説明

熱リザーバを備えた磁気共鳴撮像システム及び冷却の方法

【課題】熱リザーバを備えた磁気共鳴撮像システム及びそのコイル冷却方法を提供すること。
【解決手段】熱リザーバを備えた磁気共鳴撮像(MRI)システム並びに冷却の方法を提供する。MRIシステムのマグネットシステム(20)向けの冷却容器(22)は、MRIシステムの複数のマグネットコイル(50)と接触させたヘリウム冷媒を包含する第1の部分(26)を含む。この冷却容器はさらに、第1の部分から分離させかつこれから流体的に脱結合させた第2の部分(24)を含んでおり、この第2の部分はヘリウム冷媒と異なる材料を包含すると共に第1の部分より大きな体積を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示した主題は、全般的には冷媒冷却式の磁気共鳴撮像(MRI)システムに関し、またさらに詳細にはMRIシステムの磁気コイルを冷却するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超伝導コイルMRIシステムでは、超伝導マグネットを形成するコイルはヘリウム容器を用いて冷媒冷却されるのが典型的である。これら従来のMRIシステムでは、その超伝導コイルは液体ヘリウム(He)浴内でそのコイルが液体He中に浸漬されるようにして冷却されている。この冷却機構では、かなりの量の液体He(例えば、1500〜2000リットルの液体He)を包含する極めて大きな高圧力容器の使用が必要である。こうして得られる構造では、製造コストが高いのみならず、重量も重くなる。
【0003】
さらに幾つかの事例では、コスト削減などのためにヘリウム容器を完全に満たさないことがある。この状況では、MRI超伝導マグネットのコイルを形成するワイヤの一部が、冷却用の液体Heではなく気体に対して曝されることになる。したがって、不安定やクエンチ事象が発生する確率が増大する。クエンチ事象の間に、これらのシステム内の液体Heがボイルオフし、マグネットコイルを浸漬させている冷媒浴からボイルオフしたヘリウムが逃げ出す可能性がある。クエンチがあるごとに、その後で再充填とマグネットの再ランピングがなされるため、クエンチは費用が高くつきかつ時間の無駄となる事象である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第2010/0231215 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって従来のMRIシステムでは、かなりの量の液体Heが必要である。この大量のHeは、大型のヘリウム容器を満たすことが必要であるのみならず、続いて生じる再充填に伴っても増加させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、磁気共鳴撮像(MRI)マグネットシステム向けの冷却容器を提供する。本冷却容器は、MRIシステムの複数のマグネットコイルと接触させたヘリウム冷媒を包含する第1の部分を含む。本冷却容器はさらに、第1の部分から分離させかつこれから流体的に脱結合させた第2の部分であって、ヘリウム冷媒と異なる材料を包含すると共に第1の部分より大きな体積を有する第2の部分を含む。
【0007】
別の実施形態では、主マグネットコイルを支持する主マグネット巻き型と、バッキングコイルを支持する2次巻き型と、を含んだ磁気共鳴撮像(MRI)マグネットシステムを提供する。本MRIマグネットシステムはさらに、その各々は異なる冷媒を包含する物理的に分離された部分を有する分割型冷却容器を含んでおり、また主マグネットコイル及びバッキングコイルはこれら分離された部分のうちの1つの内部の冷媒で覆われている。
【0008】
さらに別の実施形態では、磁気共鳴撮像(MRI)システム向けの冷却容器を形成するための方法を提供する。本方法は、主マグネット巻き型と2次巻き型を同心性配列で整列させるステップを含んでおり、ここでこれらの巻き型の各々がマグネットコイルを有している。本方法はさらに、主マグネット巻き型と2次巻き型の間に分割型冷却アセンブリを同心性に挿入するステップを含む。この分割型冷却アセンブリは、ヘリウム冷媒と別の異なる冷媒とをその内部に受け容れるために分離された2つの部分を含んでおり、ここでヘリウム冷媒を受け容れるための部分は別の冷媒を受け容れるための部分より小さくなっている。本方法はさらに、同心性に整列させた巻き型と分割型冷却アセンブリのそれぞれの端部に容器フランジを結合させるステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】様々な実施形態に従って形成した分割型冷却容器を表した磁気共鳴撮像(MRI)マグネットシステムの簡略ブロック図である。
