説明

照明装置

【課題】有機EL素子に代表される多数の面発光体を特定な形態に配列することにより、インテリア性が華やかに引き出され、照明を設置した空間の雰囲気を高めることのできる照明装置を提供する。
【解決手段】複数の面発光体6を備え、前記面発光体6の発光により光照射がなされる照明装置1であって、短冊状に形成された前記各面発光体6の長手方向の一端部が内周縁を構成し、前記各面発光体の長手方向の他端部が外周縁を構成するようにして前記各面発光体6が環状に配列されると共に、前記内周縁から前記外周縁に向かって、同心円状に広がる勾配を持たせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子に代表される面発光光源を用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は直流の低電圧により駆動されることで高い発光効率を有し、軽量かつ薄型化が可能であると共に、ほとんど発熱がないという特質を有している。したがって、一部の携帯型機器などにおけるフラットパネルディスプレイ(FPD)に利用されており、また同素子を面発光源として、例えば液晶表示素子のバックライトとして利用する形態のものも提供されている。
【0003】
また、前記有機EL素子はEL発光層に用いる素材の選択により、R(赤)、G(緑)、B(青)やその他の発光色を得ることができ、したがって前記した各発光色を単独で、または二種以上の発光色を組み合わせることにより、白色もしくはこれに近い発光色を得ることが可能となる。それ故、有機EL素子を面発光源(発光パネル)として構成することで、例えば装飾用の光源や、室内等を照明する高効率な光源として利用することができる。
【0004】
前記した有機EL素子を利用して、これを面発光型の照明装置として利用したものが、次に示す特許文献1および2などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−7450号公報
【特許文献2】特開2004−234868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1および2に開示された照明装置においては、有機EL素子を面発光源として利用した場合において、主に輝度むらの発生を防止することを解決課題としているものであり、したがって有機EL素子を単調な平坦面の発光源として利用しようとする点にとどまるものである。このため、照明装置としては、特にアクセントのない立体感に欠ける単調なものであり、照明に華やかな演出効果等を引き出させるものではなかった。
【0007】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、有機EL素子に代表される多数の面発光体を特定な形態に配列することにより、インテリア性が華やかに引き出され、照明を設置した空間の雰囲気を高めることのできる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために、本発明に係る照明装置は、円筒状に形成された面発光部を有し、前記面発光部の発光により光照射がなされる照明装置であって、前記面発光部の上端部が内周縁を構成し、前記面発光部の下端部が外周縁を構成すると共に、前記内周縁から前記外周縁に向かって、同心円状に広がる勾配を持たせたことに特徴を有する。
この場合、前記面発光部は、短冊状に形成された複数の面発光体により構成され、前記各面発光体の長手方向の一端部が前記内周縁を構成し、前記各面発光体の長手方向の他端部が前記外周縁を構成するようにして前記各面発光体が環状に配列されることが望ましい。また、前記円筒状の面発光部は、その発光面が下方に臨む状態で配置されていることが望ましい。
また、上端が前記内周縁に沿って形成され、下端が前記外周縁に沿って形成されると共に、前記内周縁から前記外周縁に向かって周面が同心円状に広がる勾配を有する筒状体を備え、前記筒状体は透光性を有し、前記面発光部は前記筒状体の周面上に設けられていることが望ましい。
尚、前記筒状体は、弾性素材により形成された複数の円弧状の平板部材が連結され、湾曲されることにより構成されていてもよい。その場合、前記平板部材を透明基板として、該平板部材の一面上に前記面発光部の透明電極を形成することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、面発光部の発光面が発光すると、その光は照明装置の下方中央に向けて照射される。即ち、円筒状の面発光部を点灯すると、照明装置の下方中央に集光されるため、照明手段としての発光効率を向上することができる。
