説明

熱交換装置およびその用途

【課題】電子放出素子と被熱交換体との間にホール電極を設けることにより、ヒートシンクによらずにイオン風生成のための電界形成を行い、いかなるサイズや形状の被熱交換体に対しても高い熱交換性能が発揮される熱交換装置およびその用途を提供する。
【解決手段】
電極基板と薄膜電極とそれらの間に挟まれた電子加速層とを有する電子放出素子と、前記薄膜電極から離れて前記薄膜電極に対向し、少なくとも1つの貫通孔を有するホール電極とを備え、前記電子放出素子と前記ホール電極とを空気中に設置して、前記電極基板と前記薄膜電極との間に第1電圧を印加し、前記薄膜電極と前記ホール電極との間に第2電圧を印加したとき、前記第1電圧によって、前記電極基板で生成された電子が前記電子加速層で加速されて前記薄膜電極から空気中に放出され負イオンを生成し、前記第2電圧によって前記負イオンからなるイオン風が生成されて前記貫通孔を通過して被熱交換体へ放出されるように構成された熱交換装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱交換装置およびその用途に関する。この発明の熱交換装置は、ことに冷却装置または加熱装置に利用するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
この発明に関連する背景技術として、以下のような熱交換装置の構成の一例が提案されている。図2に示すように、この熱交換装置1aは、被熱交換体2と接触するヒートシンク3と、ヒートシンク3と距離100だけ離れて配置され、ヒートシンク3との間の空気中に電子を付与する電子放出素子4とを備えている。電子放出素子4は、電極基板7と、薄膜電極9と、電極基板7と薄膜電極9との間に第1電圧印加部10により第1電圧を印加して電極基板7と薄膜電極9との間に電界を生じさせ、電極基板7で生成された電子を内部で加速させて薄膜電極9から放出させる電子加速層8とを備える。なお、電極基板7はアース6に接続されている。
【0003】
薄膜電極9から放出された電子は、空気分子に衝突する。この衝突により、空気分子がイオン化されて負イオンが発生する。そして負イオンは、薄膜電極9とヒートシンク3との間に第2電圧印加部5により第2電圧を印加し、薄膜電極9とヒートシンク3との間に形成される電界に沿って移動することによりヒートシンク3に向かうイオン風201が生成され、そのイオン風201がヒートシンク3に到達することにより、ヒートシンク3の表面の空気中の分子が攪拌され、ヒートシンク3表面の空気中の分子との間の熱交換が起こり、最終的にヒートシンク3を介した被熱交換体2との熱交換が行われるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−200252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の熱交換装置においては、薄膜電極とヒートシンクとの間に電界形成することによりイオン風を生成するため、その電界特性は電極の一方であるヒートシンクのサイズに依存する。しかしながら、ヒートシンクのサイズによっては、強いイオン風が生成されず、高い熱交換性能を発揮できない場合がある。例えば、ヒートシンク表面の面積が対向する薄膜電極表面の面積よりも大きい場合、薄膜電極から出た電界はヒートシンクに近づくにつれ広がるため、電界に沿って生成されるイオン風の流れも拡散し、熱交換効果が低減する。一方、ヒートシンク表面の面積が薄膜電極表面の面積よりも小さい場合、薄膜電極から出た電界はヒートシンクに近づくにつれ集中するため、イオン風も集中により強まるが、その反面、ヒートシンク表面の面積が小さいため、空気中の分子との熱交換による放熱効果が低減する。また、ヒートシンクを用いずに被熱交換体を電極として電界形成した場合においても、被熱交換体のサイズや形状に依存して電界形成されるため、同様の問題が生じる。それゆえ、ヒートシンクによらずにイオン風生成のための電界形成を行い、いかなるサイズや形状の被熱交換体に対しても高い熱交換性能を発揮する熱交換装置およびその冷却装置または加熱装置への利用が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、電極基板と薄膜電極とそれらの間に挟まれた電子加速層とを有する電子放出素子と、前記薄膜電極から離れて前記薄膜電極に対向し、少なくとも1つの貫通孔を有するホール電極とを備え、前記電子放出素子と前記ホール電極とを空気中に設置して、前記電極基板と前記薄膜電極との間に第1電圧を印加し、前記薄膜電極と前記ホール電極との間に第2電圧を印加したとき、前記第1電圧によって、前記電極基板で生成された電子が前記電子加速層で加速されて前記薄膜電極から空気中に放出され負イオンを生成し、前記第2電圧によって前記負イオンからなるイオン風が生成されて前記貫通孔を通過して被熱交換体へ放出されるように構成された熱交換装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、薄膜電極側とホール電極との間に電界形成することによりイオン風を生成し、ホール電極の貫通孔を通過して被熱交換体へ放出するため、ヒートシンクによらずにイオン風生成のための電界形成がなされ、いかなるサイズや形状の被熱交換体に対しても高い熱交換性能が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の第1実施形態に係る熱交換装置の構成を示す断面図である。
【図2】従来技術の熱交換装置の構成を示す断面図である。
【図3】この発明の第1実施形態に係る電子放出素子の拡大断面図である。
【図4】この発明の第1実施形態に係るホール電極およびその変形例の構成を示す斜視図である。
【図5】この発明の第2実施形態に係る熱交換装置の構成を示す断面図である。
【図6】この発明の第2実施形態に係る熱交換装置の変形例の構成を示す断面図である。
【図7】この発明の第3実施形態に係る熱交換装置およびその変形例の構成を示す断面図である。
【図8】この発明の第4実施形態に係る電子放出素子の拡大断面図である。
【図9】この発明の第5実施形態に係る熱交換装置の構成を示す断面図である。
【図10】この発明の第6実施形態に係る熱交換装置の構成を示す断面図である。
【図11】この発明の第6実施形態に係る電子放出素子を示す斜視図である。
【図12】この発明の第7実施形態に係る熱交換装置の構成を示す断面図である。
【図13】この発明の第8実施形態に係る冷却装置の構成を示す断面図である。
