説明

照明器具

【課題】銀反射膜及び緩衝膜を有する反射鏡を備えた照明器具において、反射率の低下を抑え、銀反射膜と基材との密着性を保持でき、耐熱及び耐久性の良い反射鏡を得る。
【解決手段】照明器具1は、光放出用の開口部21を有する筐体2と、筐体2に収容される光源3と、筐体2内部に収容されて光源3からの光を反射する反射鏡4とを備える。反射鏡4は銀反射膜と、この銀反射膜に積層される酸化物を有する緩衝膜とを筐体2の基材20上に形成される。反射膜及び緩衝膜の厚さは、筐体2の開口部21に近接する縁部側に比べ、筐体2内の光源3に近接する奥部側で薄くなっている。これにより、反射鏡4における開口部21の近接する縁部側での大気ガスによる変色及び奥部側での光源3の熱による膜剥離を抑えることができ、反射率の低下を抑え、銀反射膜42と基材20との密着性を保持でき、耐熱及び耐久性の良い反射鏡4を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設、店舗又は住宅などで使用され、光源からの光を反射する反射鏡を用いる照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダウンライト等の照明器具においては、反射鏡の反射膜の材料には可視光反射性に優れる銀が使用される。このような照明器具において、反射鏡の銀反射膜は、高い反射率を有するが、化学的に不安定な銀が変色することで、外観が損なわれると共に、反射率が劣化し、器具効率が低下し易い。銀の主な変色原因は、光(紫外線)、熱、及び大気中の水分、亜硫酸、硫化水素、アンモニア等のガスである。銀反射膜は、これら変色原因が相互的に作用し、銀が硫化物イオンや塩化物イオン等と反応して硫化銀や塩化銀などの化合物へと変化することによって、褐色や黒色に変色する。
【0003】
そこで、高分子フイルム上に、下地層、銀層、銀を主体とする合金層、及び緩衝膜となる透明酸化物層を順に積層した反射シートを成形体に貼り合わせて得られる反射鏡が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、純Ag膜やAgAu系等の合金膜に、その保護用の緩衝膜となる極薄のキャップ層として、ITO、ZnO、Sn02等の金属酸化物膜や、Si、ALTi及びTaの酸化物又は窒化物膜等を基材上に積層した反射鏡が知られている(例えば、特許文献2参照)。これら特許文献1及び2に示される反射鏡は、いずれも多層膜の膜厚をほぼ一様に形成し、硫黄ガス等を含む大気ガスによる銀反射膜の硫化や酸化を防止し、反射率の低下を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−116313号公報
【特許文献2】特開2006−98856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、反射鏡を用いた照明器具をダウンライトのように天井に設置した場合、光源はそれ自体がユーザから見え難いことが望まれており、反射鏡の奥部に設置されることが多い。この場合、反射鏡はその奥部側では開口側に比べ大気ガスの影響は少ないが、光源から受ける熱が高いため、その銀反射膜及び緩衝膜の膜厚が厚い場合は、熱応力により奥部側で膜剥離が生じ易くなり、大気ガスの影響以上に反射率が低下する場合がある。これ対して、銀反射膜及び緩衝膜の各膜厚を薄くすることが望ましいが、これに併せて反射鏡全体でそれらの膜厚を薄くすると、反射鏡の開口部付近で大気ガスの影響による反射率の劣化が大きくなるようになる。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2に示される技術では、銀反射膜と緩衝膜は大気ガスの影響に対応した膜厚で一様に形成されているので、反射鏡の開口側及び奥部側での膜厚がほぼ同じようになる。従って、このような反射鏡を照明器具に用いた場合は、反射鏡はその奥部側で光源の熱による膜剥離により反射率が低下し易くなり、反射率の低下を抑え、銀反射膜と基材との密着性を保持し、耐熱及び耐久性を良くすることが困難であった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、銀反射膜及び緩衝膜を有する反射鏡を備えた照明器具において、反射率の低下を抑え、銀反射膜と基材との密着性を保持し、耐熱及び耐久性の良い反射鏡を有する照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の照明器具は、光放出用の開口部を有する筐体と、この筐体に収容される光源と、前記筐体の内部に収容されて光源からの光を反射する反射鏡と、を有する照明器具において、前記反射鏡は、銀を有する反射膜と、この反射膜上に積層され酸化物を有する緩衝膜と、を有し、前記反射膜及び緩衝膜のそれぞれの厚さは、前記筐体の開口部に近接する縁部側に比べ、光源に近接する奥部側において薄くなっていることを特徴とする。