【図2】様々な実施形態に従って形成した分割型冷却容器機構を表した図である。
【図3】一実施形態に従って形成した分割型冷却容器の概要ブロック図である。
【図4】一実施形態による内側巻き型の斜視図である。
【図5】一実施形態による内側巻き型の斜視図である。
【図6】一実施形態による外側巻き型の斜視図である。
【図7】一実施形態による巻き型及び冷却アセンブリを表した分解斜視図である。
【図8】同心性に整列させた図7の巻き型及び冷却アセンブリの斜視図である。
【図9】同心性に整列させた図7の巻き型及び冷却アセンブリの斜視図である。
【図10】同心性に整列させた図7の巻き型及び冷却アセンブリ並びに容器フランジを表した斜視図である。
【図11】様々な実施形態に従って形成した分割型冷却容器をその内部で実現し得るMRIシステムの概要ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述した要約並びにある種の実施形態に関する以下の詳細な説明は、添付の図面と共に読むことによってさらに十分な理解が得られよう。これらの図面が様々な実施形態の機能ブロックからなる図を表している場合も、必ずしもこれらの機能ブロックがハードウェア間で分割されることを意味するものではない。したがって例えば、1つまたは複数の機能ブロックは、単一のハードウェアの形や複数のハードウェアの形で実現させることがある。こうした様々な実施形態は図面に示した配置や手段に限定されるものではないことを理解すべきである。
【0011】
本明細書で使用する場合、単数形で「a」や「an」の語を前に付けて記載した要素やステップは、これに関する複数の要素やステップも排除していない(こうした排除を明示的に記載している場合を除く)と理解すべきである。さらに、「一実施形態」に対する言及は、記載した特徴も組み込んでいる追加的な実施形態の存在を排除すると理解されるように意図したものではない。さらに特に明示的に否定する記述をしない限り、ある具体的な性状を有する1つまたは複数の構成要素を「備える(comprising)」または「有する(having)」実施形態は、当該性状を有しない追加的なこうした構成要素も含むことがある。
【0012】
様々な実施形態は、磁気共鳴撮像(MRI)システム(特に、MRIシステムの超伝導マグネットのコイル)を冷却するためのシステム及び方法を提供する。少なくとも1つの実施形態の実施によって、超伝導マグネットのコイルの完全な浸漬を維持しながら(すなわち、超伝導マグネットコイルのワイヤを液体Heで覆ってながら)マグネットの冷却に用いる液体ヘリウム(He)の体積が例えば1500〜2000リットルから約200リットルにまで低減される。
【0013】
図1及び2は、MRIシステム向けの(特に、ヘリウム容器の別々の部分内に設けられた複数の冷媒を用いてMRIシステムのマグネットを冷却するための)冷却機構の実施形態を表している。例えば様々な実施形態では、別々の部分の各々がその内部に異なる冷媒または材料を含むような分割型冷却容器が設けられている。幾つかの実施形態では、使用する液体He(例えば、He Iとも呼ばれる液体He−4)の体積を削減し、冷却容器内部の残りの空間は別の冷媒(例えば、より廉価な液体窒素(LN2))で満たしている。
【0014】
具体的には図1及び2は、1つまたは複数の超伝導マグネットを含んだMRIマグネットシステム20を表した簡略ブロック図である。図面全体を通じて同じ参照番号は同じ部分を示していることに留意すべきである。MRIマグネットシステム20は、液体のHeとLN2など2種類の液体冷媒を保持する分割型容器である容器22を含む。したがってこの実施形態では容器22は、ある種類の冷媒を包含した1つまたは複数の部分24a及び24bと別の種類の冷媒など別の材料を包含した部分26(または、複数の部分)とを含んだ冷却容器または冷媒容器である。部分24aと24bを物理的に分離された部分とすることがあること、また互いに連結させたり同じ部分(例えば、様々な実施形態では熱リザーバとする単一のリザーバ)の一部を形成することがあることに留意すべきである。幾つかの実施形態ではその部分24a及び24bは部分26より大きい。一実施形態では、その部分24a及び24bはLN2を含みかつその部分26は液体Heを包含する。部分24a及び24bは全体として、部分26の一部となっていない空間内で1つのリザーバを画定している。例えば様々な実施形態ではその部分24a及び24bは部分26aから物理的に分離されている。したがって部分24及び26は、異なる冷媒を包含する別々の第1の冷媒領域と第2の冷媒領域を画定している。