【図14】この発明の第9実施形態に係る加熱装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明は、電極基板と薄膜電極とそれらの間に挟まれた電子加速層とを有する電子放出素子と、前記薄膜電極から離れて前記薄膜電極に対向し、少なくとも1つの貫通孔を有するホール電極とを備え、前記電子放出素子と前記ホール電極とを空気中に設置して、前記電極基板と前記薄膜電極との間に第1電圧を印加し、前記薄膜電極と前記ホール電極との間に第2電圧を印加したとき、前記第1電圧によって、前記電極基板で生成された電子が前記電子加速層で加速されて前記薄膜電極から空気中に放出され負イオンを生成し、前記第2電圧によって前記負イオンを含むイオン風が生成されて前記貫通孔を通過して被熱交換体へ放出されるように構成された熱交換装置を提供するものである。
【0010】
この発明による熱交換装置において、前記ホール電極は、前記薄膜電極の電子放出面のサイズよりも小さいサイズを有するように構成されたものであってもよい。
このようにすれば、薄膜電極からホール電極へ向かって集中する不平等電界が形成されるため、電界に沿って生成されたイオン風の集中によって、被熱交換体の表面において強いイオン風を発生させることができ、高い熱交換性能が実現できる。
【0011】
ここで、「被熱交換体」とは、空気(イオン風)を介して熱交換をすべき対象物であり、「熱交換」には、相対的に高温の対象物から低温の空気へ熱を移動させる交換(すなわち、対象物の冷却)と、相対的に高温の空気から低温の対象物へ熱を移動させる交換(すなわち、対象物の加熱)とが含まれる。
【0012】
「サイズ」とは、薄膜電極とホール電極との間に形成される電界の集中や広がりを判定するための基準となる尺度である。例えば、ホール電極が図4(A)に示すようなリング状の形状を有する場合、ホール電極のサイズ104は、リングの外周の直径を表すものとする。また、ホール電極が図4(B)に示すような矩形状の形状を有する場合、ホール電極のサイズ104aは、矩形の一辺の長さを表すものとする。同様に、ホール電極が図4(C)に示すような矩形状の形状を有する場合、ホール電極のサイズ104bは、矩形の一辺の長さを表すものとする。
また、薄膜電極についても同様に、例えば、薄膜電極が円状の形状を有する場合、薄膜電極のサイズは、円の直径(外径)を表し、薄膜電極が矩形状の形状を有する場合、薄膜電極のサイズは、矩形の一辺の長さを表すものとする。
その他、面積や対角線等、薄膜電極とホール電極との間に形成される電界の集中や広がりを判定することができる尺度であれば、薄膜電極およびホール電極のサイズとして、どのような定義を行ってもよい。
【0013】
この発明による熱交換装置において、前記ホール電極は、リング状、パンチングメタル状またはメッシュ状のいずれか1つの形状を有するものであってもよい。
適切な形状のホール電極を用いて電界形成を行うことにより、発熱領域の個数や広がりに応じた適切なイオン風を生成することができるため、高い熱交換性能を実現できる。
【0014】
例えば、図4(a)に示すように、ホール電極がリング状の形状を有する場合、薄膜電極のサイズよりもホール電極のサイズを小さくすることで、薄膜電極からホール電極へ向かうほど集中する不平等電界が形成される。それゆえ、単一の発熱領域に集中的に放出されるイオン風を生成することができ、また、ホール電極の電極部(金属部分)の面積が小さくイオン風の流れを妨げないため、一層効率的な熱交換が可能となる。リング状のホール電極は、特に単一の発熱領域に対して集中して熱交換を行う場合に有効である。
【0015】
一方、発熱領域が複数存在する場合、図4(b)に示すように、複数の発熱領域に対応する複数個の貫通孔を有するパンチングメタル状のホール電極を設置することで、リング状のホール電極を複数個設置する場合と比べて設置の手間が省け、また一層小さい印加電圧で高い熱交換効果が得られる。
【0016】
発熱領域が多数存在する場合や発熱領域が一様に広がっている場合、図4(c)に示すように、メッシュ状のホール電極を設置することで、リング状のホール電極を多数設置する場合または多数の貫通孔を有するパンチングメタル状のホール電極を設置する場合と比べて設置の手間が省け、また一層小さい印加電圧で高い熱交換効果が得られる。
【0017】
この発明による熱交換装置において、前記薄膜電極と前記ホール電極との間に絶縁性の第1フードをさらに備え、前記第1フードは、前記薄膜電極から前記ホール電極に近づくに従って先細りになった内面を有するように構成されるものであってもよい。
このようにすれば、第1フードの内面でイオン風の拡散を防ぎつつ、先細りになった内面により気流を集中させることで、被熱交換体において特に発熱量が大きい領域にイオン風を集中的に送ることができ、効率よく被熱交換体と熱交換できるため、熱交換性能が向上できる。
【0018】
また、第1フードは絶縁性の材料で構成されるため、誘電分極によるチャージアップが生じた場合、正極たるホール電極と反対の極性(すなわち負極)に帯電する。これはイオン風を構成する負イオンと同じ極性であるため、イオン風と第1フードとの反発が生じ、第1フードの出口付近での粘性によるイオン風の失速が緩和される。それゆえ、高い熱交換性能が可能となる。
【0019】
この発明による熱交換装置において、前記ホール電極と前記被熱交換体との間に絶縁性の第2フードをさらに備え、前記第2フードは、前記ホール電極から前記被熱交換体に近づくに従って末広がりになった内面を有するように構成されるものであってもよい。
このようにすれば、第2フードの末広がりになった内面に沿ってイオン風を放出することにより、ホール電極を通り抜けた後、イオン風の圧力が急速に解放されることによってイオン風が必要以上に拡散し流速が遅くなることを抑制でき、高い熱交換効果が可能となる。
【0020】
この発明による熱交換装置において、前記薄膜電極および前記ホール電極間に発生する電界の電界強度は、1kV/m以上であってもよい。
このようにすれば、薄膜電極とホール電極との間に十分に強いイオン風を発生させることができるため、熱交換効果が高くなる。
【0021】
この発明による熱交換装置において、前記薄膜電極と前記ホール電極との間の距離は、10μm〜50cmであってもよい。
このようにすれば、薄膜電極とホール電極とを近づけることができるため、熱交換装置のサイズを小さくでき、また熱交換効果も高くなる。
【0022】
この発明による熱交換装置において、前記電子加速層は、絶縁体微粒子とその隙間に点在する導電体微粒子から形成されるものであってもよい。
このようにすれば、電子加速層の少なくとも一部に粒子状の絶縁体微粒子が含まれているため、電子加速層における抵抗値の調整を行いやすくすることができる。
【0023】
この発明による熱交換装置において、前記絶縁体微粒子は、SiO2、Al23およびTiO2のうちの少なくとも1つか、または有機ポリマーを有するものであってもよい。
