説明

熱アシスト磁気ヘッド及び熱アシスト磁気記録再生装置

【課題】簡易な構成を用い、高強度の近接場光を記録媒体に照射可能とするとともに、製造工程において高い位置決め精度や角度精度を必要としない熱アシスト磁気ヘッドを提供する。
【解決手段】熱アシスト磁気ヘッド11は、記録素子102、半導体レーザー素子106、及び、近接場光発生部1042がスライダ101に保持されて構成されており、近接場光発生部1042は、スライダ101の流出端110の側面111と対向するように配置された金属膜104に形成された媒体対向面Sに垂直に延在した溝1041の記録媒体150に対向した端部であり、半導体レーザー光源106は、TEモード発振するものであって、スライダ101の流出端110の側面と111対向するように配置されているとともに、その出射端面S2が近接場光発生部1042にレーザー光107が照射される方向に媒体対向面Sに対して傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場光を用いて磁気記録媒体の一部を昇温するとともに、記録磁界を印加して磁気記録媒体に磁気情報を記録する熱アシスト磁気ヘッド及びこれを備えた熱アシスト磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクの記録密度を向上させる手法として、近接場光を記録磁界とともに磁気記録媒体に照射し、磁気記録媒体の一部を局所的に加熱しながら磁気情報を記録する熱アシスト磁気記録方式が提案されている。
【0003】
特許文献1には、垂直記録方式の薄膜磁気ヘッドの主磁極として、金属製の主磁極を用い、磁気記録媒体として、金属製の記録膜を用い、これら主磁極と媒体の二つの金属を微小な隙間を置いて近接配置させ、この隙間に対して、光を主磁極と媒体面の中間の角度(斜めの角度)から照射した際に生じる近接場効果を利用して、主磁極直下の媒体上に集光する方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、近接場光を発生させて記録媒体に熱磁気的に情報を記録する記録ヘッドにおいて、光源と、記録媒体に磁界を印加するための磁極と、光源からの光を照射されることにより設置される記録媒体近傍に近接場光を発生する散乱体とを有し、散乱体は、光源からの光を照射される面が、設置される記録媒体に略垂直になるように、磁極に接して形成されている構成とする記録ヘッドが開示されている。
【0005】
特許文献3には、媒体対向面上で離隔して配置された第1及び第2の近接場光発生部と、第1及び第2の近接場光発生部の間に少なくとも一部分が位置する主磁極とを備える熱アシスト磁気ヘッドが開示されている。上記特許文献3においては、第1及び第2の近接場光発生部にレーザー光などのエネルギー線が照射されると、双方の近接場光発生部の先端で近接場光が発生することが開示されている。
【0006】
特許文献4には、焦点領域に電磁波を向けるための手段と、上記電磁場の電界に実質的に平行な長手方向軸線を有し、上記電磁場を向けるための手段の外側に位置する金属ナノ構造体とを備え、上記電磁波が金属ナノ構造体上に表面プラズモンを発生する近視野光トランスジューサが開示されている。上記特許文献4の図17には、二次元の光波ガイドSIMおよび金属ピンを含むトランスジューサが開示され、2つのグレーティングを有する薄膜プレーナー状光波ガイドに結合された光ビーム間でπの位相差が生じるようにシフトされている。
【0007】
特許文献5には、光を透過させる誘電体、当該誘電体より低い屈折率を有する低屈折率誘電体層、および金属層がこの順で配置される電磁場発生手段と、上記電磁場発生手段に対し、入射光を、上記誘電体側から、かつ、上記低屈折率誘電体層および上記金属層にて吸収される入射角度で、照射する照射手段とを有し、上記低屈折率誘電体層と上記金属層との界面の所定の端部から、電磁場を、記録媒体における記録層に対して出射させる電磁場照射装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3932840号公報
【特許文献2】特許第4100133号公報
【特許文献3】特開2009−163806号公報
【特許文献4】特許第4104584号公報
【特許文献5】特許第4368746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示されている技術においては、効率的な近接場光を発生させるために、入射光をP偏光とする必要があるとともに、磁気ポールと記録媒体との間で近接場光を発生させるので、磁性体が近接場光発生源となり、高強度の近接場光を得ることが難しい。
【0010】
ここで、磁気ヘッドと光源となる半導体レーザー素子とを一体化しようとすることを考えれば、上記のP偏光を入射光として得るためには、TMモードで発振する半導体レーザー素子を適用することが現実的である。しかしながら、一般に、高効率の近接場光が得られる波長範囲(可視光から近赤外領域)では、量子井戸構造を適用する高出力の半導体レーザー素子において、ファセットミラー反射率と利得がともに大きいために、TMモードよりもTEモードの方が発振し易い。このため、TMモードレーザー素子よりもTEモードレーザー素子の方が、製造が容易であるとともに高出力化し易い特徴を有している。
【0011】
従って、入射光にP偏光を必要とすることは、半導体レーザー素子の製造コストを増大させるとともに、高出力が得られにくいため、効率的な熱アシスト記録が難しい。
【0012】
特許文献2に開示されている技術においては、微小な散乱体において高強度の近接場光を発生させるために、近接場光発生部材に光源からの光を局所的に絞り込んで照射する必要があり、導波路やホログラム・レンズといった集光部材が必要となる。このため、部品点数が増え、製造工程が複雑になるとともに、光源とこれらの集光部材との間で高精度の位置決めが必要になるという課題が存在する。また、散乱体の先端、すなわち、媒体対向位置において高強度の近接場光を発生させるためには、Z軸方向の偏光、すなわち、P偏光を用いる必要があり、このために、特許文献1と同様にTMモードのレーザー素子を適用する必要がある。更に、散乱体が小さいため高強度の光を投入した場合に放熱効果が低く、蓄熱による散乱体の形状変化を招く虞がある。加えて、光源またはミラーが記録媒体対向面近傍に備えられているため、レーザー光の一部が散乱体に導かれる過程で記録媒体に照射され、記録媒体を誤消去してしまう虞がある。
【0013】
特許文献3に開示されている技術においては、発光素子であるレーザー素子の偏光方向について記載は無く、特許文献2と同様に、光源と近接場光発生部材との間に導波路を備える構成であるために、部品点数が増え、製造工程が複雑になるとともに、光源とこれらの集光部材との間で高精度の位置決めが必要になるという課題が存在する。また、上記近接場光発生部の直上から光を入射させる構成であるために、上記の光源と近接場光発生部材との間である、上記近接場光発生部材の上方に導波路を構成する部材を形成する必要があるため、近接場光発生部材の面積(体積)が小さくなり、高強度のレーザー光照射や高強度の近接場光発生に伴う熱によって、近接場光発生部材が変形する虞がある。
【0014】
特許文献4に開示されている技術においては、グレーティング上のトランスジューサにTEモードの光源から光を入射させて近接場光発生部に導き、近接場光を発生させるが、π位相シフトした2つのグレーティングを高い精度で形成する必要があるとともに、近接場光を生じるピンを焦点位置に高精度に合わせる必要がある。
【0015】
本発明の目的は、簡易な構成を用い、高強度の近接場光を記録媒体に照射可能とするとともに、製造工程において高い位置決め精度や角度精度を必要としない熱アシスト磁気ヘッドおよびこれを備えた熱アシスト磁気記録再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の熱アシスト磁気ヘッドは、磁気記録媒体に対して記録磁界を印加するための磁界印加手段、レーザー光を出射する半導体レーザー素子、及び、レーザー光が照射されると近接場光を発生する近接場光発生部がスライダに保持された熱アシスト磁気ヘッドであって、上記近接場光発生部は、媒体対向面を上記スライダの底面としたときに上記スライダの流出端の側面と対向するように配置された金属膜に形成された上記媒体対向面に垂直に延在した溝の上記磁気記録媒体に対向した端部であり、上記半導体レーザー素子は、TEモード発振するものであって、上記スライダの上記流出端の上記側面と対向するように配置されているとともに、その出射端面が上記スライダの上記流出端の上記側面から上記金属膜より離れた位置に配置され且つ上記近接場光発生部にレーザー光が照射されるような方向に上記媒体対向面に対して傾斜している。本発明において、「溝」は、金属膜を貫通しないものだけでなく、貫通するものを含む。
【0017】
これによれば、半導体レーザー素子から出射されたレーザー光の強度が、溝で増幅され、高強度の近接場光を近接場光発生部から記録媒体に照射することが可能となる。また、半導体レーザー素子から出射されたレーザー光がTEモード発振するものであるため、半導体レーザー素子の高出力化が容易である。さらに、半導体レーザー素子の高出力化により、近接場光発生部や半導体レーザー素子の位置決め精度および半導体レーザー素子の出射端面の傾斜角の精度を緩和できる。
【0018】
更に、上記熱アシスト磁気ヘッドは、高熱伝導性の金属膜に形成された溝を利用して近接場光を生成するために、レーザー光の照射に伴って近接場光発生部に発生する熱を効率良く拡散させることができる。
【0019】
また、上記熱アシスト磁気ヘッドは、高出力化が容易なTEモード発振する半導体レーザー素子を用いているため、キュリー温度の高い磁性体層を備える記録媒体に対しても記録が可能である。
【0020】