【0015】
部分24a、24b及び26はその内部に冷媒を有する領域を画定するようなチェンバー、領域、タンクまたは同様の構造のうちの任意のタイプとし得ることに留意すべきである。部分24a、24b及び26は、冷媒圧力容器とし得る容器22の内部の各区画とすることや容器22の一部を形成することがある。
【0016】
容器22は真空容器28により囲繞されており、また任意選択ではその内部及び/またはその間に熱シールド30を含む。熱シールド30は例えば、断熱性放射シールドとすることがある。様々な実施形態ではクライオクーラであるようなコールドヘッド32が、コールドヘッドスリーブ34(例えば、ハウジング)内部の真空容器28を通過して延びている。したがって、コールドヘッド32の低温端部は、真空容器28内部の真空に悪影響を及ぼすことなくコールドヘッドスリーブ34の内部に位置決めされることがある。コールドヘッド32は、1つまたは複数のフランジ及びボルトあるいは当技術分野で周知の別の手段などの適当な任意の手段を用いて、コールドヘッドスリーブ34の内部に挿入され(または、受け容れられ)ると共に確保されている。さらに真空容器28の外部には、コールドヘッド32のモータ36が設けられている。
【0017】
図2に示したように、様々な実施形態におけるコールドヘッド32は、コールドヘッドスリーブ34の下側端部に再凝縮器38を含む。再凝縮器38は、容器22からボイルオフしたヘリウムガスを再凝縮させる。再凝縮器38はさらに、1つまたは複数の通路40を介して容器22と結合させている。例えば通路40は、ボイルオフしたヘリウムガスを容器22から再凝縮器38まで転送するために容器22から再凝縮器38まで設けられることがあり、この再凝縮器38は次いで再凝縮させたヘリウム液体を開放端部にある容器22に転送して戻すことがある。部分26(図1参照)から部分24と熱的接触の状態にある冷却用チューブ(図示せず)までの通路(図示せず)を設けることもある。
【0018】
容器22の内部には様々な実施形態において超伝導マグネットとするマグネット42が設けられており、これを本明細書でより詳細に説明するようなMRI画像データの収集のためのMRIシステムの動作時に制御している。さらにMRIシステムの動作時において、MRIマグネットシステム20の容器22の内部の液体冷媒によって、例えば主マグネットコイル42aやバッキング/シールドコイル42b(図1参照)などの異なるコイルを含む周知のようなコイルアセンブリとして構成し得る超伝導マグネット42を冷却している。超伝導マグネット42は、例えば4.2ケルビン(K)などの超伝導温度まで冷却されることがある。この冷却過程には、ボイルオフしたHeガスを再凝縮器38によって液体に再凝縮させて容器22に戻すこと、並びに部分26を部分24と熱的接触の状態にある冷却用チューブに接続している1つまたは複数の気体通路(図示せず)を通過させることによるなど部分24(複数のこともある)から形成される熱リザーバによってボイルオフしたHeを冷却すること、を含むことがある。この熱リザーバはさらに、搬送中にマグネット42を冷却することも可能である。
【0019】
容器22の一実施形態を、容器22の簡略ブロック図である図3に示している。容器22は、マルチ冷媒冷却容器として具現化した液体冷媒冷却容器である。容器22は、自己独立式(self−contained)熱リザーバとして構成された部分24を含む。この部分24は、一実施形態ではLN2としている大熱容量材料で満たしている(部分充填のことも完全充填のこともある)。この実施形態では、MRIマグネットシステム20のランプアップが済んで4.2Kの超伝導温度で動作しているとき、その窒素(N2)は固体状態にある。固体状態においてN2は大きな熱容量を有しており(大気圧では約77Kで沸騰)、部分26内での液体Heのボイルオフ時に有用となり得る。
【0020】
容器22内のうち部分26の一部とならない領域または空間は、別の冷媒(この実施形態では液体N2)で満たした部分24(複数のこともある)によって画定されている。部分24を様々なセクションによって画定させる場合、様々な実施形態では部分24内のセクションの全部によって容器22全体に及ぶ1つの連続領域が形成される。この実施形態では、部分26により画定される領域は部分24(複数のこともある)により画定される領域と比べてかなり小さいことが理解できよう。例えば一実施形態では、部分26(複数のこともある)内のHeの体積が(容器22全体をHeで満たす場合と比較して)10分の1に低減される。
