説明

熱交換器の細管の位置識別方法及びその位置識別装置

【課題】各種個別処理を行う細管の位置を、効率的に信頼性よく識別可能な熱交換器の細管の位置識別方法及びその位置識別装置を提供する。
【解決手段】熱交換器11の管板12に装着する多数の細管13の位置識別方法及びその位置識別装置10において、管板12に設けられた各細管13の配置を示す管巣図21を作成し、各細管13に対応する管巣図21に記載された各細管19に、この位置を特定する識別コードを付与する工程と、識別コードが記載された識別片23を、各細管19に対応する各細管13近傍に設置する工程と、各細管13に対して細管個別処理を行うに際し、細管個別処理を行うための治具14に設けられた読取り機25により細管13に対応する識別片23を読取る工程と、その細管13の位置がこれに対応する細管19の位置に合致する場合は細管個別処理を開始し、合致しない場合は細管個別処理を中止する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の管板に装着する多数の細管の位置を識別して種々の個別処理を行うための熱交換器の細管の位置識別方法及びその位置識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器の管板に多数の細管が接合されている多管式の熱交換器の製作では、細管1本ごとに管板に接合(拡管処理)を行っている。このため、細管と管板との接合を行う場合、拡管処理が完了する度に、拡管完了データを入力し、予め求めておいた細管配列データと組合わせて、拡管処理が完了した細管と拡管未処理の細管との区別が容易に見分けられるようにすると共に、拡管処理漏れの細管の発生を防止することを図った装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−340534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、管板に接合する細管の本数は多く(数千本に及ぶ場合もある)、しかも細管を1本ごと拡管するため、拡管完了の細管と拡管未処理の細管との区別が不明になる可能性が高い。従って、細管の拡管処理が間違いなく行われたという保証は難しく、接合の信頼性の観点からは問題がある。更に、細管の拡管処理を行う作業中に、拡管完了データの入力や、拡管が完了した細管であるか否かのチェック等の別の作業を行う必要があるため、作業が煩雑になると共に、拡管処理の作業効率が低下するという問題も生じる。
なお、上記した問題は、細管の拡管処理のみならず、例えば、検査を行う前の細管の洗浄処理や、検査により異常と判定された細管のマーキング処理を行う場合にも発生する。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、各種個別処理を行う細管の位置を、効率的に信頼性よく識別可能な熱交換器の細管の位置識別方法及びその位置識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る熱交換器の細管の位置識別方法は、熱交換器の管板に装着する多数の細管Aの位置識別方法において、
前記管板に設けられた前記各細管Aの配置を示す管巣図を作成し、前記各細管Aに対応する該管巣図に記載された各細管Bに、該各細管Bの位置を特定する識別コードをそれぞれ付与する第1工程と、
前記識別コードが記載された識別片を、前記各細管Bに対応する前記各細管A近傍にそれぞれ設置する第2工程と、
前記各細管Aに対して、拡管処理、洗浄処理、又は検査により異常と判定された細管のマーキング処理からなる細管個別処理を行うに際し、該細管個別処理を行うための治具に設けられた読取り機により、該細管個別処理を行おうとする前記細管Aに対応する前記識別片を読取る第3工程と、
前記細管個別処理を行おうとする前記細管Aの位置が、該細管Aに対応する前記管巣図中の前記細管Bの位置に合致する場合は、前記細管個別処理を開始し、合致しない場合は、前記細管個別処理を中止する第4工程とを有する。
【0007】
前記目的に沿う第2の発明に係る熱交換器の細管の位置識別装置は、熱交換器の管板に装着する多数の細管Aの位置識別装置において、
前記管板に設けられた前記各細管Aの配置を示す管巣図を作成する管巣図作成手段と、
