説明

照明装置

【課題】蛍光発光装置を使用した輝度の安定した照明効果の高い照明装置を提供すること。
【解決手段】UV−LEDアレイ15を励起光発生源とし、筐体2の天板3下側に配置する。UV−LEDアレイ15から空間的に離間した位置にレンズユニット23を配置する。レンズユニット23は凸レンズ25を備えており、凸レンズ25の上層(UV−LEDアレイ15側)にはSWPF30が形成され、凸レンズ25の前面にはLWPF31が形成されている。SWPF30を透過した紫外光(励起光)は蛍光体層29において白色の蛍光を生成し、LWPF31を透過して前面に照明光として達する。一方、蛍光体層29で蛍光を励起させられなかった紫外光はLWPF31に反射されて蛍光体層29方向に折り返される。レンズユニット23は筐体2内において上下方に進退可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外光や青色光のような比較的高エネルギーの励起光によって所定の蛍光を発光させ、その蛍光を照明用の光源とした照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主として照明用の白色光を得るために蛍光体を利用した発光装置が従来から提供されている。これは光源から紫外光のような非可視光や可視光でも青色光のような比較的高エネルギーの光を蛍光材料に対し励起光として照射し、必要とする白色光を取り出すものである。このような発光装置の一例として特許文献1を挙げる。特許文献1の技術は青色、緑色及び赤色の発光成分(蛍光材料)を含む表示装置用蛍光体に対して光源から紫外光を照射して青色、緑色及び赤色の蛍光を励起させてこれらを混色して白色光を取り出すようにしたものである。
また、特許文献2の技術は青色発光ダイオードをYAG蛍光体で覆い、青色光の一部を励起光として使用してYAG蛍光体内で黄色又は黄橙色の蛍光を励起させダイオードの青色光と混色させてやはり白色光を取り出すようにしたものである。
更に、特許文献3の技術ではその段落番号0045及び図6には反射特性の異なる2つの膜(ダイクロックミラー31及び32)の間でRGB蛍光体内で励起光を繰り返し入射させて効率的に蛍光を励起させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2000−73052号公報
【特許文献2】特開2005−216892号公報
【特許文献2】特開2006−186022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来ではこれらの蛍光発光装置を使用した具体的な照明装置は開発されていなかった。照明装置として蛍光発光装置を使用するためには単なる発光デバイスとしてではなく、照明装置に要求される照明光としての輝度の安定性や顕著な照明効果、更に使用場所に応じた使い勝手のよさ等を考慮することが好ましいものの蛍光発光装置を使用したそのような照明装置は存在しなかった。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、蛍光発光装置を使用した輝度の安定した照明効果の高い照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために請求項1に記載した発明では、少なくとも、蛍光材料と衝突することで蛍光を励起する励起光を発生させる励起光発生源と、同励起光発生源から空間的に離間した位置に配置される蛍光発光ユニットとを備え、同蛍光発光ユニットは、透明な基体と、同基体上に成膜される複数の膜層を備え、同膜層は前記励起光発生源の励起光放射方向の前方に配置された蛍光を反射するとともに励起光を透過させる第1の光学薄膜層と、同第1の光学薄膜層の前方に配置される蛍光材料を含有する蛍光層から構成され、前記蛍光発光ユニットは取り付け位置に対して取り外し可能に取着されるようにしたことをその要旨とする。
このような構成では、励起光発生源によって発光させられた励起光は空間的に離間した位置に配置された蛍光発光ユニットに至るまでに分散して平均した輝度となる。また、空間が設けられることによって励起光発生源で発生する熱を放熱させることが可能となる。蛍光発光ユニットは取り外し可能であり、つまり容易に交換可能である。そのため照明効果の異なる蛍光発光ユニットを付け替えることで状況に応じた所望の光を投光させることができる。更に、蛍光体を有しないレンズとの組み合わせで、もしくは直接励起光源のみを照明光とすることも可能となる。例えば励起光発生源として青色LEDの場合は青色照明としての応用もでき、紫外LEDの場合はブラックライトとしての応用もできる。
