説明

照明器具及び同器具を用いた可視光通信システム

【課題】可視光通信を行なう照明器具において、回路電圧を安定し、低コスト化及び小型化を実現する。
【解決手段】照明器具10は、LED2から成る光源部11と、光源部11を調光する電源部3と、電源部3から光源部11へ供給される出力電流を変調させるスイッチ素子Q1と、スイッチ素子Q1と並列に接続された抵抗Rxと、スイッチ素子Q1のオンオフを制御する可視光通信信号回路部7と、これに供給する制御用電源部8と、を備える。制御用電源部8の入力端の少なくとも1端が、抵抗Rxの1端に接続されている。この構成によれば、スイッチ素子Q1がオフのときにおいても、抵抗Rxにより、光源部11が無負荷状態にならない。従って、電源部3の電源電圧及び制御用電源部8への入力電圧が安定化され、これら汎用の回路部品を用いることができ、また、回路設計が簡素で、低コスト化及び小型化を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光の光強度を変調して通信信号を重畳させて可視光通信を行なう照明器具及びこれを用いた可視光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、照明光を用いて通信信号を伝送する可視光通信機能を搭載した照明器具が知られている。この種のものとして、光源部が配設される光源部基板と、この光源部基板と電気的に接続されて光源部を点灯制御する点灯回路基板と、光源部からの出射光に通信信号を重畳する可視光通信制御基板と、を備えた照明器具がある(例えば、特許文献1参照)。この照明器具は、可視光通信制御基板を、点灯回路基板と光源部基板との間に分離可能に配置することにより、可視光通信機能の搭載器具と非搭載器具との間で設計を共通化することができる。可視光通信制御基板の制御用電源は、点灯回路基板の出力端子部から供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−34713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の照明器具においては、可視光通信制御基板における変調用のスイッチング素子がオフであるとき、光源部の固体発光素子(LED)への負荷電圧が遮断されるので、光源部への実質的な負荷が無い状態になる。ところが、光源部が無負荷状態になると、点灯回路基板における電源部の出力端子部の両端電圧が急上昇し易くなる。すなわち、商用電源ACを電源とする一般的な電源部には、入力電流の歪みを改善するために昇圧機能を有するPFC回路が用いられているので、光源部が無負荷状態になると、PFC回路の出力電圧付近まで電源部の出力端子の両端電圧が上昇する。また、電源部の出力端子部の両端電圧が上昇すると、可視光通信制御基板の制御用電源部への入力電圧も上昇し、回路損失の原因となる。このような回路損失を抑制するには、電源部や制御用電源部に耐圧性の高い高価な部品や多数の部品を用いる必要があるので、コスト高となり、また、それらを実装するために複雑な回路設計を要するので、点灯回路が大型化し、照明器具の小型化が困難になる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであり、電源部の電源電圧及び制御用電源部への入力電圧を安定化し、電源部や制御用電源部に汎用の回路部品を用いることができ、回路設計が簡素で、低コスト化及び小型化を実現できる照明器具及びこれを用いた可視光通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、照明光の光強度を変調して通信信号を重畳させて可視光通信を行なう照明器具であって、固体発光素子から成る光源部と、調光信号に基づいて前記光源部に流れる負荷電流を制御して前記光源部を調光する電源部と、前記電源部から前記光源部へ供給される出力電流を変調させるスイッチ要素と、前記スイッチ要素と並列に接続されたインピーダンス要素と、前記スイッチ要素のオンオフを制御して前記光源部の出射する照明光に変調信号を重畳させる可視光通信信号回路部と、前記可視光通信信号回路部へ電力を供給する制御用電源部と、を備え、前記制御用電源部の入力端の少なくとも1端が、前記インピーダンス要素の1端に接続されていることを特徴とする。
【0007】
上記照明器具において、前記制御用電源部の入力端が、前記インピーダンス要素の両端に接続されていることが好ましい。
