説明

照明器具

【課題】 本発明は、簡単な構成により、第一の光源から発生する熱を有効利用して、第一の光源の消灯後にも第二の光源を長時間に亘って弱く点灯させることができるようにした照明器具を提供することを目的とする。
【解決手段】 発熱を伴う第一の光源12と、この第一の光源を冷却するための放熱手段15と、を有する照明器具10において、上記放熱手段に隣接して配置され、上記放熱手段からの熱を蓄える蓄熱部材16と、上記蓄熱部材に隣接して配置され、上記蓄熱部材で蓄えられた熱を利用して発電する熱電変換手段17と、上記熱電変換手段で発生した電力により点灯する第二の光源13と、を備えるように、照明器具10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明器具に関し、特に消灯後も弱い光を出す補助光源の機能を備えた照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅の寝室等において、就寝後もある程度の視界を確保するために、弱い光を出す所謂常夜灯が知られている。
しかしながら、常夜灯は、所謂ナツメ球等の小型電球を使用している。このため、例えば就寝から起床までの長い時間に亘って点灯させるために、電力の消費が無視できない。
常夜灯として、例えばLED等を使用したものもあるが、LED等自体の消費電力は小型電球と比較して少なくなる。しかしながら、駆動回路での電力消費もあることから、同様に電力消費が無視できないことになる。
【0003】
また、常夜灯としての電力を消費しないようにした照明器具として、例えば特許文献1には、部分的に蓄光顔料を塗布した照明器具が開示されている。
しかしながら、蓄光顔料による発光時間は、一般に30分から一時間程度であり、常夜灯の機能としては不十分である。
【0004】
さらに、照明器具に限らず、光源を発光させる場合には、光と共に熱が発生することが知られており、光源からの熱を再利用する試みも多数行なわれている。
例えば特許文献2においては、装置の使用により発熱する発熱部材(光源装置)と、この発熱部材を冷却するための設けられた冷却ファンと、装置内の発熱の影響を受けない部位に配置され、周囲に放熱する放熱フィンと、光源装置の発熱を受けて吸熱する吸熱フィンと、ヒートパイプを介して吸熱フィンと放熱フィンに挟装され、その温度差により発電する熱電変換素子と、熱電変換素子で得られた電力を冷却ファンに供給する回路とを備えた電子装置が開示されている。
【0005】
このような構成の電子装置によれば、冷却ファンの駆動により、電子装置内を所定の方向に流れる冷却風が発生する。この冷却風の上流側に、光源装置の発熱の影響を受けない位置に放熱フィンが配置されるので、放熱フィンでは常に電子装置の外気温度に近い温度の冷却風によって比較的低い温度が維持される。そして、これがヒートパイプを介して熱電変換素子の上面側に伝達される。
これに対して、光源装置を通過する冷却風は、光源装置との熱交換により高い温度に加熱され、その直後に吸熱フィンを通過する。これにより、吸熱フィンは冷却風と熱交換を行なうことにより、熱エネルギーを吸収し、ヒートパイプを介して熱電変換素子の下面側に伝達される。
従って、熱電変換素子は、双方のヒートパイプを介して吸熱フィンと放熱フィンの熱が伝達される。その際、吸熱フィンと放熱フィンの温度差が大きいほど、多くの電力を発電することになる。
そして、電子装置の電源オン時に、熱電変換素子が発生する電力を駆動電力に加算して、冷却ファンの駆動に利用することによって、冷却ファンの駆動電力、そして電子装置の消費電力を低減することができる。
【0006】
ここで、高温側となる吸熱フィン及びこれに関連するヒートパイプに関して、熱電変換素子との間に、さらに蓄熱部材を挟装して、光源装置からの発熱を蓄えて熱電変換素子に連続的に伝達し続けるようにすれば、光源装置からの熱をより効率的に熱電変換素子に伝達することができ、発電効率そして冷却ファンによる光源装置の冷却効果も向上することになる。
さらに、吸熱フィンから蓄熱部材までの熱伝達路の少なくとも一部を断熱部材により被覆し、吸熱フィンで得られた熱をより効率的に蓄熱部材まで伝達することにより、蓄熱部材における蓄熱効果をより一層向上させることができ、発電効率そして冷却ファンによる光源装置の冷却効果も向上する。
【0007】
また、特許文献3には、本体と、本体に収納される光源と、給電時に蓄電池を充電する充電回路と、非常時に蓄電池により光源を点灯制御する点灯回路と、本体に収納され熱交換媒体により光源から吸熱する熱交換手段と、熱交換手段を外気から熱的に遮断するように本体に設けられた断熱部材とを具備する非常用照明装置が開示されている。
