説明

熱交換型排水性舗装構造及びそれに用いる通水板

【課題】排水性の舗装部における排水性能を向上させ得ると共に、冬期においては、道路表面の融雪や凍結防止を効果的に行なうことができ、夏期においては、道路表面を効果的に冷却できる熱交換型排水性舗装構造を提供する。
【解決手段】不透水性の基盤4の上面4aに排水性舗装層8を設ける。排水性舗装層8を浸透した雨水は、基盤4上を流下して排出される。基盤4の内部に、直線状に延長する通水路42を設け、通水路42と排水性舗装層8の下面14とを連結する排水連絡路18を設ける。排水性舗装層8を浸透した雨水の一部が、排水連絡路18を通して通水路42に流入し、通水路42の末端で排出される。排水連絡路18の上端は、フィルター部材28でカバーする。通水路42の一端で供給された水がその他端で排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換型排水性舗装構造に関するものであり、又、該熱交換型排水性舗装構造に用いる通水板に関するものである。より詳しくは、大雨の際も良好に排水し得ると共に、冬期においては、道路や駐車場等の排水性舗装層の表面の融雪を行なったり凍結を防止するために活用できる一方、夏期においては、該排水性舗装層の表面を冷却することによってヒートアイランド現象を緩和するために活用し得る熱交換型排水性舗装構造に関するものである。又、熱交換型排水性舗装構造を構成するために用いて好適な通水板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、降雨水を舗装部に浸透させ、この浸透水を排水設備に排出するように構成された排水性舗装構造が普及しつつある。この排水性舗装構造は、アスファルト層やコンクリート層等からなる不透水性の基盤上に、ポーラスアスファルト層やポーラスコンクリート層等からなる排水性舗装層を形成し、排水性舗装層を浸透した雨水を排水路に流すように構成されていた。
【0003】
しかしながら、かかる従来の排水性の舗装構造によるときは、大雨の場合は、排水処理が不十分となって路面に水の層が形成され、自動車のスリップ事故を誘発したり、水の層で路面が光って自動車の安全走行を阻害する問題があった。そこで特開2000−104206号が開示するような排水性舗装構造が提案されている。該排水性舗装構造は、不透水性の基盤に排水性舗装層の下面に連なる排水路を設け、大雨の場合は浸透水の一部を該排水路に流入させることにより排水性能を向上させんとするものであり、それ自体は有用であった。
【0004】
ところで、かかる排水性舗装構造にあっても、一般の舗装構造におけると同様にして、冬期においては、路面での融雪や凍結防止を図ることが求められるが、このような目的を達成せんとするものとして、例えば特開2005−48359号公報が開示するような、排水性舗装部の下端部分に通水管を配置する技術が提案されている。しかしながら、排水性舗装部は、空気層が多いために熱伝導率が小さく、融雪や凍結防止を効果的に行うことができない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−104206号公報
【特許文献2】特開2005−48359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みて開発されたものであり、大雨の場合も、排水性の舗装部を浸透した雨水を順次排水処理可能として路面に水の層が形成されにくくするだけでなく、冬期においては、排水性の舗装部の路面での融雪や凍結防止を図り得ると共に、夏期においては、路面を冷却することによってヒートアイランド現象の緩和にも寄与し得る熱交換型排水性舗装構造の提供を課題とするものである。
【0007】
又、品質が安定しており然も工期の短縮を期し得る熱交換型排水性舗装構造の提供を課題とするものである。
【0008】
更に、かかる熱交換型排水性舗装構造を、品質に優れ且つ施工性に優れたものとして構成し得る通水板の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用する。
即ち、本発明に係る熱交換型排水性舗装構造は、不透水性の基盤の上面に排水性舗装層が設けられると共に、該排水性舗装層を浸透した雨水が該基盤上を流下して排出されるようになされた舗装部が形成されており、該基盤の内部に、直線状に延長する如く通水路が設けられ、該通水路と前記排水性舗装層の下面とを連結する排水連絡路が設けられ、該排水性舗装層を浸透した雨水の一部が、該排水連絡路を通して該通水路に流入し該通水路の末端で排出される如くなされている。又、該排水連絡路の上端は、目詰まり防止のフィルター部材でカバーされており、該通水路の一端で供給された水がその他端で排出されるようになされていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る熱交換型排水性舗装構造のより具体的な態様は、不透水性の基盤の上面に排水性舗装層が設けられると共に、該排水性舗装層を浸透した雨水が該基盤上を流下して排出されるようになされた舗装部が形成されており、該基盤の内部に、直線状に延長する如く通水路が設けられ、該通水路と前記排水性舗装層の下面とを連結する排水連絡路が設けられ、該排水性舗装層を浸透した雨水の一部が、該排水連絡路を通して該通水路に流入し該通水路の末端で排出される如くなされている。又、該排水連絡路の上端は、目詰まり防止のフィルター部材でカバーされており、上面が平滑で一連状態に設けられた下地層の該上面に、接着剤を含む防水層を介在させて通水板を縦横に敷設して通水板敷設層を形成することにより構成した前記基盤の該通水板敷設層の上面に接着層を介して前記排水性舗装層を一連状態に設けることにより、前記舗装部が形成されている。
【0011】