【0009】
この照明器具において、反射鏡及び緩衝膜のそれぞれの厚さが、筐体の開口部に近接する縁部側から光源に近接する奥部側に向かって漸減することが好ましい。
【0010】
この照明器具において、反射膜の厚みは、80〜400nmであることが好ましい。
【0011】
この照明器具において、緩衝膜の厚みは、3〜30nmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の照明器具によれば、反射鏡における反射膜及び緩衝膜の膜厚が、光源からの熱光を受け易い光源に接近する奥部側で開口部の縁部側よりも薄くしているので、奥部側での光源の熱光による膜剥離を抑えることができる。これにより、照明器具の使用環境で反射率の低下を抑え、銀反射膜と基材との密着性を保持でき、耐熱及び耐久性の良い反射鏡を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る照明器具の構成図。
【図2】同照明器具の反射鏡の一部破断断面図。
【図3】同反射鏡の積層膜の断面図。
【図4】同照明器具の他の例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る照明器具について、図1乃至図3を参照して説明する。図1及び図2に示されるように、照明器具1は、光放出用の開口部21を有する筐体2と、この筐体2に収容される光源3と、筐体2の内部に収容され光源3からの光を反射する反射鏡4と、筐体2や光源3等の各部材を保持する器具本体5と、を備える。
【0015】
筐体2は、基材20と、基材20に形成された開口部21及び光源3を取り付けるための取付孔22とを有する。基材20は、光源3からの光を効率よく反射して所望する配光が得られる形状、例えば、回転対称面を有する椀形状に形成され、開口部21に対向する天面部2aと、側面部2bとを有し、天面部2a側が器具本体5に取付けられている。筐体2はその椀形の側面部2bに形成された取付孔22で、水平点灯となるように光源3を保持し、光源3からの光は反射鏡2により、その椀形状の中心軸を光軸として開口部21に向けて反射される。
【0016】
筐体2は、開口部21の周縁に鍔部6が全周に亘って形成され、開口部21近くの外側面に、開口部21と共に照明器具1を天井板100に固定するための複数の固定用爪7が設けられている。この固定用爪7は、爪部等を斜め下方に突出した状態で鍔部6との間に天井板100を挟持するようにばね付勢されている。また、筐体2は、側面部2b上に天面部2a側から開口部21側に向け、高さ方向にほぼ等間隔に、反射鏡4の膜厚を測定するための測定点として設定されたA部、B部、C部、及びD部を有する。
【0017】
筐体2は、アルミ、鉄、マグネシウム、亜鉛などの純金属若しくは合金、又はポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネイト(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリエーテルイミド(PEI)などのプラスチック基材より成る。筐体2の基材20の成形は、使用する基材の材質や器具形状に基き、最適なものが適宜選択され、反射鏡4で所定の配光が得られるように形成される。例えば、筐体2の材質が金属基材の場合は、スピニング成形、プレス成形、テクソモールド成形、ダイキヤスト成形などによって行われる。また、筐体2の材質が樹脂の場合は、インジェクション成形、真空成形、圧空成形などによって行われる。成形後の筐体2の表面はできる限り滑らかで、清浄な状態となるように、成形時に付着した離型剤やガスマーク、滑剤、及びオイル等などを物理的手段によって除去する。
【0018】
光源3は、発光部31と、発光部31に設けられる給電用口金32とを有する。光源3は、器具本体5に設けられたソケット51に取り付け固定され、ソケット51と電気的に接続される電源安定器52から給電される。
【0019】