【0008】
上記照明器具において、前記制御用電源部の入力端が、前記光源部の両端に接続されていることが好ましい。
【0009】
上記照明器具において、前記制御用電源部の入力端が、前記電源部の両端に接続されていることが好ましい。
【0010】
上記照明器具において、前記インピーダンス要素の両端、前記光源部の両端又は前記電源部の両端のうち、前記可視光通信信号回路部の電源電圧に最も近い電圧となる両端を選択して、前記制御用電源部の入力端に接続する比較選択回路部を有することが好ましい。
【0011】
上記照明器具において、前記スイッチ要素は、MOSFETから成り、該スイッチ要素と前記インピーダンス要素との間に、前記スイッチ要素とは別のスイッチ要素が設けられていることが好ましい。
【0012】
上記照明器具は、前記照明器具から送信される前記通信信号を受信する受信機と、を備える可視光通信システムに用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スイッチ要素がオフであるときに、スイッチ要素と並列に接続されたインピーダンス要素により光源部が無負荷状態にならないので、電源部の電源電圧及び制御用電源部への入力電圧が安定化する。また、電源部や制御用電源部に汎用の回路部品を用いることができ、回路設計が簡素で、照明器具の低コスト化及び小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る照明器具の上面図、(b)は側面図、(c)は下面図。
【図2】同照明器具に用いられる点灯回路の回路図。
【図3】(a)乃至(c)は同照明器具の光源部の負荷電流とこれに重畳される変調信号の動作波形例を示す図。
【図4】上記点灯回路の第1の変形例の回路図。
【図5】上記点灯回路の第1の変形例の別の回路図。
【図6】上記点灯回路の第2の変形例の回路図。
【図7】上記点灯回路の第3の変形例の回路図。
【図8】上記点灯回路の第4の変形例の回路図。
【図9】本発明の一実施形態に係る照明器具に用いられる点灯回路の回路図。
【図10】上記点灯回路の別の回路構成における回路図。
【図11】(a)は本発明の一実施形態に係る可視光通信システムを用いた空間を表す側面図、(b)は同システムに用いられる受信機の正面図。
【究明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態に係る照明器具について、図1乃至図3を参照して説明する。ここでは、図1(a)乃至(c)に示すように、本実施形態の照明器具10の構成例として、天井等に埋め込まれるダウンライトを示す。照明器具10は、回路基板上に複数の固体発光素子(LED2)が実装された光源部11と、照明器具10を保持すると共にLED2を点灯させる点灯回路1(後述する図2参照)を収容する本体部12と、を備える。また、天井等に形成された開口部に嵌め込まれて光源部11等を保持する枠体部13と、商用電源ACから電源供給を受けるための電源線が接続される端子台14と、枠体部13を天井等に固定するための取付バネ15と、を備える。
【0016】
図2は、照明光の強度を変調して通信信号を重畳させて可視光通信を行なうための点灯回路1の回路構成を示す。点灯回路1は、調光信号に基づいてLED2から成る光源部11に流れる負荷電流を制御して光源部11を調光する電源部3を備える。電源部3は、商用電源ACを入力とするAC/DCコンバータ31と、光源部11に直列に接続された電流検出抵抗4と、電流検出抵抗4における降下電圧分の増幅信号を出力する定電流回路部5と、光源部11への負荷電流を制御する出力制御部6と、を備える。すなわち、電源部3は、AC/DCコンバータ31の出力端間に、複数のLED2(光源部11)、後述するインピーダンス要素及び電流検出抵抗4が直列に接続された回路構成になっている。
【0017】
また、点灯回路1は、光源部11に直列に接続されたインピーダンス要素(変調用抵抗Rx)と、電源部3から光源部11へ供給される出力電流を変調させるスイッチ要素(変調用スイッチ素子Q1)と、を備える。変調用スイッチ素子Q1には、例えば、nMOSFETが用いられる。変調用抵抗Rxは、変調用スイッチ素子Q1に対して並列に接続されている。また、点灯回路1は、変調用スイッチ素子Q1のオンオフを制御して光源部11が出射する照明光に変調信号を重畳させる可視光通信信号回路部7と、可視光通信信号回路部7への電力を供給する制御用電源部8と、を備える。これら可視光通信信号回路部7及び制御用電源部8といった可視光通信用回路は、電源部3の出力端間に接続された回路から分離可能となるように、電源部3の回路基板及び光源部11の配線基板とは別の制御基板に構成されている。
