説明

照明装置

【課題】構造が簡易であり、照射面において色や輝度にムラやリングを生じることなく、発光の均一性に優れ、演色性に優れる照明装置を提供する。
【解決手段】照明装置は、固体発光素子モジュール10と、固体発光素子モジュール10に接合された蛍光体モジュール20とを有する。固体発光素子モジュール10には複数の固体発光素子12が設けられている。蛍光体モジュール20には、各固体発光素子12に対応する複数の蛍光体含有部22が設けられている。これによって、固体発光素子12と蛍光体含有部22とを有する発光光源が複数集積配置された発光部が構成される。発光部の発光面から垂直方向に30cm離れた位置における合成光の照度は150ルクス以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成光を発する照明装置に関する。詳しくは、発光素子と蛍光体を有する発光光源を複数個集積化してなり、各発光光源からの一次光の合成光を発する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、白色系の照明装置としては、蛍光灯等種々のものが用いられてきたが、近年、無機EL(Electro Luminescence)、有機EL(OEL(Organic Electro Luminescence)やOLED(Organic Light Emitting Diode))、及び半導体発光素子などの新たな光源が開発されており、これらを用いた照明装置の開発も行われている。例えば、半導体発光素子を用いたLEDランプなどの照明装置においては、半導体発光素子の表面に蛍光体を塗布したり、LEDランプを構成する樹脂中に蛍光体粉末を含有させたりすることによって、半導体発光素子本来の発光色以外の発光色、例えば白色光を得るものが実用化されている。このような照明装置では、中心波長が約460nm付近の青色を発光するGaN系半導体発光素子を用いるのが一般的である。すなわち、青色発光のGaN系半導体発光素子の表面に、黄色発光のセリウム付活アルミン酸イットリウム(YAG)蛍光体を含有する蛍光体含有層を設け、半導体発光素子からの光をこの蛍光体含有層で変換して、白色光を得るようにしている。
【0003】
このような半導体発光素子を用いた照明装置では、励起光である青色の一部が蛍光体含有層を透過してしまうため、照射面の中央部が青色になり、また、その周囲に黄色のリングが生じる等、照射面に色ムラが生じ、均一な白色にならないという問題があった。
【0004】
この問題を解決するため、特許文献1、特許文献2においては、発光光を外部に放出する凸レンズ形状の中央放射面を有するレンズを設ける方法や、発光光の周辺部分をカットする遮光部材を設ける等の方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献3においては、紫外光を発光する半導体発光素子(LEDチップ)を用いて、LEDチップ上に紫外光を吸収して青色光を発光する青色発光蛍光体を含む第1の蛍光体層と、その上に青色光を吸収して黄橙色光を発光する黄橙色光蛍光体を含む第2の蛍光体層を形成する方法が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−216782号公報
【特許文献2】特開2005−243608号公報
【特許文献3】特開2000−183408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、2の方法では、特定構造のレンズや遮光部材を別途設ける等、照明装置の構成が複雑になる。また、上記特許文献3の方法では、赤色成分が不足するため、照射面の演色性が低い。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、特定構造のレンズや遮光部材等の特別な光学部材を用いることがなく、構造が簡易であり、照射面において色や輝度にムラやリングを生じることなく、発光の均一性に優れ、かつ、演色性に優れる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するものであり、以下を要旨とするものである。
【0010】
[1] それぞれ異なる波長の一次光を発する複数種の発光光源を集積配置した発光部を備えた照明装置であって、前記発光光源が固体発光素子及び蛍光体を含有し、前記発光部の発光面から垂直方向に30cm離れた位置における合成光の照度が150ルクス以上であることを特徴とする照明装置。
【0011】
[2] 前記発光部の発光面から垂直方向に少なくとも10cm離れた位置において観察される前記合成光の色が白色である上記[1]に記載の照明装置。
【0012】
[3] 前記発光光源の光出射部の面積が0.1mm〜100mmであり、前記発光光源からは、430nm以上500nm未満の第1の波長範囲、500nm以上580
nm未満の第2の波長範囲、および580nm以上700nm以下の第3の波長範囲に発光ピーク波長を有する光が発せられ、前記発光光源の光出射部のエネルギー比は、前記第1の波長範囲に発光ピーク波長を有する光のエネルギーをE1、前記第2の波長範囲に発
光ピーク波長を有する光のエネルギーをE2、前記第3の波長範囲に発光ピーク波長を有
する光のエネルギーをE3としたとき、E1:E2:E3=5〜90:5〜90:5〜90である上記[1]または[2]に記載の照明装置。
【0013】
[4] 前記第1〜第3の波長範囲ごとに、前記発光光源の駆動条件を制御する制御装置をさらに有する上記[3]に記載の照明装置。
【0014】
[5] 前記発光光源は、前記固体発光素子をモジュール化した固体発光素子モジュールと、前記蛍光体をモジュール化した蛍光体モジュールとを有する上記[1]から[4]のいずれか1項に記載の照明装置。
【0015】
[6] 前記固体発光素子モジュールは、基部と、該基部上に配置された固体発光素子とを有する上記[5]に記載の照明装置。
【0016】
[7] 前記蛍光体モジュールは、基部と、該基部上に配され前記蛍光体を含有する蛍光体含有部とを有する上記[5]または[6]に記載の照明装置。
【0017】
[8] 前記固体発光素子モジュールは複数の前記固体発光素子を有し、前記蛍光体モジュールは、前記複数の固体発光素子に対応した位置にそれぞれ蛍光体を含有し、前記固体発光素子モジュールと前記蛍光体モジュールとが接合されることで、前記複数種の発光光源が集積配置された発光部が構成される上記[5]から[7]のいずれか1項に記載の照明装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、構造が簡易であり、照射面において色や輝度にムラやリングを生じることなく、発光の均一性に優れ、かつ、演色性に優れる照明装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の各要素について詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
【0020】
本発明の照明装置は、それぞれ異なる波長の一次光を発する複数種の発光光源を集積配置した発光部を備えた照明装置であって、前記発光光源が固体発光素子及び蛍光体を含有し、前記発光部の発光面から垂直方向に30cm離れた位置における合成光の照度が150ルクス以上であることが特徴である。
【0021】
以下、各構成要件について詳述する。
【0022】
[1]発光光源
本発明の照明装置に用いられる発光光源は、本発明の照明装置の合成光の成分となる一次光を発するという意義を有する。
【0023】
本発明に用いられる発光光源は、固体発光素子及び蛍光体を含有することを特徴とし、必要に応じて、その他任意の成分を含有していても良い。
【0024】
発光光源としては、具体的には、例えば半導体発光素子を用いたLEDランプを挙げることができる。
【0025】
以下、本発明に用いられる発光光源の構成要素について詳述する。
【0026】
[1−1]固体発光素子
本発明に用いられる固体発光素子は、後述する[1−2]項の蛍光体を励起する光を発光するものである。固体発光素子の発光波長は、蛍光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の発光素子を使用することができる。
【0027】
本発明の照明装置に用いられる固体発光素子の種類は特に限定はないが、例えば半導体発光素子、無機EL、及び有機ELなどを挙げることができる。中でも、長寿命、省エネルギー、低発熱量、高速応答性、耐衝撃性、小型・軽量性、耐環境性の観点から半導体発光素子を用いるのが好ましい。
【0028】
半導体発光素子としては、具体的には発光ダイオード(LED)や半導体レーザーダイオード(LD)等が使用できる。半導体発光素子の発光ピーク波長は、蛍光体の励起効率、延いては蛍光体の励起光から蛍光への変換効率と関係する重要な要素であり、通常は、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光素子が使用され、具体的数値としては、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下のピーク発光波長を有する発光素子が使用される。
【0029】
中でも、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、後述の蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、同じ電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlGaN発光層、GaN発光層、又はInGaN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInGaN発光層を有するものが、発光強度が非常に強いので、特に好ましく、GaN系LDにおいては、InGaN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが、発光強度が非常に強いので、特に好ましい。
【0030】
なお、上記においてx+yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0031】
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlGaN層、GaN層、又はInGaN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高く、好ましく、さらにヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率がさらに高く、より好ましい。
【0032】
GaN系半導体発光素子を形成するためのGaN系結晶層の成長方法としては、HVPE法、MOVPE法、MBE法などが挙げられる。厚膜を形成する場合はHVPE法が好ましいが、薄膜を形成する場合はMOVPE法やMBE法が好ましい。
【0033】
[1−2]蛍光体
本発明の照明装置に用いられる蛍光体は、前記[1−1]項の固体発光素子からの発光で励起されて、固体発光素子からの光を異なる波長の光に変換するものである。
【0034】
蛍光体により変換された光を発光光源に用いると、パッケージ形状によらず、発光光源から近距離の地点で一次光が混色し、白色の合成光を実現することができる。
【0035】
