED照明器具1は、避難経路の終点(非常口47)より1つ始点に近い側のLED照明器具1に接続される。具体的には、LED照明器具1bがLED照明器具1aに、LED照明器具1dがLED照明器具1cに、LED照明器具1gがLED照明器具1hに接続される。また、LED照明器具1eがLED照明器具1b,1d,1gに接続され、LED照明器具1fがLED照明器具1eに接続される。
【0041】
火災発生によりある煙感知器202によって煙が感知されると、その感知信号が自動火災報知設備受信機203に入力される。自動火災報知設備受信機203は、この感知信号を受信すると、これに応じて感知箇所を特定する火災信号を避難誘導用LED照明器具制御装置207に対して出力する。避難誘導用LED照明器具制御装置207は自動火災報知設備受信機203からの火災信号に適合した避難誘導灯の通路を決定し、その決定された通路に設置されているLED照明器具1に対して制御信号(点滅信号)を出力する。これにより、決定された通路にあるLED照明器具1が制御信号(点滅信号)に基づいて順次点滅する。図6(a)では1つのLED照明器具1に入力された制御信号(点滅信号)でそのLED照明器具1が点灯した後、そのLED照明器具1から次のLED照明器具1へ制御信号(点滅信号)が入力される構成となっている。
【0042】
なお、光走行式避難誘導システム200は、本実施の形態に係る照明システムの例であり、LED照明器具1と同様の複数の照明器具と、避難誘導用LED照明器具制御装置207と同様の制御装置とを備えるものであれば、上記以外の構成の照明システムに置き換えても構わない。このとき、それぞれの照明器具には、例えば図1(a)に示したように、光を発する複数の発光素子(例えばLED2〜13)が配列されている。また、上記複数の照明器具は、例えば図3(a)に示したように、所定の順番(例えばLED照明器具1h→LED照明器具1g→LED照明器具1e→LED照明器具1fの順)に配置されている。上記制御装置は、例えば図4に示したように、上記複数の照明器具を上記所定の順番に点灯及び消灯させる。上記制御装置は、例えば図4に示したように、1つの照明器具を点灯させる場合、その照明器具に配列された複数の発光素子を、直前に点灯させた照明器具に近い順に所定の数(例えば4個)ずつ点灯させる(例えばLED照明器具1gにてLED2〜5→LED6〜9→LED10〜13の順番にLEDを点灯させる)。
【0043】
本実施の形態において、上記制御装置は、上記複数の照明器具のうち、上記所定の順番で1番目の照明器具に対し、当該1番目の照明器具に配列された複数の発光素子を、上記所定の順番で2番目の照明器具から遠い順に上記所定の数ずつ点灯及び消灯させるように指令する制御信号を送信する(例えばLED照明器具1hに対してLED2〜5→LED6〜9→LED10〜13の順番にLEDを点灯させる制御信号を送信する)。上記複数の照明器具は、制御信号を受信した場合、それぞれの照明器具に配列された複数の発光素子を、直前に点灯した照明器具に近い順に上記所定の数ずつ点灯及び消灯させた後、上記所定の順番で次の照明器具に対し、制御信号を送信する(例えばLED照明器具1hがLED照明器具1gに対してLED2〜5→LED6〜9→LED10〜13の順番にLEDを点灯させる制御信号を送信する)。上記所定の順番で最後の照明器具は、制御信号を受信した場合、当該最後の照明器具に配列された複数の発光素子を、直前に点灯した照明器具に近い順に上記所定の数ずつ点灯及び消灯させた後、上記所定の順番で1番目の照明器具に対し、上記制御信号を送信してもよい(例えばLED照明器具1fがLED照明器具1hに対してLED2〜5→LED6〜9→LED10〜13の順番にLEDを点灯させる制御信号を送信してもよい)。
【0044】
また、本実施の形態において、例えば図2(c)に示したように、上記複数の照明器具が上記所定の数(例えば1個)の発光素子を点灯させてから消灯させるまでの時間は、上記複数の照明器具が上記所定の数の発光素子を点灯させてから隣の前記所定の数の発光素子を点灯させるまでの時間より長くてもよい。具体的には、例えば図2(c)に示したように、前者の時間が、後者の時間の整数倍(例えば3倍)であってもよい。
