説明

熱交換器およびそれを用いたヒートポンプ式車両用空調装置

【課題】扁平断面形状の熱交換チューブを水平方向に配設した熱交換器の水はけ性を改善し、エバポレータとして機能させた場合でも、熱交換性能を維持することができる熱交換器およびそれを用いたヒートポンプ式車両用空調装置を提供することを目的とする。
【解決手段】一対のヘッダまたはタンク間に、扁平断面形状とされた熱交換チューブ4が水平方向に複数本平行に設けられ、該熱交換チューブ4間に、それぞれコルゲートフィンが配設されている熱交換器において、熱交換チューブ4の扁平面に、凝縮水を下方に流下させるための周囲が密封された貫通穴11が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平な熱交換チューブが水平方向に配設された熱交換器および該熱交換器を熱源側の車外熱交換器に用いたヒートポンプ式車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用空調装置において、エンジンルーム内等の車外側に配設される車外熱交換器(コンデンサ)には、搭載性を考慮して一般に横長長方形状とされた熱交換器が用いられている。このような熱交換器の代表的な例が、いわゆるパラレルフロー型熱交換器と称されている熱交換器であり、一対のヘッダ間に、扁平断面形状とされた熱交換チューブが水平方向に複数本平行に配設され、この熱交換チューブ間にコルゲートフィンが配設された構成とされているものである。
【0003】
また、エンジンを搭載していない電気自動車等においては、暖房用の熱源としてエンジン冷却水を使用することができないことから、ヒートポンプ方式の車両用空調装置が用いられている。このようなヒートポンプ方式車両用空調装置にあって、車外側に配設される車外熱交換器として、上記の如く、扁平断面形状とされた熱交換チューブが水平方向に複数本平行に配設されている熱交換器が適用された場合には、暖房時、該熱交換器が熱源側のエバポレータとして機能されることから、水はけ性が課題となる。
【0004】
一方、車両用空調装置のエバポレータに適用される扁平断面形状の熱交換チューブエレメントが用いられた熱交換器において、チューブエレメントの周縁部に結露水集受溝を設けるとともに、この結露水集受溝に連接されるように扁平チューブ部とタンク部との連接部に結露水排出口を形成した熱交換器が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平2−45647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、扁平断面形状とされた熱交換チューブが水平方向に複数本平行に配設されている構成の熱交換器を車外熱交換器として用い、それをヒートポンプ暖房時にエバポレータとして機能させた場合、熱交換チューブやコルゲートフィンの表面で空気中の水分が凝縮して発生したドレン水が、水平に配設された熱交換チューブの扁平面上に溜まってしまい、それが冷媒と空気との熱交換を阻害して熱交換効率を低下させ、暖房能力を低下させてしまうという問題があった。
【0007】
また、特許文献1のように、チューブエレメントの周縁部に結露水集受溝を設けたものでは、扁平面上のドレン水が空気流に押されて結露水集受溝に達するまでドレン水を排水することができないことから、十分な水はけ性が得られないとともに、結露水集受溝を設けることによってその分だけチューブ幅が広くなるため、熱交換器の幅寸法が大きくなって搭載性が悪化する等の問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、扁平断面形状の熱交換チューブを水平方向に配設した熱交換器の水はけ性を改善し、エバポレータとして機能させた場合でも、熱交換性能を維持することができる熱交換器およびそれを用いたヒートポンプ式車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明の熱交換器およびそれを用いたヒートポンプ式車両用空調装置は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる熱交換器は、一対のヘッダまたはタンク間に、扁平断面形状とされた熱交換チューブが水平方向に複数本平行に設けられ、該熱交換チューブ間に、それぞれコルゲートフィンが配設されている熱交換器において、前記熱交換チューブの扁平面に、凝縮水を下方に流下させるための周囲が密封された貫通穴が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、水平方向に複数本平行に設けられている扁平断面形状とされた熱交換チューブの扁平面に、凝縮水を下方に流下させるための周囲が密封された貫通穴が設けられているため、該熱交換器がエバポレータとして用いられ、熱交換チューブやコルゲートフィンの表面で空気中の水分が凝縮してドレン水が発生したとしても、該ドレン水を扁平面に設けられている貫通穴より下方へと流下させ、熱交換チューブ表面から速やかに排除することができる。従って、熱交換チューブの扁平面にドレン水がホールドされ、それが熱交換を阻害して熱交換効率を低下させることがなく、扁平な熱交換チューブが水平方向に複数本平行に配設された熱交換器をエバポレータとして用いた場合でも、水はけ性を良好に保ち、高性能とされた本来の熱交換性能を維持することができる。