【0018】
制御用電源部8の入力端の少なくとも1端は、変調用抵抗Rxの1端に接続される。本実施形態においては、制御用電源部8の入力端の両端が変調用抵抗Rxの両端に接続される。変調用抵抗Rxと制御用電源部8との間には、電流の逆流を防止するダイオードD1が配され、また、制御用電源部8と並列に平滑化のためのコンデンサC1が配される。
【0019】
AC/DCコンバータ31は、商用電源ACからの交流電圧を整流回路(不図示)により整流し、例えば、MOSFETから成るスイッチ素子Q0でスイッチングして平滑コンデンサ(不図示)で平滑化することによって直流電圧に変換する。
【0020】
光源部11のLED2には、照明器具10における所望の光色の照明光を出射できるLED、例えば、GaN系青色LEDチップにYAG系黄色蛍光体が被覆され、青色光と黄色光とを混光させて白色光を出射する白色LEDが用いられる。なお、白色LEDに限らず、赤、緑及び緑の発光色が異なる複数のLEDが適宜に組み合わされて用いられてもよく、また、光源部に有機発光材料を用いたOLEDが用いられてもよい。
【0021】
定電流回路部5は、電流検出抵抗4の一端に反転端子が接続された誤差増幅器51と、電流検出抵抗4の他端に接続された基準電位源E1と、誤差増幅器51の出力端子と反転入力端子との間に配置された位相補償回路52と、を備える。誤差増幅器51は、その反転人力端子に電流検出抵抗4の一端に接続され、非反転端子が基準電圧源E1を介して電流検出抵抗4の他端に接続される。この構成により、誤差増幅器51は、電流検出抵抗4の電圧降下分と基準電圧源E1の電源電圧との差分に応じた増幅信号を出力制御部6に出力する。位相補償回路52は、積分要素である抵抗R1及びコンデンサC2から成り、低周波領域での利得を上げる共に、高周波領域での利得を抑制しながら、帰還信号の位相を調整する。なお、電流検出抵抗4には、例えば、電源部3のMOSFET等のスイッチ素子のRon等が用いられてもよく、定電流回路部5等の光源部11を定電流制御するため構成が、電源部3に組み込まれていてもよい。
【0022】
出力制御部6は、汎用のマイコン等から成り、誤差増幅器51から入力される増幅信号に基づいて、変調用スイッチ素子Q1のオンオフを制御して、光源部11に流れる負荷電流を一定に保つ。また、出力制御部6は、例えば、リモコン等の調光操作を入力する外部装置(不図示)から送信される調光信号に基づいて、AC/DCコンバータ31のスイッチ素子Q0をスイッチングすることで、光源部11をPWM制御により調光する。すなわち、出力制御部6は、図3(a)に示すように、光源部11に負荷電流が流れる期間(オン期間T1)と、光源部11に負荷電流が流れない期間(オフ期間T2)とを交互に繰り返す。また、出力制御部6は、オン期間T1及びオフ期間T2の和である周期Tに対するオン期間T1の比率(オンデューティ比)を調光信号に対応させることによって光源部11を調光制御する。なお、上記PWM制御は、主として非通信時の調光制御の例であり、後述する可視光通信時には、図3(a)に示した上記調光信号とは異なる調光制御信号に変調信号を重畳させるものであってもよい。
【0023】
可視光通信信号回路部7は、汎用のマイコン等から成り、照明器具10の外部から入力された2値の情報信号に応じて、図3(b)に示すように、光源部11の光強度を変調させて照明光に重畳する所定の変調信号を生成して変調用スイッチ素子Q1に出力する。変調信号の周波数は、調光信号の一周期内に複数の波形が含まれるように、少なくとも調光信号の周波数よりも高く設定される。制御用電源部8は、DC/DCコンバータを備え、電源部3(本実施形態では変調用抵抗Rxの両端電圧)からの直流電圧を、可視光通信信号回路部7に適した所定の電圧値の直流電圧に変換する。
【0024】
この構成において、可視光通信信号回路部7は、制御用電源部8からの給電を受けて、所定の変調信号に基づいて変調用スイッチ素子Q1のオンオフを制御することによって、変調用抵抗Rxが光源部11に接続されるか否かの切り替えを行なう。具体的には、変調用スイッチ素子Q1がオンのとき、光源部11には変調用抵抗Rxを介さずに負荷電流I1が流れる。一方、変調用スイッチ素子Q1がオフのとき、光源部11には変調用抵抗Rxを介して負荷電流I2が流れる。そのため、図3(c)に示すように、変調用スイッチ素子Q1がオンのときの負荷電流I1の電流値は、変調用スイッチ素子Q1がオフのときの負荷電流I2の電流値よりも大きくなる。このように、光源部11に流れる負荷電流の大きさを変化させることで、光源部11の光強度に変調を付与し、光源部11の照明光に通信信号を重畳させることができる。
