照明装置、表示装置および光変調素子の製造方法
【課題】視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減しつつ、表示輝度を向上させることの可能な照明装置、表示装置および光変調素子の製造方法を提供する。
【解決手段】導光板10に接着された光変調素子30内に、バルク34Aおよび微粒子34Bを含んだ光変調層34が設けられている。バルク34Aおよび微粒子34Bは共に光学異方性を有しており、これらの電場に対する応答速度が互いに異なっている。これにより、電場制御によって、バルク34Aおよび微粒子34Bの光軸の向きを互いに一致させたり、互いに異ならせたりすることが可能となる。
【解決手段】導光板10に接着された光変調素子30内に、バルク34Aおよび微粒子34Bを含んだ光変調層34が設けられている。バルク34Aおよび微粒子34Bは共に光学異方性を有しており、これらの電場に対する応答速度が互いに異なっている。これにより、電場制御によって、バルク34Aおよび微粒子34Bの光軸の向きを互いに一致させたり、互いに異ならせたりすることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光に対して散乱性または透明性を示す光変調素子を備えた照明装置および表示装置、ならびにその光変調素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイの高画質化や省エネ化が急進展し、部分的にバックライトの光強度を変調することによって暗所コントラストの向上を実現する方式が提案されている。この手法は主に、バックライトの光源として用いられる発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)を部分的に駆動して、表示画像に合わせてバックライト光を変調するものである。また、大型の液晶ディスプレイにおいて、小型の液晶ディスプレイと同様、薄型化の要求が強まってきており、冷陰極管(CCFL;Cold Cathode Fluorescent Lamp)やLEDを液晶パネルの直下に配置する方式ではなく、導光板の端部に光源を配置するエッジライト方式が注目されている。しかし、エッジライト方式では、光源の光強度を部分的に変調する部分駆動を行うことは難しい。
【0003】
【特許文献1】特開平6−347790号公報
【特許文献2】特許第3479493号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、導光板内を伝播している光の取り出し技術としては、例えば、特許文献1において、透明と散乱を切り換える高分子分散液晶(PDLC;Polymer Dispersed Liquid Crystal)を用いた表示装置が提案されている。これは、写り込み防止などを目的としたものであり、PDLCに対して部分的に電圧を印加して、透明と散乱を切り換える技術である。しかし、この方式では、PDLCが正面方向(PDLCの法線方向)において透明状態となっている場合に、導光板内を斜めに伝播している光の一部が液晶材料と高分子材料との屈折率差によって散乱される。そのため、視野角の大きい範囲において光が漏れ出てしまい、視野角特性が悪化してしまう。そこで、視野角特性を改善するために、例えば、斜め方向に漏れ出た光を偏光板に吸収させることが考えられる(特許文献2参照)。
【0005】
しかし、この方策では、斜め方向に漏れ出た光が偏光板に吸収されてしまうので、表示が暗くなってしまうという問題があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減しつつ、表示輝度を向上させることの可能な照明装置、表示装置および光変調素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の照明装置は、導光板と、導光板の側面に配置された光源と、導光板の表面または内部に配置されると共に導光板と接着された光変調素子とを備えたものである。上記光変調素子は、離間して互いに対向配置された一対の透明基板と、一対の透明基板のそれぞれの表面に設けられた一対の電極と、一対の透明基板の間隙に設けられた光変調層とを有している。上記光変調層は、光学異方性を有すると共に電場に対する応答速度が互いに異なる第一領域および第二領域を含んでいる。
【0008】
本発明の表示装置は、マトリクス状に配置された複数の画素を有すると共に、複数の画素が画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、表示パネルを照明する上記照明装置とを備えたものである。
【0009】
本発明の第一の照明装置および表示装置では、導光板に接着された光変調素子内に、第一領域および第二領域を含んだ光変調層が設けられている。第一領域および第二領域は共に光学異方性を有しており、これらの電場に対する応答速度が互いに異なっている。これにより、電場制御によって、第一領域および第二領域の光軸の向きを互いに一致させたり、互いに異ならせたりすることが可能となる。従って、例えば、双方の常光屈折率を互いに近接させると共に、双方の異常光屈折率も互いに近接させ、かつ、電場制御によって、第一領域および第二領域の光軸の向きを互いに一致させたときには、正面方向および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差が小さくなり、高い透明性が得られる。また、例えば、双方の常光屈折率を互いに等しくすると共に、双方の異常光屈折率も互いに等しくし、かつ、電場制御によって、第一領域および第二領域の光軸の向きを互いに一致させたときには、正面方向および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差がほとんどなく、さらに高い透明性が得られる。
【0010】
本発明の第二の照明装置は、導光板と、導光板の側面に配置された光源と、導光板の表面または内部に配置されると共に導光板と接着された光変調素子とを備えたものである。上記光変調素子は、離間して互いに対向配置された一対の透明基板と、一対の透明基板のそれぞれの表面に設けられた一対の電極と、一対の透明基板の間隙に設けられた光変調層とを有している。上記光変調層は、電場に対する応答速度が互いに異なる複数の領域を含んでおり、かつ、一対の電極に電圧が印加されている時に光源からの光に対して散乱性を示し、一対の電極に電圧が印加されていない時に光源からの光に対して透明性を示すようになっている。
【0011】
本発明の第二の照明装置では、導光板に接着された光変調素子内に、電場に対する応答速度が互いに異なる複数の領域が設けられており、その光変調層において、一対の電極に電圧が印加されている時に光源からの光に対して散乱性を示し、一対の電極に電圧が印加されていない時に光源からの光に対して透明性を示す。このように、電場制御によって、光変調層が光源からの光に対して透明となるのは、例えば、上記した複数の領域の光軸の向きが互いに一致し、かつ正面方向および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差が小さいか、またはほとんどないことに起因しているといえる。
【0012】
本発明の光変調素子の製造方法は、表面上に電極および配向膜が形成された2つの透明基板を、それぞれ配向膜が互いに向き合うように対向配置する共に、液晶材料と、配向性および重合性を有する材料とを複合した複合層を間にして重ね合わせたのち、配向性および重合性を有する材料を熱および光の少なくとも一方によって重合させるステップを含むものである。
【0013】
本発明の光変調素子の製造方法では、2つの透明基板に挟まれた複合層に含まれる配向性および重合性を有する材料が熱および光の少なくとも一方によって重合される。これにより、重合された後の材料は、液晶材料の光軸の向きと一致する向きの光学異方性を発現する。また、重合された後の材料の光軸方向の長さは液晶材料の光軸方向の長さよりも長くなるので、電場に対する応答速度は、重合された後の材料を含む領域の方が液晶材料を含む領域よりも遅くなる。その結果、電場制御によって、重合された後の材料を含む領域と、液晶材料を含む領域との光軸の向きを互いに一致させたり、互いに異ならせたりすることが可能となる。従って、上述した場合と同様、正面方向および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差を小さくしたり、なくしたりすることができ、その結果、高い透明性を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第一の照明装置および表示装置によれば、導光板に接着された光変調素子内に、光学異方性を有し、かつ電場に対する応答速度が互いに異なる第一領域および第二領域を設けるようにしたので、正面方向および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差を小さくしたり、なくしたりすることができ、高い透明性を得ることができる。これにより、暗状態において、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減またはほとんどなくすることができる。また、光の漏洩量が減少した分だけ、部分的な明状態の部分を明るくすることが可能となる。従って、本発明では、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減またはほとんどなくしつつ、表示輝度を向上させることができる。
【0015】
本発明の光変調素子の製造方法によれば、2つの透明基板に挟まれた複合層に含まれる配向性および重合性を有する材料を熱および光の少なくとも一方によって重合するようにしたので、正面方向および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差を小さくしたり、なくしたりすることができ、高い透明性を得ることができる。これにより、暗状態において、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減またはほとんどなくすることができる。また、光の漏洩量が減少した分だけ、部分的な明状態の部分を明るくすることが可能となる。従って、本発明では、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減またはほとんどなくしつつ、表示輝度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする。)について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(バックライト)
2.変形例(バックライト、光変調素子の位置、光学シートの追加)
3.適用例(表示装置)
【0017】
図1(A)は、本発明の一実施の形態に係るバックライト1(照明装置)の断面構成の一例を表したものである。図1(B)は、図1のバックライト1の断面構成の一例を表したものである。なお、図1(A),(B)は、模式的に表したものであり、実際の寸法や形状と同一であるとは限らない。このバックライト1は、例えば、液晶表示パネルなどを背後から照明するものであり、導光板10と、導光板10の側面に配置した光源20と、導光板11の背後に配置した光変調素子30および反射板40と、光変調素子30を駆動する駆動回路50とを備えている。
【0018】
導光板10は、導光板10の側面に配置した光源20からの光を導光板10の上面に導くものである。この導光板10は、導光板10の上面に配置される表示パネル(図示せず)に対応した形状、例えば、上面、下面および側面で囲まれた直方体状となっている。導光板10は、例えば、上面および下面の少なくとも一方の面に、所定のパターン化された形状を有しており、側面から入射した光を散乱し、均一化する機能を有している。なお、バックライト1に印加する電圧を変調することによって輝度の均一化を行う場合には、パターン化されていない平坦な導光板を導光板10として用いることも可能である。この導光板10は、例えば、表示パネルとバックライト1との間に配置される光学シート(例えば、拡散板、拡散シート、レンズフィルム、偏光分離シートなど)を支持する支持体としても機能する。導光板10は、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)やアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの透明熱可塑性樹脂を主に含んで構成されている。
【0019】
光源20は、線状光源であり、例えば、熱陰極管(HCFL;Hot Cathode Fluorescent Lamp)、CCFL、または複数のLEDを一列に配置したものなどからなる。光源20は、図1(A)に示したように、導光板10の一の側面にだけ設けられていてもよいし、導光板10の2つの側面、3つの側面または全ての側面に設けられていてもよい。
【0020】
反射板40は、導光板10の背後から光変調素子30を介して漏れ出てきた光を導光板10側に戻すものであり、例えば、反射、拡散、散乱などの機能を有している。これにより、光源20からの射出光を効率的に利用することができ、また、正面輝度の向上にも役立っている。この反射板40は、例えば、発泡PET(ポリエチレンテレフタレート)や銀蒸着フィルム、多層膜反射フィルム、白色PETなどからなる。
【0021】
光変調素子30は、本実施の形態において、導光板10の背後(下面)に空気層を介さずに密着しており、例えば接着剤(図示せず)を介して導光板10の背後に接着されている。この光変調素子30は、例えば、図1(B)に示したように、透明基板31、下側電極32、配向膜33、光変調層34、配向膜35、上側電極36および透明基板37を反射板40側から順に配置されたものである。
【0022】
透明基板31,37は、光変調層34を支持するものであり、一般に、可視光に対して透明な基板、例えば、ガラス板や、プラスチックフィルムによって構成されている。下側電極32は、透明基板31のうち透明基板37との対向面上に設けられたものであり、例えば、図2に光変調素子30の一部を抜き出して示したように、面内の一の方向に延在する帯状の形状となっている。また、上側電極36は、透明基板37のうち透明基板31との対向面上に設けられたものであり、例えば、図2に示したように、面内の一の方向であって、かつ下側電極32の延在方向と交差(直交)する方向に延在する帯状の形状となっている。
【0023】