このような構成の非常用照明装置によれば、熱交換手段及び断熱部材によって、光源の温度上昇を抑制することにより、光源の発光効率を向上させて、非常時に所定の照明を行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭63−174116号公報
【特許文献2】特開2007−094037号公報
【特許文献3】特開2006−054077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献2による電子装置においては、発熱部材である光源装置の作動中に、光源装置から発生する熱を、吸熱フィンで吸熱して熱電変換素子により電力を発生させて、冷却ファンに供給する。これにより、光源装置からの熱を、冷却ファンの駆動電力の一部として再利用して、冷却ファンの駆動電力を低減することはできる。
しかしながら、電子装置の停止後には、光源装置の温度はすぐに低下してしまうため、冷却ファンの駆動電力として利用することはできず、例えばこの電力を常夜灯の電源として利用することは不可能である。
【0010】
特許文献3による非常用照明装置においては、通常時、すなわち非常用照明装置の光源を点灯しない時に、充電回路により蓄電池を充電する必要があり、このための電力が必要になる。
また、非常用照明装置自体は、通常時に点灯するための光源を備えていない。このため、別途通常時用の照明装置を用意する必要があると共に、この通常時用の照明装置の光源から発生する熱を利用することはできず、廃熱が無駄になってしまう。
さらに、充電回路を駆動するための電源としては、例えば100Vの一般商用電源から光源を点灯するために必要な電圧まで降圧する電源装置、例えばAC−DCスイッチング電源装置が必要になる。従って、このような電源装置のサイズが大きいことから、装置全体が大型になってしまう。
【0011】
本発明は、以上の点から、簡単な構成により、第一の光源から発生する熱を有効利用して、第一の光源の消灯後にも第二の光源を長時間に亘って弱く点灯させることができるようにした照明器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、本発明の第一の態様によれば、発熱を伴う第一の光源と、この第一の光源を冷却するための放熱手段と、を有する照明器具において、上記放熱手段に隣接して配置され、上記放熱手段からの熱を蓄える蓄熱部材と、上記蓄熱部材に隣接して配置され、上記蓄熱部材で蓄えられた熱を利用して発電する熱電変換手段と、上記熱電変換手段で発生した電力により点灯する第二の光源と、を備えていることを特徴とする、照明器具により、達成される。
【0013】
この第一の態様では、第一の光源は、外部から駆動電力を供給されて点灯し、点灯に伴って熱を発生する。第一の光源からの熱は、放熱手段により放熱される。これにより、蓄熱部材は、放熱手段からの熱を受けて蓄熱する。
そして、熱電変換手段は、蓄熱手段からの熱を利用して発電し、第二の光源を点灯させる。
【0014】
この場合、第一の光源から発生する熱は、放熱手段から蓄熱部材に伝達され、蓄熱された後、熱電変換手段により第二の光源を駆動するために利用される。従って、第一の光源の駆動電力のうち熱に変換される損失分が有効利用されることになる。
また、第二の光源を駆動するための電力は、すべて熱電変換手段により供給されるので、第二の光源を駆動するために外部から電力を供給する必要がない。
【0015】
さらに、第二の光源の駆動電力は、蓄熱部材からの熱を熱電変換手段により変換することにより供給される。従って、第一の光源が消灯した後も、蓄熱部材に蓄えられた熱により、第二の光源が点灯し続けることになる。これにより、第二の光源が例えば常夜灯としての機能を果たすことができる。
【0016】
本発明の第二の態様による照明器具は、前記第一の態様による照明器具において、上記第二の光源が、上記第一の光源より消費電力が小さいことを特徴とする。
この第二の態様では、第一の光源で発生した熱を蓄熱部材に蓄えて、この蓄熱部材からの熱を熱電変換素子により電力に変換して第二の光源を点灯させる際に、第二の光源を点灯させるために十分な電力を供給することができる。
【0017】
本発明の第三の態様による照明器具は、前記第一または第二の態様による照明器具において、上記第一の光源が、白熱灯,放電灯またはLEDであることを特徴とする。
この第三の態様では、第一の光源として白熱灯,放電灯またはLEDを使用することにより、第一の光源を例えば住宅用照明器具や車両用前照灯等の車両用灯具を含む広い意味での照明器具の主光源とすることができる。
【0018】
本発明の第四の態様による照明器具は、前記第一から第三の何れかの態様による照明器具において、上記第二の光源がLEDであることを特徴とする。