【0021】
様々な実施形態では、容器22はマグネット42を形成する1つまたは複数のコイルをその内部に含む。例えば、複数のコイル50を巻き型54(例えば、主マグネット巻き型)上に支持し維持することがあり、また複数のコイル52を巻き型56(例えば、2次巻き型)上に支持し維持することがある。巻き型54及び56は、超伝導マグネット向けにコイルを支持し維持することが可能な適当な任意の巻き型とすることができる。一実施形態では、コイル50は主マグネットコイルでありかつコイル52はバッキングまたはシールドコイルである。コイル50及び52の数及び配置は所望によりまたは必要に応じて様々とすることができる。
【0022】
コイル50及び52は、上述のように体積を低減した部分26(複数のこともある)により包含される液体He中に浸漬されている。例えば部分26は、部分24同士の間で部分26aによって画定されたより大きい領域と、巻き型54の周りの領域26b及び26cによって画定されたより小さいギャップと、巻き型56の周りの領域26d及び26eによって画定された追加のより小さいギャップと、を含んでおり、これらは巻き型54及び56の周りで周回方向に延びている。
【0023】
部分24を形成する(すなわち、熱リザーバを画定する)構造は1つまたは複数の支持壁58を含むことに留意すべきである。支持壁58は、熱リザーバの境界(例えば、容器22の内部で物理的に分離された空間)を画定しており、また適当な任意の金属(例えば、スチール)や薄い金属コーティングを有する複合材から形成させることがある。この実施形態では容器フランジ60は、支持壁58によって(少なくとも部分的に)支持されたより薄い構造から形成されている。例えば一実施形態ではその容器フランジ60は、厚さが約10mm〜約20mmの金属(例えば、スチール)から形成されている。
【0024】
部分24により画定された熱リザーバは任意選択で、補助的な冷却を含むことがある。幾つかの実施形態ではその補助的冷却は、部分24(例えば、支持壁58)と熱的接触の状態にある複数の冷却用チューブ62を含む。冷却用チューブ62は、部分24内部で冷媒の内部に冷却用チューブ62が来るように、部分24内部で支持壁58に沿って確保されることがある。冷却用チューブ62は、1つまたは複数の通路64を介して部分26と流体連通している。したがって動作時において、部分26からボイルオフしたHeが冷却用チューブ62内部を循環し、冷却用チューブ62は部分24内の冷媒によって冷却されることがある。冷却用チューブ62は、任意の形状及びサイズとすると共に、適当な任意の材料(例えば、銅)から形成させることがある。
【0025】
ここで容器22の一構成について図4〜10を具体的に参照しながら説明することにする、図4〜10はまた全体として容器22を形成するための組み上げ処理法の1つも示している。図4〜10に示した図は、その構造内部を示すために切欠いた部分を含むことに留意すべきである。
【0026】
具体的に図4は、コイル50(主マグネットコイル)をその上に支持している内側巻き型(主マグネット巻き型)として構成した巻き型54を表している。図5に示したように巻き型54には、巻き型54の熱伝導率を上昇させるために薄い金属層などの内側層70が設けられることがある。図6に示したようにこの実施形態では、巻き型56はコイル52(バッキングコイル)をその上に支持している外側巻き型(バッキング巻き型)として構成されている。したがって図7に示したように巻き型54と56は、円筒状であると共に、その間に空間72(例えば、ギャップ)を画定するように同心性に整列させている。巻き型54及び56は、空間72によって部分24及び26を含む冷却アセンブリ74(例えば、分割型冷却アセンブリ)をその内部に受け容れるための領域が画定されるようにして設けられている。支持壁58はその間に、様々な実施形態ではLN2であるような冷媒で満たされた熱リザーバ76を画定していることが理解できよう。図7が分解図を示していることに留意すべきである。
【0027】
冷却アセンブリ74は、支持壁58の間に1つまたは複数の相互接続78を含む。相互接続78は、巻き型54及び56の機構並びにその同心性の整列を支持するブラケット構造として構成されている。相互接続78は、リザーバ76の自己独立領域を維持しながらリザーバ76の外側面と内側面の間に通路80(例えば、開口部)が画定されるようにした様々な形状及びサイズに形成させることができる。相互接続78は、冷媒領域のうちの1つを画定する部分26の一部(図3では26aで示す)を形成している。