また、面発光部は円筒状であるため、照明装置の中央部には発光部がない構成であり、面発光体の背面側、即ち照明装置の外周側は発光しないため、照明装置における光のコントラストが強調され、インテリア性が華やかに引き出されて、照明を設置した空間の雰囲気が向上するという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、この発明に係る照明装置の実施形態について、天井吊り下げ型に適用した場合の全体構成を示した斜視図である。
【図2】図2は、この発明に係る照明装置の実施形態について、天井吊り下げ型に適用した場合の全体構成を示した側面図である。
【図3】図3は、この発明に係る照明装置の実施形態について、天井吊り下げ型に適用した場合の全体構成を示した平面図(底面図)である。
【図4】図4は、この発明に係る照明装置の実施形態について、一部を拡大視した断面図である。
【図5】図5は、この発明に係る照明装置の他の実施形態について、筒状体を構成する平板部材の平面図である。
【図6】図6は、この発明に係る照明装置の他の実施形態について、天井吊り下げ型に適用した場合の全体構成を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかる実施の形態につき、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1〜図3は、この発明に係る照明装置の実施の形態について、天井吊り下げ型に適用した場合の全体構成を示したものであり、図1は斜視図、図2は側面図、図3は下から見上げた平面図(底面図)である。
以下においては、同一部分を同一符号で示した各部の構成について、符号を引用してそれぞれ説明する。尚、以下に説明する各図においては、繁雑になるのを避けるため、それぞれ代表される各部のみを符号で示し、また図に応じて符号の一部を適宜省略した状態で示している。
【0012】
本発明に係る照明装置1は、図示するように複数(本形態では三本とする)のワイヤー4によって吊り下げられる。前記ワイヤー4は、天井面(図示せず)に一端が取り付けられたコード2が円板状の支持部材3によって三本に分岐されたものである。三本全てのワイヤー4、或いは三本のワイヤー4のうちいずれかは、商用電源から整流された直流電流を供給するための導電線(図示せず)が所定の絶縁部材で被覆されてなり、照明装置1への電源供給線として機能している。
【0013】
照明装置1は、上端が環状の内周縁を形成し、下端が環状の外周縁を形成すると共に、前記内周縁から前記外周縁に向かって周面が同心円状に広がる勾配を有する透明な筒状体5を有する。この筒状体5は、透光性を有する無色透明の素材、例えばガラスにより形成されている。
前記環状の内周縁を形成する筒状体5の上端部には、前記三本のワイヤー4の先端が均等な円弧間隔で取り付けられており、筒状体5が吊り下げられた状態で、傾斜せずに安定して支持されるようになされている。
【0014】
また、この筒状体5の勾配を有する外周面には、それぞれ短冊状に形成された発光パネルである複数の有機ELモジュール6(面発光体)が、横一列に並べて取り付けられている。より具体的には、短冊状の有機ELモジュール6の長手方向の一端部(モジュール上端)が内周縁を構成し、有機ELモジュール6の長手方向の他端部(モジュール下端)が外周縁を構成するように環状に配列されている。即ち、環状に配列された複数の有機ELモジュール6により円筒状の面発光部が形成され、その内周縁から外周縁に向かって、同心円状に広がる勾配を有する状態となっている。
【0015】
このとき、図4の一部拡大断面図に示すように、各有機ELモジュール6の発光面6aが筒状体5の内周面側を向く(即ち下方に臨む)よう配置されており、筒状体5は、透光性を有するため、有機ELモジュール6の発光時には、筒状体5を光が透過し、照明装置1の下方が光照射される。
【0016】
前記有機ELモジュール6は、図4に示すように、透明基板10上にITO等からなる透明電極11が成膜され、その上に正孔輸送層12、有機材料による発光機能層13、電子輸送層14、及びアルミニウム等の素材を主体とした金属製の背面電極15が順に形成され、さらに絶縁部材からなるケーシング16により側面及び背面を覆う構成となされている。尚、この有機ELモジュール6を筒状体5に取り付ける場合、例えば図4に示すように前記ケーシング16の下端部16aが筒状体5に対し接着され、筒状体5に対し有機ELモジュール6が固定される。
【0017】
前記有機ELモジュール6の上端からは、例えば前記透明電極11に電気的に接続された陽極端子線17が引き出され、有機ELモジュール6の下端からは、前記背面電極15に電気的に接続された陰極端子線18が引き出されている。
一方、筒状体5の外周面において、その上端部には銅配線からなる陽極線路20がプリント形成され、下端部には陰極線路21がプリント形成されている。これら陽極線路20、陰極線路21は、前記ワイヤー4内の導電線(陽極線、陰極線)にそれぞれ電気的に接続されている。
【0018】