この第四の態様では、第二の光源としてLEDを使用することにより、第二の光源が第一の光源より消費電力の小さい光源となる。従って、第一の光源で発生する熱により十分に且つ長時間に亘って第二の光源を点灯させることができる。これにより、第二の光源として、住宅用照明器具における常夜灯あるいは車幅灯,データイムランニングランプ等の補助光源とすることができる。
【0019】
本発明の第五の態様による照明器具は、前記第一から第四の何れかの態様による照明器具において、上記蓄熱部材が、上記第一の光源の温度に特有の吸熱ピークを有する材料から構成されていることを特徴とする。
この第五の態様では、蓄熱部材が放熱手段を介して第一の光源で発生する熱をより効率的に吸熱することができる。
【0020】
本発明の第六の態様による照明器具は、前記第一から第五の何れかの態様による照明器具において、上記蓄熱部材が、第一の光源及び放熱手段と、上記熱電変換手段とに対して、熱的な接続を選択的に切り替えられることを特徴とする。
この第六の態様では、第一の光源の点灯時には、第一の光源及び放熱手段と蓄熱部材との熱的接続を維持し、且つ蓄熱部材と熱電変換手段との間の熱的接続を切り離して、蓄熱部材から熱電変換手段への熱の流れを遮断する。これにより、第一の光源と第二の光源の同時点灯を回避することができると共に、蓄熱部材への吸熱がより効果的に行なわれることになる。
また、第一の光源の消灯時には、第一の光源及び放熱手段と蓄熱部材との熱的接続を遮断し、且つ蓄熱部材と熱電変換手段との間の熱的接続を維持して、蓄熱部材から第一の光源及び放熱手段への熱の逆流を遮断すると共に、熱電変換手段への熱の伝達を可能にする。
これにより、蓄熱部材から熱電変換手段への熱の伝達が第二の光源の点灯時のみに行なわれるので、蓄熱部材に蓄えられた熱が効率的に利用されることになり、第二の光源をより長時間点灯することができる。
【0021】
本発明の第七の態様による照明器具は、前記第一から第六の何れかの態様による照明器具において、上記熱電変換手段が、熱エネルギーを直接に電気エネルギーに変換する熱電素子から構成されていることを特徴とする。
この第七の態様では、熱電変換手段として、熱エネルギーを直接に電気エネルギーに変換する熱電素子を使用することができる。
【0022】
本発明の第八の態様による照明器具は、前記第一から第六の何れかの態様による照明器具において、上記熱電変換手段が、熱エネルギーを運動エネルギーに変換する第一の変換手段と、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する第二の変換手段とから構成されていることを特徴とする。
この第八の態様では、第一の手段として、熱音響エンジンやスターリングエンジンを使用することができると共に、第二の手段として、電磁コイルや圧電素子を使用して、電気エネルギーを取り出すことができる。
【0023】
本発明の第九の態様による照明器具は、前記第六から第八の何れかの態様による照明器具において、上記熱電変換手段として、互いに変換効率の異なる複数種類の熱電変換手段を備えており、
各熱電変換手段が選択的に上記蓄熱部材に熱的に接続されることを特徴とする。
この第九の態様では、第一の光源の発熱度が変化する場合に、この第一の光源の発熱度に応じて、適宜の変換効率を有する熱電変換手段が選択され、蓄熱部材に対して熱的に接続される。これにより、第一の光源の発熱度に対応して、熱電変換手段が効率的に発電を行なうことができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、簡単な構成により、第一の光源から発生する熱を有効利用して、第一の光源の消灯後にも第二の光源を長時間に亘って弱く点灯させることができるようにした照明器具が提供され得ることになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による照明器具の第一の実施形態の構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1の照明器具を示す概略断面図である。
【図3】図1の照明器具の構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】図3の構成に対応する従来の照明器具の構成例を示すブロック図である。
【図5】各種熱電変換手段における温度差に対する出力を示すグラフである。
【図6】本発明による照明器具の第二の実施形態の構成を概略的に示すブロック図である。
【図7】本発明による照明器具の第三の実施形態の構成における(A)蓄熱時,(B)切離し時及び(C)発電時の状態をそれぞれ示す概略断面図である。