又、前記通水板は、不透水性のプレキャストコンクリート製の平板体からなる通水板本体の内部に、該通水板本体の対向する端部の一方から他方に向けて直線状に延長する如く、周方向に閉じた通水管部が設けられて、該通水管部の両端部開口が通水板本体の表面で開口しており、該通水板本体の端面で開放状態にある該通水管部の端部開口相互を連通させるように、隣り合う通水板の端面相互が、止水性目地材を介して突き合わせ状態で接合されることによって、該連通した通水管部からなる前記通水路が形成されてなり、又、前記通水板本体の上下の面は粗面に形成されており、下の粗面に前記防水層が食い込んだ状態にあると共に上の粗面に前記接着層が食い込んだ状態にあり、又、前記排水性舗装層を浸透した雨水が前記通水板敷設層の上面を流下して排水されるようになされており、又、該通水路の一端で供給された作動水が該通水路の他端で排出されるようになされていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る熱交換型排水性舗装構造のより具体的な他の態様は、不透水性の基盤の上面に排水性舗装層が設けられると共に、該排水性舗装層を浸透した雨水が該基盤上を流下して排出されるようになされた舗装部が形成されており、該基盤の内部に、直線状に延長する如く通水路が設けられ、該通水路と前記排水性舗装層の下面とを連結する排水連絡路が設けられ、該排水性舗装層を浸透した雨水の一部が、該排水連絡路を通して該通水路に流入し該通水路の末端で排出される如くなされており、又、該排水連絡路の上端は、目詰まり防止のフィルター部材でカバーされており、上面が平滑で一連状態に設けられた、コンクリート層やアスファルト層等からなる下地層の該上面に、接着剤を含む防水層を介在させて通水板を縦横に敷設して通水板敷設層を形成することにより構成した不透水性の前記基盤の該通水板敷設層の上面に、接着層を介して、ポーラスアスファルト層やポーラスコンクリート層等からなる排水性舗装層が一連状態に設けられることにより橋梁の前記舗装部が形成されている。
【0013】
又、前記通水板は、高強度繊維補強コンクリートからなる不透水性のプレキャストコンクリート製の、平面視で正方形状又は矩形状を呈する平板体からなる通水板本体の内部に、該通水板本体の、路面の横断方向で見た対向する端部の一方から他方に向けて直線状に延長する如く、周方向に閉じた通水管部が設けられて、該通水管部の両端部開口が通水板本体の表面で開口しており、該通水板本体の端面で開放状態にある該通水管部の端部開口相互を連通させるように、隣り合う通水板の端面相互が、止水性目地材を介して突き合わせ状態で接合されることによって、該連通した通水管部からなる前記通水路が形成されてなる前記通水板敷設層が設けられており、前記通水板本体の上下の面は粗面に形成されており、下の粗面に前記防水層が食い込んだ状態にあると共に上の粗面に前記接着層が食い込んだ状態にあり、又、前記排水性舗装層を浸透した雨水が前記通水板敷設層の上面を流下して排水されるようになされており、又、前記通水路の一端で供給された河川水としての作動水が該通水路の他端で排出されるようになされていることを特徴とするものである。
【0014】
前記の各熱交換型排水性舗装構造において、前記通水管部の両端部開口は前記通水板本体の対向する端面で開口したものとして構成することができる。
【0015】
前記の各熱交換型排水性舗装構造において、前記排水連絡路は、前記通水路の長さ方向に所要間隔を置いて設けることができる。
【0016】
本発明に係る通水板は、上面が平滑で一連状態に設けられた下地層の該上面に、接着剤を含む防水層を介在させて、通水板を縦横に敷設して通水板敷設層を設けると共に、該通水板敷設層の上面に接着層を介して排水性舗装層を一連状態に設けることによって舗装部を形成するに際し、該通水板敷設層を構成する通水板であり、不透水性のプレキャストコンクリート製の平板体からなる通水板本体の内部に、該通水板本体の対向する端部の一方から他方に向けて直線状に延長する如く、周方向に閉じた通水管部が設けられており、該通水管部の両端部開口が通水板本体の表面で開口しており、又、前記通水路と前記排水性舗装層の下面とを連結する排水連絡路が設けられており、又、該通水板本体の下の面は、前記防水層の接着剤を食い込んだ状態とするための粗面に形成されると共に、該通水板本体の上の面は、前記接着層を食い込んだ状態とする粗面に形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
該通水板において、前記排水連絡路は、前記通水路管部の長さ方向に所要間隔を置いて設けられており、或いは独立的に1箇所設けることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
(1) 本発明に係る熱交換型排水性舗装構造によるときは、大雨時には、排水性舗装層を浸透して基盤の上面に達した雨水を、前記排水連絡路を通して通水路に円滑に流入させることができるため、排水性舗装層に浸透した雨水を路面に湧水させない状態で確実に排水できることになる。これにより、路面の表面水を極力減少させて自動車のスリップ事故等の防止に寄与できる。
【0019】
(2) 又本発明に係る熱交換型排水性舗装構造によるときは、作動水の保有熱を前記基盤に熱伝導により放熱させることができるため、冬期においては、道路や駐車場等の排水性舗装層の表面の融雪を行ったり該表面の水の凍結を防止できる。一方、夏期においては、該排水性舗装層の表面を冷却することによってヒートアイランド現象の緩和に寄与できる。
【0020】
(3) 更に前記基盤を前記通水板敷設層によって構成する場合は、通水板を縦横に敷設して通水板敷設層を形成するため、現場打ち施工のような配筋が不要であり、短期間で施工できる経済性がある。
【0021】
(4) 又、前記基盤を通水板敷設層を形成して構成する場合は、通水板敷設層の内部に、熱交換を行わせる上で重要な通水路が設けられてなるため、自動車の路面走行等の影響で通水管部相互の接合部分がずれると通水性不良を招くことになる。そこで本発明に係る熱交換型排水性舗装構造においては、通水板本体の上下の面を粗面に形成することとし、上下の粗面に接着層や防水層が食い込んだ状態となしている。かかることから、一連状態に設けられた下地コンクリート層と通水板敷設層と、一連状態に設けられた排水性舗装層とは一体化状態にあり構造的に安定している。
従って、通水管部の端部相互を接合するに際して、隣り合う通水板の端面相互を接着剤やパッキン材を介在させて突き合わせ状態とする簡易な施工を施すだけで、通水管部相互の連通状態が安定的に保持されることになる。又、通水路への作動水の供給構造部分が安定的に保持されることになる。又、通水管部だけで通水路を構成するときも、通水路への作動水の供給構造部分が安定的に保持されることになる。
このようなことから本発明によるときは、熱交換性能を長期間に亘って維持させ得る品質に優れた熱交換構造を提供でき、しかも施工性に優れた熱交換構造を提供できることになる。
【0022】