なお、下側電極32および上側電極36の形状は、駆動方式に依存するものである。例えば、これらが上述したような帯状の形状となっている場合には、例えば、各電極を単純マトリクス駆動することが可能である。一方がベタ膜となっており、他方が微小な方形状となっている場合には、例えば、各電極をアクティブマトリクス駆動することが可能である。
【0024】
下側電極32および上側電極36のうち少なくとも上側電極36(バックライト1の上面側の電極)は透明な導電性材料、例えば、酸化インジウムスズ(ITO;Indium Tin Oxide)からなる。ただし、下側電極32(バックライト1の下面側の電極)については、透明な材料でなくてもよく、例えば、金属によって構成されていてもよい。なお、下側電極32が金属によって構成されている場合には、下側電極32は、反射板40と同様、導光板10の背後から光変調素子30に入射する光を反射する機能も兼ね備えていることになる。従って、この場合には、例えば、図3に示したように、反射板40をなくすることも可能である。
【0025】
下側電極32および上側電極36を光変調素子30の法線方向から見たときに、光変調素子30のうち下側電極32および上側電極36が互いに対向している箇所に対応する部分が光変調セル30Aを構成している。各光変調セル30Aは、下側電極32および上側電極36に所定の電圧を印加することにより別個独立に駆動することの可能なものであり、下側電極32および上側電極36に印加される電圧値の大きさに応じて、光源20からの光に対して透明性を示したり、散乱性を示したりする。なお、透明性、散乱性については、光変調層34を説明する際に詳細に説明する。
【0026】
配向膜33,35は、例えば、光変調層34に用いられる液晶やモノマーを配向させるものである。配向膜の種類としては、例えば、垂直用配向膜および水平用配向膜があるが、配向膜33,35には垂直用配向膜を用いることが好ましい。垂直用配向膜としては、シランカップリング材料や、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリイミド系材料、界面活性剤などを用いることが可能である。なお、これらの材料では、配向膜の形成に際してラビング処理を行う必要がなく、ダストや静電気の点で優れている。また、透明基板31,37としてプラスチックフィルムを用いる場合には、製造工程において、透明基板31,37の表面に配向膜33,35を塗布した後の焼成温度ができるだけ低いことが好ましいことから、配向膜33,35としてアルコール系溶媒を使用することの可能なシランカップリング材料を用いることが好ましい。
【0027】
また、垂直、水平いずれの配向膜においても、液晶とモノマーを配向させる機能があれば十分であり、通常の液晶ディスプレイに要求される電圧の繰り返し印加による信頼性などは必要ない。デバイス作成後の電圧印加による信頼性は、モノマーを重合したものと液晶との界面で決まるためである。また、配向膜を用いなくても、例えば、下側電極32および上側電極36間に電場や磁場を印加することによっても、光変調層34に用いられる液晶やモノマーを配向させることが可能である。つまり、下側電極32および上側電極36間に電場や磁場を印加しながら、紫外線照射して電圧印加状態での液晶やモノマーの配向状態を固定させることができる。配向膜の形成に電圧を用いる場合には、配向用と駆動用とで別々の電極を形成するか、液晶材料に周波数によって誘電率異方性の符号が反転する二周波液晶などを用いることができる。また、配向膜の形成に磁場を用いる場合、配向膜として磁化率異方性の大きい材料を用いることが好ましく、例えば、ベンゼン環の多い材料を用いることが好ましい。
【0028】
光変調層34は、例えば、図1(B)に示したように、バルク34A(第二領域)と、バルク34A内に分散された微粒子状の複数の微粒子34B(第一領域)とを含んだ複合層となっている。バルク34Aおよび微粒子34Bは光学異方性を有している。
【0029】
図4(A)は、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されていない時の、微粒子34B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。なお、図4(A)において、バルク34A内の配向状態についての記載を省略した。図4(B)は、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されていない時の、バルク34Aおよび微粒子34Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。この屈折率楕円体は、様々な方向から入射した直線偏光の屈折率をテンソル楕円体で表したものであり、光が入射する方向からの楕円体の断面を見ることによって、幾何的に屈折率を知ることができるものである。図4(C)は、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されていない時の、正面方向に向かう光L1と、斜め方向に向かう光L2とが光変調層34を透過する様子の一例を模式的表したものである。
【0030】
図5(A)は、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されている時の、微粒子34B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。なお、図5(A)において、バルク34A内の配向状態についての記載を省略した。図5(B)は、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されている時の、バルク34Aおよび微粒子34Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。図5(C)は、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されている時の、正面方向に向かう光L1と、斜め方向に向かう光L2とが光変調層34において散乱される様子の一例を模式的表したものである。
【0031】
バルク34Aおよび微粒子34Bは、例えば、図4(A),(B)に示したように、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されていない時に、バルク34Aの光軸AX1および微粒子34Bの光軸AX2の向きが互いに一致する(平行となる)ような構造となっている。なお、光軸AX1,AX2とは、偏光方向によらず屈折率が一つの値になるような光線の進行方向と平行な線を指している。また、光軸AX1および光軸AX2の向きは常に互いに一致している必要はなく、光軸AX1の向きと光軸AX2の向きとが、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよい。
【0032】
また、微粒子34Bは、例えば、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されていない時に、微粒子34Bの光軸AX2が透明基板31,37の表面と直交している。一方、バルク34Aは、例えば、図4(A),(B),図5(A),(B)に示したように、下側電極32および上側電極36間への電圧印加の有無に拘らず、バルク34Aの光軸AX1が透明基板31,37の表面と直交するような構造となっている。なお、光軸AX2が常に透明基板31,37の表面と直交している必要はなく、例えば製造誤差などによって透明基板31,37の表面と90度以外の角度で交差していてもよい。また、光軸AX1が常に透明基板31,37の表面と直交している必要はなく、例えば製造誤差などによって透明基板31,37の表面と90度以外の角度で交差していてもよい。
【0033】
ここで、バルク34Aおよび微粒子34Bの常光屈折率が互いに等しく、かつバルク34Aおよび微粒子34Bの異常光屈折率が互いに等しいことが好ましい。この場合に、例えば、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されていない時には、図4(A)に示したように、正面方向および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差がほとんどなく、高い透明性が得られる。これにより、例えば、図4(C)に示したように、正面方向に向かう光L1および斜め方向に向かう光L2は、光変調層34内で散乱されることなく、光変調層34を透過する。その結果、例えば、図6(A),(B)に示したように、光源20からの光L(斜め方向からの光)は、透明領域30Aの界面(透明基板31または導光板10と空気との界面)において全反射され、透明領域30Aの輝度(黒表示の輝度)が、光変調素子30を設けていない場合(図6(B)中の一点鎖線)と比べて下がる。
【0034】
また、バルク34Aおよび微粒子34Bは、例えば、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されている時には、図5(A)に示したように、バルク34Aの光軸AX1および微粒子34Bの光軸AX2の向きが互いに異なる(交差する)ような構造となっている。また、微粒子34Bは、例えば、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されている時に、微粒子34Bの光軸AX2が透明基板31,37の表面と90度以外の角度で交差するか、または平行となるような構造となっている。したがって、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されている時には、光変調層34において、正面方向および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差が大きくなり、高い散乱性が得られる。これにより、例えば、図5(C)に示したように、正面方向に向かう光L1および斜め方向に向かう光L2は、光変調層34内で散乱される。その結果、例えば、図6(A),(B)に示したように、光源20からの光L(斜め方向からの光)は、散乱領域30Bの界面(透明基板31または導光板10と空気との界面)を透過すると共に、反射板40側に透過した光は反射板40で反射され、光変調素子30を透過する。従って、散乱領域30Bの輝度は、光変調素子30を設けていない場合(図6(B)中の一点鎖線)と比べて極めて高くなり、しかも、透明領域30Aの輝度が低下した分だけ、部分的な白表示の輝度(輝度突き上げ)が大きくなる。
【0035】
なお、バルク34Aおよび微粒子34Bの常光屈折率は、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよく、例えば、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。また、バルク34Aおよび微粒子34Bの異常光屈折率についても、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよく、例えば、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。
【0036】
また、バルク34Aの屈折率差(Δn0=常光屈折率n0−異常光屈折率n1)や、微粒子34Bの屈折率差(Δn1=常光屈折率n2−異常光屈折率n3)は、できるだけ大きいことが好ましく、0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましい。バルク34Aおよび微粒子34Bの屈折率差が大きい場合には、光変調層34の散乱能が高くなり、導光条件を容易に破壊することができ、導光板10からの光を取り出しやすいからである。
【0037】
また、バルク34Aおよび微粒子34Bは、電場に対する応答速度が互いに異なっている。バルク34Aは、例えば、電場に対して応答しない筋状構造もしくは多孔質構造となっているか、または微粒子34Bの応答速度よりも遅い応答速度を有する棒状構造となっている。バルク34Aは、例えば、微粒子34Bの配向方向または配向膜33,35の配向方向に沿って配向した、配向性および重合性を有する材料(例えばモノマー)を熱および光の少なくとも一方によって重合させることにより形成されている。一方、微粒子34Bは、例えば、液晶材料を主に含んで構成されており、バルク34Aの応答速度よりも十分に早い応答速度を有している。
【0038】
上記した、配向性および重合性を有するモノマーとしては、光学的に異方性を有しており、かつ液晶と複合する材料であればよいが、本実施の形態では紫外線で硬化する低分子モノマーであることが好ましい。電圧無印加の状態で、液晶と、低分子モノマーを重合化した後のもの(高分子材料)との光学的異方性の方向が一致していることが好ましいので、紫外線硬化前において、液晶と低分子モノマーが同一方向に配向していることが好ましい。微粒子34Bとして液晶が用いられる場合に、その液晶が棒状分子であるときには、使用するモノマー材料の形状も棒状であることが好ましい。以上のことから、モノマー材料としては重合性と液晶性を併せ持つ材料を用いることが好ましく、例えば、重合性官能基として、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルエーテル基およびエポキシ基からなる群から選ばれた少なくとも1つの官能基を有することが好ましい。これらの官能基は、紫外線、赤外線または電子線を照射したり、加熱したりすることによって重合させることができる。紫外線照射時の配向度低下を抑制するために、多官能基をもつ液晶性材料を添加することもできる。
【0039】
駆動回路50は、例えば、一の光変調セル30Aにおいて微粒子34Bの光軸AX2がバルク34Aの光軸AX1と平行となり、他の光変調セル30Bにおいて微粒子34Bの光軸AX2がバルク34Aの光軸AX1と交差するように各光変調セル30Bの一対の電極(下側電極32、上側電極36)へ印加する電圧の大きさを制御するようになっている。
【0040】
以下に、本実施の形態のバックライト1の製造方法について、図7(A)〜(C)から図9(A)〜(C)を参照しながら説明する。
【0041】
まず、ガラス基板またはプラスチックフィルム基板からなる透明基板31,37上に、ITOなどの透明導電膜32A,36Aを形成する(図7(A))。次に、表面全体にレジスト層を形成したのち、パターニングによりレジスト層に電極パターン(下側電極32、上側電極36)を形成する(図7(B))。
【0042】