【0011】
さらに、本発明の熱交換器は、上記の熱交換器において、前記貫通穴は、前記熱交換チューブの長さ方向に沿って複数個設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、貫通穴が、熱交換チューブの長さ方向に沿って複数個設けられているため、熱交換チューブの長さ方向のいずれの位置でドレン水が発生したとしても、発生位置の最も近くに設けられている貫通穴からドレン水を速やかに下方へと流下させ、熱交換チューブ表面から排除することができる。従って、水はけ性が向上され、エバポレータとして用いた場合においても、高い熱交換性能を維持することができる熱交換器を得ることができる。
【0013】
さらに、本発明の熱交換器は、上述のいずれかの熱交換器において、前記貫通穴は、前記熱交換チューブの扁平面上における中央部よりも空気流の流通方向下流領域に設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、貫通穴が、熱交換チューブの扁平面上における中央部よりも空気流の流通方向下流領域に設けられているため、熱交換チューブの扁平面上で発生し、空気流により押されて空気流通方向下流域に向うドレン水を、扁平面の中央部よりも空気流通方向下流領域に設けられている貫通穴で受けることにより、そのまま下方へと流下させ、熱交換チューブの表面から排除することができる。従って、水はけ性が良好で、エバポレータとして用いた場合においても、高い熱交換性能を維持することができる熱交換器を得ることができる。
【0015】
さらに、本発明の熱交換器は、上述のいずれかの熱交換器において、前記貫通穴は、前記熱交換チューブの扁平面の少なくとも一方の扁平面に形成され、他方の扁平面にロウ付け接合される凹部の中央部位に設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、貫通穴が、熱交換チューブの扁平面の少なくとも一方の扁平面に形成され、他方の扁平面にロウ付け接合される凹部の中央部位に設けられているため、熱交換チューブの一方の扁平面上に他方の扁平面にロウ付け接合される凹部を形成し、該凹部の中央部位に貫通穴を設けておくことによって、周囲がロウ付けされて密封された貫通穴を熱交換チューブの扁平面上に設けることができ、該穴をドレン水の排水用穴とすることができる。従って、ドレン水を排除する貫通穴を設けたとしても、確実に密封性を維持することができるとともに、熱交換チューブ自体の作り方や熱交換器の構造そのものを特段変更する必要はなく、従来と同一構成の熱交換器としながら、良好な水はけ性を確保することができる。
【0017】
さらに、本発明の熱交換器は、上記の熱交換器において、前記熱交換チューブは、表面にロウ材がクラッドされた薄板材上に冷媒流通部、前記貫通穴が設けられている前記凹部およびロウ付け代等がプレス成形され、その薄板材を折り曲げまたは積層して断面が扁平形状とされたチューブを形成し、前記凹部内の前記貫通穴周りおよび前記ロウ付け代が前記ロウ材を介して接合されることにより密封冷媒流路が形成されたチューブとされていることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、熱交換チューブが、表面にロウ材がクラッドされた薄板材上に冷媒流通部、貫通穴が設けられている凹部およびロウ付け代等がプレス成形され、その薄板材を折り曲げまたは積層して断面が扁平形状とされたチューブを形成し、凹部内の貫通穴周りおよびロウ付け代がロウ材を介して接合されることにより密封冷媒流路が形成されたチューブとされているため、ロウ材がクラッドされた薄板材に冷媒流通部等をプレス成形する際に、同時に貫通穴が設けられている凹部を成形するだけで、従来と同じ方法で扁平断面形状の熱交換チューブを製造することができ、扁平面に貫通穴を有する熱交換チューブおよび該熱交換チューブを用いた熱交換器を簡易に製造することができる。従って、製造が容易で、かつエバポレータとして用いた場合でも、水はけ性が良好で、熱交換性能を十分に確保することができる熱交換器を得ることができる。
【0019】
