説明

照明装置

【課題】発光素子の温度を低コストで検出できる照明装置を提供する。
【解決手段】照明装置としての有機EL装置2は、第1面と第2面とを有する第1基板としての素子基板40と、素子基板40の第1面に設けられており、発光部14の周囲または発光部14が設けられた領域の少なくとも一部と平面的に重なる導電部45と、を備え、導電部45は、導電体を含み、発光部14の温度を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
照明装置の一例である有機エレクトロルミネッセンス(EL(Electro-luminescence))パネルの発光素子に用いられる有機EL材料は、使用される環境温度によってその材料特有の温度特性から発光輝度が異なってしまうという問題点があることが知られている。照明装置では特にこの材料特有の温度特性により、表示品質の著しい低下「輝度ムラ」となる。ここでいう「輝度ムラ」は、基板面内(特に中心付近と外周付近)で起こり得る温度差に起因したI−L特性(電流−光出力特性)の変化(ずれ)に起因する。
【0003】
このような問題点に関しては、温度検出手段によって、複数の部位の温度を検出することで、発光部における温度を検出し、輝度ムラのない高品質な画像表示を行う技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、発光部内の複数部位を発光と温度検出に兼用することで、自発光素子の駆動温度を正確に検出する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−234447号公報
【特許文献2】特開2008−181008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、対向基板に温度検出手段を有することが開示されているが具体的な検出方法が記載されていない。また、特許文献2に開示された技術では、温度検出用配線、スイッチを有するため、高コストという問題がある。
本発明の課題は、低コストで発光素子の温度を検出できる照明装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る照明装置は、第1面と第2面とを有する第1基板と、前記第1基板の前記第1面に設けられており、発光素子を有する発光部と、前記発光部の周囲または前記発光部が設けられた領域の少なくとも一部と平面的に重なる導電部と、を備え、前記導電部は、導電体を含み、前記発光部の温度を検出することを特徴とする。
【0008】
本発明の照明装置によれば、その動作時には、例えば、発光素子に電流が印加されることにより、発光素子において発光層が発光する。この場合、印加電流によって、発光部の輝度が制御される。このような動作時には、例えば、発光素子が発光する際に生じる熱や、配線抵抗等による発熱のため、発光部の温度が変化してしまうおそれがある。発光素子は、使用される温度が異なると印加電流に対する発光輝度が異なるという温度特性を有する場合が多く、画素部の温度変化に伴い、画素部における輝度も変化してしまうおそれがある。
【0009】
しかるに本発明では、発光部の温度を検出する導電部が、発光部の周囲または前記発光部が設けられた領域の少なくとも一部に対して平面的に重なるように設けられている。これにより、温度検出スイッチを追加することなく低コストで発光素子の温度を検出することが可能となる。
【0010】
尚、導電部により「検出する」とは、狭義には、直接的に即ち導電部により検出するあるいは測定する場合の他に、広義には、発光部の温度に関連する他の一又は複数のパラメーターに基づいて、間接的に検出する、算出する、推定する、予測する、予想する、特定する等々の場合を含んでよい。
【0011】
以上説明したように、本発明に係る照明装置によれば、導電部によって、発光部の温度を検出することができる。
【0012】
[適用例2]上記に記載の照明装置であって、前記第1基板の第1面に設けられ、前記導電部に対応して設けられた外部回路を接続する複数の端子部とを備えたことを特徴とする照明装置。
【0013】
これによれば、外部回路を容易に接続することができる。
【0014】
[適用例3]上記に記載の照明装置であって、前記複数の端子部は、互いの近傍に配置されていることを特徴とする照明装置。
【0015】
これによれば、端子部同士が近いので、外付けのFPCの設計がし易く、FPCを小さくできる。
【0016】
[適用例4]上記に記載の照明装置であって、前記導電部によって検出された温度に応じて、前記発光素子が所定の輝度で発光するように、前記発光素子に印加すべき駆動波形を制御する駆動制御回路を備えたことを特徴とする照明装置。
【0017】
これによれば、導電部によって検出された温度に応じた印加電流を発光素子に印加することで、発光部の輝度が所望の輝度となるように制御できる。即ち、例えば、照明装置の動作中に、所定時間毎に導電部により温度を検出し、検出された温度に基づいて所望の輝度となるように補正された印加電流を発光素子に印加することで、発光素子の温度変化による発光輝度の変化あるいは所望の輝度からのズレを低減あるいは防止できる。