パターニングの方法としては、フォトリソ法やレーザーアブレーション法などを用いることが好ましい。電極パターンは駆動方法および部分駆動の分割数によって決定される。例えば、42インチサイズのディスプレイを12×6分割する場合には、電極幅がおよそ80mm程度のパターンとし、電極間のスリット部分はできるだけ細くする。だたし、後述のぼかし特性から、スリット部分が細すぎてもあまり意味をなさないので、具体的には、10〜500μm程度のスリットとするのがよい。また、ITOナノ粒子をパターン印刷した後、それを焼成することによって電極パターンを形成してもよい。
【0043】
次に、表面全体に配向膜33,35を塗布したのち、乾燥させ、焼成する(図7(C))。配向膜33,35としてポリイミド系材料を用いる場合には、溶媒にNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を用いることが多いが、そのときには、大気下では200℃程度の温度が必要である。なお、この場合に、透明基板31,37としてプラスチック基板を用いる場合には、配向膜33,35を100℃で真空乾燥させ、焼成することもできる。
【0044】
次に、配向膜33上に、セルギャップを形成するためのスペーサ38を乾式または湿式で散布する(図8(A))。なお、真空貼り合わせ法にて光変調セル30Aを作成する場合には、滴下する混合物中にスペーサ38を混合しておいてもよい。また、スペーサ38の替わりとして、フォトリソ法によって柱スペーサを形成することもできる。
【0045】
続いて、配向膜35上に、貼り合わせおよび液晶の漏れを防止するためのシール剤39を、例えば額縁状に塗布する(図8(B))。このシール剤パターン39はディスペンサー法やスクリーン印刷法にて形成することができる。
【0046】
以下に、真空貼り合わせ法(One Drop Fill法、ODF法)について説明するが、真空注入法などで光変調セル30Aを作成することも可能である。
【0047】
まず、セルギャップ、セル面積などから決まる体積分にあたる液晶とモノマーの混合物41を面内に均一に滴下する(図8(C))。混合物41の滴下にはリニアガイド方式の精密ディスペンサーを用いることが好ましいが、シール剤パターン39を土手として利用して、ダイコータなどを用いてもよい。
【0048】
液晶とモノマーは前述の材料を用いることができるが、液晶とモノマーの重量比は98:2〜50:50、好ましくは95:5〜75:25、より好ましくは92:8〜85:15である。液晶の比率を多くすることで駆動電圧を低くすることができるが、あまり液晶を多くしすぎると電圧印加時の白色度が低下したり、電圧オフ後に応答速度が低下するなど透明時に戻りにくくなったりする傾向がある。
【0049】
混合物41には、液晶とモノマーの他には、重合開始剤を添加する。使用する紫外線波長に応じて、添加する重合開始剤のモノマー比を0.1〜10重量%の範囲内で調整する。混合物41には、この他に、重合禁止剤や可塑剤、粘度調整剤なども必要に応じて添加可能である。モノマーが室温で固体やゲル状である場合には、口金やシリンジ、基板を加温することが好ましい。
【0050】
透明基板31および透明基板37を真空貼り合わせ機(図示せず)に配置したのち、真空排気し、貼り合わせを行う(図9(A))。その後、貼り合わせたものを大気に解放し、大気圧での均一加圧によってセルギャップを均一化する。セルギャップは白輝度(白色度)と駆動電圧の関係から適宜選定できるが、5〜40μm、好ましくは6〜20μm、より好ましくは7〜10μmである。
【0051】
貼り合わせ後、必要に応じて配向処理を行うことが好ましい(図示せず)。クロスニコル偏光子の間に、貼り合わせたセルを挿入した際に、光り漏れが生じている場合には、セルをある一定時間加熱処理したり、室温で放置したりして配向させる。その後、紫外線L3を照射してモノマーを重合させてポリマー化する(図9(B))。このようにして、光変調素子30が製造される。
【0052】
紫外線を照射している時には、セルの温度が変化しないようにすることが好ましい。赤外線カットフィルターを用いたり、光源にUV−LEDなどを用いたりすることが好ましい。紫外線照度は複合材料の組織構造に影響を与えるので、使用する液晶材料やモノマー材料、これらの組成から適宜調整することが好ましく、0.1〜500mW/cm2の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5〜30mW/cm2である。紫外線照度が低いほど駆動電圧が低くなる傾向にあり、生産性と特性の両面から好ましい紫外線照度を選定することができる。
【0053】
そして、導光板10に光変調素子30を貼り合わせる。貼り合わせには、粘着、接着のいずれでもよいが、導光板10の屈折率と光変調素子30の基板材料の屈折率とにできるだけ近い屈折率の材料で粘着、接着することが好ましい。最後に、下側電極32および上側電極36に引き出し線(図示せず)を取り付ける。このようにして、本実施の形態のバックライト1が製造される。
【0054】
このように、光変調素子30を作成し、最後に導光板10に光変調素子30を貼り合わせるプロセスを説明したが、導光板10の表面に、配向膜35を形成した透明基板37を予め貼り合わせてから、バックライト1を作成することもできる。また、枚葉方式、ロール・ツー・ロール方式のいずれでもバックライト1を作成することができる。
【0055】
次に、本実施の形態のバックライト1の作用および効果について説明する。
【0056】
本実施の形態のバックライト1では、光源20からの光が導光板10に入射し、導光板10の上面や、光変調素子30のうち透明領域30Aの下面で反射され、導光板10および光変調素子30内を伝播していく(図6参照)。このとき、導光板10および光変調素子30内を伝播している光は、光変調素子30のうち散乱領域30Bにおいて散乱される。この散乱光のうち散乱領域30Bの下面を透過した光は反射板40で反射され、再度、導光板10に戻されたのち、バックライト1の上面から射出される。また、散乱光のうち、散乱領域30Bの上面に向かった光は、導光板10を透過したのち、バックライト1の上面から射出される。このように、本実施の形態では、透明領域30Aの上面からは光はほとんど射出されず、散乱領域30Bの上面から光が射出される。このようにして、正面方向の変調比を大きくしている。
【0057】
一般に、PDLCは、液晶材料と等方性の低分子材料とを混合し、紫外線照射や溶媒の乾燥などにより相分離を起こさせることによって形成され、液晶材料の微小粒子が高分子材料中に分散された複合層となっている。この複合層中の液晶材料は、電圧無印加時にはランダムな方向を向いているので散乱性を示すが、電圧印加時には電場方向に配向するので、液晶材料の常光屈折率と高分子材料の屈折率とが互いに等しい場合には、正面方向(PDLCの法線方向)において高い透明性を示す。しかし、この液晶材料では、斜め方向においては、液晶材料の異常光屈折率と高分子材料との差が顕著となり、正面方向が透明性であっても斜め方向において散乱性が発現してしまう。
【0058】
通常、PDLCを使った光変調素子は、表面に透明導電膜の形成された2枚のガラス板の間にPDLCを挟み込んだ構造となっていることが多い。上述したような構造を有する光変調素子に対して空気中から斜めに光が入射した場合には、その斜め方向から入射した光は空気とガラス板の屈折率差によって屈折し、より小さな角度でPDLCに入射することになる。そのため、このような光変調素子においては、大きな散乱は生じない。例えば、空気中から80°の角度で光が入射した場合には、その光のPDLCへの入射角はガラス界面での屈折によって40°程度にまで小さくなる。
【0059】
しかし、導光板を用いたエッジライト方式では、導光板越しに光が入射するので、光が80°程度の大きな角度でPDLC中を横切ることになる。そのため、液晶材料の異常光屈折率と高分子材料の屈折率との差が大きく、さらに、より大きな角度で光がPDLC中を横切るので、散乱を受ける光路も長くなる。例えば、常光屈折率1.5、異常光屈折率1.65の液晶材料の微小粒子が屈折率1.5の高分子材料中に分散されている場合には、正面方向(PDLCの法線方向)においては屈折率差がないが、斜め方向においては屈折率差が大きくなる。このため、斜め方向の散乱性を小さくすることができないので、視野角特性が悪い。さらに、導光板上に拡散フィルムなどの光学フィルムを設けた場合には、斜め漏れ光が拡散フィルムなどによって正面方向にも拡散されるので、正面方向の光漏れが大きくなり、正面方向の変調比が低くなってしまう。
【0060】
一方、本実施の形態では、バルク34Aおよび微粒子34Bが光学異方性材料を主に含んで形成されているので、斜め方向において、散乱性が小さくなり、透明性を向上させることができる。例えば、バルク34Aおよび微粒子34Bが、互いに常光屈折率が等しく、かつ互いに異常光屈折率も等しい光学異方性材料を主に含んで構成され、かつ、これらの光軸の向きが一致している場合には、正面方向(光変調素子30の法線方向)および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差がなく、高い透明性が得られる。
【0061】
例えば、常光屈折率1.5、異常光屈折率1.65の液晶と、常光屈折率1.5、異常光屈折率1.65の液晶性モノマーとを混合し、配向膜または電界によって液晶と液晶性モノマーを配向させた状態で液晶性モノマーを重合させると、液晶の光軸と、液晶性モノマーが重合することによって形成されたポリマーの光軸とが互いに一致する。これにより、あらゆる方向で屈折率が一致するので、透明性が高い状態を実現できる。
【0062】
これにより、暗状態において、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減またはほとんどなくすることができるので、視野角特性を良くすることができる。また、光の漏洩量が減少した分だけ、部分的な明状態の部分を明るくすることが可能となる。従って、本実施の形態では、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減またはほとんどなくしつつ、表示輝度を向上させることができる。その結果、正面方向の変調比を高くすることができる。
【0063】
また、本実施の形態では、例えば、図6(A),(B)に示したように、透明領域30Aの輝度(黒表示の輝度)が、光変調素子30を設けていない場合(図6(B)中の一点鎖線)と比べて下がっている。他方、散乱領域30Bの輝度は、光変調素子30を設けていない場合(図6(B)中の一点鎖線)と比べて極めて高くなり、しかも、透明領域30Aの輝度が低下した分だけ、部分的な白表示の輝度(輝度突き上げ)が大きくなる。
【0064】
ところで、輝度突き上げとは、全面白表示した場合に比べて、部分的に白表示を行った場合の輝度を高くする技術である。CRTやPDPなどでは一般によく使われている技術である。しかし、液晶ディスプレイでは、バックライトは画像にかかわらず全体に均一発光しているので、部分的に輝度を高くすることはできない。もっとも、バックライトを、複数のLEDを2次元配置したLEDバックライトとした場合には、LEDを部分的に消灯することは可能である。しかし、そのようにした場合には、LEDを消灯した暗領域からの拡散光がなくなるので、全てのLEDを点灯した場合と比べて、輝度が低くなってしまう。また、部分的に点灯しているLEDに対して流す電流を大きくすることにより、輝度を増やすことも可能であるが、そのようにした場合には、非常に短時間に大電流が流れるので、回路の負荷や信頼性の点で問題が残る。
【0065】
一方、本実施の形態では、バルク34Aおよび微粒子34Bが光学異方性材料を主に含んで形成されているので、斜め方向の散乱性が抑制され、暗状態での導光板からの漏れ光が少ない。これにより、部分的な暗状態の部分から部分的な明状態の部分に導光するので、バックライト1への投入電力を増やすことなく、輝度突き上げを実現することができる。
【0066】
[変形例]
上記実施の形態では、光変調素子30は、導光板10の背後(下面)に空気層を介さずに密着して接合されていたが、例えば、図10に示したように、導光板10の上面に空気層を介さずに密着して接合されていてもよい。また、光変調素子30は、例えば、図11に示したように、導光板10の内部に設けられていてもよい。ただし、この場合でも、光変調素子30は、導光板10と空気層を介さずに密着して接合されていることが必要である。
【0067】
また、上記実施の形態では、導光板10の上に特に何も設けられていなかったが、導光板10は、例えば、図11に示したように、光学シート70(例えば、拡散板、拡散シート、レンズフィルム、偏光分離シートなど)を設けてもよい。
【0068】
[適用例]
次に、上記実施の形態のバックライト1の一適用例について説明する。
【0069】
図13は、本適用例にかかる表示装置2の概略構成の一例を表したものである。この表示装置2は、液晶表示パネル80(表示パネル)と、液晶表示パネル80の背後に配置されたバックライト1とを備えている。
【0070】
液晶表示パネル80は、映像を表示するためのものである。この液晶表示パネル80は、例えば、映像信号に応じて各画素が駆動される透過型の表示パネルであり、液晶層を一対の透明基板で挟み込んだ構造となっている。具体的には、液晶表示パネル80は、バックライト1側から順に、偏光子、透明基板、画素電極、配向膜、液晶層、配向膜、共通電極、カラーフィルタ、透明基板および偏光子を有している。
【0071】
透明基板は、可視光に対して透明な基板、例えば板ガラスからなる。なお、バックライト1側の透明基板には、図示しないが、画素電極に電気的に接続されたTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)および配線などを含むアクティブ型の駆動回路が形成されている。画素電極および共通電極は、例えばITOからなる。画素電極は、透明基板上に格子配列またはデルタ配列されたものであり、画素ごとの電極として機能する。他方、共通電極は、カラーフィルタ上に一面に形成されたものであり、各画素電極に対して対向する共通電極として機能する。配向膜は、例えばポリイミドなどの高分子材料からなり、液晶に対して配向処理を行う。液晶層は、例えば、VA(Vertical Alignment)モード、TN(Twisted Nematic)モードまたはSTN(Super Twisted Nematic)モードの液晶からなり、駆動回路(図示せず)からの印加電圧により、バックライト1からの射出光の偏光軸の向きを画素ごとに変える機能を有する。なお、液晶の配列を多段階で変えることにより画素ごとの透過軸の向きが多段階で調整される。カラーフィルタは、液晶層を透過してきた光を、例えば、赤(R)、緑(G)および青(B)の三原色にそれぞれ色分離したり、または、R、G、Bおよび白(W)などの四色にそれぞれ色分離したりするカラーフィルタを、画素電極の配列と対応させて配列したものである。フィルタ配列(画素配列)としては、一般的に、ストライプ配列や、ダイアゴナル配列、デルタ配列、レクタングル配列のようなものがある。