前記管巣図に記載された各細管Bの位置を特定する識別コードが記載され、該各細管Bに対応する前記各細管A近傍にそれぞれ設置される識別片を作製する識別片作製手段と、
前記各細管Aに対して、拡管処理、洗浄処理、又は検査により異常と判定された細管のマーキング処理からなる細管個別処理を行うに際し、該細管個別処理を行うための治具に設けられ、該細管個別処理を行おうとする前記細管Aに対応する前記識別片を読取る読取り機と、
前記細管個別処理を行おうとする前記細管Aの位置が、該細管Aに対応する前記管巣図中の前記細管Bの位置に合致する場合は、前記細管個別処理の開始を、合致しない場合は、前記細管個別処理の中止を指示する処理操作手段とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る熱交換器の細管の位置識別方法及びその位置識別装置は、各細管Aの配置を示す細管Bが記載された管巣図を作成し、細管個別処理を行う治具に設けられた読取り機により、細管個別処理を行おうとする細管Aに対応する識別片を読取り、この細管Aと管巣図中の細管Bの位置が合致するか否かの確認を行うので、細管個別処理を行う細管の間違い及び漏れを防止でき、細管の位置を信頼性よく識別できる。また、細管の確認の作業が、細管個別処理作業の一環として行われるため、作業の効率向上が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る熱交換器の細管の位置識別装置の処理実行手段、処理操作手段の説明図である。
【図2】同位置識別装置の処理操作手段の説明図である。
【図3】同位置識別装置の部分模擬管板の説明図である。
【図4】本発明の第1〜第3の実施の形態に係る熱交換器の細管の位置識別方法を適用して細管の処理を行う熱交換器の説明図である。
【図5】同熱交換器の細管の位置識別方法の説明図である。
【図6】(A)、(B)はそれぞれ細管の拡管処理前の説明図、拡管処理後の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る熱交換器の細管の位置識別装置(以下、単に位置識別装置ともいう)10は、熱交換器11(図4参照)の管板12に設けられた多数(例えば、1000〜10000本程度)の細管(細管A)13の位置を識別し、処理対象となる細管13に治具14を用いて細管個別処理を行うものである。なお、細管個別処理には、例えば、細管の拡管処理、細管の洗浄処理、検査により異常と判定された細管のマーキング処理がある。以下、詳しく説明する。
【0011】
図1、図2に示すように、位置識別装置10は、管巣図作成手段15、バーコードラベラ(識別片作製手段の一例)、処理実行手段16、及び処理操作手段17を有している。
管巣図作成手段15は、図2に示すように、データ入力器18を介して入力された熱交換器11の設計データから、管板12に装着される細管13の装着位置(列、番)を求めると共に仮想管板を形成し、この仮想管板上に、求めた細管13の装着位置を細管(細管B)19の位置として設定して、管板12上の細管13の配置関係を示す細管配置データを作成し、表示器20に管巣図21として表示する管巣図作成機能を備えている。
【0012】
ここで、管巣図作成手段15は、管巣図作成機能を発現するプログラムを、パーソナルコンピュータに搭載することで形成できる。そして、データ入力器18には、パーソナルコンピュータ用の入力機器(例えば、キーボード)、表示器20には、パーソナルコンピュータ用の表示機器(ディスプレイ等)がそれぞれ使用できる。
【0013】
バーコードラベラは、管巣図21に記載された多数の細管19を複数の配管列22に区分し、各細管19に、細管19が属する配管列22を特定する配管列番号X及び配管列22内の細管19の位置を特定する順位番号Yを備えたバーコード(識別コードの一例)Zが記載された識別片23を作製するものである。なお、バーコードラベラには、市販のものを使用することができる。
この識別片に記載の識別コードは、細管の位置が特定できるのであれば、バーコード(1次元コード)に限定されるものではなく、従来公知の2次元コード、例えば、データマトリックス、QRコード(登録商標)、又はその他のコードを使用することもできる。
【0014】
処理実行手段16は、熱交換器11の設置場所に配置されるものであり、治具14と、部分模擬管板24と、バーコードリーダ(読取り機の一例)25を有している。