複数配置された各有機ELモジュール6の上端から引き出された前記陽極端子線17は、筒状体5に形成された陽極線路20に電気的に接続され、各有機ELモジュール6の下端から引き出された前記陰極端子線18は、筒状体5に形成された陰極線路21に電気的に接続されている。
即ち、各有機ELモジュール6は、ワイヤー4内の導電線から筒状体5の陽極線路20、陰極線路21を介して給電され、発光するようになされている。
【0019】
ここで、少なくとも筒状体5に形成された陰極線路21は、全ての有機ELモジュール6に対して共通の電極とすることができる。一方、陽極線路20に関しては、全ての有機ELモジュール6に対して共通電極としてもよいし、或いは、複数の有機ELモジュール6をグループとして、グループ単位で共通電極を構成してもよい。或いは、各有機ELモジュール6ごとに陽極線路20を設けてもよい。
但し、モジュール6ごと、或いは、複数のグループごとに陽極線路20を設ける場合には、その単位で点灯制御可能とするために、設けられた陽極線路20をそれぞれ識別するためのデコーダ手段(図示せず)を設けることが望ましい。
また、図4に示すように、筒状体5に形成された陽極線路20及び陰極線路21は、絶縁部材22、23によりそれぞれ覆われて保護されることが好ましい。
【0020】
以上のように構成された照明装置1によれば、筒状体5に設けられた有機ELモジュール6の発光面が発光すると、その光は照明装置1の下方中央に向けて照射される。即ち、複数の有機ELモジュール6を同時に点灯した場合には、照明装置1の下方中央に集光されるため、照明手段としての発光効率を向上することができる。
また、筒状体5の中央部には発光部がないデザインであり、透明な筒状体5の外周面側は発光しない構成であるため、照明装置1における光のコントラストが強調され、インテリア性が華やかに引き出されて、照明を設置した空間の雰囲気を高めるという効果を得ることができる。
さらには、各有機ELモジュール6単位で点灯制御を行う構成を容易に構築することができ、その場合には、各有機ELモジュール6の点灯パターンを制御することで、より多様な演出効果を得ることができる。
【0021】
尚、前記した実施の形態においては、筒状体5の外周面に複数の有機ELモジュール6を配列した例を示したが、それに限定されず前記筒状体5の内周面に複数の面発光体(有機ELモジュール6)を配列し、円筒状の面発光部を構成するようにしてもよい。
また、有機ELモジュール6を配置する面が筒状体5の外周面或いは内周面のいずれの場合であっても、前記実施の形態で説明した有機ELモジュール6の背面電極15をITO等からなる透明電極で形成し、有機ELモジュール6の両面を発光面としてもよい。
【0022】
また、前記した実施の形態においては、筒状体5の周面に複数の短冊状の面発光体(有機ELモジュール6)を配列したが、一端が内周縁を構成し、他端が外周縁を構成するならば、面発光体の形状は短冊状に限定されず、他の形状(例えば横長の四角形や平行四辺形等)であってもよい。或いは、筒状体5に対し、その周面(内周面或いは外周面)全体を覆うような帯状の面発光部を設けてもよい。
【0023】
さらに、前記実施の形態においては、透光性を有する筒状体5を一体形成された部材とし、その外周面に沿って有機ELモジュール6を配置した形態を示したが、本発明の照明装置にあっては、その形態に限定されるものではない。
例えば、図5(a)に示すように所定枚数(例えば3枚)を連結するとドーナツ型の円板となるような円弧状の平板部材30を、弾性素材により形成された透光性を有するフレキシブル基板により前記所定枚数形成し、図5(b)に示すように、それらの一面上に直接、短冊形状の面発光体31(有機EL面発光体)を複数配列形成したものを、図6に示すような筒状体32に組み立ててもよい。尚、前記フレキシブル基板の素材としては、弾性を有する合成樹脂素材が用いられ、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)などを好適に用いることができる。
【0024】
前記平板部材30を透明基板として、その面上に直に面発光体31を形成する場合、先ず平板部材30の一面上に例えばスパッタリング法を用いることによりITO等からなる透明電極が形成される。このとき、前記平板部材30の素材として合成樹脂が用いられるために耐熱温度の関係で、プロセス温度に制限が加えられる。このために、透明電極は十分な結晶化ITOに成長せず、アモルファスITOの状態になされる場合がある。
【0025】
前記したアモルファスITOは、この上に成膜される発光機能層として機能する有機材料の酸化を促進させるという問題を招来させるので、前記ITO膜の上には、バッファ層として金属酸化物半導体を成膜することが望ましい。前記バッファ層を形成する素材としては酸化クロム(CrOx)や酸化ニッケル(NiOx)などを利用することができる。
【0026】