また、上記熱アシスト磁気ヘッドは、媒体対向面に垂直な方向に延在した溝が形成されたものであるため、記録媒体との擦れが生じた場合にも近接場光発生部の損傷を防ぐことが出来る。また、研磨やイオンミリングによって媒体対向面が形成された場合にも、近接場光発生部が消失すること無く、且つ、近接場光発生部と磁気ポールとの距離を一定に保ち、媒体対向面の所望の位置に確実に近接場光発生部を形成することができる。
【0021】
上記半導体レーザー素子の上記出射端面の高さ位置は上記媒体対向面から500nm以上10μm以下の距離であってよい。
【0022】
これによれば、漏れ光の影響を防ぎつつ近接場光による微小サイズの記録が可能な熱アシスト磁気ヘッドを提供できる。
【0023】
上記半導体レーザー素子の上記出射端面の上記媒体対向面に対する傾斜角は15°以上75°以下であってよい。
【0024】
上記溝は、上記金属膜にスリットとして形成されていてよい。
【0025】
上記溝は、上記金属膜に窪みとして形成されていてよい。
【0026】
これらによれば、高強度の近接場光を記録媒体上に照射することが可能となる。
【0027】
上記溝が、上記媒体対向面の近傍で上記金属膜に窪みとして形成され、上記窪みよりも上記媒体対向面から離れた位置で、上記金属膜に上記窪みと連続したスリットとして形成されていてよい。
【0028】
これによれば、高強度の近接場光を記録媒体上に照射することが可能となるとともに、金属膜に通電すれば、窪みとして形成された箇所がシングルターンコイルとして磁界印加手段として機能する。これにより、近接場光発生箇所と磁界印加箇所とを同一とすることが可能となるため、効率的な熱アシスト記録を行うことが可能となるとともに、近接場光発生部とは別体の磁界印加手段を設ける必要が無い。
【0029】
上記溝及び上記近接場光発生部と接する誘電体が形成され、上記誘電体の屈折率をn、上記溝の媒体対向面に垂直な方向の長さをL、上記半導体レーザー素子から出射されるレーザー光の波長をλとしたときに、波長λで規格化した光学距離(n×L)/λが0.1以上、1.0以下であってよい。
【0030】
上記溝及び上記近接場光発生部と接して誘電体が形成されているとともに、上記誘電体の屈折率が1.0以上、2.5以下であり、上記半導体レーザー素子から出射されるレーザー光の波長は650nm以上830nm以下であり、上記溝の上記媒体対向面に垂直な方向の長さは60nm以上830nm以下であってよい。
【0031】
これらによれば、それぞれの設定値において他の設定値を調整することで溝の長さLを利用した共振構造を得ることが可能となり、より高い近接場光強度の増幅を得ることが可能となる。これにより、半導体レーザー素子の低消費電力化が可能となる。また、近接場光強度が大きくなることにより、高いキュリー温度の記録媒体に対しても記録が可能となる。さらに、近接場光と漏れ光との強度差を大きくできるので、高い信号品質で熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0032】
上記スライダの流入端から上記流出端に向かう方向について、上記磁界印加手段が上記近接場光発生部よりも上流に配置されていてよい。
【0033】
これによれば、従来の磁気ヘッドの製造プロセスを大きく変更することなく、高効率の熱アシスト磁気記録が可能な熱アシスト磁気ヘッドを製造可能となる。
【0034】
上記スライダの流入端から上記流出端に向かう方向について、上記近接場光発生部が上記磁界印加手段よりも上流に配置されていてよい。
【0035】
これによれば、記録媒体の小領域が近接場光で加熱されてから記録媒体の移動に伴って当該小領域に磁界が印加されることになるため、金属膜と磁界印加手段との間隔を広げることが可能となり、素子設計の自由度が高くなるとともに、金属膜と磁界印加手段との間に形成される膜の膜厚精度を緩和することが可能となる。
【0036】
本発明の熱アシスト磁気記録再生装置は、上述した何れかの熱アシスト磁気ヘッドと、上記熱アシスト磁気ヘッドによって磁気情報が記録される磁気記録媒体とを備えている。
【0037】
これによれば、上述したような効果を有する熱アシスト磁気ヘッドを用いた熱アシスト磁気記録再生装置が製造可能となる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の熱アシスト磁気ヘッドによれば、高熱伝導性の金属膜に形成された溝の磁気記録媒体に対向した端部を近接場光発生部としているため、レーザー光の照射に伴って近接場光発生部に発生する熱を効率良く拡散できる。また、近接場光発生部と他部材との位置関係が固定される。さらに、磁気記録媒体との摩擦等に対する近接場光発生部の耐久性を向上できる。これに加えて、半導体レーザー素子から出射されたレーザー光がTEモード発振するものであるため、半導体レーザー素子の高出力化が容易である。この高出力化により、半導体レーザー素子、近接場光発生部等の部材の位置決め精度や角度精度を緩和できる。また、近接場光の強度が大きくなることでキュリー温度の高い磁性体層を備える記録媒体に対しても記録が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッドの構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッドの近接場光発生部形状の例を示す概略図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッドの近接場光発生部形状の他の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッドの製造手順を示す概略図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッドの構成を示す概略図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る熱アシスト磁気再生ヘッドの構成を示す概略図である。
【図7】本発明の実施例1における、溝の長さLと電界強度|E|との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例1における、記録媒体表面での媒体移動方向の電界強度変化を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例2における、半導体レーザー素子の傾斜角θと電界強度|E|との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例3における、溝の長さLと電界強度|E|との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例7における、溝内部での溝の長さ方向についての電界強度分布を示すグラフである。
【図12】本発明の実施例8における、屈折率nと電界強度|E|が最大となる溝の長さLの関係を示すグラフである。
【図13】本発明の実施例9における、レーザー光の波長λと電界強度|E|が最大となる溝の長さLの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
<第1の実施形態>
本発明に係る第1の実施形態について以下に説明する。図1には、本実施形態の熱アシスト磁気ヘッド11の概略図を示す。図1(a)は、熱アシスト磁気ヘッド11の側面図、図1(b)は熱アシスト磁気ヘッド11の図1(a)とは別方向から見た側面図である。図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態の熱アシスト磁気ヘッド11は、記録媒体150に対して磁界を印加して磁気情報を記録するための記録素子102、レーザー光を出射する半導体レーザー素子、及び、レーザー光が照射されると近接場光を発生する近接場光発生部1042がスライダ101に保持されている。近接場光発生部1042は、媒体対向面Sをスライダ101の底面としたときにスライダ101の流出端110の側面111と対向するように配置された金属膜104に形成された媒体対向面Sに垂直に延在した溝1041の記録媒体150に対向した端部である。半導体レーザー素子106は、TEモード発振するものであって、スライダ101の流出端110の側面111から金属膜104より離れた位置に配置され且つ近接場光発生部1042にレーザー光107が照射されるように媒体対向面Sに対して傾斜している。また、第1の誘電体103が、金属膜104に接して、金属膜104より上流に、スライダ101の流出端110の側面111に対向するように配置されている。
【0041】
溝1041には、TEモード発振する半導体レーザー素子106からのレーザー光107が照射され、溝1041が媒体対向面Sに達する位置、すなわち、近接場光発生部1042において近接場光(図示しない)が発生する。そして、記録媒体150に近接場光が照射される。これとともに磁気ポール1023から記録磁界が記録媒体150に印加されることによって、記録媒体150の磁性体層1501に磁気情報が記録される。記録媒体150は図1(a)において紙面左方向、図1(b)において紙面手前方向に移動し、移動に伴って生じる空気流の圧力によって熱アシスト磁気ヘッド11が記録媒体150上で浮上する。光源としての半導体レーザー素子106は、金属膜104に形成された溝1041に対して、斜め上方から光を照射する。このとき、半導体レーザー素子106は、半導体レーザー素子106から出射されるレーザー光107の方向が、記録媒体対向面Sに直交する方向に対して傾斜角θだけ傾くように配置されている。このとき、レーザー光107の中心軸方向に垂直でありレーザー光107が出射される活性層の端面を出射端面S2とすると、この出射端面S2も媒体対向面Sに対して傾斜角θだけ傾いている。半導体レーザー素子106と金属膜104との間は、適宜、誘電体である傾斜部材108が形成されている。熱アシスト磁気ヘッド11にはこのような構成に加えてGMR(Giant Magneto−resistive)素子やTMR(Tunneling Magneto−resistive)素子に代表される再生素子109が記録素子102のより上流に備えられている。記録素子102、再生素子109は、スライダ101の流出端110の側面111に接して形成された誘電体基板113内に形成されている。