前記絶縁体微粒子が、SiO2、Al23およびTiO2のうちの少なくとも1つを含んでいるか、あるいは、有機ポリマーを含んでいる場合、これら物質の絶縁性が高いことにより、前記電子加速層の抵抗値を任意の範囲に調整することが可能となる。
【0024】
この発明による熱交換装置において、前記絶縁体微粒子の平均径は、10〜1000nmであってもよい。
絶縁体微粒子の平均径を、10〜1000nmとすることにより、絶縁体微粒子の大きさよりも小さい導電体微粒子の内部から外部へと効率よく熱伝導させて、素子内を電流が流れるときに発生するジュール熱を効率よく逃すことができ、電子放出素子が熱で破壊されることを防ぐことができる。また、電子加速層における抵抗値の調整を行いやすくすることが可能になる。
【0025】
この発明による熱交換装置において、前記薄膜電極は、金、炭素、ニッケル、チタン、タングステンおよびアルミニウムのうちの少なくとも1つを有するものであってもよい。
このようにすれば、薄膜電極が、金、炭素、ニッケル、チタン、タングステンおよびアルミニウムのうちの少なくとも1つを有することによって、これら物質の仕事関数の低さから、電子加速層で加速された電子を効率よくトンネルさせ、電子放出素子外に高エネルギーの電子をより多く放出させることができる。
【0026】
この発明による熱交換装置において、前記薄膜電極と前記被熱交換体との間に前記イオン風の方向を横切る方向に空気流を形成する第1ファンをさらに備えたものであってもよい。
このようにすれば、薄膜電極と被熱交換体との間の空気を交換、冷却することができるため、被熱交換体の熱交換効果を一層増大させることができる。
【0027】
この発明による熱交換装置において、前記電子放出素子は、前記電極基板の表面から前記薄膜電極の表面まで貫通して空気流を通す複数の開口部を有するものであってもよい。
このようにすれば、電極基板の表面から前記薄膜電極の表面まで貫通する複数の開口部を通してイオン風発生に必要な空気を薄膜電極の表面に供給できるため、イオン風を効率的に発生させることができ、高い熱交換効果が発揮される。
【0028】
この発明による熱交換装置において、前記電極基板に対向し前記電極基板から前記薄膜電極の方向に前記開口部を通過する空気流を形成する第2ファンをさらに備えたものであってもよい。
このようにすれば、第2ファンにより、複数の開口部を通して薄膜電極と被熱交換体との間の空気を交換、冷却することができるため、被熱交換体の熱交換効果を一層増大させることができる。
【0029】
この発明は、前記熱交換装置と、前記ホール電極に対向し前記被熱交換体に接触するヒートシンクとを備え、前記ヒートシンクは、前記ホール電極に対向する放熱面に凹凸を有し、前記放熱面に前記ホール電極から前記イオン風が放出されるように構成された冷却装置を提供するものである。
【0030】
この発明による冷却装置によれば、被冷却体としての被熱交換体にヒートシンクを接触させ、ヒートシンクと被熱交換体との間で熱交換を行う構成とすることにより、ホール電極から放出されたイオン風をヒートシンクの凹凸を有する放熱面に放出して、より多くの空気中の分子に対して熱を伝達することができるため、放熱効果が増大し、冷却効果を向上できる。また、ヒートシンクによらずイオン風生成のための電界形成を行うため、いかなるサイズや形状の被熱交換体に対しても高い冷却効果を発揮する冷却装置を実現できる。
【0031】
前記熱交換装置と、前記ホール電極を前記被熱交換体よりも高温に加熱する加熱部とを備え、前記加熱部によって加熱された前記ホール電極の貫通孔に前記イオン風を通過させることにより前記被熱交換体よりも高温のイオン風を生成し、前記高温のイオン風が前記被熱交換体に放出されるように構成された加熱装置を提供するものである。
【0032】
この発明による加熱装置によれば、被熱交換体よりも高温に加熱されたホール電極の貫通孔にイオン風を通過させることにより高温のイオン風を生成するため、高い加熱効果を発揮する加熱装置を実現できる。
【0033】
〔第1実施形態〕
この発明の第1実施形態に係る熱交換装置について図1,図3,図4に基づいて説明すると以下の通りである。なお、以下に記述する構成は、この発明の具体的な一例に過ぎず、この発明はこれに限定されるものではない。図1は、この発明の第1実施形態に係る熱交換装置1の構成を示す断面図である。
【0034】
熱交換装置1は、被熱交換体2から発する熱を外部へ放熱する装置であり、電極基板7と薄膜電極9とそれらの間に挟まれた電子加速層8とを有する電子放出素子4と、前記薄膜電極9から距離101、被熱交換体2から距離102だけ離れて前記薄膜電極9に対向し、少なくとも1つの貫通孔を有するホール電極11とを備える。なお、電極基板7はアース6に接続されている。
【0035】
図1に示すように、電子放出素子4とホール電極11とを距離100離れて空気中に設置し、電極基板7と薄膜電極9との間に第1電圧印加部10により第1電圧を印加して電極基板7と薄膜電極9との間に電界を生じさせ、薄膜電極9とホール電極11との間に第2電圧印加部5により第2電圧を印加して薄膜電極9とホール電極11との間に電界を生じさせ、第1電圧によって、電極基板7で生成された電子が電子加速層8で加速されて薄膜電極9から空気中に放出される。
【0036】
薄膜電極9から空気中に放出された電子は、空気分子に衝突・付着して、負イオンを生成し、第2電圧によって負イオンからなるイオン風201が生成される。イオン風201は、ホール電極11の貫通孔を通過して被熱交換体2へ向けて放出される。
【0037】
なお、薄膜電極9と被熱交換体2との間の距離100、薄膜電極9とホール電極11との間の距離101、およびホール電極11と被熱交換体2との間の距離102は、イオン風201が被熱交換体2へ到達しうる距離であれば、特に制限されない。
【0038】
例えば、薄膜電極9と被熱交換体2との間の距離100は、好ましくは100μm〜50cmであり、より好ましくは100μm〜10mmである。また、両者の距離を5mm以上離すことで、薄膜電極9と被熱交換体2との間に被熱交換体2よりも温度の低い空気層ができるため、熱交換効果が高くなる。
また、薄膜電極9とホール電極11との間の距離101は、好ましくは10μm〜50cm、より好ましくは10μm〜5cmである。
なお、薄膜電極9およびホール電極11を酸化しにくい材料で構成することで、高温物体の近傍においても長時間駆動することができる。
【0039】
熱交換装置1において、電極基板7は、例えば、Ti、Cu等の金属基板やSUS等の合金基板であってもよいし、SiやGe、GaAs等の半導体基板であってもよい。また、例えばガラス基板のような絶縁体基板を用いるのであれば、その電子加速層8側の界面に金属などの導電性物質を電極として付着させることによって、電極基板7として用いることができる。
【0040】