【0045】
図6(b)は、本実施の形態の変形例に係る光走行式避難誘導システム200の構成図である。
【0046】
この変形例では、避難誘導用LED照明器具制御装置207が各々のLED照明器具1に接続されており、避難誘導用LED照明器具制御装置207から、予め決められた順番及びタイミングで次に点滅(順次点灯)させるLED照明器具1に制御信号(点滅信号)が入力される。
【0047】
図7は、LED電源回路103の構成を示すブロック図である。
【0048】
LED電源回路103は、点滅信号受信部208、点滅信号送信部209、点灯制御回路部210、全波整流回路部211、平滑回路部212、点灯回路部213〜215を備える。
【0049】
常用時は電源205から入力された電源電圧が全波整流回路部211及び平滑回路部212で直流電圧に変換され、点灯回路部213〜215に印加される。これにより、点灯回路部213〜215に接続されたLED2〜13が点灯する。非常時に避難誘導用LED照明器具制御装置207より制御信号(点滅信号)が出力されると、点滅信号受信部208に制御信号(点滅信号)が入力される。点滅信号受信部208は、制御信号(点滅信号)を点灯制御回路部210に入力する。点灯制御回路部210は、制御信号(点滅信号)が入力されると、点灯回路部213→点灯回路部214→点灯回路部215の順にLEDを順次点灯させるように制御する。点灯回路部215まで点灯が完了した後、点滅信号送信部209は、次に点滅(順次点灯)させるLED照明器具1へ制御信号(点滅信号)を出力する。制御信号(点滅信号)が入力された次のLED照明器具1のLED電源回路103も同様の動作を行う。これにより、隣接する(異なる)LED照明器具1のLED2〜13を順次点灯させて、あたかも光が走行しているように見せることができる。
【0050】
図3(a)の例を用いると、非常時には、例えばLED照明器具1hのLED電源回路103が、点滅信号受信部208で避難誘導用LED照明器具制御装置207からの制御信号(点滅信号)を受信する。そして、点灯制御回路部210でLED2〜13を4個ずつ順番に点灯及び消灯させた後、点滅信号送信部209でLED照明器具1gに制御信号(点滅信号)を送信する。LED照明器具1gのLED電源回路103は、点滅信号受信部208でLED照明器具1hからの制御信号(点滅信号)を受信する。そして、点灯制御回路部210でLED2〜13を4個ずつ順番に点灯及び消灯させた後、点滅信号送信部209でLED照明器具1eに制御信号(点滅信号)を送信する。LED照明器具1eのLED電源回路103は、点滅信号受信部208でLED照明器具1gからの制御信号(点滅信号)を受信する。そして、点灯制御回路部210でLED2〜13を4個ずつ順番に点灯及び消灯させた後、点滅信号送信部209でLED照明器具1fに制御信号(点滅信号)を送信する。LED照明器具1fのLED電源回路103は、点滅信号受信部208でLED照明器具1eからの制御信号(点滅信号)を受信する。そして、点灯制御回路部210でLED2〜13を4個ずつ順番に点灯及び消灯させる。この後、LED照明器具1fのLED電源回路103は、点滅信号送信部209でLED照明器具1hに制御信号(点滅信号)を送信してもよいし(LED照明器具1hからLED2〜13の点灯を繰り返す)、避難誘導用LED照明器具制御装置207に送信してもよいし(避難誘導用LED照明器具制御装置207にLED2〜13の点灯及び消灯が終了したことを通知して次の制御を任せる)、何もしなくてもよい。
【0051】
図8は、点灯制御回路部210の動作を示すフローチャートである。
【0052】
通常時、点灯制御回路部210は、点灯回路部213〜215に対し、点灯信号を出力する(S11)。点灯回路部213〜215は、この点灯信号に基づき、LED2〜13を点灯させる。なお、点灯制御回路部210は、避難誘導用LED照明器具制御装置207又はその他の制御装置から、LED2〜13を点灯させるか否かを指令する信号を受信し、この信号に基づき、点灯回路部213〜215に対し、点灯信号及び消灯信号のいずれかを選択的に出力してもよい。この場合、点灯回路部213〜215は、点灯制御回路部210から点灯信号が出力されれば、LED2〜13を点灯させ、点灯制御回路部210から消灯信号が出力されれば、LED2〜13を消灯させる。