治具14は、細管個別処理の種類に応じて変更するものである。例えば、細管の拡管処理を行う場合は、細管内に挿入してその肉厚部分を拡大するエキスパンダの拡管ヘッド等を備えた治具を使用できる(例えば、特開2003−340534号公報参照)。また、細管の洗浄処理を行う場合は、細管内に挿入して高圧洗浄水等を噴射する治具を使用できる。そして、細管の検査を行う場合は、先端部に、細管内に挿入する渦流センサ(検査用センサの一例)等が設けられた治具(例えば、挿入エアーガン)を、また細管のマーキング処理を行う場合は、細管の周縁部又は細管の近傍の管板に印(色)等を付与する治具を、それぞれ使用できる。
【0015】
部分模擬管板24は、図1(A)、(B)、図3に示すように、管巣図21の各配管列22に対応して、配管列22に含まれる各細管19の識別コードが記載された識別片23が、配管列22に含まれる各細管19にそれぞれ対応する設計データ中の配管ピッチで、細長部材26の表側に並べて配置されたものである。この部分模擬管板24の幅は、例えば、熱交換器11の細管13の外径の50〜150%であるが、これに限定されない。
この部分模擬管板24の細長部材26の裏面側には、図3に示すように、部分模擬管板24を実処理配管列27の隣りの実配管列28上に設置する際に、実配管列28の複数の細管13の端部にそれぞれ嵌入して実処理配管列27の各細管13に対する部分模擬管板24の識別片23の位置決めを行う、例えば、管状のガイド部材29が設けられている。
【0016】
使用にあっては、処理しようとする配管列22を、管巣図21上で処理配管列として設定し、処理配管列に対応する部分模擬管板24を、処理配管列に対応する熱交換器11の実処理配管列27の隣りの実配管列28上に、部分模擬管板24の各識別片23と実処理配管列27に属する細管13とが、それぞれ隣り同士となる状態で設置する。
バーコードリーダ25は治具14に取付けられ、処理配管列の細管19に対応する実処理配管列27の細管13に対し、治具14を用いて処理する際に、処理しようとする細管13の隣に配置された部分模擬管板24の識別片23のバーコードZを読取るものである。このバーコードリーダ25には、市販のものを使用することができる。
【0017】
ここでは、各細管13の位置の識別に、部分模擬管板を使用した場合について説明したが、これを使用することなく、各細管13の近傍の管板12に、シール状の識別片をそれぞれ直接貼り付けることもできる。
なお、各細管13の近傍とは、貼り付けた識別片が、対象外の細管と混同することなく、対象となる細管を認識できる位置を意味するものであり、細管の周辺部(上下左右)の管板のいずれの場所でもよく、また、細管に直接貼り付ける場合も含まれる。
【0018】
処理操作手段17は、図1(B)、図2に示すように、細管13の処理指示及び確認を行うものであり、細管指定器30、処理細管表示器31、判定器32、処理操作器33、及び処理作業表示器34を有している。
細管指定器30は、処理しようとする配管列22を管巣図21上で処理配管列として設定する配管列指定データ及び処理配管列のうちの処理対象の細管19を設定する細管指定データが、データ入力器18を介して入力された際に、配管列指定データ及び細管指定データを記憶すると共に、配管列指定データ及び細管指定データから管巣図21上に処理対象の細管19の位置を表示する機能を備えている。
【0019】
処理細管表示器31は、バーコードリーダ25とケーブル35を介して接続し、読取った識別片23のバーコードから配管列番号X及び順位番号Yを求めて、識別片23に対応する細管13の位置を管巣図21に重ねて表示する機能を備えている。
判定器32は、処理細管表示器31を介して求めた識別片23に対応する細管13の位置が、細管指定器30に記憶されている配管列指定データ及び細管指定データから決まる処理対象の細管19の位置に合致するか否かを判定する機能を備えている。
処理操作器33は、判定器32での判定が合致する場合は、治具14による細管13の処理開始を指示する信号を表示器20に表示し、合致しない場合は、細管13から治具14の回収を指示する信号を表示器20に表示する機能を備えている。
【0020】
