説明

熱交換器用の窪み付き管

シェルアンドチューブ型熱交換器(10)は、外殻(16)に取り囲まれた複数の管を含む。各管(12)は、複数の窪みを含む。金型がダイ内部の望みの位置と方位に置かれる。管がダイ中の第1の位置に置かれ、金型が管を型押しして管に望みの窪みを形成する。次いで金型が離され、金型に対して相対的に管が第2位置へと移動させられる。金型が再び管を型押しして更なる窪みを形成する。或いは、金型は、管に溝を形成するローラーを含む。管は、金型に対して相対的に平行移動されるか又は平行移動と回転の両方がなされて、溝が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に用いる管であって、管を貫流する流体と管の周りを流れる流体との間の熱伝達を増大させる複数の窪みを含む管を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シェルアンドチューブ型(多管円筒形、套管式)熱交換器は、排気ガス再循環冷却器及びパワーステアリング装置を含む、多様な自動車の用途で流体を冷却するのに用いられる。エンジンガス再循環システムでは、排気流体が管内を流れ、管の周りを流れる冷却液と熱を交換する。管壁に近い排気流体ほど管の中央を流れる排気流体より速く冷却される。
【0003】
先行技術においては、熱交換器内の管は曲げられるか又は捻じられて、排気流体中に乱流を生成し、熱伝達を増加させるために非線形流路を与えることがある。
【0004】
先行技術の曲げられた又は捻じられた管には幾つかの欠点がある。1つには、管を製造するのが難しいことである。加えて、管を望みの形に捻じったり曲げたりするのは、費用が掛かり且つ骨の折れることである。
【0005】
従って、この技術分野には、先行技術の欠点や短所を克服するような、熱交換器に用いられる管を成形する方法に対する必要性が存在する。
【0006】
(発明の開示)
シェルアンドチューブ型熱交換器は、外殻(シェル)によって取り囲まれた複数の管を含む。各管は、複数の窪みを含む。外殻を貫流する冷却流体は、管を貫流する高温流体と熱を交換する。好ましくは、シェルアンドチューブ型熱交換器は、排気ガス再循環システムで使用され、排気流体が管を貫流し、外殻を貫流する冷却液と熱を交換する。
【0007】
管は、管の表面積と管の壁の最も近くに在る流体の量とを増加させる窪みを含む。また、窪みは、管を貫流する流体中に乱流を生成する。
【0008】
一例として、所望の形状の金型がダイ内部の所望の位置及び方位に置かれる。管がダイ内部の第1の位置に置かれ、金型が管を型押し(クリンプ)して管に所望の窪みを形成する。次いで金型が離され、管が金型に対して相対的に移動させられる。次いで金型が再び管を型押しして更なる窪みを形成する。管は、金型に対して相対的に平行移動させることができ、又は金型に対して相対的に平行移動及び回転の両方をさせることができる。
【0009】
或いは、金型は管に平行な溝を形成するローラーを含む。管は金型に対し相対的に平行移動させられ、管の表面に溝を形成する。ローラーの数が溝の数を決定する。或いは、管は金型に対して相対的に平行移動と回転の両方をさせられて、管の表面に螺旋状の溝を形成する。
【0010】
本発明のこれら及びその他の特徴は、以下の明細書と図面から最もよく理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、外殻16によって取り囲まれた複数の管12を含む、シェルアンドチューブ型熱交換器10を示す。管12の反対(両側)の端部26は、板14に取付けられる。管12の端部26は、板14に溶接、プレス嵌め、又はその他のいかなる取付け手段によっても取付けることができる。冷却流体は、熱交換器10の一端に位置する入口18を通って、熱交換器10に入る。冷却流体は外殻16を通って流れ、管12を通って流れる高温流体と熱を交換する。外殻16内の流体は出口19を通って熱交換器10を出る。
【0012】
熱交換器10が、排気ガス再循環システムと共に用いられる場合は、排気ガス再循環弁21が、エンジン13又はその他の構成要素から熱交換器10内への、高温流体の流れを制御する。熱交換器10が、排気ガス再循環システム内で用いられる場合は、高温流体は排気流体である。高温排気流体は管12に入り、高温排気流体から管12を取り囲む外殻16内を流れる冷却液へと、熱が伝達される。管12内の冷却された排気流体は、次いでエンジン13又はその他の構成要素に再循環される。排気ガス再循環システムを例示して説明したが、シェルアンドチューブ型熱交換器10を利用する他の用途においても本発明の管12が使用できることが理解されるべきである。
【0013】
管12は複数の窪み30を含み、これらの窪み30は、管12の表面積と、管12の壁に最も近く熱伝達を増大させる高温流体の量と、管12内の流体における乱流の量とを増加させる。管12内の高温流体に乱流を生成することにより、管12の中心にある流体と管12の壁に最も近い流体とが混合させられる。このようにして、流体が循環して管12を貫流するので、管12の壁に最も近い流体が連続的に入れ替わる。