さらに、本発明の熱交換器は、上述のいずれかの熱交換器において、前記コルゲートフィンには、コルゲート成形された山の頂部またはその近傍に排水穴が穿設されていることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、コルゲートフィンのコルゲート成形された山の頂部またはその近傍に排水穴が穿設されているため、熱交換チューブの貫通穴から流下されてくるドレン水をコルゲートフィンの山の頂部またはその近傍に設けられている排水穴より順次下方へと流下させ、速やかに熱交換器の表面から外部に排出することができる。特に、コルゲート成形された山の頂部に排水穴を設けることにより、水はけ性をより重視し、また山の頂部から外れた近傍位置に排水穴を設けることにより、伝熱性能をより重視しながら、熱交換器としての水はけ性を確保することができる。従って、扁平な熱交換チューブが水平方向に複数本平行に配設された熱交換器でありながら、エバポレータとして用いた場合でも高い熱交換性能を維持することができる。
【0021】
さらに、本発明にかかるヒートポンプ式車両用空調装置は、HVACユニット内に利用側の車内熱交換器が配設されているとともに、車外に熱源側の車外熱交換器が配設され、前記車内熱交換器および前記車外熱交換器を含んでヒートポンプサイクルが構成されている車両用空調装置において、前記車外熱交換器が、上述のいずれかの熱交換器とされていることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、HVACユニット内に利用側の車内熱交換器が配設されているとともに、車外に熱源側の車外熱交換器が配設され、該車内熱交換器および車外熱交換器を含んでヒートポンプサイクルが構成されている車両用空調装置において、車外熱交換器が、上述のいずれかの熱交換器とされているため、冷房時にコンデンサ、暖房時にエバポレータとして機能する車外熱交換器に上述の熱交換器を用いることにより、冷房時、暖房時のいずれにおいても熱交換性能を十分確保することができる。従って、電気自動車等に適用されるヒートポンプ式の車両用空調装置において、熱源側の車外熱交換器に従来から広範に使用されている高性能の熱交換器を僅かに改良しただけでそのまま適用でき、開発費をセーブすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の熱交換器によると、該熱交換器がエバポレータとして用いられ、熱交換チューブやコルゲートフィンの表面で空気中の水分が凝縮してドレン水が発生したとしても、該ドレン水を扁平面に設けられている貫通穴より下方へと流下させ、熱交換チューブ表面から速やかに排除することができるため、熱交換チューブの扁平面にドレン水がホールドされ、それが熱交換を阻害して熱交換効率を低下させることがなく、扁平な熱交換チューブが水平方向に複数本平行に配設された熱交換器をエバポレータとして用いた場合でも、水はけ性を良好に保ち、高性能とされた本来の熱交換性能を維持することができる。
【0024】
本発明のヒートポンプ式車両用空調装置によると、冷房時にコンデンサ、暖房時にエバポレータとして機能する車外熱交換器に上述の熱交換器を用いることにより、冷房時、暖房時のいずれにおいても熱交換性能を十分確保することができるため、電気自動車等に適用されるヒートポンプ式の車両用空調装置において、熱源側の車外熱交換器に従来から広範に使用されている高性能の熱交換器を僅かに改良しただけでそのまま適用でき、開発費をセーブすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る熱交換器の斜視図である。
【図2】図1に示す熱交換器に適用される熱交換チューブの一部斜視図である。
【図3】図2のA−A断面相当図である。
【図4】図1に示す熱交換器に適用されるコルゲートフィンの拡大図(A)とその一部斜視図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図4を用いて説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に係る熱交換器の斜視図が示され、図2には、それに適用される熱交換チューブの一部斜視図、図3には、そのA−A断面図が示されている。
熱交換器1は、図1に示されるように、一対(二個一組)のヘッダ2,3と、熱交換チューブ4と、コルゲートフィン5と、冷媒出入口フランジ6,7と、を備えている。これらは、いずれもアルミ合金製とされている。
【0027】
一対のヘッダ2,3は、左右に所定の間隔を置いて配設されている筒体であり、相対向する側面に、それぞれ所定間隔で多数の熱交換チューブ挿入穴が設けられている。この一対のヘッダ2,3間に、扁平断面形状とされた熱交換チューブ4が水平方向に複数本互いに平行に配設されている。熱交換チューブ4の両端は、ヘッダ2,3の側面に設けられている熱交換チューブ挿入穴に挿し込まれている。更に、平行に配設されている複数本の熱交換チューブ4間には、それぞれコルゲート状に成形されたコルゲートフィン5が配設されている。
