説明

熱アシスト用の光源ユニットを備えたヘッドの製造方法

【課題】光源ユニットとスライダとの接合において、両者の接合面の間の「倣い」を極めて高い状態にする。
【解決手段】背当て治具62に光源ユニット23を吸着させ、背当て治具を移動させて、光源40の発光中心4000と、スライダ22のスライダ背面2201に位置する光学系の受光端面との、スライダ背面内の方向における位置合わせを行い、背当て治具の吸着面620をスライダ背面に対して垂直な位置から傾けた状態で、光源ユニットをスライダのスライダ背面に接触させ、加重手段660を用いてユニット基板230のスライダと接合する接合面とは反対側の被加重面2301に荷重を加えることによって、光源ユニットの接合面をスライダのスライダ背面に倣わせ、光源ユニットとスライダとを接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体の書き込むべき部分を加熱し、この部分の異方性磁界を低下させて書き込みを行う熱アシスト磁気記録に用いる光源を備えた熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法に関し、特に、光源ユニットとスライダとを接合する熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法に関する。また、本発明は、そのような接合に用いる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネットの爆発的な普及に伴い、サーバ、情報端末等において、従来とは桁違いの大容量を有する多量のデータが保存され利用され始めており、この傾向は、今後とも加速度的に高まることが予測されている。そのような状況下で、大容量ストレージとしての磁気ディスク装置に代表される磁気記録装置に対する需要は、ますます拡大し、その高記録密度化への要請も、日を追ってエスカレートしている。
【0003】
この磁気記録技術において、さらなる高記録密度を達成するためには、磁気ヘッドが磁気記録媒体により微小な記録ビットを書き込むことが不可欠となる。現在、このより微小な記録ビットを安定して形成するために、媒体面に垂直な磁化成分を記録ビットとする垂直磁気記録技術が実用化され、さらに、磁化の熱安定性がより高い磁気記録媒体を使用可能とする熱アシスト磁気記録技術の開発が精力的に進められている。
【0004】
この熱アシスト磁気記録技術においては、記録ビットを形成する磁化がより安定するように磁気異方性エネルギーKUの大きな磁性材料で形成された磁気記録媒体を用いる一方で、この磁気記録媒体の書き込むべき部分を加熱することによってこの部分の異方性磁界を低下させ、その直後に書き込み磁界を印加して書き込みを行う。実際には、磁気記録媒体に近接場光等の光を照射することによって磁気記録媒体を加熱する方法が一般的である。この方法においては、十分に高い強度の光を安定的に所望の位置に供給するために、高出力の光源を磁気ヘッド内の何処に且つどのように設置するかが重要なポイントとなる。
【0005】
この光源の設置については、例えば、米国特許第7538978号明細書(US Patent No. 7,538,978 B2)は、レーザダイオードを含むレーザユニットをスライダの背面に搭載した構造を開示しており、また、米国特許出願公開第2008/0056073号明細書(UP Patent Publication No. 2008/0056073 A1)は、反射ミラーがレーザダイオード素子にモノリシックに集積された構造体をスライダの背面に搭載した構造を開示している。
【0006】
ここで、本願発明者等は、光源を備えた光源ユニットを、磁気ヘッド素子を備えたスライダの媒体対向面とは反対側の端面(背面)に接合して構成される、「複合スライダ構造」の熱アシスト磁気記録ヘッドを提案している。この「複合スライダ構造」は、例えば、米国特許出願公開第2008/043360号明細書(UP Patent Publication No. 2008/043360 A1)、及び米国特許出願公開第2009/052078号明細書(UP Patent Publication No. 2009/052078 A1)に開示されている。この「複合スライダ構造」の熱アシスト磁気記録ヘッドの利点として、
a)スライダにおいて媒体対向面と集積面とが垂直であるので、従来の薄膜磁気ヘッド製造工程と親和性が良いこと、
b)光源を媒体対向面から遠ざけることができ、光源に対して動作中に機械的な衝撃が直接及ぶ事態を回避することができること、
c)光源、例えばレーザダイオードと、磁気ヘッド素子とをそれぞれ個別に評価することができ、その結果、光源と磁気ヘッド素子とをすべてスライダ内に設けた場合のような、光源の歩留まりとスライダの歩留まりとが積算的に影響してヘッド全体の歩留まりが著しく低下する事態を回避することができること、
d)ヘッド内に、光ピックアップレンズ等の非常に高い精度を要する光学部品、さらには光ファイバ等の接続に特別な構造を要する光学部品を設ける必要がないので、製造工数を低減することができ、低コストであること
を挙げることができる。
【0007】
この「複合スライダ構造」の熱アシスト磁気記録ヘッドの製造においては、光源ユニットとスライダとの接合を適切に行うことが非常に重要となる。具体的には、十分な強度の接合を得ること、接合後の光源の放熱経路を確保すること、さらに十分に高い接合位置精度を得ることが必須の要件となる。
【0008】
最初に、接合強度に関しては、光源ユニットとスライダとを金属半田材料を用いて接合することで、十分な強度の接合を得ることが可能となる。この場合、光源ユニットとスライダとは金属半田材料を間に挟む形となる。その結果、磁気記録媒体上を浮上したヘッドによる書き込み動作時において、光源から発生した熱がユニット基板、金属半田材料、スライダ基板を順次伝導して磁気記録媒体に至る放熱経路を確保することも可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7538978号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0056073号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2008/043360号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/052078号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、接合に金属からなる半田材料を用いる場合、半田材料の厚みを適切に、例えば0.05〜2μm(マイクロメートル)程度の厚みに、設定する必要がある。半田材料の厚みが小さすぎると、当然に十分な接合強度を得ることが困難となる。一方、この半田材料の厚みが大きすぎると、光源ユニットとスライダとの間隔が空きすぎて、光源から放射された光がスライダ内の光学系に到達するまでに大きく減衰し、ヘッドとしての光利用効率が著しく低下してしまう場合が生じてしまう。さらに、半田材料が光源と光学系との間に回り込む不具合も懸念される。
【0011】
このように厚みが制限された半田材料を用いて光源ユニットとスライダとを接合する場合、両者の接合面の間の「倣い」を極めて高い状態にすることが重要となる。ここで、「倣い」とは、ある面の基準面に対する平行度、又は追随する度合いを意味する。実際、トラック幅方向の幅が例えば500μmである光源ユニットの接合面を、この接合面よりも十分に広いスライダの接合面に接合する場合を考える。ここで、光源ユニットの接合面がスライダの接合面に僅か0.5°(度)傾いた状態で接合前の位置合わせが終了し、この状態で半田材料が溶融されて接合が完了したとする。そうすると、光源ユニットの接合面の一端は、少なくともスライダの接合面から約4.4μmだけ離隔することになり、例え厚さが2μmの半田材料を用いていたとしても両接合面の間に隙間が生じてしまい、接合強度の低下が問題となる可能性が生じてしまう。なお、接合強度が低い場合、例えば洗浄などの後工程において、又はヘッド使用時において、光源ユニットがスライダから離脱するおそれが生じ得る。
【0012】
次に、接合位置精度に関しては、アクティブアラインメント法を実施することで、光源ユニットとスライダとの間で十分に高い位置精度を得ることが可能となる。ここで、アクティブアラインメント法とは、レーザダイオード等の光源と導波路等の光学系とを相対的に移動させている間、光源を実際に作動させ、光源から放射されて光学系の受光端に入射した光を光学系の発光端側でリアルタイムに監視し、この監視位置での光強度が最大となる状態を、光源と光学系との所望の相対位置とする位置合わせ方法である。このアクティブアラインメント法を実施する場合、光源ユニットの光源用の電極にプローブを押し当てて光源に給電しながら光源ユニットをスライダ上で移動させる必要がある。このための方法として、光源ユニットの電極が形成された面を覆わないように、光源ユニットをクランプで挟み、光源ユニットが保持されたこのクランプを、スライダを設置したステージ上で移動させて位置合わせを行う方法が存在する。
【0013】
しかしながら、この移動方法では、光源ユニット及びスライダの接合面の間の倣いを十分に高めることが困難である。実際、光源ユニットのユニット基板の各表面は、加工精度の限界から互いの直角度において誤差を有している。また、クランプの光源ユニットを挟む面も誤差を有しており、さらにステージに対するクランプの移動も調整限界故の誤差を含んでいる。従って、クランプをステージに近づけて光源ユニットをスライダに当てたとしても、両者の接合面の間の倣いを高い状態におくことは全く容易ではないのである。なお、これへの対策として、ステージにエアジンバル等の倣い調整機構を持たせることも考えられるが、ステージに設置されるスライダのサイズが極めて小さくその倣い調整効果がほとんど期待できない。また、接合のための装置も非常に複雑化してしまう。
【0014】
以上述べたことから理解されるように、光源ユニットとスライダとの接合においては、アクティブアラインメント法による位置合わせを行った上で、両者の接合面の間の「倣い」を極めて高い状態にすることが可能な方法の実現が、強く要請されるのである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明について説明する前に、本明細書において用いられる用語の定義を行う。本発明に係る磁気記録ヘッドのスライダ基板の集積面、又はユニット基板の光源設置面に形成された積層構造若しくは素子構造において、基準となる層又は素子から見て、基板側を「下方」とし、その反対側を「上方」とする。また、本発明に係る光源ユニット、スライダ及び磁気記録ヘッドの実施形態において、必要に応じ、いくつかの図面中、「X、Y及びZ軸方向」を規定している。ここで、Z軸方向は、上述した「上下方向」であり、+Z側がトレーリング側に相当し、−Z側がリーディング側に相当する。また、Y軸方向をトラック幅方向とし、X軸方向をハイト方向とする。
【0016】
本発明によれば、ユニット基板に設けられた光源を備えた光源ユニットと、スライダ基板に設けられた光学系を備えたスライダとを接合する、熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法であって、
吸着手段を備えた背当て治具を用いてユニット基板の光源設置面とは反対側のユニット背面を吸着し、
背当て治具を移動させて光源ユニットとスライダとを近接させ、光源の発光中心と、スライダの媒体対向面とは反対側のスライダ背面に位置する光学系の受光端面との、スライダ背面内の方向における位置合わせを行い、
背当て治具の吸着面をスライダ背面に対して垂直な位置から傾けた状態で、背当て治具をスライダに近づけて、光源ユニットをスライダのスライダ背面に接触させ、
加重手段を用いてユニット基板のスライダと接合する接合面とは反対側の被加重面に荷重を加えることによって、光源ユニットの接合面をスライダのスライダ背面に倣わせ、
光源ユニットとスライダとを接着する
ステップを備えた熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法が提供される。
【0017】
この本発明による製造方法によれば、アクティブアラインメント法等を用いて位置精度の高い位置合わせを行った上で、光源ユニットの接合面とスライダのスライダ背面との間の「倣い」を極めて高い状態にできるので、光源ユニットとスライダとの接合において、十分に高い接合強度と十分に高い接合位置精度とが実現される。ここで、アクティブアラインメント法とは、光源と導波路等の光学系とを相対的に移動させている間、光源を実際に作動させ、光源から放射されて光学系の受光端に入射した光を光学系の発光端側でリアルタイムに監視し、この監視位置での光強度が最大となる状態を、光源と光学系との所望の相対位置とする位置合わせ方法である。また、「倣い」とは、ある面の基準面に対する平行度、又は追随する度合いを意味する。さらに、この本発明による製造方法によれば、接合後の光源の放熱経路が確保されるので、光源の安定した発振動作が得られ、その結果、良好な熱アシスト作用を実現することができる。
