説明

熱交換器のろう付け構造

【課題】 プレートを曲折して、その縁部どうしを重ね合せて偏平チューブ1を構成し、その偏平チューブ1の端部をヘッダープレート4のチューブ挿通孔3に挿通し、その挿通部をろう付け固定した熱交換器のろう付け構造において、その重ね合わせ部2の周方向先端位置で、ヘッダープレート4のチューブ挿通孔3と偏平チューブ1外周との間に隙間が生じないものの提供。
【解決手段】 偏平チューブ1の重ね合わせ部2の外側のプレートの縁部に、その周方向の先端に向かって次第に厚みを薄く形成した変形部5を設け、チューブ挿通孔3に変形部5に略整合するように対応部3aが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は偏平チューブと、その端部が挿通されるチューブ挿通孔を有するヘッダープレートとのろう付け構造に関し、特に偏平チューブ1の板厚が厚い場合の熱交換器のろう付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製プレートを偏平なチューブ状に曲折すると共に、その端部どうしを重ね合わせたものが各種提案されている。図7〜図10はその各種例を示し、図7の例では偏平チューブ1の板厚が0.3〜0.5mm程度の場合であり、その重ね合わせ部2の外周に段部が付かないように内側の縁部を外側の板厚分だけ内側に曲折したものである。
このような偏平チューブ1をヘッダープレート4のチューブ挿通孔3に挿通した場合、チューブ挿通孔3が通常の偏平孔であっても両者間に隙間がほとんど生じない。従って、その挿通部のろう付け部は、気密性および液密性を高く維持することができる。ところが、偏平チューブ1の板厚が0.6mmを超えると、その縁部どうしの重ね合わせ部は、図8のごとくそこに隙間14が形成される。すると偏平チューブ1とヘッダープレート4のチューブ挿通孔3との間をろう付けする場合に、隙間14の存在により気密性または液密性が保てない場合が生じる。
【0003】
また、板厚が厚い、一対の溝型のプレートを互いに嵌着して図9のような偏平チューブ1を形成することもできる。この場合、図10のごとく偏平チューブ1の外周に整合するようにヘッダープレート4のチューブ挿通孔3を形成し、そのチューブ挿通孔3に偏平チューブ1を挿入した場合には、両者間に隙間は生じない。そこでこれらの間を一体にろう付け固定することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−267380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
偏平チューブ1の板厚が0.6mm以上のものにおいて、プレートの重ね合わせ部に隙間14が生じると、ろう付けの信頼性が損なわれる。また、それを防ぐため、その隙間に合わせてチューブ挿通孔3の一部を変形すると、チューブ挿通孔3穿設用の金型が、その段差部において消耗が激しくなり、その寿命が短くなる。その結果として熱交換器の製造コストが高くなる欠点がある。
そこで本発明は、特に偏平チューブ1の板厚が0.6mm以上のものにおいて、その重ね合わせ部における隙間を可及的に小とし、ろう付けの信頼性を向上すると共に、チューブ挿通孔3穿設用の金型形状を単純化し、寿命の長い金型でチューブ挿通孔3を穿設することができるものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、プレートを曲折して、その縁部どうしが厚み方向に重ね合わされた偏平チューブ(1)と、
その偏平チューブ(1)の断面外周に略整合するチューブ挿通孔(3)が穿設されたヘッダープレート(4)と、を具備し、そのヘッダープレート(4)のチューブ挿通孔(3)に偏平チューブ(1) の端部を挿通した状態で、その挿通部がろう付け固定された熱交換器のろう付け構造において、
前記偏平チューブ(1)の長手方向の端部で、その重ね合わせ部(2)の外側のプレートの縁部に、その周方向の先端に向かって次第に厚みを薄く形成した変形部(5)が設けられ、
前記チューブ挿通孔(3)は、前記変形部(5)に略整合する形状が、その変形部(5)に対応する対応部(3a)に形成されたことを特徴とする熱交換器のろう付け構造である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
前記変形部(5)の長さtが、偏平チューブ(1)をヘッダープレート(4)のチューブ挿通孔(3)に挿通する長さに整合されたことを特徴とする熱交換器のろう付け構造である。
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2において、
前記偏平チューブ(1)が一対の溝型プレート(6)(7)を互いに嵌着したものからなり、その外側に配置された溝型プレート(6)の幅方向両縁部に一対の前記変形部(5)が形成された熱交換器のろう付け構造である。