図3に示されるように、反射鏡4は基材20の平滑性を向上させるための下地層41と、光を反射する銀反射膜42と、この銀反射膜42の保護膜となる緩衝膜43と、大気に面したトップコート層44とが順に基材20上に積層されている。銀反射膜42及び緩衝膜43のそれぞれの厚さは、筐体2(図2)の開口部21に近接する縁部側よりも、光源3に近接する奥部側において薄くなっている。なお、天面部2aでの膜厚は一定としている。
【0020】
下地層41は、エポキシ系塗料、アクリル系塗料、シリコン系塗料などから成り、基材20の平滑性を向上させるので、基材20と銀反射膜42との密着性が向上する。下地層41の形成は、スプレー塗装、スピンコート、ディッピング塗装などのコーティングと、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化などの硬化によって行われる。また、下地層41は、基材20と銀反射膜42との密着性が十分に確保されるならば省いてもよい。
【0021】
銀反射膜42は、銀又は銀を主成分とする合金から成り、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などの物理蒸着、又は銀鏡反応のような化学めっきによって、膜厚80〜400nmで形成される。銀反射膜42は、80nm未満の場合には、充分な反射特性が得られない場合があり、400nmを越える場合は、Ag層の結晶粒径が大きくなり可視光の吸収が増してその表面が白濁し、反射率が低下したり密着性が低下し、長期使用時に剥離することがある。銀反射膜42は、上記の膜厚80〜400nmの範囲では、その反射特性や密着性の低下が少なく、さらに、80〜300nmの膜厚とすることが望ましい。なお、銀合金としては、銀マグネシウム、銀パラジウム、銀白金、銀ロジウム等の合金が挙げられる。
【0022】
緩衝膜43は、透光性酸化物、透明酸窒化物、及び透明窒化物等の部材を使用し、真空蒸着法、RFイオンプレーティング、DCスパッタリング、及びRFスパッタリング等によって形成される。生産性(時間、反射鏡サイズ)等を考慮すると、反射鏡4が小型のものはDCスバッタ、大型のものは蒸着による形成が望ましい。また、緩衝膜43の形成にDCスパッタリング装置を用いる場合には、スバッタされ易く透明性の高い、インジウムとスズの酸化物(ITO)からなる厚さ3〜30nmの透明酸化物、酸化インジム(In203)、及び酸化スズ(SnO2)等が用いられる。このとき、DCスバッタし易いように、Sn02にニオブ(Nb)等の微量元素を加えてもよい。
【0023】
また、緩衝膜43の膜厚は、3〜30nmが望ましいが、長期耐候性、密着性とガスバリヤ性(耐久性)のバランスを考えた場合、7〜20nmが望ましい。また、緩衝膜43に含まれるSn02は元々黄みがあり、反射鏡4が図1のような3次元形状の場合、光源3からの光は多重反射を繰り返し、初期外観で黄みが強くなってしまうので、この黄みを考慮した場合、緩衝膜43の膜厚は15nm以下が望ましい。
【0024】
トップコート層44は、アクリルメラミン樹脂、シリコン変性アケノル樹脂(熱硬化、常温硬化性)、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコンアルキッド樹脂無機材料(DLC膜、SiO2、スピネル)等から成り、反射鏡2を物理的な衝撃から保護する。トップコート層44は、特に長期耐久性を有する、アクリルメラミン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂やシリコンまたはアクリルベース系樹脂や無機材料が望ましい。トップコート層44の形成は、スプレー塗装、スピンコート、ロールコート、ディッピング塗装などのコーティングと、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化などの硬化によって行われる。
【0025】
また、図4に示されるように、照明器具1は、筐体2の上面に光源3の取付孔22を有し、この取付孔22を通して光源3が垂直点灯となるように保持されるものであってもよい。
【0026】
上記のように構成された照明器具1においては、銀反射膜42及び緩衝膜43の膜厚を、筐体2の開口部21に近接する縁部側で大気ガスによる変色を抑える厚さとし、光源3に接近する奥部側でその厚さよりも薄くして、奥部側での膜剥離を抑制できる。これにより、開口部21側での大気ガスに基づく変色による反射率の低下と、奥部側での膜剥離による反射率の低下をともに抑制することができる。従って、照明器具1の使用環境で、反射率の低下を抑え、銀反射膜42と基材20との密着性を保持でき、耐熱及び耐久性の良い反射鏡4を得ることができる。また、各膜厚を反射鏡4上全体に一様でなく奥部側で薄くするので、その分、低廉化できる。
