説明

熱交換器、室内機、および室外機

【課題】フィンで結露した水の排水性を向上することができる熱交換器を得る。
【解決手段】長手方向を鉛直方向にし、間隔を空けて並列に配置された複数の扁平管1と、複数の扁平管1の両端部をそれぞれ接続する一対のヘッダと、隣接する扁平管1の間に接合されたフィンとを備え、扁平管1は、長手方向に沿って表面に排水溝11が形成され、フィンは、当該フィンを通過する気流の風上側から風下側に向けて下り勾配となるように傾斜し、扁平管1との接合部の風下側端部が、排水溝11の風上側端部に接触するように配置されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器、並びに熱交換器を搭載した室内機および室外機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のパラレルフロー型のヒートポンプ用室外熱交換器においては、コルゲートフィンの波型の谷線と稜線を熱交換器奥行き方向に、熱交換器奥行き方向中央部を底とする谷型形状として、その谷底部分でかつコルゲートフィンの扁平チューブとの接合部に貫通穴を設けるものが提案されている。これによれば、暖房時、除霜時にフィン面上に残る水を確実に熱交換器外に排出し、かつ、急速な着霜の進行のないヒートポンプ用室外熱交換器を提供できるとされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、厚さ方向に所定間隔を隔てて平行状に配置された複数本の扁平チューブと、これら扁平チューブ相互間に介在配置されたコルゲートフィンと、チューブの両端に連通接続状態に配置された一対の中空ヘッダとを備えた熱交換器において、コルゲートフィンは、風上側部分に複数個の補強リブが形成される一方、風下側部分に複数のルーバーが形成され、水切り対策として、各扁平チューブを、上下方向に沿って配置すると共に、チューブの表面にその長さ方向に沿って1ないし複数の水切り用溝を形成するものが提案されている。上記構成によれば、コルゲートフィンの風上側部分がルーバーレスとなされた従来のものと同様に、熱交換器をエバポレータ(蒸発器)として作動させた場合に着霜領域を十分に確保することができ、除霜までの運転時間を可及的長くすることができるのに加え、コルゲートフィンをフィンロール成形機で成形加工した場合でも蛇行が生じることがなくなり、コアセッティングを容易に行うことができるとされている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−024187号公報(請求項3、段落番号[0011]、第1図)
【特許文献2】特許第3942210号公報(請求項1、段落番号[0037]、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術ではフィン面上で結露した水を排出するため、フィンに排水路を設ける構成や扁平管に排水溝を設ける構成が示されている。しかしながら、フィンと扁平管とが接する部分に小さな排水溝を設けるため、水の表面張力で排水溝が詰まり、排水性が不十分である、という問題点があった。
また従来の技術ではフィンを水平配置しているため、結露水がフィン面上に留まりやすく、排水性が悪い、という問題点があった。
【0006】
また、従来の技術では室内機に実装された形態は想定されていない。例えばターボファンなどの遠心型送風機の回転軸を鉛直方向に配置してその周囲に熱交換器を実装したカセット型の室内機において、熱交換器のフィンが鉛直方向に配置され伝熱管が水平方向に設置された場合、遠心型送風機から吹き出された風の旋回成分がフィン面に衝突し、空気抵抗が大きくなる、という問題点があった。
【0007】
また、カセット型の室内機において、熱交換器の伝熱管を水平方向に設置した場合、筐体の高さの制約から冷媒パス数を増加することが困難となる。すなわち、伝熱管の段数は筐体の高さに制約されるため、冷媒パス数を伝熱管の段数以上に増加させる場合には、列方向(幅方向)に伝熱管を配置して分配器からの冷媒を分岐するか、熱交換器を水平方向(長手方向)で分割して分配器からの冷媒を分岐する必要が生じる。しかし、分岐配管のスペース確保や配管の取り回しが困難であり、また熱交換器の水平方向の長さが短くなるなどの点で現実的ではない。このように、熱交換器の伝熱管を水平配置する室内機では、冷媒パス数を増加することが困難であり、冷媒圧損の低減を図ることができない、という問題点があった。