励起光は蛍光発光ユニットにおいてはまず、第1の光学薄膜層を透過して蛍光層に至る。励起光は蛍光層内において蛍光材料と衝突し蛍光材料を励起する。励起光は蛍光材料に吸収されるとともにその励起光に基づいて蛍光材料は蛍光を発生させることとなる。発生した蛍光は蛍光層内で次のように挙動する。まず、前方に指向する蛍光はそのまま外部に放射される。一方、後方(励起光発生源方向)に指向する蛍光は第1の光学薄膜層に衝突すると反射して前方に指向することとなり、第2の光学薄膜層を経て外部に放射される。
【0005】
また、請求項2に記載した発明では、請求項1に記載した発明の構成に加え、前記蛍光層の前方には配置され励起光を反射するとともに、蛍光を透過させる第2の光学薄膜層を配置したことをその要旨とする。
このような構成では、励起光発生源によって発光させられた励起光は空間的に離間した位置に配置された蛍光発光ユニットに至るまでに分散して平均した輝度となる。また、空間が設けられることによって励起光発生源で発生する熱を放熱させることが可能となる。蛍光発光ユニットは取り外し可能であり、つまり容易に交換可能である。そのため照明効果の異なる蛍光発光ユニットを付け替えることで状況に応じた所望の光を投光させることができる。
励起光は蛍光発光ユニットにおいてはまず、第1の光学薄膜層を透過して蛍光層に至る。励起光は蛍光層内において蛍光材料と衝突し蛍光材料を励起する。励起光は蛍光材料に吸収されるとともにその励起光に基づいて蛍光材料は蛍光を発生させることとなる。発生した蛍光は蛍光層内で次のように挙動する。まず、前方に指向する蛍光は第2の光学薄膜層を経て外部に放射される。一方、後方(励起光発生源方向)に指向する蛍光は第1の光学薄膜層に衝突すると反射して前方に指向することとなり、第2の光学薄膜層を経て外部に放射される。
これに対し、蛍光材料に遭遇しなかった励起光は蛍光層を抜けると第2の光学薄膜層に衝突する。ここで反射した励起光は折り返して蛍光層を通過する途中で再度蛍光材料と遭遇する機会を与えられることとなるため、蛍光材料と衝突すれば蛍光材料を励起して、蛍光が発生することとなる。発生した蛍光は上記と同じ挙動をとることとなる。
【0006】
従って、第1義的には第2の光学薄膜層を設けることによって透過させたくない紫外線のような励起光をシャットアウトすることができることとなる。
更に、第2の光学薄膜層を設けることによって同じ厚みの蛍光層を有する従来のケースと比較したと仮定すれば本願発明では励起光の光路が単純に倍増することとなる。つまり、励起光が蛍光材料に遭遇する可能性が高まり励起光の蛍光への変換効率が向上することとなる。更に、第1の光学薄膜層を設けることによって後方(励起光発生源方向)に指向する蛍光が反射して前方に指向することとなり照明光として利用される蛍光量も増大することとなる。そのため、トータルで従来の発光装置と比較して高輝度の蛍光を取り出すことが可能となっている。
また、励起光の光路が倍増するということは、従来の厚みの蛍光層を有するケースと同等の変換効率を従来よりも蛍光層の厚みを薄くして実現できるということにもなる。この場合では蛍光層の厚みを薄くしたため従来のケースと変換効率は大きな違いはないものの、蛍光層の厚みがかなり薄くなることから励起光、蛍光とも蛍光層における減衰量が大幅に減少するため、結果として従来の発光装置と比較して高輝度の蛍光を取り出すことが可能となる。また、励起光が紫外光である場合にはこれが照明光に混ざることがない。
【0007】
ここに、取り出す蛍光は白色光のみではなく、およそ励起によって得ることを目的とする蛍光であれば特に限定はされない。また、「励起光発生源」とは蛍光材料に対して蛍光を励起させ得る光を発生させられる光源であれば特に限定はされない。一般には紫外光光源と青色光光源が想定される。また、以下の概念では紫色光は近紫外として紫外光に含めるものとする。励起光としては一般には青色以上の短波長の光が使用され、可視励起光としては青色〜紫色が相当する。
光学薄膜層とは所定の波長域の光を選択的に透過させ、また反射させる膜であって、光学薄膜としては一般にはそれ自体が多層膜構造を取ることとなる。多層膜の各構成膜層は金属酸化物もしくは金属フッ化物からなる誘電体であって、例えばTiO2(二酸化チタン)、Ta25(五酸化タンタル)、ZrO2(酸化ジルコン)、Al23(酸化アルミニウム)、Nb25(五酸化ニオブ)、SiO2(酸化ケイ素)、MgF2(フッ化マグネシウム)、ZnO2(酸化亜鉛)HfO2(酸化ハフニウム)、CaF2(フッ化カルシウム)らが上げられる。本発明の誘電体膜ではこれら10種から選ばれる少なくとも2種の誘電体を光の透過する方向に低屈折率材料と高屈折率材料を交互に積層した交互層から構成されることが好ましい。構成される多層膜の数は特に限定されるものではない。所望の波長に対する反射性能又は透過性能を発現させるために化合物を選択し、組み合わせて誘電体光学膜を構成することが可能である。光学薄膜層の成膜方法に特に限定的な意味はないが一般的には蒸着法やスパッタリング法で成膜されることが好ましい。