【0025】
そして、変調用スイッチ素子Q1がオフのときにおいても、変調用スイッチ素子Q1と並列に接続されている変調用抵抗Rxが存在しているので、電源部3から光源部11への負荷電圧が遮断されない。そのため、点灯回路1の回路上で光源部11が無負荷状態にならず、電源部3の電源電圧が上昇することもない。また、変調用抵抗Rxの一端に制御用電源部8の入力端が接続されているので、制御用電源部8の入力端の電圧が、光源部11に流れる電流と変調用抵抗Rxによって定まる電圧に抑えられる。例えば、制御用電源部8の出力電圧が5Vであり、光源部11に流れる電流が500mAであれば、変調用抵抗Rxを10Ωにすれば、制御用電源部8と変調用抵抗Rxとが同等の電圧となり、電圧差が少なくなるので、通信信号の重畳時の電力損失も抑えられる。従って、電源部3の電源電圧及び制御用電源部8への入力電圧を安定化すると共に、回路損失を低減することができる。また、電源部3や制御用電源部8に、耐圧性の高い高価な部品や多数の部品ではなく、汎用の安価な回路部品を用いることができ、しかも回路設計が簡素なので、点灯回路1及びこれを用いた照明器具10の低コスト化及び小型化を実現することができる。
【0026】
次に、上述した実施形態の第1の変形例について、図4及び図5を参照して説明する。この第1の変形例における点灯回路1は、電源部3からの電流を光源部11と並列に接続された抵抗R2,R3へ分流させる構成を有する。また、図4に示す構成においては変調用抵抗Rxが抵抗R2,R3と直列に、図5に示す構成においては変調用抵抗Rxが光源部11と直列に接続されている。いずれの構成においても、変調用スイッチ素子Q1は、抵抗R2,R3と直列に、変調用抵抗Rxと並列に接続されている。他の構成は、上述した実施形態と同様である。
【0027】
これら第1の変形例の構成によれば、変調用スイッチ素子Q1と並列に接続されている変調用抵抗Rx、及び抵抗R1,R2から成る分流回路が存在しているので、点灯回路1の回路上で電源部3の両出力端間が無負荷状態にはならない。そのため、上述した実施形態と同様に、変調用スイッチ素子Q1がオフのときにおいても、電源部3の電源電圧が上昇することもなく、上述した実施形態と同様の効果が得られる。また、電源部3からの電流を抵抗R2,R3から成る分流回路へ分流させるので、光源部11が開放した場合でも、電源部3からの電流経路が確保される。このとき、変調用スイッチ素子Q1への印加電圧は、抵抗R2,R3の負荷電圧分だけ小さくなるので、変調用スイッチ素子Q1に負荷されるストレスを低減することができる。
【0028】
次に、上述した実施形態の第2の変形例について、図6を参照して説明する。この第2の変形例における点灯回路1は、可視光通信信号回路部7に電力を供給する制御用電源部8の入力端が、光源部11の両端に接続されている。変調用スイッチ素子Q1のオンオフによる変調時においても、光源部11への負荷電流の電流値は2値なので、定電流回路から成る電源部3から供給される平均電流は一定であり、光源部11に流れる平均電流も一定になる。従って、第2の変形例の構成によれば、制御用電源部8の入力端を一定の平均電流が流れる光源部11の両端に接続することにより、制御用電源部8において安定した入力電圧が得られる。
【0029】
次に、上述した実施形態の第3の変形例について、図7を参照して説明する。この第2の変形例における点灯回路1は、可視光通信信号回路部7に電力を供給する制御用電源部8の入力端が、電源部3の両端に接続されている。上記第2の変形例で述べた通り、定電流回路から成る電源部3から供給される平均電流は一定である。従って、第3の変形例の構成によれば、制御用電源部8の入力端を一定の平均電流を供給する電源部3の両端に接続することにより、制御用電源部8において安定した入力電圧が得られる。
【0030】