かかる蛍光体の組成には特に制限はないが、酸化物蛍光体又は窒化物蛍光体が化学的に安定であるため、半導体発光素子および照明装置の寿命が長くなるので好ましい。中でも、結晶母体であるY、ZnSiO等に代表される金属酸化物、SrSi等に代表される金属窒化物、Ca(PO)Cl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが好ましい。
【0036】
結晶母体の好ましい例としては、例えば、(Zn,Cd)S、SrGa、SrS、ZnS等の硫化物、YS等の酸硫化物、(Y,Gd)Al12、YAlO、BaMgAl1017、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017、(Ba,Sr,C
a)(Mg,Zn,Mn)Al1017、BaAl1219、CeMgAl1119
、(Ba,Sr,Mg)O・Al、BaAlSi、SrAl、SrAl1425、YAl12等のアルミン酸塩、YSiO、ZnSiO等の珪酸塩、SnO、Y等の酸化物、GdMgB10、(Y,Gd)BO等の硼酸塩、Ca10(PO)(F,Cl)、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO)Cl等のハロリン酸塩、Sr、(La,Ce)PO等のリン酸塩等を挙げることができる。
【0037】
ただし、上記の結晶母体及び付活元素又は共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
【0038】
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、以下の例示では、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。例えば、「YSiO:Ce3+」、「YSiO:Tb3+」及び「YSiO:Ce3+,Tb3+」を「YSiO:Ce3+,Tb3+」と、「LaS:Eu」、「YS:Eu」及び「(La,Y)S:Eu」を「(La,Y)S:Eu」とまとめて示している。省略箇所はカンマ(,)で区切って示す。また、( )内の元素の合計は1モルである。
【0039】
本発明で使用される蛍光体の蛍光色は、本発明の照明装置の目的等に応じて各色のものが選択できるが、具体的には、下記に挙げられるものを使用することができる。
【0040】
[1−2−1]橙色ないし赤色蛍光体
橙色ないし赤色の蛍光を発する基体蛍光体(以下適宜、橙色の蛍光を発する基体蛍光体
を「橙色蛍光体」といい、赤色の蛍光を発する基体蛍光体を「赤色蛍光体」といい、橙色ないし赤色の蛍光を発する基体蛍光体を「橙色ないし赤色蛍光体」という。)としては、以下のものが挙げられる。
【0041】
本発明に好適な赤色蛍光体が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、主発光ピーク波長が通常570nm以上、好ましくは580nm以上、特に好ましくは610nm以上であり、また、通常700nm以下、好ましくは680nm以下、特に好ましくは660nm以下である。
【0042】
また、主発光ピークの半値幅は、通常1nm以上、好ましくは10nm以上、特に好ましくは30nm以上であり、また通常120nm以下、好ましくは110nm以下、特に好ましくは100nm以下である。
【0043】
主発光ピーク波長が、長すぎると、視感度が低下するため照明装置の照度が低下する(暗くなる)虞があり、また、短すぎると照明装置とした場合の演色性が低下する虞がある。また、主発光ピークの半値幅が、上記範囲外の場合は、照明装置とした場合の演色性が低下する虞がある。
【0044】
橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Y,La,Gd,L
u)S:Euで表されるユウロピウム付活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等
が挙げられる。
【0045】
さらに、特開2004−300247号公報に記載された、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も、本実施形態において用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
【0046】
また、そのほか、赤色蛍光体としては、(La,Y)S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O:Eu、Y:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu,Mn、(Ba,Mg)SiO:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、LiY(SiO):Eu、Ca(SiO):Eu、(Sr,Ba,Ca)SiO:Eu、SrBaSiO:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)Al12:Ce、(Tb,Gd)Al12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Ca,Sr,Ba)Si:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)SiN:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN:Eu等のEu付活窒化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN:Ce等のCe付活窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO)Cl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、BaMgSi:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)(Zn,Mg)Si:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La):Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn):Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)WO:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)Si:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO)(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1−xScCe)(Ca,Mg)1−r(Mg,Zn)2+rSiz−qGeqO12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0047】
赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフ
ェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)、アント
ラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料を用いることも可能である。
【0048】
また、赤色蛍光体のうち、ピーク波長が580nm以上、好ましくは590nm以上、また、620nm以下、好ましくは610nm以下の範囲内にあるものは、橙色蛍光体として好適に用いることができる。このような橙色蛍光体の例としては、(Sr,Ba)SiO:Eu、(Sr,Mg)(PO:Sn、Eu付活のサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体等が挙げられる。
【0049】
[1−2−2]緑色蛍光体
緑色の蛍光を発する基体蛍光体(以下適宜、「緑色蛍光体」という。)としては、以下
のものが挙げられる。
【0050】
本発明に好適な緑色蛍光体が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、主発光ピーク波長が通常500nm以上、好ましくは510nm以上、特に好ましくは520nm以上であり、また、通常580nm以下、好ましくは570nm以下、特に好ましくは560nm以下である。
【0051】
また、主発光ピークの半値幅が通常1nm以上、好ましくは10nm以上、特に好ましくは30nm以上であり、また、通常120nm以下、好ましくは90nm以下、特に好ましくは60nm以下である。
【0052】
主発光ピーク波長が、上記範囲より短すぎると、視感度が低下するため照明装置の照度が低下する(暗くなる)虞があり、また、長すぎると照明装置とした場合の演色性が低下する虞がある。
【0053】
また、主発光ピークの半値幅が、上記範囲外の場合は、照明装置とした場合の演色性が低下する虞がある。
【0054】
このような緑色蛍光体として、例えば、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Ba,Ca,Sr,Mg)SiO:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類シリケート系蛍光体等が挙げられる。
【0055】
また、そのほか、緑色蛍光体としては、SrAl1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)AlSi:Eu、(Ba,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:Eu、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn)Si:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、YSiO:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr−Sr:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi−2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、ZnSiO:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、YAl12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca(SiO):Tb、LaGaSiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y(Al,Ga)12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)(Al,Ga)12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、CaScSi12:Ce、Ca(Sc,Mg,Na,Li)Si12:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、SrSi:Eu、(Sr,Ba,Ca)Si:Eu、Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO:Ce,Tb、NaGd:Ce,Tb、(Ba,Sr)(Ca,Mg,Zn)B:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、CaMg(SiO)Cl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In):Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)(Mg,Zn)(SiO)Cl:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0056】