【0042】
ここで、説明の便宜のため、図1においては、以下のようにX軸、Y軸及びZ軸を定める。すなわち、記録媒体150の面に直交する紙面上下方向をZ軸とし、紙面上方向をZ軸の正方向とする。高さ方向とは、このZ軸正方向を指す。また、記録媒体150の面に平行で、紙面上記録媒体150が移動する方向をY軸とし、紙面右側をY軸正方向とする。記録媒体150は、Y軸負方向に向かって移動する。さらに、記録媒体150の面に平行で、紙面奥行き方向をX軸とし、紙面手前をX軸正方向とする。スライダ101の流出端110とは、スライダ101における媒体対向面Sと記録媒体150との間に流れる空気流が流出する端部を指し、スライダ101の流出端110の側面111とは、スライダ101において、媒体対向面Sと記録媒体150との間から流出する空気流と交差する方向に延在する側面を指す。また、スライダ101の流入端112とは、スライダ101における媒体対向面Sと記録媒体150との間に流れる空気流が流入する端部を指す。さらに、Y軸正方向を上流とする。これらの軸の向きは図2以降においても同じように定義されているものとする。また、特に表記しない限り、各図中に示したX軸、Y軸及びZ軸を用いて、方向を示すことがある。
【0043】
本実施形態の熱アシスト磁気ヘッド11に用いられるスライダ101および誘電体基板113には、公知の磁気記録ヘッドに適用されるスライダを適用可能であり、Al−TiCに代表されるセラミック材料を使用できる。スライダ101の記録媒体150との対向面である媒体対向面Sには、記録媒体150が移動する際に生じる空気流の圧力を受けて、記録媒体150上を数nmから10nm程度までの高さで浮上するように、ABS(air bearing surface)と称される凹凸パターンが設けられている。
【0044】
記録素子102としては、公知の垂直磁気記録方式に適用される磁気ヘッドに搭載される記録素子102を用いることができる。記録素子102は、ヨーク1021、コイル1022、及び、磁気ポール1023を有している。ヨーク1021と磁気ポール1023は熱アシスト磁気ヘッド11の媒体対向面Sまで延在している。磁気ポール1023の先端部は、近接場光発生部1042から発せられる近接場光に対して記録磁界発生位置を近づけるために、必要に応じて、媒体対向面Sの近傍で近接場光発生部1042に近づくような形状とされていてもよい。また、記録素子102として公知の水平磁気記録方式に適用される磁気ヘッドに搭載される記録素子を用いてもよい。
【0045】
第1の誘電体103は、スライダ101の流出端110の側面111に対向するように形成され、近接場光発生部1042における近接場光の強度を高める役割を果たすものであって、金属膜104と記録素子102とが接触することを防ぐために形成されるものである。第1の誘電体103は、半導体レーザー素子106から発せられるレーザー光107の波長において透明であるものが望ましい。具体的には、酸化Siや酸化Al、酸化Ti、酸化Ta、窒化Si、窒化Al、フッ化Mg等の誘電体材料を用いることが出来る。良好な熱アシスト記録を実施するためには、磁気ポール1023と、近接場光発生部1042との距離は、近接場光が達する距離以下とすることが望ましく、これらの観点から、第1の誘電体層103の膜厚は、例えば2nm以上100nm以下となっている。
【0046】
金属膜104は、レーザー光107が照射されることによって表面プラズモンが発生する金属材料からなる。金属膜104には、媒体対向面Sに直交する方向(Z方向)に延在した溝1041が形成されている。溝1041の下端は、媒体対向面Sに達している。溝1041が形成されていることで高強度の近接場光が近接場光発生部1042において発生する。金属膜104は、近接場光を発生する役割とともに、近接場光の発生に伴って生じる熱を金属膜104上に拡散させ、周辺部材を通じて外部に放出することで近接場光発生部1042を含む溝1041の熱変形を抑制する放熱体としての役割を果たす。金属膜104は、Y軸方向下流から第1の誘電体103と接するとともに、スライダ101の流出端110の側面111に対向するように形成され、その材料としては、Au、Ag、Pt、Pd、Al、Cuや、これらの合金材料を適用することが可能である。金属膜104の膜厚は、近接場光発生部1042において発生する近接場光の記録媒体150上での強度が、半導体レーザー素子106から発せられるレーザー光107が近接場光発生部1042を介さずにFar−Field光として記録媒体150に到達する光の強度よりも大きくなるように決定される。これと同時に、金属膜104は近接場光発生部1042において近接場光が発生した際に生じる熱を伝播させ、放熱効果を得る役割を果たす必要がある。このような観点から、金属膜104の膜厚は例えば10nm以上1μm以下程度となっている。
【0047】
溝1041は、スライダ101とは反対方向を向いており、媒体対向面Sに対して略直交する方向に延在するように金属膜104上に形成されている。媒体対向面Sにおける溝1041の具体的断面形状を、図2(a)〜(d)において、溝1041a〜1041dとして例示する。図2(a)、(c)に示す溝1041a及び1041cは、媒体対向面Sを含む全長において金属膜104がX方向に分断されたスリットである。図2(b)、(d)に示す溝1041b及び1041dは、媒体対向面Sを含む全長において金属膜104が連続し、Y方向に金属膜104の厚みが薄くなった窪みとなっている。すなわち、溝1041は、金属膜104にこれを貫通するスリットとして形成されてもよいし、金属膜104にこれを貫通しない窪みとして形成されてもよい。
【0048】
溝部1041a〜1041dはZ方向(紙面奥行き方向)に一定長さに連続して形成され、少なくともその記録媒体に対向した端部(Z方向下端)において、金属膜104の2つのY−Z平面部分同士がX方向に対向する箇所を備えている。すなわち、図2(a)においては、Y軸正方向に向かってX方向の幅が狭くなる傾斜部1045aの先端であるスリット幅が最も狭くなった頂点の位置に近接場光発生部1042aが形成されている。そして、その近接場光発生部1042aにおいて金属膜104の2つのY−Z微小平面同士がX方向に対向している。図2(b)においては、溝1041bの内壁側面である金属膜104の2つのY−Z平面同士がX方向に対向して近接場光発生部1042bが形成されている。図2(c)においては、Y軸正方向に向かってX方向の幅が狭くなる傾斜部1045cの先端にY軸方向に幅の等しいスリットが近接場光発生部1042cとして形成されている。そして、その近接場光発生部1042cにおいて金属膜104の2つのY−Z平面同士がX方向に対向している。図2(d)においては、Y軸正方向に向かってX方向の幅が狭くなる傾斜部1045dの先端に溝1041dが近接場光発生部1042dとして形成されている。そして、その近接場光発生部1042dにおいて金属膜104の2つのY−Z平面同士がX方向に対向している。
【0049】
すなわち、金属膜104の2つのY−Z平面部分同士がX方向に対向する箇所においては、TEモード発振する半導体レーザー素子106から発せられたレーザー光107が特に増幅され、溝1041a〜1041dの下端(これらの例において媒体対向面Sと同じ高さにある)がそれぞれ近接場光発生部1042a〜1042dとして機能する。なお、溝1041a〜1041dは、図2(a)〜(d)に示したように必ずしも断面形状が上下に対称な形状である必要は無い。また、上記のように、金属膜104同士がX方向に対向する箇所を備えていれば形状は問わない。
【0050】
図2(a)、(c)及び(d)に示した形状のように、Y軸方向に沿って溝1041a、1041c、及び1041dがX方向の幅の変化する傾斜部1045a、1045c、及び1045dを備える場合には、Y軸正方向(図2における紙面右方向)に幅が狭くなるように形成することで、近接場光を磁気ポール1023の近傍で発生させることが可能となるとともに、溝1041を形成する際に、スライダ101の流出端110の側面111に対向するように形成された金属膜104に対して加工し易い構造となる。
【0051】
近接場光の発生源として、このような金属膜104に形成された溝1041を用いることにより、例えば、特許文献2に記載された散乱体のように、局所的に近接場光発生部材が形成される場合に比べて、熱伝導率の高い金属膜104の表面積を放熱体として利用できるため、近接場光が発生する際に生じる熱を拡散させて外部に放出する効果が高い。また、図2(b)や(d)に示す溝1041b、1041dを用いれば、金属膜104はそれより上流に配置された記録素子102や再生素子109へレーザー光が照射されるのを防ぐ遮蔽膜として機能するため、これらの素子の耐久性を高めることが可能となる。
【0052】
また、本願実施形態においては、特許文献3のように近接場光発生部材の上方に導波路等の部材が配置されていないため、金属膜104を高さ方向に延在して配置させることが可能である。これにより近接場光の発生に伴う熱をより効果的に拡散できる。このため、高強度のレーザー光107の照射や高強度の近接場光発生が行われた場合にも、近接場光発生部1042を含む溝1041の熱による変形を防ぎ、高い放熱効果が得られる熱アシスト磁気ヘッド11を提供することが出来る。
【0053】
第2の誘電体105は、金属膜104を保護するとともに、半導体レーザー素子106からのレーザー光107を透過させて金属膜104に形成された溝1041に到達させる役割を果たすために設けられたものであって、第1の誘電体103と同じ材料で構成されて構わない。第2の誘電体105も第1の誘電体103と同様に、半導体レーザー素子106から発せられるレーザー光107の波長において透明であるものが望ましい。具体的には、酸化Siや酸化Al、酸化Ti、酸化Ta、窒化Si、窒化Al、フッ化Mg等の誘電体材料や透明樹脂を用いることが出来る。