次に、上述した実施形態の第4の変形例について、図8を参照して説明する。この第2の変形例における点灯回路1は、変調用抵抗Rxの両端、光源部11の両端又は電源部3の両端のうち、可視光通信信号回路部7の電源電圧に最も近い電圧となる両端を選択して、制御用電源部8の入力端に接続する比較選択回路部9を有する。光源部11は、LED2の点灯状態や温度等により、その両端電圧が変化することがある。また、電源部3の両出力端間の回路部内に不具合等が発生すれば、その両端電圧が変化することがある。第4の変形例の構成によれば、制御用電源部8の入力端を、変調用抵抗Rx、光源部11又は電源部3の両端のうち、可視光通信信号回路部7の電源電圧に最も近い電圧となる両端に接続することにより、制御用電源部8において安定した入力電圧が得られる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態に係る照明器具について、図9及び図10を参照して説明する。本実施形態の照明器具10に用いられる点灯回路1は、変調用スイッチ素子Q1がnMOSFETから成り、変調用スイッチ素子Q1と変調用抵抗Rxとの間に、変調用スイッチ素子Q1とは別のスイッチ素子Q2が設けられている。
【0032】
上述したように、可視光通信信号回路部7及び制御用電源部8といった可視光通信用回路は、電源部3の出力端間に接続された回路から分離可能となるように、電源部3の回路基板及び光源部11の配線基板とは別の制御基板に構成されている。つまり、照明器具10は、可視光通信機能を付与する制御基板をユーザが後付けすることができる。しかしながら、ユーザがこの制御基板を、電源部3の回路基板及び光源部11の配線基板に対して間違えて、逆接続してしまうことがある。このとき、変調用スイッチ素子Q1としてMOSFETが用いられると、MOSFETは内部ダイオードを有するので、逆接続した場合にこの内部ダイオード側に電流が流れ、変調用抵抗Rx側に電流が流れない。そのため、光源部11の付加電流が変調用抵抗Rxによって設定される変調率(変調幅)にならず、可視光通信に必要な変調率(変調幅)が得られない。
【0033】
そこで、図9に示す構成においては、変調用スイッチ素子Q1と変調用抵抗Rxとの間に、nMOSFETから成るスイッチ素子Q2が設けられている。スイッチ素子Q2のゲートは、抵抗R4及び逆流防止用のダイオードD2を介して制御用電源部8に接続されている。また、抵抗R4と光源部11との間、及び抵抗R4と変調用スイッチ素子Q1との間にも、逆流防止用のダイオードD3,D4が設けられている。この構成においては、可視光通信機能を付与する制御基板が正しく接続され、スイッチ素子Q2のゲートに正電圧がかかった状態でなければ、変調用スイッチ素子Q1と変調用抵抗Rxとの間が接続されない。
【0034】
また、図10に示す構成においては、変調用スイッチ素子Q1のドレインと変調用抵抗Rxとの間に、pMOSFETから成るスイッチ素子Q2が設けられている。この構成においては、変調用スイッチ素子Q1のゲートに正電圧が、スイッチ素子Q2のゲートに負電圧がかかった状態でなければ、変調用スイッチ素子Q1は通電しない。
【0035】
つまり、本実施形態においては、可視光通信機能を付与する制御基板が正しく接続されなければ、変調用スイッチ素子Q1が実質的に機能せず、照明光に通信信号を重畳させること自体ができない。つまり、ユーザは、照明器具10に可視光通信機能を付与する制御基板を後付けし、通信信号が何ら送信されないときに、制御基板が正しく接続されていないことを認知することができる。
【0036】
次に、本発明の一実施形態に係る可視光通信システムについて、図11を参照して説明する。本実施形態の可視光通信システムは、上述したいずれかの実施形態の照明器具10と、照明器具10から送信される通信信号を受信する受信機20と、から構成される。図11(a)に示すように、照明器具10は天井Cに埋め込まれ、光源部11から床F方向の所定範囲に照明光Lを照射する。
【0037】
受信機20は、例えば、図11(b)に示すような携帯端末から成り、照明器具10から照射される照明光を受光するフォトダイオード等から成る受光部21を備える。また、受信機20は、例えば、液晶ディスプレイ等から成る表示部22と、操作部23と、受光部21で受光しか照明光Lの光強度に基づいて通信信号を読み取る信号処理回路(不図示)と、を備える。なお、表示部22にタッチパネル機能を有するディスプレイを用いれば、操作部23の機能をこの表示部22において実現することができる。また、受光部21は、CMOSセンサから成るカメラであってもよい。すなわち、受信機20には、一般的な携帯電話に、通信信号を読み取る信号処理用のソフトウェアをインストールしたものを用いることができる。なお、受信機20は上記携帯端末に限定されず、他の構成から成る受信機であってもよい。