【0018】
また、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法においては、加重手段による荷重の印加によって、光源ユニットをスライダ背面との接触個所を中心にして回転運動させて、光源ユニットの接合面をスライダ背面に倣わせることが好ましい。この場合、光源ユニットは、自身の端がスライダに接触した後、加重手段に与えられたトルクによって回転運動を行う。このような回転運動故に、光源ユニットの接合面はスライダ背面に滑らかに追随し、結果として良好に倣うことができるのである。さらにこの場合、スライダのスライダ背面に、光源ユニットとスライダとを接着するための接着材料層が前もって形成されており、光源ユニットの接触個所は、接着材料層に押し当てられた光源ユニットの端であることも好ましい。また、この接着材料層は、Sn、SnAu、SnCu、SnAl、SnSi、SnGe、SnMg、SnPb、SnAg、SnZn、SnBi、SnNi、SnPt、PbAu、PbMg、PbBi、及びBiAuからなる群から選択された1つの材料を含むことが好ましい。
【0019】
さらに、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法においては、光源ユニットに設けられた光源用の電極にプローブを押し当て、光源に給電して発光動作をさせ、光源からの光が光学系に入射するように光源の発光中心と光学系の受光端面との位置合わせを行うことが好ましい。また、背当て治具に備えられた吸着手段による光源ユニットを吸着する力は、光源ユニットに所定の荷重を加えることによって光源ユニットの位置又は方向が変化する程度の大きさを有することが好ましい。さらに、背当て治具に備えられた吸着手段は、背当て治具に設けられた少なくとも1つの吸着穴であり、少なくとも1つの吸着穴の一方の端に接続された排気系を駆動させて、光源ユニットを背当て治具に吸着することも好ましい。さらにまた、加重手段は、ユニット基板の被加重面に当たる部分が球面又は凸曲面をなす治具であることも好ましい。
【0020】
さらにまた、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法においては、光源ユニットの接合面とスライダのスライダ背面との間の摩擦係数が、加重手段と光源ユニットの被加重面との間の摩擦係数よりも高く設定されていることが好ましい。また、スライダのスライダ背面に接着材料層を前もって形成しておき、光源ユニットの接合面をスライダ背面に該接着材料層を間に挟みながら倣わせ、ユニット基板を透過する波長を含む光をユニット基板に照射して接着材料層を溶融させ、光源ユニットとスライダとを接着することも好ましい。
【0021】
また、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法の一実施形態として、ユニット基板の接合面の光源とは反対側の端が最初にスライダ背面に接触するように、背当て治具の吸着面をスライダ背面に対して垂直な位置から傾けた状態で、背当て治具をスライダに近づけて、光源ユニットをスライダ背面に接触させることが好ましい。この実施形態においては、吸着面は、スライダ背面に対して垂直な位置から0.5度以上であって3度以下の角度だけ傾いていることが好ましい。
【0022】
さらに、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法の他の実施形態として、ユニット基板の接合面の光源側の端が最初にスライダ背面に接触するように、背当て治具の吸着面をスライダ背面に対して垂直な位置から傾けた状態で、背当て治具をスライダに近づけて、光源ユニットをスライダ背面に接触させることも好ましい。この実施形態においては、吸着面は、光源ユニットをスライダ背面に接触させても光源がスライダ背面から離隔している程度に傾いていることが好ましい。また、加重手段を用いてユニット基板の被加重面に荷重を加えるとともに、背当て治具を光源ユニットから引き離すことも好ましく、背当て治具を、荷重によって回転運動する光源ユニットに追随させることも好ましい。
【0023】
本発明によれば、さらに、以上に述べた製造方法を実施するための、光源ユニットとスライダとの接合装置であって、
スライダを固定する固定治具と、
光源ユニットを吸着する吸着手段が設けられていて、ユニット基板のユニット背面と接面する吸着面を備えており、固定治具に固定されたスライダに対する光源ユニットの相対位置を調整することができるように移動させることが可能な背当て治具であって、吸着面を、固定治具に固定されたスライダの媒体対向面とは反対側のスライダ背面に垂直な位置から所定の角度だけ傾けることが可能となっている背当て治具と、
ユニット基板の被加重面に荷重を加えるための加重手段と、
光源の発光中心と光学系の受光端面とのスライダのスライダ背面内の方向における位置合わせを行うために、光源ユニットに設けられた光源用の電極に押し当てて光源に給電するためのプローブと、
背当て治具の移動、吸着手段による吸着、加重手段による荷重の印加、プローブの移動、及びプローブを介しての光源への給電を適宜制御するためのコントローラと
を備えた接合装置が提供される。
【0024】
この本発明による接合装置においては、光源の発光中心と光学系の受光端面との位置合わせを行う際に、プローブを介して給電された光源から放射され、光学系を伝播して、スライダの媒体対向面から放射された光を検出するための光検出器をさらに備えていることが好ましい。また、背当て治具に備えられた吸着手段は、背当て治具に設けられた少なくとも1つの吸着穴であり、少なくとも1つの吸着穴の一方の端が吸着面に達しており、他方の端が排気系に接続されていることも好ましい。さらに、加重手段は、ユニット基板の被加重面に当たる部分が球面又は凸曲面をなす治具であることも好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、光源ユニットとスライダとの接合において、両者の接合面の間の「倣い」を極めて高い状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による製造方法によって製造される熱アシスト磁気記録ヘッドの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る熱アシスト磁気記録ヘッドにおける、スライダのヘッド素子部、光源ユニットのレーザダイオード、及びそれらの周辺の構成を概略的に示す、図1のA面による断面図である。
【図3】導波路、近接場光発生素子及び主磁極の構成を概略的に示す斜視図である。
【図4】本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法を実施するための、光源ユニットとスライダとの接合装置の一実施形態における要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【図5a】図4に示した本発明による接合装置における光源ユニットの保持機構に対する比較例を概略的に示す斜視図である。
【図5b】光源ユニットの接合面とスライダのスライダ背面との間の「倣い」が不十分であった場合の両者の接合状態を示す概略図である。
【図6】本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法のステップを概略的に示すフローチャートである。
【図7a1】光源ユニットとスライダとを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の製造方法の第1の実施形態を示す概略図である。
【図7a2】光源ユニットとスライダとを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の製造方法の第1の実施形態を示す概略図である。
【図7b】光源ユニットとスライダとを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の製造方法の第1の実施形態を示す概略図である。
【図7c】光源ユニットとスライダとを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の製造方法の第1の実施形態を示す概略図である。
【図7d】光源ユニットとスライダとを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の製造方法の第1の実施形態を示す概略図である。
【図7e】光源ユニットとスライダとを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の製造方法の第1の実施形態を示す概略図である。
【図7f1】光源ユニットとスライダとを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の製造方法の第1の実施形態を示す概略図である。
【図7f2】光源ユニットとスライダとを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の製造方法の第1の実施形態を示す概略図である。
【図7g】光源ユニットとスライダとを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の製造方法の第1の実施形態を示す概略図である。
【図7h】光源ユニットとスライダとを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の製造方法の第1の実施形態を示す概略図である。
【図8a1】光源ユニットとスライダとを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法の第2の実施形態を示す概略図である。
【図8a2】光源ユニットとスライダとを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法の第2の実施形態を示す概略図である。
【図8b】光源ユニットとスライダとを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法の第2の実施形態を示す概略図である。
【図8c1】光源ユニットとスライダとを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法の第2の実施形態を示す概略図である。
【図8c2】光源ユニットとスライダとを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法の第2の実施形態を示す概略図である。
【図8d】光源ユニットとスライダとを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法の第2の実施形態を示す概略図である。
【図9】本発明に係る磁気ディスク装置の一実施形態における要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【図10】本発明に係るHGAの一実施形態における要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、同一の要素は、同一の参照番号を用いて示されている。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
【0028】
図1は、本発明による製造方法によって製造される熱アシスト磁気記録ヘッドの一実施形態を示す斜視図である。
【0029】
図1によれば、熱アシスト磁気記録ヘッド21は、熱アシスト用の光源としてのレーザダイオード40を備えた光源ユニット23と、光学系31を備えたスライダ22とが、位置を合わせられ接合されることによって製造される。
【0030】
ここで、スライダ22は、適切な浮上量を得るように加工された媒体対向面である浮上面(ABS)2200を有するスライダ基板220と、ABS2200に垂直であってABS2200と隣り合う集積面2202上に形成された、光学系31を含むヘッド素子部221とを備えている。一方、光源ユニット23は、接合面2300を有するユニット基板230と、接合面2300に垂直であって接合面2300と隣り合う光源設置面2302に設けられた光源としてのレーザダイオード40とを備えている。また、これらスライダ22と光源ユニット23とは、スライダ基板220のABS2200とは反対側のスライダ背面2201とユニット基板230の接合面2300とを対向させて、接着材料層である半田層58を間に挟む形で互いに接合されている。
【0031】
(光源ユニット)