【0008】
また、筐体側面の吸込口に沿って熱交換器を搭載し、筐体上部の送風機で空気を吸引して上方へ吹き出すトップフロー型の室外機においては、熱交換器を通過する風量は、送風機に近い上部の方が下部よりも多くなる。このため、熱交換器の伝熱管が水平方向に設置された場合、熱交換器の上部の冷媒パスと下部の冷媒パスとで熱交換量の不均一が生じる。このため、例えば暖房運転時に上部パス出口の冷媒が過熱状態となり、下部パス出口の冷媒が気液二相状態となる不均一分配が生じることとなる。このような不均一分配は、冷媒パス数が多くなるほど顕著となるため、冷媒パス数を増加させることができず、冷媒圧損の低減を図ることができない、という問題点があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、フィンで結露した水の排水性を向上することができる熱交換器を得るものである。
また、遠心型送風機から吹き出される空気の熱交換器での通風抵抗を低減することができる室内機を得るものである。
また、冷媒パス数を増加させることができる室内機を得るものである。
また、冷媒パス数を増加させることができる室外機を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る熱交換器は、長手方向を鉛直方向にし、間隔を空けて並列に配置された複数の扁平管と、前記複数の扁平管の両端部をそれぞれ接続する一対のヘッダと、隣接する前記扁平管の間に接合されたフィンとを備え、前記扁平管は、長手方向に沿って表面に排水溝が形成され、前記フィンは、当該フィンを通過する気流の風上側から風下側に向けて下り勾配となるように傾斜し、前記扁平管との接合部の風下側端部が、前記排水溝の風上側端部に接触するように配置されたものである。
【0011】
本発明に係る室内機は、吸込口および吹出口を有する筐体と、前記筐体の略中央部に設けられ、前記吸込口より空気を吸い込み、該空気を放射状に吹き出す遠心型送風機と、前記遠心型送風機と前記吹出口との間に配置された、上記熱交換器とを備えたものである。
【0012】
本発明に係る室外機は、側面に吸込口を有し上面に吹出口を有する筐体と、前記吸込口に沿うよう前記筐体内に配置された、上記熱交換器と、前記筐体の上部に配置され、前記吸込口から空気を吸い込み、前記熱交換器を通過した空気を前記吹出口から吹き出す送風機とを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る熱交換器は、フィンで結露した水の排水性を向上することができる。
本発明に係る室内機は、冷媒パス数を増加させることができる。
本発明に係る室外機は、冷媒パス数を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1に係る熱交換器の概略図である。
【図2】実施の形態1に係る扁平管とコルゲートフィンの位置関係を示す概略斜視図である。
【図3】実施の形態1に係る扁平管とコルゲートフィンの位置関係を示す概略平面図と概略側面図である。
【図4】実施の形態1に係る扁平管とプレートフィンの位置関係を示す概略斜視図である。
【図5】実施の形態1に係るプレートフィンの概略斜視図と概略正面図である。
【図6】実施の形態1に係る四方向カセット型室内機の縦断面図である。
【図7】実施の形態1に係るターボファンの旋回流を説明する図である。
【図8】実施の形態1に係る熱交換器の冷媒分配の現象説明図である。
【図9】実施の形態1に係る熱交換器の冷媒分配特性を示す図である。
【図10】実施の形態1に係る扁平管の液ヘッダへの差し込み長さを説明する図である。
【図11】実施の形態2に係るトップフロー型室外機の概観図である。
【図12】実施の形態2に係るトップフロー型室外機の概略縦断面図と概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
(熱交換器)
図1は実施の形態1に係る熱交換器の概略図である。
図1において、本実施の形態における熱交換器100は、扁平管1、コルゲートフィン2、液ヘッダ3、ガスヘッダ4、液入口5、およびガス出口6を備えている。
この熱交換器100は、例えば空気調和機の室内機や室外機に搭載され、熱交換器100を通過する空気と、扁平管1内を流通する冷媒とを熱交換するものである。なお、室内機および室外機の詳細は後述する。