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、テルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
【0057】
[1−2−3]青色蛍光体
青色の蛍光を発する基体蛍光体(以下適宜、「青色蛍光体」という。)としては以下の
ものが挙げられる。
【0058】
本発明に好適な青色蛍光体が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、主発光ピーク波長が通常430nm以上、好ましくは440nm以上であり、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下、特に好ましくは460nm以下である。
【0059】
また、主発光ピークの半値幅が通常1nm以上、好ましくは10nm以上、特に好ましくは30nm以上で有り、また通常100nm以下、好ましくは80nm以下、特に好ましくは70nm以下である。
【0060】
主発光ピーク波長が、短すぎると、視感度が低下するため、照明装置の照度が低下する(暗くなる)虞があり、また、長すぎると、照明装置とした場合の演色性が低下する虞がある。
【0061】
また、主発光ピークの半値幅が、上記範囲外の場合は、照明装置とした場合の演色性が低下する虞がある。
【0062】
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なうBaMgAl1017:Euで表されるユウロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)(PO)Cl:Euで表されるユウロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)Cl:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al:Eu又は(Sr,Ca,Ba)Al1425:Euで表されるユウロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0063】
また、そのほか、青色蛍光体としては、Sr:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、SrAl1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、BaAl13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa:Ce、CaGa:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO)Cl:Eu、(Ba,Sr,Ca)(PO)(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAlSi:Eu、(Sr,Ba)MgSi:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、YSiO:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO)・nB:Eu、2SrO・0.84P・0.16B:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、SrSi・2SrCl:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0064】
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラゾリン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。
【0065】
なお、上述のような蛍光体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0066】
[1−2−4]黄色蛍光体
黄色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「黄色蛍光体」という。)としては、以下のも
のが挙げられる。
【0067】
黄色蛍光体が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0068】
黄色蛍光体の発光ピーク波長が短すぎると黄色成分が少なくなり演色性が劣る照明装置となる可能性があり、長すぎると照明装置の輝度が低下する虞がある。
【0069】
このような黄色蛍光体としては、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
【0070】
特に、RE12:Ce(ここで、REは、Y,Tb,Gd,Lu,Smの少なくとも1種類の元素を表し、Mは、Al,Ga,Scの少なくとも1種類の元素を表す。)やM12:Ce(ここで、Mは2価の金属元素、Mは3価の金属元素、Mは4価の金属元素)等で表されるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE:Eu(ここで、AEは、Ba,Sr,Ca,Mg,Znの少なくとも1種類の元素を表し、Mは、Si,Geの少なくとも1種類の元素を表す。)等で表されるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSiN:Ce(ここで、AEは、Ba,Sr,Ca,Mg,Znの少なくとも1種類の元素を表す。)等のCaAlSiN構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体が挙げられる。
【0071】
また、そのほか、黄色蛍光体としては、CaGa:Eu(Ca,Sr)Ga:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al):Eu等の硫化物系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のSiAlON構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体を用いることも可能である。
【0072】
前述の[1−2−1]〜[1−2−4]項に記載の蛍光体は所望の発光スペクトル、色温度、色度座標、演色性、発光効率などに応じて適宜組み合わせて用いてもよい。特定の蛍光体を適宜組み合わせることにより、白色系(昼光色〜昼白色〜白色〜温白色〜電球色)だけでなく、パステル色、単色光なども実現可能となる。
【0073】
[1−2−5]蛍光体のその他の物性
本発明に使用する蛍光体の粒径は特に制限はないが、中央粒径(D50)で通常0.1μm以上、好ましくは2μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
【0074】
蛍光体の中央粒径(D50)が、上記範囲にある場合は、半導体発光素子から発する光が充分に散乱される。また、半導体発光素子から発する光が充分に蛍光体粒子に吸収されるため、波長変換が高効率に行われると共に、蛍光体から発せられる光が全方向に照射される。これにより、複数種類の蛍光体からの一次光を混色して白色にすることができると共に、均一な白色が得られるため、本発明の照明装置が発する合成光において、均一な白色光と照度が得られる。
【0075】
蛍光体の中央粒径(D50)が、上記範囲より大きい場合は、蛍光体が発光部の空間を充分に埋めることができないため、発光素子からの光が充分に蛍光体に吸収されない虞がある。また、蛍光体の中央粒径(D50)が、上記範囲より小さい場合は、蛍光体の発光効率が低下するため、本発明の照明装置の照度が低下する虞がある。
【0076】
蛍光体粒子の粒度分布(QD)は、例えば、後述する蛍光体含有部中での粒子の分散状態をそろえるために小さい方が好ましいが、小さくするためには分級収率が下がってコストアップにつながるので、通常0.03以上、好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.07以上である。また、通常0.4以下、好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。また、蛍光体粒子の形状は、蛍光体部形成に影響を与えない限り、特に限定されない。
【0077】
なお、本発明において、蛍光体の中央粒径(D50)、粒度分布(QD)は、重量基準粒度分布曲線から得ることが出来る。前記重量基準粒度分布曲線は、レーザ回折・散乱法により粒度分布を測定し得られるもので、具体的には、例えば以下のように測定することが出来る。
【0078】
温度25℃、湿度70%の環境下において、エチレングリコールなどの溶媒に蛍光体を分散させる。
【0079】
レーザ回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製「LA−300」)により、粒径範囲0.1μm〜600μmにて測定する。
【0080】
この重量基準粒度分布曲線において積算値が50%のときの粒径値を中央粒径D50と表記する。また、積算値が25%及び75%の時の粒径値をそれぞれD25、D75と表記し、QD=(D75−D25)/(D75+D25)と定義する。QDが小さいことは粒度分布が狭いことを意味する。
【0081】
[1−2−6]蛍光体の表面処理
本発明に使用する蛍光体は、耐水性を高める目的で、又は後述の蛍光体含有部中で蛍光体の不要な凝集を防ぐ目的で、表面処理が行われていてもよい。
【0082】
かかる表面処理の例としては、例えば特開2002−223008号公報に記載の有機材料、無機材料、ガラス材料などを用いた表面処理、特開2000−96045号公報等に記載の金属リン酸塩による被覆処理、金属酸化物による被覆処理、シリカコート等の公知の表面処理が挙げられる。
【0083】
具体的には、例えば蛍光体の表面に上記金属リン酸塩を被覆させるには、次の手順で行うことができる。
(1) 所定量のリン酸カリウム、リン酸ナトリウムなどの水溶性のリン酸塩と塩化カルシ
ウム、硫酸ストロンチウム、塩化マンガン、硝酸亜鉛等のアルカリ土類金属、Zn及びMnの中の少なくとも1種の水溶性の金属塩化合物とを蛍光体懸濁液中に添加し、攪拌する。
(2) アルカリ土類金属、Zn及びMnの中の少なくとも1種の金属のリン酸塩を懸濁液
中で生成させると共に、生成したこれらの金属リン酸塩を蛍光体表面に沈積させる。
(3) 水分を除去する。
【0084】
また、シリカコート処理としては、水ガラスを中和してSiOを析出させる方法、アルコキシシランを加水分解したものを表面処理する方法(例えば、特開平3−231987号公報)等が挙げられ、分散性を高める点においてはアルコキシシランを加水分解したものを表面処理する方法が好ましい。
【0085】
[1−2−7]蛍光体の使用量