【0054】
半導体レーザー素子106は、スライダ101の流出端110の側面111と対向するように配置され、金属膜104の形成面であるX−Z平面に対してその底面を傾斜角θだけ傾けて配置される。このとき、半導体レーザー素子106の出射端面S2は媒体対向面Sに対して傾斜角θが与えられて配置される。傾斜角θが0度である場合には、半導体レーザー素子106の活性層はX−Z平面に平行となり、出射端面S2は媒体対向面Sに平行となる。半導体レーザー素子106は、金属膜104に形成された溝1041に対してレーザー光107を照射するものであって、公知の半導体レーザー光源を用いることが可能である。半導体レーザー素子106の発振波長は、特に限定するものではないが、近接場光発生部1042から高強度の近接場光を発生させる観点から、例えば650nmから830nmの範囲とすることが望ましい。半導体レーザー素子106は、発せられるレーザー光107の偏光が金属膜104の膜面に対してS偏光となるようなTEモード発振を行う。このようなTEモード発振を行う半導体レーザー素子106を用いることにより、TMモード発振を行う半導体レーザー素子を用いた場合に比べて高出力のレーザー光107を発生させることが可能となるため、記録媒体150に対して高強度の近接場光を照射することができ、効率的に記録媒体150を加熱して、情報を記録することが可能となる。
【0055】
半導体レーザー素子106のレーザー光107を発生する出射端面S2は、媒体対向面Sからの高さが500nmから10μmの範囲に配置されている。媒体対向面Sからの距離が500nmよりも小さくなると、半導体レーザー素子106から発せられるFar−Field光の影響が大きくなり、記録媒体150の磁気情報が誤書き込み、または、誤消去される虞が生じる。また、媒体対向面Sからの高さが10μmよりも大きくなると、記録に十分な強度の近接場光を近接場光発生部1042から発生させることが難しくなる。
【0056】
傾斜部材108は、半導体レーザー素子106の底面を金属膜104の形成面であるX−Z平面に対して傾斜角θで傾斜させて保持するための部材であって、金属膜104が形成されたスライダ101の流出端110の側面111に対向する側面111に平行な面と、これとY−Z平面で角度θをなす面とを有している。傾斜部材108に適用される材料は特に限定されるものではないが、半導体レーザー素子106の発光に伴う温度上昇においても変形せず、且つ、放熱性の高い材料であることが望ましい。具体的には、Al−TiCに代表されるセラミック材料、窒化Alに代表される誘電体材料、ステンレス等の金属材料などを適用可能である。図1(a)にはY−Z平面において三角形の傾斜部材108を例示しているが、半導体レーザー素子106を金属膜104の形成面であるX−Z平面に対して傾斜角θで傾斜させて保持することが出来るものであれば形状は問わず、半導体レーザー素子106の上部のみを支持し、傾斜角θを付与するものであっても構わない。
【0057】
記録媒体150は、基板1502上に磁性材料を含んだ磁性体層1501が単層または複数層積層して形成され、記録時には熱アシスト磁気ヘッド11からの近接場光の照射と記録素子102からの磁界印加とによって磁性体層1501の磁化方向が反転し、磁気情報を記録する。磁気情報を記録する磁性体層1501は、FeやCo、又は、これらの合金に、Pt、Pd、Cr、Ta、Tb、Gd、Dy、Ni等の金属元素やB、C等の元素を含んで構成され、必要に応じて層中の面内方向に非磁性材料で分割されたものであってもよい。また、磁性体層1501と基板1502との間には、軟磁性裏打ち層を備えていてもよい。
【0058】
ここで、図2(b)及び(d)に示したように、溝1041が窪みとして形成されている場合には、図3のように、近接場光発生部1042が同時に記録磁界を発生する記録磁界発生部としての機能を兼ね備えていてもよい。
【0059】
図3には、図2(b)に記載の形状の窪みがZ方向に延在した金属膜104において、記録磁界発生を兼ねる構造について図示している。図3に示すように、記録磁界発生を兼ねる金属膜104は、溝1041eがZ方向に連続的に形成された箇所よりも上方において、溝1041のX方向の幅よりも大きな幅を有するスリット部1043によってX方向に2つに分断されている。これにより、金属膜104は、スリット部1043で分断された左右の部分を各々電極部1044a、1044bとして、溝1041が形成された領域に電流を流し、近接場光発生部1042bから磁界を発生させることの出来るシングルターンコイルとなる。ここで、電極部1044a、1044bにおける電流経路の断面積よりも、溝1041bにおける電流経路の断面積が狭いことにより、近接場光発生部1042e近傍で、大きな記録磁界を発生させることが可能となる。
【0060】
図3に示したような金属膜104を適用し、近接場光発生部1042が記録磁界を発生する磁気ポール1023を兼ねる場合には、図1に示した熱アシスト磁気ヘッド11の構成において、記録素子102が備えられなくても構わない。
【0061】
また、図2(b)及び(d)に示したような、溝1041が窪みとして形成される場合には、近接場光発生部1042が磁気ポール1023を兼ねるか否かを問わず、第1の誘電体103は備えられていなくても良い。これは、溝1041が窪みとして形成される場合には、近接場光発生部1042は、溝1041内に収まるため、第1の誘電体103と接することが無く、記録素子102が形成された誘電体基板113に接して金属膜104が直接形成されていても近接場光の発生強度に大きな影響は無いからである。ただし、磁気ポール1023と金属膜104とが電気的に接触することを防ぐ必要がある場合は、この限りではない。
【0062】
また、図1において、傾斜部材108とスライダ101との間には、第1の誘電体103と金属膜104とが形成されているが、これらの部材が必ずしも傾斜部材108とスライダ101との間に形成されている必要はない。すなわち、図1(a)、(b)において、第1の誘電体103と金属膜104とは、これらの両方または何れか一方が、傾斜部材108よりも紙面下側の領域のみに形成されていても構わない。場合によっては、傾斜部材108は誘電体基板112と一体として構成されていても構わない。すなわち、傾斜部材108は、誘電体基板112に加工が加えられて形成された傾斜面であっても構わない。
【0063】
次に、本実施形態の熱アシスト磁気ヘッド11の製造方法の一例を図4(a)〜(f)に基づいて説明する。なおここでは、図2(a)に示した、溝1041がスリットとして金属膜104に形成される場合について示す。
【0064】
まず、図4(a)に示すように、スライダ101となるAl−TiC基板101’上に誘電体基板113を形成する。そして、誘電体基板113上に再生素子109と記録素子102とをスパッタリング法や電鋳法、フォトリソグラフィを組み合わせて形成する。これらの部材の周囲は媒体対向面Sと図4において紙面上方の面であり、以降の工程で第1の誘電体103を形成する面を除いて誘電体膜や樹脂材料を用いて封止する。なお、再生素子109と記録素子102の製造方法は公知の垂直磁気記録方式の磁気記録装置に使用される磁気ヘッドの製造方法を適用することができる。ここで、記録素子102は、スライダ101の流入端112から流出端110の方向に、ヨーク1021、磁気ポール1023の順に配置する。
【0065】
記録素子102形成後、図4(b)に示すように、誘電体基板113上に第1の誘電体103を形成する。第1の誘電体103の形成に続き、金属膜104を形成する。第1の誘電体103や金属膜104はスパッタリング法または蒸着法を用いて形成可能である。
【0066】
続いて、図4(c)に示すように、金属膜104に溝1041をフォトリソグラフィ、電子ビーム露光またはFIB(Focus Ion Beam)加工等によって形成する。このときの溝1041は一方の端が媒体対向面Sに達するように形成する。
【0067】
続いて、図4(d)に示すように傾斜部材108を金属膜104上に形成する。傾斜部材108の形成に際しては、蒸着法またはスパッタリング法に代表される成膜手法を用いた上で、成膜に際して遮蔽板による部分的な遮蔽を行って、形成される膜厚を傾斜させることで傾斜部材108を形成してもよく、このような遮蔽板を用いずに成膜を行った場合、フォトリソグラフィ等のリソグラフィ手段によって傾斜面を形成しても良い。さらには、予め機械加工によって作成された傾斜部材108を樹脂接着剤やAuSn等の高融点半田、原子拡散に代表される接合手法によって金属膜104上に接合しても良い。
【0068】
続いて、図4(e)に示すように、傾斜部材108上に半導体レーザー素子106を接合する。この際の接合についても樹脂接着剤やAuSn等の高融点半田、原子拡散を利用した接合手法等を適用することが可能である。さらに続いて、第2の誘電体105をスパッタリングや蒸着に代表される成膜方法や、樹脂材料の塗布によって形成する。
【0069】
続いて、図4(f)に示すように、Al−TiC基板101’からスライダ101を切り出した上で、媒体対向面SまでCMP(Chemical Mechanical Polishing)によって研磨を行った後、イオンミリング等のエッチング手法を利用して上記媒体対向面SにABS面パターンを形成する。これらの作製に際しては、公知の磁気ヘッドの製造方法を適用可能である。
【0070】
ここで、本願の熱アシスト磁気ヘッド11は、媒体対向面Sに直交する方向であるX−Z平面に金属膜104及び溝1041が連続的に形成されている。このことにより、記録媒体150との擦れが生じた場合にも近接場光発生部1042の損傷を防ぐことが出来るとともに、CMP研磨やイオンミリングによって媒体対向面Sが形成された場合にも、近接場光発生部1042と磁気ポール1023との位置関係が変化することなく、媒体対向面Sの所望の位置に確実に近接場光発生部1042を形成することができる。