【図8】本発明による照明器具の第四の実施形態の構成を示す概略斜視図である。
【図9】本発明による照明器具の第五の実施形態の構成を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の好適な実施形態を図1〜図9を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0027】
図1から図3は、本発明による照明器具の第一の実施形態の構成を示している。
図1及び図2において、照明器具10は、LED屋内照明器具であって、筐体11と、筐体11の下面に露出した主光源(第一の光源)12及び補助光源(第二の光源)13と、駆動回路14と、放熱部材15,蓄熱部材16,熱電変換手段17と、から構成されている。
【0028】
上記筐体11は、例えば金属,樹脂等から成り、上端が閉じた中空円筒状に形成されている。
そして、上記筐体11は、その下面に主光源12及び補助光源13を支持すると共に、内部に駆動回路14,放熱部材15,蓄熱部材16及び熱電変換手段17を包囲し保護している。
【0029】
上記主光源12は、図2に示すように、基板12aの下面に実装された複数個の大出力のパワーLED12bから構成されている。
これらのパワーLED12bは、駆動時に下方に向かって例えば白色光の主照明光を照射するように、基板12aに取り付けられ、筐体11の下面から露出している。
上記主光源12は、パワーLEDに限定されることなく、発熱を伴う光源であればよく、例えば白熱灯,放電灯等も使用することができる。
【0030】
上記補助光源13は、図2に示すように、 基板13aの下面に実装された少なくとも一つのLED13bから構成されている。
このLED13bは、駆動時に下方に向かって例えば白色光の弱い補助照明を照射するように、基板13aに取り付けられ、筐体11の下面から露出している。
尚、補助光源13は、主光源12より消費電力が小さく、後述する熱電変換手段17の発電量に適合した消費電力の光源、特に消費電力の少ないLEDを使用することが好ましい。
【0031】
尚、上述した主光源12のパワーLED12b及び補助光源13のLED13bは、いずれも白色光を発するものが使用されているが、これに限らず、他の色の光を発するものであってもよい。その際、パワーLED12bとLED13bは、互いに異なる色の光を発するものでもよい。
【0032】
上記駆動回路14は、公知の構成の駆動回路であって、外部から供給される例えば一般商用電源等からの駆動電力により、あるいは筐体11内に内蔵された電池等からの駆動電力により、主光源12のパワーLED12bを例えばパルス駆動し、発光させる。
尚、上記駆動回路14は、上記主光源12と共に、広い意味での主光源を構成するものである。
【0033】
上記放熱部材15は、上記主光源12の基板12aの上面に貼着等により熱的に接続された例えばTIM等のシート状の放熱材から構成されており、パワーLED12bで発生する熱を放熱して、パワーLED12bを冷却する。
ここで、上記放熱部材15は、放熱材から構成されているが、これに限らず、例えば液冷式,冷却ファン等の強制空冷式,シートシンク等の自然空冷式あるいは電子冷却式等の各種放熱手段を使用することが可能である。
【0034】
上記蓄熱部材16は、上記放熱部材15からの熱を受けて吸熱し、蓄えるものであって、例えば炭化カルシウムや酸化マグネシウム等の化学蓄熱材、氷や酢酸ナトリウム水和物等の潜熱蓄熱材、あるいは水やコンクリート等の顕熱蓄熱材等を使用することができる。
【0035】
上記熱電変換手段17は、例えばゼーベック効果を利用して熱エネルギーを直接に電気エネルギーに変換する熱電素子であって、二種類の異種半導体を接合して、その両端の温度差に基づいて起電力を発生させるものである。
上記熱電素子に使用される半導体は、それぞれに効率が高い温度領域を有している。例えばLEDの使用状態の温度領域である100℃付近では、BiTe系の半導体が最も高い効率を有している。
【0036】
本発明による照明器具は以上のように構成されており、以下のように動作する。
即ち、駆動回路14が駆動電力を主光源12のパワーLED12bに供給する。これにより、主光源12のパワーLED12bが発光する。パワーLED12bから出射した光は、筐体11の下面から下方に向かって主照明光として照射される。
【0037】
その際、パワーLED12bは、駆動に伴って熱を発生する。この熱は、放熱部材15を介して蓄熱部材16に伝達され、蓄熱部材16で蓄えられる。
ここで、熱電変換手段17は、蓄熱部材16からの熱に基づいて起電力を発生し、その出力電力が補助光源13のLED13bに供給される。これにより、補助光源13のLED13bが発光する。LED13bから出射した光は、同様に筐体11の下面から下方に向かって補助照明光として照射される。