処理作業表示器34は、細管13の処理が終了したことを示すデータがデータ入力器18を介して入力された際に、処理終了の細管13に対応する管巣図21上の細管19に処理終了済のデータを記載する機能を備えている。ここで、処理終了済のデータの記載は、例えば、管巣図21上の細管19の表示色を変えることにより行う。
また、細管指定器30、処理細管表示器31、判定器32、処理操作器33、及び処理作業表示器34は、各機器に対応した機能を発現する各プログラムを、パーソナルコンピュータに搭載することで形成できる。
【0021】
続いて、本発明の第1の実施の形態に係る熱交換器の細管の位置識別方法について説明する。この位置識別方法は、細管個別処理の一例である細管の拡管処理を行う際の識別方法である。なお、細管の拡管処理とは、図4に示す熱交換器11の管板12に装着された多数の細管13内に、拡管ヘッドを備えた治具14を順次挿入して、図5、図6(A)、(B)に示すように、各細管13の拡管処理を行い、細管13を管板12に取付け固定(接合)する方法である。以下、詳細に説明する。
【0022】
まず、管巣図作成手段15にデータ入力器18を用いて熱交換器11の設計データを入力し、設計データに基づいて管板12に設けられた細管13の配置を示す管巣図21(図1(B)参照)を作成する。そして、管巣図21に記載された多数の細管19を複数の配管列22に区分し、各細管19に、細管19が属する配管列22を特定する配管列番号X及び配管列22内の細管19の位置を特定する順位番号Yを備えたバーコードをそれぞれ付与する。
これによって、管巣図21上で、多数の細管19の中から特定の細管19を、配管列番号Xと順位番号Yを用いて区別することができる(以上、第1工程)。
【0023】
次に、細管19にそれぞれ付与したバーコードは、バーコードラベラを用いてバーコードZに変換すると共に、バーコードZが記載された識別片23を作製する。そして、識別片23を配管列22ごとに区分し、各配管列22内の各細管19にそれぞれ対応する設計データ中の配管ピッチで、細管13の外径の50〜150%の幅を備えた細長部材26(例えば、厚さが1〜3mm程度の樹脂製の板材)の表側に識別片23を並べて配置した部分模擬管板24をそれぞれ作製する。
これにより、配管列22に対応する部分模擬管板24を、配管列22の順序に従って配置することで、管板12に対応する実寸大の模擬管板が形成できる。
【0024】
そして、処理しようとする配管列22を管巣図21上で処理配管列として設定し、配管列指定データをデータ入力器18を介して細管指定器30に入力する。また、この処理配管列に対応する部分模擬管板24を、処理配管列に対応する熱交換器11の実処理配管列27の隣りの実配管列28上に、部分模擬管板24の各識別片23と実処理配管列27に属する各細管13とがそれぞれ隣り同士となる状態で設置する。
【0025】
このとき、配管列22を、配管列番号Xが奇数であるグループ(奇数グループ)と、配管列番号Xが偶数であるグループ(偶数グループ)に分け、処理配管列を各グループ内でそれぞれ設定する。例えば、処理配管列を奇数グループ内で設定する場合、奇数グループの配管列22に対応する部分模擬管板24を、奇数番の処理配管列に対応する奇数番の実処理配管列27の隣りの偶数番の実配管列28上に設置する。なお、部分模擬管板24を実配管列28上に設置する場合、部分模擬管板24に設けられた任意の識別片23のバーコードZをバーコードリーダ25で読取って、部分模擬管板24の配管列番号Xが実処理配管列27の配管列番号と一致するか否かを確認しながら行う(以上、第2工程)。
【0026】
管板12に設けられた細管13の拡管処理を実施する場合、図5に示すように、拡管ヘッドを備えた治具14を携帯した作業者が、マンホール36から熱交換器11内に入り、細管13に治具14を挿入して行う。ここで、処理配管列の内の細管19の拡管処理を行う場合、この細管19の細管指定データをデータ入力器18を介して細管指定器30に入力する。これにより、表示器20に表示されている管巣図21上に処理対象の細管19が表示される。
そして、処理操作手段17側に配置された処理操作手段17のオペレータが、図示しない通信手段(例えば、無線機、携帯電話機)を介して、細管指定データを熱交換器11内の作業者に、処理配管列の配管列番号X及び処理配管列内の処理対象の細管19の順位番号Yとして伝達する。
【0027】