【0028】
ある組み上げ処理法では、図8に示したように巻き型54及び56を整列させた状態で、冷却アセンブリ74が空間72の内部に挿入される。冷却アセンブリ74をこの空間の内部に位置決めした状態で、部分26cの内部にコイル50との流体接触を提供する別の領域が画定されることが理解できよう。例えば液体Heは、コイル50が液体He中に完全に覆われかつ浸漬されるようにコイル50を覆っている。相互接続78はさらに、部分26cから部分26eへの液体Heの流れを可能にする。
【0029】
巻き型56の外部周回には、同じくその内部に液体Heを含む部分26dを画定するように図9に示したような外側シェル82を結合させている。一実施形態ではその組み上げ処理法は、例えば容器フランジ60を同心性に整列させた構成要素の上部及び底部に溶接することによって整列させた構成要素の上部と底部を結合させ、これによりマルチ冷媒容器構造を形成する部分24及び26を画定させることを含む。
【0030】
本明細書に記載した構成及び組み上げは単に例示であることに留意すべきである。別の構成及び組み上げ方法を提供することもできる。例えば、様々な部分の位置決め及び整列の順序を変更することができる。さらに様々な実施形態について特定の冷媒を用いて説明してきたが、異なる冷媒や異なる冷媒量とすることもできる。
【0031】
したがって、MRIマグネット向けのマルチ冷媒容器を提供できる。様々な実施形態では、He体積を低減しても依然としてコイルの冷却が可能であるようにして液体Heの使用量を低減させることができ、これをLN2などの別の冷媒との組み合わせで提供することがある。例えば工場から病院へなどMRIシステムの出荷時において、この冷媒の組み合わせ式冷却によってコイルの冷却が維持される。様々な実施形態では、例えばMRIシステムを電源断としているときであるライドスルー期間を、50時間を超える長さとすることができる。さらに様々な実施形態では、容器内でより大きな体積となった熱リザーバを、MRIマグネットのコイルを覆っている冷媒(例えば、液体He)と比べてより費用対効果がよいまたはより安価な冷媒(例えば、LN2)で満たすことがある。
【0032】
幾つかの実施形態についてMRIシステム向けの超伝導マグネットと関連して説明することがあるが、これら様々な実施形態は、超伝導マグネットを有する任意のタイプのシステムと連携して実現し得ることに留意すべきである。これらの超伝導マグネットは、別のタイプの医用撮像デバイスの形で、並びに非医用の撮像デバイスの形で実現することもできる。
【0033】
したがってこの様々な実施形態は、MRIシステム向けの超伝導コイルなど別のタイプの超伝導コイルと連携して実現させることもできる。例えばこの様々な実施形態は、図11に示したMRIシステム100で用いるための超伝導コイルと一緒に実現させることもできる。システム100を単一モダリティの撮像システムとして例証しているが、これらの様々な実施形態はマルチモダリティ撮像システムの形であるいはこれと一緒に実現し得ることを理解されたい。システム100はMRI撮像システムとして例証していると共に、コンピュータ断層(CT)、陽電子放出断層撮像(PET)、単一光子放出コンピュータ断層(SPECT)及び超音波システム、あるいは画像(特に、人の画像)の作成が可能な別の任意のシステムなどの様々なタイプの医用撮像システムと組み合わせることができる。さらにこれらの様々な実施形態は人を対象とする撮像のための医用撮像システムに限定されるものではなく、人以外の対象、手荷物その他を撮像するための獣医学システムや非医用システムを含むことがある。
【0034】
図11を参照するとMRIシステム100は一般に、撮像部分102と、プロセッサまたは別のコンピュータ処理デバイスや制御器デバイスを含み得る処理部分104と、を含む。MRIシステム100はガントリ106の内部に、マグネットコイル支持構造上に支持され得るようなコイルから形成した超伝導マグネット42を含む。この超伝導マグネット42を(本明細書の記載ではマルチ冷媒容器であるような)ヘリウム容器22が囲繞すると共に、このヘリウム容器22は例えば本明細書でより詳細に説明するような液体He及びLN2で満たしている。
【0035】
容器22の外側表面と超伝導マグネット42の内側表面とを囲繞するような断熱体112が設けられている。超伝導マグネット42の内部には複数の磁場傾斜コイル114が設けられており、またこの複数の磁場傾斜コイル114の内部にはRF送信コイル116が設けられている。幾つかの実施形態ではそのRF送信コイル116は、送信/受信コイルで置き換えられることがある。ガントリ106内部の構成要素は全体として撮像部分102を形成している。超伝導マグネット42を円筒形状としているが、別の形状のマグネットも使用可能であることに留意すべきである。