同じく図1に示された光源ユニット23において、レーザダイオード40は、端面発光型の半導体レーザダイオードであってよい。このレーザダイオード40は、熱アシスト用のレーザ光を放射する発光中心4000を有しており、発光中心4000が光学系31の受光端面430と対向するように、ユニット基板230の光源設置面2302に設置されている。また、レーザダイオード40は、p電極40i(図2)を底にして(光源設置面2302に向けて)ユニット基板230に接着されていることが好ましい。一般に端面発光型レーザダイオードにおいては、最も発熱する活性層(発光中心)付近がp電極側に偏って存在する。従って、p電極40iを底にすることによって活性層がよりユニット基板230に近くなり、ユニット基板230をヒートシンクとしてより有効に機能させることができる。その結果、ヘッド21による書き込み動作時においても、レーザダイオード40からの熱を受けたユニット基板230から、半田層58、スライダ基板220を順次伝導して磁気記録媒体に至る放熱経路を確保することが可能となるのである。
【0032】
なお、このようにp電極40iを底にしてレーザダイオード40を設置した場合、レーザダイオード40の上面は、n電極40a(図2)の表面となる。このn電極40aは、後に図7cを用いて詳述するアクティブアラインメントにおいて、プローブ67が当てられる電極である。
【0033】
同じく図1によれば、光源ユニット23の光源設置面2302に、光源電極410及び引き出し電極411が設けられている。光源電極410は、レーザダイオード40のp電極40i(図2)と直接電気的に接続される電極である。また、引き出し電極411は、光源電極410から引き出された電極であり、後に図7cを用いて詳述するアクティブアラインメントにおいて、同じくプローブ67が当てられる電極である。なお、これら引き出し電極411及びレーザダイオード40のn電極40aは、光源ユニット23とスライダ22とを接合した後に、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)17(図10)の配線部材203の接続パッドに、ワイヤボンディング、ソルダー・ボール・ボンディング(SBB)等の方法によって電気的に接続される。これにより、レーザダイオード40に電力が供給可能となる。
【0034】
なお、これら光源電極410及び引き出し電極411は、光源設置面2302上に設けられていてAl23(アルミナ)、SiO2等の絶縁材料から形成された絶縁層56上に設けられており、ユニット基板230とは電気的に絶縁されていることが好ましい。また、光源電極410及び引き出し電極411は、例えば厚さ10nm(ナノメートル)程度のTa、Ti等からなる下地層と、この下地層上に形成された例えば厚さ1〜5μm(マイクロメートル)程度のAu、Cu、Au合金等の導電材料からなる導電層とから構成されることができる。
【0035】
同じく図1において、ユニット基板230は、アルチック(Al23−TiC)、SiO2等のセラミック材料で形成されていてもよく、又はSi、GaAs、SiC等の半導体材料で形成されていることも好ましい。ユニット基板230がこれらの半導体材料で形成されている場合、後に図7gを用いて詳述するように、Nd−YAGレーザ光等の光を、光源ユニット23に入射させ、半田層58を溶融させて、光源ユニット23とスライダ22とを接合することが可能となる。
【0036】
また、ユニット基板230は、スライダ基板220よりも一回り小さい大きさを有する。ただし、ユニット基板230のトラック幅方向の(Y軸方向の)幅WUNは、レーザダイオード40のトラック幅方向の(Y軸方向の)幅WLAよりも大きくなっており、光源電極410上にレーザダイオード40を設置しても、引き出し電極411が、光源設置面2302上で露出して設けられるようになっている。例えば、スライダ基板220にフェムトスライダを用いた場合、ユニット基板230として、(X軸方向の)厚みTUNが例えば350μmであり、トラック幅方向の幅WUNが例えば500μmであって、(Z軸方向の)長さLUNが例えば300μmであるサイズのものを用いることができる。
【0037】
なお、ユニット基板230の光源設置面2302とは反対側の面2303は、後に図7a2及び図8a2を用いて詳述するように、光源ユニット23を保持する背当て治具62の吸着面620に接面して吸着される面であり、以後、ユニット背面2303と呼ぶ。また、ユニット基板230の接合面2300とは反対側の面2301は、後に図7f1,7f2,8c1,8c2を用いて詳述するように、接合面2300の「倣い」を高めるよう光源ユニット23に荷重を加えるために、先球棒65が押し付けられる面であり、以後、被加重面2301と呼ぶ。ここで、「倣い」とは、ある面の基準面に対する平行度、又は追随する度合いを意味する。
【0038】
(スライダ)
同じく図1に示されたスライダ22において、集積面2202上に形成されたヘッド素子部221は、磁気ディスク10(図9)からデータを読み出すためのMR素子33と磁気ディスク10にデータを書き込むための電磁変換素子34とから構成される磁気ヘッド素子32と、レーザダイオード40の発光中心4000から放射されたレーザ光を受け、このレーザ光のスポットサイズを変換(小さく)した上でこのレーザ光を導波路35に導くスポットサイズ変換素子43と、スポットサイズが変換されたレーザ光を媒体対向面であるヘッド端面2210まで又はその近傍まで導く導波路35と、導波路35を伝播するレーザ光と結合して熱アシスト用の近接場光を発生させる近接場光発生素子36と、磁気ヘッド素子32、スポットサイズ変換素子43、導波路35及び近接場光発生素子36を覆うように集積面2202上に形成された保護層38とを含む。ここで、スポットサイズ変換素子43と、導波路35と、近接場光発生素子36とが、ヘッド21(ヘッド素子部221)内における近接場光生成用の光学系31を構成する。なお、スポットサイズ変換素子43及び導波路35は、その周囲を保護層38で被覆されており、光の伝搬においてコアとしての機能を果たす。一方、周囲を被覆する保護層38部分は、クラッドとしての機能を果たす。
【0039】
MR素子33、電磁変換素子34、及び近接場光発生素子36の一端は、媒体対向面であるヘッド端面2210に達している。ここで、このヘッド端面2210とABS2200とが、熱アシスト磁気記録ヘッド21全体の媒体対向面をなしている。実際の書き込み又は読み出し時においては、熱アシスト磁気記録ヘッド21が回転する磁気ディスク10の表面上において流体力学的に所定の浮上量をもって浮上する。この際、MR素子33及び電磁変換素子34それぞれの一端が、磁気ディスク10の磁気記録層の表面と適当なマグネティックスペーシングを介して対向することになる。この状態において、MR素子33が磁気記録層からのデータ信号磁界を感受して読み出しを行い、電磁変換素子34が磁気記録層にデータ信号磁界を印加して書き込みを行う。ここで、書き込みの際、光源ユニット23のレーザダイオード40からスポットサイズ変換素子43及び導波路35を通って伝播してきたレーザ光が、近接場光発生素子36で近接場光NF(図3)に変換される。この近接場光NFが磁気記録層の書き込みを行う部分に照射され、この磁気記録層の部分を加熱する。この加熱によって、同部分の異方性磁界(保磁力)が書き込みを行うことが可能な値にまで低下し、この低下した部分に電磁変換素子34によって書き込み磁界WF(図3)が印加されることによって、熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0040】
同じく図1によれば、スポットサイズ変換素子43は、レーザダイオード40から放射されたレーザ光を、トラック幅方向(Y軸方向)の幅WSCを有する受光端面430で受け取り、できるだけ低損失でより小さなスポット径のレーザ光に変換した上で、導波路35の受光端面352に導く光学素子である。スポットサイズ変換素子43は、本実施形態において、受光端面430から入射したレーザ光の進行方向(−X方向)に沿って、トラック幅方向(Y軸方向)の幅が幅WSCから徐々に狭くなっている下部伝播層と、トラック幅方向(Y軸方向)の幅が幅WSCからより急激に狭くなっている上部伝播層とを備えている。受光端面430から入射したレーザ光は、このような積層構造を伝播するにつれてそのスポットサイズを小さく変換させられて、導波路35の受光端面352に至る。
【0041】
なお、スポットサイズ変換素子43の受光端面430位置での幅WSCは、例えば1〜10μm程度とすることができる。また、受光端面430位置での(Z軸方向の)厚さTSCも、例えば1〜10μm程度とすることができる。さらに、スポットサイズ変換素子43は、周囲を被覆する保護層38の構成材料の屈折率nOCよりも高い屈折率を有する材料から構成されており、後述する導波路35を構成する誘電材料と同一の材料で形成されることができる。この場合、これらスポットサイズ変換素子43及び導波路35は、一体に形成されていてもよい。
【0042】
また、導波路35は、本実施形態において、スポットサイズ変換素子43から放射されるレーザ光を受ける受光端面352から、ヘッド端面2210側の端面350まで、集積面2202に平行に伸長している。ここで、端面350はヘッド端面2210の一部となっていてもよく、またはヘッド端面2210から所定の距離だけ後退していてもよい。また、導波路35の一側面の端面350近傍部分は、近接場光発生素子36と対向している。受光端面352から入射し導波路35を伝播するレーザ光(導波路光)は、この近接場光発生素子36と対向する部分に至り、近接場光発生素子36と結合可能となる。
【0043】
さらに、同じく図1によれば、スライダ22の保護層38の上面上に、磁気ヘッド素子32用である一対の端子電極370及び一対の端子電極371が設けられている。これら端子電極370及び371も、HGA17(図10)に設けられた配線部材203の接続パッドに、ワイヤボンディング、SBB等の方法によって電気的に接続される。
【0044】
また、スライダ基板220は、例えば、(X軸方向の)厚みTSLが230μmであり、トラック幅方向の(Y軸方向の)幅WSLが700μmであり、(Z軸方向の)長さLSLが850μmである、いわゆるフェムトスライダとすることができる。フェムトスライダは、高記録密度に対応可能な薄膜磁気ヘッドの基板として一般的に使用されており、現在使用されているスライダの中で最も小さいサイズの規格を有する。なお、スライダ基板220は、アルチック(Al23−TiC)、SiO2等のセラミック材料で形成可能である。
【0045】
(熱アシスト磁気記録ヘッド)
以上に説明したように、熱アシスト磁気記録ヘッド21は、スライダ22と光源ユニット23とを接着、接合した「複合スライダ構造」を有している。従って、スライダ22及び光源ユニット23を、それぞれ個別に製造した上で両者を接合することによって、ヘッド21を製造することができる。その結果、例えば、前もって光源ユニット23、スライダ22それぞれの特性評価、信頼性評価を行って、良品のみをヘッドの製造に使用すれば、ヘッド製造工程でのヘッド21自体の製造歩留まりが、光源ユニット23、スライダ22それぞれの不良品率によって深刻な影響を受ける事態が回避される。
【0046】
また、この「複合スライダ構造」の熱アシスト磁気記録ヘッド21の製造においては、光源ユニット23とスライダ22との接合を適切に行うことが非常に重要となる。具体的には、十分な強度の接合を得ること、十分に高い接合位置精度を得ること、さらには接合後のレーザダイオード40の放熱経路を確保することが必須の要件となる。後に、図7a1〜7h(第1の実施形態)及び図8a1〜8d(第2の実施形態)を用いて、これらの要件を満たす本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の製造方法を詳細に説明する。
【0047】
図2は、熱アシスト磁気記録ヘッド21における、スライダ22のヘッド素子部221、光源ユニット23のレーザダイオード40、及びそれらの周辺の構成を概略的に示す、図1のA面による断面図である。
【0048】
(レーザダイオード)
図2によれば、レーザダイオード40は端面発光型である。このレーザダイオード40として、例えば、InP系、GaAs系、GaN系等の、通信用、光学系ディスクストレージ用又は材料分析用等として通常用いられているものが使用可能である。また、放射されるレーザ光の波長λLは、例えば375nm〜1.7μmの範囲内の値に設定可能である。この図2に示したレーザダイオード40は、例えば、上面側から、n電極40aと、n−GaAs基板40bと、n−InGaAlPクラッド層40cと、第1のInGaAlPガイド層40dと、多重量子井戸(InGaP/InGaAlP)等からなる活性層40eと、第2のInGaAlPガイド層40fと、p−InGaAlPクラッド層40gと、p電極下地層40hと、p電極40iとが順次積層された構造を有する。さらに、このレーザダイオード40の多層構造の劈開面の前後には、全反射による発振を励起するための反射層510及び511が形成されている。ここで、反射層510の活性層40eの位置に発光中心4000が存在する。また、本実施形態において、n電極40aは、n−GaAs基板40b上に形成された厚さが例えば0.1μm程度のAu又はAu合金層とすることができる。