【0008】
また請求項3の発明では、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記励起光発生源から発生される励起光の一部は前記蛍光層を透過せずに前記基体を透過し、蛍光とともに照明光の一部とされることをその要旨とする。
これは言い換えると基体の一部に蛍光層を設けないようにして、励起光の一部を蛍光層を透過させずにそのまま照明として使用させることを意味している。これによって蛍光と励起光を混交させた特殊な照明を与えることが可能である。例えば励起光発生源として青色LEDであれば可視励起光としての青色光を、紫外LEDであれば紫外光としてブラックライトとして使用することができる。
また請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記基体はレンズであって、前記蛍光層が同レンズの内側面上に形成され、前記第1の光学薄膜層が同蛍光層の上層に形成されるようにしたことをその要旨とする。
また請求項5の発明では、請求項2に記載の発明の構成に加え、前記基体はレンズであって、前記蛍光層は同レンズの内側面上に形成され、前記第1の光学薄膜層は同蛍光層の上層に形成されるとともに、前記第2の光学薄膜層は同基体の外側面上に形成されることをその要旨とする。
また請求項6の発明では、請求項2に記載の発明の構成に加え、前記基体はレンズであって、前記第2の光学薄膜層は同レンズの内側面上に形成され、前記蛍光層は同第2の光学薄膜層の上層に形成されるとともに、前記第1の光学薄膜層は同蛍光層の上層に形成されることをその要旨とする。
請求項4〜6のような構成とすることでレンズの屈折作用によって様々な視覚効果を照明光に付与することができる。更に、請求項5ではレンズと空気との界面に第2の光学薄膜層を配置しているためレンズに反射防止特性を付加することになる。つまり、通常密度の異なる透明体を光が透過する場合にはその界面でフレネル反射が生じてしまうが、このように第2の光学薄膜層は励起光を反射するとともに、蛍光を透過させる特性を有するため本来反射される蛍光分の損失分をキャンセルさせることが可能となる。
上記レンズの形状については特に限定はない。所定の照明効果を発揮させるために適宜選択可能である。例えば、図9に示すような各種レンズを広く含むものである。
尚、レンズは形成される側の面が平面である方が均一な層厚を形成しやすいので好ましい。
【0009】
また請求項7の発明では、請求項1〜6のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記蛍光発光ユニットは前記励起光発生源に対して接近及び離間可能に取着されることをその要旨とする。これによって蛍光の照明効果が向上することとなる。
また請求項8の発明では、請求項1〜7のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記励起光発生源は筐体に支持されており、前記蛍光発光ユニットは同筐体に対して取り外し可能に取着されることをその要旨とする。
つまり、照明装置自体が筐体を有するユニット化された構成とされ、蛍光発光ユニットはその筐体に対して取り外し可能であるため、所望の位置への照明装置の取り付けに非常に有利となる。
また請求項9の発明では、請求項1〜8のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記励起光発生源と前記第1の光学薄膜層の間には筒状の反射部材を配置したことをその要旨とする。
このように構成することによって、励起光を反射部材の外側に漏らすことなくなるべく蛍光発光ユニット方向に集中させることができるとともに、反射部材内面での励起光の反射を促すことで蛍光発光ユニットに達する励起光の輝度を平均化する役割も果たす。ここに、反射部材は第1の光学薄膜層側ほど拡径されて、また反射部材の外縁は蛍光層の外縁と略一致していることが好ましい。