本発明の照明装置に用いられるこれらの蛍光体の量は、本発明の照明装置の特性を満足するよう適宜選択することができるが、蛍光体の総重量と、後述の封止材料である透明樹脂等の重量と、必要に応じて添加される粘度調整剤等の添加剤の重量との総和に対して、5重量%〜90重量%であることが好ましい。蛍光体を透過型で使用する場合はこの割合が5重量%〜50重量%と少なめが好ましく、反射型で使用する場合はこの割合が50重量%〜90重量%と多めが好ましい。
【0086】
[1−3]封止材料
本発明の照明装置に用いられる発光光源は、上述の固体発光素子及び蛍光体を備えていればよく、そのほかの構成は特に制限されない。固体発光素子および蛍光体は、通常、固体発光素子の発光によって蛍光体が励起されて発光を生じ、この発光が、外部に取り出されるように配置されることになる。かかる構造を有する場合、上述の固体発光素子、蛍光体は、通常は封止材料で封止保護する。具体的に、この封止材料は、上述の蛍光体を分散させて発光部分を構成したり、発光素子、蛍光体および基板間を接着したりする目的で採用される。
【0087】
使用される封止材料としては、通常、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられるが、固体発光素子からの励起光(ピーク波長350nm〜430nm)に対して充分な透明性と耐久性のある樹脂が好ましい。
【0088】
具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。また、無機系材料、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液又はこれらの組み合わせを固化した無機系材料、例えばシロキサン結合を有する無機系材料やガラスを用いることもできる。
【0089】
これらのうち、耐熱性、耐紫外線(UV)性等の点から、シリコーン樹脂や金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液又はこれらの組み合わせを固化した無機系材料、例えばシロキサン結合を有する無機系材料が好ましい。
【0090】
このような封止材料のうちでは、特に、以下の特徴(1)〜(3)のうち1つ以上を有するシリコーン系材料やシリコーン樹脂(以下「本発明のシリコーン系材料」と称す場合がある。)が好ましい。
(1)固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(i)及び/又は(ii)のピークを少なくとも1つ有する。
【0091】
(i)ピークトップの位置がケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
【0092】
(ii)ピークトップの位置がケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
(2)ケイ素含有率が20重量%以上である。
(3)シラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下である。
【0093】
本発明においては、上記の特徴(1)〜(3)のうち、特徴(2)を有するシリコーン系材料やシリコーン樹脂が好ましい。より好ましくは、上記の特徴(1)及び(2)を有するシリコーン系材料やシリコーン樹脂が好ましい。特に好ましくは、上記の特徴(1)〜(3)を全て有するシリコーン系材料やシリコーン樹脂が好ましい。
【0094】
以下、これらの特徴(1)〜(3)について説明する。
【0095】
[1−3−1]固体Si−NMRスペクトル
ケイ素を主成分とする化合物は、SiO・nHOの示性式で表されるが、構造的には、ケイ素原子Siの四面体の各頂点に酸素原子Oが結合され、これらの酸素原子Oに更にケイ素原子Siが結合してネット状に広がった構造を有する。そして、以下に示す模式図(A)、(B)は、上記の四面体構造を無視し、Si−Oのネット構造を表したものであるが、Si−O−Si−O−の繰り返し単位において、酸素原子Oの一部が他の成員(例えば−H、−CHなど)で置換されているものもあり、一つのケイ素原子Siに注目した場合、模式図の(A)に示す様に4個の−OSiを有するケイ素原子Si(Q)、模式図の(B)に示す様に3個の−OSiを有するケイ素原子Si(Q)等が存在する。そして、固体Si−NMR測定において、上記の各ケイ素原子Siに基づくピークは、順次に、Qピーク、Qピーク、・・・と呼ばれる。
【0096】
【化1】

【0097】
これら酸素原子が4つ結合したケイ素原子は、一般にQサイトと総称される。本発明においてはQサイトに由来するQ〜Qの各ピークをQピーク群と呼ぶこととする。有機置換基を含まないシリカ膜のQピーク群は、通常ケミカルシフト−80〜−130ppmの領域に連続した多峰性のピークとして観測される。
【0098】
これに対し、酸素原子が3つ結合し、それ以外の原子(通常は炭素である。)が1つ結合しているケイ素原子は、一般にTサイトと総称される。Tサイトに由来するピークはQサイトの場合と同様に、T〜Tの各ピークとして観測される。本発明においてはTサイトに由来する各ピークをTピーク群と呼ぶこととする。Tピーク群は一般にQピーク群より高磁場側(通常ケミカルシフト−80〜−40ppm)の領域に連続した多峰性のピークとして観測される。
【0099】
更に、酸素原子が2つ結合するとともに、それ以外の原子(通常は炭素である。)が2つ結合しているケイ素原子は、一般にDサイトと総称される。Dサイトに由来するピークも、QサイトやTサイトに由来するピーク群と同様に、D〜Dの各ピーク(Dピーク群と称す。)として観測され、QやTのピーク群より更に、高磁場側の領域(通常ケミカルシフト0〜−40ppmの領域)に、多峰性のピークとして観測される。これらのD、T、Qの各ピーク群の面積の比は、各ピーク群に対応する環境におかれたケイ素原子のモル比と夫々等しいので、全ピークの面積を全ケイ素原子のモル量とすれば、Dピーク群及びTピーク群の合計面積は通常これに対する炭素原子と直接結合した全ケイ素のモル量と対応することになる。
【0100】
本発明のシリコーン系材料の固体Si−NMRスペクトルを測定すると、有機基の炭素原子が直接結合したケイ素原子に由来するDピーク群及びTピーク群と、有機基の炭素原子と結合していないケイ素原子に由来するQピーク群とが、各々異なる領域に出現する。これらのピークのうち−80ppm未満のピークは前述の通りQピークに該当し、−80ppm以上のピークはD、Tピークに該当する。本発明のシリコーン系材料においてはQピークは必須ではないが、D、Tピーク領域に少なくとも1本、好ましくは複数本のピークが観測される。
【0101】
また、本発明のシリコーン系材料において、−80ppm以上の領域に観測されるピークの半値幅は、これまでにゾルゲル法にて知られているシリコーン系材料の半値幅範囲より小さい(狭い)ことを特徴とする。
【0102】
ケミカルシフトごとに整理すると、本発明のシリコーン系材料において、ピークトップの位置が−80ppm以上−40ppm未満に観測されるTピーク群の半値幅は、通常5.0ppm以下、好ましくは4.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上、好ましくは0.4ppm以上の範囲である。
【0103】
同様に、ピークトップの位置が−40ppm以上0ppm以下に観測されるDピーク群の半値幅は、分子運動の拘束が小さいために全般にTピーク群の場合より小さく、通常3.0ppm以下、好ましくは2.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上の範囲である。
【0104】
上記のケミカルシフト領域において観測されるピークの半値幅が上記の範囲より大きいと、分子運動の拘束が大きくひずみの大きな状態となり、クラックが発生しやすく、耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる虞がある。例えば、四官能シランを多用した場合や、乾燥工程において急速な乾燥を行ない大きな内部応力を蓄えた状態などにおいて、半値幅範囲が上記の範囲より大きくなる。
【0105】
また、ピークの半値幅が上記の範囲より小さい場合、その環境にあるSi原子はシロキサン架橋に関わらないことになり、三官能シランが未架橋状態で残留する例など、シロキサン結合主体で形成される物質より耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる虞がある。
【0106】
なお、本発明のシリコーン系材料の組成は、系内の架橋が主としてシリカを始めとする無機成分により形成される場合に限定される。すなわち、大量の有機成分中に少量のSi成分が含まれるシリコーン系材料において−80ppm以上に上述の半値幅範囲のピークが認められても、良好な耐熱・耐光性及び塗布性能は得ることができない。
【0107】
本発明のシリコーン系材料のケミカルシフトの値は、例えば以下の方法を用いて固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(半値幅やシラノール量解析)は、例えばガウス関数やローレンツ関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
【0108】
{固体Si−NMRスペクトル測定}
シリコーン系材料について固体Si−NMRスペクトルを行なう場合、以下の条件で固体Si−NMRスペクトル測定及び波形分離解析を行なう。また、得られた波形データより、シリコーン系材料について、各々のピークの半値幅を求める。
【0109】
<装置条件>
装置:Chemagnetics社 Infinity CMX−400 核磁気共鳴分光装置
29Si共鳴周波数:79.436MHz
プローブ:7.5mmφCP/MAS用プローブ
測定温度:室温
試料回転数:4kHz
測定法:シングルパルス法
Hデカップリング周波数:50kHz
29Siフリップ角:90゜
29Si90゜パルス幅:5.0μs
くり返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
【0110】
<データ処理法>
シリコーン系材料については、512ポイントを測定データとして取り込み、8192ポイントにゼロフィリングしてフーリエ変換する。
【0111】
<波形分離解析法>
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行なう。
【0112】
なお、ピークの同定は、AIChE Journal,44(5),p.1141,1998年等を参考にする。
【0113】
[1−3−2]ケイ素含有率
本発明のシリコーン系材料は、ケイ素含有率が20重量%以上であるものが好ましい(特徴(2))。従来のシリコーン系材料の基本骨格は炭素−炭素及び炭素−酸素結合を基本骨格としたエポキシ樹脂等の有機樹脂であるが、これに対し本発明のシリコーン系材料の基本骨格はガラス(ケイ酸塩ガラス)などと同じ無機質のシロキサン結合である。このシロキサン結合は、下記表1の化学結合の比較表からも明らかなように、シリコーン系材料として優れた以下の特徴がある。
【0114】
(I)結合エネルギーが大きく、熱分解・光分解しにくいため、耐光性が良好である。
(II)電気的に若干分極している。
(III)鎖状構造の自由度は大きく、フレキシブル性に富む構造が可能であり、シロキサ
ン鎖中心に自由回転可能である。
(IV)酸化度が大きく、これ以上酸化されない。
(V)電気絶縁性に富む。
【0115】
【表1】

【0116】