【0053】
点灯制御回路部210は、点滅信号受信部208より信号を受信すると(S12)、その信号が制御信号(点滅信号)でなければ、S11に戻る。その信号が制御信号(点滅信号)であれば、点灯回路部213に対し、点灯信号を出力する(S13)。このとき、点灯制御回路部210は、点灯回路部214,215に対し、消灯信号を出力する(点灯信号の出力を停止する)。これにより、点灯回路部213がLED2〜5を点灯させ、点灯回路部214,215がLED6〜13を消灯させた状態となる。
【0054】
点灯制御回路部210は、0.5秒経過すると、点灯回路部213に対し、消灯信号を出力する(点灯信号の出力を停止する)(S14)。そして、点灯回路部214に対し、点灯信号を出力する(S15)。これにより、点灯回路部214がLED6〜9を点灯させ、点灯回路部213,215がLED2〜5,10〜13を消灯させた状態となる。
【0055】
点灯制御回路部210は、0.5秒経過すると、点灯回路部214に対し、消灯信号を出力する(点灯信号の出力を停止する)(S16)。そして、点灯回路部215に対し、点灯信号を出力する(S17)。これにより、点灯回路部215がLED10〜13を点灯させ、点灯回路部213,214がLED2〜9を消灯させた状態となる。
【0056】
点灯制御回路部210は、0.5秒経過すると、点灯回路部215に対し、消灯信号を出力する(点灯信号の出力を停止する)(S18)。そして、点滅信号送信部209に対し、制御信号(点滅信号)を出力する(S19)。点滅信号送信部209は、この制御信号(点滅信号)を次に点滅(順次点灯)させるLED照明器具1に対して出力する。
【0057】
なお、ここでは、点灯制御回路部210が点灯回路部213〜215のそれぞれにLED2〜13を点灯させるタイミングを0.5秒間隔で設定しているが、このタイミングは0.5秒間隔に限るものではなく、点灯回路部の数、LEDの数等に応じて適宜設定すればよい。
【0058】
ここで、図6(b)に示した変形例の構成を採用する場合、LED電源回路103の基本的な動作は上記と同様であるが、LED照明器具1を点灯させる順序・タイミングは避難誘導用LED照明器具制御装置207でコントロールされるので、LED電源回路103が次に点滅(順次点灯)させるLED照明器具1に制御信号(点滅信号)を送る必要がない。そのため、図7において、点滅信号送信部209は不要となる。また、図8において、S19の処理は不要となる。
【0059】
以上のように、本実施の形態では、LEDを光源とした照明器具(LED照明器具1)に、非常時に光走行式の避難誘導装置として動作する機能を付加することで、実用性が高く、低コストで設置可能な避難誘導のためのシステムを提供することができる。従来、照明の光源としては蛍光灯が主流であったが、近年LEDの発光効率が改善されたことをきっかけに、照明の光源としてLEDが急速に普及しつつある。本実施の形態によれば、そのようなLEDを用いた照明器具で光走行による避難誘導を行うことができる。
【0060】
従来、照明の光源として主流であった蛍光灯の場合には、蛍光灯を点灯させるまで、「(フィラメント)予熱→始動電圧印加→点灯」というモードで点灯に至るため、点灯させようとしてから点灯するまでに約1〜2秒の時間を要する。また、蛍光灯には、点滅させることでフィラメントにストレスが加わり、寿命が短くなるという欠点があり、光走行のような決められたタイミングで点灯を繰り返すということに対しては不適である。これに対し、本実施の形態のように、LEDを用いた照明器具では即時点灯が可能であり、また、即時点灯、点滅による寿命低下がないため、省エネ効果や実用性の高い避難誘導のシステムを提供することができる。なお、本実施の形態において、照明器具に用いる光源はLEDに限らないが、前述したように、即時点灯、点滅による寿命低下がない光源が適している。
【0061】
実施の形態2.