【0049】
なお当然に、レーザダイオード40の構成は以上に述べたものに限定されるものではない。しかしながら、いずれにしてもレーザダイオード40の設置においては、p電極40iを底面として光源電極410に接着させることが好ましい。一般に、端面発光型のレーザダイオードでは、活性層40e(発光中心4000)は、積層方向(Z軸方向)において、n電極40aよりもp電極40iにより近い位置にある。従って、動作時の発熱量が最も多い活性層40eにより近いp電極40iを底面としてレーザダイオード40を設置することによって、ユニット基板230を光源のヒートシンクとしてより有効に機能させることができるのである。実際、レーザダイオード40から発生する熱量の適切な処理は、レーザダイオード40の発振動作を正常に維持するために非常に重要となる。
【0050】
さらに、このレーザダイオード40の駆動においては、磁気ディスク装置内の電源が使用可能である。磁気ディスク装置は、通常、例えば2〜5V程度の電源を備えており、レーザ発振動作には十分の電圧を有している。また、レーザダイオード40のトラック幅方向の(Y軸方向の)幅WLA(図1)は、ユニット基板230の幅WUNよりも小さく設定される。一方、レーザダイオード40の長さLLAは、反射層510及び511間の距離である共振器長に概ね相当するものであるが、十分な光出力を得るため、例えば300μm又はそれ以上であることが好ましい。さらに、レーザダイオード40のp電極40iとユニット基板230上の光源電極410との接着は、例えばAuSn合金等からなる半田を用いた半田付けによって実施可能である。
【0051】
(ヘッド素子部)
同じく図2によれば、ヘッド素子部221は、MR素子33、電磁変換素子34、及び光学系31を備えている。
【0052】
このうち、MR素子33は、MR積層体332と、対となってMR積層体332及び絶縁層381を挟む位置に配置されており軟磁性材料から形成された下部シールド層330及び上部シールド層334とを含み、集積面2202上に形成されたAl23(アルミナ)等の絶縁材料からなる下地層380上に形成されている。MR積層体332は、MR効果を利用して信号磁界を感受する感磁部であり、例えば、面内通電型巨大磁気抵抗(CIP-GMR)積層体、垂直通電型巨大磁気抵抗(CPP-GMR)積層体、又はトンネル磁気抵抗(TMR)積層体とすることができる。
【0053】
また、電磁変換素子34は、垂直磁気記録用であって、上部ヨーク層340と、主磁極3400と、書き込みコイル層343と、コイル絶縁層344と、下部ヨーク層345と、下部シールド3450とを備えている。
【0054】
上部ヨーク層340は、コイル絶縁層344を覆うように形成されており、主磁極3400は、Al23(アルミナ)等の絶縁材料からなる絶縁層385上に形成されている。これら上部ヨーク層340及び主磁極3400は、互いに磁気的に接続されており、書き込みコイル層343に書き込み電流を印加することによって発生した磁束を、書き込みがなされる磁気ディスク10(図9)の磁気記録層(垂直磁化層)まで収束させながら導くための導磁路となっている。主磁極3400は、ヘッド端面2210に達した、トラック幅方向の小さな幅WP(図3)を有する端面3400eを有している。この幅WPは、書き込み磁界WFのトラック幅方向(Y軸方向)における分布の幅を規定し、例えば0.05〜0.5μm程度とすることができる。主磁極3400は、上部ヨーク層340よりも高い飽和磁束密度を有する軟磁性材料から形成されていることが好ましく、例えば、Feが主成分である鉄系合金の軟磁性材料から形成される。
【0055】
書き込みコイル層343は、絶縁層385上に形成されたAl23(アルミナ)等の絶縁材料からなる絶縁層3421上において、1ターンの間に少なくとも下部ヨーク層345と上部ヨーク層340との間を通過するように形成されており、バックコンタクト部3402を中心として巻回するスパイラル構造を有している。この書き込みコイル層343は、例えばCu(銅)等の導電材料から形成されている。ここで、例えば加熱キュアされたフォトレジスト等の絶縁材料からなる書き込みコイル絶縁層344が、書き込みコイル層343を覆っており、書き込みコイル層343と上部ヨーク層340との間を電気的に絶縁している。書き込みコイル層343は、本実施形態において1層であるが、2層以上でもよく、又はヘリカルコイルでもよい。さらに、巻き数も図2での数に限定されるものではない。
【0056】
なお、バックコンタクト部3402には、X軸方向に伸長した貫通孔が設けられており、この貫通孔の中を、導波路35及び導波路35を被覆する絶縁層が通り抜けている。この貫通孔内においては、バックコンタクト部3402の内壁と導波路35とが所定の距離、例えば少なくとも1μm離隔している。これにより、バックコンタクト部3402による導波路光の吸収が防止される。
【0057】
下部ヨーク層345は、Al23(アルミナ)等の絶縁材料からなる絶縁層383上に形成されており、磁気ディスク10の磁気記録層(垂直磁化層)の下に設けられた軟磁性裏打ち層から戻ってきた磁束を導く導磁路としての役割を果たす。この下部ヨーク層345は軟磁性材料から形成されている。また、下部シールド3450は、下部ヨーク層345と磁気的に接続されていてヘッド端面2210に達した導磁路の一部である。下部シールド3450は、近接場光発生素子36を介して主磁極3400と対向しており、主磁極3400から発して広がった磁束を取り込む役割を果たす。下部シールド3450は、高飽和磁束密度を有する、NiFe(パーマロイ)又は主磁極3400と同様の鉄系合金材料等から形成されることが好ましい。なお、絶縁層381、382、383、384、385及び386が、保護層38を構成することになる。
【0058】
同じく図2によれば、光学系31は、スポットサイズ変換素子43、導波路35、及び近接場光発生素子36を備えている。
【0059】
このうちのスポットサイズ変換素子43によってスポットサイズを変換(小さく)されたレーザ光53は、導波路35の受光端面352に入射し導波路35中を伝播する。導波路35は、受光端面352から、バックコンタクト部3402に設けられたX軸方向の貫通孔の中を通って、ヘッド端面2210側の端面350まで伸長している。さらに、近接場光発生素子36は、導波路35を伝播してきたレーザ光(導波路光)53を近接場光に変換する素子である。導波路35のヘッド端面2210側の部分及び近接場光発生素子36は、下部シールド3450(下部ヨーク層345)と主磁極3400(上部ヨーク層340)との間に設けられている。以上に述べた光学系31について、次に図3を用いてさらに説明を行う。
【0060】
図3は、導波路35、近接場光発生素子36及び主磁極3400の構成を概略的に示す斜視図である。同図においては、書き込み磁界及び近接場光が磁気記録媒体に向かって放射される位置を含むヘッド端面2210が、左側に位置している。
【0061】
図3によれば、近接場光を発生させるためのレーザ光(導波路光)53を端面350に向かって伝播させるための導波路35と、導波路光53を受けて近接場光NFを発生させる近接場光発生素子36とが設けられている。また、導波路35の側面354の一部分と、近接場光発生素子36の下面362の一部との間に挟まれた部分が、緩衝部50となっている。この緩衝部50は、導波路35の屈折率よりも低い屈折率を有する例えば誘電材料から形成されており、導波路光53を近接場光発生素子36に結合させる役割を果たす。なお、図1〜3に示されるような光源及び光学系において、レーザダイオード40の発光中心4000から放射されるレーザ光は、電場の振動方向がZ軸方向であるTMモードの偏光を有することが好ましい。
【0062】
同じく図3によれば、近接場光発生素子36は、本実施形態において、Au、Ag、又はAu若しくはAgを含む合金等の金属材料から形成されていて、三角形状のYZ面による断面を有している。また、特にヘッド端面2210に達した端面36aは、リーディング側(−Z側)に、底辺と対向した頂点を有する二等辺三角形の形状を有している。近接場光発生素子36は、導波路35を伝播する導波路光53を近接場光に変換し、端面36aから近接場光NFを放射する。この近接場光NFが磁気ディスク10(図9)の磁気記録層に向けて照射され、磁気ディスク10の表面に達し、磁気ディスク10の磁気記録層部分を加熱する。これにより、その部分の異方性磁界(保磁力)が書き込みを行うことが可能な値にまで低下する。その直後、この部分に、主磁極3400から発生する書き込み磁界WFを印加して書き込みを行う。以上、熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0063】
なお、ヘッド素子部221に設けられた熱アシスト用の光を発生させるための光学系は、以上に述べたものに限定されるものではない。例えば、別の形状、構造を有する近接場光発生素子を用いた光学系、又は金属片からなるプラズモン・アンテナを導波路端に配した光学系を用いることも可能である。
【0064】
図4は、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の製造方法を実施するための、光源ユニット23とスライダ22との接合装置の一実施形態における要部の構成を概略的に示す斜視図である。
【0065】
図4によれば、光源ユニット23とスライダ22とを接合するための接合装置60は、スライダ22を固定する固定治具であるステージ61と、光源ユニット23を吸着する吸着手段である少なくとも1つの吸着穴630が設けられた背当て治具62と、ユニット基板230の被加重面2301に荷重を加える加重手段としての先球棒65と、光源ユニット23に設けられたレーザダイオード40用の電極に押し当ててレーザダイオード40に給電するためのプローブ67とを備えている。
【0066】
また、接合装置60はコントローラ69を有している。このコントローラ69は、背当て治具駆動装置64を介して背当て治具62の移動及び回転を、排気装置63を介して吸着穴630による吸着を、加重装置660及びロードセル661を介して先球棒65による荷重の印加を、プローブ駆動装置681を介してプローブ67の移動を、さらに、アクティブアラインメント用電源680及びプローブ67を介してのレーザダイオード40への給電をそれぞれ適宜制御する。なお、このコントローラ69は、以上に述べた制御を適宜行うためのソフトウエア及び記録媒体を備えたコンピュータであってもよい。
【0067】
さらに、背当て治具62は、ユニット基板230のユニット背面2303と接面する吸着面620を有している。吸着穴630は背当て治具62を貫通しており、吸着穴630の一方の端はこの吸着面620に達していて、他方の端は排気装置63に接続されている。このように、背当て治具62は光源ユニット23の1つの面2303を覆うのみであるので、背当て治具62に取り付けられた光源ユニット23に対して、外部から種々の治具、デバイスを近づけることが非常に容易になる。
【0068】
さらに、背当て治具62は、背当て治具駆動装置64に接続されており、ステージ61に固定されたスライダ22に対する光源ユニット23の相対位置を調整することができるように、移動させることができる。また、この治具駆動装置64は、回転部640を有している。背当て治具62は、この回転部640に固着されており、回転部640とともにY軸方向の軸の周りに回転することができる。その結果、吸着面620を、ステージ61に固定されたスライダ22のスライダ背面2201に垂直な位置から所定の角度θJG1(図7a2)又は角度θJG2(図8a2)だけ傾けることが可能となっている。
【0069】
同じく図4によれば、先球棒65は、球面又は凸曲面をなす端部を有しており、この端部をもって光源ユニット23を押さえ付け荷重を加える。先球棒65は、加重装置660及び重量センサであるロードセル661に接続されていて、所定の荷重をユニット基板230の被加重面2301に印加する。ここで、被加重面2301は、ユニット基板230の接合面2300とは反対側の上面である。なお、先球棒65に代わる変更態様として、先端部が三角錐台、四角錐台、円錐台等の、非常に微細な頂面を有する形状を備えた棒を加重手段として用いてもよい。
【0070】