【0018】
[適用例5]上記に記載の照明装置であって、前記導電部の形状は、クランク状に繰り返し折れ曲がった線状であることを特徴とする照明装置。
【0019】
これによれば、導電部の抵抗値が大きくなるので、温度変化に対する検出感度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態に係る有機EL装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】図1のA−A断線に沿う概略断面図。
【図3】第1の実施形態に係る有機EL装置のMoの抵抗率を示す図。
【図4】第1の実施形態に係る有機EL装置の駆動方法を示すブロック図。
【図5】第2の実施形態に係る有機EL装置の全体構成を示すブロック図。
【図6】第3の実施形態に係る有機EL装置の全体構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本実施形態について図を参照しつつ説明する。以下の実施形態では、照明装置の一例として有機EL装置を例にとり説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
先ず、本実施形態に係る有機EL装置の全体構成について、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る有機EL装置2の全体構成を示すブロック図である。
【0023】
有機EL装置2は、第1基板としての素子基板40と、発光素子の40の第1面に設けられた発光部14と、発光部14の周囲または一部と平面的に重なる導電部45と、を備えている。
また有機EL装置2は、駆動回路24と駆動制御回路26に接続されている。駆動制御回路26は、後述するように、発光部14の周囲に設けられた導電部45の抵抗値に係る温度データに基づいて、後述する補正データを生成し、駆動回路24に出力する。
【0024】
次に、本実施形態に係る有機EL装置2の具体的な構成について、図2を参照して説明する。図2は、図1のA−A断線に沿う概略断面図である。
【0025】
有機EL装置2は、図2に示すように、素子基板40、素子基板40上方に形成された有機EL素子12、及び封止基板(図示しない)を備えて構成されている。尚、有機EL素子12は、図中上側に光を出射するトップエミッション型の有機EL素子であるが、ボトムエミッション型の有機EL素子であってもよい。
【0026】
素子基板40は、例えば、ガラス基板等で構成されている。
【0027】
有機EL素子12は、有機EL層42、陰極44、及び陽極46を備えて構成されている。
【0028】
陽極46は、素子基板40上に順次形成された層間絶縁膜54、平坦化膜50の上に形成されている。陽極46は、例えば、有機EL層42から図中下側に出射される光を下側に透過するように、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料で構成された透明電極である。陽極46は、例えば、透明電極材料であるITOを厚さ100nm程度に成膜した電極である。また、陽極46の下層(平坦化膜50側)に、絶縁層を介してMo(モリブデン)からなる反射膜51が設けられている。当該反射膜51は、有機EL層42における発光を封止基板側に反射するものである。また、当該反射膜51はMoに限定されず、発光を反射する機能(反射面)を有していればよい。例えば、絶縁性の有機材料あるいは無機材料を用いて凹凸を有する反射面を形成する方法、陽極46自体を、反射機能を有する導電材料で構成し、表面層にITO膜を形成する方法などが挙げられる。
【0029】
陰極44は、素子基板40上に形成された有機EL素子12で共通とされる共通電極である。陰極44は、有機EL層42の上面に形成されている。
【0030】
封止基板は、透明なガラス等からなる基板を用いている。
【0031】
有機EL装置2は、いわゆるトップエミッション型の構造となっており、陽極46と陰極44との間に駆動電流を流して有機EL層42で発光した光を、前述した反射膜51で反射させ、封止基板側から取り出す構成となっている。トップエミッション型の構造であるため、素子基板40は、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナ等のセラミックス、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0032】
本実施形態では、図2に示すように、導電部45が、素子基板40上に設けられている。導電部45は、例えばMoなどの導電体で構成されており、発光部における有機EL素子12付近の温度が検出可能となっている。導電部45は、導電部45の抵抗率の変化により、発光部14における有機EL素子12付近の温度が検出可能となっている。導電部45は、抵抗率の変化が検出できるように端子部49(図1参照)が設けられている。