薄膜電極9は、電子加速層8内に第1電圧を印加して電界を生じさせるものである。そのため、電圧の印加が可能となるような材料であれば特に制限なく用いることができる。ただし、電子加速層8内で加速され高エネルギーとなった電子をなるべくエネルギーロス無く透過させて放出させるという観点から、仕事関数が低くかつ薄膜を形成することが可能な材料であれば、より高い効果が期待できる。このような材料として、例えば、金、炭素、チタン、ニッケル、タングステン、アルミニウムなどが挙げられる。
【0041】
図3は、第1実施形態に係る電子放出素子4の拡大断面図である。電子加速層8は、少なくとも一部に、絶縁体物質が含まれていることが好ましい。このような構成とすることにより、電子放出素子4は、電極基板7と薄膜電極9との間に第1電圧が印加されることで、電極基板7から電子加速層8に注入された電子が電子加速層8の絶縁体物質中で加速されて弾道電子となるため、20V程度の第1電圧の印加で電極基板7と薄膜電極9との間の電子加速層8で電子を加速し、薄膜電極9から電子を放出させることができる。
【0042】
図3に示すように、第1実施形態に係る電子加速層8には、2種類の微粒子、すなわち、第1の誘電体物質が周囲に形成された導電体(例えば、金属等)からなる導電体微粒子13と、第2の誘電体物質としての絶縁体微粒子12とが含まれている。第1の誘電体物質は導電体微粒子13を被膜する被膜物質であり、導電体微粒子13は、絶縁被膜された導電体微粒子である。また、絶縁体微粒子12は、絶縁被膜された導電体微粒子13の平均径よりも大きい平均径を有する。
【0043】
なお、電子加速層8の構成は、当該構成に限定されず、例えば、絶縁体物質が、シート状で電極基板7に積層されており、かつ、積層方向に貫通する複数の開口部を有しており、そして、この開口部には、誘電被膜された導電体微粒子13が収容されていている、というような構成であってもよい。
【0044】
ここで、絶縁被膜された導電体微粒子13の金属種としては、弾道電子を生成するという動作原理の上ではどのような金属種でも用いることができる。ただし、大気圧動作させた時の酸化劣化を避ける目的から、酸化しにくい金属が好ましく、例えば、金、銀、白金、ニッケル、パラジウムいった材料が挙げられる。また、絶縁被膜された導電体微粒子13の絶縁被膜としては、弾道電子を生成するという動作原理の上ではどのような絶縁被膜でも用いることができる。ただし、絶縁被膜を導電体微粒子13の酸化被膜によって賄った場合、大気中での酸化劣化により酸化皮膜の厚さが所望の膜厚以上に厚くなってしまうおそれがあるため、大気圧動作させた時の酸化劣化を避ける目的から、有機材料による絶縁被膜が好ましく、例えば、アルコラート、脂肪酸、アルカンチオールといった材料が挙げられる。弾道電子の生成の原理については後段で詳しく記載するが、その原理に従って考えると、絶縁被膜された導電体微粒子13の直径は10nm以下であることが重要であり、その絶縁被膜の厚さは薄いほうが有利である。
【0045】
なお、導電体微粒子13の周囲に第1の誘電体物質が存在する構成について説明したが、導電体微粒子13は、この構成に限定されるものではない。熱交換装置1においては、第1の誘電体物質が導電体微粒子13の周囲に存在しない構成、または第1の誘電体物質が導電体微粒子13の周囲に被膜せず、点在して付着した構成であってもよい。このような構成であっても、電極基板7と薄膜電極9との間(すなわち、電子加速層8)で電子を加速し、薄膜電極9から電子を放出させることができる。
【0046】
絶縁体微粒子12の材料は、絶縁性も有する材料であれば特に制限なく用いることができる。ただし、電子加速層8を構成する全材料に対する絶縁体微粒子12の重量割合は80〜95%であることが望ましい。また、絶縁体微粒子12と導電体微粒子13との個数比は、絶縁体微粒子12が1個に対し、導電体微粒子13が2個から300個程度である、すなわち、1:2〜300であるときに、適度な抵抗率と放熱効果が得られる。また、絶縁体微粒子12の大きさは、導電体微粒子13に対して有意な放熱効果を得るため、導電体微粒子13の直径よりも大きいことが好ましい。絶縁体微粒子12の直径(平均径)は10〜1000nmであることが好ましい。従って、絶縁体微粒子12の材料はSiO2、Al23、TiO2といったものが実用的となる。この場合、粒子径の分散状態は、平均粒径に対してブロードであってもよく、例えば平均粒径50nmの微粒子は、20〜100nmの領域にその粒子径分布を有していても問題ない。
【0047】
電子加速層8は薄いほど強電界がかかるため低電圧印加で電子を加速させることが出来るが、絶縁体微粒子12の平均径よりも薄くはならないため、その厚さは5〜1000nmであるのが好ましい。
【0048】
ここで、電子加速層8に導電体微粒子13が含まれる電子放出素子の電子放出の原理について、図3を用いて説明する。図3に示すように、電子加速層8は、その大部分が絶縁体微粒子12で構成され、その隙間に少数の導電体微粒子13が点在している。絶縁体微粒子12は絶縁性であるが、その隙間に点在した導電体微粒子13が、電荷の受け渡しを行うことで、電子加速層8は半導電性を有する。したがって、電子加速層8へ電圧を印加すると、電子加速層8に微弱な電流が流れる。電子加速層8の電圧電流特性は所謂バリスタ特性を示し、印加電圧の上昇に伴い急激に電流値を増加させる。この電流の一部は、印加電圧が形成する電子加速層8の強電界により弾道電子となり、薄膜電極9を透過あるいはその隙間を通過して電子放出素子4の外部へ放出される。
【0049】
弾道電子の形成過程は、電子が電界方向に加速されつつトンネルすることによるものと考えられている。金属内における平均自由行程は10nm以上であり、平均粒径が10nm以下の導電体微粒子13を用いることで、電子は、金属原子によって散乱されることなく導電体微粒子13の導電体部分を通過し、また、高電界を有する導電体微粒子13の絶縁被膜をトンネルし、絶縁被膜内で加速されつつ高エネルギーを得ることで、弾道電子が効率よく生成される。
【0050】
なお、電子加速層8は、少なくとも一部が絶縁体微粒子12で構成されていればよく、導電体微粒子13を含まない構成であってもよい。このような電子加速層8としては、例えば特開2010−272255に記載の絶縁体微粒子と塩基性分散剤とを含む構成や、特開2011−003521に記載の絶縁体微粒子のみを含む構成が挙げられる。この場合、例えばシリカのような絶縁材料の表面において、結晶の欠陥や表面処理が施されることにより、シリカ表面に電気抵抗が低い部分が存在し、電子が流れると考えられる。そして、シリカ表面の電子は、ホッピング伝導のような形で流れて、エネルギーが高いホットエレクトロンが形成され、薄膜電極9へ到達する。
【0051】
ここで、電子放出素子4の製造方法について、その好ましい一例を以下に説明する。