細管指定データを入手した作業者は、細管指定データに対応する実処理配管列27の細管13を、管板12に設けられている細管13の中から選定する。そして、選定した細管13の隣に配置された部分模擬管板24上の識別片23のバーコードZを、治具14に取付けたバーコードリーダ25で読取ってから、選定した細管13に対し治具14を用いて拡管処理する。
ここで、実処理配管列27の隣りの実配管列28には部分模擬管板24が設置されているので、部分模擬管板24がガイドとなって、細管指定データに対応する実処理配管列27の細管13を容易に選定することができる(以上、第3工程)。
【0028】
選定した細管13の識別片23のバーコードZを、治具14に取付けたバーコードリーダ25で読取った際に、バーコードZから配管列番号X及び順位番号Yが求められ、選定された細管13の位置が管巣図21に重ねて表示される。これにより、表示された細管13の位置が、管巣図21上の処理配管列の細管19の位置に合致するか否かが判定器32により判定される。
そして、選定した細管13の位置が、管巣図21上の処理配管列の細管19の位置に合致する場合は、処理操作器33から処理開始の信号が表示器20に出力され、処理操作手段17のオペレータは熱交換器11内の作業者に処理開始を指示し、細管13の拡管処理が開始される。
【0029】
一方、選定した細管13の位置が、管巣図21上の処理配管列の細管19の位置に合致しない場合は、処理操作器33を介して細管13から治具14の回収(処理の中止)を指示する信号が表示器20に出力され、処理操作手段17のオペレータは熱交換器11内の作業者に治具14の回収を指示し、治具14が細管13から回収される。なお、治具14を回収した場合、細管指定データに対応する実処理配管列27の細管13を、実処理配管列27に属する細管13の中から再度選定し、再選定した細管13の隣に配置された部分模擬管板24上の識別片23のバーコードZを、治具14に取付けたバーコードリーダ25で読取ってから、再選定した細管13に対して治具14を挿入する(以上、第4工程)。
以上の方法により、熱交換器11の製作時における拡管施工の実績を明確に識別でき、拡管施工の漏れを防止できる。
【0030】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る熱交換器の細管の位置識別方法について説明するが、この位置識別方法は、細管個別処理の一例である細管の洗浄処理を行う際の識別方法であり、上記した細管の拡管処理を行う際の識別方法と略同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。なお、細管の洗浄処理とは、図4に示す熱交換器11の管板12に接合された多数の細管13内に、図5に示すように、高圧洗浄水を噴射する治具14を順次挿入して、各細管13の洗浄処理を行い、熱交換器11の検査前に各細管13内を掃除する方法である。
【0031】
前記した第1工程〜第3工程を行った後、第4工程を行う。
この第4工程では、選定した細管13の識別片23のバーコードZを、治具14に取付けたバーコードリーダ25で読取った際に、選定された細管13の位置が管巣図21に重ねて表示される。これにより、表示された細管13の位置が、管巣図21上の処理配管列の細管19の位置に合致するか否かが判定器32により判定される。
そして、選定した細管13の位置が、管巣図21上の処理配管列の細管19の位置に合致する場合は、処理操作器33から処理開始の信号が表示器20に出力され、処理操作手段17のオペレータは熱交換器11内の作業者に処理開始を指示し、細管13の洗浄処理が開始される。
【0032】
一方、選定した細管13の位置が、管巣図21上の処理配管列の細管19の位置に合致しない場合は、処理操作器33を介して細管13から治具14の回収を指示する信号が表示器20に出力され、処理操作手段17のオペレータは熱交換器11内の作業者に治具14の回収を指示し、治具14が細管13から回収される。なお、治具14を回収した場合は、上記と同様の方法により、再選定した細管13に対して治具14を挿入する。
以上の方法により、検査前の各細管の洗浄実績を明確に識別でき、洗浄の漏れを防止できる。
【0033】
続いて、本発明の第3の実施の形態に係る熱交換器の細管の位置識別方法について説明するが、この位置識別方法は、細管個別処理の一例である検査により異常と判定された細管のマーキング処理を行う際の識別方法であり、上記した洗浄処理を行った細管に対して検査を行った後に実施する処理である。このため、まず、細管の検査を行う際の細管の位置識別方法について説明した後、細管のマーキング処理について説明する。
