説明

熱交換器

【課題】熱交換の効率を高められるようにするための技術を提供する。
【解決手段】螺旋状伝熱管2において、外部流体の流通経路を横切る上流部分22および下流部分24の伝熱管それぞれが水平面に対して傾斜しているため、熱交換により伝熱管にドレンが付着したとしても、このドレンを伝熱管の傾斜に沿って流通経路側方へと流すことができることから、ドレンが停滞しにくくなり、螺旋状伝熱管2を流通経路の上流側から下流側に向けて投影した場合に、上流部分22の伝熱管の延びる軸線と、下流部分24の伝熱管の延びる軸線とが交差する位置関係で両部分の伝熱管を配置することにより、熱交換の効率をより高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から導入された外部流体を、熱交換用の伝熱管が収容された収容空間に通してから排出させることで、外部流体と伝熱管内を流通する内部流体との熱交換を行う熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の熱交換器における伝熱管は、外部流体の流通経路を上流側および下流側それぞれで横切るように配置されている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−025976号公報
【特許文献2】特開2008−032252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の熱交換器においては、外部流体の流通経路における上流側および下流側それぞれを水平に横切るように伝熱管が配置されているため、熱交換により伝熱管に付着したドレンが停滞しやすくなり、これが熱交換を妨げることで熱交換の効率を維持することができなくなる恐れがある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、熱交換の効率を高めるための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため第1の構成は、外部から導入された外部流体を、熱交換用の伝熱管が収容された収容空間に通してから排出させることで、前記外部流体と前記伝熱管内を流通する内部流体との熱交換を行う熱交換器である。
【0007】
この熱交換器において、前記収容空間には、前記伝熱管として螺旋状伝熱管が収容されており、前記螺旋状伝熱管は、前記外部流体の流通経路の上流側において該流通経路と交差する方向に配置された上流部分の伝熱管と、前記流通経路の下流側において該流通経路と交差する方向に配置された下流部分の伝熱管と、を有している。そして、前記螺旋状伝熱管における前記上流部分の伝熱管の延びる軸線および前記下流部分の伝熱管の延びる軸線は、それぞれ水平面に対して傾斜しており、また、一方において延びる軸線が他方において延びる軸線に対して相対的に傾斜することにより、前記上流部分の伝熱管の延びる軸線が、前記下流部分の伝熱管の延びる軸線と交差するように構成されている。
【0008】
このように構成された熱交換器であれば、螺旋状伝熱管において、外部流体の流通経路を横切る上流部分および下流部分それぞれが水平面に対して傾斜しているため、熱交換により伝熱管にドレンが付着したとしても、このドレンを傾斜に沿って流通経路側方へと流すことができることから、ドレンが停滞しにくくなる。これにより、上流部分および下流部分それぞれに付着したドレンが停滞して熱交換を妨げるといったことが起こりにくくなるため、熱交換の効率を高めることができる。
【0009】
また、この構成では、螺旋状伝熱管を流通経路の上流側から下流側に向けて投影した場合に、上流部分の伝熱管の延びる軸線と、下流部分の伝熱管の延びる軸線とが交差する位置関係で両部分の伝熱管を配置することにより、このような位置関係にない構成と比べ、外部流体の流通方向に向けて外部流体が素通りする領域を少なくすることができる。これにより、収容空間を流通する外部流体が伝熱管に接触しやすくなる結果、熱交換の効率をより高めることができる。
【0010】
また、この構成においては、第2の構成のようにしてもよい。
第2の構成において、前記収容空間には、積層方向に複数の螺旋状伝熱管が多重螺旋を形成するように収容されている。