【0008】
請求項4に記載の本発明は、請求項1または請求項2において、
前記偏平チューブ(1)が一枚のプレートを偏平に曲折して、その縁部どうしが重ね合わされたものからなる熱交換器のろう付け構造である。
請求項5に記載の本発明は、請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、
前記変形部(5)の先端側への延長線上に、重ね合わせ部(2)の内側プレートの湾曲コーナー部(1a)が存在するように、その変形部(5)が形成されたことを特徴とする熱交換器のろう付け構造である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱交換器のろう付け構造は、偏平チューブ1の長手方向の端部で、その重ね合わせ部2の外側のプレートの縁部に、周方向の先端に向かって次第に厚みを薄く形成した変形部5が設けられ、チューブ挿通孔3にはその変形部5に対応する対応部3aに変形部5に略整合する形状が形成されたから、チューブ挿通孔3内周と偏平チューブ1外周との隙間を可及的に少なくし、両者間のろう付けの信頼性が向上し、ろう付け部の気密性および液密性を確実に確保しうる。そして、チューブ挿通孔3の形状を単純化させ、ヘッダープレート4穿設用の金型の寿命を延ばし、結果として安価な熱交換器を提供できる。
【0010】
上記構成において、請求項2に記載のように、変形部5の長さを、偏平チューブ1がヘッダープレート4のチューブ挿通孔3に挿通される長さに整合する場合には、変形部5によって偏平チューブ1とヘッダープレート4との位置決めを行うことができる。
上記いずれかの構成において、請求項3に記載のように、偏平チューブ1として一対の溝型プレート6、7を互いに嵌着したものとし、その外側に配置された溝型プレート6の幅方向の両縁部に一対の変形部5を形成する場合には、偏平チューブ1の製造が容易で組立性およびろう付け性のよい熱交換器を提供できる。
【0011】
上記構成において、請求項4に記載のように、偏平チューブ1として一枚のプレートを偏平に曲折し、その縁部どうしを重ね合せたものとすることができる。この場合には、変形部5を偏平チューブ1外周の一箇所のみとすることができ、ろう付けの信頼性がさらに向上する。
上記いずれかの構成において、請求項5に記載のように、変形部5の先端側への延長線上に、重ね合わせ部2の内側プレートの湾曲コーナ部1aが存在するように形成することができる。この場合には、チューブ挿通孔3と偏平チューブ1との隙間をさらに小さくし、ろう付けの信頼性をより向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1は本発明のろう付け構造に用いられる偏平チューブ1の要部斜視図であり、図2はその偏平チューブ1の端部が挿通されるヘッダープレート4のチューブ挿通孔3を示す正面図、図3はその偏平チューブ1をチューブ挿通孔3に挿通した状態を示す正面図、図4は図3のIV−IV矢視断面略図、図5は同ろう付け構造を有する熱交換器の縦断面図略図である。
【0013】
この例の熱交換器は図3〜図5に示すごとく、一対のヘッダープレート4に多数のチューブ挿通孔3が並列して定間隔に穿設され、各チューブ挿通孔3に偏平チューブ1の両端部が挿通され、その挿通部が一体にろう付け固定されてコアを構成し、そのコア外周にケーシング8が被嵌されると共に、コアの両端にヘッダ9が設けられるものである。
本発明のろう付け構造の対象とする偏平チューブ1は、図1の例では一対の溝型プレート6,7をその底面側を互いに対向させて嵌着したものである。そして、その外側に嵌着される溝型プレート6の長手方向の端部において、両溝型プレート6,7との重ね合わせ部2の縁部に変形部5を形成したものである。この変形部5は、溝型プレート6の周方向の先端に向かって次第に厚みを薄く形成したものである。すなわち、変形部5はその横断面が楔状に形成されている。
【0014】
そして、その変形部5の周方向の延長線は図3のごとく、溝型プレート7の湾曲コーナ部1aに接するように形成されている。逆に言えば、湾曲コーナ部1aの接線の延長線上に変形部5の平面が一致する。また、変形部5の長さtは図4に示すごとく、偏平チューブ1をヘッダープレート4のチューブ挿通孔3に挿通する長さtに等しい。このことは、変形部5の長さ方向の端部に段部5aが形成され、その段部5aがヘッダープレート4に当接するものである。
【0015】
次に、ヘッダープレート4のチューブ挿通孔3は、偏平チューブ1の先端部外周に略整合する。特に、偏平チューブ1の重ね合わせ部2の周方向先端部に対応する対応部3aはその一部が変形部5に整合する。それと共に、偏平チューブ1の変形部5の延長線とその湾曲コーナ部1aとを結ぶ接線とに整合されている。この例では、偏平チューブ1の溝型プレート6の両側に変形部5が形成され、それに応じてチューブ挿通孔3の一対の対応部3aが上記のように形成されている。