(5) 本発明に係る通水板によるときは、路面の排水性能及び熱交換性能を長期間に亘って維持させ得る品質に優れた熱交換型排水性舗装構造を構成でき、しかも施工性に優れた熱交換型排水性舗装構造を構成できることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る舗装構造が橋梁の車道に応用された場合を示す一部欠切斜視図である。
【図2】その部分拡大斜視図である。
【図3】その横断面図である。
【図4】その横断面図の、道路勾配方向で見た上側部分を示す拡大図である。
【図5】その横断面図の、中間部分を示す拡大図である。
【図6】その横断面図の、道路勾配方向の下側部分を示す拡大図である。
【図7】橋梁の車道を縦断方向で見た部分断面図である。
【図8】通水板の一実施例を示す一部欠切平面図と部分断面図である。
【図9】通水板を上側から見た斜視図である。
【図10】通水板の一方の端部分の構成を、フィルター部材の装着の構成と共に示す部分斜視図と部分断面図である。
【図11】通水板の他方の端部分の構成を、フィルター部材の装着の構成と共に示す部分斜視図と、その部分断面図である。
【図12】通水板の他の実施例を示す一部欠切平面図と部分断面図である。
【図13】その通水板を上側から見た斜視図である。
【図14】その通水板の一方の端部分の構成を、フィルター部材の装着の構成と共に示す斜視図と、その部分断面図である。
【図15】その通水板の他方の端部分の構成を、フィルター部材の装着の構成と共に示す斜視図と、その部分断面図である。
【図16】通水板を下側から見た斜視図とその部分拡大図である。
【図17】端面相互が接着される通水板を示す部分斜視図と、通水管部を連通させるように通水板の端面相互を接着した状態を示す断面図である。
【図18】弾性パッキン材を介して相互が接合される通水板を示す部分斜視図と、弾性パッキン材を介して、通水管部相互を連通させるように通水板の端面相互を接合した状態を示す断面図である。
【図19】橋梁の歩道に応用された熱交換構造を示す断面図である。
【図20】その部分拡大図である。
【図21】その平面図である。
【図22】通水板の他の実施例を示す一部欠切平面図である。
【図23】その通水板を敷設して構成された舗装部を示す部分平面図である。
【図24】通水板のその他の実施例を示す正面図である。
【図25】通水板のその他の実施例を示す正面図である。
【図26】通水板のその他の実施例を示す正面図である。
【図27】通水板のその他の実施例を示す断面図である。
【図28】通水板のその他の実施例を示す断面図である。
【図29】通水板のその他の実施例を示す断面図である。
【図30】フィルター部材の他の態様を使用状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0024】
図1〜6において本発明に係る熱交換型排水性舗装構造(以下舗装構造という)1は、不透水性の基盤4の上面4aに排水性舗装層8が設けられることによって舗装部5が形成されており、該基盤4の内部に通水路42が設けられ、該通水路42と前記排水性舗装層8の下面14とを連結する排水連絡路18が設けられ、該排水性舗装層8を浸透した雨水の一部が該排水連絡路18を通して前記通水路42に流入し、該通水路42を流下して、例えば排水溝50aとしての排水設備50に排出されるようになされている。そして該排水連絡路18の上端24は、図2に示すように、目詰まり防止のフィルター部材28でカバーされている。又、該通水路42の一端43で供給された作動水がその他端49で前記排水溝50aに排出されるようになされている。以下、これをより具体的に説明する。
【0025】
該舗装構造1は、例えば、河川を跨ぐ橋梁2における車道3の舗装部(路面6が、例えば片側一車線で道路勾配が2%)5に応用されている。
【0026】
前記舗装構造1を構成する前記不透水性の基盤4は、本実施例においては図1〜2、図3〜6に示すように、上面7が平滑で一連状態に設けられた下地層9の該上面7に、接着剤を含む防水層10を介在させて通水板11を縦横に敷設して通水板敷設層12を設けることによって構成されている。そして、該通水板敷設層12の上面13(即ち、基盤4の上面4a)に、接着層15を介在させて前記排水性舗装層8が一連状態に設けられており、これによって前記舗装部5が構成されている。
【0027】
ところで橋梁においては、下地層9上に設けられる舗装部5の厚さが60〜80mmと規定されており、若干の施工誤差は許容されている。本実施例においては、該下地層9上に5〜15mm、例えば5mm厚さの防水層10を設け、該防水層10上に30〜50mm、例えば35mm厚さの通水板敷設層12を設け、その上に、30mm以上、例えば40mm厚さの排水性舗装層8を設けることとし、舗装部5の厚さを約80mmに設定している。
【0028】
ここに、前記通水板敷設層12を構成する前記通水板11は、図8〜11、図12〜15に示すように、全体が高強度繊維補強コンクリート(金属系又は有機・無機系の単繊維を混入することにより補強されたコンクリート)を用いて構成されている。
【0029】
より具体的に説明すれば、該通水板11は、プレキャストコンクリート製の、平面視で例えば正方形状や長方形状を呈する(例えば長方形状を呈する)不透水性の平板体からなる通水板本体19の厚さ方向の中央部分を貫通するように、周方向に閉じた通水管部20が、該通水板本体19の対向する端部22,22の一方22aから他方22bに向けて直線状に延長する如く設けられている。本実施例においては、対向する端面21,21の一方21aから他方21bに向けて直線状に延長する如く設けられ、該通水管部20の両端部開口35,35が該通水板本体19の表面23で開口されている。本実施例においては、該通水板本体19の対向する端面21a,21bで開口されている。
【0030】
該通水板11は、その短辺25の延長方向を前記舗装部5の上面(路面)6の横断方向に合わせて敷設されるものであり、その短辺25の長さL1は例えば1750mmに設定されると共にその長辺27の長さL2は例えば2000mmに設定され、その厚さは例えば35mmに設定されている。そして前記通水管部20は、本実施例においては、管部材を用いることなく、通水板本体19に直接的に形成されており、その内径は例えば15mmに設定されている。又該通水管部20は、通水板11の長辺27の延長方向に所要間隔を置いて多数本配設されており、該長辺27の延長方向で見た配置間隔は、中心間で例えば100mmに設定されている。該通水板11には、前記下地層9の傾斜方向で見た下側部分9a(図3)に敷設される第1の通水板11aと、該傾斜方向で見た上側部分9b(図3)に敷設される第2の通水板11bとの2種類がある。