また請求項10の発明では請求項1〜8のいずれかに記載の発明の構成に加え、反射部材には放熱孔が形成されるようにしたことをその要旨とする。これよって反射部材内部に蓄積される熱を速やかに外部に放熱させることができる。励起光発生源が筐体に支持される場合には筐体にも放熱孔を形成することが好ましい。放熱は励起光源であるLEDと蛍光体にとって、重要な要素であり、放熱性の向上は両者の熱劣化対策、駆動電力の増加による輝度の増加に効果が大きい。
【発明の効果】
【0010】
上記各請求項の発明では、励起光を蛍光に変換させる蛍光発光装置を備えた照明装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に従って具体的な実施の形態の説明をする。
(実施例1)
図1及び図2に示すように、本発明の実施例1の照明装置1は天板付き円筒形状のプラスチック製の筐体2を備えている。筐体2は天板3と側板4によって包囲された収容空間Sを構成している。下部側の開口部5の周縁には取り付け用フランジ6が一体的に形成され、ネジ7によって天井面8に固定されるようになっている。天板3の側板4寄りに沿って2列の放熱孔9が透設されている。
天板3の下面側には放熱器(ヒートシンク)11を介してLED発光基板12が配設されている。LED発光基板12の下面側には図示しない各種素子(コンデンサー、抵抗器、IC等)が実装されたプリント基板とともに励起光源としてのUV−LEDアレイ(本実施例1では3×5の15個の素子を備える)15が配設されている。UV−LEDアレイ15は下方に向かって紫外光を出力する。LED発光基板12の上面側には電源端子16が配設され天板3から外方に露出させられている。LED発光基板12の上面は放熱器11と面接触させられている。放熱器11の上面には複数の放熱フィン14が設けられており天板3から外方(上方)に向かって突出させられている。LED発光基板12の下方位置にはUV−LEDアレイ15を包囲するように反射器17が配設されている。反射器17は下方側ほど拡開されたアルミ合金製の筒体とされている。反射器17の上縁寄り全周には2列の放熱孔19が透設されている。
【0012】
筐体2の上下方向のほぼ中間位置であって筐体2の内周面には円環状のフレーム受け台20が配設されている。フレーム受け台20の内周面21にはレンズユニット23が支持されている。レンズユニット23は円筒状のレンズフレーム24とレンズフレーム24内に固着された凸レンズ25を備えている。フレーム受け台20の内周面21には雌ネジ26が刻設されており、レンズフレーム24の外周に刻設された雄ネジ27が螺合されている。レンズフレーム24の下端にはレンズフレーム24を回動させる際のつまみとなる小フランジ28が形成されている。レンズユニット23はレンズフレーム24を回動させることでフレーム受け台20の内周面21に沿って上下方向に移動(進退)可能とされている。
本実施例1の凸レンズ25は凸側が前面側(下側)として配置された平凸レンズとされており、レンズ後面全域には蛍光体層29が形成されている。レンズ径は反射器17の下端幅と対応している。蛍光体層29はRGB(赤、緑、青)蛍光材料がそれぞれ含有され紫外線を励起光として赤、緑、青の蛍光を発生させる。本実施例ではこれらの蛍光色が混色されて白色の照明光を生成する。尚、蛍光材料の配合割合によって白色光以外の照明光を生成させることも自由である。更に、RGBのみならずより多種の蛍光体、たとえば4種の蛍光体を配合することで、白色の場合の演色性を改善することも可能である
蛍光体層29の上層(UV−LEDアレイ15側)には第1の光学薄膜層としてのSWPF(ショートウェーブパスフィルター)30が形成されている。凸レンズ25の前面にはLWPF(ロングウェーブパスフィルター)31が形成されている。
本実施例ではSWPF30は400nm〜780nmの光に対しては平均5%以下の透過率(平均98%の反射率)に設定され、250nm〜380nmの光に対しては平均98%の透過率(平均5%以下の反射率)に設定されている。つまり、第1の光学薄膜層8は可視光(赤から青)に対する反射率が極めて高く、紫外光に対しては極めて透過率が高く設定されている。
一方、LWPF31は400nm〜780nmの光に対しては平均98%の透過率(平均5%以下の反射率)に設定され、250nm〜380nmの光に対しては平均5%以下の透過率(平均98%の反射率)に設定されている。つまり、LWPF31は紫外光に対する反射率は極めて高く、可視光(赤から青)に対しては極めて透過率が高く設定されている。