【0011】
この構成であれば、螺旋状伝熱管それぞれを多重螺旋が形成されるように配置するだけで、各螺旋状伝熱管における上流部分の伝熱管の延びる軸線それぞれを下流部分の伝熱管の延びる軸線と交差させた熱交換器を実現することができる。
【0012】
また、この構成では、第3の構成のようにしてもよい。
第3の構成において、複数の前記螺旋状伝熱管それぞれは、伝熱管の隣接する方向と交差する方向へ、他の螺旋状伝熱管に対して相対的にずらされている。
【0013】
この構成であれば、各螺旋状伝熱管は、他の螺旋状伝熱管に対し、その伝熱管が隣接する方向と交差する方向へ相対的にずらされているため、各螺旋状伝熱管がずらされていない場合と比べて外部流体の流通を乱しやすくなる。これにより、外部流体の流通方向に向けて外部流体がより素通りしにくくなる結果、より一層熱交換の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】熱交換器の外観を示す斜視図
【図2】螺旋状伝熱管を流通方向にみた模式図
【図3】熱交換器の外観を示す四面図
【図4】別の実施形態における螺旋状伝熱管を流通方向にみた模式図(a)、および、流通方向と積層方向とで規定される側方からみた模式図(b)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(1)全体構成
熱交換器1は、図1に示すように、積層方向へ複数(本実施形態では「2」)の螺旋状伝熱管2それぞれを多重螺旋となるように収容空間に収容するものであり、この収容空間に外部から導入された外部流体を通してから排出させることで、外部流体と螺旋状伝熱管2内を流通する内部流体との熱交換を行うように構成されている。
【0016】
また、本実施形態では、多重螺旋を形成している複数の螺旋状伝熱管2のそれぞれの伝熱管のセットとして、螺旋状に取り囲む領域の大きさを異ならせた複数の伝熱管が同芯状に配置されている。更に、各伝熱管の積層方向の間に介在して伝熱管それぞれの間隔を維持するスペーサ3が配置されている。
【0017】
各螺旋状伝熱管2は、流通経路の上流側および下流側それぞれにおいて、その流通経路と交差する方向に配置された部分を有しており、外部流体は上流側の部分(以降「上流部分」という)22で伝熱管を横切るように流通した後、下流側の部分(以降「下流部分」という)24で伝熱管を横切るように流通していくこととなる。
【0018】
また、各螺旋状伝熱管2において、上流部分22および下流部分24の伝熱管は、図2に示すように、それぞれが水平面に対して傾斜したものであり、収容空間を流通経路の上流側から下流側に向けて投影した場合に、上流部分22の伝熱管の延びる軸線が、下流部分24の伝熱管の延びる軸線それぞれと交差する位置関係で配置されている。
【0019】
具体的にいえば、上流部分22の伝熱管の延びる軸線および下流部分24の伝熱管の延びる軸線は、一方において延びる軸線を他方において延びる軸線に対して相対的に傾斜することにより、上流部分22の伝熱管の延びる軸線が、下流部分24の伝熱管の延びる軸線と交差している。
【0020】
本実施形態では、上流部分22の伝熱管および下流部分24の伝熱管それぞれが同じ長さ、かつ、同じ傾斜角となっている螺旋状伝熱管2を多重螺旋状に配置することで、その長さ方向を螺旋状伝熱管2の積層した数で等分した位置で軸線が交差するようにしている。例えば、2つの螺旋状伝熱管2を2層の多重螺旋状に配置した場合であれば、図2に示すように、上流部分22および下流部分24の伝熱管それぞれの長さ方向を2等分した位置で軸線が交差することとなる。
【0021】
ここで、前記伝熱管のセットとして配置された各螺旋状伝熱管2において、上流部分22および下流部分24の伝熱管それぞれの傾斜角は、同じ傾斜角でも良いが、上流部分22および下流部分24のそれぞれにおける伝熱管について、流通経路の下流側に位置する伝熱管の傾斜角が大きくなるように構成しても良い。
【0022】
また、前記伝熱管のセットにおける螺旋状伝熱管2それぞれは、図3に示すように、伝熱管同士の隣接する方向と交差する方向へ他の螺旋状伝熱管2に対して相対的にずらされている。本実施形態においては、前記伝熱管のセットにおける螺旋状伝熱管2を外部流体の流通方向にずらしている。