【0014】
図2と3は、本発明の管12を形成する方法を示す。所望の形の金型22がダイ20の望ましい位置と方位に置かれる。管12がダイ20内の第1位置23に配置される。金型22は、次いで管12を型押し(クリンプ)して管12に圧痕又は窪み30を形成する。金型22は次いで離される。移動装置24が、管12を金型22に対して相対的に回転及び平行移動させる。管12が、図3に示すように、第2位置25に入ると、金型22が再び管12を型押しして更なる窪み30を管12に形成する。管12を平行移動及び回転させる工程と金型22を用いて管12を型押しする工程とは、管12に所望の数および方位の窪み30を形成するのに必要なだけ何回でも繰り返すことができる。
【0015】
図4は、本発明の管12の第1実施形態を示す。金型22が、管12を型押しして管12に窪み30を形成する。金型22は金型22から離され、管12は金型22に対し相対的に回転及び平行移動させられる。金型22は、次いで再び管12を型押しして窪み30を形成する。ある実施例において、管12は連続するクリンプ圧着の間に約5乃至10度回転される。
【0016】
或いは図5に示すように、管12は、金型22に対して相対的に平行移動させられるのみで、窪み30を形成するとき回転させられない。この窪み30は、管12を貫流する流体の流路に実質的に平行である。或いは図6に示すように、金型22は、管12を貫流する流体の流路に対して相対的に角度をつけられた窪み30を形成することができる。これら両方の実施例において、金型22は、連続する型押しの間に管12から離される。
【0017】
金型22に対して相対的な管12の回転及び平行移動の量を変化させて、管12を貫流する流体に所望の量の乱流を引き起こすような窪み30のパターンを形成してもよい。例えば、管12を通る流体の流路に対して相対的にある角度で窪み30を形成することにより、乱流の量を増すことができる。当業者は、望みの乱流を引き起こすための、管12における窪み30の望ましい方位は分かるであろう。
【0018】
管12は、好ましくは実質的に同一の円形断面形状を有する、反対の端部26を含む。端部26の断面形状は管12の断面とは異なってもよい。即ち、端部26の断面は、所望の接続具の断面に対応する。これにより、管12を多様なその他の管、ホース、又はその他の望ましい接続具へ容易に取付けることができる。端部26は別部品として形成し、後から各管12に取付けてもよい。
【0019】
図7、8、及び9は、本発明の管12の代替的な実施形態を示す。これらの実施形態において、金型22はダイ20内に組込まれたローラー(図示せず)を含む。金型22が管12に型押しされ、管12から金型22を離さずに、管12が金型22に対して相対的に平行移動させられる。この実施例では、連続した溝34が管12の表面に形成される。この溝34は管12の表面積を増大させ、所定の時間により多くの流体が管12の壁に接触するこをを可能にする。
【0020】
金型22は、複数のローラーを含み、実質的に平行な複数の溝34を管12に形成することができる。ローラーは管12に接触し、且つ管12の表面に連続的に型押しさせられて、管12がローラーに対して相対的に平行移動するのに伴い、平行な溝34を形成する。
【0021】
図7に示すように、一実施例である管12aは6つの溝34aを含む。図8は、5つの溝34bを有する別の実施例の管12bを示す。図9は、4本の平行な溝34cを有する別の管12cを示す。
【0022】
図10は、管12の壁に形成された実質的に螺旋形の溝38を含む、別の管12を示す。管12が金型22に対して相対的に回転と平行移動の両方をさせられながら、ローラーが管12の壁に接触し、実質的に螺旋形の溝38を管12に形成する。ローラーは、管12が回転と平行移動の両方をさせられる間に、管12に対して連続して型押しされる。ローラーが管12に対して配置される角度と管12の平行移動及び回転の量とを変化させて、所望の螺旋形の溝38を生成させることができる。代りに、数個のローラーを使用することもできる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態を開示したが、当業者はある種の変更例が本発明の範囲内にあることがわかるであろう。それ故、本発明の真の範囲と内容を決定するのに添付の特許請求範囲が良く吟味されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、シェルアンドチューブ型熱交換器の断面を示す。
【図2】図2は、第1位置にある、本発明の管を成形するためのダイを示す。
【図3】図3は、第2位置にある、上記管を成形するためのダイを示す。
【図4】図4は、角度のついた窪みを含む管の第1実施形態の斜視図を示す。
【図5】図5は、平行な窪みを含む管の第1実施形態の斜視図を示す。