細管の検査は、図4に示すように、熱交換器11の管板12に接合され、洗浄処理が終了した多数の細管13内に治具14を用いて渦流センサを順次挿入し、各細管13の検査を行うものである。なお、細管の検査を行う際の位置識別方法も、上記した細管の拡管処理及び洗浄処理を行う際の識別方法と略同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0034】
この各細管の検査には、本発明に係る熱交換器の細管の位置識別方法を適用できる。そこで、まず、前記した第1工程〜第3工程を行った後、第4工程を行う。
この第4工程では、選定した細管13の識別片23のバーコードZを、治具14に取付けたバーコードリーダ25で読取った際に、選定された細管13の位置が管巣図21に重ねて表示される。これにより、表示された細管13の位置が、管巣図21上の処理配管列の細管19の位置に合致するか否かが判定器32により判定される。
そして、選定した細管13の位置が、管巣図21上の処理配管列の細管19の位置に合致する場合は、処理操作器33から処理開始の信号が表示器20に出力され、処理操作手段17のオペレータは熱交換器11内の作業者に処理開始を指示し、渦流センサが挿入された細管13の検査が開始される。なお、細管13の検査を開始すると、検査データは、渦流センサに接続された信号ケーブル(図示しない)を介して、検査データ解析装置に入力されて、検査結果が得られる。
【0035】
一方、選定した細管13の位置が、管巣図21上の処理配管列の細管19の位置に合致しない場合は、処理操作器33を介して細管13から治具14の回収を指示する信号が表示器20に出力され、処理操作手段17のオペレータは熱交換器11内の作業者に治具14の回収を指示し、治具14が細管13から回収される。なお、治具14を回収した場合は、上記と同様の方法により、再選定した細管13内に治具14を用いて渦流センサを挿入する。
【0036】
上記した検査結果により、止栓又は抜管(交換も含む)の対象となる細管、例えば、腐食減肉が発生した細管を検出できるため、この細管に、他の細管と区別するマーキング処理を施す。なお、マーキング処理を行うに際しては、上記した検査の際に行った第1工程と第2工程を利用するのがよい。
異常が発生した細管13にマーキング処理を実施する場合、図5に示すように、マジック等の色付与手段を備えた治具14を携帯した作業者が、マンホール36から熱交換器11内に入り、細管13に治具14を近づける。ここで、処理配管列の内の細管19のマーキング処理を行う場合、この細管19の細管指定データをデータ入力器18を介して細管指定器30に入力する。これにより、表示器20に表示されている管巣図21上に処理対象の細管19が表示される。
【0037】
そして、処理操作手段17側に配置された処理操作手段17のオペレータが、通信手段を介して、細管指定データを熱交換器11内の作業者に、処理配管列の配管列番号X及び処理配管列内の処理対象の細管19の順位番号Yとして伝達する。
細管指定データを入手した作業者は、細管指定データに対応する実処理配管列27の細管13を、管板12に設けられている細管13の中から選定する。そして、選定した細管13の隣に配置された部分模擬管板24上の識別片23のバーコードZを、治具14に取付けたバーコードリーダ25で読取ってから、選定した細管13に対し治具14を用いてマーキング処理を行う(以上、第3工程)。
【0038】
選定した細管13の識別片23のバーコードZを、治具14に取付けたバーコードリーダ25で読取った際に、バーコードZから配管列番号X及び順位番号Yが求められ、選定された細管13の位置が管巣図21に重ねて表示される。これにより、表示された細管13の位置が、管巣図21上の処理配管列の細管19の位置に合致するか否かが判定器32により判定される。
そして、選定した細管13の位置が、管巣図21上の処理配管列の細管19の位置に合致する場合は、処理操作器33から処理開始の信号が表示器20に出力され、処理操作手段17のオペレータは熱交換器11内の作業者に処理開始を指示し、細管13のマーキング処理が開始される。
【0039】