【0036】
処理部分104は一般に、制御器118と、主磁場制御120と、傾斜磁場制御122と、メモリ124と、表示デバイス126と、送信受信(T−R)スイッチ128と、RF送信器130と、受信器132と、を含む。
【0037】
動作時において撮像しようとする患者やファントームなどの対象体を、ボア134内で適当な支持体(例えば、患者テーブル)上に配置させる。超伝導マグネット46は、ボア134を横断する均一で静的な主磁場B0を生成する。ボア134内及び対応する患者内部の電磁場強度は、主磁場制御120を介して制御器118によって制御されており、主磁場制御120はさらに超伝導マグネット42への付勢用電流の供給も制御している。
【0038】
超伝導マグネット42内部でボア134内の磁場B0に対して直交する3つの方向x、y及びzのうちの任意の1つまたは幾つかの方向で磁場傾斜を印加できるように、磁場傾斜コイル114(1つまたは複数の傾斜コイル素子を含む)が設けられている。磁場傾斜コイル114は、傾斜磁場制御122により付勢される共に、さらに制御器118により制御を受けている。
【0039】
複数のコイルを含み得るRF送信コイル116は、磁気パルスを送信するように、かつ/またはRF受信コイルとして構成された表面コイルなどの受信コイル素子も設けられている場合に任意選択で同時に患者からのMR信号を検出するように配列されている。RF受信コイルは、例えば単独の受信表面コイルなど任意のタイプの構成とすることができる。受信表面コイルはRF送信コイル116の内部に設けられたRFコイルからなるアレイとすることがある。
【0040】
RF送信コイル116及び受信表面コイルは、T−Rスイッチ128によってRF送信器130と受信器132のそれぞれの1つに選択可能に相互接続させている。RF送信器130及びT−Rスイッチ128は、RF送信器130によってRF磁場パルスまたは信号を発生させると共に、これを患者に選択的に印加し患者内に磁気共鳴を励起させるように制御器118によって制御されている。RF励起パルスが患者に加えられている間に、さらに受信表面コイルを受信器132から切断するようにT−Rスイッチ128を作動させている。
【0041】
RFパルスの印加に続いてT−Rスイッチ128を再度作動させ、RF送信コイル116をRF送信器130から切断しかつ受信表面コイルを受信器132に接続させている。受信表面コイルは、患者内の励起した原子核に由来するMR信号を検出または検知するように動作すると共に、このMR信号を受信器132に伝送している。検出したこれらのMR信号は一方、制御器118に伝送される。制御器118は、例えば患者の画像を表す信号を生成するためのMR信号の処理を制御するプロセッサ(例えば、画像再構成プロセッサ)を含む。
【0042】
画像を表すこの処理済み信号はまた、画像の視覚的表示を提供するために表示デバイス126に送られる。具体的にはMR信号は観察可能な画像が得られるようにフーリエ変換を受けるk空間を満たすまたはこれを形成している。画像を表すこの処理済み信号は次いで表示デバイス126に送られる。
【0043】
上の記述は例示の意図であって限定でないことを理解されたい。例えば上述の実施形態(及び/または、その態様)は、互いに組み合わせて使用することができる。さらに、具体的な状況や材料を様々な実施形態の教示に適応させるようにその趣旨を逸脱することなく多くの修正を実施することができる。本明細書内に記載した材料の寸法及びタイプが様々な実施形態のパラメータを規定するように意図していても、これらは決して限定ではなく単なる例示である。上の記述を検討することにより当業者には別の多くの実施形態が明らかとなろう。様々な実施形態の範囲はしたがって、添付の特許請求の範囲、並びに本請求範囲が規定する等価物の全範囲を参照しながら決定されるべきである。添付の特許請求の範囲では、「を含む(including)」や「ようになった(in which)」という表現を「を備える(comprising)」や「であるところの(wherein)」という対応する表現に対する平易な英語表現として使用している。さらに添付の特許請求の範囲では、「第1の」、「第2の」及び「第3の」その他の表現を単にラベル付けのために使用しており、その対象に対して数値的な要件を課すことを意図したものではない。さらに、添付の特許請求の範囲の限定は手段プラス機能形式で記載しておらず、また35 U.S.C.§112、第6パラグラフに基づいて解釈されるように意図したものでもない(ただし、本特許請求の範囲の限定によって「のための手段(means for)」の表現に続いて追加的な構造に関する機能排除の記述を明示的に用いる場合を除く)。