図5に示すように、SWPF30を透過した紫外光(励起光)は蛍光体層29においてRGB蛍光材料と遭遇するとこれを励起させて白色の蛍光を生成し、LWPF31を透過して前面に照明光として達する。一方、蛍光体層29で蛍光を励起させられなかった紫外光はLWPF31に反射されて蛍光体層29方向に折り返される。これによって紫外光のRGB蛍光材料に遭遇する機会が増えることとなる。蛍光体層29で励起された蛍光が後方に指向した場合にはSWPF30によって反射されて蛍光体層29方向に折り返されることとなる。
【0013】
このような構成とすることで実施例1の照明装置1は次のような作用が生ずる。
天井位置に配置された照明装置1はUV−LEDアレイ15から下方に向かって紫外光を照射する。紫外光は途中の空間において分散して蛍光体層29に達する前に平均した輝度となる。紫外光は途中周囲に拡散しても反射器17によってそれ以上外方には拡散することはない。反射器17によって紫外光の輝度の平均化は促進される。紫外光が凸レンズ25の後面から蛍光体層29内に入射しこれを透過する際に上記のような作用によって紫外光は白色の照明光を生成する。照明光は凸レンズ25のレンズ効果によって図1に示すような光路で屈折されて所定の照明効果を与える。レンズユニット23を上下動させることによって凸レンズ25による焦点位置を変えることで照明効果を変更させることができる。UV−LEDアレイ15及び各種素子から発生する熱は放熱孔9,19及び放熱器11を介して筐体2の外に放熱されるようになっている。凸レンズ25の前面にはLWPF31が形成されているため、レンズと空気との界面で生じるフレネル反射が防止されるため輝度が低下することがない。
【0014】
(実施例2)
実施例2は実施例1におけるレンズユニット23を変更した例である。実施例2ではレンズユニット41及び励起光源が異なる以外は実施例1と同じであるため、それらの詳しい説明は省略する。
図3に示すように、実施例2のLED発光基板12には励起光源としての青色LEDアレイ(本実施例2では3×5の15個の素子を備える)40が配設されている。青色LEDアレイ40は下方に向かって青色光を出力する。実施例2のレンズユニット41は図3及び図6に示すように、凸レンズ25のレンズ後面全域に蛍光体層42が形成されている。蛍光体層29はY(黄)蛍光材料が含有され青色光を励起光として黄色(実際には、単色ではなく黄色をピークとして青より長い可視域の光を包含する、本件の表現上は以下も便宜的に黄色の蛍光と呼ぶ)の蛍光を発生させる。本実施例2ではこの黄色の蛍光色と励起光としての青色光が混色されて白色光を生成する。尚、蛍光材料の配合割合によって白色光以外の照明光を生成させることも自由である。
【0015】
蛍光体層42の上層(青色LEDアレイ40側)には第1の光学薄膜層としてのSWPF43が形成されている。凸レンズ25の前面には第2の光学薄膜層としてのLWPF44が形成されている。
SWPF43は450nm〜800nmの光に対しては平均98%以上の反射率(平均5%以下の透過率)に設定され、300nm〜400nmの光に対しては平均5%以下の反射率(平均95%以上の透過率)に設定されている。つまり、黄色光に対する反射率が極めて高く、青色光に対しては極めて透過率が高く設定されている。
一方、LWPF44は450nm〜800nmの光に対しては平均5%以下の反射率(平均95%以上以下の透過率)に設定され、300nm〜400nmの光に対しては平均48〜50%程度の透過率に設定されている。つまり、本実施例2では青色光に対する透過率は青色光のLWPF44に達する光量の半分程度に設定されており、一方黄色光に対しては極めて透過率が高く設定されている。この青と黄色の割合は蛍光体の特性とのバランスで決定され、LWPF44の透過率(反射率)を調整することで所望の色調を得ることができる。
図6に示すように、SWPF43を透過した青色光は蛍光体層42においてY蛍光材料と遭遇するとこれを励起させて黄色の照明光を生成し、LWPF44を透過して前面に照明光として達する。一方、蛍光体層42を透過してLWPF44に達した青色光は光量の半分程度が外部に放射される。つまり励起光である青色光と黄色の蛍光とが混色されて白色光を生成する。LWPF44に達した青色光は光量の半分程度が反射されて蛍光体層42方向に折り返される。これによって励起光のY蛍光材料に遭遇する機会が増える。
【0016】
このような構成とすることで実施例2の照明装置1は次のような作用が生ずる。