【0028】
これら一対のヘッダ2,3、熱交換チューブ4およびコルゲートフィン5は、一体に組み付けられた後、炉中でロウ付け結合されるようになっている。一方のヘッダ2には、上部および下部に一対の冷媒出入口フランジ6,7が設けられており、冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)を構成するための冷媒配管が接続可能とされている。
【0029】
さらに、ヘッダ2内には、少なくとも1組の仕切り板(図示省略)が設けられ、これによって、冷房時には、冷媒出入口フランジ6から実線矢印の如く流入した冷媒が、仕切り板で区画された複数本の熱交換チューブ4内をヘッダ3に向って流通し、ヘッダ3内で折り返した後、再び熱交換チューブ4内をヘッダ2に向って流通し、ヘッダ2を経て冷媒出入口フランジ7から実線矢印の如く流出され、暖房時には、冷媒出入口フランジ7から波線矢印の如く流入した冷媒が、上記とは逆方向に流通した後、冷媒出入口フランジ6から波線矢印の如く流出されるようになっている。
【0030】
なお、冷媒出入口フランジ6,7は、両方とも一方のヘッダ2に設けているが、一対のヘッダ2,3に分けて設置してもよく、また、仕切り板は、冷媒を上記したように1回だけ蛇行流通させる場合は、一方のヘッダに1組設ければよいが、3回以上蛇行させる場合には、双方のヘッダ2,3に蛇行回数に応じた組数設ければよい。さらに、冷媒を蛇行させて流す場合、冷房時は、入口側から出口側に向って、熱交換チューブの本数が漸次減少され、逆に暖房時は、入口側から出口側に向って、熱交換チューブの本数が漸次増加される位置に仕切り板が設置されるものとする。
【0031】
扁平断面形状とされた熱交換チューブ4は、図2,3に示されるように、表面にロウ材がクラッドされているアルミ合金製の薄板材9上に冷媒流通部10、ドレン水を排水するための貫通穴11が設けられている凹部12およびロウ付け代13等がプレス成形された該薄板材9を、折り曲げて重ねることによって断面が扁平形状のチューブとされたものであり、凹部12内の貫通穴11周りおよびロウ付け代13がロウ材を介して接合されることにより、密封冷媒流路14が形成された熱交換チューブ4とされている。
【0032】
また、ドレン水を排水する貫通穴11が設けられる凹部12は、熱交換チューブ4の長さ方向に沿って複数個に設けられておればよく、その配置形態としては、直線上に一列または複数列に設ける、千鳥状に設ける、図2に示されるように、幅方向に1個、2個と交互に繰り返し配置する等々、様々な配置形態が考えられる。更に、貫通穴11が設けられる凹部12を、全体として熱交換チューブ4の扁平面上における中央部よりも空気流の流通方向下流領域に偏位させて設けてもよい。
【0033】
なお、貫通穴11が設けられる凹部12は、本実施形態のように、必ずしも熱交換チューブ4の双方の扁平面に形成する必要はなく、少なくとも一方の扁平面に形成され、他方の扁平面に接触されてロウ付け接合されるようにしてもよい。
【0034】
コルゲートフィン5は、図4(A),(B)に示されるように、アルミ合金製の非常に薄い板材を波形に繰り返し折り曲げ成形して構成されたものであり、隣接する熱交換チューブ4の扁平面間に、その山の頂部15が接するように配置されている。このコルゲートフィン5の各山の頂部15には、それぞれドレン水を排水するための排水穴16が設けられている。なお、この排水穴16は、水はけ性をより重視する場合には、山の頂部15に設ければよいが、伝熱性能をより重視する場合には、図4(B)に2点鎖線で示されるように、山の頂部15から外れた近傍位置に排水穴16Aを設けるようにしてもよい。
【0035】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
上記熱交換器1をヒートポンプ式車両用空調装置の車外側に配設される車外熱交換器に適用した場合、冷房時、コンデンサとして機能する熱交換器1に対し、冷媒は、図1に示されるように、実線矢印の如く冷媒出入口フランジ6からヘッダ2内に流入し、仕切り板で区画された複数本の熱交換チューブ4内を流通してヘッダ3内に流入した後、ヘッダ3で折り返し、再び残りの熱交換チューブ4内を流通してヘッダ2内に流入される。この間に外部を流通する外気に放熱して凝縮された冷媒は、冷媒出入口フランジ7からエバポレータ側へと送られる。
【0036】
一方、暖房時、熱交換器1は、外気を熱源とするエバポレータとして機能されることになり、冷媒出入口フランジ7から破線矢印の如くヘッダ2に流入された冷媒は、仕切り板で区画された複数本の熱交換チューブ4内を流通してヘッダ3内に流入した後、ヘッダ3で折り返し、再び残りの熱交換チューブ4内を流通してヘッダ2内に流入される。この間に外部を流通する外気から吸熱してガス化された冷媒は、冷媒出入口フランジ6から圧縮機側へと送られるようになる。