【0044】
この記載では、様々な実施形態(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による任意のデバイスやシステムの製作と使用及び組み込んだ任意の方法の実行を含む様々な実施形態の実施を可能にするために例を使用している。この様々な実施形態の特許性のある範囲は本特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、その例が本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、その例が本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。
【符号の説明】
【0045】
20 MRIマグネットシステム
22 容器
24 部分
26 部分
28 真空容器
30 熱シールド
32 コールドヘッド
34 コールドヘッドスリーブ
36 モータ
38 再凝縮器
40 通路
42 マグネット
46 マグネット
50 コイル
52 コイル
54 巻き型
56 巻き型
58 支持壁
60 容器フランジ
62 冷却チューブ
64 通路
70 内側層
72 空間
74 冷却アセンブリ
76 リザーバ
78 相互接続
80 通路
82 外側シェル
100 MRIシステム
102 撮像部分
104 処理部分
106 ガントリ
112 断熱体
114 磁場傾斜コイル
116 RF送信コイル
118 制御器
120 主磁場制御
122 傾斜磁場制御
124 メモリ
126 表示デバイス
128 T−Rスイッチ
130 RF送信器
132 受信器
134 ボア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴撮像(MRI)マグネットシステム(20)のための冷却容器(22)であって、
MRIシステムの複数のマグネットコイル(50)と接触させたヘリウム冷媒を包含する第1の部分(26)と、
前記第1の部分から分離させかつこれから流体的に脱結合させた第2の部分(24)であって、ヘリウム冷媒と異なる材料を包含すると共に第1の部分より大きな体積を有する第2の部分と、
を備える冷却容器(22)。
【請求項2】
前記第2の部分(24)は液体窒素を包含する熱リザーバを画定している。請求項1に記載の冷却容器(22)。
【請求項3】
前記第2の部分内の材料は、前記第1の部分内のヘリウム冷媒と比べてより大きな熱容量を有する、請求項1に記載の冷却容器(22)。
【請求項4】
前記第1の部分(26)と流体接続状態にありかつ前記第2の部分(24)と熱的接触状態にある複数の冷却用チューブ(62)をさらに備える請求項1に記載の冷却容器(22)。
【請求項5】
互いに同心性に整列させた複数のマグネットコイル(50)を支持している円筒状の内側巻き型(54)と円筒状の外側巻き型(56)をさらに備えると共に、前記第1及び第2の部分を該巻き型の間に挿入された冷却アセンブリ(74)として構成している、請求項1に記載の冷却容器(22)。
【請求項6】
前記冷却アセンブリ(74)は、前記内側及び外側巻き型(54、56)のマグネットコイル(50、52)の間に流体連通を提供している1つまたは複数の相互接続(78)を備える、請求項5に記載の冷却容器(22)。
【請求項7】
前記1つまたは複数の相互接続(78)は、前記内側及び外側巻き型(54、56)の配置を支持するように構成されたブラケット構造を備える、請求項6に記載の冷却容器(22)。
【請求項8】
前記1つまたは複数の相互接続(78)はさらに、前記部分(26、24)のうちの一方の内部でかつ主マグネットコイル(50)とバッキングコイル(52)の間に流体通路(80)を画定している、請求項6に記載の冷却容器(22)。
【請求項9】
前記第2の部分内の材料は超伝導温度において固体形態の冷媒である、請求項1に記載の冷却容器(22)。
【請求項10】
前記第2の部分(24)は、MRIマグネットシステムの動作時に固体状態にある窒素を包含すると共に、熱リザーバとして構成されている、請求項1に記載の冷却容器(22)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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