【0027】
また、照明器具1において、銀反射膜42及び緩衝膜43の厚さを、筐体2の開口部21側から光源3に近接する奥部側に向かって漸減するように形成することにより、それらの厚みが大きく変化する箇所をなくすことができる。これにより、反射鏡4の当該部位での各膜の寸法変化による歪みが少なくなり、基材20、銀反射膜42及び緩衝膜43の互いの密着性を保つことができる。なお、照明器具1は、複数の反射鏡4を備えていてもよく、また、それらを組合わせて1つの反射鏡として形成してもよい。
【0028】
また、銀反射膜42の厚みを80〜400nmとすること、また、緩衝膜43の厚みを3〜30nmとすることにより、それぞれ、熱光の影響による銀反射膜42の変色と、密着性の低下を低減することができる。
【0029】
次に、上述した本実施形態に係る照明器具の反射鏡における実施例1〜4及び比較例1〜3について説明する。
【0030】
実施例1〜4及び比較例1〜3における反射鏡の基材、及びその上に積層される各層の成膜条件は共に以下の通りである。先ず、PBT樹脂から成る基材上に、アクリルメラミン樹脂をスプレー塗装した後、トンネル炉で焼付乾燥を140℃で60分間行い、下地層を5〜10μm膜厚で成膜する。この下地層上に、DCスパッタリングによって銀反射膜を成膜し、この銀反射膜上に引続きDCスパッタリングで緩衝膜を成膜する。その後、緩衝膜上にアクリルメラミン系塗料を塗布し、トンネル炉で焼付乾燥を130℃で40分間行い、5〜10μm膜厚のトップコートを成膜する。なお、銀反射膜及び緩衝膜の膜厚を筐体の開口側から奥側にかけて薄くするには、例えば、スパッタ蒸着などで成膜する際、膜厚を薄くする場所をマスクで順次覆うことを繰返すことにより行える。
【0031】
反射鏡4の膜厚の測定は、筐体2の側面20bの測定点A部、B部、C部、及びD部で、それぞれ反射鏡4を切断研磨して断面を出し、透過型電子顕微鏡(TEM)にて行った。反射鏡4の表面評価は、初期状態及び耐候試験後に、それぞれの測定点A〜D部での変色、膜剥離等を含めた表面変化を目視で行った。
【0032】
(実施例1)
緩衝膜材料を、SnO2を10%含むITOとし、各測定点A〜D部での銀反射膜と緩衝膜との各膜厚が、A部でそれぞれ88nmと7nm、B部で98nmと8nm、C部で130nmと11nm、及びD部で161nmと15nmと成膜されている反射鏡を得た。銀反射膜及び緩衝膜の各膜厚は、開口部21に近接する縁部側のD部から光源3に近接する奥部側のA部に向け、それぞれ漸減している。ここで、銀反射膜の厚みに対する緩衝膜の厚みの比率を、膜厚比率(%)((緩衝膜厚/銀反射膜厚)×100)で表す。A〜D部での膜厚比率は、それぞれ8.0%、8.2%、8.5%、9.3%となり、反射鏡4の奥部のA部に行くほど小さくなって漸減している。また、銀反射膜の膜厚は、前述の望ましい膜厚範囲の80〜300nm内に入っている。また、緩衝膜の膜厚は、前述の望ましい膜厚範囲の7〜20nmに入っている。
【0033】
(実施例2)
緩衝膜材料を、TaO5を2%含むSnO2とし、銀反射膜及び緩衝膜の各膜厚が測定点A部でそれぞれ240nm、10nm、D部で299nm、16nmとなって成膜されている反射鏡を得た。また、銀反射膜及び緩衝膜のそれぞれの膜厚及び膜厚比率は、奥部側のA部の方がD部より小さくなっている。なお、測定点B、C部は未測定である。
【0034】
(実施例3)
緩衝膜材料を、SnO2を10%含むITOとし、銀反射膜及び緩衝膜の各膜厚を測定点A部でそれぞれ138nm、8nm、D部で256nm、16nmに成膜されている反射鏡を得た。銀反射膜及び緩衝膜のそれぞれの膜厚及び膜厚比率は、奥部側のA部の方がD部より小さくなっている。
【0035】
(実施例4)
緩衝膜材料を、SnO2を10%含むITOとし、銀反射膜及び緩衝膜の各膜厚を、測定点A部でそれぞれ170nm、10nm、D部で290nm、18nmと成膜されている反射鏡を得た。また、測定点A部及びD部での銀反射膜及び緩衝膜の各膜厚及び膜厚比率も、奥部側のA部の方が小さくなっている。
【0036】
(比較例1)
緩衝膜材料を、SnO2を10%含むITOとし、各測定点A部〜D部での銀反射膜の膜厚をそれぞれ82nm、96nm、125nm、156nmとし、測定点A部及びD部での緩衝膜の膜厚をそれぞれ25nm、15nmと成膜された反射鏡を得た。ここでは、銀反射膜は、D部からA部へ行くほど小さくなっているが、緩衝膜の膜厚は、D部よりA部で大きくなっており、膜厚比率はA部の方がD部より大きくなっている。