【0052】
まず、絶縁体微粒子12と、導電体微粒子13とを分散溶媒に分散させた分散液を得る。ここで、分散溶液に用いる溶媒としては、絶縁体微粒子12と、導電体微粒子13とを分散でき、かつ塗布後に乾燥できれば、特に制限なく用いることができる。例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、テトラデカン等を用いることができる。また、導電体微粒子13の分散性を向上させる目的で、事前処理としてアルコラート処理を施すとよい。
【0053】
次に、絶縁体微粒子12と、導電体微粒子13との分散液を電極基板7上にスピンコート法を用いて塗布し、電子加速層8を形成する。スピンコート法による成膜、乾燥を複数回繰り返すことで所定の膜厚にすることができる。なお、電子加速層8は、スピンコート法以外に、例えば、滴下法、スプレーコート法等の方法でも形成することができる。
【0054】
電子加速層8の形成後、電子加速層8上に薄膜電極9を成膜する。薄膜電極9の成膜には、例えば、マグネトロンスパッタ法を用いればよい。また、薄膜電極9は、例えば、インクジェット法、スピンコート法、蒸着法等を用いて成膜してもよい。
【0055】
なお、電子加速層8内で加速された高エネルギーの弾道電子が薄膜電極9に到達したとき、薄膜電極9を構成する材料(例えば金)の仕事関数を超えたエネルギーを得ていると、電子は電子放出素子4の外部へ放出される。
【0056】
このようにして、薄膜電極9から電子放出素子4の外部へ放出された電子は、薄膜電極9とホール電極11との間に存在する空気中の分子と衝突を繰り返し、短時間で主に空気分子に付着(電子付着)し、負イオンを形成する。ここで、薄膜電極9とホール電極11との間に第2電圧を印加すると、負イオンは薄膜電極9とホール電極11との間に形成された電界(電位勾配)に沿ってホール電極11へ向かって移動する。このとき、負イオンは、周辺の中性分子(帯電していない窒素分子および酸素分子などの空気分子)と衝突して、中性分子も電界に沿って移動することにより、電界に沿った空気の流れが生じる。この負イオンと中性分子との混合体の電界に沿った動きがイオン風201である。したがって、熱交換装置1では、電子放出素子4の外部空間に電位勾配を設ける(すなわち、電子放出素子4とホール電極11との間に電界を発生させる)ことにより、イオン風201を発生させることができる。そして、イオン風201が被熱交換体2に到達することにより被熱交換体2の表面に存在する空気中の分子が攪拌・交換され、熱交換が行われる。なお、電界が強いほど、強いイオン風201を発生でき、効果的な熱交換が可能となる。
【0057】
薄膜電極9のサイズとホール電極11のサイズおよび電界強度により異なるが、電子付着により生成された負イオンの多くは、薄膜電極9とホール電極11との間に形成された電界に沿ってホール電極11へ向かって移動し、そのままホール電極11に付着する。ホール電極11に付着した負イオンはホール電極11へ電子を受け渡して再び空気分子となり、ホール電極11から脱離する。脱離した空気分子は周囲のイオン風201の流れに沿って移動する。ホール電極11への電気的引力よりも負イオンの運動の慣性のほうが支配的であるか、または電場の形状の影響でホール電極11よりも被熱交換体2のほうが負イオンが移動しやすい位置にある場合、負イオンは、ホール電極11と衝突せずにホール電極11を通り抜け、被熱交換体2まで移動して付着する場合がある。それゆえ、このような負イオンによる被熱交換体2の帯電を防ぐため、電圧印加に先立って、被熱交換体2をアースに接続するのが好ましい。
【0058】
このように熱交換装置1において、第1電圧印加部10の印加電圧を大きくすることにより、電子加速層8内の電流量が増加し、薄膜電極9から放出される電子量が増加する。これに伴い、気流を動かす原動力となるイオン量が増加するため、強いイオン風201を発生させ、熱交換量の増大が可能になる。また、このように熱交換装置1において、第2電圧印加部5の印加電圧を大きくすることにより、電界強度を増大させイオンの移動速度が速くなる。それに伴い気流の移動速度も速くなるため、強いイオン風201を発生させ、熱交換量の増大が可能になる。
【0059】
第2電圧印加部5によりホール電極11と電子放出素子4の薄膜電極9との間に電界を生じさせる第2電圧は、特に制限されないが、マイナスの電荷を持ったイオンを被熱交換体2に到達させる電圧であればよい。この電圧は、その下限は0Vよりも大きいことが好ましい。例えば、好ましくは10V以上であり、より好ましくは100V以上であり、特に好ましくは200V以上である。また、印加する電圧の上限も特に制限されない。実用上、後述するような電界強度の制限を考慮すると10kV以下であることが好ましく、より好ましくは1kV以下である。
【0060】
なお、第1電圧印加部5および第2電圧印加部10により印加される電圧は、定電圧の直流電圧に限らない。パルス状の電圧印加(パルス駆動)であってもよい。なお、パルス波形の電圧を用いた電子放出素子としては、例えば特開2011−119071に記載の構成が挙げられる。この明細書では、直流電圧印加の例を挙げて説明するが、パルス駆動その他の電圧印加を行ってもよい。
【0061】
また、ホール電極11と電子放出素子4の薄膜電極9との間の電界強度は、特に制限されないが、例えば1V/m以上であり、より好ましくは1kV/m以上である。電界強度を1kV/m以上にすることで、イオンが電場により加速され移動速度が大きくなるため、イオン風201の気流速度が増大し、高い熱交換効果を発揮する。また電界強度の上限は、オゾンの発生を防ぐために、107V/m以下であることが好ましく、より好ましく106V/mである。これによって、オゾンや窒素酸化物に代表される有害物質が発生しなくなる。
【0062】
図4は、第1実施形態に係るホール電極およびその変形例の構成を示す斜視図である。図4(a)に示すように、ホール電極11はイオン風201が通過するリング状の貫通孔11hを有する。なお、イオン風201が通過する貫通孔11hを有していれば、ホール電極11の形状はリング状に限られず、パンチングメタル状のホール電極11a、メッシュ状のホール電極11b、またそれ以外の形状であってよい。
【0063】
リング状のホール電極11は、被熱交換体2の発熱領域に合わせて、電子放出素子4または被熱交換体2に対して1つまたは複数個配置される。また、電極の大きさを変化させることで電界が変化し、イオン風201の生成に影響を及ぼす。例えば、リング状のホール電極11において、電子放出素子4の電子放出面である薄膜電極9のサイズよりもホール電極11のサイズを小さくすることで、薄膜電極9からホール電極11へ向かうにつれ電界を集中する不平等電界を形成することができる。イオン風201は電界の流れに沿って生成されることから、ホール電極11へ向かうにつれ集中した気流が生じ、被熱交換体2の表面において、強いイオン風201を生成し、効率よく被熱交換体2と熱交換することが可能となる。