【0038】
この構成によれば、図11(a)に示したように、ユーザUは、受信機20を用いれば、照明器具10の照明範囲内において照明器具10からの照明光に重畳された通信信号を受信することができる。通信信号には、位置情報、画像情報及び音声情報等が含まれ、ユーザUは、受信機20を用いてこれら通信信号に含まれる情報を表示部22に表示させる等により得ることができる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。例えば、制御用電源部8には、2次電池、及びAC/DCコンバータ31の出力により2次電池を充電させる充電回路から成るバックアップ電源(不図示)が設けられてもよい。また、インピーダンス要素として、変調用抵抗Rxに加えてLEDが用いられてもよく、このLEDを、例えば、上記バックアップ電源からの給電により点灯させれば、災害時等により停電が発生して商用電源ACを喪失したときの補助光源として機能させることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 照明器具
11 光源部
2 LED(固体発光素子)
20 受信機
3 電源部
7 可視光通信信号回路部
8 制御用電源部
9 比較選択回路部
Q1 変調用スイッチ素子(スイッチ要素、MOSFET)
Q2 変調用スイッチ素子とは別のスイッチ素子(別のスイッチ要素、MOSFET)
Rx 変調用抵抗(インピーダンス要素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光の光強度を変調して通信信号を重畳させて可視光通信を行なう照明器具であって、
固体発光素子から成る光源部と、調光信号に基づいて前記光源部に流れる負荷電流を制御して前記光源部を調光する電源部と、前記電源部から前記光源部へ供給される出力電流を変調させるスイッチ要素と、前記スイッチ要素と並列に接続されたインピーダンス要素と、前記スイッチ要素のオンオフを制御して前記光源部の出射する照明光に変調信号を重畳させる可視光通信信号回路部と、前記可視光通信信号回路部へ電力を供給する制御用電源部と、を備え、
前記制御用電源部の入力端の少なくとも1端が、前記インピーダンス要素の1端に接続されていることを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記制御用電源部の入力端が、前記インピーダンス要素の両端に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記制御用電源部の入力端が、前記光源部の両端に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項4】
前記制御用電源部の入力端が、前記電源部の両端に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項5】
前記インピーダンス要素の両端、前記光源部の両端又は前記電源部の両端のうち、前記可視光通信信号回路部の電源電圧に最も近い電圧となる両端を選択して、前記制御用電源部の入力端に接続する比較選択回路部を有することを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項6】
前記スイッチ要素は、MOSFETから成り、該スイッチ要素と前記インピーダンス要素との間に、前記スイッチ要素とは別のスイッチ要素が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の照明器具。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の照明器具と、前記照明器具から送信される通信信号を受信する受信機と、を備えることを特徴とする可視光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−110634(P2013−110634A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254930(P2011−254930)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】