【0072】
偏光子は、光学シャッタの一種であり、ある一定の振動方向の光(偏光)のみを通過させる。なお、偏光子は、透過軸以外の振動方向の光(偏光)を吸収する吸収型の偏光素子であってもよいが、バックライト1側に反射する反射型の偏光素子であることが輝度向上の観点から好ましい。偏光子はそれぞれ、偏光軸が互いに90度異なるように配置されており、これによりバックライト1からの射出光が液晶層を介して透過し、あるいは遮断されるようになっている。
【0073】
駆動回路50は、例えば、複数の光変調セル30Aのうち黒表示の画素位置に対応するセルにおいて微粒子34Bの光軸AX2がバルク34Aの光軸AX1と平行となり、複数の光変調セル30Aのうち白表示の画素位置に対応するセルにおいて微粒子34Bの光軸AX2がバルク34Aの光軸AX1と交差するように各光変調セル30Aの一対の電極(下側電極32、上側電極36)へ印加する電圧の大きさを制御するようになっている。
【0074】
本適用例では、液晶表示パネル80を照明する光源として、上記実施の形態のバックライト1が用いられている。これにより、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減またはほとんどなくしつつ、表示輝度を向上させることができる。その結果、正面方向の変調比を高くすることができる。また、バックライト1への投入電力を増やすことなく、輝度突き上げを実現することができる。
【0075】
また、本適用例では、バックライト1は、表示画像に合わせて部分的に液晶表示パネル80に入射する光強度を変調する。しかし、光変調素子30に含まれる電極(下側電極32、上側電極36)のパターンエッジ部分で急激な明るさ変化があると、表示画像上でもその境界部分が見えてしまう。そこで、できるだけ電極境界部分において、明るさが単調に変化する特性が求められ、そのような特性のことをぼかし特性と呼ぶ。ぼかし特性を大きくするためには、拡散性の強い拡散板を用いるのが効果的であるが、拡散性が強いと、全光線透過率も低くなるので明るさが低くなる傾向にある。従って、本適用例において、光学シート70に拡散板を用いる場合には、その拡散板の全光線透過率は、50%〜85%であることが好ましく、60%〜80%であることがより好ましい。また、導光板10と、バックライト1内の拡散板との空間距離を大きくすればするほど、ぼかし特性は良くなる。また、この他に、光変調素子30に含まれる電極(下側電極32、上側電極36)のパターンの数を増やし、明と暗ができるだけ単調に変化するように各電極の電圧を調整することもできる。
【0076】
[実施例]
以下、本発明の実施例について説明する。なお、下記の実施例は例示であり、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0077】
(セル作成方法)
ITOを塗布したガラス基板(125mm角)に、レーザーアブレーション法にて10mm幅の電極パターンを形成した。アルカリ洗浄液で超音波印加洗浄をした後、超純水でリンスし、ブロー乾燥することにより電極パターン基板を得た。電極パターン基板にポリイミド系の垂直配向膜をスピンコータにて塗布した後、200℃で焼成して垂直配向膜を形成した。配向膜を形成した電極パターン基板上に平均粒子径7μmのプラスチックビーズを散布した後、熱硬化シール剤を周辺に塗布した。さらに対向となる電極パターン基板を重ねて硬化処理を行い、空セルを作成した。予め、液晶と、紫外線硬化性の液晶性モノマーと、重合開始剤とを所定組成になるように混合した溶液(以下、モノマー混合液晶と称する。)を空セルに注入した。必要に応じて加熱しながらモノマー混合液晶を注入した。クロスニコル偏光子の間に、モノマー混合液晶を注入したセルを挿入して、透過光にて配向状態を目視にて確認した。その後、紫外線を照射して液晶中のノマーを硬化させた。さらに、液晶を用いずにモノマーと開始剤とを混合した溶液を用いて同様に異方性評価用セルを作成し、エリプソメータを用いてリタデーションの存在および光軸方向を評価した。
【0078】
(評価方法)
(1)屈折率
液晶およびモノマーの屈折率を、アッベ屈折計を用いて測定した。ガラスステージ下面および上部ガラスブロックに垂直配向膜を塗布し液晶またはモノマーを配向させ、接眼鏡筒部に偏光子を貼り付け、射出した偏光成分を変えて、常光屈折率(no)、異常光屈折率(ne)を求めた。入射する白色光にバンドパスフィルターを付け、入射波長を589nmとして、25℃にて評価した。
(2)変調比
作成したセルの上層に10mm厚みのアクリル製導光板を屈折率1.51のマッチングオイルで貼り付けて、エッジ部分から白色LEDの光を照射した。作成したセルの下面には空気層を介してミラー反射板を置き、導光板上部には光学フィルムをのせた。光学フィルムの種類や組み合わせを変えながら、セル基板の法線方向の正面輝度を測定した。輝度計としてトプコン製のSR-UL1を用いた。このとき、距離を50cm、測定角を1°とした。セルに電圧を印加しない場合を黒輝度とし、電圧印加した場合を白輝度として、白輝度/黒輝度の値を変調比とした。印加する電圧は80V(1kHzパルス)とした。
(3)輝度突き上げ
作成したセルのうち、LED照射側の端面から最も離れた10mm幅の3ラインの輝度に関して、その3ライン以外のラインのセルに電圧を印加した場合の輝度をLaとし、そのセルに電圧を印加しなかった場合の輝度をLbとし、Lb/Laを輝度突き上げとした。
【0079】
表1は、実施例および比較例における液晶とモノマーの組み合わせと、その評価結果を示したものである。
【表1】
【0080】
(材料の屈折率)
表2は、液晶およびモノマーの屈折率評価結果を示したものである。
【表2】
【0081】
(実施例1〜5)
液晶材料、モノマー材料の種類、これらの組成が表1に記載の組み合わせとなるようにセルを作成した。いずれの実施例のセルも、電圧無印加時の外観は透明、電圧印加時の外観は白濁であった。電圧無印加状態では、クロスニコル偏光子での観察において光りの漏れはなかった。いずれの異方性評価用セルにもリタデーションが存在し、光軸方向が基板法線方向であった。
【0082】
(比較例1、2)
比較例1では、DIC社製の高分子分散液晶材料(“PNM-170”)を用いた。また、比較例2では、メルク社製の液晶材料とモノマー材料(PN393)とを80:20となるよう混合したモノマー混合液晶を用いた。そしていずれの比較例にも配向膜を用いなかった。なお、それぞれの比較例において、それ以外の要素については、実施例同様にセルを作成した。作成したセルでは、電圧無印加時の外観は白濁しており、電圧印加時の外観は基板法線方向で透明であったが、斜め方向では白濁していた。異方性評価セルにはリタデーションはなかった。
【0083】
斜め方向の光漏れ(視野角特性)は、実施例では、黒表示(電圧無印加時)において正面および斜め方向の光漏れが少なく、視野角特性が良好であった。一方、比較例では、黒表示(電圧印加時)において正面方向にくらべて斜め方向の光漏れが大きく、視野角特性が悪かった。比較例においては、斜めも光が大きく、視野角特性が悪いことが一目瞭然であった。
【0084】
図14(A)〜(D)は、実施例1と比較例1と同様に作成した30×40mmサイズセルの漏れ光の様子を示したものである。実施例1では斜め漏れ光が少ないのに対して、比較例1では斜め漏れ光が多いことがわかった。表1に示したいずれの実施例においても、比較例に対して光学フィルムがない場合および全光線透過率77%の拡散板をのせた場合のいずれにおいても、変調比が高いことがわかった。実施例2において、輝度突き上げの評価を行ったところ、全光線透過率77%の拡散板をのせた場合には、輝度突き上げが1.5倍となり、拡散フィルムとレンズシートをのせた場合には1.6倍となった。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施の形態に係るバックライトの構成の一例を表す断面図である。
【図2】図1の電極の構成の一例を表す断面図である。
【図3】図1のバックライトの構成の他の例を表す断面図である。
【図4】図1の光変調素子の作用について説明するための模式図である。
【図5】図1の光変調素子の作用について説明するための模式図である。
【図6】図1のバックライトの作用について説明するための模式図である。
【図7】図1のバックライトの製造工程について説明するための断面図である。
【図8】図7に続く製造工程について説明するための断面図である。
【図9】図8に続く製造工程について説明するための断面図である。
【図10】図1のバックライトの構成のその他の例を表す断面図である。
【図11】図1のバックライトの構成のその他の例を表す断面図である。
【図12】図1のバックライトの構成のその他の例を表す断面図である。
【図13】一適用例にかかる表示装置の一例を表す断面図である。
【図14】実施例および比較例にかかる表示装置の漏れ光の様子を撮影したものである。
【符号の説明】
【0086】
1…バックライト、2…表示装置、10…導光板、20…光源、30…光変調素子、30A…光変調セル、31,37…透明基板、32…下側電極、33,35…配向膜、34…光変調層、34A…バルク、34B…微粒子、36…上側電極、40…反射板、50…駆動回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光に対して散乱性または透明性を示す光変調素子を備えた照明装置および表示装置、ならびにその光変調素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイの高画質化や省エネ化が急進展し、部分的にバックライトの光強度を変調することによって暗所コントラストの向上を実現する方式が提案されている。この手法は主に、バックライトの光源として用いられる発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)を部分的に駆動して、表示画像に合わせてバックライト光を変調するものである。また、大型の液晶ディスプレイにおいて、小型の液晶ディスプレイと同様、薄型化の要求が強まってきており、冷陰極管(CCFL;Cold Cathode Fluorescent Lamp)やLEDを液晶パネルの直下に配置する方式ではなく、導光板の端部に光源を配置するエッジライト方式が注目されている。しかし、エッジライト方式では、光源の光強度を部分的に変調する部分駆動を行うことは難しい。
【0003】
【特許文献1】特開平6−347790号公報
【特許文献2】特許第3479493号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、導光板内を伝播している光の取り出し技術としては、例えば、特許文献1において、透明と散乱を切り換える高分子分散液晶(PDLC;Polymer Dispersed Liquid Crystal)を用いた表示装置が提案されている。これは、写り込み防止などを目的としたものであり、PDLCに対して部分的に電圧を印加して、透明と散乱を切り換える技術である。しかし、この方式では、PDLCが正面方向(PDLCの法線方向)において透明状態となっている場合に、導光板内を斜めに伝播している光の一部が液晶材料と高分子材料との屈折率差によって散乱される。そのため、視野角の大きい範囲において光が漏れ出てしまい、視野角特性が悪化してしまう。そこで、視野角特性を改善するために、例えば、斜め方向に漏れ出た光を偏光板に吸収させることが考えられる(特許文献2参照)。
【0005】
しかし、この方策では、斜め方向に漏れ出た光が偏光板に吸収されてしまうので、表示が暗くなってしまうという問題があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減しつつ、表示輝度を向上させることの可能な照明装置、表示装置および光変調素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の照明装置は、導光板と、導光板の側面に配置された光源と、導光板の表面または内部に配置されると共に導光板と接着された光変調素子とを備えたものである。上記光変調素子は、離間して互いに対向配置された一対の透明基板と、一対の透明基板のそれぞれの表面に設けられた一対の電極と、一対の透明基板の間隙に設けられた光変調層とを有している。上記光変調層は、光学異方性を有すると共に電場に対する応答速度が互いに異なる第一領域および第二領域を含んでいる。
【0008】
本発明の表示装置は、マトリクス状に配置された複数の画素を有すると共に、複数の画素が画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、表示パネルを照明する上記照明装置とを備えたものである。
【0009】
本発明の第一の照明装置および表示装置では、導光板に接着された光変調素子内に、第一領域および第二領域を含んだ光変調層が設けられている。第一領域および第二領域は共に光学異方性を有しており、これらの電場に対する応答速度が互いに異なっている。これにより、電場制御によって、第一領域および第二領域の光軸の向きを互いに一致させたり、互いに異ならせたりすることが可能となる。従って、例えば、双方の常光屈折率を互いに近接させると共に、双方の異常光屈折率も互いに近接させ、かつ、電場制御によって、第一領域および第二領域の光軸の向きを互いに一致させたときには、正面方向および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差が小さくなり、高い透明性が得られる。また、例えば、双方の常光屈折率を互いに等しくすると共に、双方の異常光屈折率も互いに等しくし、かつ、電場制御によって、第一領域および第二領域の光軸の向きを互いに一致させたときには、正面方向および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差がほとんどなく、さらに高い透明性が得られる。
【0010】
本発明の第二の照明装置は、導光板と、導光板の側面に配置された光源と、導光板の表面または内部に配置されると共に導光板と接着された光変調素子とを備えたものである。上記光変調素子は、離間して互いに対向配置された一対の透明基板と、一対の透明基板のそれぞれの表面に設けられた一対の電極と、一対の透明基板の間隙に設けられた光変調層とを有している。上記光変調層は、電場に対する応答速度が互いに異なる複数の領域を含んでおり、かつ、一対の電極に電圧が印加されている時に光源からの光に対して散乱性を示し、一対の電極に電圧が印加されていない時に光源からの光に対して透明性を示すようになっている。