【0031】
前記排水連絡路18は、本実施例においては図8〜11、図12〜15、図16に示すように、前記通水管部20の両端側の部分20a,20bを上方向に開放させる如く設けられている。
【0032】
前記第1の通水板11aにあっては、図8〜11に示すように、前記通水板本体19の短辺方向で見た両端部分の上部34を矩形状に欠切して矩形状凹所38,38を形成してなり、該矩形状凹所38,38の底面44,44が該通水管部20の下端48,48と同高さに設定されている。これにより、該通水管部20の両端部分で、前記排水連絡路18,18が設けられている。そして、該矩形状凹所38には図10〜11に示すように、前記フィルター部材28が装着されるようになされており、該フィルター部材28は、本実施例においては図10〜11に示すように、例えば長孔状のフィルター孔54が設けられた上面部58の両端縁58a,58aで垂下片64,64が屈曲形成されてなる、下端開放のコ字状を呈している。該フィルター部材28は、図10(B)に示すように、該両垂下片64,64の外面75,75が前記矩形状凹所38の対向する内側面76,76に当接し且つ該垂下片64,64の下端77,77が前記底面44に載った状態で該矩形状凹所38に設置され、その上面部58の上面79が前記通水板本体19の上の面29と面一を呈する。
【0033】
又、前記第2の通水板11bにあっては、図12〜15に示すように、前記通水板本体19の短辺方向で見た一端部分(前記下地層9の傾斜方向で見た下方側の端部分)に、前記第1の通水板11aにおけると同様にして矩形状凹所38からなる前記排水連絡路18が設けられているが、該短辺方向で見た他端部分(前記下地層9の傾斜方向で見た上方側の端部分)には、通水板11の上端80の稍下側の部分において、前記上部34を矩形状に開口して矩形状開口部81が形成され、該矩形状開口部81の底面82が前記通水管部20の下端48と同高さに設定されている。そして、前記と同様にして、下端開放のコ字状を呈するフィルター部材28が、該矩形状凹所38、矩形状開口部81に設置され、その上面部58の上面79が前記通水板本体19の上の面29と面一を呈する。
【0034】
又、前記第1の通水板11a、第2の通水板11bには、前記通水板本体19の上下の面29,30は粗面31,32に形成されている。前記第2の通水板11bについて説明すれば、該粗面31,32は例えば図16(B)に示すように、深さが2〜3mm程度で長さが28〜30mm程度、幅が5〜6mm程度の溝部33の多数を縞模様状に散在させて形成されている。
【0035】
かかる通水板11が、図1〜3に示すように、上面7が平滑で一連状態に設けられた前記下地層(コンクリート層やアスファルト層等、本実施例においてはコンクリート床版)9の該上面7に、前記防水層10を介して縦横に敷設されることにより前記通水板敷設層12が形成されるのであるが、その際、該通水板11は、その短辺25の延長方向を前記路面6の横断方向に合わせて敷設される。前記舗装部5を形成するために、該通水板11の2枚を、その通水管部20の延長方向を路面6の横断方向に合わせて接合する。この接合は、図5(A)(B)に示すように、路面6の横断方向に延長する対応の通水管部20,20の端部35,35相互を連通させ得るように該通水板11,11の端面21,21相互を突き合わせ状態にして行う。
【0036】
本実施例においては、例えば図17(A)(B)に示すように、該通水板11,11の端面21,21間に例えばエポキシ樹脂系の接着剤からなる止水性目地材39を1〜2mm厚さで、前記矩形状凹所38,38の端部82,82を塞がないように、塗布や吹付け、注入等によって介在させ、該端面21,21相互を接着することとしている。或いは図18(A)(B)に示すように、前記矩形状凹所38の端部82に位置合わせして、例えば上端開放の矩形欠切状の通孔83が並設状態で貫設されてなる合成樹脂製のパッキン材(ブチルゴムやスポンゴム等の弾力性を有するパッキン材)からなる止水性目地材39を、前記端面21,21間に介装し、該端面21,21相互を突き合わせ状態で接合して行うこともできる。これにより、前記横断方向に延長する通水管部20,20が、該通孔83を介して一直線状に連なった状態となる。
【0037】
そして図1、図7に示すように、路面6の長さ方向に並設される通水板11の隣り合う側面40,40は、例えばエポキシ樹脂系の接着剤からなる止水性目地材41を塗布や吹付け、注入等によって該側面40,40間に介在させることにより接着される。或いは、合成樹脂製のパッキン材(ブチルゴムやスポンゴム等の弾力性を有するパッキン材)からなる止水性目地材41を該側面40,40間に介装させて該側面40,40相互が当接状態とされることもある。
【0038】
このようにして敷設された通水板11の下の粗面32には、図5(B)に示すように、前記防水層10が食い込んだ状態となり、該通水板11が該防水層10を介して、一連状態に設けられた前記下地層9と一体化する。これにより、前記通水板敷設層12が前記下地層9に対して動きにくいようになし得る。又、前記通水板敷設層12の上面に例えばエポキシ樹脂系の接着層15を介在させて一連状態に設けられる前記排水性舗装層8は、本実施例においては、ポーラスアスファルト層やポーラスコンクリート層等からなり、前記通水板11の上の粗面31に食い込んだ状態の接着層15を介して前記通水板敷設層12と一体化される。これにより、前記排水性舗装層8が前記通水板敷設層12に対して動きにくいようになし得る。これらにより、不透水性の基盤4上に前記排水性舗装層8が設けられることによって前記舗装部5が形成される。
【0039】
そして、前記通水管部20が前記横断方向で連通されることによって形成された通水路42には、前記矩形状凹所38,38が直列に連なることによって、該通水路42と前記排水性舗装層8の下面14とを連結する排水連絡路18が設けられ、該排水連絡路18の上端24は、目詰まり防止の前記フィルター部材28でカバーされた状態が得られる。
【0040】