【0016】
扁平管1は、長手方向が鉛直方向(重力方向)になるように、間隔を空けて並列に複数配置されている。隣接する扁平管1の間には、例えばアルミ製の波形状に加工されたコルゲートフィン2がロウ付け接合されている。液ヘッダ3は、水平方向に配置され、長手方向の側面にほぼ等間隔に複数の孔が形成されており、ここに扁平管1の一端が接続される。また、液ヘッダ3の片側には冷房運転時に冷媒が流入する液入口5が設けられており、他方側は閉塞されている。ガスヘッダ4は、水平方向に、かつ、液ヘッダ3に対向するように配置され、長手方向の側面にほぼ等間隔に複数の孔が形成されており、ここに扁平管1の一端が接続される。また、ガスヘッダ4の片側には冷房運転時に冷媒が流出するガス出口6が設けられており、他方側は閉塞されている。
【0017】
なお、液ヘッダ3およびガスヘッダ4は、本発明における「一対のヘッダ」に相当する。
【0018】
図2は実施の形態1に係る扁平管とコルゲートフィンの位置関係を示す概略斜視図である。
図3は実施の形態1に係る扁平管とコルゲートフィンの位置関係を示す概略平面図と概略側面図である。図3(a)は概略平面図であり、図3(b)は概略側面図である。
図2、図3に示すように、扁平管1は、扁平形状の長軸の向きが気流の流通方向を向くように配置されている。また、扁平管1は、風下側の一部がコルゲートフィン2の風下側端部より張り出し、この張り出した部分の表面には、長手方向に沿って排水溝11が形成されている。排水溝11の断面形状はコ字状、半円状、V字状など任意の形状とすることができる。
コルゲートフィン2は、当該コルゲートフィン2を通過する気流の風上側から風下側に向けて下り勾配となるように傾斜して設けられている。また、コルゲートフィン2と扁平管1との接合部の風下側端部が、排水溝11の風上側端部に接触するように配置されている。つまり、コルゲートフィン2の波形状の折曲部が排水溝11の風上側端部に接触するように配置されている。なお、コルゲートフィン2の平面部には、伝熱促進のため、切り起こしにより形成した複数のスリット2aが設けられている。なお、スリット2aは省略しても良い。なお図3(b)ではスリット2aの図示を省略している。
【0019】
上記説明では、扁平管1の間にコルゲートフィン2を設ける場合を説明したが、本発明はこれに限るものはなく、プレートフィン21を設ける構成としても良い。プレートフィン21を設ける構成について図4、図5により説明する。
【0020】
図4は実施の形態1に係る扁平管とプレートフィンの位置関係を示す概略斜視図である。
図5は実施の形態1に係るプレートフィンの概略斜視図と概略正面図である。図5(a)は概略斜視図であり、図5(b)は概略正面図である。
図4、図5に示すように、プレートフィン21は、扁平管1が挿入されるための切り欠き部21aを有している。このプレートフィン21は、扁平管1の長手方向(重力方向)に間隔を空けて積層されて空気が流通する。このようなプレートフィン21を設ける場合においても、上述したように、通過する気流の風上側から風下側に向けて下り勾配となるように傾斜して、プレートフィン21と扁平管1との接合部の風下側端部が、排水溝11の風上側端部に接触するように配置されている。なお、プレートフィン21の平面部には、伝熱促進のため、複数のスリットを設けるようにしても良い。
また、プレートフィン21の切り欠き部21aは、縁部をほぼ垂直に立ち上げたフィンカラー21bを有している。そして、表面で結露した水がフィンカラー21b先端に溜らないよう、フィンカラー21bの先端が鉛直下向きとなるよう形成されている。
【0021】
なお、以下の説明において、コルゲートフィン2とプレートフィン21とを区別しないときは単に「フィン」と称する。
【0022】
次に動作について説明する。
熱交換器100が室内機に搭載された場合、冷房運転時は蒸発器として、暖房運転時は凝縮器として動作する。冷房運転では、液入口5から流入した気液二相冷媒が液ヘッダ3へ入り、複数の扁平管1へと分配される。扁平管1に流入した気液二相冷媒は、周囲の空気から吸熱して自身は蒸発気化し、ガスヘッダ4、ガス出口6の順に流れて室内機から流出する。