(2)作用、効果
このように構成された熱交換器1であれば、螺旋状伝熱管2において、外部流体の流通経路を横切る上流部分22および下流部分24の伝熱管それぞれが水平面に対して傾斜しているため、熱交換により伝熱管にドレンが付着したとしても、伝熱管が傾斜していることによってこのドレンを伝熱管の傾斜に沿って流通経路側方へと流すことができることから、ドレンが停滞しにくくなる。これにより、上流部分22および下流部分24の伝熱管それぞれに付着したドレンが停滞して熱交換を妨げるといったことが起こりにくくなるため、熱交換の効率を維持することができる。
【0023】
また、この構成では、収容空間を流通経路の上流側から下流側に向けて投影した場合に、上流部分22の伝熱管の延びる軸線と、下流部分24の伝熱管の延びる軸線とが交差する位置関係で両部分の伝熱管を配置することにより、このような位置関係にない構成と比べ、外部流体の流通方向に向けて外部流体が素通りする領域(図2において伝熱管が位置していない領域)を少なくすることができる。これにより、収容空間を流通する外部流体が伝熱管に接触しやすくなる結果、熱交換の効率をより高めることができる。
【0024】
また、上記実施形態において、前記伝熱管のセットにおける螺旋状伝熱管2は、他の螺旋状伝熱管2に対し、その伝熱管が隣接する方向と交差する方向へ相対的にずらしているため、前記伝熱管のセットにおける螺旋状伝熱管2がずらされていない場合と比べて外部流体の流通を乱しやすくなる。これにより、外部流体の流通方向に向けて外部流体がより素通りしにくくなる結果、より一層の熱交換の効率向上を実現できる。
【0025】
また、前記伝熱管のセットとして配置された各螺旋状伝熱管2において、上流部分22および下流部分24のそれぞれにおける伝熱管について、流通経路の下流側に位置する伝熱管の傾斜角が大きくなるように構成することにより、螺旋状伝熱管2を流通経路の上流側から下流側に向けて投影した場合に、上流部分22および下流部分24のそれぞれにおける伝熱管の傾斜角を全て同一にした場合よりも、外部流体の流通方向に向けて外部流体が素通りする領域を小さくすることができる。これにより、収容空間を流通する外部流体が伝熱管に接触しやすくなる結果、熱交換の効率をより高めることができる。
(3)変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0026】
例えば、上記実施形態においては、上流部分22および下流部分24の伝熱管それぞれが同じ長さ、かつ、同じ傾斜角となっている2つの螺旋状伝熱管2を多重螺旋状に配置することにより、上流部分22および下流部分24の伝熱管それぞれの長さ方向を2等分した部分で軸線が交差するように構成されている。しかし、このように多重螺旋状に配置する螺旋状伝熱管2の数は、2つ以上であってもよく、また、各螺旋状伝熱管2における上流部分22および下流部分24の伝熱管それぞれの長さや傾斜角を異ならせた構成としてもよい。
【0027】
また、上記実施形態では、複数の螺旋状伝熱管2を多重螺旋状に配置した構成を例示したが、上記構成は、単一の螺旋状伝熱管2により構成してもよい。この場合、図4に示すように、単一の螺旋状伝熱管2において、上流部分22と下流部分24の伝熱管をつなぐ連結部分26の伝熱管を外部流体の流通方向に対して傾斜させることで、上流部分22と下流部分24の伝熱管とが交差するように構成することが考えられる。
【0028】
また、上記実施形態においては、前記伝熱管のセットにおける螺旋状伝熱管2を流通経路の方向にずらした構成となっている。しかし、この前記伝熱管のセットにおける螺旋状伝熱管2がずらされる方向は、外部流体の流通を乱しやすい位置関係となれば、流通経路の方向に限られない。
【符号の説明】
【0029】
1…熱交換器、2…螺旋状伝熱管、22…上流部分、24…下流部分、26…連結部分、3…スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から導入された外部流体を、熱交換用の伝熱管が収容された収容空間に通してから排出させることで、前記外部流体と前記伝熱管内を流通する内部流体との熱交換を行う熱交換器であって、