このようにして構成された通水路42の一端(図3〜4においては上端)43は、路面6の横断方向の上端部分で路面延長方向に設けられた送水管路45に、上連通孔47を介して連通されている。又、前記通水路42の他端(図2、図6においては、下端)49は、路面6の横断方向の下端部分で路面延長方向に設けられた前記排水溝50aに連通されている。そして、ポンプ(図示せず)で取水された河川水が送水管(図示せず)を経て前記送水管路45に給水されることにより、作動水としての河川水が前記夫々の上連通孔47を介して前記夫々の通水路42に、例えば、自然流下に近い状態で供給され、該通水路42を流下して前記排水溝50aに排出されるようになされている。
【0041】
然して本発明に係る舗装構造1によるときは、舗装部5の路面6の降雨水が前記排水性舗装層8を浸透し、この浸透水は、前記基盤4の上面4aを図4〜6に矢印で示すように流下すると共に、その一部は、図5(B)において下向きの矢印で示すように、前記排水連絡路18を通して前記通水路42に流入しその末端で前記排水溝50aに排出される。浸透水がこのように通水路42に流入する際、前記フィルター部材28によって、浸透した雨水に含まれているゴミ等が通水路42に進入するのを防止できる。大雨のときは、前記排水性舗装層8を浸透した雨水の一部が、前記排水連絡路18,18を通して前記通水路42に流入できるため、路面6に水の層が形成されて路面6が滑りやすくなったり、水の層で路面6が光って自動車の運転の障害になるような事態を防止できる。
【0042】
なお、定期的に、前記通水路42の他端49(図3、図6)を塞いで前記通水路42の一端43で作動水を圧送して作動水を前記フィルター部材28のフィルター孔54から排水性舗装層8に向けて噴出させることにより、該フィルター孔54の目詰まりを解消可能である。
【0043】
そして、前記のようにして各通水路42に河川水が供給されると、該河川水の保有熱が該通水路42の内周面51(図4〜6)で通水板11に熱伝導により放熱され、前記排水性舗装層8に熱移動されて該排水性舗装層8の上面(路面)6が加温される。冬期においては、このように路面6が加温されることより、該路面6の雪を溶かしたり、該路面6の水の凍結を防止できることとなる。又夏期においては、前記通水路42を流下する水が、前記舗装部5の保有熱を吸熱でき、これにより、路面6を冷却してヒートアイランド現象の緩和に寄与できる。本実施例においては、該通水路42が路面6の横断方向に直線状を呈しているため、各通水路42に大量の河川水を円滑に流すことができる。かかることから、温度が比較的低い河川水を作動水として利用しているにも拘わらず、その保有熱を通水板11に効率的に放熱させることができ、融雪や凍結防止を効率よく行うことができる。
【0044】
かかる熱交換を行い得る舗装構造1にあっては、前記のように、通水板本体19の上下の面29,30が粗面31,32に形成されており、図5(B)に示すように、下の粗面32に食い込んだ状態の前記防水層10を介して、通水板敷設層12が前記一連状態の下地層9と一体化しており、且つ、前記上の粗面31に食い込んだ状態の前記接着層15を介して、一連状態の排水性舗装層8が該通水板敷設層12と一体化していることから、構築された舗装部5は一体化状態にあり構造的に安定している。
【0045】
かかることから、自動車走行時においてタイヤが路面を蹴る作用によっても路面6が捲れたり路面にクラックが入ったりしにくく、通水板11のずれが生じにくい。従って、前記通水管部20,20相互の接合が簡易な突き合わせ状態であるにも拘わらず、通水管部20,20相互の連通状態が安定的に保持される。又本実施例においては、図4に示すように、通水路42の上端43を上連通孔47を介して送水管路45に連通させる構成を採用しているが、該通水路42と該上連通孔47との連通状態も安定的に保持される。このようなことによって、路面の融雪や路面の凍結防止、路面の冷却等の前記熱交換を長期間に亘って良好に発揮させ得ることとなる。そして本発明は無散水方式のものであり、路面に散水して融雪する仕組みではないため、特に危険な橋梁の路面を散水により凍結させる恐れがない。
【0046】
次に、本実施例に係る発明の独特の特徴点について説明すれば次のようである。
即ち本実施例においては、発熱層としても機能し得る前記通水板敷設層12からなる不透水性の基盤4の上面4aに、ポーラスアスファルト層やポーラスコンクリート層等である排水性舗装層8を設ける構成を採用している。該排水性舗装層8は、空隙が多いために熱伝導率が低く、該排水性舗装層8の上面(路面)6の融雪や路面6の凍結防止を良好に行い難いのであるが、かかる構成を採用することから、該排水性舗装層8の上面(路面)6の融雪や路面6の凍結防止を良好に行い得るのである。
【0047】
又本実施例においては、通水板11を高強度繊維補強コンクリート製としているため、厚さに制約が伴う橋梁の舗装部5であっても、該通水板11を薄肉(例えば前記した約35mmの厚さ)に形成して所要の舗装構造を構成できる。このように、舗装部5の厚さに制約が伴う橋梁においても、路面6の排水性を良好に確保できながら路面の融雪や凍結防止も達成できることは、本実施例に係る発明の特徴点の一つである。
【0048】
更に、このように薄肉に構成された通水板11は軽量にならざるを得ないが、かかる軽量の通水板11のずれを防止する手段として通水板本体19の上下の面29,30に粗面31,32を設ける構成を採用し、該上下の粗面31,32に前記接着層15、前記防水層10を食い込ませることにより通水板敷設層12と下地層9と排水性舗装層8の全体を一体化することとしている。これによって、通水板11が軽量であってもその位置ずれを防止できるのであるが、このことも、本実施例に係る発明の特徴点の一つである。
【実施例2】
【0049】
図19〜21は、本発明に係る舗装構造1を、河川を跨ぐ橋梁における歩道52の舗装部5に応用した場合を示すものであり、1枚の通水板11の有する通水管部20のみを以て通水路42が構成されている。
【0050】
該舗装構造1を構成する前記不透水性の基盤4は、本実施例においては、図20に示すように、前記と同様に構成された下地層9の上面7に、接着剤を含む防水層10を介在させて、通水板11をその側面40,40相互を接着剤や弾性パッキン材を介して当接状態に敷設することにより通水板敷設層12を設けることによって構成されている。そして、該通水板敷設層12の上面13(即ち、基盤4の上面4a)に、接着層15を介在させて排水性舗装層8が一連状態に設けられることにより前記舗装部5が構成されている。
【0051】