ここで、光源ユニット23の接合面2300とスライダ22のスライダ背面2201との間の静摩擦係数が、先球棒65と光源ユニット23の被加重面2301との間の静摩擦係数よりも高く設定されていることが好ましい。特に、スライダ背面2201に例えばビッカース硬度が比較的小さいSn(スズ)又はSn合金等からなる半田層58を設けておく一方、先球棒65の先端の丸加工を適切に行い、又はこの先端をダイヤモンドライクカーボン(DLC)等でコーティングすることも好ましい。これにより、後に図7f1又は図8c1を用いて詳細に説明するように、接合面2300の端をこの半田層58に接触させ、先球棒65で被荷重面2301に荷重を加えた際、この接合面2300の端が滑らずにとどまるようにすることが可能となり、接合面2300とスライダ背面2201とを倣わした際の光源ユニット23とスライダ22との位置精度を、十分に高い状態にすることが可能となる。
【0071】
また、プローブ67は、アクティブアラインメント法を実施するための金属針である。プローブ67は、アクティブアラインメント用電源680に電気的に接続されており、本実施形態において光源ユニット23の光源設置面2302に設けられた引き出し電極411とレーザダイオード40の上面をなすn電極40aとに押し当てられ、レーザダイオード40に電力を供給する。なお、このアクティブアラインメント法においては、レーザダイオード40の発光中心4000と光学系31の受光端面430とのスライダ背面2201内の方向(YZ面内の方向)における位置合わせを行うことになる。従って、プローブ67は、プローブ駆動装置681に接続されており、この位置合わせの間、レーザダイオード40の電極に押し当てられた状態を維持できるように移動可能となっている。
【0072】
図5aは、図4に示した本発明による接合装置60における光源ユニット23の保持機構に対する比較例を概略的に示す斜視図である。また、図5bは、光源ユニット23の接合面2300とスライダ22のスライダ背面2201との間の「倣い」が不十分であった場合の両者の接合状態を示す概略図である。ここで、「倣い」とは、ある面の基準面に対する平行度、又は追随する度合いを意味する。
【0073】
図5aによれば、本比較例においては、クランプ70が光源ユニット23を保持している。具体的には、クランプ70の2つのアーム700及び701が、それぞれ光源ユニット23のトラック幅方向(Y軸方向)で対向する2つの側面2304及び2305に接面する形で、光源ユニット23を挟んでいる。従って、光源ユニット23のクランプ70に対するZ軸を中心とした回転移動は一切できないことになる。また一方で、光源ユニット23のユニット基板230の各表面は、加工精度の限界から互いの直角度において誤差を有している。さらに、クランプ70のアーム700及び701の光源ユニット23を挟む面も誤差を有しており、さらにまた、ステージ71に対するクランプ70の移動も調整限界故の誤差を含んでいるのである。以上に述べたことから、例え、クランプ70のステージ71に対する位置の誤差、向きの誤差を極力小さく抑えた上で、クランプ70をステージ71に近づけて、光源ユニット23をスライダ22に当てたとしても、光源ユニット23の接合面2300とスライダ22のスライダ背面2201との間の倣いを高い状態におくことは容易ではないことが理解される。
【0074】
ここで、図5bを用いて、光源ユニット23の接合面2300とスライダ22のスライダ背面2201との間の倣いが不十分であった場合の両者の接合状態を説明する。
【0075】
図5bに示すように、トラック幅方向(Y軸方向)の幅WUNが例えば500μmである光源ユニット23(ユニット基板230)がスライダ22に接合された状態を考える。ここで、スライダ22のスライダ背面2201には半田層58が前もって設けられており、半田層58の厚みdERは例えば2μmとする。なお、半田層58の厚みdERを相当に大きく、例えば2μmを超えて大きくすることは好ましくない。半田層58の厚みが大きすぎると、光源ユニット23とスライダ22との間隔が空きすぎて、レーザダイオード40から放射された光がスライダ22内の光学系に到達するまでに大きく減衰し、ヘッドとしての光利用効率が著しく低下してしまう場合が生じる。さらに、半田層58がレーザダイオード40と光学系との間に回り込む不具合も懸念されるのである。
【0076】
ここで、光源ユニット23の接合面2300がスライダ22のスライダ背面2201に僅かθER=0.5°(度)傾いた状態で接合前の位置合わせが終了し、この状態で半田材料が溶融されて接合が完了したとする。そうすると、光源ユニット23の接合面2300の端2300aは半田層58によってスライダ背面2201に接着されるが、反対側の端2300bは、端2300aと比較して+X方向にdER=4.4μmだけスライダ背面2201からより離隔する。従って、例え厚さが2μmの半田層58を用いたとしても、僅かθER=0.5°の傾きが原因となって、端2300b近傍とスライダ背面2201との間に隙間が生じてしまい、接合強度の低下が問題となる可能性が生じてしまう。なお、接合強度が低い場合、例えば洗浄などの後工程において、又はヘッド使用時において、光源ユニット23がスライダ22から離脱するおそれが生じ得る。
【0077】
図6は、本発明による薄膜磁気ヘッド21の製造方法のステップを概略的に示すフローチャートである。同図のフローチャートは、第1の実施形態(図7a1〜7h)及び第2の実施形態(図8a1〜8d)を共に示すものとなっている。
【0078】
図6によれば、最初に、光源ユニット23及びスライダ22を接合装置60にセットする(ステップS1:図7a1,7a2,8a1,8a2)。具体的には、吸着手段630を備えた背当て治具62に光源ユニット23を取り付け、ステージ61にスライダ22を取り付ける。次いで、背当て治具62を移動させて光源ユニット23とスライダ22とを近接させ、両者のスライダ背面2201内(YZ面内)の方向における位置合わせを行う(ステップS2:図7c)。具体的には、レーザダイオード40の発光中心4000と、スライダ22のスライダ背面に2201に位置する受光端面430との、スライダ背面2201内(YZ面内)の方向における位置合わせを行う。
【0079】
次いで、背当て治具62の吸着面620をスライダ背面2201に対して垂直な位置から傾けた状態で、背当て治具62をスライダ22に近づけて、光源ユニット23をスライダ22のスライダ背面2201に接触させる(ステップS3:図7e,8b)。その後、先球棒65を用いてユニット基板230の被加重面2301に荷重を加えることによって、光源ユニット23の接合面2300をスライダ22のスライダ背面2201に倣わせる(ステップS4:図7f1,7f2,8c1,8c2,8d)。最後に、ユニット基板230を透過する波長を含む光をユニット基板230に照射して半田層58を溶融させ、光源ユニット23とスライダ22とを接着する(ステップS5:図7g)。
【0080】
図7a1〜7hは、光源ユニット23とスライダ22とを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の製造方法の第1の実施形態を示す概略図である。
【0081】
図7a1〜7a2によれば、最初に、吸着穴630を備えた背当て治具62に光源ユニット23を保持させる。具体的には、背当て治具62の吸着穴630が達した吸着面620に、光源ユニット23のユニット背面2303を吸着させる。この吸着穴630による光源ユニット23の吸着は、吸着穴630の一端に接続された排気装置63を作動させ吸着穴630内の気圧を下げることによって行われる。ここで、光源ユニット23を吸着する力の大きさは、吸着穴630の内径、吸着穴630の設置数、排気装置63による排気の程度等に依存し、相当の範囲で調整可能である。本実施形態においては、この吸着力は、光源ユニット23に所定の荷重を加えることによって光源ユニット23の位置又は方向が変化する程度の大きさを有するように調整される。これにより、後の工程である先球棒65による接合面2300の倣いの調整を有効に行うことができる。
【0082】
また、光源ユニット23は、自身の接合面2300が背当て治具62の下面621よりも下方(−X側)に位置するように吸着される。これにより、背当て治具62をスライダ22に近づけた際、背当て治具62をスライダ22に接触させずに、光源ユニット23をスライダ22に接触させることができる。ここで、光源ユニット23を吸着する際、接合面2300と下面621とを平行に揃える必要はない。接合面2300の倣いは後の工程である先球棒65による荷重の印加によって調整されるからである。その結果、背当て治具62に光源ユニット23を保持させる本工程を、比較的容易に短時間で完了させることが可能となる。
【0083】
さらに、図7a2に示すように、背当て治具62が固着された回転部640を回転させて、吸着面620を、ステージ61に固定されたスライダ22のスライダ背面2201に垂直な位置から所定の角度θJG1だけ傾けておく。ここで、吸着面620(回転部640)は、Y軸方向の回転軸の周りを、吸着面620の下面621とは反対側の端辺620eがリーディング側(−Z側)に変位するように回転する。これにより、ユニット基板230の接合面2300におけるレーザダイオード40とは反対側の端が、スライダ背面2201に最も近い位置となる。その結果、後に光源ユニット23をスライダ22のスライダ背面2201に接触させる際(図7e)、接合面2300におけるレーザダイオード40とは反対側の端が、最初にスライダ背面2201に接触することになる。この場合、レーザダイオード40の発光中心4000を含む面400は、スライダ背面2201から遠ざかる向きに傾いている。
【0084】
ここで、最初にスライダ背面2201に接触する接合面2300の端は、図7a1〜7a2に示す接合面2300の端辺2300e、又はこの端辺2300eの端2300aとなる。また、吸着面620の傾斜角θJG1は、0.5度(°)以上であって3°以下である事が好ましい。傾斜角θJG1を0.5°以上に設定することによって、後に先球棒65を用いて荷重を印加することにより、接合面2300をスライダ背面2201に十分に倣わせることができる。また、傾斜角θJG1を3°以下に設定することによって、後に図7f1を用いて説明するように、光源ユニット23とスライダ22とのアラインメントを行った後、光源ユニット23をスライダ22に接触させ、先球棒65を用いて荷重を印加した際に、レーザダイオード40の発光中心4000とスライダ背面2201に位置する受光端面430の中心4300との位置のずれを十分に小さく抑えることができる。
【0085】
次いで、図7bに示すように、背当て治具62を移動させて光源ユニット23とスライダ22とを所定の距離DUSの位置に近接させる。ここで、距離DUSは、例えば1〜5μm程度とすることができる。このように距離DUSを十分に小さくすることによって、後述するアラインメント終了後に光源ユニット23とスライダ22とを接触させても移動距離が小さくアラインメント結果からの位置のすれがほとんど生じないのである。次いで、プローブ67を、光源ユニット23の光源設置面2302に設けられた引き出し電極411とレーザダイオード40の上面をなすn電極40aとに押し当てる。ここで、光源ユニット23の背後には停止した背当て治具62が当てられているので、プローブ67を押し当てても、光源ユニット23は動かず安定している。
【0086】
次いで、図7cに示すように、光源ユニット23のレーザダイオード40の発光中心4000と、スライダ22の光学系31の受光端面430との、スライダ背面2201内の方向(YZ面内の方向)における位置合わせをアクティブアラインメント法によって行う。具体的には、光源ユニット23(レーザダイオード40)をスライダ22(光学系31)に対して移動させている間、プローブ67を介してレーザダイオード40に給電してレーザダイオード40を実際に作動させる。次いで、レーザダイオード40の発光中心4000から放射されて光学系31の受光端面430に入射したレーザ光72を光学系31の発光端(近接場光発生素子36の端面36a)の側でリアルタイムに監視し、この監視位置での光強度が最大となる状態を、光源ユニット23(レーザダイオード40)とスライダ22(光学系31)との所望の相対位置とする。このようなアクティブアラインメント法によれば、接合後、実際に所望の光路を確実に確保することができ、光源ユニット23とスライダ22との間で非常に高い接合位置精度を得ることが可能となる。
【0087】
スライダ22のヘッド端面2210から放射されたレーザ光72又は変換された近接場光のリアルタイムでの監視は、スライダ22のヘッド端面2210側に設けられたフォトダイオード等の光検出器73を用いて行うことができる。この光検出器73も、コントローラ69に接続されており、光検出器73のモニタ出力に基づいて、背当て治具62(光源ユニット23)のYZ面内での移動を制御することができる。
【0088】
なお、上述した位置合わせの間、レーザダイオード40は作動し続けており、相当に多量の熱を発生させる。しかしながら、背当て治具62をステンレス鋼、Cu(銅)等の高い熱伝導率を有する金属材料等で形成し、この背当て治具62をヒートシンクとしても用いることによって、レーザダイオード40から発生した多量の熱をユニット基板230を介して放熱させることができる。これにより、レーザダイオード40の発振が安定し、良好なアクティブアラインメントが実施可能となるのである。