【0033】
温度の検出方法には導電部45の導電体の抵抗率の温度依存性を利用する。温度依存性の例として、導電体であるMoの抵抗率を図3に示す。これにより、導電体の抵抗率の変化から温度を逆算することができる。導電体のMoの厚さは、例えば150nm程度である。
【0034】
従来技術では温度検出用に追加の金属配線を用いていたため、コストが増大の原因となっていた。これに対し、本実施形態では導電部45を反射膜51と同じ層で作成するため、新たな層を追加することなく、有機EL素子12の温度を検出することができる。このため、低コストで温度検出を行うことができる。
【0035】
導電体の材料は、Mo以外に、例えばAu、Ni、Pt、Ag、Al、W、Ta、Ti、Cu、Cr等のうち少なくとも一つを含む金属材料といった不透明な導電体であってもよい。尚、導電部45は、導電体であれば、薄膜状のサーミスターや熱電対等を含んで構成してもよいし、また、有機又は無機EL材料等の発光材料、あるいは、p型又はn型の不純物がドープされたシリコン膜等を夫々含んで構成してもよい。この場合にも、発光材料あるいはシリコン膜の抵抗値等の温度特性の変化を利用して、温度を検出できる。
【0036】
封止基板は、水分が有機EL装置2の外部から有機EL層42に浸入することを防止する。より具体的には、封止基板は、素子基板40上に接着剤によって接着されており、有機EL装置2の外気が有機EL素子12に触れないように有機EL素子12を封止する。素子基板40上に封止基板を接着する接着剤は、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂を含んでおり、例えば、熱硬化樹脂の一例であるエポキシ樹脂を封止基板の周縁部にディスペンサー等の塗布手段を用いて塗布される。
【0037】
次に、本実施形態に係る有機EL装置2の駆動方法について、図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る有機EL装置2の駆動方法を示すブロック図である。
【0038】
有機EL装置2は導電部45と発光部14を備え、駆動制御回路26は温度検出回路63と制御回路28を備えて構成される。有機EL装置2と駆動制御回路26と駆動回路24は互いにデータの入力/出力ができるようになっている。
有機EL装置2の動作時には、図4に示すように、駆動制御回路26の温度検出回路63が、導電部45の抵抗値を、例えば所定時間毎に検出し、検出した抵抗値に係る温度データを、制御回路28へ出力する。
制御回路28は、温度検出回路63からの温度データに基づいて、所望の発光輝度が得られるように駆動波形に係る補正データを生成して、駆動回路24へ出力する。
【0039】
ここで「補正データ」は、予め設定された温度に対応して決まる駆動波形と、検出された温度に対応して決まる駆動波形との差が小さくなるように、駆動波形の例えば幅、高さ、形状あるいは突入電流形状等のパラメーターを変更するためのデータである。
即ち、例えば、予め設定された温度において所望の発光輝度で有機EL層42を発光させるのに必要な印加電流と、検出された温度において所望の発光輝度で有機EL層42を発光させるのに必要な印加電流との差を小さくする(即ち、補正する)ためのデータである。
【0040】
駆動回路24は、制御回路28からの補正データと表示データとから発光部14を駆動するための駆動波形を生成し、生成した駆動波形を発光部14に供給する。よって、有機EL素子12には、検出された温度に応じた駆動波形の印加電流が印加される。言い換えれば、温度検出回路63によって検出された温度が、制御回路28へフィードバックされることにより、発光部14(あるいは有機EL素子12)の温度に応じて調整された駆動波形の印加電流が、有機EL素子12に印加される。
従って、例えば、動作時における、有機EL素子12が発光する際に生じる熱や、外部の環境温度変化により発光部14の温度変化が発生しても、発光部14の輝度が所望の輝度となるように制御できる。
【0041】
以上のように、本実施形態では、導電部45が設けられているので、有機EL装置2の動作中に、例えば所定時間毎に温度検出回路63により温度を検出し、検出された温度に基づいて所望の輝度となるように補正された駆動波形の印加電流を有機EL素子12に印加することで、有機EL素子12の温度変化による発光輝度の変化あるいは所望の輝度からのズレを低減、あるいは好ましくは防止できる。
【0042】
さらに、図2において、本実施形態では、導電部45は、素子基板40上に設ける反射部である反射膜51と兼用できる。つまり、導電部45は低コストで形成可能である。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の有機EL装置2によれば、導電部45によって、発光部14の温度を検出することができ、検出された温度に応じて駆動制御回路26によって駆動波形を補正できるので、高品質な発光が可能となる。さらに、導電部45は、素子基板40上に設ける反射膜51と兼用できるため、導電部45を低コストに形成できる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る有機EL装置について、図5を参照して説明する。