【0011】
本発明の第二の照明装置では、導光板に接着された光変調素子内に、電場に対する応答速度が互いに異なる複数の領域が設けられており、その光変調層において、一対の電極に電圧が印加されている時に光源からの光に対して散乱性を示し、一対の電極に電圧が印加されていない時に光源からの光に対して透明性を示す。このように、電場制御によって、光変調層が光源からの光に対して透明となるのは、例えば、上記した複数の領域の光軸の向きが互いに一致し、かつ正面方向および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差が小さいか、またはほとんどないことに起因しているといえる。
【0012】
本発明の光変調素子の製造方法は、表面上に電極および配向膜が形成された2つの透明基板を、それぞれ配向膜が互いに向き合うように対向配置する共に、液晶材料と、配向性および重合性を有する材料とを複合した複合層を間にして重ね合わせたのち、配向性および重合性を有する材料を熱および光の少なくとも一方によって重合させるステップを含むものである。
【0013】
本発明の光変調素子の製造方法では、2つの透明基板に挟まれた複合層に含まれる配向性および重合性を有する材料が熱および光の少なくとも一方によって重合される。これにより、重合された後の材料は、液晶材料の光軸の向きと一致する向きの光学異方性を発現する。また、重合された後の材料の光軸方向の長さは液晶材料の光軸方向の長さよりも長くなるので、電場に対する応答速度は、重合された後の材料を含む領域の方が液晶材料を含む領域よりも遅くなる。その結果、電場制御によって、重合された後の材料を含む領域と、液晶材料を含む領域との光軸の向きを互いに一致させたり、互いに異ならせたりすることが可能となる。従って、上述した場合と同様、正面方向および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差を小さくしたり、なくしたりすることができ、その結果、高い透明性を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第一の照明装置および表示装置によれば、導光板に接着された光変調素子内に、光学異方性を有し、かつ電場に対する応答速度が互いに異なる第一領域および第二領域を設けるようにしたので、正面方向および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差を小さくしたり、なくしたりすることができ、高い透明性を得ることができる。これにより、暗状態において、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減またはほとんどなくすることができる。また、光の漏洩量が減少した分だけ、部分的な明状態の部分を明るくすることが可能となる。従って、本発明では、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減またはほとんどなくしつつ、表示輝度を向上させることができる。
【0015】
本発明の光変調素子の製造方法によれば、2つの透明基板に挟まれた複合層に含まれる配向性および重合性を有する材料を熱および光の少なくとも一方によって重合するようにしたので、正面方向および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差を小さくしたり、なくしたりすることができ、高い透明性を得ることができる。これにより、暗状態において、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減またはほとんどなくすることができる。また、光の漏洩量が減少した分だけ、部分的な明状態の部分を明るくすることが可能となる。従って、本発明では、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減またはほとんどなくしつつ、表示輝度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする。)について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(バックライト)
2.変形例(バックライト、光変調素子の位置、光学シートの追加)
3.適用例(表示装置)
【0017】
図1(A)は、本発明の一実施の形態に係るバックライト1(照明装置)の断面構成の一例を表したものである。図1(B)は、図1のバックライト1の断面構成の一例を表したものである。なお、図1(A),(B)は、模式的に表したものであり、実際の寸法や形状と同一であるとは限らない。このバックライト1は、例えば、液晶表示パネルなどを背後から照明するものであり、導光板10と、導光板10の側面に配置した光源20と、導光板11の背後に配置した光変調素子30および反射板40と、光変調素子30を駆動する駆動回路50とを備えている。
【0018】
導光板10は、導光板10の側面に配置した光源20からの光を導光板10の上面に導くものである。この導光板10は、導光板10の上面に配置される表示パネル(図示せず)に対応した形状、例えば、上面、下面および側面で囲まれた直方体状となっている。導光板10は、例えば、上面および下面の少なくとも一方の面に、所定のパターン化された形状を有しており、側面から入射した光を散乱し、均一化する機能を有している。なお、バックライト1に印加する電圧を変調することによって輝度の均一化を行う場合には、パターン化されていない平坦な導光板を導光板10として用いることも可能である。この導光板10は、例えば、表示パネルとバックライト1との間に配置される光学シート(例えば、拡散板、拡散シート、レンズフィルム、偏光分離シートなど)を支持する支持体としても機能する。導光板10は、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)やアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート(PMMA)などの透明熱可塑性樹脂を主に含んで構成されている。
【0019】
光源20は、線状光源であり、例えば、熱陰極管(HCFL;Hot Cathode Fluorescent Lamp)、CCFL、または複数のLEDを一列に配置したものなどからなる。光源20は、図1(A)に示したように、導光板10の一の側面にだけ設けられていてもよいし、導光板10の2つの側面、3つの側面または全ての側面に設けられていてもよい。
【0020】
反射板40は、導光板10の背後から光変調素子30を介して漏れ出てきた光を導光板10側に戻すものであり、例えば、反射、拡散、散乱などの機能を有している。これにより、光源20からの射出光を効率的に利用することができ、また、正面輝度の向上にも役立っている。この反射板40は、例えば、発泡PET(ポリエチレンテレフタレート)や銀蒸着フィルム、多層膜反射フィルム、白色PETなどからなる。
【0021】
光変調素子30は、本実施の形態において、導光板10の背後(下面)に空気層を介さずに密着しており、例えば接着剤(図示せず)を介して導光板10の背後に接着されている。この光変調素子30は、例えば、図1(B)に示したように、透明基板31、下側電極32、配向膜33、光変調層34、配向膜35、上側電極36および透明基板37を反射板40側から順に配置されたものである。
【0022】
透明基板31,37は、光変調層34を支持するものであり、一般に、可視光に対して透明な基板、例えば、ガラス板や、プラスチックフィルムによって構成されている。下側電極32は、透明基板31のうち透明基板37との対向面上に設けられたものであり、例えば、図2に光変調素子30の一部を抜き出して示したように、面内の一の方向に延在する帯状の形状となっている。また、上側電極36は、透明基板37のうち透明基板31との対向面上に設けられたものであり、例えば、図2に示したように、面内の一の方向であって、かつ下側電極32の延在方向と交差(直交)する方向に延在する帯状の形状となっている。
【0023】
なお、下側電極32および上側電極36の形状は、駆動方式に依存するものである。例えば、これらが上述したような帯状の形状となっている場合には、例えば、各電極を単純マトリクス駆動することが可能である。一方がベタ膜となっており、他方が微小な方形状となっている場合には、例えば、各電極をアクティブマトリクス駆動することが可能である。
【0024】
下側電極32および上側電極36のうち少なくとも上側電極36(バックライト1の上面側の電極)は透明な導電性材料、例えば、酸化インジウムスズ(ITO;Indium Tin Oxide)からなる。ただし、下側電極32(バックライト1の下面側の電極)については、透明な材料でなくてもよく、例えば、金属によって構成されていてもよい。なお、下側電極32が金属によって構成されている場合には、下側電極32は、反射板40と同様、導光板10の背後から光変調素子30に入射する光を反射する機能も兼ね備えていることになる。従って、この場合には、例えば、図3に示したように、反射板40をなくすることも可能である。
【0025】
下側電極32および上側電極36を光変調素子30の法線方向から見たときに、光変調素子30のうち下側電極32および上側電極36が互いに対向している箇所に対応する部分が光変調セル30Aを構成している。各光変調セル30Aは、下側電極32および上側電極36に所定の電圧を印加することにより別個独立に駆動することの可能なものであり、下側電極32および上側電極36に印加される電圧値の大きさに応じて、光源20からの光に対して透明性を示したり、散乱性を示したりする。なお、透明性、散乱性については、光変調層34を説明する際に詳細に説明する。
【0026】
配向膜33,35は、例えば、光変調層34に用いられる液晶やモノマーを配向させるものである。配向膜の種類としては、例えば、垂直用配向膜および水平用配向膜があるが、配向膜33,35には垂直用配向膜を用いることが好ましい。垂直用配向膜としては、シランカップリング材料や、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリイミド系材料、界面活性剤などを用いることが可能である。なお、これらの材料では、配向膜の形成に際してラビング処理を行う必要がなく、ダストや静電気の点で優れている。また、透明基板31,37としてプラスチックフィルムを用いる場合には、製造工程において、透明基板31,37の表面に配向膜33,35を塗布した後の焼成温度ができるだけ低いことが好ましいことから、配向膜33,35としてアルコール系溶媒を使用することの可能なシランカップリング材料を用いることが好ましい。
【0027】
また、垂直、水平いずれの配向膜においても、液晶とモノマーを配向させる機能があれば十分であり、通常の液晶ディスプレイに要求される電圧の繰り返し印加による信頼性などは必要ない。デバイス作成後の電圧印加による信頼性は、モノマーを重合したものと液晶との界面で決まるためである。また、配向膜を用いなくても、例えば、下側電極32および上側電極36間に電場や磁場を印加することによっても、光変調層34に用いられる液晶やモノマーを配向させることが可能である。つまり、下側電極32および上側電極36間に電場や磁場を印加しながら、紫外線照射して電圧印加状態での液晶やモノマーの配向状態を固定させることができる。配向膜の形成に電圧を用いる場合には、配向用と駆動用とで別々の電極を形成するか、液晶材料に周波数によって誘電率異方性の符号が反転する二周波液晶などを用いることができる。また、配向膜の形成に磁場を用いる場合、配向膜として磁化率異方性の大きい材料を用いることが好ましく、例えば、ベンゼン環の多い材料を用いることが好ましい。
【0028】
光変調層34は、例えば、図1(B)に示したように、バルク34A(第二領域)と、バルク34A内に分散された微粒子状の複数の微粒子34B(第一領域)とを含んだ複合層となっている。バルク34Aおよび微粒子34Bは光学異方性を有している。
【0029】
図4(A)は、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されていない時の、微粒子34B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。なお、図4(A)において、バルク34A内の配向状態についての記載を省略した。図4(B)は、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されていない時の、バルク34Aおよび微粒子34Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。この屈折率楕円体は、様々な方向から入射した直線偏光の屈折率をテンソル楕円体で表したものであり、光が入射する方向からの楕円体の断面を見ることによって、幾何的に屈折率を知ることができるものである。図4(C)は、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されていない時の、正面方向に向かう光L1と、斜め方向に向かう光L2とが光変調層34を透過する様子の一例を模式的表したものである。
【0030】
図5(A)は、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されている時の、微粒子34B内の配向状態の一例を模式的に表したものである。なお、図5(A)において、バルク34A内の配向状態についての記載を省略した。図5(B)は、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されている時の、バルク34Aおよび微粒子34Bの屈折率異方性を示す屈折率楕円体の一例を表したものである。図5(C)は、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されている時の、正面方向に向かう光L1と、斜め方向に向かう光L2とが光変調層34において散乱される様子の一例を模式的表したものである。
【0031】
バルク34Aおよび微粒子34Bは、例えば、図4(A),(B)に示したように、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されていない時に、バルク34Aの光軸AX1および微粒子34Bの光軸AX2の向きが互いに一致する(平行となる)ような構造となっている。なお、光軸AX1,AX2とは、偏光方向によらず屈折率が一つの値になるような光線の進行方向と平行な線を指している。また、光軸AX1および光軸AX2の向きは常に互いに一致している必要はなく、光軸AX1の向きと光軸AX2の向きとが、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよい。