【0089】
次いで、光源ユニット23とスライダ22との位置合わせの終了後、図7dに示すように、背当て治具62を−X方向に移動させてスライダ22に近づける。その際、吸着面620の傾斜角θJG1は一定に保たれたままとなる。さらに、図7eに示すように、光源ユニット23をスライダ22に近づけて接触させる。なお、この動作によっても光源ユニット23とスライダ22とのYZ面内での相対位置は変わらない。ここで、吸着面620が傾斜角θJG1を保っているので、スライダ22のスライダ背面2201上に最初に接触するのは、接合面2300のリーディング側(−Z側)の端辺2300e又はこの端辺2300eの一端2300aとなる。しかしながら、端辺2300eの一端2300aが最初に接触した場合においても、背当て治具62をさらにスライダ22に近づけるにつれて、光源ユニット23が背当て治具62の吸着穴230に吸着されたまま若干回転し、結局、接合面2300の端辺2300e全体がスライダ背面2201に接触することとなる。
【0090】
また、スライダ背面2201上には半田層58が形成されている。従って、図7eに示すように、光源ユニット23の接合面2300の端辺2300eは、半田層58の表面に押し当てられた状態となっている。ここで、半田層58が、例えばビッカース硬度が比較的小さいSn又はSn合金等からなる場合、端辺2300eの位置に圧痕58dが形成されることとなる。このことから、本願発明による製造方法に従い、光源ユニットとスライダとを上述した半田層を用いて接合して作製された磁気ヘッドにおいては、光源ユニットをスライダから剥離してスライダ上の半田層を観察した際に、光源ユニットの接合面の端辺による圧痕が、証拠として見出される可能性がある。但し、半田層による接着の際に、半田層の圧痕部分も完全に溶融してしまい圧痕が消滅してしまう場合はこの限りではない。
【0091】
次いで、図7f1,7f2に示すように、先球棒65を光源ユニット23の被加重面2301に押し付け、光源ユニット23に荷重を加える。これにより、光源ユニット23の接合面2300を、スライダ22のスライダ背面2201に、トラック幅方向(Y軸方向)及びトラックに沿った方向(Z軸方向)の両方向において倣わせることができる。先球棒65の被加重面2301に対する接触面積は、接合面2300の面積に比べて格段に小さい。このように微小な接触面積でもって光源ユニット23を押しているので、接合面2300が多少の傾きを有していても、接合面2300は、スライダ背面2201に押し付けられる過程でスライダ背面2201に十分に倣うのである。また、より良好な倣いを実現するために、先球棒65は、被加重面2301の中央部を押し付けることが好ましい。ここで、この先球棒65による荷重の印加によって、後述するように光源ユニット23は回転運動を行う。この際、被加重面2301上の加重点は、被加重面2301面内をリーディング側(−Z側)に移動するが、例えば吸着面620の傾斜角θJG1が0.5°程度である場合、この移動距離は、例えば数μm程度となり、加重点は、被加重面2301の中央部から大きく逸脱することはない。
【0092】
また、先球棒65は、重量センサであるロードセル661(図4)を介して加重装置660に接続されている。従って、光源ユニット23に印加される荷重の大きさを、倣いを得るのに適切な値、例えば10〜200gf(グラム重量)の範囲内の値に調整することが可能となっている。また、上述したように、吸着穴630が光源ユニット23を吸着する力は、光源ユニット23が所定の荷重の印加により移動する程度の大きさに調整されている。その結果、背当て治具62が吸着面620を傾斜させた状態で停止していても、先球棒65の押し付けによって、光源ユニット23が変位して接合面2300がスライダ背面2201に倣うことが可能となるのである。なお、図7cに示したアラインメントの終了後であってこの先球棒65による荷重の印加までの間に、プローブ67を電極から引き離しておくことが好ましい。また、先球棒65による荷重の印加が開始された後に、排気装置63による吸着穴630を介しての吸着動作を終了することも好ましい。また、この吸着動作の終了後、背当て治具62を光源ユニットから引き離す、すなわち背当て治具62を−Z方向に退避させることも可能である。
【0093】
同じく図7f1に示すように、先球棒65が光源ユニット23に荷重を加えて接合面2300をスライダ背面2201に倣わせる際、光源ユニット23は、先球棒65によってトルクを与えられ、スライダ背面2201との接触個所、すなわち端辺2300eを中心にして回転運動する。この接触個所である端辺2300eは、図7eを用いて説明したように、半田層58に押し当てられており、半田層58が例えばビッカース硬度が比較的小さいSn又はSn合金等からなる場合には、端辺2300eの位置に圧痕58dが形成されているのである。従って、端辺2300eの位置が固定されて、光源ユニット23が端辺2300e(圧痕58d)を中心にして回転運動を行いやすい状態となっていることが理解される。
【0094】
また、一方で、先球棒65の先端の丸加工を適切に行い、又はこの先端をDLC等でコーティングしておく等の対策によって、光源ユニット23の接合面2300とスライダ22のスライダ背面2201(半田層58)との間の静摩擦係数を、先球棒65と光源ユニット23の被加重面2301との間の静摩擦係数よりも高く設定しておくことが好ましい。これにより、図7f1に示すように、先球棒65で被荷重面2301に荷重を加えた際、接合面2300の端辺2300eが滑らずにとどまる一方、被加重面2301が先球棒65に対して滑らかに変位し、光源ユニット23の所望の回転運動を実現することが可能となる。また、このような回転運動故に、接合面2300はスライダ背面2201に滑らかに追随し、結果として良好に倣うことができる。
【0095】
ここで、同じく図7f1を用いて、光源ユニット23の発光中心4000とスライダ背面2201に位置する受光端面430の中心4300との位置関係を考察する。図7f1に示すように、最初に、光源ユニット23の端辺2300eがスライダ背面2201に接触した直後の状態では、発光中心4000はA4000の位置にあり、一方、受光端面430の中心4300はC4300の位置にある。この両者のスライダ背面2201内(YZ面内)での位置関係は、図7cを用いて説明した、先に行われたアクティブアラインメントによって決定したものに相当する。次いで、光源ユニット23が回転して接合面2300がスライダ背面2201(半田層58)に倣った状態になると、発光中心4000はA4000から円弧を描いて移動しB4000の位置となる。この発光中心4000の位置B4000と受光端面430の中心4300の位置C4300とのトラックに沿った方向(Z軸方向)での距離が、光源ユニット23の回転によるアラインメント誤差dROT1となる。
【0096】
実際に、ユニット基板230のZ軸方向の長さLUNが300μmであって背当て治具62の吸着面620の傾斜角θJG1が0.5°であるとすると、誤差dROT1は0.1μm未満の非常に小さな値となる。このdROT1値は、図7cを用いて説明した、先に行われたアクティブアラインメントによって生じる位置の誤差よりも確実に小さい。従って、図7f1に示した光源ユニット23の回転によっても、先に行われたアクティブアラインメントによる位置精度を実質的に維持することができることが理解される。また、その結果、接合面2300とスライダ背面2201とを倣わした際の発光中心4000と受光端面430との位置精度を、十分に高い状態にすることが可能となる。なお、この誤差dROT1を十分に小さくするために、ユニット基板230の長さLUNを300μm以下とすることも好ましい。ただし一方で、この長さLUNは、100μm以上であることが好ましい。光源ユニット23は、100μm以上の長さを確保することによって十分な体積を得て、動作したレーザダイオード40から発生する熱を放散するためのヒートシンクとして確実に機能することができるのである。
【0097】
次いで、図7gに示すように、スライダ22のスライダ背面2201に設けられた半田層58を溶融して、光源ユニット23とスライダ22とを接合する。ここで、光源ユニット23とスライダ22とは、YZ面内での位置合わせが行われた後、その位置合わせ精度を実質的に維持した状態で移動させられて、半田層58を間に挟む形で接触している。本実施形態においては、ユニット基板230を透過する所定の波長の光74をユニット基板230に照射し、この間に挟まれた半田層58を溶融させ固化させて、光源ユニット23とスライダ22とを接着する。
【0098】
この光74は、接着用光源としてのNd−YAGレーザ発振器76から光ファイバ75を介して放射されたNd−YAGレーザ光(波長:1064nm)とすることができる。ここで、YAGとは、Y(イットリウム)とAl(アルミニウム)との複合酸化物(Y3Al512)からなるガーネット構造の結晶名であり、Nd−YAGレーザ光は、YAG結晶において数%のYをNd(ネオジム)で置換したものをレーザ媒質として用いて得られるレーザ光であり、研究用、工業用及び医療用等に広く使用されている。このように光74としてNd−YAGレーザ光を用いる場合、ユニット基板230を、Si(透過率:67%)、GaAs(透過率:66%)、SiC(透過率:80%)等の、この波長での透過率が50%以上である材料で形成しておくことによって、溶融に十分な量の光74を、ユニット基板230内に投入させ半田層58を溶融することが可能となる。光74としては、他に、Nd−YAGレーザ光以外のYAGレーザ光、YAGレーザ光以外の固体レーザ光、又は炭酸ガスレーザ光等のガスレーザ光も使用することが可能である。いずれにしても、ユニット基板230を透過する波長と半田層58を溶融するのに必要な出力とを有する光が使用され、または、使用光の波長を透過する材料から形成されたユニット基板230が使用される。
【0099】
さらに、半田層58は、融点が400℃未満である合金で形成されていることが好ましく、融点が250℃以下である合金で形成されていることがより好ましい。融点が250℃以下である半田層58用の材料としては、Sn(スズ)、Sn合金、Pb(鉛)合金、又はBi(ビスマス)合金であって、Sn、SnAu、SnCu、SnAl、SnSi、SnGe、SnMg、SnPb、SnAg、SnZn、SnBi、SnNi、SnPt、PbAu、PbMg、PbBi、及びBiAuからなる群から選択された1つの合金材料が挙げられる。なお、半田層58の厚みは、例えば0.05〜2μmの範囲内の値に設定される。
【0100】
例えば、このレーザ光の照射による接着の実施例として、Nd−YAGレーザ光74の出力を0.7kW、照射時間を5msec(ミリ秒)、スポット径を50μmとして、Siで形成されたユニット基板230の両側面に、このNd−YAGレーザ光74を照射したところ、厚さ0.3μmのSnからなる半田層58を溶融することができた。ここで、接着された光源ユニット23とスライダ22との間の接合強度を測定したところ、光源ユニット23が剥離される最小の剪断力fSは200g重(gf)以上となり、十分な接合強度が実現していることが分かった。
【0101】
このように、光74をユニット基板230に入射させて光源ユニット23とスライダ22とを接着することによって、光源ユニット23とスライダ22との接合が完了し、熱アシスト磁気記録ヘッド21が製造される。このヘッド21においては、光源ユニット23とスライダ22とは半田層58を間に挟んで接合されている。その結果、磁気記録媒体上を浮上したヘッド21による書き込み動作時においても、発光動作中のレーザダイオード40から発生した熱がユニット基板230、半田層58、スライダ基板220を順次伝導して磁気記録媒体に至る放熱経路を確保することができる。なお、図7hに示すように、製造された熱アシスト磁気記録ヘッド21を、次の工程、例えば洗浄工程を実施するための作業位置まで運搬するのに、背当て治具62による光源ユニット23の吸着を再開し、背当て治具62とともにヘッド21を移動させることも可能である。
【0102】
図8a1〜8dは、光源ユニット23とスライダ22とを接合する、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の製造方法の第2の実施形態を示す概略図である。
【0103】