そして、このように敷設された通水板11の下の粗面32には、前記防水層10が食い込んだ状態となり、該通水板11が該防水層10を介して、一連状態に設けられた前記下地層9と一体化する。又、前記排水性舗装層8は、本実施例においては図20に示すように、ポーラスアスファルト層やポーラスコンクリート層等から構成されており、前記通水板11の上の粗面31に食い込んだ状態の接着層15を介して前記通水板敷設層12と一体化される。
【0052】
又、前記通水板11に設けられている前記通水管部20のみからなる通水路42の一端(図19〜20においては上端)43は、路面6の横断方向の上端部分で路面延長方向に設けられた送水管路45に、上連通孔47を介して連通されている。又、前記通水路42の他端(下端)49は、路面6の横断方向の下端部分で路面延長方向に設けられた排水管路50bとしての排水設備50に、下連通孔55を介して連通されている。そして、ポンプ(図示せず)で取水された河川水が送水管(図示せず)を経て前記送水管路45に給水されることにより、作動水としての河川水が前記夫々の上連通孔47を介して前記夫々の通水路42に供給され、該通水路42を流下し、前記下連通孔55を介して前記排水管路50bに排出される。
【0053】
然して本発明に係る舗装構造1によるときは、舗装部5の路面6の降雨水が前記排水性舗装層8を浸透し、この浸透水は、前記基盤4の上面4aを図20〜21に矢印で示すように流下すると共に、その一部は、フィルター部材28で濾過され、前記排水連絡路18を通して前記通水路42に流入しその末端で前記排水管路50bに排出される。大雨のときは、前記排水性舗装層8を浸透した雨水の一部が、前記排水連絡路18を通して前記通水路42に流入できるため、路面6に水の層が形成されて路面6が滑りやすくなったり、水の層で路面6が光って自動車の運転の障害になるような事態を防止できる。
【0054】
なお、定期的に、前記通水路42の他端49を塞いで前記通水路42の一端で作動水を圧送して作動水を前記フィルター部材28のフィルター孔54から排水性舗装層8に向けて噴出させることにより、該フィルター孔54の目詰まりを解消可能である。
【0055】
そして前記のように、各通水路42に河川水が供給されると、該河川水の保有熱が前記通水路42の内周面51で通水板11に熱伝導により放熱され、前記排水性舗装層8に熱移動されて該排水性舗装層8の上面としての歩道面(路面)6が加温される。冬期においては、このように路面6が加温されることより、該路面6の雪を溶かしたり、該路面6の水の凍結を防止できることとなる。又夏期においては、前記通水路42を流下する水が、前記舗装部5の保有熱を吸熱でき、これにより、路面(歩道面)6を冷却してヒートアイランド現象の緩和に寄与できる。本実施例においては、前記通水路42が路面6の横断方向に直線状を呈しているため、各通水路42に大量の河川水を円滑に流すことができる。かかることから、温度が比較的低い河川水を作動水として利用しているにも拘わらず、その保有熱を通水板11に効率的に放出させることができ、融雪や凍結防止を効率よく行うことができる。
【0056】
かかる熱交換を行い得る舗装構造1にあっては、前記のように、通水板本体19の上下の面が粗面31,32に形成されており、下の粗面32に食い込んだ状態の前記防水層10を介して、通水板敷設層12が前記一連状態の下地層9と一体化しており、且つ、前記上の粗面31に食い込んだ状態の前記接着層15を介して、一連状態の排水性舗装層8が該通水板敷設層12と一体化していることから、構築された舗装部5は一体化状態にあり構造的に安定している。
【0057】
かかることから、管理車両や除雪車等の車両が歩道を走行したときにも、路面6が捲れたり路面6にクラックが入ったりしにくく、通水板11のずれが生じにくい。従って、前記通水路42と前記上連通孔47との連通状態等が安定的に保持される。このようなことによって、路面の融雪や路面の凍結防止、路面の冷却等の前記熱交換を長期間に亘って良好に発揮させ得ることとなる。そして本実施例に係る発明は無散水方式のものであり、路面に散水して融雪する仕組みではないため、路面等を散水により凍結させる恐れがない。
【実施例3】
【0058】
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
【0059】
(1) 図20〜21は、前記通水路42と前記排水性舗装層8の下面14とを連結する排水連絡路18の他の態様の一例を示すものであり、前記通水管部20の長さ方向の中間部分に所要間隔を置いて設けられた矩形状開口部81(図20(B))を用いて構成されている。図20〜21においては、1本の通水路42の長さ方向の両側部分に位置させて2個の排水連絡路18,18を設けている。前記排水連絡路18は、該通水路42の長さ方向の全長に亘って連続して設けられることもある。
【0060】
(2) 前記基盤4は、前記のように通水板11を縦横に敷設して構成することの他、前記通水路42を形成するための所要長さの直線状を呈する通水管を、コンクリート床版等としての下地層上に所要間隔で配置した後、現場打ちコンクリートを打設して構成されることもある。
【0061】
(3) 前記通水路42の一端で供給された作動水は、その一部が前記排水連絡路18を通して前記排水性舗装層8側に出ても構わないが、冬期においては、路面6の凍結を防止するために路面6に湧水しないようにする必要がある。但し、夏期においては、気化熱による路面温度上昇抑制のため、路面6に作動水が幾分湧水するように、作動水の水圧を少し高めに設定してもよい。
【0062】
(4) 本発明に係る舗装構造1を、河川を跨ぐ前記橋梁以外の陸橋や一般の道路(車道や歩道)の舗装部に応用することができる他、駐車場等各種の舗装部に応用することができる。車道は、片側複数車線であってもよい。又、舗装部5の上面13は、上端から一方の下端に向けて傾斜する片流れ状態のものであってもよく、上端から左右の下端に向けて傾斜する両流れのものであってもよい。或いは、殆ど水平であってもよい。
これらの場合、通水路42の一端で行われる作動水の供給は、自然流下方式の供給とすることの他、多少の圧力を掛けて供給することもある。
【0063】
