説明

照準望遠鏡の支点機構

【課題】
遠くの標的を狙う照準望遠鏡では、距離により落下量が多くなる為、弾着補正量を多く必
要とする。遠くの標的を狙うに充分な弾着補正量を確保し、強い衝撃を受けても光軸が狂
わない構造である照準望遠鏡を提供する。
【解決手段】
中央部に球体形状を持つ内部鏡筒を配し、その内部鏡筒の一方に内部光学系のレンズ室、
他方に弾着補正軸による作用点を配置する支点機構とした。作用点と支点及びレンズ室と
支点の距離を短くする事で弾着補正量を大きくすることが可能となり、また、内部鏡筒の
回転中心となる球体は球体支持枠と広い面積で接触する事ができる為、衝撃に対して強い
支点部を持つ照準望遠鏡を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾着調整装置部を有する照準望遠鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
弾着調整装置部を有する照準望遠鏡は、照準望遠鏡のレチクルの中心を弾着位置と一致さ
せる為に、内部光学系を傾けて照準望遠鏡の光軸を弾着位置に一致させている。
【0003】
前記の内部光学系を傾ける手段として、従来、外部鏡筒の垂直方向と水平方向にそれぞれ
弾着補正機構を設け、内部鏡筒の片側を支点として接眼側または対物側に固定し、支点と
反対側の内部鏡筒にレンズ室を設け、レンズ室の近くを弾着補正機構の弾着補正軸により
上下(左右)に動かすことにより内部光学系の光軸を上下(左右)に傾けている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ライフルスコープ等の照準望遠鏡は、強い衝撃を受けても光軸が狂わない構造である必要
がある。内部鏡筒の回転中心である支点部に少しでもガタがあると、衝撃を受ける度に内
部鏡筒の光軸が変化し、精密な弾着補正ができない。
【0005】
遠くの標的を狙う照準望遠鏡では、距離により落下量が多くなる為、弾着補正量を多く必
要とする。限られた外部鏡筒の径の中で遠くの標的を狙うに充分な弾着補正量を確保する
ことは、今までの構造では限界があった。
【0006】
本発明では、弾着補正量を多く確保しながら、高精度の弾着補正をする事ができ、強い衝
撃にも変化しない構造の照準望遠鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
衝撃に対して強い支点部とする為に、内部鏡筒の回転中心となる球体は球体支持枠と広い
面積で接触する事が必要であり、本発明の照準望遠鏡は、中央部に球体形状を持つ内部鏡
筒を配し、その内部鏡筒の一方に内部光学系のレンズ室、他方に弾着補正軸による作用点
を配置する支点機構とした。
【0008】
また、遠くの標的を狙うに充分な弾着補正量を確保する為に、内部鏡筒を傾ける角度を大
きくすることが必要である為、前記支点機構は、支点となる球体部を中央に置き、作用点
と支点及びレンズ室と支点の距離を短くする事とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の支点機構によれば、内部鏡筒の球体部を広い範囲で包み込む様に球体支持枠が配
置でき、また、作用点−支点−レンズ室―の距離を短くした事から、内部鏡筒部の質量が
軽くなり、強い衝撃に対して慣性質量を軽減することができた。この事により強い衝撃に
対しても支点部は安定しており、高精度の弾着補正が可能となった。
【0010】
作用点−支点−レンズ室―の距離を短くした事から、内部鏡筒の傾き角度を大きく確保す
ることができ、遠距離の標的を狙った場合の弾丸落差の大きい弾着補正が可能な照準望遠
鏡を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明による一つの実施形態である支点機構を、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は一般的な照準望遠鏡の光学配置図であり、内部光学系を傾けた状態を図2に表して
いる。図3は本発明の一つの実施形態である支点機構と外部鏡筒、弾着補正装置の関係を
表した断面図であり、図4はその内部光学系を傾けた状態を示す。
【0012】
支点機構部の構造については、図3から図5にて図示説明される。
【0013】
図1の光学配置図において、対物レンズ群(1)より入射した光線は第一焦点面で結像し
た後、正立レンズ群(2)にて正立像となりレチクル面(3)に結像する。この像を接眼
レンズ群(4)で観察することになる。図2の様に内部光学系を傾けた場合対物レンズ(1)の光軸(A)に対して内部光学系の軸(B)がズレる為、レチクル面(3)の結像がズレてレチクルの中心を弾着点に合わせることができる。
【0014】
図3において外部鏡筒(5)の先端には対物レンズが取り付けられており、対物レンズの