天井位置に配置された照明装置1は青色LEDアレイ40から下方に向かって青色光を照射する。青色光は途中の空間において分散して蛍光体層42に達する前に平均した輝度となる。青色光は途中周囲に拡散しても反射器17によってそれ以上外方には拡散することはない。反射器17によって青色光の輝度の平均化は促進される。青色光が凸レンズ25の後面から蛍光体層42内に入射しこれを透過する際に上記のような作用によって青色光は白色の照明光を生成する。照明光は凸レンズ25のレンズ効果によって図1に示すような光路で屈折されて所定の照明効果を与える。レンズユニット41を上下動させることによって凸レンズ25による焦点位置を変えることで照明効果を変更させることができる。青色LEDアレイ40及び各種素子から発生する熱は放熱孔9,19及び放熱器11を介して筐体2の外に放熱されるようになっている。凸レンズ25の前面にはLWPF44が形成されているため、レンズと空気との界面で生じるフレネル反射が防止されるため輝度が低下することがない。
また、青を吸収することで黄色との平衡を得る損失の大きい方法に比べ、青の励起光を反射によって蛍光に再利用することで効率的な調整が可能である。一般的に青の励起光と黄色の蛍光体との組み合わせによる白色LEDは青が強調され冷色調になりやすいが、本発明では電球色の様な暖色調の色調を損失少なく実現できる利点がある。
【0017】
(実施例3)
実施例3は実施例2におけるレンズユニット41を変更した例である。実施例2ではレンズユニット23異なる以外は実施例1及び実施例2と同じであるため、それらの詳しい説明は省略する。
実施例3では図3に示すようにレンズユニット41では凸レンズ25のレンズ後面には蛍光体層51が形成されている。蛍光体層51はY(黄)蛍光材料が含有され青色光を励起光として黄色の蛍光を発生させる。本実施例2ではこの黄色の蛍光色と励起光としての青色光が混色されて白色光を生成する。本実施例3では蛍光材料の含有量を調整し蛍光と同光量の青色光がそのまま透過するように蛍光体層51を透過させるものとする。
蛍光体層42の上層(青色LEDアレイ40側)には第1の光学薄膜層としてのSWPF52が形成されている。
SWPF52は450nm〜800nmの光に対しては平均98%以上の反射率(平均5%以下の透過率)に設定され、300nm〜400nmの光に対しては平均5%以下の反射率(平均95%以上の透過率)に設定されている。つまり、黄色光に対する反射率は極めて高く、青色光に対しては極めて透過率が高く設定されている。
実施例3では蛍光体層51及びSWPF52は凸レンズ25のレンズ後面全域に形成されているのではなく、レンズ周縁に円環状に蛍光体層51及びSWPF52を形成していない領域(非形成面53)を有するものとする。
【0018】
図7に示すように、SWPF52を透過した青色光は蛍光体層51においてY蛍光材料と遭遇するとこれを励起させて黄色の照明光を生成し、LWPF52を透過して前面に照明光として達する。一方、Y蛍光材料と遭遇せずに蛍光体層51を透過した青色光は黄色の蛍光とが混色されて白色光を生成する。
また、SWPF52及び蛍光体層51を透過せずに直接凸レンズ25の非形成面53を透過した青色光は青色光としてそのまま照明光とされる。レンズユニット41の上下方向の配置位置によって光の交錯具合は異なるが、このような照明装置1では例えば図3に示すような白色光と青色光の混ざった特殊な照明効果を発揮することが可能とされる。
【0019】
このような構成とすることで実施例3の照明装置1は次のような作用が生ずる。
天井位置に配置された照明装置1は青色LEDアレイ40から下方に向かって青色光を照射する。青色光は途中の空間において分散して蛍光体層42に達する前に平均した輝度となる。青色光は途中周囲に拡散しても反射器17によってそれ以上外方には拡散することはない。反射器17によって青色光の輝度の平均化は促進される。青色光が凸レンズ25の後面から蛍光体層42内に入射しこれを透過する際に上記のような作用によって青色光は励起光として白色の照明光を生成するとともに自身が照明光となる。レンズユニット41を上下動させることによって凸レンズ25による焦点位置を変えることで照明効果を変更させることができる。青色LEDアレイ40及び各種素子から発生する熱は放熱孔9,19及び放熱器11を介して筐体2の外に放熱されるようになっている。
【0020】
(実施例4)
図4(a)及び(b)に示すように、本発明の実施例4の照明装置61は反射器を兼ねたアルミ合金製の筐体62を備えている。筐体62は下方側ほど拡開された天板付きの四角錐台形状の筒体とされている。筐体62は天板63と四方の側板64によって包囲された収容空間Sを構成している。下部側の開口部65の周縁には取り付け用フランジ66が一体的に形成されている。天板63の側板64寄りに沿って2列の放熱孔68が透設されている。