これらの特徴から、シロキサン結合が3次元的に、しかも高架橋度で結合した骨格で形成されるシリコーン系材料は、ガラス或いは岩石などの無機質に近く、耐熱性・耐光性に富む保護皮膜となることが理解できる。特にメチル基を置換基とするシリコーン系材料は、紫外領域に吸収を持たないため光分解が起こりにくく、耐光性に優れる。
【0117】
本発明のシリコーン系材料のケイ素含有率は、上述の様に20重量%以上であるが、中でも25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、上限としては、SiOのみからなるガラスのケイ素含有率が47重量%であるという理由から、通常47重量%以下の範囲である。
【0118】
なお、シリコーン系材料のケイ素含有率は、例えば以下の方法を用いて誘導結合高周波プラズマ分光(inductively coupled plasma spectrometry:以下適宜「ICP」と略する。)分析を行ない、その結果に基づいて算出することができる。
【0119】
{ケイ素含有率の測定}
シリコーン系材料の単独硬化物を粒径が100μm程度になるまで粉砕し、白金るつぼ中にて大気中、450℃で1時間、次いで750℃で1時間、950℃で1.5時間保持して焼成し、炭素成分を除去した後、得られた残渣少量に10倍量以上の炭酸ナトリウムを加えてバーナー加熱し溶融させ、これを冷却して脱塩水を加え、更に塩酸にてpHを中性程度に調整しつつケイ素として数ppm程度になるよう定容し、ICP分析を行なう。
【0120】
[1−3−3]シラノール含有率
本発明のシリコーン系材料は、シラノール含有率が、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.3重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下の範囲である(特徴(3))。
【0121】
本発明のシリコーン系材料は、シラノール含有率が低いため経時変化が少なく、長期の性能安定性に優れ、吸湿・透湿性何れも低い優れた性能を有する。但し、シラノールが全く含まれない部材は密着性に劣るため、シラノール含有率に上記のごとく最適な範囲が存在する。
【0122】
なお、シリコーン系材料のシラノール含有率は、例えば前述の{固体Si−NMRスペクトル測定}の項において説明した方法を用いて固体Si−NMRスペクトル測定を行ない、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することにより算出することができる。
【0123】
また、本発明のシリコーン系材料は、適当量のシラノールを含有しているため、デバイス表面に存在する極性部分にシラノールが水素結合し、密着性が発現する。極性部分としては、例えば、水酸基やメタロキサン結合の酸素等が挙げられる。
【0124】
また、本発明のシリコーン系材料は、適当な触媒の存在下で加熱することにより、デバイス表面の水酸基との間に脱水縮合による共有結合を形成し、さらに強固な密着性を発現することができる。
【0125】
一方、シラノール含有量が多すぎると、系内が増粘して塗布が困難になったり、活性が高くなり加熱により軽沸分が揮発する前に固化したりすることによって、発泡や内部応力の増大が生じ、クラックなどを誘起する虞がある。
【0126】
[1−3−4]硬度測定値
本発明のシリコーン系材料は、エラストマー状を呈することが好ましい。具体的には、以下の特徴(4)を有している。
(4)デュロメータタイプAによる硬度測定値(ショアA)が、通常5以上、好ましくは7以上、より好ましくは10以上、また、通常90以下、好ましくは80以下、より好ましくは70以下である。
【0127】
上記範囲の硬度測定値を有することにより、クラックが発生しにくく、耐リフロー性及び耐温度サイクル性に優れるという利点を得ることができる。リフローとは、はんだペーストを基板に印刷し、その上に部品を搭載して加熱、接合するはんだ付け工法のことをいう。そして、耐リフロー性とは、最高温度260℃、10秒間の熱衝撃に耐え得る性質のことを指す。
【0128】
なお、上記の硬度測定値(ショアA)は、JISK6253に記載の方法により測定することができる。具体的には、古里精機製作所製のA型ゴム硬度計を用いて測定を行なうことができる。
【0129】
[1−3−5]その他の添加剤
本発明のシリコーン系材料は、封止材料の屈折率を調整するために、高い屈折率を有する金属酸化物を与えることのできる金属元素を封止材料中に存在させることができる。高い屈折率を有する金属酸化物を与える金属元素の例としては、Si、Al、Zr、Ti、Y、Nb、B等が挙げられる。これらの金属元素は単独で使用されてもよく、二種以上が任意の組み合わせ及び比率で併用されてもよい。
【0130】
このような金属元素の存在形態は、封止材料の透明度を損なわなければ特に限定されず、例えば、メタロキサン結合として均一なガラス層を形成していても、封止材料中に粒子状で存在していてもよい。粒子状で存在している場合、その粒子内部の構造はアモルファス状であっても結晶構造であってもよいが、高屈折率を与えるためには結晶構造であることが好ましい。また、その粒子径は、封止材料の透明度を損なわないために、通常は、半導体発光素子の発光波長以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。例えば、シリコーン系材料に、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ニオブ等の粒子を添加することにより、上記の金属元素を封止材料中に粒子状で存在させることができる。
【0131】
また、本発明のシリコーン系材料は、さらに、拡散剤、フィラー、粘度調整剤、紫外線吸収剤等公知の添加剤を含有していてもよい。
【0132】
本発明のシリコーン系材料としては、具体的には、例えば特願2006−176468号明細書に記載のシリコーン系材料を挙げることができる。
【0133】
[1−4]その他の成分
本発明の照明装置に用いられる発光光源は、上記成分の他に、任意成分として、色素、酸化防止剤、安定化剤(燐系加工安定化剤などの加工安定化剤、酸化安定化剤、熱安定化剤、紫外線吸収剤などの耐光性安定化剤など)、シランカップリング剤、光拡散材、フィラーなど、当該分野で公知の添加物のいずれをも用いることができる。
【0134】
[1−5]発光光源の構造
本発明の照明装置に用いられる発光光源は、上述の発光素子及び蛍光体を含有するものであれば、その具体的な構造に特に限定はないが、例えば、固体発光素子としてLEDを用いることが望ましい。
【0135】
以下に、LEDを用いた発光光源の実施形態の例を詳述するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々に変更して実施することができる。
【0136】
[1−5−1]実施形態1
図1は、本発明の一実施形態に係るLEDランプの構成を模式的に示す図である。
【0137】
本実施形態のLEDランプ1は、フレーム2と、発光素子であるLED3と、LED3から発せられる光の一部を吸収し、それとは異なる波長を有する光を発する蛍光体含有部4とを有する。
【0138】
フレーム2は、LED3および蛍光体含有部4を保持するための金属製の基部である。フレーム2は、一対の導電部材2B、2Cを有しており、一方の導電部材2Bの上面には、図1中、上側に開口した断面台形状の凹部(窪み)2Aが形成されている。
【0139】
凹部2Aの底部には、発光素子としてLED3が設置されている。LED3は、電力が供給されることにより近紫外領域から青色領域までの光を発光するものであり、前述した[1−1]項に記載したものを用いることができる。さらに、凹部2Aには、LED3から発せられる光の一部を吸収して異なる波長の光を発する蛍光体含有部4が、LED3を覆って設けられている。LED3から発せられた光の一部は、蛍光体含有部4内の発光物質(蛍光体)に励起光として吸収され、また別の一部は、蛍光体含有部4を透過してLEDランプ1から放出されるようになっている。
【0140】
凹部2AへのLED3の設置には任意の方法を採用することができる。本形態では、接着剤5で接着することによってLED3を凹部2Aに設置している。
【0141】
凹部2Aに設置されたLED3は、フレーム2と電気的に接続される。フレーム2を介してLED3に電力を供給することによって、LED3が発光する。LED3とフレーム2との電気的接続は、LED3における電極(不図示)の配置に応じて適宜方法で行なうことができる。例えば、LED3の片面のみに電極の組が設けられている場合は、図1に示すように、電極が設けられている面を上に向けてLED3を設置し、各組の電極と各導電部材2B、2Cとを例えば金製のワイヤ6で接続することによって、フレーム2とLED3とを電気的に接続することができる。また、LED3の相対向する2つの面に電極の組が設けられている場合は、一方の電極の組を下に向けた状態で導電性ペーストを介して凹部2AにLED3を設置するとともに、残りの電極の組と導電部材2Cとを例えば金製のワイヤで接続することによって、フレーム2とLED3とを電気的に接続することができる。
【0142】
蛍光体含有部4は、透明樹脂と蛍光体を含有した構成を有している。蛍光体は、LED3が発する光により励起されて、波長の異なる光を発する物質である。蛍光体含有部4を構成する蛍光体は一種類であっても良いし、複数種類の混合物であってもよい。いずれの場合でも、蛍光体の種類は、LED3の発する光と蛍光体含有部4が含有する蛍光体の発する光の総和が所望の色になるように選べばよい。また、透明樹脂は、LED3および蛍光体が発した光を透過させるだけでなく、LED3を封止しかつ蛍光体を分散保持する機能を有している。このような機能を有していれば、透明樹脂としては任意の材料を用いることができ、ここでは、上述の封止材料を用いている。
【0143】
LEDランプ1からは、LED3から発せられた光の一部、および蛍光体含有部4に含有される蛍光体から発せられた光が放出される。前述のように、LED3および蛍光体含有部4はカップ形状の凹部2Aに設けられているので、LEDランプ1から放出される光に指向性を持たせることができ、放出する光を有効に利用することができる。
【0144】
LED3、蛍光体含有部4および蛍光体含有部4などは、必要に応じてモールド部7で保護することができる。モールド部7を所定の形状で形成することにより、モールド部7に、配光特性を制御するためのレンズ(配光制御素子)としての機能を持たせることができる。本形態では、モールド部7を砲弾型に形成してレンズ機能を持たせている。モールド部7は透明な樹脂で構成することができる。モールド部7に用いる樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられ、それらの中でも特にエポキシ樹脂が好ましい。モールド部7を構成する樹脂には、必要に応じて粘度調整剤、拡散剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0145】
以上のようにLED3および蛍光体含有部4を有する発光光源であるLEDランプ1は、複数個が例えば基板上に集積配置されて、本発明における発光部を構成する。各発光光源がモールド部7を有していない場合は、複数の発光光源を集積配置した後、全ての発光光源を一括してモールド部で保護してもよい。
【0146】
[1−5−2]実施形態2
実施形態1ではLED3を蛍光体含有部4で封止することによって固体発光素子および蛍光体を同一のモジュールとして構成した例を示したが、固体発光素子と蛍光体を別モジュールで構成することもできる。以下に、固体発光素子と蛍光体を別モジュールで構成した実施形態2の発光光源について説明する。