【0071】
なお、図4(a)〜(f)を用いて説明した製造工程では、Al−TiC基板101’上に素子構造を形成してからスライダ101の切り出しを行ったが、先にスライダ101の切り出しを行った上で図4(a)〜(e)に示した素子構造を形成しても構わない。
【0072】
本実施形態の熱アシスト磁気ヘッド11を適用することによって、半導体レーザー素子106から発せられた光の強度を上回る高強度の近接場光を記録媒体150に対して照射することが出来、極微細な領域の局所加熱を行って熱アシスト磁気記録を行うことが出来る。また、レンズ集光系や導波路構造、グレーティング構造を用いることのない極めて簡易な構成を用いて記録媒体150に対して高強度の近接場光を照射可能であるため、製造工程が簡略化されるとともに、レンズや導波路と半導体レーザーとの高精度な位置決めが不要となり、製造が容易になる効果を奏する。更に、高出力化に適したTEモードレーザーを半導体レーザー素子106として用いるため、高出力の近接場光を記録媒体150に照射可能となり、キュリー温度の高い記録媒体150に対しても記録が可能となる。加えて、近接場光発生部1042が溝1041を用いて形成されているため、熱伝導率の高い金属膜104の表面積を大きくすることが出来、高強度のレーザー光107の照射や高強度の近接場光発生に伴って生じる熱を効率良く拡散させて外部に放出できる。また、金属膜104が記録素子102や再生素子109への光照射を防ぐ遮蔽膜として機能するため、これらの素子の耐久性を高めることが可能となる。熱アシスト磁気ヘッド11の製造に際しては、媒体対向面Sに対して直交する方向に金属膜104及び溝1041が形成されていることにより、CMP研磨やイオンミリングによって媒体対向面Sが形成された場合にも、近接場光発生部1042と磁気ポール1023との間の距離が変化することなく、媒体対向面Sの所望の位置に確実に近接場光発生部1042を形成することができる。
【0073】
<第2の実施形態>
本願の第2の実施形態について図5を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態において説明した部材やその機能については同じ符号を付して説明を省略する。第1の実施形態に示した熱アシスト磁気ヘッド11は、流入端112から流出端110、すなわちY軸の正方向から負方向に向かって、磁気ポール1023、第1の誘電体103、金属膜104の順に配置した構成であるのに対して、第2の実施形態における熱アシスト磁気ヘッド21は、図5(a)及び(b)に示すように、流入端112から流出端110、すなわちY軸の正方向から負方向に向かって、金属膜104f、第1の誘電体103、磁気ポール1023fの順に配置した構成である。本実施形態のように金属膜104fを磁気ポール1023fよりも流入端112の近くに配置することにより、記録媒体150に対してまず、近接場光発生部1042fからの近接場光照射に伴う加熱が行われ、続いて、磁気ポール1023fから記録磁界が印加されて磁気情報が記録される。記録媒体150の加熱が磁気ポール1023fより流入端112に近い位置で行われることにより、温度上昇した磁性体層1501が記録媒体150の移動に伴って磁気ポール1023f下に入り磁気情報が記録されるので、金属膜104fと磁気ポール1023fの間隔、すなわち第1の誘電体103の厚みを第1の実施形態よりも広げることが可能となり、素子設計の自由度が高くなるとともに、第1の誘電体103に要求される膜厚精度を緩和することが可能となる。
【0074】
なお、本実施形態においては半導体レーザー素子106からのレーザー光107は金属膜104fに形成された近接場光発生部1042fに直接照射されていないが、このような構成でも近接場光発生部1042fが近接場光を発生することは可能である。これは、レーザー光107が磁気ポール1023fによって散乱され、その伝播成分と近接場成分とによって金属膜104fの溝1041f、引いては近接場光発生部1042fで電界増強を生じていると考えられる。従って、本実施形態において上記の近接場成分を近接場光発生部1042fにおける電界増強に有効に活用する観点から、磁気ポール1023fと近接場光発生部1042fとの間の距離はレーザー光107の波長以下、より好ましくは、磁気ポール1023fのX軸方向(レーザー光107の偏光方向)の幅以下に設定することが望ましい。
【0075】
本実施形態における溝1041fには、第1実施形態において説明したような様々な形状のものを適用できる。また、誘電体基板113f、記録素子102fおよびその構成要素であるヨーク1021f、コイル1022f、磁気ポール1023fについても形状は異なるが第1実施形態で説明したものと同じものを適用できる。
【0076】
本実施形態の熱アシスト磁気ヘッド21の製造方法は、第1の実施形態の熱アシスト磁気ヘッド11の製造方法に準ずるものであって、金属膜104f、第1の誘電体103、磁気ポール1023fを形成する順が、第1の実施形態の熱アシスト磁気ヘッド11における形成順と逆になる。従って、第1の実施形態の熱アシスト磁気ヘッド11における製造手順において、記録素子102fを形成する途中の段階、すなわち、ヨーク1021fとコイル1022fが形成された状態で、溝1041fの形成を含んだ金属膜104fの形成と第1の誘電体103の形成を行い、これに続いて磁気ポール1023fを形成する。
【0077】
図5(a)及び(b)に示した熱アシスト磁気ヘッド21の構成においては、金属膜104fが、記録素子102fのヨーク1021fと磁気ポール1023fとを繋ぐ箇所を避ける形でスライダ101の流出端110の側面111に対向して形成されている場合を記載している。しかしながら、これ以外にも、ヨーク1021fと磁気ポール1023fとを繋ぐ箇所を避ける形となっていればよく、当該箇所の左右、すなわち図中X方向やZ方向にも、金属膜104fが拡張されて配置されていても構わない。このように金属膜104fの面積を大きくすることにより、近接場光発生時の熱を拡散させる効果が大きくできる。
【0078】
<第3の実施形態>
第3の実施形態として、第1または第2の実施形態に示した熱アシスト磁気ヘッド11、21を磁気記録再生装置2001に適用する形態について図6に示す。
【0079】
本実施形態に係る磁気再生装置2001は、第1または第2の実施形態と同構成の熱アシスト磁気ヘッド11または21と、ディスク状の記録媒体150と、記録媒体150を回転駆動するためのスピンドル301と、熱アシスト磁気ヘッド11または21を支持固定するサスペンションアーム302と、サスペンションアーム302を記録媒体150上で駆動するボイスコイルモーター303と、これらを制御するための制御回路304とを含んで成る。制御回路304には、スピンドル301の回転駆動を制御する回転駆動制御装置305と、熱アシスト磁気ヘッド11または21と信号をやり取りする信号処理装置306と、熱アシスト磁気ヘッド11または21に形成された半導体レーザー素子106の出力を制御する出力制御装置307と、読み出した情報を蓄積するためのメモリ装置308とが含まれる。これらの構成は熱アシスト磁気ヘッド11または21と出力制御装置307を除いて、何れも公知のハードディスクに用いられる構成である。
【0080】
スピンドル301の回転数は、記録再生を行うことができる回転数であればよく、特に限定するものでは無いが、例えば1800rpmから7200rpmの回転数を用いることができる。
【0081】
次に、磁気記録再生装置2001の動作について説明する。電源が投入されると、熱アシスト磁気ヘッド11または21は、スピンドル301の回転に伴って生じる空気流によって2〜10nm程度の浮上高さで記録媒体150上を浮上する。続いて、熱アシスト磁気ヘッド11または21の半導体レーザー素子106に通電し、レーザー光107を発生させ、これを金属膜104に形成された溝1041に照射する。これにより、近接場光発生部1042からレーザー光107の波長よりも小さなサイズの近接場光が高強度で発生する。このとき制御回路304に含まれる出力制御装置307は、良好な熱アシスト磁気記録が行えるように、熱アシスト磁気ヘッド11または21における半導体レーザー素子106の出力を調整する。近接場光が記録媒体150に照射されると、記録媒体150の磁性体層1501が局所的に加熱され、局所加熱箇所の磁気ビットのみが磁気ポール1023から印加された記録磁界によって反転することで磁気情報が記録される。反転した磁気ビットは記録媒体150が回転して移動することによって冷却され、記録情報が安定化する。これにより磁気情報の記録は終了する。
【0082】
記録された磁気情報の再生に際しては、再生素子109によって磁気ビットからの漏洩磁界を検出する。これには公知のハードディスクにおいて行われる再生方法が用いられる。
【0083】
本実施形態によれば、高強度の近接場光を用いて効率的な熱アシスト磁気記録を実現可能な磁気記録再生装置2001を提供できる。
【実施例】
【0084】
次に、本発明について、実施例を用いて説明する。
【0085】
(実施例1)
第1の実施形態の熱アシスト磁気ヘッド11について、金属膜104に形成された溝1041のZ方向の長さLを変化させた実施例を示す。ここでは、図2(a)に示したスリットとして形成された溝1041aを適用し、長さLの範囲内で溝1041aの図2中X−Y平面に平行な断面の形状はZ位置に依らない一定形状とした。また、溝1041の一端は媒体対向面Sに達するようにし、近接場光発生部1042を形成した。
【0086】
本実施例において、スライダ101の材料にはAl−TiCを用い、記録素子102の材料には、ヨーク1021及び磁気ポール1023にNiFeを、コイル1022にCuを用いた。記録素子102の周囲を埋める誘電体基板113、及び、第1の誘電体103、第2の誘電体105の材料には屈折率nが1.5である酸化Siを適用した。金属膜104の材料にはAuを用い、図2(a)に示す溝1041aを、近接場光発生部1042aのX方向のスリット幅が20nmとなるように形成した。記録媒体150の磁性体層1501の材料にはCo膜を用いた。第1の誘電体103の膜厚、及び、金属膜104の膜厚は何れも100nmとした。熱アシスト磁気ヘッド11と記録媒体150との浮上高さは4nmとした。