前記収容空間には、前記伝熱管として、螺旋状に領域を取り囲む螺旋状伝熱管が収容されており、
前記螺旋状伝熱管は、前記外部流体の流通経路の上流側において該流通経路と交差する方向に配置された上流部分の伝熱管と、前記流通経路の下流側において該流通経路と交差する方向に配置された下流部分の伝熱管と、を有しており、
前記螺旋状伝熱管は、前記上流部分の伝熱管および前記下流部分の伝熱管のうち、一方が他方に対して相対的に傾斜することにより、前記収容空間を前記流通経路の上流側から下流側に向けて投影した場合に、前記上流部分の伝熱管と前記下流部分の伝熱管とが交差するように構成されている
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記螺旋状伝熱管は、前記上流部分の伝熱管と、前記下流部分の伝熱管と、を連結部分の伝熱管により連結するように構成されており、
前記螺旋状伝熱管は、前記連結部分の伝熱管それぞれを、前記流通経路の上流側から下流側に向かう方向に対して同一方向に傾斜させた状態で、該連結部分の伝熱管が前記上流部分の伝熱管と前記下流部分の伝熱管とを連結しつつ、当該螺旋状伝熱管全体として螺旋状に領域を取り囲むように配置することにより、前記上流部分の伝熱管と前記下流部分の伝熱管とを交差させた構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記螺旋状伝熱管それぞれは、前記収容空間を前記流通経路の上流側から下流側に向けて投影した場合に、前記上流部分の伝熱管が、前記下流部分の伝熱管とこれら上流部分および下流部分の伝熱管それぞれの長さ方向を2等分した領域において交差し、また、前記下流部分の伝熱管が、前記上流部分の伝熱管とこれら上流部分および下流部分の伝熱管それぞれの長さ方向を2等分した領域において交差するように構成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記収容空間は、前記螺旋状伝熱管が複数収容され、かつ、該螺旋状伝熱管それぞれを、該螺旋状伝熱管により螺旋状に取り囲まれた領域が他の螺旋状伝熱管における前記領域と間隔を空けて積層された位置関係となるように配置することで、該積層方向に多重螺旋を形成しており、
前記螺旋状伝熱管は、前記上流部分の伝熱管および前記下流部分のうち、一方が他方に対して相対的に傾斜することにより、前記収容空間を前記流通経路の上流側から下流側に向けて投影した場合に、前記上流部分の伝熱管が、他の螺旋状伝熱管おける前記下流部分の伝熱管と交差し、また、前記下流部分の伝熱管が、他の螺旋状伝熱管における前記上流部分の伝熱管と交差するように構成されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項5】
前記収容空間には、螺旋状に取り囲む領域の大きさを異ならせた複数の螺旋状伝熱管を同芯状に配置してなる伝熱管セットが収容されており、
前記伝熱管セットは、前記上流部分の伝熱管および前記下流部分のうち、一方が他方に対して相対的に傾斜することにより、前記収容空間を前記流通経路の上流側から下流側に向けて投影した場合に、前記上流部分の伝熱管が、他の伝熱管セットおける前記下流部分の伝熱管と交差し、また、前記下流部分の伝熱管が、他の伝熱管セットにおける前記上流部分の伝熱管と交差するように構成されている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−198021(P2012−198021A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−162774(P2012−162774)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【分割の表示】特願2009−191138(P2009−191138)の分割
【原出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000112015)株式会社パロマ (298)
【Fターム(参考)】