(5) 図22は、隣り合う通水板11,11の側面相互を噛み合わせ構造にして通水板のずれ止め効果を向上させた熱交換構造1を示すものであり、ここに用いられている通水板11は、図22〜23に示すように、平面視で矩形状を呈する本体板部57の両側縁59,59の中央部分に矩形状の係合突出部60,60が突設された、平面視で略十字状の形態を有している。そして該本体板部57に、その両側縁59,59と平行する状態で且つ所要間隔を置いて、例えば100mmの間隔を置いて、通水管部20が設けられている。そして、かかる構成を有する通水板11,11の端面21,21相互が縦方向(通水路42の長さ方向)で突き合わせ状態に敷設されることによって、係合突出部60,60間に係合凹部90が形成され、該係合凹部90に、横方向に敷設される通水板11の係合突出部60が噛み合わせ状態となるように構成されている。
【0064】
(6) 通水板本体19の上下の面29,30に設ける粗面31,32は、一方向に延長する直線状溝でも、屈曲した溝でも、或いは円形や四角形等の凹部、梨子地状部等であってもよい。更には、通水板本体19を製造する過程で、コンクリートが硬化する前にその表面に3〜5mm径の砂利を散布し、該散布された面を軽く叩いて粗面を形成することも出来る。
要は、下の粗面32に前記防水層10が食い込んだ状態となると共に、上の粗面31に前記接着層15が食い込んだ状態となって、下地層9と通水板敷設層12と排水性舗装層8の三者を安定構造に一体化させ得るものであればよい。
【0065】
(7) 通水板本体19に設けられる通水管部20は、図24に示すように、鋼製や樹脂製等のパイプ61を通水板本体19に埋設して形成することもできる。そして該通水管部20は、通水板本体19の厚さ方向の中央部分に配置されるだけでなく、上や下に変位した状態で設けられることもある。
【0066】
(8) 通水板11を、高強度繊維補強コンクリート製とする場合、その強度は、大型の自動車が通る車道にあっては例えば100〜200N/mm2 程度に設定すると共に、道幅が狭く軽量な自動車が通る車道では例えば60〜100N/mm2 に設定し、歩道にあっては例えば30〜60N/mm2 程度に設定することができる。
【0067】
(9) 図25、図26は、通水板11を上下二分割して構成した場合を示すものであり、例えば50〜60mm厚さのコンクリート製の通水板として構成されており、上下の分割片63,65の合体によって所要の通水管部20が形成されている。この場合、上下の分割片63,65の当接面66,67を粗面にして該当接面66,67相互を接着するのがよい。
【0068】
(10)図27〜28は、通水板本体19に設けられる通水管部20の他の態様を示すものであり、該通水板本体19の対向する端部22,22の一方22aから他方22bに向けて直線状に延長する如く設けられている。図27においては、該通水管部20の両端部開口35a,35bが、通水板本体19の上の面29と下の面30で開口している。かかる構成の通水板11は、例えば歩道の構築に用いることができ、上面の端部開口35aで供給された作動水を下面の端部開口35bで排出させることができる。
図28は、通水管部20の両端部開口35,35の一方35aを通水板本体19の上の面29で開口させると共に他方35bを通水板本体19の端面21で開口させた場合を示しており、又図29は、通水管部20の両端部開口35,35の一方35aを通水板本体19の端面21で開口させると共に他方35bを通水板本体19の下の面30で開口させている。
【0069】
(11)通水板11は、前記した高強度繊維補強コンクリート製とされることの他、普通コンクリートを用いて形成することもできる。
【0070】
(12)前記通水路42に供給する作動水は、路面等の融雪や凍結防止、路面の冷却等の目的を達成できるものであれば、前記した河川水の他、地下水や浄水、工業排水等であってもよい。
【0071】
(13)又、供給される作動水は、通水路42が一定の勾配を有する場合でも、その下端で供給されて上端で排出されることもある。
【0072】
(14)前記排水性舗装層8は、前記したポーラスアスファルト層やポーラスコンクリート層の他、単なるアスファルト層やコンクリート層であってもよい。
【0073】
(15)前記下地層9は、既設のコンクリート床版等の既成の下地層の上面をモルタルやグラウトで平滑化処理したものであってもよい。
【0074】
(16)隣り合う通水板11,11の端面相互や側面相互に介在される止水性目地材としては、塗布や吹付け、注入によって介在されるパテ等であってもよい。
【0075】
(17)前記通水板敷設層12の上面13に設けられる接着層15は、接着性を有する乳剤であってもよい。
【0076】
(18)並設された各通水路42に作動水を供給する手段の他の態様としては、該通水路42の並設方向に延長して配設された送水管路に吐出口を並設すると共に、該吐出口と対応の通水路の一端とを連通パイプで連結した構成のものを挙げることができる。この連結は、例えば、該連通パイプの一端部を該吐出口に差し込み等によって接続すると共に、その他端部を該通水路の一端に差し込み接続して行うことができる。
このように連通パイプで連結する構成を採用する場合は、前記通水路42が一定の勾配を有する場合であっても、その下端(前記一端)で供給された河川水等の作動水を該通水路に漏水なく供給でき、該通水路42の上端で排出させることができる。該通水路42への作動水の供給流量は、流量計で調整できる。
【0077】
(19)図30は、フィルター部材28の他の態様を示すものであり、フィルター孔54が設けられた平板状に形成されており、両端縁部分91,91が、前記と同様構成の矩形状凹所38の内側面76,76の上端部分に設けられた嵌合支持部92,92で支持されている。
【符号の説明】
【0078】
1 舗装構造
2 橋梁
3 車道
4 基盤
5 舗装部
6 路面
8 排水性舗装層
9 下地層
10 防水層
11 通水板
12 通水板敷設層
14 排水性舗装層の下面
15 接着層
18 排水連絡路
19 通水板本体
20 通水管部
21 端面
23 通水板本体の表面
28 フィルター部材
29 通水板本体の上の面
30 通水板本体の下の面
31 粗面
32 粗面
33 溝部
35 端部開口
38 矩形状凹所
42 通水路
45 送水管路
50 排水設備
51 通水路の内周面
54 フィルター孔
57 本体板部
60 係合突出部
81 矩形状開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透水性の基盤の上面に排水性舗装層が設けられると共に、該排水性舗装層を浸透した雨水が該基盤上を流下して排出されるようになされた舗装部が形成されており、