【0016】
このようにしてなる偏平チューブ1の先端部をヘッダープレート4のチューブ挿通孔3に挿通すると共に、偏平チューブ1の内部にはインナーフィン10が内装される。そして各部品の接触部間にはろう材が被覆または塗布される。偏平チューブ1およびヘッダープレート4がステンレス鋼あるいはニッケル鋼等の場合には、液状のバインダーを介して粉末状のニッケルろう材が塗布される。そして全体を組立てた状態で、高温の炉内で一体的に各部品間がろう付け固定される。このとき、チューブ挿通孔3と偏平チューブ1との間に生じる隙間は極めて僅かであるので、その隙間をろう材が閉塞し、偏平チューブ1とチューブ挿通孔3との気密性および液密性を確保する。このようにしてなる熱交換器は、図5に示す如く、一例としてヘッダ9から高温の排気ガス13が各偏平チューブ1内に流通し、偏平チューブ1の外面に冷却水出入口11から冷却水12が導かれ、両流体間に熱交換が行われる。
【0017】
次に図6は本発明のろう付け構造の他の例であり、この例の偏平チューブ1は一枚の金属プレートを偏平管状に曲折し、その端部どうしを重ね合わせたものからなり、その重ね合わせ部2において、その外側のプレートの縁部の周方向先端部に変形部5を形成したものである。そして、ヘッダープレート4のチューブ挿通孔3の対応部3aが変形部5およびその延長線に整合するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の熱交換器のろう付け構造に用いられる偏平チューブ1の要部斜視図。
【図2】同ろう付け構造に用いられるヘッダープレート4のチューブ挿通孔3の正面図。
【図3】同チューブ挿通孔3に偏平チューブ1を挿入して、ろう付けした状態を示す正面図。
【図4】図3のIV-IV矢視断面略図。
【図5】同ろう付け構造を有する熱交換器の縦断面図略図。
【0019】
【図6】従来型ろう付け構造の第1の例を示す要部正面図。
【図8】本発明の熱交換器のろう付け構造の第2の実施例を示す要部正面図。
【図7】同第2の例を示す要部正面図。
【図9】同第3の例を示す要部正面図。
【図10】同第3の例におけるヘッダープレート4のチューブ挿通孔3を示す要部正面図。
【符号の説明】
【0020】
1 偏平チューブ
1a 湾曲コーナ部
2 重ね合わせ部
3 チューブ挿通孔
3a 対応部
4 ヘッダープレート
5 変形部
5a 段部
【0021】
6 溝型プレート
7 溝型プレート
8 ケーシング
9 ヘッダ
10 インナーフィン
11 冷却水出入口
12 冷却水
13 排気ガス
14 隙間
15 ろう材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートを曲折して、その縁部どうしが厚み方向に重ね合わされた偏平チューブ(1)と、
その偏平チューブ(1)の断面外周に略整合するチューブ挿通孔(3)が穿設されたヘッダープレート(4)と、を具備し、そのヘッダープレート(4)のチューブ挿通孔(3)に偏平チューブ(1) の端部を挿通した状態で、その挿通部がろう付け固定された熱交換器のろう付け構造において、
前記偏平チューブ(1)の長手方向の端部で、その重ね合わせ部(2)の外側のプレートの縁部に、その周方向の先端に向かって次第に厚みを薄く形成した変形部(5)が設けられ、
前記チューブ挿通孔(3)は、前記変形部(5)に略整合する形状が、その変形部(5)に対応する対応部(3a)に形成されたことを特徴とする熱交換器のろう付け構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記変形部(5)の長さtが、偏平チューブ(1)をヘッダープレート(4)のチューブ挿通孔(3)に挿通する長さに整合されたことを特徴とする熱交換器のろう付け構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記偏平チューブ(1)が一対の溝型プレート(6)(7)を互いに嵌着したものからなり、その外側に配置された溝型プレート(6)の幅方向の両縁部に一対の前記変形部(5)が形成された熱交換器のろう付け構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記偏平チューブ(1)が一枚のプレートを偏平に曲折して、その縁部どうしが重ね合わされたものからなる熱交換器のろう付け構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、
前記変形部(5)の先端側への延長線上に、重ね合わせ部(2)の内側プレートの湾曲コーナー部(1a)が存在するように、その変形部(5)が形成されたことを特徴とする熱交換器のろう付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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