【0037】
上記熱交換器1がエバポレータとして機能された場合、外気中の水分が熱交換チューブ4やコルゲートフィン5の表面で凝縮され、ドレン水が発生する。しかし、こうして発生したドレン水は、熱交換チューブ4の扁平面に設けられている凹部12に集められ、凹部12内に設けられている貫通穴11を介して下方へと流下されるため、熱交換チューブ4の表面から速やかに排除することができる。
従って、熱交換チューブ4の扁平面にドレン水がホールドされ、それが空気と冷媒との熱交換を阻害して熱交換効率を低下させることがなく、扁平な熱交換チューブ4が水平方向に複数本平行に配設された熱交換器1をエバポレータとして機能させた場合にも、水はけ性を良好に保ち、高性能とされた本来の熱交換性能を維持することができる。
【0038】
また、上記貫通穴11は、熱交換チューブ4の長さ方向に沿って複数個設けられているため、熱交換チューブ4の長さ方向のいずれの位置でドレン水が発生したとしても、発生位置の最も近くに設けられている貫通穴11からドレン水を速やかに下方へと流下させることにより、熱交換チューブ4の表面から排除することができる。従って、水はけ性が向上され、エバポレータとして用いた場合においても、高い熱交換性能を維持することができる熱交換器を得ることができる。
【0039】
なお、貫通穴11は、熱交換チューブ4の扁平面上における中央部よりも空気流の流通方向下流側領域に偏位させて設けてもよく、この場合は、熱交換チューブ4の扁平面上で発生し、空気流により押されて空気流通方向下流域に向うドレン水を、扁平面の中央部よりも空気流通方向下流領域に設けられている貫通穴11で受けることにより、そのまま下方へと流下させ、熱交換チューブ4の表面から排除することができる。これによって、水はけ性が良好で、エバポレータとして用いた場合においても、高い熱交換性能を維持することができる熱交換器を得ることができる。
【0040】
さらに、ドレン水を排出する貫通穴11を、熱交換チューブ4の扁平面の少なくとも一方の扁平面に形成され、他方の扁平面にロウ付け接合される凹部12の中央部位に設けているため、熱交換チューブ4の一方の扁平面上に他方の扁平面にロウ付け接合される凹部12を形成し、該凹部12の中央部位に貫通穴11を設けておくことにより、周囲がロウ付けで密封された貫通穴11を熱交換チューブ4の扁平面上に設けることができ、この穴をドレン水の排水用穴とすることができる。従って、ドレン水を排除する貫通穴11を設けたとしても、確実に密封性を維持することができるとともに、熱交換チューブ4自体の作り方や熱交換器1の構造そのものを特段変更する必要はなく、従来と同一構成の熱交換器1としながら、良好な水はけ性を確保することができる。
【0041】
また、熱交換チューブ4が、表面にロウ材がクラッドされている薄板材9上に冷媒流通部10、貫通穴11が設けられている凹部12、ロウ付け代13等がプレス成形され、その薄板材9を折り曲げて断面が扁平形状とされたチューブを形成し、凹部12内の貫通穴11周りおよびロウ付け代13がロウ材を介して接合されることにより密封冷媒流路14が形成された熱交換チューブ4とされている。このため、ロウ材がクラッドされた薄板材9に冷媒流通部10等をプレス成形する際に、同時に貫通穴11が設けられている凹部12を成形するだけで、従来と同じ方法で扁平断面形状の熱交換チューブ4を製造することができ、扁平面に貫通穴11を有する熱交換4および該熱交換チューブ4を用いた熱交換器1を簡易に製造することができる。従って、製造が容易で、かつエバポレータとして用いた場合でも、水はけ性が良好で、熱交換性能を十分に確保することができる熱交換器1を得ることができる。
【0042】
さらに、コルゲートフィン5のコルゲート成形された山の頂部15またはその近傍に排水穴16,16A等が穿設された構成とされているため、熱交換チューブ4の貫通穴11から流下されてくるドレン水をコルゲートフィン5の山の頂部15またはその近傍に設けられている排水穴16,16Aより順次下方へと流下させ、速やかに熱交換器1の表面から外部に排出することができる。
【0043】
特に、コルゲート成形された山の頂部15に排水穴16を設けることによって、水はけ性をより重視し、また山の頂部15から外れた近傍位置に排水穴16Aを設けることによって、伝熱性能をより重視しながら、熱交換器1としての水はけ性を確保することが可能となる。その結果、扁平な熱交換チューブ4が水平方向に複数本平行に配設された熱交換器1でありながら、エバポレータとして用いた場合でも高い熱交換性能を維持することができる。
【0044】