天板63には開口部63aが形成され、同開口部63a内にはLED発光基板67が配設されている。LED発光基板67の下面側には図示しない各種素子(コンデンサー、抵抗器、IC等)が実装されたプリント基板とともに励起光源としてのUV−LEDアレイ(本実施例1では3×5の15個の素子を備える)70が配設されている。UV−LEDアレイ70は下方に向かって紫外光を出力する。LED発光基板67の上面側方には電源端子72が配設されている。LED発光基板67の上面には放熱器71が隣接配置されている。放熱器71はLED発光基板67に面接触させられており、放熱フィン76は筐体62の外に露出するように配置されている。
【0021】
放熱器71の取り付け用フランジ66にはレンズユニット73が支持されるようになっている。レンズユニット73は円筒状のレンズフレーム74とレンズフレーム74内に固着された凸レンズ75を備えている。レンズフレーム74の縁寄りの左右2箇所に透孔74が形成されており、レンズユニット73は天井面8に設置された筐体62に対してネジ75によってレンズフレーム74とともに固定されるようになっている。
本実施例4の凸レンズ75は本実施例4の凸レンズ75は3×3の9個のレンズからなるレンズアレイから構成されており、図4(b)に示すように凸レンズ75は全体として方形の平面形状を有する。レンズの縦横長さは反射器17の下端縦横長さと対応している。凸レンズ75は凸側が前面側(下側)として配置され後面側が平面に構成されている。レンズ後面全域には蛍光体層77が形成されている。蛍光体層77はRGB(赤、緑、青)蛍光材料がそれぞれ含有され紫外線を励起光として赤、緑、青の蛍光を発生させる。本実施例ではこれらの蛍光色が混色されて白色の照明光を生成する。尚、蛍光材料の配合割合によって白色光以外の照明光を生成させることも自由である。
蛍光体層77の上層には第1の光学薄膜層としてのSWPF78が形成されている。凸レンズ75の前面にはLWPF79が形成されている。蛍光体層77、SWPF78及びLWPF79はそれぞれ実施例1の蛍光体層29、SWPF30及びLWPF31と同じ特性である。
【0022】
このような構成とすることで実施例4の照明装置61は次のような作用が生ずる。
天井位置に配置された照明装置1はUV−LEDアレイ70から下方に向かって紫外光を照射する。紫外光は途中の空間において分散して蛍光体層77に達する前に平均した輝度となる。紫外光は途中周囲に拡散しても筐体62によってそれ以上外方には拡散することはない。筐体62によって紫外光の輝度の平均化は促進される。紫外光が凸レンズ75の後面から蛍光体層77内に入射しこれを透過する際に上記のような作用によって紫外光は白色の照明光を生成する。照明光は凸レンズ75のレンズ効果によって屈折されて所定の照明効果を与える。レンズアレイを用いることで単一の凸レンズに比べ装置を薄く設定する事が可能である。UV−LEDアレイ70及び各種素子から発生する熱は放熱孔69を介して筐体62の外に放熱されるようになっている。凸レンズ75の前面にはLWPF79が形成されているため、レンズと空気との界面で生じるフレネル反射が防止されるため輝度が低下することがない。
【0023】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・実施例1及び実施例2においては凸レンズ25の表裏にSWPF30,43及びLWPF31,44を形成するような構成であった。しかし、図8に示すように凸レンズ25の後面側(かつ平凸レンズであれば好ましくは平面側)に三層構造となるように配置しても構わない。
・実施例3では凸レンズ25の後面側に蛍光体層42とSWPF52の2層構造としたが、この実施例3の層構造として実施例2のものを応用することも可能である。また、図8のような三層構造を応用することも可能である。
・上記実施例4では照明装置61単独で天井面8に設置するようにしたが、複数の照明装置61を縦横に連結して壁面の所定領域全面に照明装置61を配設するようにしてもよい。
・レンズユニット23の移動手段は上記のような構成は一例であって、他の手段であっても構わない。
・照明装置1,61の配置位置は天井以外の壁面に使用することも、装置単独で宙づり状態で使用することも自由である。
・上記実施例における筐体2は金属製でもよい。
・UV−LEDアレイ15,70や青色LEDアレイ40は単一のLEDの集合体から構成するようにしてもよい。
その他本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1の照明装置の設置状態を説明する断面図。
【図2】同じく実施例1の照明装置の設置状態を説明する説明図。
