説明

照明装置

【課題】有機EL素子の破損などの不具合を防止すると共に均一な発光を行うことができる照明装置を提供することを課題とする。
【解決手段】有機EL素子3と放熱板1との間には、所定の弾性力を有する熱伝導性弾性部材2が配置されているため、放熱板1に外部から力が加わっても、熱伝導性弾性部材2によりその際の衝撃や振動等が吸収されて有機EL素子3が保護され、これにより有機EL素子3の破損などの不具合が防止される。また、各有機EL素子3は熱伝導性弾性部材2を介して放熱板1上に配置されるため、有機EL素子3の放熱板1への片当たりが防止されて均一な発光を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、照明装置に係り、特に有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子により発光を行う照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子を用いた薄型で軽量の照明装置の開発が進められている。この照明装置は、基板上に第1電極層と有機発光層と第2電極層とが順次積層された構造を持つ有機EL素子を有しており、その第1電極層と第2電極層との間に電界を形成して有機発光層を発光させることにより照明を行うことができる。
ところが、一般に、有機EL素子では、有機EL素子の温度によりその輝度が変化するため、長時間続けて発光させた場合などに、温度分布が生じて発光面の輝度が一定でなくなるおそれがある。また、輝度が変化すると色度も変化するため、照明される物体の見え方が異なってくる不都合が生じる恐れがある。さらに温度が高くなると、有機EL素子の劣化が進む。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に開示されている有機EL表示装置では、有機EL素子をAl等からなる放熱板上に接着し、有機EL素子で発生した熱を放熱板を介して外部に放散させるように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−343559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように放熱板上に直接に有機EL素子を接着すると、放熱板に外部から力が加わった際に、その衝撃により有機EL素子が破損する等の不具合を生じるおそれがある。
また、放熱板上に有機EL素子を直接に接着した場合、放熱板に有機EL素子の一部が片当たりすることがあり、その場合、片当たりした部分と、片当たりしていない部分との温度差が発生することにより有機EL素子の発光が不均一になるという問題があった。
この発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、有機EL素子の破損などの不具合を防止すると共に均一な発光を行うことができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る照明装置は、放熱板上に配置された有機EL素子により発光を行う照明装置において、放熱板と有機EL素子との間に所定の厚さを有するシート状の熱伝導性弾性部材を配置することにより、放熱板に外力が加わった際の衝撃から有機EL素子を保護すると共に有機EL素子から放熱板への放熱を促すものである。この構成により、耐衝撃性の向上と共に、輝度や色度の変化も抑えることができる。
【0007】
1枚の熱伝導性弾性部材上に複数の有機EL素子を配置することができ、この場合、複数の有機EL素子を互いに間隔をあけて配置することが好ましい。この構成により、有機EL素子の接触による破損を回避できる。
また、1枚の熱伝導性弾性部材上に1つの有機EL素子が配置することもできる。この構成により、隣り合う有機EL素子同士の熱に影響されずに放熱できる。
【0008】
また、予め熱伝導性弾性部材の両面に接着剤が塗布されており、放熱板上に接着剤を介して熱伝導性弾性部材を貼り付けると共に熱伝導性弾性部材上に接着剤を介して有機EL素子を貼り付けることができる。
また、透光性を有する保護カバーにより直接に、又は保持部材を介して放熱板上の熱伝導性弾性部材及び有機EL素子を覆うことも好ましい。この構成により、有機EL素子が発生した熱を、熱伝導性弾性部材及び保護カバーの両方で放熱できるとともに、有機EL素子を上下両面からの衝撃力から保護することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、有機EL素子の破損などの不具合を防止すると共に均一な発光を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1に、この発明の実施の形態1に係る照明装置の構成を示す。金属板からなる放熱板1の表面上に、シート状の1枚の熱伝導性弾性部材2が配置されており、この熱伝導性弾性部材2の表面上に複数の有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子3が互いに間隔をあけて配置されている。ここで、熱伝導性弾性部材2は、高い熱伝導性を有するシリコーンゴムからなると共に1mm程度の厚さに形成されて所定の弾力性を有している。また、この熱伝導性弾性部材2には予めその両面にそれぞれ図示しない接着剤が塗布されており、放熱板1の表面上に熱伝導性弾性部材2の一方の面が接着剤を介して貼り付けられると共に、熱伝導性弾性部材2の他方の面の上に接着剤を介して複数の有機EL素子3が貼り付けられている。
【0011】
なお、放熱板1の表面上には、透光性を有する樹脂またはガラスから形成された筐体状の保護カバー4が固定されており、この保護カバー4により放熱板1上の熱伝導性弾性部材2及び複数の有機EL素子3が覆われている。また、放熱板1として、高い熱伝導性を有するAlまたはCu等からなる金属板を用いるものとする。
また、各有機EL素子3は、面発光源として用いられるものであり、基板とこの基板上に順次積層形成される第1電極層と有機発光層と第2電極層とを有している。また、基板上の第1電極層及び有機発光層及び第2電極層は膜封止されて外部からの水分やガス等の進入が防止されている。
【0012】
次に、この実施の形態1に係る照明装置の作用について説明する。各有機EL素子3の第1電極層と第2電極層との間に電界を形成して有機発光層を発光させることにより各有機EL素子3の出射面から図1に破線矢印で示されるような光Lが出射されると共に、この光Lが保護カバー4を透過して外部に出射されることにより照明が行われる。
ここで、それぞれの有機EL素子3と放熱板1との間には、所定の弾性力を有する熱伝導性弾性部材2が配置されているため、放熱板1に外部から力が加わっても、熱伝導性弾性部材2によりその際の衝撃や振動等が吸収されて有機EL素子3が保護される。例えば、放熱板1に図1の下方から上方に向かって衝撃力が加わっても、熱伝導性弾性部材2は1mm程度の厚さを有しているため、熱伝導性弾性部材2が厚さ方向に変形する等してその衝撃力が吸収されることにより有機EL素子3まで伝わりにくくなる。したがって、有機EL素子3が破損する等の不具合を防止することができる。また、振動に対しても、有機EL素子が動くことがない。
【0013】
また、各有機EL素子3は熱伝導性弾性部材2を介して放熱板1上に配置されるため、有機EL素子3の放熱板1への片当たりが防止され、これにより均一な発光を行うことができる。
また、熱伝導性弾性部材2は高い熱伝導性を有すると共に放熱板1も高い熱伝導性を有するため、有機EL素子3で発生した熱は熱伝導性弾性部材2を通って効率よく放熱板1に伝達されると共に放熱板1から外部へ放散される。
さらに、複数の有機EL素子3は互いに間隔をあけて配置されるため、互いに隣接する有機EL素子3同士が接触することにより破損する等の不具合も防止することができる。
【0014】
実施の形態2.