このとき、主光源12及び補助光源13が同時点灯することになるが、補助光源13の発光光量は、主光源12の発光光量と比較して小さいため、同時点灯による不都合はない。
【0038】
その後、駆動回路14が作動停止すると、主光源12のパワーLED12bは、駆動電力がなくなるので、消灯する。
このとき、蓄熱部材16には熱が蓄えられているので、熱電変換手段17は、引き続き蓄熱手段16からの熱に基づいて起電力を発生し、補助光源13に対して電力を供給し続ける。
これにより、補助光源13のLED13bは、主光源12の消灯後も、蓄熱部材16に発電に必要な熱が残っている限りは、補助照明光を照射し続けることになる。従って、補助光源13は、外部からの駆動電力の供給がなくても、長時間に亘って所謂常夜灯として機能することになる。
【0039】
これに対して、図4に示すように、蓄熱部材16がない照明器具18においては、主光源12が消灯すると、補助光源13も消灯してしまう。従って、補助光源13を常夜灯としては機能させることは不可能である。また、特に主光源としてLEDを使用する場合には、以下のような問題がある。
【0040】
ここで、熱電変換手段17で使用される熱電素子について考察する。
熱電素子は、所謂カルノーサイクルによる物理現象を応用したものである。
カルノーサイクルでは、図5にて符号Aで示すように、温度差ΔTが大きい程、熱効率ηが大きい。従って、熱電素子においても同様に、図5にて符号Bで示すように、温度差ΔTが大きい程、大きな出力電力が得られることになる。
ところで、一般にLED、特に主光源12で使用されるようなパワーLEDにおいては、それ自体の発熱によって性能及び寿命が低下してしまうという問題がある。従って、LED自体を冷却して適正な使用温度に保持する必要がある。適正な使用温度としては、性能と寿命の観点から、100〜150℃程度を目安としてLEDの設計が行なわれている。
例えば常温(25℃程度)で使用されるLED製品においては、LEDと外気との温度差ΔTは、たかだか125℃程度になってしまう。
そして、図5において、温度差ΔTが100℃程度、たかだか125℃では、熱電素子による高い熱電変換効率を期待することは殆ど見込めない。
このため、主光源12のパワーLED12bからの熱を放熱部材15を介して蓄熱部材16に蓄えることにより、より大きい温度差ΔTが得られる。これにより、パワーLED12bの発熱をより高い熱電変換効率で有効利用することができるのである。
【0041】
他方、蓄熱部材16として使用される蓄熱材の蓄熱性能は、その熱容量に因る。熱容量は比熱と密度と体積の積であるから、各パラメータが大きい程、蓄熱量が増大する。従って、顕熱蓄熱は熱容量に因るため、蓄熱性能を高めるためには、大きな体積の蓄熱材が必要になる。このため、大きさや重量があまり問題にならない照明器具においては、兼熱蓄熱は有用である。
【0042】
さらに、蓄熱材のなかには、ある温度領域の熱を選択的に吸熱・放熱する性質を有する蓄熱材がある。特に、化学蓄熱材及び潜熱蓄熱材には、特有の反応熱を有する蓄熱材が多い。
従って、前述した100〜150℃のLEDの使用温度領域に、吸熱ピークを有する蓄熱部材を使用することが好ましい。これにより、蓄熱部材16により主光源12のパワーLED12bからの熱を選択的に吸熱することによって、より高い吸熱効率、そして熱電変換手段17による熱電変換効率が得られることになる。
【0043】
例えば補助光源13のLED13bの消費電力を0.5Wとすると、日本人の平均睡眠時間である約7.5時間だけ補助光源13を点灯させるために必要な熱量は、13,397Jである。これに対して、蓄熱部材16の体積を0.02m3 とすると、758545J/m3 の蓄熱密度を有する蓄熱部材16を選択すればよい。
前述した潜熱蓄熱材,化学蓄熱材の蓄熱密度はGJ/m3 のオーダーであるので、蓄熱材の選択の幅が広い。特に、LEDの温度領域である100℃程度の温度領域での使用においては、潜熱蓄熱材としては、パラフィン,キシリトール,エリスリトール(動作温度60〜120℃)が、また化学蓄熱材としては、酸化マグネシウム,塩化カルシウム(動作温度100〜250℃)が望ましい。
【0044】
図6は、本発明による照明器具の第二の実施形態の構成を示している。
図6において、照明器具20は、図1から図3に示した照明器具10において、熱電変換手段17として、熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換する熱電素子ではなく、間接的に、即ち熱エネルギーを運動エネルギーに変換する第一の変換手段21と、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する第二の変換手段22と、から構成されている点で異なる構成になっている。