【図3】同じく実施例3の照明装置の設置状態を説明する断面図。
【図4】(a)は同じく実施例4の照明装置の設置状態を説明する断面図、(b)は底面図。
【図5】実施例1において励起光と蛍光の軌跡の挙動を説明するための概略説明図。
【図6】実施例2において励起光と蛍光の軌跡の挙動を説明するための概略説明図。
【図7】実施例3において励起光と蛍光の軌跡の挙動を説明するための概略説明図。
【図8】他の実施例において励起光と蛍光の軌跡の挙動を説明するための概略説明図。
【図9】本発明において実施可能なレンズの一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0025】
1,61…照明装置、15…励起光発生源としてのUV−LEDアレイ、23,73…蛍光発光ユニットとしてのレンズユニット、40…可視励起光発生源としての青色LEDアレイ、29,42,51,77…蛍光層としての蛍光体層、30,43,78…第1の光学薄膜層としてのSWPF、31,44,79…第2の光学薄膜層としてのLWPF。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、蛍光材料と衝突することで蛍光を励起する励起光を発生させる励起光発生源と、同励起光発生源から空間的に離間した位置に配置される蛍光発光ユニットとを備え、
同蛍光発光ユニットは、透明な基体と、同基体上に成膜される複数の膜層を備え、
同膜層は前記励起光発生源の励起光放射方向の前方に配置された蛍光を反射するとともに励起光を透過させる第1の光学薄膜層と、同第1の光学薄膜層の前方に配置される蛍光材料を含有する蛍光層から構成され、
前記蛍光発光ユニットは取り付け位置に対して取り外し可能に取着されることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記蛍光層の前方には配置され励起光を反射するとともに、蛍光を透過させる第2の光学薄膜層を配置したことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記励起光発生源から発生する励起光の一部は前記蛍光層が形成されていない前記基体を透過し、蛍光とともに照明光の一部とされることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記基体はレンズであって、前記蛍光層は同レンズの内側面上に形成され、前記第1の光学薄膜層は同蛍光層の上層に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の照明装置。
【請求項5】
前記基体はレンズであって、前記蛍光層は同レンズの内側面上に形成され、前記第1の光学薄膜層は同蛍光層の上層に形成されるとともに、前記第2の光学薄膜層は同基体の外側面上に形成されることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項6】
前記基体はレンズであって、前記第2の光学薄膜層は同レンズの内側面上に形成され、前記蛍光層は同第2の光学薄膜層の上層に形成されるとともに、前記第1の光学薄膜層は同蛍光層の上層に形成されることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項7】
前記蛍光発光ユニットは前記励起光発生源に対して接近及び離間可能に取着されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の照明装置。
【請求項8】
前記励起光発生源は筐体に支持されており、前記蛍光発光ユニットは同筐体に対して取り外し可能に取着されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の照明装置。
【請求項9】
前記励起光発生源と前記第1の光学薄膜層の間には筒状の反射部材を配置したことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の照明装置。
【請求項10】
前記反射部材には放熱孔が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−48920(P2009−48920A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215564(P2007−215564)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)
【Fターム(参考)】