【0032】
また、微粒子34Bは、例えば、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されていない時に、微粒子34Bの光軸AX2が透明基板31,37の表面と直交している。一方、バルク34Aは、例えば、図4(A),(B),図5(A),(B)に示したように、下側電極32および上側電極36間への電圧印加の有無に拘らず、バルク34Aの光軸AX1が透明基板31,37の表面と直交するような構造となっている。なお、光軸AX2が常に透明基板31,37の表面と直交している必要はなく、例えば製造誤差などによって透明基板31,37の表面と90度以外の角度で交差していてもよい。また、光軸AX1が常に透明基板31,37の表面と直交している必要はなく、例えば製造誤差などによって透明基板31,37の表面と90度以外の角度で交差していてもよい。
【0033】
ここで、バルク34Aおよび微粒子34Bの常光屈折率が互いに等しく、かつバルク34Aおよび微粒子34Bの異常光屈折率が互いに等しいことが好ましい。この場合に、例えば、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されていない時には、図4(A)に示したように、正面方向および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差がほとんどなく、高い透明性が得られる。これにより、例えば、図4(C)に示したように、正面方向に向かう光L1および斜め方向に向かう光L2は、光変調層34内で散乱されることなく、光変調層34を透過する。その結果、例えば、図6(A),(B)に示したように、光源20からの光L(斜め方向からの光)は、透明領域30Aの界面(透明基板31または導光板10と空気との界面)において全反射され、透明領域30Aの輝度(黒表示の輝度)が、光変調素子30を設けていない場合(図6(B)中の一点鎖線)と比べて下がる。
【0034】
また、バルク34Aおよび微粒子34Bは、例えば、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されている時には、図5(A)に示したように、バルク34Aの光軸AX1および微粒子34Bの光軸AX2の向きが互いに異なる(交差する)ような構造となっている。また、微粒子34Bは、例えば、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されている時に、微粒子34Bの光軸AX2が透明基板31,37の表面と90度以外の角度で交差するか、または平行となるような構造となっている。したがって、下側電極32および上側電極36間に電圧が印加されている時には、光変調層34において、正面方向および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差が大きくなり、高い散乱性が得られる。これにより、例えば、図5(C)に示したように、正面方向に向かう光L1および斜め方向に向かう光L2は、光変調層34内で散乱される。その結果、例えば、図6(A),(B)に示したように、光源20からの光L(斜め方向からの光)は、散乱領域30Bの界面(透明基板31または導光板10と空気との界面)を透過すると共に、反射板40側に透過した光は反射板40で反射され、光変調素子30を透過する。従って、散乱領域30Bの輝度は、光変調素子30を設けていない場合(図6(B)中の一点鎖線)と比べて極めて高くなり、しかも、透明領域30Aの輝度が低下した分だけ、部分的な白表示の輝度(輝度突き上げ)が大きくなる。
【0035】
なお、バルク34Aおよび微粒子34Bの常光屈折率は、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよく、例えば、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。また、バルク34Aおよび微粒子34Bの異常光屈折率についても、例えば製造誤差などによって多少ずれていてもよく、例えば、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。
【0036】
また、バルク34Aの屈折率差(Δn0=常光屈折率n0−異常光屈折率n1)や、微粒子34Bの屈折率差(Δn1=常光屈折率n2−異常光屈折率n3)は、できるだけ大きいことが好ましく、0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.15以上であることがさらに好ましい。バルク34Aおよび微粒子34Bの屈折率差が大きい場合には、光変調層34の散乱能が高くなり、導光条件を容易に破壊することができ、導光板10からの光を取り出しやすいからである。
【0037】
また、バルク34Aおよび微粒子34Bは、電場に対する応答速度が互いに異なっている。バルク34Aは、例えば、電場に対して応答しない筋状構造もしくは多孔質構造となっているか、または微粒子34Bの応答速度よりも遅い応答速度を有する棒状構造となっている。バルク34Aは、例えば、微粒子34Bの配向方向または配向膜33,35の配向方向に沿って配向した、配向性および重合性を有する材料(例えばモノマー)を熱および光の少なくとも一方によって重合させることにより形成されている。一方、微粒子34Bは、例えば、液晶材料を主に含んで構成されており、バルク34Aの応答速度よりも十分に早い応答速度を有している。
【0038】
上記した、配向性および重合性を有するモノマーとしては、光学的に異方性を有しており、かつ液晶と複合する材料であればよいが、本実施の形態では紫外線で硬化する低分子モノマーであることが好ましい。電圧無印加の状態で、液晶と、低分子モノマーを重合化した後のもの(高分子材料)との光学的異方性の方向が一致していることが好ましいので、紫外線硬化前において、液晶と低分子モノマーが同一方向に配向していることが好ましい。微粒子34Bとして液晶が用いられる場合に、その液晶が棒状分子であるときには、使用するモノマー材料の形状も棒状であることが好ましい。以上のことから、モノマー材料としては重合性と液晶性を併せ持つ材料を用いることが好ましく、例えば、重合性官能基として、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルエーテル基およびエポキシ基からなる群から選ばれた少なくとも1つの官能基を有することが好ましい。これらの官能基は、紫外線、赤外線または電子線を照射したり、加熱したりすることによって重合させることができる。紫外線照射時の配向度低下を抑制するために、多官能基をもつ液晶性材料を添加することもできる。
【0039】
駆動回路50は、例えば、一の光変調セル30Aにおいて微粒子34Bの光軸AX2がバルク34Aの光軸AX1と平行となり、他の光変調セル30Bにおいて微粒子34Bの光軸AX2がバルク34Aの光軸AX1と交差するように各光変調セル30Bの一対の電極(下側電極32、上側電極36)へ印加する電圧の大きさを制御するようになっている。
【0040】
以下に、本実施の形態のバックライト1の製造方法について、図7(A)〜(C)から図9(A)〜(C)を参照しながら説明する。
【0041】
まず、ガラス基板またはプラスチックフィルム基板からなる透明基板31,37上に、ITOなどの透明導電膜32A,36Aを形成する(図7(A))。次に、表面全体にレジスト層を形成したのち、パターニングによりレジスト層に電極パターン(下側電極32、上側電極36)を形成する(図7(B))。
【0042】
パターニングの方法としては、フォトリソ法やレーザーアブレーション法などを用いることが好ましい。電極パターンは駆動方法および部分駆動の分割数によって決定される。例えば、42インチサイズのディスプレイを12×6分割する場合には、電極幅がおよそ80mm程度のパターンとし、電極間のスリット部分はできるだけ細くする。だたし、後述のぼかし特性から、スリット部分が細すぎてもあまり意味をなさないので、具体的には、10〜500μm程度のスリットとするのがよい。また、ITOナノ粒子をパターン印刷した後、それを焼成することによって電極パターンを形成してもよい。
【0043】
次に、表面全体に配向膜33,35を塗布したのち、乾燥させ、焼成する(図7(C))。配向膜33,35としてポリイミド系材料を用いる場合には、溶媒にNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を用いることが多いが、そのときには、大気下では200℃程度の温度が必要である。なお、この場合に、透明基板31,37としてプラスチック基板を用いる場合には、配向膜33,35を100℃で真空乾燥させ、焼成することもできる。
【0044】
次に、配向膜33上に、セルギャップを形成するためのスペーサ38を乾式または湿式で散布する(図8(A))。なお、真空貼り合わせ法にて光変調セル30Aを作成する場合には、滴下する混合物中にスペーサ38を混合しておいてもよい。また、スペーサ38の替わりとして、フォトリソ法によって柱スペーサを形成することもできる。
【0045】
続いて、配向膜35上に、貼り合わせおよび液晶の漏れを防止するためのシール剤39を、例えば額縁状に塗布する(図8(B))。このシール剤パターン39はディスペンサー法やスクリーン印刷法にて形成することができる。
【0046】
以下に、真空貼り合わせ法(One Drop Fill法、ODF法)について説明するが、真空注入法などで光変調セル30Aを作成することも可能である。
【0047】
まず、セルギャップ、セル面積などから決まる体積分にあたる液晶とモノマーの混合物41を面内に均一に滴下する(図8(C))。混合物41の滴下にはリニアガイド方式の精密ディスペンサーを用いることが好ましいが、シール剤パターン39を土手として利用して、ダイコータなどを用いてもよい。
【0048】
液晶とモノマーは前述の材料を用いることができるが、液晶とモノマーの重量比は98:2〜50:50、好ましくは95:5〜75:25、より好ましくは92:8〜85:15である。液晶の比率を多くすることで駆動電圧を低くすることができるが、あまり液晶を多くしすぎると電圧印加時の白色度が低下したり、電圧オフ後に応答速度が低下するなど透明時に戻りにくくなったりする傾向がある。
【0049】
混合物41には、液晶とモノマーの他には、重合開始剤を添加する。使用する紫外線波長に応じて、添加する重合開始剤のモノマー比を0.1〜10重量%の範囲内で調整する。混合物41には、この他に、重合禁止剤や可塑剤、粘度調整剤なども必要に応じて添加可能である。モノマーが室温で固体やゲル状である場合には、口金やシリンジ、基板を加温することが好ましい。
【0050】
透明基板31および透明基板37を真空貼り合わせ機(図示せず)に配置したのち、真空排気し、貼り合わせを行う(図9(A))。その後、貼り合わせたものを大気に解放し、大気圧での均一加圧によってセルギャップを均一化する。セルギャップは白輝度(白色度)と駆動電圧の関係から適宜選定できるが、5〜40μm、好ましくは6〜20μm、より好ましくは7〜10μmである。
【0051】
貼り合わせ後、必要に応じて配向処理を行うことが好ましい(図示せず)。クロスニコル偏光子の間に、貼り合わせたセルを挿入した際に、光り漏れが生じている場合には、セルをある一定時間加熱処理したり、室温で放置したりして配向させる。その後、紫外線L3を照射してモノマーを重合させてポリマー化する(図9(B))。このようにして、光変調素子30が製造される。
【0052】
紫外線を照射している時には、セルの温度が変化しないようにすることが好ましい。赤外線カットフィルターを用いたり、光源にUV−LEDなどを用いたりすることが好ましい。紫外線照度は複合材料の組織構造に影響を与えるので、使用する液晶材料やモノマー材料、これらの組成から適宜調整することが好ましく、0.1〜500mW/cm2の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5〜30mW/cm2である。紫外線照度が低いほど駆動電圧が低くなる傾向にあり、生産性と特性の両面から好ましい紫外線照度を選定することができる。
【0053】
そして、導光板10に光変調素子30を貼り合わせる。貼り合わせには、粘着、接着のいずれでもよいが、導光板10の屈折率と光変調素子30の基板材料の屈折率とにできるだけ近い屈折率の材料で粘着、接着することが好ましい。最後に、下側電極32および上側電極36に引き出し線(図示せず)を取り付ける。このようにして、本実施の形態のバックライト1が製造される。
【0054】
このように、光変調素子30を作成し、最後に導光板10に光変調素子30を貼り合わせるプロセスを説明したが、導光板10の表面に、配向膜35を形成した透明基板37を予め貼り合わせてから、バックライト1を作成することもできる。また、枚葉方式、ロール・ツー・ロール方式のいずれでもバックライト1を作成することができる。
【0055】
次に、本実施の形態のバックライト1の作用および効果について説明する。
【0056】
本実施の形態のバックライト1では、光源20からの光が導光板10に入射し、導光板10の上面や、光変調素子30のうち透明領域30Aの下面で反射され、導光板10および光変調素子30内を伝播していく(図6参照)。このとき、導光板10および光変調素子30内を伝播している光は、光変調素子30のうち散乱領域30Bにおいて散乱される。この散乱光のうち散乱領域30Bの下面を透過した光は反射板40で反射され、再度、導光板10に戻されたのち、バックライト1の上面から射出される。また、散乱光のうち、散乱領域30Bの上面に向かった光は、導光板10を透過したのち、バックライト1の上面から射出される。このように、本実施の形態では、透明領域30Aの上面からは光はほとんど射出されず、散乱領域30Bの上面から光が射出される。このようにして、正面方向の変調比を大きくしている。
【0057】
一般に、PDLCは、液晶材料と等方性の低分子材料とを混合し、紫外線照射や溶媒の乾燥などにより相分離を起こさせることによって形成され、液晶材料の微小粒子が高分子材料中に分散された複合層となっている。この複合層中の液晶材料は、電圧無印加時にはランダムな方向を向いているので散乱性を示すが、電圧印加時には電場方向に配向するので、液晶材料の常光屈折率と高分子材料の屈折率とが互いに等しい場合には、正面方向(PDLCの法線方向)において高い透明性を示す。しかし、この液晶材料では、斜め方向においては、液晶材料の異常光屈折率と高分子材料との差が顕著となり、正面方向が透明性であっても斜め方向において散乱性が発現してしまう。