【0147】
図2Aに示す発光光源は、固体発光素子をモジュール化した固体発光素子モジュール10と、蛍光体含有部をモジュール化した蛍光体モジュール20とを有する。図2Bに示すように、蛍光体モジュール20は、固体発光素子モジュール10に接合され、これによって発光光源が構成される。
【0148】
以下、各モジュールについて説明する。
【0149】
[1−5−2−1]固体発光素子モジュール
図2Bに示すように、固体発光素子モジュール10は、基部11と、基部11上に配置された固体発光素子12とを備える。
【0150】
(i)基部
固体発光素子モジュール10の基部11は、固体発光素子12を固定して支持するものである。図2Bでは円板状の基部11が示されているが、基部11は、温度条件などの、本実施形態における固体発光素子モジュールの基部としての使用条件に耐えうるものであれば、本実施形態の効果を著しく損なわない範囲で任意の素材、形状、寸法で構成することができる。また、基部11の固体発光素子12が配置された表面は、固体発光素子12を封止するように基部11全体を覆ってモールド部7が形成されていてもよい。モールド部7を構成する樹脂としては、実施形態1で用いた樹脂と同じ樹脂を用いることができる。
【0151】
(ii)固体発光素子
固体発光素子12は、発光光源が一次光を発するために上述したものと同様のもの、特にLEDを好ましく用いることができる。従って、図2Bに示すように固体発光素子12と蛍光体含有部22とを用いて一次光を発する場合には、固体発光素子モジュール10には少なくとも1つの固体発光素子12を設けるようにする。この場合、固体発光素子12は2以上の蛍光体部22に共有されうる構成としてもよい。
【0152】
また、固体発光素子12の数は、基部11のサイズ等に応じて、1つとすることもできるし、複数とすることもできる。本形態では基部11上に複数個、具体的には9個の固体発光素子12が配置されている。
【0153】
(iii)その他の部材
また、固体発光素子モジュール10には、基部11及び固体発光素子12以外の部材を備えていても良い。例えば、固体発光素子モジュール10は、固体発光素子12に電力を供給するための配線13を有していてもよい。通常、この配線13は、固体発光素子モジュール10の基部11に設けられる。基部11に複数の固体発光素子12が設けられている場合は、配線13は各固体発光素子12に電力を供給できるように設けられる。
【0154】
[1−5−2−2]蛍光体モジュール
図2Bに示すように、蛍光体モジュール20は、固体発光素子モジュール10の上面に接合されることによって、本実施形態の発光光源を、固体発光素子モジュール10、及び、必要に応じてその他の部材とともに構成するものであり、基部21と、基部21上に配された蛍光体含有部22とを備える。固体発光素子モジュール10からの光を有効に利用する為には固体発光素子モジュール10に蛍光体モジュール20を密着させた方が良いが、固体発光素子モジュール10の表面材質や蛍光体モジュール20の透明樹脂材料によっては、固体発光素子モジュール10との間に空間を空けてと蛍光体モジュール20を配置しても良い。
【0155】
(i)基部
蛍光体モジュール20の基部21は、蛍光体含有部22の支持体であって、例えば透明なフィルムや板(シート)等で構成することができる。
【0156】
蛍光体モジュール20の基部21は、温度条件などの、本実施形態における蛍光体モジュールの基部としての使用条件に耐えうるものであれば、本実施形態の効果を著しく損なわない範囲で任意の素材、形状、寸法で構成することができる。
【0157】
(ii)蛍光体含有部
蛍光体含有部22は、基部21の一部の領域に形成されており、実施形態1で述べた蛍光体含有部4と同様、透明樹脂と、透明樹脂中に分散した蛍光体とを有して構成されている。蛍光体含有部22としては、上述した蛍光体含有部4と同様のものを用いることができる。
【0158】
蛍光体含有部22は、通常は基部21の表面に設けられるが、蛍光体含有部22の透明樹脂が基部21を構成する素材と同じ場合は、蛍光体を基部21の一部の領域に含有させることによって蛍光体含有部22を構成することもできる。
【0159】
蛍光体含有部22を基部21の表面に形成する場合、基部21に蛍光体含有部22を設ける方法としては、例えば蛍光体を透明樹脂(バインダー樹脂)中に分散させた分散液を作製し、これを基部21上にパターニング塗設する方法が挙げられる。
【0160】
基部21に蛍光体含有部22をパターニング塗設する具体的な方法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの印刷法、あるいは、透明樹脂として感光性レジストを用い、これに蛍光体を分散させた分散液を作製し、分散液を基部21の表面に塗布した後、マスクを介して露光し、未露光部を現像処理して除去することによってパターニングする方法などが挙げられる。もちろん、これらの方法以外にも、蛍光体含有部22を一括で形成する他の方法として、例えばカラーフィルタを作製する際に用いられる任意のパターニング方法を利用することができるし、選定する透明樹脂によってはトランスファー成型法やインジェクジョン成型法を用いることも可能である。また、蛍光体含有部22を必要な部分にだけ形成する方法として一般的なディスペンサーによる方法も可能である。
【0161】
蛍光体含有部22の位置は、固体発光素子モジュール10の固体発光素子12から発せられた光を蛍光体含有部22が受光できるように、蛍光体含有部22は、固体発光素子12と対向する位置に配置される。
【0162】
また、蛍光体含有部22の数は、基部21のサイズ等に応じて1つとすることもできるし複数とすることもできる。本実施形態では、固体発光素子モジュール10における固体発光素子12の数に対応して9個の蛍光体含有部22を設けている。
【0163】
(iii)その他の部材
また、蛍光体モジュール20には、基部21及び蛍光体含有部22以外の部材を備えていても良い。
【0164】
以上のように構成された蛍光体モジュール20は、固体発光素子モジュール10と組み合わされて、固体発光素子モジュール10の固体発光素子12から発せられた光(励起光)を蛍光体含有部22が受光する。蛍光体含有部22が固体発光素子12からの光を受光することによって、蛍光体含有部22中の蛍光体が励起され、蛍光(即ち、一次光)を発する。
【0165】
[2]発光部
本発明の照明装置は、上述の発光光源を集積配置した発光部を有する。発光部は、発光光源が発する一次光が発光部の発光面から所定の距離以下で合成され、合成光を発するように複数の発光光源が配置される。
【0166】
なお、上述の実施形態2で述べたように固体発光素子モジュール10および蛍光体モジュール20がそれぞれ複数の固体発光素子12および蛍光体含有部22を有する場合は、図2Aに示した構成全体を発光光源とし、それを複数集積配置することで発光部を構成することもできるし、個々の固体発光素子12および蛍光体含有部22の組を発光光源とし、図2Aに示した構成全体を発光部として構成することもできる。後者の場合は、波長が異なる複数種の一次光が発せられるように、各蛍光体含有部22が含有する蛍光体として複数種の蛍光体が用いられる。
【0167】
以下、発光部について、実施形態1で述べたような、砲弾型のLEDランプ(以下、単に「砲弾型LED」という)を複数用いた発光部を例にとって詳述する。
【0168】
[2−1]発光光源の配列
本発明の照明装置は、発光色の異なる砲弾型LEDを複数個集積することにより構成される場合には、集積する砲弾型LEDの数及び配置は、後述の様に、設計される照明装置の大きさ、要求される照度に応じて適宜選択することができる。
【0169】
なお、集積された複数の砲弾型LEDの構造軸(もしくは光軸)L(図3に示す。)が互いに非平行であると、複数の砲弾型LEDからの発光の合成光が当たる照射面において照度の均一性が得られ難くなる。特に、LED間の距離が離れた場合は照度の均一性を得ることが困難となる。そこで、複数の砲弾型LEDを配線基板上に実装して発光部を構成する場合、砲弾型LED100の構造軸(もしくは光軸)Lが配線基板面に対し垂直になるように配列されていることが好ましい。このことは、固体発光素子が表面実装型のLEDチップの場合も同様である。
【0170】
固体発光素子が上述のような砲弾型LEDや表面実装型のLEDチップである場合、本発明における発光部の発光面は、発光光源の光出射側の先端を含み、かつ固体発光素子が集積配置される配線基板に平行な面とする。また、上述の実施形態2のようにモジュール化された発光光源および発光部の場合は、蛍光体モジュールの光出射側の面を発光面とする。
【0171】
[2−2]発光光源の組合せ
本発明の照明装置は、上述の発光光源を複数備える。
【0172】
複数の発光光源は、2種以上の異なる波長の光(一次光)を発する。これら2種以上の異なる波長の一次光を混色することによって、合成光とすることができる。
【0173】
従来のような、LEDと1色以上の蛍光体とを組み合わせた白色発光装置では、パッケージ依存性、即ちLEDの波長ばらつき、蛍光体の分散ばらつき、パッケージの大きさや形状による影響等もあり、所望の色(ターゲットカラー)を構成する際に、処方を組むのが煩雑であり、技術的にも困難が生じる虞がある。本発明では、発光部は複数の発光光源を集積配置して構成されるので、各発光光源から発せられる一次光を調光するだけで、所望の色を得られるという点で極めて技術的意義が大きい。
【0174】
一次光は通常2色以上、好ましくは3色以上である。ターゲットカラーを構成する上では一次光は多色であることが好ましく、これにより、昼光色〜昼白色〜白色〜温白色〜電球色などの照明光源、CIE標準の光(A、B、CおよびD65)、太陽光(自然光)スペクトルなど、近紫外光から近赤外光の広範囲スペクトルを有するターゲットカラーが再現可能となる。
【0175】
一次光の組合せの具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。
【0176】
2色混合の例:
発光ピーク波長が400nm〜490nm(青色)及び560nm〜590nm(黄色)の組合せ、480nm〜500nm(青緑色)及び580nm〜700nm(赤色)の組合せなど。中でも400nm〜490nm(青色)及び560nm〜590nm(黄色)の組合せが好ましい。
【0177】
3色混合の例:
発光ピーク波長が430nm〜500nm、500nm〜580nm及び580nm〜700nmの組合せ、430nm〜480nm、480nm〜500nm及び580nm〜700nmの組合せ、430nm〜500nm、560nm〜590nm及び590nm〜700nmの組合せなど。中でも430nm〜500nm、500nm〜580nm及び580nm〜700nmの組合せが好ましい。
【0178】
4色混合の例:
発光ピーク波長が430nm〜500nm、500nm〜580nm、580nm〜620nm及び620nm〜700nmの組合せ、430nm〜480nm、480nm〜500nm、500nm〜580nm及び580nm〜700nmの組合せ、430nm〜480nm、480nm〜500nm、560nm〜590nm及び590nm〜700nmの組合せなど。中でも400nm〜490nm、490nm〜580nm、580nm〜620nm及び620nm〜700nmの組合せが好ましい。
【0179】
5色混合の例:
発光ピーク波長が430nm〜480nm、480nm〜500nm、500nm〜580nm、580nm〜620nm及び620nm〜700nmの組合せなど。
【0180】
[2−3]発光光源の光出射部のエネルギー比
本発明の照明装置は、[2−2]項で前述したように、複数の発光光源から2種以上の異なる波長の一次光を発し、それら一次光を混色することによって、所望の色の合成光を創出することができる。ここで、下記第1〜第3の異なる波長範囲に発光ピーク波長を有する3種類の1次光を組み合わせたものを含む合成光を創出する場合、発光光源の光出射部のエネルギー比は、第1の波長範囲に発光ピーク波長を有する一次光のエネルギーをE1、第2の波長範囲に発光ピーク波長を有する一次光のエネルギーをE2、第3の波長範囲に発光ピーク波長を有する一次光のエネルギーをE3としたとき、E1:E2:E3=5〜90:5〜90:5〜90であることが好ましい。かかるエネルギー比で組み合わせることにより微細な白色の調光を達成することができる。
第1の波長範囲:430nm以上500nm未満(以下、この波長範囲を「Rb」と記す場合がある。)
第2の波長範囲:500nm以上580nm未満(以下、この波長範囲を「Rg」と記す場合がある。)
第3の波長範囲:580nm以上700nm以下(以下、この波長範囲を「Rr」と記す場合がある。)
この場合、一次光の混色による合成光をより効果的に創出するためには、発光光源の光出射部の面積が0.1mm2から100mm2の範囲であることが好ましい。
【0181】
エネルギー比E1:E2:E3は、好ましくは5〜90:5〜90:5〜90であり、更
に好ましくは10〜80:10〜80:10〜80である。エネルギー比E1:E2:E3
が上記範囲外であると、充分な光量が得られなかったり、エネルギー効率が低くなったり、所望のスペクトルや色温度が得られなかったり、充分な演色性が得られない虞がある。
【0182】
ここで、「発光光源の光出射部のエネルギー」とは、各波長の発光光源が射出する光をエネルギー量で表したものをいう。エネルギー量を決定する因子としては、例えば、発光光源の光射出部の面積、発光光源の光射出時間、発光光源の駆動電流値、発光光源の電力量(駆動電流値×電圧値)などを挙げることができる。
【0183】
また、例えば、「Rbの波長における発光光源の光出射部のエネルギー」とは、Rbの波長の1次光を発する発光光源が複数存在する場合は、その複数の発光光源のエネルギーの総和を表す。
【0184】
[2−3−1]発光光源の光射出部の面積
発光光源の光射出部の面積とは、発光光源1単位の光出射部を面として単位当たりの面積とし、例えば、前述のRb、RgおよびRrの各領域における波長の発光光源の数で乗じたものをいう。
【0185】
即ち、Rb、RgおよびRrの各領域における波長の発光光源の個数や単位当たりの面積を調整することにより、光射出部のエネルギー比を調節することができる。
【0186】
従って、例えば、Rb、RgおよびRrの各領域において、光射出部の面積以外のエネルギー量を決定する因子が同じであれば、各波長における発光光源の光射出部の面積を、発光光源の光出射部のエネルギーとして、上述のエネルギー比を算出することができる。
【0187】
[2−3−2]発光光源の光射出時間
発光光源の光射出時間とは、発光光源1単位の一定時間内における光出射時間を単位当たりの光射出時間とし、例えば前述のRb、RgおよびRrの各領域における波長の発光光源の数で乗じたものをいう。
【0188】
即ち、Rb、RgおよびRrの各領域における波長の発光光源の光射出時間を調整することにより光射出部のエネルギー比を調節することができる。
【0189】
従って、例えば、Rb、RgおよびRrの各領域において、光射出時間以外のエネルギー量を決定する因子が同じであれば、各波長における発光光源の光射出時間を、発光光源の光出射部のエネルギーとして、上述のエネルギー比を算出することができる。
【0190】
さらに、Rb、RgおよびRrの領域ごとに、発光光源の駆動条件の1つである光出射時間を制御する制御装置を付加することで、上述のエネルギー比を自由に変化させることができる。これによって、発光部から発せられる合成光の輝度、色温度および彩度が可変の照明装置とすることができ、照明品質を所望に応じて任意に調整することができる。
【0191】
具体的な光出射時間を制御する制御装置としては、一般交流電源(50/60Hz)をベースにしたもの、もしくは高周波回路を用いたものがあり、発光光源をパルス的に発光させるPWM制御によって行うことができる。
【0192】
[2−3−3]発光光源の駆動電流値
発光光源の駆動電流値とは、発光光源1単位の駆動電流値を単位当たりの駆動電流値と
し、例えば前述のRb、RgおよびRrの各領域における波長の発光光源の数で乗じたものをいう。発光光源が同じタイプである場合、駆動電圧値がほぼ同じになる。
【0193】
即ち、Rb、RgおよびRrの各領域における波長の発光光源の駆動電流値を調整することにより光射出部のエネルギー比を調節することができる。
【0194】
従って、例えば、Rb、RgおよびRrの各領域において、駆動電流値以外のエネルギー量を決定する因子が同じであれば、各波長における発光光源の駆動電流値を、発光光源の光出射部のエネルギーとして、上述のエネルギー比を算出することができる。
【0195】
さらに、Rb、RgおよびRrの領域ごとに、発光光源の駆動条件の1つである駆動電流を制御する制御装置を付加することで、上述のエネルギー比を自由に変化させることができる。これによって、発光部から発せられる合成光の輝度、色温度および彩度が可変の照明装置とすることができ、照明品質を所望に応じて任意に調整することができる。
【0196】
[2−3−4]発光光源の電力量(駆動電流値×電圧値)
発光光源の電力量とは、発光光源1単位の電力量を単位当たりの電力量とし、例えば前述のRb、RgおよびRrの各領域における波長の発光光源の数で乗したものをいう。発光光源が違うタイプ(素子構造、素子サイズ、波長、など)である場合、駆動電圧値が異なる。
【0197】
即ち、Rb、RgおよびRrの各領域における波長の発光光源の電力量を調整することにより光射出部のエネルギー比を調節することができる。
【0198】
従って、例えば、Rb、RgおよびRrの各領域において、電力量以外のエネルギー量を決定する因子が同じであれば、各波長における発光光源の電力量を、発光光源の光出射部のエネルギーとして、上述のエネルギー比を算出することができる。
【0199】
さらに、Rb、RgおよびRrの領域ごとに、発光光源の駆動条件の1つである電力量を制御する制御装置を付加することで、上述のエネルギー比を自由に変化させることができる。これによって、発光部から発せられる合成光の輝度、色温度および彩度が可変の照明装置とすることができ、照明品質を所望に応じて任意に調整することができる。
【0200】
[2−3−5]発光光源の配置
また、上述のエネルギー比以外に調光に寄与する因子としては、例えば上記の各波長の発光光源を適切に配置することが挙げられる。三色の発光光源(赤,緑,青)を組み合わせる場合に適切な配置の例として、下記のものを挙げることができる。
【0201】
(i)赤,緑,青が互いに隣り合う様に、同じものがなるべく隣り合わない様にすることにより、ムラのない白色を達成することができる。この場合、赤,緑,青のエネルギー比を面積比で調整する場合は、赤,緑,青がそれぞれ多くなるパターンを組合せることによりムラのない白色を達成することができる。例えば、図4(a)〜(d)に赤の面積比が大きくなる4つのパターン例を示す。なお、赤,緑,青を入れ替えることも可能性である。更に図4(a)〜(d)のパターンを適宜組み合わせてモジュール化してもよい。
【0202】
(ii)赤,緑,青が互いに隣り合う様に、同じものが一部だけ隣り合う様にすることもできる。例えば、図4(e)〜(h)に、赤,緑,青の面積比を一定にし、エネルギー比を駆動電力量もしくは駆動電流値で調整する4つのパターン例を示す。なお、赤,緑,青を入れ替えることも可能性である。更に図4(e)〜(h)のパターンを適宜組み合わせてモジュール化してもよい。
【0203】
(iii)図5に示すように、三色の発光光源(赤,緑,青)の間隔(ピッチP1、P2
3)を狭めるために、赤,緑,青の各1ヶを細密充填で組合せた正三角形の最小ユニットの繰り返し単位として配列する。ピッチP1、P2、P3を狭くすることにより、三色の発
光光源(赤,緑,青)の混色距離を短くする効果が得られる。
【0204】
(iv)三色の発光光源(赤,緑,青)の間隔(ピッチ)を狭めて配列する他の例としては、図6(a)のような、発光光源を正方形とした従来の配列を45度傾けたハニカム構造を挙げることができる。発光光源を正方形とした従来の配列(図6(b))よりも、発光光源のピッチを狭めることができるため、三色の発光光源(赤,緑,青)の混色距離を短くする効果を得ることが出来る。
【0205】
なお図4〜6において、Bは青(Rb)、Gは緑(Rg)、Rは赤(Rr)の波長の発光光源を示す。
【0206】
[3]照明装置
[3−1]照度
本発明の照明装置は、上述の発光部の発光面から垂直方向に30cm離れた位置における合成光の照度が150ルクス以上である。
【0207】
従来のLED及び蛍光体を用いた発光装置などは、合成光を画像表示用として用いることはあったが、照明装置として用いる具体的概念はなかった。従って、30cm離れた位置における照度を一定以上とする構成、構造を想定したものではない。本発明の照明装置は、従来の画像表示装置用としての発光装置(バックライト)と明確に区別されるものであり、かかる点に本発明の技術的意義がある。
【0208】
本発明の照明装置において、発光部の発光面から垂直方向に30cm離れた位置における照度は、150ルクス以上、更に好ましくは300ルクス以上、特に好ましくは500ルクス以上である。この照度が低すぎると合成光が弱すぎるため照射面が暗くなりすぎて本実施形態の光源を照明装置(以下適宜、「照明」という)用途に使えなくなる虞があり、高すぎると合成光が眩しすぎて本実施形態の光源を照明に使えなくなる虞がある。一方、照明の質は照度だけで決まるものでなく、色温度や演色性によっても印象が変わるので、総合的な性能が重要である。
【0209】
本発明の照明装置が上記の照度を達成するためには、具体的には集積する発光光源の構造、数および配置は、照明装置の大きさや必要な照度に応じて適宜選択する。
【0210】
[3−2]照明色
本発明の照明装置は、好ましくは発光部の発光面から垂直方向に少なくとも10cm離れた位置において観察される合成光の色が白色である。
【0211】
一般的に照明においては物体の色を正しく観測者が知覚できるように、できるだけ白色でかつ演色性が高いものが求められる。例えば赤色灯や黄色灯、あるいはナトリウムランプ灯下では物体の色が正しくは知覚され得ない。そこで、本発明の照明装置による照明の色としては、白色あるいは白色周辺色であるパステル色が好ましい。
【0212】
この照明色は、前述の発光光源の各色(例えば青色、緑色、赤色)の混合の比率を調整することにより実現される。例えば、赤色の発光光源の分量を多くすれば白色周辺色の赤色味を帯びた色となる。
【0213】
本発明の照明装置による合成光の色が白色であることが観察される位置は、発光部の発光面から垂直方向に、好ましくは少なくとも10cm以上の位置であり、更に好ましくは少なくとも5cm以上の位置である。白色が観察される位置が短すぎると、照射面で色分離が起こるおそれがある。
【0214】