図5は、第1の実施形態における図1と同趣旨のブロック図である。尚、図5において、図1に示した第1の実施形態に係る構成要素と同様の構成要素に同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0045】
本実施形態に係る有機EL装置4では、導電部45は、陽極46と同層の導電膜からなる。本形態においても第1の実施形態と同様に導電部45の抵抗を測定することにより、発光部14の温度を検出することが可能である。導電部45は、陽極46と同層であるため、新たな導電層を追加することないため、低コストにできる。
【0046】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る有機EL装置について、図6を参照して説明する。
図6は、第1の実施形態における図1と同趣旨のブロック図である。尚、図6において、図1に示した第1の実施形態に係る構成要素と同様の構成要素に同一の符号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0047】
本実施形態に係る有機EL装置6では、導電部45をクランク状に繰り返し折れ曲がった線状を1つの繋がった形態として発光部10の温度の検出を可能にしている。
例えば、図6に示すように、導電部45は、発光部14の上下方向に延びるクランク状に繰り返し折れ曲がった線状からなる。よって、導電部45の抵抗値は大きくなるので、温度変化に対する検出感度を向上させることができる。
従って、発光部14に印加する駆動波形を、検出感度を向上させた温度変化に応じて、上述した駆動制御回路26によって補正することにより、発光部14における輝度ばらつきを低減あるいは防止できる。
【0048】
特に、発光部14が広い(即ち、素子基板40、あるいは照明装置のサイズが大きい)場合、発光部14の温度分布が生じ易く、発光部14における輝度ばらつきが発生しやすいので、導電部45の抵抗値を大きくすることによって検出された複数の発光部14の温度に応じて駆動波形を補正することは、極めて有効である。
【0049】
本実施形態に係る有機EL装置2,4,6では、図1,5,6に示すように、複数の端子部49を互いの近傍に配置している。本実施形態によれば、端子部49同士が近いので、端子部49に接続する外付けのFPC(図示せず)の設計がし易く、FPCの形状を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0050】
2,4,6…有機EL装置(照明装置) 12…有機EL素子(発光素子) 14…発光部 24…駆動回路 26…駆動制御回路 28…制御回路 40…素子基板(第1基板) 42…有機EL層 44…陰極 45…導電部 46…陽極 49…端子部 50…平坦化膜 51…反射膜 54…層間絶縁膜 63…温度検出回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と第2面とを有する第1基板と、
前記第1基板の前記第1面に設けられており、発光素子を有する発光部と、
前記発光部の周囲または前記発光部が設けられた領域の少なくとも一部と平面的に重なる導電部と、
を備え、
前記導電部は、導電体を含み、前記発光部の温度を検出することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置において、
前記第1基板の前記第1面に設けられ、前記導電部に対応して設けられた外部回路を接続する複数の端子部と、
を備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項2に記載の照明装置において、
前記複数の端子部は、互いの近傍に配置されていることを特徴とする照明装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の照明装置において、
前記導電部によって検出された温度に応じて、前記発光素子が所定の輝度で発光するように、前記発光素子に印加すべき駆動波形を制御する駆動制御回路を備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の照明装置において、
前記導電部の形状は、クランク状に繰り返し折れ曲がった線状であることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−84370(P2012−84370A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229326(P2010−229326)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】