次に図2を参照して、この発明の実施の形態2に係る照明装置を説明する。この実施の形態2は、実施の形態1の照明装置において、1枚の熱伝導性弾性部材2の代わりに、複数枚の熱伝導性弾性部材11を用意し、それぞれの熱伝導性弾性部材11の上に1つの有機EL素子3を配置したものである。すなわち、放熱板1の表面上にシート状の複数の熱伝導性弾性部材11が並べて配置されており、各熱伝導性弾性部材11の表面上に1つの有機EL素子3が配置されている。また、各有機EL素子3は隣接する有機EL素子3に対して間隔を有するように配置される。なお、熱伝導性弾性部材11も、実施の形態1における熱伝導性弾性部材2と同様に、高い熱伝導性を有するシリコーンゴムからなると共に1mm程度の厚さに形成されて所定の弾力性を有している。
【0015】
このような構成にしても、熱伝導性弾性部材11により、放熱板1に外力が加わった際の衝撃や振動等から有機EL素子3が保護されると共に有機EL素子3の放熱板1への片当たりが防止され、上述の実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0016】
なお、上述の実施の形態1及び2において、熱伝導性弾性部材2及び11は、シリコーンゴムだけでなく、高い熱伝導性を有するその他各種のゴムから形成することができる。
また、有機EL素子3は、膜封止の代わりに、缶封止されていてもよい。
【0017】
また、上述の実施の形態1及び2において、保護カバー4を各有機EL素子3上面に当接させて有機EL素子3を押さえることもできる。
また、別の実施の形態として、図3に示すように、有機EL素子3を押さえるための保持部材12を保護カバー4と各有機EL素子3上面との間に挟んで有機EL素子3を押さえることもできる。この場合、保持部材12として、透光性を有する熱伝導性弾性部材を用いれば、有機EL素子3の上面側への衝撃力も吸収することができるだけでなく、有機EL素子3で発生した熱をその上面からも保持部材12及び保護カバー4を介して外部に放散させることができる。また、例えば、各有機EL素子3をその非発光部だけで押さえる、あるいは有機EL素子3の外周部を押さえる保持部材12を設けることもできる。
このように保護カバー4により直接に、または保持部材12を介して有機EL素子3を押さえれば、上述の実施の形態1及び2のように、接着剤を用いて有機EL素子3を熱伝導性弾性部材2及び11の表面上に貼り付ける必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1に係る照明装置を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態2に係る照明装置を示す断面図である。
【図3】この発明の別の実施の形態に係る照明装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 放熱板、2,11 熱伝導性弾性部材、3 有機EL素子、4 保護カバー 12保持部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱板上に配置された有機EL素子により発光を行う照明装置において、
前記放熱板と前記有機EL素子との間にシート状の熱伝導性弾性部材
を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
1枚の前記熱伝導性弾性部材上に複数の前記有機EL素子が配置されている請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
複数の前記有機EL素子は、互いに間隔をあけて配置されている請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
1枚の前記熱伝導性弾性部材上に1つの前記有機EL素子が配置されている請求項1に記載の照明装置。
【請求項5】
予め前記熱伝導性弾性部材の両面に接着剤が塗布されており、前記放熱板上に前記接着剤を介して前記熱伝導性弾性部材が貼り付けられると共に前記熱伝導性弾性部材上に前記接着剤を介して前記有機EL素子が貼り付けられている請求項1〜4のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項6】
透光性を有すると共に前記放熱板上の前記熱伝導性弾性部材及び前記有機EL素子を覆う保護カバーをさらに備え、前記有機EL素子の上面に前記保護カバーが当接されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記有機EL素子の上面の一部に、前記有機EL素子を保持する保持部材を設け、前記保持部材と前記保護カバーが当接されている請求項6に記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−324199(P2006−324199A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148317(P2005−148317)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】