また、白色を照射された面内において照明側の色が分離してしまうと、物体色を正しく知覚できなくなる。とりわけこの色分離は、波長430nm以上の青色の半導体発光素子からの光と、この光で励起され黄色あるいは緑色と赤色に発光する蛍光体を用い、励起光の青色と蛍光体の発光色とを混色させることで得られる、いわゆる白色LEDで生じやすい。なぜならば、励起光である青色と蛍光体の発光の配光特性が異なるため混色の程度が悪いからである。本発明での白色ないし白色周辺色であるパステル色は、励起光との混色でなされるのではなく、すべて前述した固体発光素子からの励起光によって、例えば青色、緑色、赤色に発光する蛍光体からの発光で混色されてなる。
【0215】
[3−3]色温度
さらに、本実施形態にかかる合成光の色温度もその用途等に応じて任意に設定することができるが、通常2000K以上、好ましくは2500K以上、より好ましくは2700K以上、また、通常12000K以下、好ましくは10000K以下、より好ましくは7000K以下である。この範囲の光は、寒色、暖色の見え方が良好であるため、一般に良く使用される。また、この範囲を外れると、通常用途の照明装置に本実施形態の光源を用いることが困難となる。なお、合成光の色温度は、例えば色彩輝度計、放射輝度計などにより測定することができる。
【0216】
[3−4]発光効率
また、本実施形態の照明装置において、合成光の発光効率は、通常30lm/W以上、好ましくは50lm/W以上、より好ましくは80lm/W以上である。発光効率が低すぎると、使用の際に要するエネルギーコストが大きくなりすぎる虞があり、エネルギー効率の高い照明装置としての要求特性を満たさない。発光効率が低 すぎると、発光光源
を画像表示装置として集積した場合、発熱によって素子破壊が生じる虞がある。なお、発光光源の発光効率は、例えば、積分球で測定した合成光の光束を供給電力で割ることにより測定することができる。
【0217】
[3−5]平均演色評価数Ra
また、本発明の照明装置は、平均演色評価数Raが80以上、好ましくは85以上、特に好ましくは90以上であり、演色性に非常に優れるものである。
【0218】
なお、上記平均演色評価指数Raは、JIS Z 8726により算出される。
【0219】
[3−6]合成光のスペクトルの特徴
さらに、本実施形態にかかる合成光のスペクトルは、通常、一次光のスペクトルを組み合わせたものになる。また、合成光のスペクトルは、可視光の連続光になることが良好な演色性を示す照明装置が得られるので好ましく、さらに、可能な限りプランク放射に近いほうが好ましい。
【0220】
なお、合成光のスペクトルは、分光光度計により測定することができる。
【実施例】
【0221】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0222】
[E1]LEDの作製
パッケージは外形3.5mm×2.8mmのPPA製SMD型パッケージを用い、封止材料は一液性透明シリコーン樹脂を用いた。
【0223】
半導体発光素子、蛍光体としては以下のものを用いて、実施例1、2、及び比較例3では、赤、緑、及び青のLEDを作製した。比較例1、2では白色のLEDを作製した。
【0224】
[E1−1]半導体発光素子
[E1−1−1]実施例1、実施例2、及び比較例1
ピーク波長が405nm、半値幅30nm、サイズ300μm×300μm方形のInGaN系発光ダイオード(LED)を用いた。
[E1−1−2]比較例2
ピーク波長が460nm、半値幅30nm、サイズ300μm×300μm方形の青色InGaN系発光ダイオード(LED)を用いた。
[E1−1−3]比較例3
ピーク波長460nmの青色InGaN系発光ダイオード(LED)、ピーク波長520nmの緑色InGaN系発光ダイオード(LED)、およびピーク波長620nmの橙色AlInGaP系発光ダイオード(LED)を用いた。
【0225】
[E1−2]蛍光体
[E1−2−1]実施例1、比較例1
以下の青色、緑色、及び赤色蛍光体を用いた。
【0226】
青色蛍光体(B1):Ba0.7Eu0.3MgAl1017、主発光ピークのピーク波長457nm、重量メジアン径11μm。
【0227】
緑色蛍光体(G1):Ba1.39Sr0.46Eu0.15SiO、主発光ピークのピーク波長525nm、重量メジアン径20μm。
【0228】
赤色蛍光体(R1):Sr0.792Eu0.008Ca0.2AlSiN、主発光ピークのピーク波長628nm、重量メジアン径9μm。
[E1−2−1]実施例2
青色蛍光体、緑色蛍光体は実施例1と同じものを用い、赤色蛍光体は、以下を用いた。
【0229】
赤色蛍光体(R2):Ca0.992Eu0.008AlSiN、主発光ピークのピーク波長650nm、重量メジアン径9μm。
[E1−2−2]比較例2
以下の黄色蛍光体を用いた。
【0230】
黄色蛍光体(Y1):(Y,Gd)Al12:Ce、主発光ピークのピーク波長565nm、重量メジアン径8μm。
【0231】
[E2]照明装置の作製
前記[E1]で得られたLEDを下記に示す配列で集積し、照明装置を作製した。
【0232】
[E2−1]実施例1,実施例2,比較例3
図7(a−1),(a−2)に示す通り。
【0233】
[E2−2]比較例1,比較例2
図7(b−1),(b−2)に示す通り。
【0234】
[E3]特性評価
前記[E2]で得られた照明装置について、
1)赤色、緑色、及び青色の発光光源のエネルギー比、及び
2)照明装置の混色距離、照度、色温度、発光効率、平均演色評価数(Ra)を評価し
た。
【0235】
評価結果を表2に示す。また、実施例1、比較例1〜3の照明装置の発光スペクトルを図8に示す。
【0236】
なお、表中※i),※ii)の測定条件は次の通りである。
【0237】
i)測定条件(図7(a−1),(b−1)の配置)
駆動電流:20mA
混色距離:光源を上部より白色散乱シートにかざし、目視にて色分離がなくなるまでの距離を判定。
【0238】
照度:垂直に設置した光源から20cmの位置でTOPCON製照度測定機「Im−5」を使用して測定。
【0239】
色温度:コニカミノルタ製分光放射輝度計「CS−1000」にて測定。
【0240】
ii)測定条件(図7(a−2),(b−2)の配置)
駆動電流:色度が合うようにRGBの駆動電流を調整(5〜20mA)
発光効率,平均演色評価数,エネルギー比:OptronicLaboratories社製LED評価装置「OL770」にて測定。
【0241】
【表2】

【0242】
以上の実施例及び比較例より、比較例1の蛍光体を混合した白色LEDよりも、実施例1の蛍光体単色LEDの一次光を合成した発光ユニットの発光効率が良いことがわかった。また、比較例3の単色LEDの一次光を合成した発光ユニットよりも、蛍光体単色LEDの一次光を合成した発光ユニットの混色距離が小さいことがわかった。これらのことから、それぞれ異なる波長の一次光を発する複数の発光光源からの一次光を合成する方式が照明装置として総合的に性能が優れていることがわかった。
【0243】
なお、実施例1で使用したピーク波長405nmのLEDの樹脂封止なしでの光出力は6mWであるが、高出力タイプ12mWのLEDを使用すると、発光効率55lm/Wの照明装置が実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0244】
【図1】本発明における発光光源の実施形態1を示す模式的断面図である。
【図2A】本発明における発光光源の実施形態2の模式的な斜視図である。
【図2B】図2Aに示す発光光源の分解斜視図である。
【図3】LEDの構造軸を説明する説明図である。
【図4】本発明の照明装置の発光光源の配置例を示す模式図である。
【図5】本発明の照明装置の発光光源の配置例を示す模式図である。
【図6】本発明の照明装置の発光光源の配置例を示す模式図である。
【図7】実施例1,2及び比較例1〜3で作製した照明装置のLEDの集積配置を示す模式図である。
【図8】実施例1及び比較例1〜3で作製した照明装置の発光スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0245】
1 LEDランプ
2 フレーム
2A 凹部
3 LED(発光素子)
4 蛍光体含有部
5 接着剤
6 ワイヤ
7 モールド部(配光制御素子)
10 固体発光素子モジュール
11 基部
12 固体発光素子
20 蛍光体モジュール
21 基部
22 蛍光体含有部
100 LED
L 構造軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる波長の一次光を発する複数種の発光光源を集積配置した発光部を備えた照明装置であって、
前記発光光源が固体発光素子及び蛍光体を含有し、
前記発光部の発光面から垂直方向に30cm離れた位置における合成光の照度が150ルクス以上であることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記発光部の発光面から垂直方向に少なくとも10cm離れた位置において観察される前記合成光の色が白色である請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記発光光源の光出射部の面積が0.1mm〜100mmであり、
前記発光光源からは、430nm以上500nm未満の第1の波長範囲、500nm以
上580nm未満の第2の波長範囲、および580nm以上700nm以下の第3の波長範囲に発光ピーク波長を有する光が発せられ、
前記発光光源の光出射部のエネルギー比は、
前記第1の波長範囲に発光ピーク波長を有する光のエネルギーをE1、前記第2の波長
範囲に発光ピーク波長を有する光のエネルギーをE2、前記第3の波長範囲に発光ピーク
波長を有する光のエネルギーをE3としたとき、E1:E2:E3=5〜90:5〜90:5〜90である請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記第1〜第3の波長範囲ごとに、前記発光光源の駆動条件を制御する制御装置をさらに有する請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記発光光源は、前記固体発光素子をモジュール化した固体発光素子モジュールと、前記蛍光体をモジュール化した蛍光体モジュールとを有する請求項1から4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記固体発光素子モジュールは、基部と、該基部上に配置された固体発光素子とを有する請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記蛍光体モジュールは、基部と、該基部上に配され前記蛍光体を含有する蛍光体含有部とを有する請求項5または6に記載の照明装置。
【請求項8】
前記固体発光素子モジュールは複数の前記固体発光素子を有し、
前記蛍光体モジュールは、前記複数の固体発光素子に対応した位置にそれぞれ蛍光体を含有し、
前記固体発光素子モジュールと前記蛍光体モジュールとが接合されることで、前記複数種の発光光源が集積配置された発光部が構成される請求項5から7のいずれか1項に記載の照明装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−66297(P2008−66297A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207979(P2007−207979)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】