【0087】
本実施例の熱アシスト磁気ヘッド11について、FDTD(Finite Difference Time Domain)シミュレーションを用いて、近接場光発生部1042から記録媒体150に照射される近接場光の強度を計算した。計算に際しては、レーザー光107が出射される中心位置である、半導体レーザー素子106の発光中心位置(出射端面S2)を、スライダ101の流出端110からY軸負方向に2300nmの位置に配置し、媒体対向面Sからの高さ(図1(a)中Z軸の正方向)を2600nmとした。図1(a)中でX方向の発光中心位置は、近接場光発生部1042のX方向の中心位置と一致させた。半導体レーザー素子106から発せられるレーザー光107の電界強度|E|はピーク値1V/mのガウス分布を持つものとした。TEモードで発光する半導体レーザー素子106を想定し、偏光方向は図1(a)中X軸方向とした(金属膜104に対してS偏光)。また、実際の半導体レーザー素子106からの出射光を再現するため、半導体レーザー素子106から出射されるレーザー光107には放射角を与え、出射光の中心軸を中心にX軸方向に10°、Y−Z平面に30°の放射角(電界強度が中心軸における値の1/e以上となる範囲)を持つように設定した。半導体レーザー素子106の傾斜角θは、レーザー光107の中心軸がY−Z平面内で記録媒体150の表面に直交する方向を0°とし、そこからY−Z平面内でY軸負方向、すなわち、スライダ101における流出端110の側面111に対向して形成された金属膜104の方向に向けて傾斜させる向きを正方向とした。
【0088】
図7には、上記の手法を用いて、近接場光発生部1042から出射された近接場光の、記録媒体150表面における電界強度|E|のピーク値を、溝1041aのZ方向の長さLに対して示した。ここで、半導体レーザー素子106の傾斜角θは20°とし、光源波長λは830nmとした。計算は、シミュレーション領域内の電界強度|E|が安定する定常状態に達するまで行った。
【0089】
図7に示すように、溝1041aの長さLが500nmから2600nmの範囲では、半導体レーザー素子106から出射された光の電界強度|E|が、溝1041aが形成されていることによって増幅され、記録媒体150表面で、光源の電界強度ピーク値(1V/m)の15〜16倍の電界強度が得られた。また、溝1041aの長さLが125nmから400nmの範囲で、長さLを500nmから2600nmとした場合よりも更に大きな電界強度が得られた。特に、長さLを150nmから200nmの間とした場合には、長さLを500nmから2600nmとした場合と比べて2倍以上の電界強度|E|が得られた。なお、図7に示した範囲において、近接場光のスポットサイズは、電界強度ピーク値が最大値の1/e以上となる範囲とした場合、16nm以下と極めて小さいものであった。
【0090】
ここで、本実施例においては、半導体レーザー素子106からの光がFar−Field光(漏れ光)として記録媒体150に照射される領域が存在する。図8には、記録媒体150表面において近接場光発生部1042aから出射された近接場光の電界強度|E|が最大となるX方向位置における、記録媒体150が移動する方向(図1(a)中Y方向)についての電界強度分布を示した。図8中における横軸であるY値の正負は、図1や図2に図示した方向と一致しており、Yの値が負に大きくなる方向に記録媒体150が移動する。また、図8では、図1(a)における、スライダ101の流出端110(第1の誘電体103との境界)をY=0としている。縦軸である電界強度|E|は対数軸で表示している。なお、図8に示した電界強度|E|のプロファイルは図7において、溝1041aの長さLを165nmとした場合のものである。図8の電界強度|E|において、Yが0nmから−200nmの範囲は、近接場光発生部1042aからの近接場光によって生じたピークであり、Yが−200nmから−2800nmの範囲は漏れ光を示している。
【0091】
図8の結果から、半導体レーザー素子106からの光が漏れ光として記録媒体150に照射される領域(図8における、Y=−200nmから−2800nm程度の範囲)においては、その電界強度|E|は最高でも7.0×10−2/m程度であった。これは近接場光の電界強度|E|のピーク値である41V/mに比べて600分の1程度であった。また、このような漏れ光が照射される領域(漏れ光の電界強度|E|がピーク値である7.0×10−2/mの1/e以上となる範囲)の記録媒体150の移動方向の長さ(図1(a)中のY方向の長さ)範囲は1800nm程度であり、近接場光が照射される領域の長さ(近接場光の電界強度|E|がピーク値である41V/mの1/e以上となる範囲として16nm)との比が約110倍となることを考慮しても、近接場光が記録媒体150に与えるエネルギーに比べて、漏れ光が記録媒体150に与えるエネルギーは6分の1程度の小さな値である。これにより、漏れ光による誤書き込みや誤消去は引き起こされずに済む。
【0092】
溝1041aの長さLの下限値は、このような観点(近接場光が記録媒体150に与えるエネルギーに対する、漏れ光が記録媒体150に与えるエネルギーの比を6分の1程度とする)から、Lが100nm以上であることが望ましいことがわかった。一方で、長さLの上限値については特に制限される要素はなく、例えば、図1(a)において、金属膜104の高さ方向の上端まで溝1041aが形成されていても構わない。
【0093】
このように、本実施例の熱アシスト磁気ヘッド11を用いれば、半導体レーザー素子106から出射されたレーザー光107が、溝1041で強度増幅され、高強度の近接場光を近接場光発生部1042aから磁気ポール1023直近の記録媒体150に照射することが可能となる。これにより、極めて微小なサイズの熱アシスト磁気記録が実現可能となる。更に、本実施例の熱アシスト磁気ヘッド11は、溝1041aを利用して近接場光を生成する方式であるために、溝部1041a周囲に広い面積で形成された高熱伝導性の金属膜104が存在する。これにより、レーザー光107の照射に伴って発生する熱を効率良く拡散させるとともに、金属膜104が記録素子102や再生素子109に対してレーザー光107が直接照射されないようにする遮光膜としても機能する。その結果、高出力のレーザー光107が直接照射された場合にもこれらの素子が高い耐久性を示す熱アシスト磁気ヘッド11を提供できる。
【0094】
このような熱アシスト磁気ヘッド11は、金属膜104における表面プラズモン発生効率が高い波長範囲において高出力化が容易な、TEモードの半導体レーザー素子106を用いているため、キュリー温度の高い磁性体層1501を備える記録媒体150に対しても記録が可能となるとともに、コストメリットが大きく、且つ、実用性が高い。
【0095】
(実施例2)
実施例2として、図9には、実施例1と同じ第1の実施形態の熱アシスト磁気ヘッド11において、半導体レーザー素子106の傾斜角θを変化させた場合の、記録媒体150表面における近接場光の電界強度|E|のピーク値の変化を示した。ここで、溝1041aの長さLは2600nmとした。
【0096】
図9に示すように、記録媒体150表面における近接場光の電界強度|E|は傾斜角θが40°近傍を最大値として変化する挙動を示し、15°から75°の範囲で、光源であるレーザー光107の電界強度|E|の10倍以上の増幅率を示した。実施例1で述べた漏れ光の影響を考慮すると、誤消去や誤書き込みを防止する観点から、漏れ光の125倍以上程度の近接場光強度(電界強度|E|のピーク値)が得られることが望ましい。この観点から、近接場光強度としては光源におけるレーザー光107の電界強度|E|に対して8倍以上の増幅率が得られることが望ましいことがわかった。このことから、半導体レーザー素子106の傾斜角θは15°から75°の範囲とすることが望ましい。
【0097】
(実施例3)
実施例3として、図10には、実施例1と同じ第1の実施形態の熱アシスト磁気ヘッド11において、半導体レーザー素子106の傾斜角θを40°とした場合の、溝1041aの長さLに対する記録媒体150の表面における近接場光の電界強度ピーク値の変化を示した。ここでは、実施例1で特に電界強度|E|の増幅効果が高かった、長さLが500nm以下の範囲を図示している。本実施例における計算条件は、傾斜角θを40°とした以外は実施例1と同じである。
【0098】
図10に示すように、実施例1において傾斜角θ=20°であるのに対して実施例3において傾斜角θ=40°と傾斜角θが増加するのに伴い、電界強度|E|の絶対値は大きくなる。そして、電界強度|E|の絶対値が極大となる溝1041aの長さLの値は傾斜角θに関して違いが生じないことが確認された。このことは、本願の熱アシスト磁気ヘッド11を製造する際に、半導体レーザー素子106の傾斜角θの許容誤差範囲が大きくなることを示している。すなわち、溝1041aの長さLを、電界強度|E|の増幅率が大きくなる値に予め形成しておけば、半導体レーザー素子106の傾斜角θが多少ずれても、高い増幅率が得られることを示している。
【0099】
(実施例4)
実施例4として、溝1041の形状を図2(b)や(d)に示す窪みとした場合について示す。ここでは、図2(b)に示した形状がZ方向に延在する溝1041bを適用し、窪みのX方向の幅を20nm、Y方向の深さを50nmとした場合について、実施例1と同様のFDTDシミュレーションを行った。その結果、半導体レーザー素子106の傾斜角θを20°とした場合、溝1041bの長さLが2600nmのときに、39V/m、長さLが165nmのときに、46V/mの電界強度ピーク値が記録媒体150の表面で得られた。また、傾斜角θを40°とした場合には、溝1041bの長さLが2600nmのときに、73V/m、長さLが165nmのときに、92V/mの電界強度ピーク値がそれぞれ得られた。