【0058】
通常、PDLCを使った光変調素子は、表面に透明導電膜の形成された2枚のガラス板の間にPDLCを挟み込んだ構造となっていることが多い。上述したような構造を有する光変調素子に対して空気中から斜めに光が入射した場合には、その斜め方向から入射した光は空気とガラス板の屈折率差によって屈折し、より小さな角度でPDLCに入射することになる。そのため、このような光変調素子においては、大きな散乱は生じない。例えば、空気中から80°の角度で光が入射した場合には、その光のPDLCへの入射角はガラス界面での屈折によって40°程度にまで小さくなる。
【0059】
しかし、導光板を用いたエッジライト方式では、導光板越しに光が入射するので、光が80°程度の大きな角度でPDLC中を横切ることになる。そのため、液晶材料の異常光屈折率と高分子材料の屈折率との差が大きく、さらに、より大きな角度で光がPDLC中を横切るので、散乱を受ける光路も長くなる。例えば、常光屈折率1.5、異常光屈折率1.65の液晶材料の微小粒子が屈折率1.5の高分子材料中に分散されている場合には、正面方向(PDLCの法線方向)においては屈折率差がないが、斜め方向においては屈折率差が大きくなる。このため、斜め方向の散乱性を小さくすることができないので、視野角特性が悪い。さらに、導光板上に拡散フィルムなどの光学フィルムを設けた場合には、斜め漏れ光が拡散フィルムなどによって正面方向にも拡散されるので、正面方向の光漏れが大きくなり、正面方向の変調比が低くなってしまう。
【0060】
一方、本実施の形態では、バルク34Aおよび微粒子34Bが光学異方性材料を主に含んで形成されているので、斜め方向において、散乱性が小さくなり、透明性を向上させることができる。例えば、バルク34Aおよび微粒子34Bが、互いに常光屈折率が等しく、かつ互いに異常光屈折率も等しい光学異方性材料を主に含んで構成され、かつ、これらの光軸の向きが一致している場合には、正面方向(光変調素子30の法線方向)および斜め方向を含むあらゆる方向において屈折率差がなく、高い透明性が得られる。
【0061】
例えば、常光屈折率1.5、異常光屈折率1.65の液晶と、常光屈折率1.5、異常光屈折率1.65の液晶性モノマーとを混合し、配向膜または電界によって液晶と液晶性モノマーを配向させた状態で液晶性モノマーを重合させると、液晶の光軸と、液晶性モノマーが重合することによって形成されたポリマーの光軸とが互いに一致する。これにより、あらゆる方向で屈折率が一致するので、透明性が高い状態を実現できる。
【0062】
これにより、暗状態において、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減またはほとんどなくすることができるので、視野角特性を良くすることができる。また、光の漏洩量が減少した分だけ、部分的な明状態の部分を明るくすることが可能となる。従って、本実施の形態では、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減またはほとんどなくしつつ、表示輝度を向上させることができる。その結果、正面方向の変調比を高くすることができる。
【0063】
また、本実施の形態では、例えば、図6(A),(B)に示したように、透明領域30Aの輝度(黒表示の輝度)が、光変調素子30を設けていない場合(図6(B)中の一点鎖線)と比べて下がっている。他方、散乱領域30Bの輝度は、光変調素子30を設けていない場合(図6(B)中の一点鎖線)と比べて極めて高くなり、しかも、透明領域30Aの輝度が低下した分だけ、部分的な白表示の輝度(輝度突き上げ)が大きくなる。
【0064】
ところで、輝度突き上げとは、全面白表示した場合に比べて、部分的に白表示を行った場合の輝度を高くする技術である。CRTやPDPなどでは一般によく使われている技術である。しかし、液晶ディスプレイでは、バックライトは画像にかかわらず全体に均一発光しているので、部分的に輝度を高くすることはできない。もっとも、バックライトを、複数のLEDを2次元配置したLEDバックライトとした場合には、LEDを部分的に消灯することは可能である。しかし、そのようにした場合には、LEDを消灯した暗領域からの拡散光がなくなるので、全てのLEDを点灯した場合と比べて、輝度が低くなってしまう。また、部分的に点灯しているLEDに対して流す電流を大きくすることにより、輝度を増やすことも可能であるが、そのようにした場合には、非常に短時間に大電流が流れるので、回路の負荷や信頼性の点で問題が残る。
【0065】
一方、本実施の形態では、バルク34Aおよび微粒子34Bが光学異方性材料を主に含んで形成されているので、斜め方向の散乱性が抑制され、暗状態での導光板からの漏れ光が少ない。これにより、部分的な暗状態の部分から部分的な明状態の部分に導光するので、バックライト1への投入電力を増やすことなく、輝度突き上げを実現することができる。
【0066】
[変形例]
上記実施の形態では、光変調素子30は、導光板10の背後(下面)に空気層を介さずに密着して接合されていたが、例えば、図10に示したように、導光板10の上面に空気層を介さずに密着して接合されていてもよい。また、光変調素子30は、例えば、図11に示したように、導光板10の内部に設けられていてもよい。ただし、この場合でも、光変調素子30は、導光板10と空気層を介さずに密着して接合されていることが必要である。
【0067】
また、上記実施の形態では、導光板10の上に特に何も設けられていなかったが、導光板10は、例えば、図11に示したように、光学シート70(例えば、拡散板、拡散シート、レンズフィルム、偏光分離シートなど)を設けてもよい。
【0068】
[適用例]
次に、上記実施の形態のバックライト1の一適用例について説明する。
【0069】
図13は、本適用例にかかる表示装置2の概略構成の一例を表したものである。この表示装置2は、液晶表示パネル80(表示パネル)と、液晶表示パネル80の背後に配置されたバックライト1とを備えている。
【0070】
液晶表示パネル80は、映像を表示するためのものである。この液晶表示パネル80は、例えば、映像信号に応じて各画素が駆動される透過型の表示パネルであり、液晶層を一対の透明基板で挟み込んだ構造となっている。具体的には、液晶表示パネル80は、バックライト1側から順に、偏光子、透明基板、画素電極、配向膜、液晶層、配向膜、共通電極、カラーフィルタ、透明基板および偏光子を有している。
【0071】
透明基板は、可視光に対して透明な基板、例えば板ガラスからなる。なお、バックライト1側の透明基板には、図示しないが、画素電極に電気的に接続されたTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)および配線などを含むアクティブ型の駆動回路が形成されている。画素電極および共通電極は、例えばITOからなる。画素電極は、透明基板上に格子配列またはデルタ配列されたものであり、画素ごとの電極として機能する。他方、共通電極は、カラーフィルタ上に一面に形成されたものであり、各画素電極に対して対向する共通電極として機能する。配向膜は、例えばポリイミドなどの高分子材料からなり、液晶に対して配向処理を行う。液晶層は、例えば、VA(Vertical Alignment)モード、TN(Twisted Nematic)モードまたはSTN(Super Twisted Nematic)モードの液晶からなり、駆動回路(図示せず)からの印加電圧により、バックライト1からの射出光の偏光軸の向きを画素ごとに変える機能を有する。なお、液晶の配列を多段階で変えることにより画素ごとの透過軸の向きが多段階で調整される。カラーフィルタは、液晶層を透過してきた光を、例えば、赤(R)、緑(G)および青(B)の三原色にそれぞれ色分離したり、または、R、G、Bおよび白(W)などの四色にそれぞれ色分離したりするカラーフィルタを、画素電極の配列と対応させて配列したものである。フィルタ配列(画素配列)としては、一般的に、ストライプ配列や、ダイアゴナル配列、デルタ配列、レクタングル配列のようなものがある。
【0072】
偏光子は、光学シャッタの一種であり、ある一定の振動方向の光(偏光)のみを通過させる。なお、偏光子は、透過軸以外の振動方向の光(偏光)を吸収する吸収型の偏光素子であってもよいが、バックライト1側に反射する反射型の偏光素子であることが輝度向上の観点から好ましい。偏光子はそれぞれ、偏光軸が互いに90度異なるように配置されており、これによりバックライト1からの射出光が液晶層を介して透過し、あるいは遮断されるようになっている。
【0073】
駆動回路50は、例えば、複数の光変調セル30Aのうち黒表示の画素位置に対応するセルにおいて微粒子34Bの光軸AX2がバルク34Aの光軸AX1と平行となり、複数の光変調セル30Aのうち白表示の画素位置に対応するセルにおいて微粒子34Bの光軸AX2がバルク34Aの光軸AX1と交差するように各光変調セル30Aの一対の電極(下側電極32、上側電極36)へ印加する電圧の大きさを制御するようになっている。
【0074】
本適用例では、液晶表示パネル80を照明する光源として、上記実施の形態のバックライト1が用いられている。これにより、視野角の大きい範囲における光の漏洩を低減またはほとんどなくしつつ、表示輝度を向上させることができる。その結果、正面方向の変調比を高くすることができる。また、バックライト1への投入電力を増やすことなく、輝度突き上げを実現することができる。
【0075】
また、本適用例では、バックライト1は、表示画像に合わせて部分的に液晶表示パネル80に入射する光強度を変調する。しかし、光変調素子30に含まれる電極(下側電極32、上側電極36)のパターンエッジ部分で急激な明るさ変化があると、表示画像上でもその境界部分が見えてしまう。そこで、できるだけ電極境界部分において、明るさが単調に変化する特性が求められ、そのような特性のことをぼかし特性と呼ぶ。ぼかし特性を大きくするためには、拡散性の強い拡散板を用いるのが効果的であるが、拡散性が強いと、全光線透過率も低くなるので明るさが低くなる傾向にある。従って、本適用例において、光学シート70に拡散板を用いる場合には、その拡散板の全光線透過率は、50%〜85%であることが好ましく、60%〜80%であることがより好ましい。また、導光板10と、バックライト1内の拡散板との空間距離を大きくすればするほど、ぼかし特性は良くなる。また、この他に、光変調素子30に含まれる電極(下側電極32、上側電極36)のパターンの数を増やし、明と暗ができるだけ単調に変化するように各電極の電圧を調整することもできる。
【0076】
[実施例]
以下、本発明の実施例について説明する。なお、下記の実施例は例示であり、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0077】
(セル作成方法)
ITOを塗布したガラス基板(125mm角)に、レーザーアブレーション法にて10mm幅の電極パターンを形成した。アルカリ洗浄液で超音波印加洗浄をした後、超純水でリンスし、ブロー乾燥することにより電極パターン基板を得た。電極パターン基板にポリイミド系の垂直配向膜をスピンコータにて塗布した後、200℃で焼成して垂直配向膜を形成した。配向膜を形成した電極パターン基板上に平均粒子径7μmのプラスチックビーズを散布した後、熱硬化シール剤を周辺に塗布した。さらに対向となる電極パターン基板を重ねて硬化処理を行い、空セルを作成した。予め、液晶と、紫外線硬化性の液晶性モノマーと、重合開始剤とを所定組成になるように混合した溶液(以下、モノマー混合液晶と称する。)を空セルに注入した。必要に応じて加熱しながらモノマー混合液晶を注入した。クロスニコル偏光子の間に、モノマー混合液晶を注入したセルを挿入して、透過光にて配向状態を目視にて確認した。その後、紫外線を照射して液晶中のノマーを硬化させた。さらに、液晶を用いずにモノマーと開始剤とを混合した溶液を用いて同様に異方性評価用セルを作成し、エリプソメータを用いてリタデーションの存在および光軸方向を評価した。
【0078】
(評価方法)
(1)屈折率
液晶およびモノマーの屈折率を、アッベ屈折計を用いて測定した。ガラスステージ下面および上部ガラスブロックに垂直配向膜を塗布し液晶またはモノマーを配向させ、接眼鏡筒部に偏光子を貼り付け、射出した偏光成分を変えて、常光屈折率(no)、異常光屈折率(ne)を求めた。入射する白色光にバンドパスフィルターを付け、入射波長を589nmとして、25℃にて評価した。
(2)変調比
作成したセルの上層に10mm厚みのアクリル製導光板を屈折率1.51のマッチングオイルで貼り付けて、エッジ部分から白色LEDの光を照射した。作成したセルの下面には空気層を介してミラー反射板を置き、導光板上部には光学フィルムをのせた。光学フィルムの種類や組み合わせを変えながら、セル基板の法線方向の正面輝度を測定した。輝度計としてトプコン製のSR-UL1を用いた。このとき、距離を50cm、測定角を1°とした。セルに電圧を印加しない場合を黒輝度とし、電圧印加した場合を白輝度として、白輝度/黒輝度の値を変調比とした。印加する電圧は80V(1kHzパルス)とした。
(3)輝度突き上げ
作成したセルのうち、LED照射側の端面から最も離れた10mm幅の3ラインの輝度に関して、その3ライン以外のラインのセルに電圧を印加した場合の輝度をLaとし、そのセルに電圧を印加しなかった場合の輝度をLbとし、Lb/Laを輝度突き上げとした。
【0079】
表1は、実施例および比較例における液晶とモノマーの組み合わせと、その評価結果を示したものである。
【表1】
【0080】
(材料の屈折率)
表2は、液晶およびモノマーの屈折率評価結果を示したものである。
【表2】
【0081】
(実施例1〜5)
液晶材料、モノマー材料の種類、これらの組成が表1に記載の組み合わせとなるようにセルを作成した。いずれの実施例のセルも、電圧無印加時の外観は透明、電圧印加時の外観は白濁であった。電圧無印加状態では、クロスニコル偏光子での観察において光りの漏れはなかった。いずれの異方性評価用セルにもリタデーションが存在し、光軸方向が基板法線方向であった。
【0082】
(比較例1、2)
比較例1では、DIC社製の高分子分散液晶材料(“PNM-170”)を用いた。また、比較例2では、メルク社製の液晶材料とモノマー材料(PN393)とを80:20となるよう混合したモノマー混合液晶を用いた。そしていずれの比較例にも配向膜を用いなかった。なお、それぞれの比較例において、それ以外の要素については、実施例同様にセルを作成した。作成したセルでは、電圧無印加時の外観は白濁しており、電圧印加時の外観は基板法線方向で透明であったが、斜め方向では白濁していた。異方性評価セルにはリタデーションはなかった。