このとき、冷媒の蒸発温度が低くなる冷房定格条件などでは、フィン表面で水蒸気が結露し、水滴(結露水)が発生する。フィン表面に発生した結露水は、フィンの下り勾配により風下側へ流れる。フィンの風下側端部まで流れた結露水の一部はフィン端部から落下し、他の一部はフィン端部を伝わって排水溝11に到達する。排水溝11は風下側が開放しているため、排水溝11に到達した結露水は風下側が自由表面となり、表面張力が少ない状態で重力方向に流通する。
【0023】
以上のように本実施の形態の熱交換器においては、扁平管1は、長手方向に沿って表面に排水溝11が形成され、フィンは、当該フィンを通過する気流の風上側から風下側に向けて下り勾配となるように傾斜し、扁平管1との接合部の風下側端部が、排水溝11の風上側端部に接触するように配置されている。このため、フィン表面で発生した結露水を排水溝11に導きやすくすることができる。また、排水溝11の一端を開放(自由表面)とすることができ、結露水に対する表面張力の影響を軽減することができる。よって、結露水の排水性を向上することができる。
【0024】
また、プレートフィン21のフィンカラー21bの先端が鉛直下向きとなるよう形成されている。このため、プレートフィン21の表面で結露した水がフィンカラー21bの先端に溜まりにくくすることができる。
【0025】
なお、上記の説明では、熱交換器100の扁平管1が一列の場合を説明したが、本発明はこれに限るものではなく、空気の流通方向に扁平管1を複数列設けるようにしても良い。
【0026】
(室内機)
次に、上記熱交換器100を搭載した室内機200について説明する。
なお、本実施の形態では、天井埋込形の四方向カセット型室内機を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
図6は実施の形態1に係る四方向カセット型室内機の縦断面図である。
図6に示すように、四方向カセット型の室内機200は、部屋217に対し上方が天板210aとなる向きに設置される。天板210aの周りには側板210bが取り付けられ、部屋217に向け開口するように筐体210が設置される。室内機200の下方には、平面視で略四角形状の化粧パネル211が取り付けられ部屋217に面している。化粧パネル211の中央付近には、室内機200内への空気の吸込口となる吸込グリル211aと、吸込グリル211a通過後の空気を除塵するフィルタ212とを備えている。また、化粧パネル211の各辺には、空気の吹出口となるパネル吹出口211bが、化粧パネル211の各辺に沿って形成されている。各パネル吹出口211bには、風向ベーン213を備えている。
【0028】
また、室内機200の内部には、回転軸が鉛直方向に配置された遠心型送風機であるターボファン201と、ターボファン201の吸込風路を形成するベルマウス214と、ターボファン201を回転駆動するファンモーター215と、ターボファン201の下流側に囲むように立設された熱交換器100とを備えている。熱交換器100は、上述したように扁平管1が鉛直方向に配置されたパラレルフロー型熱交換器であり、接続配管により図示しない室外機と接続され冷媒が循環される。また、熱交換器100は、ターボファン201を囲むように略ロ字状に形成されている(図1参照)。
また、室内機200の下面中央部にはユニット吸込口210cを有し、このユニット吸込口210cの周囲にはユニット吹出口210dを有している。そして、吸込グリル211a、ユニット吸込口210c、ユニット吹出口210d、および、パネル吹出口211bが連通している。
なお、上記の説明では、遠心型送風機としてターボファン201を用いる場合を説明したが本発明はこれに限るものではない。例えばシロッコファンやラジアルファン等を用いても良い。
【0029】
なお、「ユニット吸込口210c」は、本発明における「吸込口」に相当する。
また、「ユニット吹出口210d」は、本発明における「吹出口」に相当する。
【0030】
このように構成された室内機200により、ターボファン201が回転すると、部屋217の空気は、化粧パネル211の吸込グリル211aから吸い込まれ、フィルタ212を通過して除塵される。除塵された空気は、ユニット吸込口210c、およびベルマウス214を通過後、ターボファン201のファン吸込口201aに吸い込まれる。ターボファン201に吸い込まれた空気は、ターボファン201のファン吹出口201bから、平面視放射状に吹き出され、熱交換器100へ向かう。熱交換器100へ向け吹き出された空気は、熱交換器100内の冷媒と熱交換して、暖房、冷房、または除湿等された空気となる。熱交換器100にて、暖房、冷房、または除湿等がされた空気は、ユニット吹出口210dを通過しパネル吹出口211bから部屋217へ向けて吹き出されて空調が行われる。このとき風向ベーン213により風向が制御される。