【0045】
第一の変換手段21としては、例えば熱音響エンジンやスターリングエンジンを使用することができる。
熱音響エンジンは、熱エネルギーから音波エネルギーに変換する装置であって、加熱により気体の振動運動が激しくなり、その中で筐体固有の共鳴点と一致した波長が音波エネルギーとして出力される。ここで、筐体内部には、気体とスタックと呼ばれる熱交換器が配置されていて、スタックに温度差をもたせると、この温度差に応じて音波即ち運動エネルギーが発生する。
熱音響エンジンの場合、その出力は、図5にて符号Cで示すように、熱電素子より熱効率ηが高い。
【0046】
また、スターリングエンジンは、気体の膨張・圧縮を利用して熱エネルギーを運動エネルギーに変換する外燃機関であって、シリンダー内部にディスプレーサと、このディスプレーサに連動して動作するパワーピストンを備えた構造を有している。
スターリングエンジンの場合、その出力は、図5にて符号Dで示すように、熱音響エンジンより熱効率ηが低いものの、熱電素子より熱効率ηが高い。
【0047】
第二の変換手段22としては、例えば電磁コイル,圧電素子等を使用することができる。
電磁コイルの場合、第一の変換手段21により発生した運動エネルギーにより動作する可動部材、例えばスターリングエンジンのパワーピストンに磁石を設置して、パワーピストンの往復運動に伴って、磁石を電磁コイルに対して往復運動させる。これにより、電磁誘導によって、電磁コイルに交流電流として電気エネルギーが発生する。
圧電素子の場合、第一の変換手段21により発生した運動エネルギーにより、圧電素子に圧力を印可する。これにより、圧電素子から圧力に対応する電力が出力される。
【0048】
このような構成の照明器具20によれば、図1から図3に示した照明器具10と同様にして、蓄熱部材16に蓄えられた熱に基づいて、熱電変換素子17が熱エネルギーを電気エネルギーに変換して、補助光源13のLED13bを駆動する。これにより、補助光源13が主光源12の消灯後も長時間に亘って点灯し続ける。
このとき、補助光源13のLED13bを駆動するために、外部から電力を供給する必要はなく、消費電力が著しく低減されることになる。
【0049】
図7は、本発明による照明器具の第三の実施形態の構成を示している。
図7において、照明器具30は、図1から図3に示した照明器具10と比較して、以下の点で異なる構成になっている。
即ち、照明器具30においては、蓄熱部材16及び熱電変換手段17が、それぞれ両側に張り出した支持部16a,17aを備えている。
固定配置された主光源12(または筐体11)に対して蓄熱部材16の支持部16aが垂直方向に移動可能に第一の移動手段31により支持されている。また、蓄熱部材16の支持部16aに対して熱電変換手段17の支持部17aが垂直方向に移動可能に第二の移動手段32により支持されている。
【0050】
これにより、蓄熱部材16は、図7(A)に示すように、主光源12の基板12aの上面に配置された放熱部材15の表面に対して熱的に接触した状態から、図7(B)に示すように、放熱部材15の表面から離反して熱的に遮断された状態に切り替えられる。
また、熱電変換手段17は、図7(A)に示すように、蓄熱部材16の表面から離反して熱的に遮断された状態から、図7(C)に示すように、蓄熱部材16の表面に熱的に接触した状態に切り替えられる。
【0051】
ここで、上記蓄熱部材16及び熱電変換手段17の支持部16a,17aは、これらのき蓄熱部材16及び熱電変換手段17から熱が外部に逃げるのを抑止するために、ある程度の剛性が備えると共に、熱伝導率が20W/m・K以下の材料、例えばステンレス鋼,ガラス,セラミック等の材料が使用することが好ましい。
また、上記第一及び第二の移動手段31,32としては、例えばジャッキを使用することができる。
【0052】
このような構成の照明器具30によれば、蓄熱時には、図7(A)に示すように、蓄熱部材16は、主光源12側、即ち放熱部材15の表面に熱的に接続された状態で、且つ熱電変換手段17から離反した状態にある。
この状態において、主光源12が点灯すると、主光源12のパワーLED12bで発生した熱が、放熱手段15を介して蓄熱部材16に伝達され、蓄熱部材16に蓄えられる。
このとき、熱電変換手段17が蓄熱部材16に対して熱的に遮断されているので、熱電変換手段17は、熱電変換を行なわず、電力を出力しない。従って、補助光源13には熱電変換手段17から電力が供給されないので、補助光源は消灯しており、主光源12と補助光源13の同時点灯を回避することができる。