【0083】
斜め方向の光漏れ(視野角特性)は、実施例では、黒表示(電圧無印加時)において正面および斜め方向の光漏れが少なく、視野角特性が良好であった。一方、比較例では、黒表示(電圧印加時)において正面方向にくらべて斜め方向の光漏れが大きく、視野角特性が悪かった。比較例においては、斜めも光が大きく、視野角特性が悪いことが一目瞭然であった。
【0084】
図14(A)〜(D)は、実施例1と比較例1と同様に作成した30×40mmサイズセルの漏れ光の様子を示したものである。実施例1では斜め漏れ光が少ないのに対して、比較例1では斜め漏れ光が多いことがわかった。表1に示したいずれの実施例においても、比較例に対して光学フィルムがない場合および全光線透過率77%の拡散板をのせた場合のいずれにおいても、変調比が高いことがわかった。実施例2において、輝度突き上げの評価を行ったところ、全光線透過率77%の拡散板をのせた場合には、輝度突き上げが1.5倍となり、拡散フィルムとレンズシートをのせた場合には1.6倍となった。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施の形態に係るバックライトの構成の一例を表す断面図である。
【図2】図1の電極の構成の一例を表す断面図である。
【図3】図1のバックライトの構成の他の例を表す断面図である。
【図4】図1の光変調素子の作用について説明するための模式図である。
【図5】図1の光変調素子の作用について説明するための模式図である。
【図6】図1のバックライトの作用について説明するための模式図である。
【図7】図1のバックライトの製造工程について説明するための断面図である。
【図8】図7に続く製造工程について説明するための断面図である。
【図9】図8に続く製造工程について説明するための断面図である。
【図10】図1のバックライトの構成のその他の例を表す断面図である。
【図11】図1のバックライトの構成のその他の例を表す断面図である。
【図12】図1のバックライトの構成のその他の例を表す断面図である。
【図13】一適用例にかかる表示装置の一例を表す断面図である。
【図14】実施例および比較例にかかる表示装置の漏れ光の様子を撮影したものである。
【符号の説明】
【0086】
1…バックライト、2…表示装置、10…導光板、20…光源、30…光変調素子、30A…光変調セル、31,37…透明基板、32…下側電極、33,35…配向膜、34…光変調層、34A…バルク、34B…微粒子、36…上側電極、40…反射板、50…駆動回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光板と、
前記導光板の側面に配置された光源と、
前記導光板の表面または内部に配置されると共に前記導光板と接着された光変調素子と
を備え、
前記光変調素子は、離間して互いに対向配置された一対の透明基板と、前記一対の透明基板のそれぞれの表面に設けられた一対の電極と、前記一対の透明基板の間隙に設けられた光変調層とを有し、
前記光変調層は、光学異方性を有すると共に電場に対する応答速度が互いに異なる第一領域および第二領域を含む照明装置。
【請求項2】
前記第一領域および前記第二領域は、前記一対の電極の間に電圧が印加されていない時に当該第一領域および当該第二領域の光軸が互いに平行となり、前記一対の電極の間に電圧が印加されている時に当該第一領域および当該第二領域の光軸が互いに交差するような構造となっている請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記第一領域は、前記一対の電極の間に電圧が印加されていない時に当該第一領域の光軸が前記透明基板の表面と直交し、前記一対の電極の間に電圧が印加されている時に当該第一領域の光軸が前記透明基板の表面と90度以外の角度で交差するか、または平行となるような構造となっており、
前記第二領域は、前記一対の電極の間への電圧印加の有無に拘らず、当該第二領域の光軸が前記透明基板の表面と直交するような構造となっている請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記光変調素子は、前記電極と前記光変調層との間に垂直配向膜を有する請求項1に記載の照明装置。
【請求項5】
前記第一領域は、液晶材料を主に含んで構成され、
前記第二領域は、配向した重合性材料を熱および光の少なくとも一方によって重合させることにより形成されている請求項1に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第二領域は、電場に対して応答しない筋状構造もしくは多孔質構造となっているか、または前記第一領域の応答速度よりも遅い応答速度を有する棒状構造となっている請求項1に記載の照明装置。
【請求項7】
前記第一領域および前記第二領域の常光屈折率が互いに等しくなっており、かつ前記第一領域および前記第二領域の異常光屈折率が互いに等しくなっている請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記光変調素子は、前記一対の電極を複数有し、
前記光変調素子のうち、一方の透明基板側に設けられた電極と他方の透明基板側に設けられた電極との対向部分が光変調セルを構成し、
一の光変調セルにおいて前記第一領域の光軸が前記第二領域の光軸と平行となり、他の光変調セルにおいて前記第一領域の光軸が前記第二領域の光軸と交差するように各光変調セルの一対の電極へ印加する電圧の大きさを制御する駆動部を備える請求項1に記載の照明装置。
【請求項9】
前記一対の電極のうち少なくとも当該照明装置の上面側の電極は透明な導電性材料からなる請求項1に記載の照明装置。
【請求項10】
前記一対の電極のうち当該照明装置の底面側の電極は金属からなる請求項1に記載の照明装置。
【請求項11】
当該照明装置の底面側に反射板を備える請求項1に記載の照明装置。
【請求項12】
導光板と、
前記導光板の側面に配置された光源と、
前記導光板の表面または内部に配置されると共に前記導光板と接着された光変調素子と
を備え、
前記光変調素子は、離間して互いに対向配置された一対の透明基板と、前記一対の透明基板のそれぞれの表面に設けられた一対の電極と、前記一対の透明基板の間隙に設けられた光変調層とを有し、
前記光変調層は、電場に対する応答速度が互いに異なる複数の領域を含み、かつ、前記一対の電極に電圧が印加されている時に前記光源からの光に対して散乱性を示し、前記一対の電極に電圧が印加されていない時に前記光源からの光に対して透明性を示す照明装置。
【請求項13】
マトリクス状に配置された複数の画素を有すると共に、前記複数の画素が画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、
前記表示パネルを照明する照明装置と
を備え、
前記照明装置は、導光板と、前記導光板の側面に配置された光源と、前記導光板の表面または内部に配置されると共に前記導光板と接着された光変調素子とを前記表示パネル側から順に有し、
前記光変調素子は、離間して互いに対向配置された一対の透明基板と、前記一対の透明基板のそれぞれの表面に設けられた一対の電極と、前記一対の透明基板の間隙に設けられた光変調層とを有し、
前記光変調層は、光学異方性を有すると共に電場に対する応答速度が互いに異なる第一領域および第二領域を含む表示装置。
【請求項14】
前記光変調素子は、前記一対の電極を複数有し、
前記光変調素子のうち、一方の透明基板側に設けられた電極と他方の透明基板側に設けられた電極との対向部分が光変調セルを構成し、
複数の光変調セルのうち黒表示の画素位置に対応するセルにおいて前記第一領域の光軸が前記第二領域の光軸と平行となり、複数の光変調セルのうち白表示の画素位置に対応するセルにおいて前記第一領域の光軸が前記第二領域の光軸と交差するように各光変調セルの一対の電極へ印加する電圧の大きさを制御する駆動部を備える請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
表面上に電極および配向膜が順に形成された2つの透明基板を、それぞれ配向膜が互いに向き合うように配置する共に、液晶材料と、配向性および重合性を有する材料とを複合した複合層を間にして重ね合わせたのち、前記配向性および重合性を有する材料を熱および光の少なくとも一方によって重合させる光変調素子の製造方法。
【請求項1】
導光板と、
前記導光板の側面に配置された光源と、
前記導光板の表面または内部に配置されると共に前記導光板と接着された光変調素子と
を備え、
前記光変調素子は、離間して互いに対向配置された一対の透明基板と、前記一対の透明基板のそれぞれの表面に設けられた一対の電極と、前記一対の透明基板の間隙に設けられた光変調層とを有し、
前記光変調層は、光学異方性を有すると共に電場に対する応答速度が互いに異なる第一領域および第二領域を含む照明装置。
【請求項2】
前記第一領域および前記第二領域は、前記一対の電極の間に電圧が印加されていない時に当該第一領域および当該第二領域の光軸が互いに平行となり、前記一対の電極の間に電圧が印加されている時に当該第一領域および当該第二領域の光軸が互いに交差するような構造となっている請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記第一領域は、前記一対の電極の間に電圧が印加されていない時に当該第一領域の光軸が前記透明基板の表面と直交し、前記一対の電極の間に電圧が印加されている時に当該第一領域の光軸が前記透明基板の表面と90度以外の角度で交差するか、または平行となるような構造となっており、
前記第二領域は、前記一対の電極の間への電圧印加の有無に拘らず、当該第二領域の光軸が前記透明基板の表面と直交するような構造となっている請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記光変調素子は、前記電極と前記光変調層との間に垂直配向膜を有する請求項1に記載の照明装置。
【請求項5】
前記第一領域は、液晶材料を主に含んで構成され、
前記第二領域は、配向した重合性材料を熱および光の少なくとも一方によって重合させることにより形成されている請求項1に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第二領域は、電場に対して応答しない筋状構造もしくは多孔質構造となっているか、または前記第一領域の応答速度よりも遅い応答速度を有する棒状構造となっている請求項1に記載の照明装置。
【請求項7】
前記第一領域および前記第二領域の常光屈折率が互いに等しくなっており、かつ前記第一領域および前記第二領域の異常光屈折率が互いに等しくなっている請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記光変調素子は、前記一対の電極を複数有し、
前記光変調素子のうち、一方の透明基板側に設けられた電極と他方の透明基板側に設けられた電極との対向部分が光変調セルを構成し、
一の光変調セルにおいて前記第一領域の光軸が前記第二領域の光軸と平行となり、他の光変調セルにおいて前記第一領域の光軸が前記第二領域の光軸と交差するように各光変調セルの一対の電極へ印加する電圧の大きさを制御する駆動部を備える請求項1に記載の照明装置。
【請求項9】
前記一対の電極のうち少なくとも当該照明装置の上面側の電極は透明な導電性材料からなる請求項1に記載の照明装置。
【請求項10】
前記一対の電極のうち当該照明装置の底面側の電極は金属からなる請求項1に記載の照明装置。
【請求項11】
当該照明装置の底面側に反射板を備える請求項1に記載の照明装置。
【請求項12】
導光板と、
前記導光板の側面に配置された光源と、
前記導光板の表面または内部に配置されると共に前記導光板と接着された光変調素子と
を備え、
前記光変調素子は、離間して互いに対向配置された一対の透明基板と、前記一対の透明基板のそれぞれの表面に設けられた一対の電極と、前記一対の透明基板の間隙に設けられた光変調層とを有し、
前記光変調層は、電場に対する応答速度が互いに異なる複数の領域を含み、かつ、前記一対の電極に電圧が印加されている時に前記光源からの光に対して散乱性を示し、前記一対の電極に電圧が印加されていない時に前記光源からの光に対して透明性を示す照明装置。
【請求項13】
マトリクス状に配置された複数の画素を有すると共に、前記複数の画素が画像信号に基づいて駆動される表示パネルと、
前記表示パネルを照明する照明装置と
を備え、
前記照明装置は、導光板と、前記導光板の側面に配置された光源と、前記導光板の表面または内部に配置されると共に前記導光板と接着された光変調素子とを前記表示パネル側から順に有し、
前記光変調素子は、離間して互いに対向配置された一対の透明基板と、前記一対の透明基板のそれぞれの表面に設けられた一対の電極と、前記一対の透明基板の間隙に設けられた光変調層とを有し、
前記光変調層は、光学異方性を有すると共に電場に対する応答速度が互いに異なる第一領域および第二領域を含む表示装置。
【請求項14】
前記光変調素子は、前記一対の電極を複数有し、
前記光変調素子のうち、一方の透明基板側に設けられた電極と他方の透明基板側に設けられた電極との対向部分が光変調セルを構成し、
複数の光変調セルのうち黒表示の画素位置に対応するセルにおいて前記第一領域の光軸が前記第二領域の光軸と平行となり、複数の光変調セルのうち白表示の画素位置に対応するセルにおいて前記第一領域の光軸が前記第二領域の光軸と交差するように各光変調セルの一対の電極へ印加する電圧の大きさを制御する駆動部を備える請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
表面上に電極および配向膜が順に形成された2つの透明基板を、それぞれ配向膜が互いに向き合うように配置する共に、液晶材料と、配向性および重合性を有する材料とを複合した複合層を間にして重ね合わせたのち、前記配向性および重合性を有する材料を熱および光の少なくとも一方によって重合させる光変調素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−92682(P2010−92682A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260604(P2008−260604)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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