【0031】
ここで、熱交換器100のフィンを通過する空気の通風抵抗について説明する。
図7は実施の形態1に係るターボファンの旋回流を説明する図である。
図7においては、平面視における熱交換器100とターボファン201の配置を模式的に示している。
ターボファン201は回転軸に対して放射状に空気を吹き出すが、図7の矢印で示すように、その一部が法線方向に対して角度を持った旋回成分(旋回流)を含んでいる。このような旋回流は熱交換器100との対向面に対して角度を持って熱交換器100を通過する。
【0032】
仮に、フィンが鉛直方向に配置された場合、遠心型送風機から吹き出された風の旋回成分がフィン面に衝突し、空気抵抗が大きくなる。
一方、本実施の形態においては、フィンが水平方向に配置されている。すなわち、フィン面がターボファン201の回転軸に対して直交する方向に配置されている。このため、熱交換器100を通過する空気の通風抵抗を抑えることができる。よって、フィンを鉛直方向に配置した場合と比較して、大風量、低騒音の効果が得られる。
【0033】
以上のように本実施の形態の室内機においては、ユニット吸込口210cおよびユニット吹出口210dを有する筐体210と、筐体210の略中央部に設けられ、ユニット吸込口210cより空気を吸い込み、該空気を放射状に吹き出すターボファン201と、ターボファン201とユニット吹出口210dとの間に配置された熱交換器100とを備えている。また熱交換器100は、扁平管1の長手方向を鉛直方向に配置している。
このため、熱交換器100の長手方向(ヘッダが延びる方向)に多数の扁平管1を配置することができ、筐体210の高さに制約されることなく、冷媒パス数を増加させることができる。よって、熱交換器100を流通する冷媒の圧力損失が低く抑えられ、高性能の空気調和機を得ることができる。
【0034】
(冷媒分配特性)
次に、冷房運転時の冷媒分配特性を図8、図9を用いて説明する。
図8は実施の形態1に係る熱交換器の冷媒分配の現象説明図である。
図9は実施の形態1に係る熱交換器の冷媒分配特性を示す図である。
なお、図9の横軸は熱交換器100の長手方向(ヘッダが延びる方向)の位置を示し、縦軸は冷媒圧力を示している。
図8のように、本実施の形態における熱交換器100は、冷房運転時には、気液二相冷媒が液入口5(紙面左下)から液ヘッダ3内に流入し、複数の扁平管1を通って熱交換したガス冷媒がガスヘッダ4に流入し、ガス出口6(紙面右上)から流出される。このようなパラレルフロー構成とした場合、熱交換器100に流入した二相冷媒は、慣性力で液ヘッダ3の奥側へ多く流れようとする。
一方、四方向カセット型の室内機200では、ターボファン201を囲むように熱交換器100を配置するため、熱交換器100の長手方向(ヘッダが延びる方向)の長さが長くなる。このため液ヘッダ3での圧力損失が大きく、図9で示されるように、液入口5に近いパスの圧力Pi1とガス出口6に近いパスの圧力Pi3との圧力差が大きくなる。
同様に、ガスヘッダ4でも圧力Po1と圧力Po3とに圧力差が生じるが、気液二相状態での圧力損失がガス単相の圧力損失に比べて大きいため、図9に示すように、液入口5に近いパスでは冷媒流量の推進力となる圧力差ΔP1が大きくなり、冷媒流量Gr1は他に比べて大きくなる。逆に、液ヘッダ3の奥側(ガス出口6に近いパス)では、推進力となる圧力差ΔP3が低下して冷媒流量Gr3が低下する。
このため、慣性力による液ヘッダ3での流量の不均一と、圧力差による扁平管1での流量の不均一とが相殺されて、冷媒流量の自己調整機能が働き比較的均等分配が実現できる。
【0035】
以上のように本実施の形態の室内機200は、熱交換器100の長手方向(ヘッダが延びる方向)に多数の扁平管1を配置し、冷媒パス数を増加させた場合でも、各扁平管1での冷媒流量の不均一を抑制することができる。
【0036】
なお、仮に、不均等分配となる場合には、液ヘッダ3の流れ方向に、扁平管1の液ヘッダ3への差し込み長さを変えることで、扁平管1の入口での流動抵抗で各流量分配を調整するようにしても良い。