光軸(A)が外部鏡筒(5)の中心軸と一致している。外部鏡筒には鉛直方向に軸受け(7)がねじ込まれており、軸受け(7)の内径ネジにガタなく弾着補正軸(6)がねじ込まれている。この弾着補正軸(6)を回転する事により高精度に加工された弾着補正軸ネジ部(6A)により弾着補正軸(6)が外部鏡筒(5)内上下にゆっくりと押出し(引込み)される。同様に水平方向にも軸受け(7)及び弾着補正軸(6)が設けられており、左右にゆっくりと押出し(引込み)される。
【0015】
外部鏡筒(5)の内径には内部鏡筒支持枠(10)が支持枠止めビス(9)により固定さ
れている。内部鏡筒支持枠(10)の内径には内部鏡筒(11)が配置され、内部鏡筒押
え(12)によりガタなく滑らかに回転するように締め付けられている。内部鏡筒11)
には正立レンズ群(2)が固定されている。弾着補正軸(6)と内部鏡筒(11)の接触
する作用点の反対側から板バネ(8)にて内部鏡筒(11)を押し上げており、弾着補正
軸(6)と内部鏡筒(11)は、いかなる場合でも接触した状態を保持している。内部鏡
筒支持枠(10)と内部鏡筒(11)の構造については図5にて詳細に説明する。
【0016】
前記の照準望遠鏡の構造から支点機構部を取り出した概念図が図5である。図3に示すよ
うに内部鏡筒部分は、内部鏡筒支持枠(10)、内部鏡筒(11)、その一端に取付けられた正立レンズ群(2)、内部鏡筒押え(12)により構成されている。内部鏡筒(11)の支点球体(11B)は、内部鏡筒支持枠(10)の球体受け面(10A)と内部鏡筒押え(12)の球体押さえ面(12A)により包み込まれ、球体受け面(10A)の中心点を中心に球体としてガタなく滑らかに摺動する。光軸(A)方向に対しては内部鏡筒押え(12)により前後の動きを規制されている。光軸(A)を中心とする回転方向に対しては、図5に示すように内部鏡筒支持枠(10)に回転止め穴(10B)が設けてあり、内部鏡筒(11)の支点ビス取付け穴(11A)にねじ込まれた支点ビス(13)により円周方向の回転を制限している。この事により、内部光学系の軸(B)は、支点球体(11B)の中心を支点として回転運動を可能としながら支点のガタ(ズレ)を抑制することを可能としている。
【0017】
内部鏡筒(11)の補正軸作用点(11D)と支点球体(11B)の中心間での距離、及
びレンズ室(11C)と支点球体(11B)の中心間での距離を最適に設定することによ
り(例えば1:2)弾着補正量を大きく確保する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一般的な照準望遠鏡の光学系レンズ配置図
【図2】一般的な照準望遠鏡の光学系レンズ配置図(内部光学系を傾けた時)
【図3】本発明に関する内部光学系を傾ける構造の一例
【図4】本発明に関する内部光学系を傾ける構造の一例(内部光学系を傾けた時)
【図5】本発明に関する支点機構の斜視図
【符号の説明】
【0019】
1 対物レンズ群
2 正立レンズ群
3 レチクル
4 接眼レンズ群
5 外部鏡筒
6 弾着補正軸
6A 弾着補正軸ネジ部
7 軸受け
8 板バネ
9 支持枠止めビス
10 内部鏡筒支持枠
10A 球体受け面
10B 回転止め穴
11 内部鏡筒
11A 支点ビス取付け穴
11B 支点球体
11C レンズ室
11D 補正軸作用点
12 内部鏡筒押え
12A 球体押さえ面
13 支点ビス
A 光軸(対物レンズ軸)
B 内部光学系光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズを保持する外部鏡筒と、対物レンズより入射した光線を正立像とする為の正立
レンズを保持し中央部に球体を持つ内部鏡筒と、前記外部鏡筒に対して内部鏡筒を傾斜さ
せる弾着調整装置部を有し、前記弾着調整装置の軸部は前記内部鏡筒の先端側面を押し、
内部鏡筒の球体部を支点とした反対側に正立レンズを配置することを特徴とする照準望遠
鏡。
【請求項2】
前記の照準望遠鏡は、中央部に球体形状を持つ前記内部鏡筒の一方に正立レンズを配置し、反対側に作用点として弾着調整装置部の調整軸を配置し、前記球体形状を包み込むように内部鏡筒支持部材を前記外部鏡筒に固定されている。前記内部鏡筒は球体部を中心にシーソー運動をする支点機構を持つことを特徴とする。
【請求項3】
前記の支点機構は、前記内部鏡筒の球体形状部を支点としてシーソー運動する為、弾着調
整装置部の調整軸の移動量より大きな移動量を正立レンズに与えることができることを特
徴とする照準望遠鏡。
【請求項4】
前記の支点機構は、支点、作用点、正立レンズの配置を最短に設定できる為、前記内部鏡
筒の質量を最小限にする事ができる。慣性質量が小さくなることにより衝撃に対して支点
の狂いを最小限に押えることを可能とする支点機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−69354(P2009−69354A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−236384(P2007−236384)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(305013149)有限会社 ディオン光学技研 (13)
【Fターム(参考)】