【0064】
図4(a)に示すように、ホール電極がリング状の形状を有する場合、薄膜電極9のサイズよりもリング状のホール電極11のサイズ104を小さくすることで、薄膜電極9からホール電極11へ向かうほど集中する不平等電界が形成される。それゆえ、被熱交換体の単一の発熱領域にイオン風201を集中的に放出することができ、また、ホール電極11の電極部(金属部分)の面積が小さくイオン風201の流れを妨げないため、一層効率的な熱交換が可能となる。それゆえ、リング状のホール電極11は、単一の発熱領域に対して集中して熱交換を行う場合に特に有効である。
【0065】
一方、発熱領域が複数存在する場合、それに応じてリング状のホール電極11を複数個設置すると、リングの個数が増えるほど1つ1つの貫通孔11hに電界が集中しにくくなる。それゆえ、リング状のホール電極11の代わりに、図4(b)に示すようにパンチングメタル状のホール電極11aを設置することで、薄膜電極9とホール電極11aとの間の電界強度が一様にかかるため、リング状のホール電極11を複数個設置する場合と比較して、設置の手間が省け、また一層小さい印加電圧で高い熱交換効果が得られる。
【0066】
なお、パンチングメタル状の形状を有するホール電極11aを設置する場合、リング状のホール電極11と比較して電極部の面積が大きい分、被熱交換体2へのイオン風201の流れを妨げるため、熱交換効率がリング状のホール電極11と比較して小さくなる場合がある。したがって、イオン風201の妨げにならないように、電極部が蜂の巣状になっているなど、電極部の面積が極力小さい方が好ましい。
【0067】
発熱領域が多数存在する場合や発熱領域が一様に広がっている場合、それに応じてリング状のホール電極11のリング径を大きくすると、リングの中心部ほど薄膜電極9とリング状のホール電極11との間の電界強度が弱まるため、リングの中心部ほどイオン風201も弱まる。
それゆえ、リング状のホール電極11の代わりに、図4(c)に示すようにメッシュ状のホール電極11bを設置することで、薄膜電極9とホール電極11bとの間の電界強度が一様にかかるため、リング状のホール電極11を多数設置する場合と比較して、設置の手間が省け、また一層小さい印加電圧で高い熱交換効果が得られる。
【0068】
なお、メッシュ状の形状を有するホール電極11bを設置する場合、パンチングメタル状のホール電極11aと比較して電極部の面積が小さいため、イオン風201の流れが妨げにくくなる。しかしながら、メッシュの目開きが小さくなるのに伴い、メッシュの前後での圧力損失の増加やメッシュの目詰まりなどが発生する場合がある。その場合、メッシュの目開きや線径の最適化を行うことが好ましい。
【0069】
〔第2実施形態〕
次に、この発明の第2実施形態に係る熱交換装置1bについて、図5に基づいて説明すると以下の通りである。
なお、第2実施形態に係る熱交換装置1bの基本的な駆動概念は、第1実施形態に係る熱交換装置1と同様であるので、説明を省略する。また、第1実施形態に係る熱交換装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する(以下の実施形態についても同様)。
【0070】
図5に示すように、ホール電極11sは、薄膜電極9の電子放出面のサイズ103よりも小さいサイズ104を有する。それゆえ、ホール電極に向かうほど集中する不平等電界が形成され、電界に沿ってイオン風201を被熱交換体2に集中させることができるため、被熱交換体2の表面において強いイオン風201を生成することができ、効率的な熱交換が可能となる。
【0071】
〔変形例〕
次に、この発明の第2実施形態に係る熱交換装置の変形例1cについて、図6に基づいて説明すると以下の通りである。熱交換装置1cにおいて第2実施形態に係る熱交換装置1bと異なる点は、ヒートシンク3がさらに設けられている点である。
【0072】
図6に示すように、ホール電極11sに対向するようにヒートシンク3を被熱交換体2に接触させ、ホール電極11sに対向するヒートシンク3の放熱面22にホール電極11sからイオン風201を放出することによって、ヒートシンク3を介して間接的に被熱交換体2と熱交換を行う。
【0073】
ヒートシンク3は、イオン風201生成のための電界形成に直接関係しないため、ヒートシンク3のサイズ105は、薄膜電極9のサイズ103およびホール電極11sのサイズ104とは独立に設定可能である。また、薄膜電極9に対するホール電極11sの相対的な位置や傾き等を制御する制御部を設けることにより、ヒートシンク3上の任意の領域にイオン風201を集中して放出するように制御することができるため、高い熱交換効果を実現できる。
【0074】
なお、ヒートシンク3へ付着するイオン量が多い場合、ヒートシンク3がチャージアップしてしまうことがある。このような事態を避けるために、ヒートシンク3をアース6に接続することにより、ヒートシンク3のチャージアップを防ぐことが可能となる。また、ホール電極11sとヒートシンク3との間に高電位差がある場合、被熱交換体2の絶縁破壊を防止すべくヒートシンク3と被熱交換体2との間に絶縁物を挿入する構成であってもよい。
【0075】
〔第3実施形態〕
次に、この発明の第3実施形態に係る熱交換装置1dおよびその変形例1eについて、図7(A)〜(B)に基づいて説明すると以下の通りである。
【0076】
第3実施形態に係る熱交換装置1dにおいて、第2実施形態に係る熱交換装置1bと異なる点は、薄膜電極9とホール電極11sとの間の部分に絶縁性の第1フード14aを有している点である。図7(A)に示すように、第1フード14aは、薄膜電極9からホール電極11sに近づくに従って先細りになった内面を有するように構成され、第1フード14aに穿った孔を通して、若しくは第1フード14aに沿って配線された導線を用いて、第2電圧印加部5によりホール電極11sの金属部分へ電圧を印加する。第1フード14aに孔を穿った場合、イオン風201の流れが第1フード14aから漏れないようにするため、配線後は導線と孔との隙間を埋める。
【0077】
熱交換装置1dは、被熱交換体2において特に発熱量が大きい部分に集中的にイオン風201を当て、さらにイオン風201の拡散を防ぎ気流を集中させることで、効率よく被熱交換体2と熱交換することが可能となる。
【0078】
なお、第1フード14aは絶縁性の材料で構成されるため、誘電分極によるチャージアップが生じた場合、ホール電極11sと反対の極性(負極)に帯電する。これはイオン風201を構成する負イオンと同じ極性であり、第1フード14aとイオン風201との反発が生じる。