しかも、冷房時にコンデンサ、暖房時にエバポレータとして機能する車外熱交換器に上記熱交換器1を用いているため、冷房時、暖房時のいずれにおいても熱交換性能を十分確保することができ、従って、電気自動車等に適用されるヒートポンプ式の車両用空調装置において、熱源側の車外熱交換器に従来から広範に使用されている高性能の熱交換器を僅かに改良しただけでそのまま適用でき、開発費をセーブすることができる。
【0045】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、熱交換器の型式が異なっている。その他の点については、上記第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
上記第1実施形態は、ヘッダ2,3と熱交換チューブ4とが別々に構成された、いわゆるパラレルフロー型熱交換器に適用した例であるが、冷媒を集合、分配するタンク部と冷媒を流通するチューブ部とを一体に成形したチューブエレメントを積層して扁平断面形状の熱交換チューブを形成し、この熱交換チューブとコルゲートフィンとを交互に多数積層して構成される積層型熱交換器に対しても、上記と同様に、貫通穴11を設けることによって、本発明を適用することができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、貫通穴11および貫通穴11が設けられる凹部12の形状について特別言及していないが、それぞれの形状は、特に制約されるものではなく、排水性を損なわないものであれば、円形、楕円形、多角形等、様々な形状とすることができる。望ましくは、凹部12によって圧損が増加されることがなく、かつ内部の冷媒流れを乱すことにより、伝熱性能を向上できるものであることがより望ましい。
【符号の説明】
【0047】
1 熱交換器
2,3 ヘッダ
4 熱交換チューブ
5 コルゲートフィン
9 薄板材
10 冷媒流通部
11 貫通穴
12 凹部
13 ロウ付け代
14 密封冷媒流路
15 山の頂部
16,16A 排水穴


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のヘッダまたはタンク間に、扁平断面形状とされた熱交換チューブが水平方向に複数本平行に設けられ、該熱交換チューブ間に、それぞれコルゲートフィンが配設されている熱交換器において、
前記熱交換チューブの扁平面に、凝縮水を下方に流下させるための周囲が密封された貫通穴が設けられていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記貫通穴は、前記熱交換チューブの長さ方向に沿って複数個設けられていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記貫通穴は、前記熱交換チューブの扁平面上における中央部よりも空気流の流通方向下流領域に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記貫通穴は、前記熱交換チューブの扁平面の少なくとも一方の扁平面に形成され、他方の扁平面にロウ付け接合される凹部の中央部位に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項5】
前記熱交換チューブは、表面にロウ材がクラッドされた薄板材上に冷媒流通部、前記貫通穴が設けられている前記凹部およびロウ付け代等がプレス成形され、その薄板材を折り曲げまたは積層して断面が扁平形状とされたチューブを形成し、前記凹部内の前記貫通穴周りおよび前記ロウ付け代が前記ロウ材を介して接合されることにより密封冷媒流路が形成されたチューブとされていることを特徴とする請求項4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記コルゲートフィンには、コルゲート成形された山の頂部またはその近傍に排水穴が穿設されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項7】
HVACユニット内に利用側の車内熱交換器が配設されているとともに、車外に熱源側の車外熱交換器が配設され、前記車内熱交換器および前記車外熱交換器を含んでヒートポンプサイクルが構成されている車両用空調装置において、
前記車外熱交換器が、請求項1ないし6のいずれかに記載の熱交換器とされていることを特徴とするヒートポンプ式車両用空調装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−67957(P2012−67957A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212436(P2010−212436)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】