【図6】図6は、異なる角度のついた窪みを含む管の実施形態の斜視図を示す。
【図7】図7は、6つの溝を含む管の第2実施形態の断面図を示す。
【図8】図8は、5つの溝を含む管の第2実施形態の断面図を示す。
【図9】図9は、4つの溝を含む管の第2実施形態の断面図を示す。
【図10】図10は、螺旋形状の溝を含む窪み付きの管の第3実施形態の斜視図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管を形成する方法であって、
管を第1位置に配置する工程と、
金型を用いて前記管に窪みを形成する工程と、
前記管を前記金型に対して相対的に第2位置へ移動させる工程と、
前記金型を前記管から離す工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記窪みを形成する工程を繰り返す工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記移動させる工程が前記離す工程の前に行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記移動させる工程が前記離す工程の後に行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記移動させる工程が、前記管を前記金型に対して相対的に回転させる工程と、前記管を前記金型に対して相対的に平行移動させる工程と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記移動させる工程が前記離す工程の後に行なわれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記移動させる工程が、前記管を前記金型に対して相対的に平行移動させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記移動させる工程が前記離す工程の後に行なわれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記窪みを形成する工程を繰り返す工程を更に含み、前記回転させる工程が、前記繰り返す工程の各々の間に、前記管を前記金型に対して相対的に約5から10°の間で回転させる工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記管が端部を有し、前記端部が実質的に円形の断面を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記金型が前記管と係合するローラーを含み、前記管を移動させる工程が、前記ローラーが前記管に係合する間に前記管に溝を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記移動させる工程が、前記管を前記金型に対して相対的に回転及び平行移動させる工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記移動させる工程が、前記管を前記金型に対して相対的に平行移動させる工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記の金型が複数のローラーを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
複数の管であって、各々が本体部及び複数の窪みを含む複数の管と
前記複数の管を取り囲む外殻部と、
を含む熱交換器。
【請求項16】
第1流体が前記複数の管の中を通って流れ、第2流体が前記の外殻の中を通って流れ、且つ前記第1流体が前記第2流体と熱を交換する、請求項15に記載の熱交換器。
【請求項17】
前記第1流体の前記複数の管への流入を制御する弁を更に含む、請求項16に記載の熱交換器。
【請求項18】
前記複数の窪みが、前記複数の管の各々を通る流体の流れに実質的に平行である、請求項15に記載の熱交換器。
【請求項19】
前記複数の管の各々が、実質的に円形断面を有する反対側の端部を備えている、請求項15に記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−533464(P2007−533464A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547617(P2006−547617)
【出願日】平成17年1月4日(2005.1.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/000095
【国際公開番号】WO2005/068101
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(502393914)クーパー−スタンダード オートモーティブ、 インコーポレイテッド (3)