一方、選定した細管13の位置が、管巣図21上の処理配管列の細管19の位置に合致しない場合は、処理操作器33を介して細管13から治具14の回収を指示する信号が表示器20に出力され、処理操作手段17のオペレータは熱交換器11内の作業者に治具14の回収を指示し、治具14が細管13から回収される。なお、治具14を回収した場合、
上記と同様の方法により、再選定した細管13に対して治具14を近づける(以上、第4工程)。
以上の方法により、止栓又は抜管の対象となる細管に目印を付与して明確に識別できるため、誤った止栓又は抜管を防止できる。
【0040】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の熱交換器の細管の位置識別方法及びその位置識別装置を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、識別片を細長部材の上に貼着しているが、管板の一部又は全部の形状(実処理配管列を除く)に合わせたシートに、設計データ中の配管ピッチで並べて貼る場合であっても、本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0041】
10:熱交換器の細管の位置識別装置、11:熱交換器、12:管板、13:細管、14:治具、15:管巣図作成手段、16:処理実行手段、17:処理操作手段、18:データ入力器、19:細管、20:表示器、21:管巣図、22:配管列、23:識別片、24:部分模擬管板、25:バーコードリーダ(読取り機)、26:細長部材、27:実処理配管列、28:実配管列、29:ガイド部材、30:細管指定器、31:処理細管表示器、32:判定器、33:処理操作器、34:処理作業表示器、35:ケーブル、36:マンホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器の管板に装着する多数の細管Aの位置識別方法において、
前記管板に設けられた前記各細管Aの配置を示す管巣図を作成し、前記各細管Aに対応する該管巣図に記載された各細管Bに、該各細管Bの位置を特定する識別コードをそれぞれ付与する第1工程と、
前記識別コードが記載された識別片を、前記各細管Bに対応する前記各細管A近傍にそれぞれ設置する第2工程と、
前記各細管Aに対して、拡管処理、洗浄処理、又は検査により異常と判定された細管のマーキング処理からなる細管個別処理を行うに際し、該細管個別処理を行うための治具に設けられた読取り機により、該細管個別処理を行おうとする前記細管Aに対応する前記識別片を読取る第3工程と、
前記細管個別処理を行おうとする前記細管Aの位置が、該細管Aに対応する前記管巣図中の前記細管Bの位置に合致する場合は、前記細管個別処理を開始し、合致しない場合は、前記細管個別処理を中止する第4工程とを有することを特徴とする熱交換器の細管の位置識別方法。
【請求項2】
熱交換器の管板に装着する多数の細管Aの位置識別装置において、
前記管板に設けられた前記各細管Aの配置を示す管巣図を作成する管巣図作成手段と、
前記管巣図に記載された各細管Bの位置を特定する識別コードが記載され、該各細管Bに対応する前記各細管A近傍にそれぞれ設置される識別片を作製する識別片作製手段と、
前記各細管Aに対して、拡管処理、洗浄処理、又は検査により異常と判定された細管のマーキング処理からなる細管個別処理を行うに際し、該細管個別処理を行うための治具に設けられ、該細管個別処理を行おうとする前記細管Aに対応する前記識別片を読取る読取り機と、
前記細管個別処理を行おうとする前記細管Aの位置が、該細管Aに対応する前記管巣図中の前記細管Bの位置に合致する場合は、前記細管個別処理の開始を、合致しない場合は、前記細管個別処理の中止を指示する処理操作手段とを有することを特徴とする熱交換器の細管の位置識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−37139(P2012−37139A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177727(P2010−177727)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(591053856)新日本非破壊検査株式会社 (29)
【Fターム(参考)】