図8a1によれば、最初に、吸着穴630を備えた背当て治具62に光源ユニット23を保持させる。この第2の実施形態における背当て治具62による光源ユニット23の吸着は、第1の実施形態と同様に行われる。しかしながら、第2の実施形態においては、背当て治具62が固着された回転部640を、第1の実施形態の場合とは逆方向に回転させて、吸着面620を、ステージ61に固定されたスライダ22のスライダ背面2201に垂直な位置から所定の角度θJG2だけ傾けている。ここで、吸着面620(回転部640)は、Y軸方向の回転軸の周りを、吸着面620の下面621とは反対側の端辺620eがトレーリング側(+Z側)に変位するように回転する。これにより、ユニット基板230の接合面2300におけるレーザダイオード40側の端が、スライダ背面2201に最も近い位置となる。その結果、後に光源ユニット23をスライダ22のスライダ背面2201に接触させる際(図8b)、接合面2300におけるレーザダイオード40側の端が、最初にスライダ背面2201に接触することになる。ここで、最初にスライダ背面2201に接触する接合面2300の端は、図8a1,8a2に示す接合面2300の端辺2300f、又はこの端辺2300fの端2300bとなる。なお、この場合、レーザダイオード40の発光中心4000を含む面400は、スライダ背面2201に近づく向きに傾いている。
【0104】
また、吸着面620の傾斜角θJG2は、光源ユニット23をスライダ22に接触させてもレーザダイオード40がスライダ背面2201に当たらない範囲の角度とする。実際、レーザダイオード40の発光中心4000を含む面400が接合面2300から、例えば1μm又はそれ以上リセスしている場合、例えば、傾斜角θJG2を5°に設定しても、レーザダイオード40がスライダ背面2201から離隔しているようにすることが可能である。傾斜角θJG2をこのように設定することによって、後に、先球棒65を用いて荷重を印加することにより接合面2300をスライダ背面2201に十分に倣わせることができる。また、後に図8bを用いて説明するように、光源ユニット23とスライダ22とのアラインメントを行った後、光源ユニット23をスライダ22に接触させ、先球棒65を用いて荷重を印加した際に、レーザダイオード40の発光中心4000とスライダ背面2201に位置する受光端面430の中心4300との位置のずれを、第1の実施形態以上に十分に小さく抑えることができる。
【0105】
次いで、背当て治具62を移動させて、プローブ67を光源ユニット23の電極に押し当て、光源ユニット23の発光中心4000と、スライダ22の受光端面430との、スライダ背面2201内の方向(YZ面内の方向)における位置合わせをアクティブアラインメント法によって行う。第2の実施形態におけるこれらの実施方法は、図7b,7cを用いて説明した第1の実施形態における実施方法と同様である。
【0106】
次いで、光源ユニット23とスライダ22との位置合わせの終了後、背当て治具62を−X方向に移動させてスライダ22に近づけ、吸着面620の傾斜角θJG2を一定に保ったまま、図8bに示すように、光源ユニット23をスライダ22に近づけて接触させる。なお、この動作によっても光源ユニット23とスライダ22とのYZ面内での相対位置は変わらない。ここで、吸着面620が傾斜角θJG2を保っているので、スライダ22のスライダ背面2201上に最初に接触するのは、接合面2300のトレーリング側(+Z側)の端辺2300f又はこの端辺2300fの一端2300bとなる。しかしながら、端辺2300fの一端2300bが最初に接触した場合においても、背当て治具62をさらにスライダ22に近づけるにつれて、光源ユニット23が背当て治具62の吸着穴230に吸着されたまま若干回転し、結局、接合面2300の端辺2300f全体がスライダ背面2201に接触することとなる。
【0107】
また、スライダ背面2201上には半田層58が形成されている。従って、同じく図8bに示すように、光源ユニット23の接合面2300の端辺2300fは、半田層58の表面に押し当てられた状態となっている。ここで、半田層58が、例えばビッカース硬度が比較的小さいSn又はSn合金等からなる場合には、端辺2300fの位置に圧痕58eが形成されることとなる。
【0108】
次いで、図8c1,8c2に示すように、第1の実施形態と同様に、先球棒65を光源ユニット23の被加重面2301に押し付け、光源ユニット23に荷重を加える。これにより、光源ユニット23の接合面2300を、スライダ22のスライダ背面2201に、トラック幅方向(Y軸方向)及びトラックに沿った方向(Z軸方向)の両方向において倣わせることができる。ここでも、先球棒65は、より良好な倣いを実現するために、被加重面2301の中央部を押し付けることが好ましい。また、光源ユニット23に印加される荷重の大きさは、倣いを得るのに適切な値、例えば10〜200gf(グラム重量)の範囲内の値に調整される。
【0109】
また、アラインメントの終了後であってこの先球棒65による荷重の印加までの間に、プローブ67を電極から引き離しておくことが好ましい。さらに、先球棒65を用いてユニット基板230の被加重面2301に荷重を加えるとともに、背当て治具62を光源ユニット23から引き離す(退避させる)ことが好ましい。この際の引き離す距離は、例えば10μm程度であってよい。また、例えば、荷重値の増加とともに、背当て治具62を徐々に光源ユニット23から引き離すことも好ましい。光源ユニット23は先球棒65によってトルクを与えられ、後述するように回転運動を行うが、その際、上述したように背当て治具62を光源ユニット23から引き離すことによって、光源ユニット23は、背当て治具62を障害とせずに、与えられたトルクによって滑らかに所望の回転運動を行うことができるのである。なお、背当て治具62を引き離す際には、排気装置63による吸着穴630を介しての吸着動作を終了することが好ましい。
【0110】
さらに変更態様として、図8dに示すように、先球棒65を用いてユニット基板230の被加重面2301に荷重を加えるとともに、背当て治具62を、この荷重によって回転運動する光源ユニット23に追随させることも好ましい。この場合、背当て治具62の吸着面620は、光源ユニット23のユニット背面2303に一致しながら回転運動を行い、光源ユニット23の回転運動を補助する役割を果たす。なお、この変更態様では、排気装置63による吸着穴630を介しての吸着動作は継続して行われてもよい。
【0111】
図8c1に戻って、先球棒65が光源ユニット23に荷重を加えて接合面2300をスライダ背面2201に倣わせる際、光源ユニット23は、先球棒65によってトルクを与えられ、スライダ背面2201との接触個所、すなわち端辺2300fを中心にして回転運動する。この接触個所である端辺2300fは、図8bを用いて説明したように、半田層58に押し当てられており、半田層58が例えばビッカース硬度が比較的小さいSn又はSn合金等からなる場合には、端辺2300fの位置に圧痕58eが形成されているのである。従って、端辺2300fの位置が固定されて、光源ユニット23が端辺2300f(圧痕58e)を中心にして回転運動を行いやすい状態となっていることが理解される。
【0112】
また、一方で、先球棒65の先端の丸加工を適切に行い、又はこの先端をDLC等でコーティングしておく等の対策によって、光源ユニット23の接合面2300とスライダ22のスライダ背面2201(半田層58)との間の静摩擦係数を、先球棒65と光源ユニット23の被加重面2301との間の静摩擦係数よりも高く設定しておくことが好ましい。これにより、図8c1に示すように、先球棒65で被荷重面2301に荷重を加えた際、接合面2300の端辺2300eが滑らずにとどまる一方、被加重面2301が先球棒65に対して滑らかに変位し、光源ユニット23の所望の回転運動を実現することが可能となる。また、このような回転運動故に、接合面2300はスライダ背面2201に滑らかに追随し、結果として良好に倣うことができる。
【0113】
ここで、同じく図8c1を用いて、光源ユニット23の発光中心4000とスライダ背面2201に位置する受光端面430の中心4300との位置関係を考察する。図8c1に示すように、最初に、光源ユニット23の端辺2300eがスライダ背面2201に接触した直後の状態では、発光中心4000はD4000の位置にあり、一方、受光端面430の中心4300はE4300の位置にある。この両者のスライダ背面2201内(YZ面内)での位置関係は、先に行われたアクティブアラインメント(図7c)によって決定したものに相当する。次いで、光源ユニット23が回転して接合面2300がスライダ背面2201(半田層58)に倣った状態になると、発光中心4000はD4000から円弧を描いて移動しF4000の位置となる。この発光中心4000の位置F4000と受光端面430の中心4300の位置E4300とのトラックに沿った方向(Z軸方向)での距離が、光源ユニット23の回転によるアラインメント誤差dROT2となる。
【0114】
ここで、この第2の実施形態における発光中心4000と回転運動の中心2300fとの距離(回転半径)は、第1の実施形態における発光中心4000と回転運動の中心2300eとの距離(回転半径)に比べて格段に小さい。従って、光源ユニット23の回転運動の回転角(ほぼ傾斜角θJG1及びθJG2に相当)が同一ならば、第2の実施形態における誤差dROT2は、第1の実施形態における誤差dROT1よりもさらに小さくなり、明らかに、先に行われたアクティブアラインメント(図7c)によって生じる位置の誤差よりも確実に小さくなる。従って、図8c1に示した光源ユニット23の回転によっても、先に行われたアクティブアラインメントによる位置精度を実質的に維持することができることが理解される。また、その結果、接合面2300とスライダ背面2201とを倣わした際の発光中心4000と受光端面430との位置精度を、十分に高い状態にすることが可能となる。
【0115】
次いで、この第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に、光源ユニット23とスライダ22とを接合する。すなわち、ユニット基板230を透過する所定の波長の光をユニット基板230に照射し、この間に挟まれた半田層58を溶融させ固化させて、光源ユニット23とスライダ22とを接着する。この際のユニット基板230の構成材料、照射する光、及び半田層58の構成材料の選定は、第1の実施形態と同様に行うことができる。これにより、光源ユニット23とスライダ22との接合が完了し、熱アシスト磁気記録ヘッド21が製造される。このヘッド21においては、光源ユニット23とスライダ22とは半田層58を間に挟んで接合されている。その結果、磁気記録媒体上を浮上したヘッド21による書き込み動作時においても、発光動作中のレーザダイオード40から発生した熱がユニット基板230、半田層58、スライダ基板220を順次伝導して磁気記録媒体に至る放熱経路を確保することができる。なお、この第2の実施形態においても、製造された熱アシスト磁気記録ヘッド21を、次の工程、例えば洗浄工程を実施するための作業位置まで運搬するのに、背当て治具62による光源ユニット23の吸着を再開し、背当て治具62とともにヘッド21を移動させることも可能である。
【0116】
以上、図7a1〜7h,8a1〜8dを用いて説明したように、本発明による熱アシスト磁気記録ヘッド21の製造方法によれば、アクティブアラインメント法による位置合わせを行った上で、光源ユニット23の接合面2300とスライダ22のスライダ背面2201との間の「倣い」を極めて高い状態にできるので、光源ユニットとスライダとの接合において、十分に高い接合強度と十分に高い接合位置精度とが実現される。また、光源ユニット23は、自身の端がスライダ22に接触した後、加重手段に与えられたトルクによって回転運動を行う。このような回転運動故に、光源ユニット23の接合面2300はスライダ背面2201に滑らかに追随し、結果として良好に倣うことができるのである。さらに、接合後のレーザダイオード40の放熱経路が確保されるので、レーザダイオード40の安定した発振動作が得られ、その結果、良好な熱アシスト作用を実現することができる。
【0117】
図9は、本発明に係る磁気ディスク装置の一実施形態における要部の構成を概略的に示す斜視図である。また、図10は、本発明に係るHGAの一実施形態における要部の構成を概略的に示す斜視図である。図10においてはHGAの磁気ディスク表面に対向する側が上になって表示されている。
【0118】
図9に示した磁気記録装置としての磁気ディスク装置は、スピンドルモータ11の回転軸の回りを回転する、磁気記録媒体としての複数の磁気ディスク10と、複数の駆動アーム14が設けられたアセンブリキャリッジ装置12と、各駆動アーム14の先端部に取り付けられており熱アシスト磁気記録ヘッド21を備えたHGA17と、熱アシスト磁気記録ヘッド21の書き込み及び読み出し動作を制御し、さらに、熱アシスト磁気記録用のレーザ光を発生させる光源であるレーザダイオード40の発光動作を制御するための記録再生及び発光制御回路13とを備えている。
【0119】