このように第1フード14aとイオン風201の反発が生じることで、第1フード14aの出口付近において粘性によるイオン風201の失速が緩和されることが予測され、より熱交換効率の高いイオン風201を被熱交換体2に送ることが可能となる。さらに第1フード14aは絶縁性材料で構成されているため電子放出素子4や被熱交換体2に接していてもよい。電子放出素子4や被熱交換体2に接することにより、イオン風201の拡散を抑制することができるため、一層効率的な熱交換が可能となる。
【0079】
〔変形例〕
次に、第3実施形態に係る熱交換装置の変形例1eについて、図7(B)を用いて説明する。
熱交換装置1eは、ホール電極11sと被熱交換体2との間に絶縁性の第2フード14bをさらに有する。図7(B)に示すように、第2フード14bは、第1フード14aとは対称的に、ホール電極11から被熱交換体2に近づくに従って末広がりになった内面を有するように構成され、ホール電極11sにおいて一部分がくびれた形状を有する。
【0080】
第2フード14bの末広がりになった内面に沿ってイオン風201を放出することにより、ホール電極11sを通り抜けた後、イオン風201の圧力が急速に解放されることによってイオン風201が必要以上に拡散し流速が遅くなることを抑制できるため、高い熱交換効果が可能となる。
【0081】
また、図7(C)に示すように、ホール電極11sと被熱交換体2との間に第3電圧印加部21を接続してもよい。第3電圧の印加により、ホール電極11sを介して、第2フード14bの末広がりになった内面に沿ってイオン風201を被熱交換体2へ向けて誘導することが可能となる。
【0082】
〔実施例〕
表1は、図7(B)に示すこの発明の第3実施形態に係る熱交換装置1eにおける冷却効果の検証実験の結果である。なお、この実験は実施の一例であって、この発明の内容を制限するものではない。
【0083】
【表1】

【0084】
この実施例では、薄膜電極9とホール電極11sとの間の電界強度を変化させたときの、被熱交換体2の冷却効果の検証を行った。具体的には、薄膜電極9とリング状のホール電極11sとの間に印加する電圧を第2電圧印加部5により50Vから1000Vの範囲で変化させ(第1電圧印加部10は30Vで一定)、また薄膜電極9とホール電極11sとの間の距離101を1cmから50cmまで変化させることにより、電界強度を0.1kV/mから100kV/mの範囲で変化させた。
【0085】
表1において、薄膜電極9とホール電極11sとの間の電界強度が0.1kV/mでは冷却効果の確認ができなかった。しかし、1kV/m以上の電界強度では冷却効果が確認でき、また50kV/m以上の電界強度では良好な冷却効果が確認された。
【0086】
〔第4実施形態〕
次に、この発明の第4実施形態に係る熱交換装置の電子放出素子4aについて、図8に基づいて説明すると以下の通りである。
【0087】
図8に示すように、電子放出素子4aは、可撓性(フレキシブル)を有することを特徴とする。電子放出素子4aは、フレキシブル基材19上に形成された基板薄膜電極20と、薄膜電極9と、それらの間に挟まれた電子加速層8とを備える。基板薄膜電極20と薄膜電極9とは、第1電圧印加部10に接続されている。電子放出素子4aは、基板薄膜電極20と薄膜電極9との間に第1電圧を印加することで、基板薄膜電極20で生成された電子を基板薄膜電極20と薄膜電極9との間(すなわち、電子加速層8)で加速し、薄膜電極9から電子を放出させる。
【0088】
このように、電子放出素子4aをフレキシブルな表面によって形成することにより、テレビのキャビネット部に熱交換機能を搭載することも可能であり、液晶テレビの薄型化とテレビの発熱部の熱交換とを同時に行うことができる。
【0089】
〔第5実施形態〕
次に、この発明の第5実施形態に係る熱交換装置1fについて、図9に基づいて説明すると以下の通りである。
【0090】
図9に示すように、第1ファン17aとエアフィルタ18とを併用してもよい。第1ファン17aは、エアフィルタ18とともに送風管15内に設置され、エアフィルタ18を介して空気流202aを薄膜電極9と被熱交換体2との間の空気中に送風する。空気流202aの送風方向は、イオン風201の送風方向を横切る方向である。エアフィルタ18は、空気流202a中のダストを捕集・濾過するフィルタである。このように、第1ファン17aとエアフィルタ18とを併用することで、薄膜電極9と被熱交換体2との間の部分の空気層を交換することができるため、効率よく被熱交換体2と熱交換することが可能となる。同時に、第1ファン17aにより供給された空気は、イオン風201発生のための空気の供給源となる。
【0091】
〔第6実施形態〕
次に、この発明の第6実施形態に係る熱交換装置1gについて、図10、図11に基づいて説明すると以下の通りである。
【0092】
熱交換装置1gは、複数の開口部16bを有する電子放出素子4bを用いる以外は、第1実施形態に係る熱交換装置1と同じ構造を有する。
熱交換装置1gは、図10に示すようにホール電極11に対向する複数の開口部16bを有する電子放出素子4bを備え、薄膜電極9bとホール電極11との間に生じたイオン風201をホール電極11に送りやすくするため、電極基板7の表面から開口部16bを介して空気流202bを吸い込み、薄膜電極9bと被熱交換体2の間の部分の空気層を交換する。
【0093】
図11は、複数の開口部16bからなるメッシュ構造16を有する電子放出素子4bを示す斜視図である。図11に示すように、電子放出素子4bの薄膜電極9bから放出された電子と空気中の空気分子との衝突により発生したイオン風201は、ホール電極11の貫通孔11hを通って被熱交換体2に到達する。一方、電子放出素子4b、複数の開口部16bを有しており、このようなイオン風201の流れによって、開口部16bを介して電極基板7の表面から空気流202bが吸い込まれる。このようにして開口部16bから吸い込まれた空気流202bは、開口部16bを通過した後、薄膜電極9の表面から放出され、薄膜電極9bと被熱交換体2の間の部分の空気を交換するだけでなく、イオン風201発生のための空気の供給源にもなる。
【0094】
〔第7実施形態〕
次に、第7実施形態に係る熱交換装置1hについて、図12を用いて説明する。
図12に示すように、電極基板7に接続した送風管15内に電極基板7に対向し電極基板7から薄膜電極9bの方向に開口部16bを通過する空気流を形成する第2ファン17bが設置されている。このように、第2ファン17bを用いることで、開口部16bを通して薄膜電極9bと被熱交換体2の間の部分の空気層を交換することができるため、効率よく被熱交換体2と熱交換することが可能となり、またイオン風201発生のための空気の供給源にもなる。さらに、イオン風201による気流速度が不十分である場合、すなわち、薄膜電極9bとホール電極11との間の電界が弱く、イオン風201が弱い場合であっても、空気流202bに乗ってイオン風201の風力が増加するため、熱交換効果を増大させることができる。