例えば、慣性力による液ヘッダ3での流量の不均一と、圧力差による扁平管1での流量の不均一とが相殺しきれずに、上流側の扁平管1の流量が大きくなる場合には、図9に示すように、扁平管1の液ヘッダ3への差し込み長さを、液ヘッダ3の流れ方向の上流側ほど長くなるようにする(x3>x2>x1)。なお、差し込み長さの変更はこれに限らず、冷媒流量の不均一が生じる任意の扁平管1について適宜調整することができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、液ヘッダ3の片側(図1中の右側)に液入口5を設け、ガスヘッダ4の片側(図1中の左側)にガス出口6を設ける場合を説明したが、本発明はこれに限るものではない。液ヘッダ3の両端部を液入口(図1中の液入口5の左側も液入口)とし、ガスヘッダ4の両端部をガス出口(図1中のガス出口6の右側もガス出口)とする構成としても良い。
【0038】
なお、暖房運転時は冷媒の流れが逆となり、ガス出口6から流入したガス冷媒は、ガスヘッダ4を通り、複数の扁平管1へ流入する。扁平管1に流入したガス冷媒は、周囲の空気へ放熱して自身は凝縮液化し、液ヘッダ3、液入口5の順に流れて室内機200を流出する。
【0039】
実施の形態2.
(室外機)
本実施の形態では、上述した熱交換器100を室外機300に搭載した形態について説明する。
なお、本実施の形態では、トップフロー型室外機を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
図11は実施の形態2に係るトップフロー型室外機の概観図である。
図12は実施の形態2に係るトップフロー型室外機の概略縦断面図と概略平面図である。図12(a)は概略縦断面図であり、図12(b)は概略平面図である。
図11、図12に示すように、トップフロー型の室外機300は、箱状に形成された筐体310と、筐体310の側面の開口により形成されたユニット吸込口308と、ユニット吸込口308に沿うように筐体310内に配置された熱交換器100と、筐体310の天面の開口により形成されたユニット吹出口309と、このユニット吹出口309を覆うように通風可能に設けられたファンガード311と、このファンガード311の内部に設置されたプロペラファン312とを備えている。なお、熱交換器100は、上記実施の形態1と同様に、扁平管1が鉛直方向に配置されたパラレルフロー型熱交換器であり、接続配管により図示しない室内機と接続され冷媒が循環される。
この室外機300は、例えばビル用マルチの室外機などに用いられ、ビルの屋上などに設置される。
なお、ユニット吸込口308を形成する筐体310の側面は、2面、3面、4面のいずれでも良い。また、ユニット吸込口308が形成される側面に応じて、熱交換器100を適宜配置する。例えば、図12(b)に示すように、ユニット吸込口308を3面に形成する場合には、熱交換器100をコ字状に形成する。
【0041】
なお、「ユニット吸込口308」は、本発明における「吸込口」に相当する。
また、「ユニット吹出口309」は、本発明における「吹出口」に相当する。
また、「プロペラファン312」は、本発明における「送風機」に相当する。
【0042】
このように構成された室外機300により、プロペラファン312が回転すると、筐体310側面のユニット吸込口308から空気が吸い込まれ、熱交換器100を通過後、垂直方向の流れとなって、筐体310上部に形成されたユニット吹出口309から上向きに吹き出される。このようなトップフロー型の構成では、プロペラファン312に近い部分の風量が多くなり、結果として熱交換器100の高さ方向に風速(風量)分布が生じる。
【0043】
仮に、扁平管1が水平方向に配置された場合、熱交換器100の上部の冷媒パスと下部の冷媒パスとで熱交換量の不均一が生じる。このため、例えば暖房運転時に上部パス出口の冷媒が過熱状態となり、下部パス出口の冷媒が気液二相状態となる不均一分配が生じることとなる。
一方、本実施の形態における室外機300は、熱交換器100を、扁平管1の長手方向が鉛直方向に配置するパラレルフロー構成としたため、冷媒パス間で生じる不均一分配を防止できる。また、不均一分配を防止できるので、扁平管1を水平方向に配置する場合と比較して、冷媒のパス数を増加させることができる。よって、熱交換器100を流通する冷媒の圧力損失が低く抑えられ、高性能の空気調和機を得ることができる。