【0053】
主光源12が消灯すると、図7(B)に示すように、蓄熱部材16は、第一の移動手段31により放熱部材15の表面から離反し、熱的に遮断される。この状態においては、蓄熱部材16は、放熱部材15にも熱電変換手段17にも熱的に接続されていない。従って、蓄熱部材16に蓄えられた熱は、長時間に亘って保持することができる。
【0054】
補助光源13を点灯させる場合には、図7(C)に示すように、熱電変換手段17が第二の移動手段32により蓄熱部材16の表面に熱的に接続される。このとき、第一の移動手段31は動作しない。従って、蓄熱部材16は、放熱部材15の表面から離反した状態のままである。
これにより、熱電変換手段17は、蓄熱部材16からの熱により熱電変換を行なって、補助光源13に電力を供給する。そして、補助光源13は、熱電変換手段17から供給される電力によって、LED13bが駆動され、発光する。
このようにして、主光源12の消灯後の任意の時間に、熱電変換手段17が蓄熱手段16に熱的に接続されることによって、補助光源13が点灯する。
尚、この場合、蓄熱部材16に蓄えられた熱が熱電変換手段17により完全に消費されなくても、蓄熱部材16は、再び熱電変換手段17から切り離され且つ放熱部材15に熱的に接続されて、追加蓄熱されてもよい。
【0055】
図8は、本発明による照明器具の第四の実施形態の構成を示している。
図8において、照明器具40は、自動車41の車両用灯具であって、内部構成は図1から図3に示した照明器具10とほぼ同様の構成である。
主光源12は、自動車のLEDヘッドランプであって、一般に投入電力が数10Wとなり、その発熱量は投入電力の約90%程度にもなる。
主光源12の基板12aの裏側に、放熱部材15,蓄熱部材16及び熱電変換手段17が配置されている。
また、補助光源13は、図示の場合、自動車41の車体全部に設けられた補助灯であって、熱電変換手段17から供給される電力によって主光源12であるヘッドランプの非点灯時にも点灯する。
この場合、補助灯は、例えば車幅灯,デイタイムランニングランプであるが、これに限らず、フォグランプ,ターンシグナルランプ等のその他のランプであってもよい。
【0056】
このような構成の照明器具40によれば、夜間等の走行時に、主光源12が点灯されることにより、主光源12で発生する熱が放熱部材15を介して蓄熱部材16に蓄えられる。
そして、蓄熱部材16に蓄えられた熱を熱電変換手段17が電気エネルギーに変換して、補助光源13に供給する。
従って、補助光源13は、主光源12の点灯,消灯にかかわらず、外部から別電力を別途供給することなく、長時間に亘って点灯される。
【0057】
図9は、本発明による照明器具の第五の実施形態の構成を示している。
図9において、照明器具50は、液晶ディスプレイ51の液晶パネル52を背面からバック照明するLEDバックライト装置であって、内部構成は図1から図3に示した照明器具10とほぼ同様の構成である。
【0058】
ここで、主光源12は、液晶パネル52の背面側に配置された基板53上に実装された複数個のLED54から構成されている。
LED54は、例えばRGB三色のLEDの混色、または青色LEDに蛍光体を加えた白色LEDにより白色光を出射する。
【0059】
また、補助光源13は、液晶ディスプレイ51の筐体表面に露出した表示灯である。
【0060】
このような構成の照明器具50によれば、主光源12の各LED54から発生する熱を蓄熱部材16により蓄えて、熱電変換手段17により電気エネルギーに変換して、補助光源13である表示灯を点灯する。
これにより、例えば液晶ディスプレイ51の非稼働時の待機状態を示す表示灯として補助光源13を点灯させることができる。これにより、液晶ディスプレイ51の待機電力を低減することが可能である。
ここで、近年液晶ディスプレイ51に対する明るさの要求が高まっており、液晶ディスプレイ51のLEDバックライト装置においては、LEDの個数を低減しながら、投入電力の増大によって、より明るいバック照明を得るようにしている。このため、LED54の発熱量も増大しているので、LED54からの熱を蓄熱部材16に蓄えて、補助光源13を点灯させることは、LEDバックライト装置のLED54の放熱・冷却の観点からも有用である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
上述した実施形態においては、放熱部材16が主光源12を構成する基板12aの裏面に貼着等により熱的に接続されているが、広い意味での主光源として、駆動回路14で発生する熱を放熱部材15を蓄熱部材16に蓄えて、熱電変換手段17により補助光源13を点灯させるようにしてもよいことは明らかである。