磁気ディスク10は、本実施形態において、垂直磁気記録用であり、例えば、ディスク基板に、軟磁性裏打ち層、中間層及び磁気記録層(垂直磁化層)が順次積層された構造を含んでいる。アセンブリキャリッジ装置12は、熱アシスト磁気記録ヘッド21を、磁気ディスク10の磁気記録層に形成されており記録ビットが並ぶトラック上に位置決めするための装置である。同装置内において、駆動アーム14は、ピボットベアリング軸16に沿った方向にスタックされており、ボイスコイルモータ(VCM)15によってこの軸16を中心にして角揺動可能となっている。なお、本発明に係る磁気ディスク装置の構造は、以上に述べた構造に限定されるものではない。磁気ディスク10、駆動アーム14、HGA17及びヘッド21は、単数であってもよい。
【0120】
図10によれば、HGA17において、サスペンション20は、ロードビーム200と、このロードビーム200に固着されており弾性を有するフレクシャ201と、ロードビーム200の基部に設けられたベースプレート202と、フレクシャ201上に設けられておりリード導体及びその両端に電気的に接続された接続パッドからなる配線部材203とを備えている。熱アシスト磁気記録ヘッド21は、各磁気ディスク10の表面に対して所定の間隔(浮上量)をもって対向するように、サスペンション20の先端部であってフレクシャ201に固着されている。ここで、フレクシャ201には、開口2010が設けられており、熱アシスト磁気記録ヘッド21は、光源ユニット23が、この開口2010を通してフレクシャ201の反対側に出るように接着されている。
【0121】
さらに、配線部材203の一端をなす接続パッドは、熱アシスト磁気記録ヘッド21の磁気ヘッド素子32用の端子電極370及び371(図1)に、さらには光源ユニット23の引き出し電極411及びレーザダイオード40のn電極40a(図1)に、ワイヤボンディング、SBB等の方法によって電気的に接続されている。これにより、MR素子33、電磁変換素子及びレーザダイオード40に通電し、これらの素子を駆動することが可能となるのである。サスペンション20の構造も、以上に述べた構造に限定されるものではない。図示されていないが、サスペンション20の途中にヘッド駆動用ICチップが装着されていてもよい。
【0122】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0123】
21 熱アシスト磁気記録ヘッド
22 スライダ
23 光源ユニット
31 光学系
40 レーザダイオード
62 背当て治具
220 スライダ基板
230 ユニット基板
352 受光端面
620 吸着面
630 吸着穴(吸着手段)
660 加重装置
2201 スライダ背面
2300 接合面
2301 被加重面
2302 光源設置面
2303 ユニット背面
4000 発光中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニット基板に設けられた光源を備えた光源ユニットと、スライダ基板に設けられた光学系を備えたスライダとを接合する、熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法であって、
吸着手段を備えた背当て治具を用いて前記ユニット基板の光源設置面とは反対側のユニット背面を吸着し、
前記背当て治具を移動させて前記光源ユニットと前記スライダとを近接させ、前記光源の発光中心と、該スライダの媒体対向面とは反対側のスライダ背面に位置する前記光学系の受光端面との、該スライダ背面内の方向における位置合わせを行い、
前記背当て治具の吸着面を前記スライダ背面に対して垂直な位置から傾けた状態で、該背当て治具を前記スライダに近づけて、前記光源ユニットを前記スライダのスライダ背面に接触させ、
加重手段を用いて前記ユニット基板の前記スライダと接合する接合面とは反対側の被加重面に荷重を加えることによって、前記光源ユニットの接合面を該スライダのスライダ背面に倣わせ、
前記光源ユニットと前記スライダとを接着する
ステップを備えた熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記加重手段による荷重の印加によって、前記光源ユニットを前記スライダ背面との接触個所を中心にして回転運動させて、該光源ユニットの接合面を該スライダ背面に倣わせる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記スライダのスライダ背面に、前記光源ユニットと前記スライダとを接着するための接着材料層が前もって形成されており、該光源ユニットの前記接触個所は、該接着材料層に押し当てられた該光源ユニットの端である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記接着材料層は、Sn、SnAu、SnCu、SnAl、SnSi、SnGe、SnMg、SnPb、SnAg、SnZn、SnBi、SnNi、SnPt、PbAu、PbMg、PbBi、及びBiAuからなる群から選択された1つの材料を含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記光源ユニットに設けられた前記光源用の電極にプローブを押し当て、該光源に給電して発光動作をさせ、該光源からの光が前記光学系に入射するように前記光源の発光中心と前記光学系の受光端面との位置合わせを行う、請求項1から4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記背当て治具に備えられた吸着手段による前記光源ユニットを吸着する力は、該光源ユニットに所定の荷重を加えることによって該光源ユニットの位置又は方向が変化する程度の大きさを有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記背当て治具に備えられた吸着手段は、該背当て治具に設けられた少なくとも1つの吸着穴であり、該少なくとも1つの吸着穴の一方の端に接続された排気系を駆動させて、前記光源ユニットを該背当て治具に吸着する、請求項1から6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記加重手段は、前記ユニット基板の被加重面に当たる部分が球面又は凸曲面をなす治具である、請求項1から7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記光源ユニットの接合面と前記スライダのスライダ背面との間の摩擦係数が、前記加重手段と前記光源ユニットの被加重面との間の摩擦係数よりも高く設定されている、請求項1から8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記スライダのスライダ背面に接着材料層を前もって形成しておき、前記光源ユニットの接合面を該スライダ背面に該接着材料層を間に挟みながら倣わせ、前記ユニット基板を透過する波長を含む光を該ユニット基板に照射して該接着材料層を溶融させ、該光源ユニットと該スライダとを接着する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ユニット基板の接合面の前記光源とは反対側の端が最初に前記スライダ背面に接触するように、前記背当て治具の吸着面を前記スライダ背面に対して垂直な位置から傾けた状態で、該背当て治具を前記スライダに近づけて、前記光源ユニットを該スライダ背面に接触させる、請求項1から10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記吸着面は、前記スライダ背面に対して垂直な位置から0.5度以上であって3度以下の角度だけ傾いている、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ユニット基板の接合面の前記光源側の端が最初に前記スライダ背面に接触するように、前記背当て治具の吸着面を前記スライダ背面に対して垂直な位置から傾けた状態で、該背当て治具を前記スライダに近づけて、前記光源ユニットを該スライダ背面に接触させる、請求項1から10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記吸着面は、前記光源ユニットを前記スライダ背面に接触させても前記光源が該スライダ背面から離隔している程度に傾いている、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記加重手段を用いて前記ユニット基板の被加重面に荷重を加えるとともに、前記背当て治具を前記光源ユニットから引き離す、請求項13または14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記加重手段を用いて前記ユニット基板の被加重面に荷重を加えるとともに、前記背当て治具を、該荷重によって回転運動する前記光源ユニットに追随させる、請求項13または14に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1に記載の製造方法を実施するための、前記光源ユニットと前記スライダとの接合装置であって、
前記スライダを固定する固定治具と、
前記光源ユニットを吸着する吸着手段が設けられていて、前記ユニット基板のユニット背面と接面する吸着面を備えており、前記固定治具に固定された前記スライダに対する該光源ユニットの相対位置を調整することができるように移動させることが可能な背当て治具であって、該吸着面を、前記固定治具に固定された該スライダの媒体対向面とは反対側のスライダ背面に垂直な位置から所定の角度だけ傾けることが可能となっている背当て治具と、
前記ユニット基板の被加重面に荷重を加えるための加重手段と、
前記光源の発光中心と前記光学系の受光端面との前記スライダのスライダ背面内の方向における位置合わせを行うために、前記光源ユニットに設けられた前記光源用の電極に押し当てて該光源に給電するためのプローブと、
前記背当て治具の移動、前記吸着手段による吸着、前記加重手段による荷重の印加、前記プローブの移動、及び該プローブを介しての光源への給電を適宜制御するためのコントローラと
を備えた接合装置。
【請求項18】
前記光源の発光中心と前記光学系の受光端面との位置合わせを行う際に、前記プローブを介して給電された前記光源から放射され、前記光学系を伝播して、前記スライダの媒体対向面から放射された光を検出するための光検出器をさらに備えている、請求項17に記載の接合装置。
【請求項19】
前記背当て治具に備えられた吸着手段は、該背当て治具に設けられた少なくとも1つの吸着穴であり、該少なくとも1つの吸着穴の一方の端が前記吸着面に達しており、他方の端が排気系に接続されている、請求項17または18に記載の接合装置。
【請求項20】
前記加重手段は、前記ユニット基板の被加重面に当たる部分が球面又は凸曲面をなす治具である、請求項17から19のいずれか1項に記載の接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7a1】
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【図7a2】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図7e】
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【図7f1】
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【図7f2】
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【図7g】
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【図7h】
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【図8a1】
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【図8a2】
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【図8b】
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【図8c1】
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【図8c2】
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【図8d】
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【図9】
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【図10】
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