本実施の形態について、主に実施の形態1との差異を説明する。
【0062】
図9は、本実施の形態に係るLED照明器具1の設置例を示す図である。
【0063】
この例において、LED照明器具1a〜1tは、図1(a)に示した、LED2〜13がライン状に配置された複数のLED照明器具1である。LED照明器具1a〜1tは、フロア(特に、大規模建築等の広いエリア)の天井等に設置されている。例えば、LED照明器具1hが設置された箇所付近から避難する人を非常口47に誘導する場合には、まず、LED照明器具1h→LED照明器具1g→LED照明器具1e→LED照明器具1fの順番にLED照明器具1のLED2〜13が順次点灯する。このとき、LED照明器具1e〜1hのそれぞれは、図4に示すように、隣接するLED照明器具1と連動して、連続的に光が走行しているようにLED2〜13を点灯させる。次に、LED照明器具1j→LED照明器具1n→LED照明器具1rの順番にLED照明器具1のLED2〜13を点灯させることになるが、LED2〜13の配置上、上記と同様な点灯をさせることはできないため、LED照明器具1j,1n,1rについてはLED2〜13のいずれか1個もしくは複数個を器具単位で順次点灯させる。これにより、LED2〜13の発する光は器具単体ではなく、隣接する器具を含めて、光が走行しているように見せて、避難する人を非常口47まで光の走行により誘導することができる。なお、この例でも、図3(a)の例と同様に、それぞれのLED照明器具1が一定の周期で点灯及び消灯を繰り返すようにすることで、繰り返しがない場合と比べて誘導の効果が高まる。
【0064】
図5(b)は、LED照明器具1の構成を示す図である。
【0065】
図5(b)に示した構成は、図9の例におけるLED照明器具1j,1n,1rのように、器具ごとにLED2〜13の一部又は全てを一度に点灯させて連動させる場合のものである。この構成は、図5(a)に示した構成と略同じであるが、LED電源回路103と基板102を接続するLEDモジュール出力配線104が1組(2本)となっている。この構成では、LED2〜13を個別に又はグループごとに点灯させる必要がないため、LEDモジュール出力配線104を1組とすることで簡易な構成を実現している。
【0066】
このように、本実施の形態では、1台のLED照明器具1のLED2〜13全てを同じグループとすることで、LED2〜13の制御を簡単に行うことができる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、これらのうち、2つ以上の実施の形態を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらのうち、1つの実施の形態を部分的に実施しても構わない。あるいは、これらのうち、2つ以上の実施の形態を部分的に組み合わせて実施しても構わない。
【符号の説明】
【0068】
1,1a〜1t,35,37 LED照明器具、2〜13,36,38 LED、47 非常口、58 有機EL照明器具、59〜62 有機EL、101 蓄電池、102 基板、103 LED電源回路、104 LEDモジュール出力配線、105 電源線、106 外部信号線、107 LED配線、200 光走行式避難誘導システム、202 煙感知器、203 自動火災報知設備受信機、205 電源、207 避難誘導用LED照明器具制御装置、208 点滅信号受信部、209 点滅信号送信部、210 点灯制御回路部、211 全波整流回路部、212 平滑回路部、213〜215 点灯回路部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発する複数の発光素子が配列された複数の照明器具であって、所定の順番に配置された複数の照明器具と、
前記複数の照明器具を前記所定の順番に点灯及び消灯させる制御装置であって、前記複数の照明器具のそれぞれを点灯させる場合、点灯させる照明器具に配列された複数の発光素子を、直前に点灯させた照明器具に近い順に所定の数ずつ点灯させる制御装置と、
を備えることを特徴とする照明システム。
【請求項2】
前記制御装置が、前記複数の照明器具のうち、前記所定の順番で1番目の照明器具に対し、当該1番目の照明器具に配列された複数の発光素子を、前記所定の順番で2番目の照明器具から遠い順に前記所定の数ずつ点灯及び消灯させるように指令する制御信号を送信し、
前記複数の照明器具が、前記制御信号を受信した場合、それぞれの照明器具に配列された複数の発光素子を、直前に点灯した照明器具に近い順に前記所定の数ずつ点灯及び消灯させた後、前記所定の順番で次の照明器具に対し、前記制御信号を送信する、請求項1の照明システム。
【請求項3】
前記所定の順番で最後の照明器具が、前記制御信号を受信した場合、当該最後の照明器具に配列された複数の発光素子を、直前に点灯した照明器具に近い順に前記所定の数ずつ点灯及び消灯させた後、前記所定の順番で1番目の照明器具に対し、前記制御信号を送信する、請求項2の照明システム。
【請求項4】
前記複数の照明器具が前記所定の数の発光素子を点灯させてから消灯させるまでの時間が、前記複数の照明器具が前記所定の数の発光素子を点灯させてから隣の前記所定の数の発光素子を点灯させるまでの時間より長い、請求項1から3いずれかの照明システム。
【請求項5】
前記複数の照明器具が前記所定の数の発光素子を点灯させてから消灯させるまでの時間が、前記複数の照明器具が前記所定の数の発光素子を点灯させてから隣の前記所定の数の発光素子を点灯させるまでの時間の整数倍である、請求項4の照明システム。
【請求項6】
前記制御装置が、前記複数の照明器具のうち、一部の照明器具を点灯及び消灯させる場合、点灯及び消灯させる照明器具に配列された複数の発光素子を、前記所定の数ずつ点灯及び消灯させる代わりに、一度に点灯及び消灯させる、請求項1から5いずれかの照明システム。
【請求項7】
前記複数の照明器具が、それぞれの照明器具に配列された複数の発光素子に電力を供給する蓄電池を有する、請求項1から6いずれかの照明システム。
【請求項8】
前記複数の照明器具が、それぞれの照明器具に配列された複数の発光素子として、複数のLED又はELを有する、請求項1から7いずれかの照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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