【0062】
また、上述した実施形態においては、熱電変換手段17は、主光源12の発熱度に対応して、温度領域,変換効率や形状及び大きさを勘案して設計され、構成されているが、例えば主光源12の発熱度が変化するような場合には、互いに変換効率の異なる複数種類の熱電変換手段を用意しておき、適宜の切り替え手段によって、これらの熱電変換手段を切り替えて、蓄熱部材に選択的に熱的に接続するようにしてもよい。
これにより、主光源12の発熱度が大幅に変化してしまうような場合であっても、常に最適な熱電変換手段が選択され、切り替えて蓄熱部材に熱的に接続される。従って、常に最適な変換効率の熱電変換手段により、主光源で発生した熱が効率的に電気エネルギーに変換され、補助光源に供給されることになる。
【0063】
さらに、上述した第四の実施形態においては、主光源12はLEDヘッドランプであるが、これに限らず、主光源を例えば車幅灯,デイタイムランニングランプ、フォグランプ,ターンシグナルランプ等のランプ光源などであってもよく、補助光源が車両内のルームランプあるいはバニティランプ等であってもよい。
【0064】
このようにして、本発明によれば、簡単な構成により、第一の光源から発生する熱を有効利用して、第一の光源の消灯後にも第二の光源を長時間に亘って弱く点灯させることができるようにした、極めて優れた照明器具を提供することができる。
【符号の説明】
【0065】
10,20,30,40,50 照明器具
11 筐体
12 主光源(第一の光源)
12a,13a 基板
12b パワーLED
13 補助光源(第二の光源)
13b LED
14 駆動回路
15 放熱部材
15a,16a 支持部
16 蓄熱部材
17 熱電変換手段
21 第一の変換手段
22 第二の変換手段
31 第一の移動手段
32 第二の移動手段
41 自動車
51 液晶ディスプレイ
52 液晶パネル
53 基板
54 LED


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱を伴う第一の光源と、この第一の光源を冷却するための放熱手段と、を有する照明器具において、
前記放熱手段に隣接して配置され、前記放熱手段からの熱を蓄える蓄熱部材と、
前記蓄熱部材に隣接して配置され、前記蓄熱部材で蓄えられた熱を利用して発電する熱電変換手段と、
前記前記熱電変換手段で発生した電力により点灯する第二の光源と、
を備えていることを特徴とする、照明器具。
【請求項2】
上記第二の光源が、上記第一の光源より消費電力が小さいことを特徴とする、請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
上記第一の光源が、白熱灯,放電灯またはLEDであることを特徴とする、請求項1または2に記載の照明器具。
【請求項4】
上記第二の光源がLEDであることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の照明器具。
【請求項5】
上記蓄熱部材が、上記第一の光源の温度に特有の吸熱ピークを有する材料から構成されていることを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載の照明器具。
【請求項6】
上記蓄熱部材が、第一の光源及び放熱手段と、上記熱電変換手段とに対して、熱的な接続を選択的に切り替えられることを特徴とする、請求項1から5の何れかに記載の照明器具。
【請求項7】
上記熱電変換手段が、熱エネルギーを直接に電気エネルギーに変換する熱電素子から構成されていることを特徴とする、請求項1から6の何れかに記載の照明器具。
【請求項8】
上記熱電変換手段が、熱エネルギーを運動エネルギーに変換する第一の変換手段と、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する第二の変換手段とから構成されていることを特徴とする、請求項1から6の何れかに記載の照明器具。
【請求項9】
上記熱電変換手段として、互いに変換効率の異なる複数種類の熱電変換手段を備えており、
上記第一の光源の発熱度に対応した変換効率の熱電変換手段が選択的に上記蓄熱部材に熱的に接続されることを特徴とする、請求項6から8の何れかに記載の照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−154923(P2011−154923A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16203(P2010−16203)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】