【0100】
このように、本願の熱アシスト磁気ヘッド11は、溝1041を窪みとした場合であっても、光源のレーザー光107の強度に対して大きな電界強度|E|の増幅が得られる構成である。
【0101】
(実施例5)
本実施例では、図3に示したように、近接場光発生部1042eにおいて記録磁界を同時に発生させることが可能な構成について、FDTDシミュレーションを行った。
【0102】
スリット部1043のX方向の幅は200nmとし、溝1041eのX方向の幅は20nm、Y方向の深さは50nm、Z方向の長さは165nmとした。半導体レーザー素子106の傾斜角θは40°とした。その結果、11V/mの電界強度ピーク値が記録媒体150の表面で得られ、近接場光発生部1042eにおいて記録磁界を同時に発生させることが可能な構成においても、光源のレーザー光107の強度を増幅した高強度の近接場光が得られることが確認できた。
【0103】
(実施例6)
実施例1において、半導体レーザー素子106の発光中心位置の媒体対向面Sからの高さ(図1(a)中Z方向の距離)を2600nmとしたが、本実施例ではこれを変化させた場合について示す。
【0104】
本実施例では、上記半導体レーザー素子106の発光中心位置の媒体対向面Sからの高さを距離Dとし、距離Dを1000nmと小さくした場合、及び、5000nmと大きくした場合についてFDTDシミュレーションを行った。このときの溝1041aの長さLは、何れも距離Dと同じとした。半導体レーザー素子106の傾斜角θは40°とした。これ以外の条件は実施例1と同じとした。
【0105】
まず、距離Dを1000nmとした場合、近接場光発生部1042aから発せられる近接場光の記録媒体150の表面における電界強度ピーク値は16V/mであった。これに対し、漏れ光の記録媒体150の表面における強度は最高で1.4×10−1/mであり、近接場光のほうが110倍大きい値であった。これは記録媒体150の移動方向(Y方向)の近接場光照射範囲(近接場光の電界強度|E|がピーク値である16V/mの1/e以上となる範囲として16nm)と漏れ光照射範囲(漏れ光の電界強度|E|がピーク値である1.4×10−1/mの1/e以上となる範囲として1000nm)の比(63倍)を考慮しても大きな値であり、漏れ光による誤書き込みや誤消去は引き起こされずに済む。
【0106】
また、距離Dを5000nmとした場合、近接場光発生部1042から発せられる近接場光の電界強度のピーク値は2.6V/mであった。これに対し、漏れ光の強度は最高で1.7×10−2/mであり、近接場光の方が150倍大きい値であった。これは記録媒体150の移動方向(Y方向)の近接場光照射範囲(近接場光の電界強度|E|がピーク値である2.6V/mの1/e以上となる範囲として16nm)と漏れ光照射範囲(漏れ光の電界強度|E|がピーク値である1.7×10−2/mの1/e以上となる範囲として2200nm)の比(140倍)を考慮しても大きな値であり、漏れ光による誤書き込みや誤消去は引き起こされずに済む。
【0107】
このように半導体レーザー素子106の発光中心位置の媒体対向面Sからの距離Dは広いマージンを有している。すなわち、本願の熱アシスト磁気ヘッド11の製造に際して、実施例2や実施例3に示した傾斜角θの許容範囲が広いことともに、半導体レーザー素子106の発光中心位置の媒体対向面Sからの距離Dに関しても数ミクロンオーダーで取り付け時のずれに対する許容範囲が存在する。このことは、高い取り付け精度を必要としないため、製造方法の簡略化が可能であるとともに、良品率の向上にも繋がる。
【0108】
なお、ここで示した距離Dは500nmから10μmの範囲に設定されることが特に望ましい。半導体レーザー素子106の発光中心位置の媒体対向面Sからの距離Dが500nmよりも小さくなると、半導体レーザー素子106から発せられるFar−Field光の影響が大きくなり、記録媒体150の磁気情報が誤書き込み、または、誤消去される虞が生じる。また、この距離Dが10μmよりも大きくなると、記録に十分な強度の近接場光を近接場光発生部1042aから発生させることが難しくなる。
【0109】
(実施例7)
本実施例では、図7に示した、電界強度|E|の溝1041aの長さL依存性において、長さLが500nm以下の領域に見られる特に大きな電界強度の増強が得られる条件について示す。
【0110】
まず、このような電界強度|E|の増強が生じる理由を考察するために、図11には、(a)Lが1μmの場合、(b)Lが500nmの場合、(c)Lが350nmの場合、(d)Lが165nmの場合のそれぞれについて、近接場光発生部1042aの媒体対向面Sの位置を基点(Z=0)としてZが正の方向(図1における紙面上方向)に沿った溝1041aの電界強度分布を示した。なお、縦軸は対数軸となっている。
【0111】
図11から分かるように、(a)の1μmの場合には、近接場光発生部1042a位置(図中Z=0)よりもZが大きい領域(溝1041内部)において、レーザー光107の波長λの数分の1程度の幅(数百nm程度の幅)を持った強度ピークが3つ存在している。また、(b)の500nmではこのような強度ピークが2つ存在している。これに対し、(c)および(d)では強度ピークが1つのみである。これらの結果から、長さLが500nm以下の領域に見られる電界強度|E|の特に大きな増強は、溝1041a内のZ方向に定在波が生じ、その強度ピークが、近接場光発生部1042aでのピークを除いてZ方向に1つのみとなることにより発生していることがわかる。
【0112】
また、これは、有限の長さLを持つ溝1041aが共振器の役割を果たしており、且つ、その共振器内に生じる定在波の周期が少ない状態、特に、強度ピークが1つとなる場合に高強度の増幅が得られることを示している。このように、溝1041a内の強度ピークを1つとすることで、記録媒体150表面における近接場光強度を格段に高めることが可能である。
【0113】
(実施例8)
本実施例では、実施例7に示した共振器による増幅の事例において、第1の誘電体103及び第2の誘電体105の屈折率nを変化させた際の、溝1041aの長さLの望ましい範囲について示す。
【0114】
実施例7において、図11に示したように溝1041aでZ方向に生じる強度ピーク(定在波)は、そのZ方向の幅が、光源であるレーザー光107の波長の数分の1程度である。このことから、このような定在波は、主としてレーザー光107から発せられた金属膜104に達した光が溝部1041aのZ方向の両端で反射することによって生じていると想定される。
【0115】
この観点から、近接場光発生部1042から発せられる近接場光の記録媒体150の表面における強度が最大となる長さL(図7や図11においては、165nmであった)は、溝1041aと接する第1の誘電体103及び第2の誘電体105の屈折率nによって変化することが考えられる。
【0116】
図12には、第1の誘電体103及び第2の誘電体105の屈折率を同じ値nとし、実用性のある材料選択の範囲を念頭に、nを1.0から2.5まで変化させた際に、記録媒体150表面における近接場光の電界強度ピーク値が最大となる溝1041aの長さLを屈折率nに対して示した。図12に示すように、電界強度|E|が最大となる溝1041aの長さLを屈折率nに対して示した。図12に示すように、電界強度|E|が最大となる溝1041aの長さLは屈折率nの増加に対して単調に減少しており、ほぼ、屈折率nの増加分と溝1041aの長さLの減少分とが比例する関係であることが明らかとなった。これに基づけば、第1の誘電体103や第2の誘電体105の屈折率を変化させた場合にも最適な溝1041aの長さLを求めることが可能である。
【0117】
ここで、図7や図11の結果からは、溝1041aの長さLが100nmから500nmまでの範囲で、溝1041aの長さLが更に長い場合に比べて大きな電界強度|E|が得られている。言い換えれば、共振構造による電界強度増幅が見られている。この範囲は、電界強度|E|が最大となる溝1041aの長さL(165nm)に対して65nm短い長さから、電界強度|E|が最大となる溝1041aの長さLの2倍(330nm)に対して170nm長い長さまでの範囲に相当する。さらに屈折率nを1.0から2.5まで変化させて上記のように大きな電界強度|E|が得られる溝1041aの長さLの範囲を足し合わせると、その範囲は、60nm以上830nm以下となった。この範囲に長さLを設定することで、溝1041aに生じる電界強度ピークを1つに限定し、共振構造による電界強度増幅を得ることが可能である。
【0118】
なお、本実施例においては、第1の誘電体103と第2の誘電体105とを同じとする場合について示したが、これらを、それぞれ屈折率の異なる材料で構成しても構わない。その場合、図2(a)や(c)に例示したようなスリットの溝1041については、第1の誘電体103と第2の誘電体105の屈折率の中間の値に基づいて最適な長さLを求めればよく、図2(b)や(d)に例示したような窪みの溝1041については、第2の誘電体105の屈折率のみを考慮すればよい。言い換えれば、何れのケースでも、近接場光発生部1042と接している誘電体の屈折率を考慮すればよい。
【0119】
(実施例9)
実施例8に示した共振構造を利用する場合、電界強度|E|が最大となる溝1041aの長さLは、第1の誘電体103と第2の誘電体105の屈折率nの値と同様に、半導体レーザー素子106から出射されるレーザー光107の波長λにも依存することが考えられる。本実施例では、レーザー光107の波長λを変化させた場合の、溝1041aの長さLの望ましい範囲について示す。
【0120】