【0044】
また、本実施の形態の熱交換器100は、上記実施の形態1と同様に、フィン表面で発生した結露水を排水溝11に導きやすくすることができる。また、排水溝11の一端を開放(自由表面)とすることができ、結露水に対する表面張力の影響を軽減することができる。よって、結露水の排水性を向上することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 扁平管、2 コルゲートフィン、2a スリット、3 液ヘッダ、4 ガスヘッダ、5 液入口、6 ガス出口、11 排水溝、21 プレートフィン、21a 切り欠き部、21b フィンカラー、100 熱交換器、200 室内機、201 ターボファン、201a ファン吸込口、201b ファン吹出口、210 筐体、210a 天板、210b 側板、210c ユニット吸込口、210d ユニット吹出口、211 化粧パネル、211a 吸込グリル、211b パネル吹出口、212 フィルタ、213 風向ベーン、214 ベルマウス、215 ファンモーター、217 部屋、300 室外機、308 ユニット吸込口、309 ユニット吹出口、310 筐体、311 ファンガード、312 プロペラファン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を鉛直方向にし、間隔を空けて並列に配置された複数の扁平管と、
前記複数の扁平管の両端部をそれぞれ接続する一対のヘッダと、
隣接する前記扁平管の間に接合されたフィンと
を備え、
前記扁平管は、長手方向に沿って表面に排水溝が形成され、
前記フィンは、当該フィンを通過する気流の風上側から風下側に向けて下り勾配となるように傾斜し、前記扁平管との接合部の風下側端部が、前記排水溝の風上側端部に接触するように配置された
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記扁平管は、
扁平形状の長軸の向きが気流の流通方向を向くように配置され、
風下側の一部が前記フィンの風下側端部より張り出し、該張り出した部分に前記排水溝が形成された
ことを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記フィンは、波形状のコルゲートフィンであり、該波形状の折曲部が前記排水溝の風上側端部に接触するように配置された
ことを特徴とする請求項1または2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記フィンは、前記扁平管が挿入されるための切り欠き部を有するプレートフィンである
ことを特徴とする請求項1または2記載の熱交換器。
【請求項5】
前記切り欠き部は、
縁部をほぼ垂直に立ち上げたフィンカラーを有し、該フィンカラーの先端が鉛直下向きとなるよう形成された
ことを特徴とする請求項4記載の熱交換器。
【請求項6】
前記一対のヘッダのうち、一方のヘッダの片側または両側に冷媒が流入し、当該一方のヘッダに流入した冷媒が前記複数の扁平管を通って、他方のヘッダに流入し、当該他方のヘッダの片側または両側から冷媒が流出する
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の熱交換器。
【請求項7】
吸込口および吹出口を有する筐体と、
前記筐体の略中央部に設けられ、前記吸込口より空気を吸い込み、該空気を放射状に吹き出す遠心型送風機と、
前記遠心型送風機と前記吹出口との間に配置された、請求項1〜6の何れか一項に記載の熱交換器と
を備えたことを特徴とする室内機。
【請求項8】
前記熱交換器は、略ロ字状に形成され、前記遠心型送風機を囲むように設置された
ことを特徴とする請求項7記載の室内機。
【請求項9】
側面に吸込口を有し上面に吹出口を有する筐体と、
前記吸込口に沿うよう前記筐体内に配置された、請求項1〜6の何れか一項に記載の熱交換器と、
前記筐体の上部に配置され、前記吸込口から空気を吸い込み、前記熱交換器を通過した空気を前記吹出口から吹き出す送風機と
を備えたことを特徴とする室外機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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