【0037】
(比較例2)
緩衝膜を無しとし、測定点A部〜D部での銀反射膜の膜厚をそれぞれ82nm、96nm、125nm、156nmとして成膜された反射鏡を得た。
【0038】
(比較例3)
緩衝膜材料を、TaO5を2%含むSnO2とし、銀反射膜及び緩衝膜の各膜厚を、測定点A部でそれぞれ88nm、17nm、D部で161nm、8nmと成膜された反射鏡を得た。銀反射膜は、測定点D部に比べA部が小さくなっており、緩衝膜の膜厚は、D部よりA部で大きくなっている。また、測定点A及びD部での反射鏡の膜厚比率は、それぞれ19.3及び5.0%となり、A部の方がD部より大きくなっている。
【0039】
<耐候性試験>
上記のように作製した実施例1〜4と比較例1〜3とに係る照明器具を、温度140℃の温度環境で400Wの水銀灯を照射し、試験期間を10日間と30日間が経過する毎に各照明器具の反射鏡の外観観察を行った。各照明器具の試験評価は、外観目視で反射鏡の表面に著しい変化及び剥離が無い場合を○、薄っすらとした変色(黄色、茶褐色)が確認できる場合を△、変色が完全に確認できる、又は部分的な剥離が発生している場合を×として判定を行った。さらに、反射鏡の3分の1以上の面積が変色、又は部分的な剥離が4分の1以上の面積で発生している場合を××として判定を行い、その判定結果を下記の表1に示す。また、予め、耐候性試験前の初期状態で各照明器具の外観目視による色調評価を行った。なお、表1で膜厚のデータが「−」となっているところは、未測定を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1の耐候性評価2で示されるように、実施例1〜4は、比較例1〜3に比べて、反射鏡の銀反射膜の外観変化が発生するまでの日数が長くなっており、耐候性が優れている。すなわち、銀反射膜及び緩衝膜のそれぞれの膜厚を、開口部に近接する縁部側の測定点D部より光源に近接する奥部側のA部で共に薄くすること、又は測定点D部からA部に向けて漸減することにより、耐候性が良くなっている。従って、本実施形態の反射鏡は、照明器具のような高温状態の使用環境においても、反射鏡の銀反射膜の変色や剥離を防止することができるので、反射率を低下を抑制し、膜の基材との密着性を保持し、耐熱及び耐久性を高めることができる。
【0042】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、反射鏡の反射膜を銀系としたが、アルミニウムなどの他の金属膜を用いてもよい。また、反射鏡は銀反射膜の両面にそれぞれアンダーコートとトップコートを設けたが、それらコートと銀反射膜との間に、さらに酸化物膜や金属膜の保護膜を積層してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 照明器具
2 筐体
21 開口部
3 光源
4 反射鏡
42 銀反射膜(反射膜)
43 緩衝膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光放出用の開口部を有する筐体と、この筐体に収容される光源と、前記筐体の内部に収容されて光源からの光を反射する反射鏡と、を有する照明器具において、
前記反射鏡は、銀を有する反射膜と、この反射膜上に積層され酸化物を有する緩衝膜と、を有し、
前記反射膜及び緩衝膜のそれぞれの厚さは、前記筐体の開口部に近接する縁部側に比べ、光源に近接する奥部側において薄くなっていることを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記反射鏡及び緩衝膜のそれぞれの厚さが、前記筐体の開口部に近接する縁部側から光源に近接する奥部側に向かって漸減することを特徴とする請求項1に記載の照明器具。
【請求項3】
前記反射膜の厚みは、80〜400nmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の照明器具。
【請求項4】
前記緩衝膜の厚みは、3〜30nmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−9180(P2012−9180A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141965(P2010−141965)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】