そして、前記したバッファ層上に、有機材料による発光機能層、および金属素材による背面電極を順に蒸着等の手段を利用して成膜することで有機EL素子による面発光体31を形成することができる。この場合、望ましくは有機EL素子による前記面発光体31を覆うようにして、背面からさらにガスバリア性を有するフィルム状の樹脂を平板部材30の全体に対しラミネートすることが望ましい。これにより、前記発光機能層および背面電極等を大気中の水分および酸素等から隔離することができ、有機EL素子の寿命を延命させることに寄与できる。
また、望ましくは平板部材30と前記ラミネート樹脂との間に給電のための一対の導電線を挿入配置することで、面発光体31に対し発光駆動電流を供給することができる。
【0027】
尚、図5に示した例では、平板部材30において、筒状体32を構成した場合に外周面となる面上に複数の面発光体31を設けたが、それに限定されず、内周面となる面上に前記面発光体を設けてもよい。その場合、背面電極をITO等からなる透明電極で形成することにより、筒状体32の内周面側(下方に臨む面)を発光させることができる。
また、図5(b)のように円弧状の平板部材30に複数の短冊状の面発光体31を配列した例を示したが、平板部材30を筒状体32に組み立てた際に、一端が内周縁を構成し、他端が外周縁を構成するならば、面発光体31の形状は短冊状に限定されず、他の形状(例えば横長の四角形や平行四辺形等)であってもよい。或いは、平板部材30の一面全体(外周面側或いは内周面側)を覆うような帯状の面発光部を設けてもよい。
【0028】
また、前記全ての実施の形態においては、面発光体として有機EL素子を用いた有機ELモジュールを例に説明したが、それに限定されず面発光可能な素子であれば、無機EL素子などの素子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 照明装置
2 コード
3 支持部材
4 ワイヤー
5 筒状体
6 有機ELモジュール(面発光体)
10 透明基板
11 透明電極
12 正孔輸送層
13 発光機能層
14 電子輸送層
15 背面電極
16 ケーシング
17 陽極端子線
18 陰極端子線
20 陽極線路
21 陰極線路
22 絶縁部材
23 絶縁部材
30 平板部材
31 面発光体
32 筒状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に形成された面発光部を有し、前記面発光部の発光により光照射がなされる照明装置であって、
前記面発光部の上端部が内周縁を構成し、前記面発光部の下端部が外周縁を構成すると共に、前記内周縁から前記外周縁に向かって、同心円状に広がる勾配を持たせたことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記面発光部は、短冊状に形成された複数の面発光体により構成され、
前記各面発光体の長手方向の一端部が前記内周縁を構成し、前記各面発光体の長手方向の他端部が前記外周縁を構成するようにして前記各面発光体が環状に配列されることを特徴とする請求項1に記載された照明装置。
【請求項3】
前記円筒状の面発光部は、その発光面が下方に臨む状態で配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された照明装置。
【請求項4】
上端が前記内周縁に沿って形成され、下端が前記外周縁に沿って形成されると共に、前記内周縁から前記外周縁に向かって周面が同心円状に広がる勾配を有する筒状体を備え、
前記筒状体は透光性を有し、前記面発光部は前記筒状体の周面上に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された照明装置。
【請求項5】
前記筒状体は、弾性素材により形成された複数の円弧状の平板部材が連結され、湾曲されることにより構成されていることを特徴とする請求項4に記載された照明装置。
【請求項6】
前記平板部材を透明基板として、該平板部材の一面上に前記面発光部の透明電極が形成されていることを特徴とする請求項5に記載された照明装置。
【請求項7】
前記面発光体が有機EL素子により構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載された照明装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−182491(P2010−182491A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23718(P2009−23718)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(504265754)財団法人山形県産業技術振興機構 (60)
【Fターム(参考)】