該基盤の内部に、直線状に延長する如く通水路が設けられ、該通水路と前記排水性舗装層の下面とを連結する排水連絡路が設けられ、該排水性舗装層を浸透した雨水の一部が、該排水連絡路を通して該通水路に流入し該通水路の末端で排出される如くなされており、
又、該排水連絡路の上端は、目詰まり防止のフィルター部材でカバーされており、
該通水路の一端で供給された水がその他端で排出されるようになされていることを特徴とする熱交換型排水性舗装構造。
【請求項2】
不透水性の基盤の上面に排水性舗装層が設けられると共に、該排水性舗装層を浸透した雨水が該基盤上を流下して排出されるようになされた舗装部が形成されており、
該基盤の内部に、直線状に延長する如く通水路が設けられ、該通水路と前記排水性舗装層の下面とを連結する排水連絡路が設けられ、該排水性舗装層を浸透した雨水の一部が、該排水連絡路を通して該通水路に流入し該通水路の末端で排出される如くなされており、
又、該排水連絡路の上端は、目詰まり防止のフィルター部材でカバーされており、
上面が平滑で一連状態に設けられた下地層の該上面に、接着剤を含む防水層を介在させて通水板を縦横に敷設して通水板敷設層を形成することにより構成した前記基盤の該通水板敷設層の上面に接着層を介して前記排水性舗装層を一連状態に設けることにより、前記舗装部が形成されており、
又、前記通水板は、不透水性のプレキャストコンクリート製の平板体からなる通水板本体の内部に、該通水板本体の対向する端部の一方から他方に向けて直線状に延長する如く、周方向に閉じた通水管部が設けられて、該通水管部の両端部開口が通水板本体の表面で開口しており、該通水板本体の端面で開放状態にある該通水管部の端部開口相互を連通させるように、隣り合う通水板の端面相互が、止水性目地材を介して突き合わせ状態で接合されることによって、該連通した通水管部からなる前記通水路が形成されてなり、
又、前記通水板本体の上下の面は粗面に形成されており、下の粗面に前記防水層が食い込んだ状態にあると共に上の粗面に前記接着層が食い込んだ状態にあり、
又、前記排水性舗装層を浸透した雨水が前記通水板敷設層の上面を流下して排水されるようになされており、
又、該通水路の一端で供給された作動水が該通水路の他端で排出されるようになされていることを特徴とする熱交換型排水性舗装構造。
【請求項3】
不透水性の基盤の上面に排水性舗装層が設けられると共に、該排水性舗装層を浸透した雨水が該基盤上を流下して排出されるようになされた舗装部が形成されており、
該基盤の内部に、直線状に延長する如く通水路が設けられ、該通水路と前記排水性舗装層の下面とを連結する排水連絡路が設けられ、該排水性舗装層を浸透した雨水の一部が、該排水連絡路を通して該通水路に流入し該通水路の末端で排出される如くなされており、
又、該排水連絡路の上端は、目詰まり防止のフィルター部材でカバーされており、
上面が平滑で一連状態に設けられた、コンクリート層やアスファルト層等からなる下地層の該上面に、接着剤を含む防水層を介在させて通水板を縦横に敷設して通水板敷設層を形成することにより構成した不透水性の前記基盤の該通水板敷設層の上面に、接着層を介して、ポーラスアスファルト層やポーラスコンクリート層等からなる排水性舗装層が一連状態に設けられることにより橋梁の前記舗装部が形成されており、
前記通水板は、高強度繊維補強コンクリートからなる不透水性のプレキャストコンクリート製の、平面視で正方形状又は矩形状を呈する平板体からなる通水板本体の内部に、該通水板本体の、路面の横断方向で見た対向する端部の一方から他方に向けて直線状に延長する如く、周方向に閉じた通水管部が設けられて、該通水管部の両端部開口が通水板本体の表面で開口しており、該通水板本体の端面で開放状態にある該通水管部の端部開口相互を連通させるように、隣り合う通水板の端面相互が、止水性目地材を介して突き合わせ状態で接合されることによって、該連通した通水管部からなる前記通水路が形成されてなる前記通水板敷設層が設けられており、前記通水板本体の上下の面は粗面に形成されており、下の粗面に前記防水層が食い込んだ状態にあると共に上の粗面に前記接着層が食い込んだ状態にあり、
又、前記排水性舗装層を浸透した雨水が前記通水板敷設層の上面を流下して排水されるようになされており、
又、前記通水路の一端で供給された河川水としての作動水が該通水路の他端で排出されるようになされていることを特徴とする熱交換型排水性舗装構造。
【請求項4】
前記通水管部の両端部開口は前記通水板本体の対向する端面で開口していることを特徴とする請求項2又は3記載の熱交換型排水性舗装構造。
【請求項5】
前記排水連絡路は、前記通水路の長さ方向に所要間隔を置いて設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の熱交換型排水性舗装構造。
【請求項6】
上面が平滑で一連状態に設けられた下地層の該上面に、接着剤を含む防水層を介在させて、通水板を縦横に敷設して通水板敷設層を設けると共に、該通水板敷設層の上面に接着層を介して排水性舗装層を一連状態に設けることによって舗装部を形成するに際し、該通水板敷設層を構成する通水板であり、
不透水性のプレキャストコンクリート製の平板体からなる通水板本体の内部に、該通水板本体の対向する端部の一方から他方に向けて直線状に延長する如く、周方向に閉じた通水管部が設けられており、該通水管部の両端部開口が通水板本体の表面で開口しており、又、前記通水路と前記排水性舗装層の下面とを連結する排水連絡路が設けられており、又、該通水板本体の下の面は、前記防水層の接着剤を食い込んだ状態とするための粗面に形成されると共に、該通水板本体の上の面は、前記接着層を食い込んだ状態とする粗面に形成されていることを特徴とする通水板。
【請求項7】
前記排水連絡路は、前記通水管部の長さ方向に所要間隔を置いて設けられており、或いは独立的に1箇所設けられていることを特徴とする請求項6記載の通水板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate


【公開番号】特開2012−82594(P2012−82594A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228421(P2010−228421)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(504145320)国立大学法人福井大学 (287)
【出願人】(000137074)株式会社ホクコン (40)
【Fターム(参考)】