図13には、レーザー光107の波長λを、TEモードの高強度のレーザー光が得られる観点、及び、表面プラズモンの発生効率が高い観点から、650nmから830nmまでの範囲とし、この範囲で波長λを変化させた際に、電界強度|E|のピーク値が最大となる溝1041aの長さLを求めた結果を示した。ここでの第1の誘電体103と第2の誘電体105の屈折率nは1.0とした。
【0121】
図13に示すように、電界強度|E|が最大となる溝1041aの長さLはレーザー光107の波長λの増加に対して単調に増加し、波長λとほぼ比例関係にある。
【0122】
ここで、屈折率nが1.0で波長λが830nmの場合には、溝1041aの長さLが200nmから830nmまでの範囲で、溝1041aの長さLが更に長い場合に比べて大きな電界強度|E|が得られている。言い換えれば、共振構造による電界強度増幅が見られている。この範囲は、電界強度|E|が最大となる溝1041aの長さL(275nm)に対して75nm短い長さから、電界強度|E|が最大となる溝1041aの長さLの2倍(550nm)に対して280nm程度長い長さまでの範囲に相当する。さらに波長λを650nmから830nmまで変化させて上記のように大きな電界強度|E|が得られる溝1041aの長さLの範囲を足し合わせると、その範囲が、60nm以上830nm以下となる。溝1041aの長さLをこのような範囲に設定することで共振構造による電界強度増幅が得られることがわかった。
【0123】
実施例7で示した溝部1041aの長さLの好適な範囲に合わせて考えれば、溝部1041aの長さLを60nm以上830nm以下に設定しておくことで、第1の誘電体103と第2の誘電体105の屈折率nが1.0から2.5の範囲、半導体レーザー素子106から発せられるレーザー光107の波長λが650nmから830nmの範囲から選択される場合に、共振構造による電界強度増幅を得ることが出来る熱アシスト磁気ヘッド11を実現可能であり、これにより、非常に高い効率でもって記録媒体150への熱アシスト磁気記録が可能となる。
【0124】
(実施例10)
実施例7から実施例9で示したような、共振構造による電界強度|E|の増幅について、増幅が得られる条件を一般化するために、第1の誘電体103及び第2の誘電体105の屈折率n、溝1041aの長さL、レーザー光107の波長λから求められる光学距離(n×L/λ)を基準とし、これらの値を変化させて電界強度|E|が増幅される範囲を求めた。その結果、光学距離(n×L/λ)を0.1から1.0の範囲とした場合に、共振構造による電界強度増幅が得られることが確認出来た。すなわち、熱アシスト磁気ヘッド11に適用される第1の誘電体103及び第2の誘電体105の屈折率n(溝1041が窪みで形成される場合には、第2の誘電体105の屈折率nのみ)、及び、レーザー光107の波長λに応じて、光学距離(n×L/λ)が0.1から1.0の範囲となるように溝1041aの長さLを設定することにより、共振構造による電界強度増幅を得ることが出来る。
【0125】
(実施例11)
実施例11では、第2の実施形態に示したように、スライダ101の流入端112から流出端110の方向に、近接場光発生部1042f、磁気ポール1023fの順に配置された構成の熱アシスト磁気ヘッド21について、半導体レーザー素子106の傾斜角θを20°として、記録媒体150表面における電界強度|E|を計算した。FDTDシミュレーションの条件は実施例1に準ずるものとし、図5における第1の誘電体103の膜厚、及び、金属膜104fの膜厚はともに100nmとした。溝1041fには図2(a)に示したスリットのものを適用し、溝1041fの長さLは2600nmとした。
【0126】
その結果、記録媒体150表面において67V/mの電界強度ピーク値が得られ、光源であるレーザー光107の電界強度|E|が図7に示した実施例1においてL=2600nmの場合の電界強度ピーク値に対して大きく増幅されている結果となった。このように、スライダ101の流入端112から流出端110の方向に、近接場光発生部1042f、磁気ポール1023fの順に配置された構成においても、高い電界強度増幅効果が得られることが確認できた。
【0127】
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態や実施例に限定されるものではない。
【0128】
例えば、上述した実施形態では熱アシスト磁気ヘッド11または21は、垂直磁気記録方式に適用されているが、水平磁気記録方式に適用することも可能である。
【0129】
また、溝1041は、金属膜104の媒体対向面Sで近接場光を発生できればよく、Z方向に幅の変化するものであってもよい。
【符号の説明】
【0130】
11、21 熱アシスト磁気ヘッド
101 スライダ
101’ Al−TiC基板
102、102f 記録素子
1021、1021f ヨーク
1022、1022f コイル
1023、1023f 磁気ポール
103 第1の誘電体
104、104f 金属膜
1041、1041a、1041b、1041c、1041d、1041e、1041f 溝
1042、1042a、1042b、1042c、1042d、1042e、1042f 近接場光発生部
1043 スリット部
1044a、1044b 電極部
1045a、1045c、1045d 傾斜部
105 第2の誘電体
106 半導体レーザー素子
107 レーザー光
108 傾斜部材
109 再生素子
110 流出端
111 側面
112 流入端
113、113f 誘電体基板
150 記録媒体
1501 磁性体層
1502 基板
2001 磁気記録再生装置
301 スピンドル
302 サスペンションアーム
303 ボイスコイルモーター
304 制御回路
305 回転駆動制御装置
306 信号処理装置
307 出力制御装置
308 メモリ装置
D 距離
|E| 電界強度
L 長さ
n 屈折率
S 媒体対向面
S2 出射端面
θ 傾斜角
λ 波長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体に対して記録磁界を印加するための磁界印加手段、レーザー光を出射する半導体レーザー素子、及び、レーザー光が照射されると近接場光を発生する近接場光発生部がスライダに保持された熱アシスト磁気ヘッドであって、
上記近接場光発生部は、媒体対向面を上記スライダの底面としたときに上記スライダの流出端の側面と対向するように配置された金属膜に形成された上記媒体対向面に垂直に延在した溝の上記磁気記録媒体に対向した端部であり、
上記半導体レーザー素子は、TEモード発振するものであって、上記スライダの上記流出端の上記側面と対向するように配置されているとともに、その出射端面が上記スライダの上記流出端の上記側面から上記金属膜より離れた位置に配置され且つ上記近接場光発生部にレーザー光が照射されるような方向に上記媒体対向面に対して傾斜していることを特徴とする熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項2】
上記半導体レーザー素子の上記出射端面の高さ位置が上記媒体対向面から500nm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項3】
上記半導体レーザー素子の上記出射端面の上記媒体対向面に対する傾斜角が15°以上75°以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項4】
上記溝が、上記金属膜にスリットとして形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項5】
上記溝が、上記金属膜に窪みとして形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項6】
上記溝が、上記媒体対向面の近傍上記金属膜に窪みとして形成され、上記窪みよりも上記媒体対向面から離れた位置で上記金属膜に上記窪みと連続したスリットとして形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項7】
上記溝及び上記近接場光発生部と接する誘電体が形成され、上記誘電体の屈折率をn、上記溝の上記媒体対向面に垂直な方向の長さをL、上記半導体レーザー素子から出射されるレーザー光の波長をλとしたときに、波長λで規格化した光学距離(n×L)/λが0.1以上、1.0以下であることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項8】
上記溝及び上記近接場光発生部と接して誘電体が形成されているとともに、上記誘電体の屈折率が1.0以上、2.5以下であり、
上記半導体レーザー素子から出射されるレーザー光の波長が650nm以上830nm以下であり、
上記溝の上記媒体対向面に垂直な方向の長さが60nm以上830nm以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項9】
上記スライダの流入端から上記流出端に向かう方向について、上記磁界印加手段が上記近接場光発生部よりも上流に配置されていることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項10】
上記スライダの流入端から上記流出端に向かう方向について、上記近接場光発生部が上記磁界印加手段よりも上流に配置されていることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一項に記載の熱アシスト磁気ヘッドと、上記熱アシスト磁気ヘッドによって磁気情報が記録される磁気記録媒体とを備えている熱アシスト磁気記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−4156(P2013−4156A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137212(P2011−137212)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】