【0095】
〔第8実施形態〕
(この発明の熱交換装置の冷却装置としての利用について)
この発明の第1〜第7実施形態に係る熱交換装置は、冷却装置に適用できる。このような構成の加熱装置の用途としては、液晶テレビやノートパソコン、冷蔵庫等の生活家電のような用途が挙げられる。特に、ヒートシンクによらずにイオン風発生のための電界形成を行い、いかなるサイズや形状の冷却対象に対しても高い冷却性能が発揮されるため、装置の小型化が可能になる。ここでは、図5に示される熱交換装置1bを冷却装置として利用した実施形態について説明する。
【0096】
この発明の冷却装置の例としては、例えば、液晶テレビのキャビネット部に第2実施形態に係る熱交換装置1bを搭載する場合が挙げられる。この場合、被冷却体31としての液晶テレビの発熱部に接触させたヒートシンク3aの放熱面22に対向するように熱交換装置1bを設置して、ホール電極11sを介してイオン風201をヒートシンク3aに放出することによって、被冷却体31としての液晶テレビの発熱部とヒートシンク3aとの間で熱交換することで冷却可能となる。
【0097】
図13は、この発明の第8実施形態に係る冷却装置301の構成を示す断面図である。冷却装置301は、電極基板7と薄膜電極9とそれらの間に挟まれた電子加速層8とを有する電子放出素子4と、薄膜電極9から離れて薄膜電極9に対向し、少なくとも1つの貫通孔を有するホール電極11sと、ホール電極11sと被冷却体31との間に被冷却体31に接触し、ホール電極11sに対向する放熱面22に凹凸を有するヒートシンク3aとを備える。冷却装置301において、電子放出素子4は、薄膜電極9から空気中に電子を放出して、負イオンを生成し、第2電圧によって負イオンからなるイオン風201を生成する。イオン風201は、ホール電極11sの貫通孔を通過してヒートシンク3aの放熱面22へ放出され、被冷却体31を冷却する。
【0098】
このように、被冷却体31に放熱面22を有するヒートシンク3aを接触させて、ヒートシンク3aと被冷却体31との間で熱交換を行う構成とすることにより、ホール電極11sから放出されたイオン風201をヒートシンク3aの放熱面22に放出して、より多くの空気中の分子に対して熱を伝達することができるため、放熱効果が増大し、被冷却体31の冷却効果を向上できる。
【0099】
一方、従来のファンによる送風のみでは、被冷却体31表面の空気流の流速が0となり、最も熱を逃がしたい部分の空気が置換されず、冷却効率が悪い場合がある。しかしながら、イオン風201として送られる空気の中に負イオンのような荷電粒子が含まれていると、被熱冷却体31近傍に近づいたときにイオン風201が電気的な力によって被冷却体31の表面に引き寄せられるため、被冷却体31の表面近傍においてもイオン風201の流速が0とはならず、被冷却体31の表面近傍の空気を効率よく入れ替えることが可能となる。それゆえ、従来のファンによる送風と比べ、この発明に係る冷却装置301は、冷却効率が格段に上がる。
【0100】
冷却装置301は、ヒートシンク3aによらずにイオン風201生成のための電界形成を行うため、それによって形成された電界は、薄膜電極9のサイズ103とホール電極11sのサイズ104との相対的な関係によって決まるため、ヒートシンク3aのサイズ105によらず、薄膜電極9からホール電極11sに向かって集中する電界形成が可能となり、強いイオン風201を常に生成することができる。また、薄膜電極9に対するホール電極11sの相対的な位置や傾き等を制御する制御部を設けることにより、ヒートシンク3a上の任意の領域にイオン風201を集中して放出することができるため、発熱領域の変化に対応した効果的な冷却が可能となる。
【0101】
〔第9実施形態〕
(この発明の熱交換装置の加熱装置としての利用について)
この発明の第1〜第7実施形態に係る熱交換装置は、冷却装置だけでなく加熱装置にも適用できる。このような構成の加熱装置の用途としては、例えば、効率よく温風を発生するファンヒーターや、焼却炉で発生し廃熱となる高温気体を熱源として暖房に利用するような廃熱利用暖房システムのような用途が挙げられる。特に、ヒートシンクによらずイオン風発生のための電界形成を行い、いかなるサイズや形状の熱源を用いても高い加熱性能を発揮されるため、装置の小型化が可能になる。
【0102】
この発明の加熱装置の構成としては、例えば、効率よく熱風を発生させて低温体を加熱する構成(i)および高温の空気で低温の導電固体を加熱する構成(ii)が挙げられる。
【0103】
効率よく熱風を発生させて低温体を加熱する構成(I)の場合、この発明の第5実施形態に係る熱交換装置1fと同じ構成で、効率よく熱交換した高温の空気を送風して、加熱に利用することができる。すなわち、図9に示される熱交換装置1fにおいて、イオン風201により発熱部としての被熱交換体2の表面近傍の空気との間で熱交換を行うことで被熱交換体2を冷却する一方で、被熱交換体2の表面から熱が放出されるため、被熱交換体2の表面近傍の空気は高温になる。構成(i)は、この被熱交換体2の表面近傍の高温の空気を、第1ファン17aに対向する位置に設置された低温体に向けて送風することにより、低温体を効率よく加熱できる。
【0104】
一方、高温の空気で低温体を加熱する構成(ii)の場合、この発明の第6実施形態に係る熱交換装置1gと同じ構成を用いることができる。すなわち、図10に示される熱交換装置1gにおいて、例えば、焼却炉で発生し廃熱となる高温気体を熱源として、電極基板7の表面から高温の空気流202bを吸い込み、薄膜電極9と被熱交換体2との間に供給する。構成(ii)は、薄膜電極9とホール電極11との間に供給された高温の空気から生成された高温のイオン風201を、ホール電極11を介して、被熱交換体2としての低温体に送風することにより、低温体を効率よく加熱できる。このように、この発明の熱交換装置を加熱装置に利用すれば、ファンを用いることなく、非常に効率のよい廃熱利用暖房システムが実現可能となる。
【0105】
さらに、メッシュ状のホール電極11bそのものを熱源として利用することにより、狭いスペースで効率よく熱風を発生させて低温体を加熱することもできる。ここでは、第9実施形態に係る加熱装置302について、図14に基づいて説明する。
【0106】
図14は、この発明の第9実施形態に係る加熱装置の構成を示す断面図である。加熱装置302は、電子放出素子4と、薄膜電極9から離れて薄膜電極9に対向し、複数の貫通孔を有するメッシュ状のホール電極11bとを備える。ここで(図示しない)加熱部によりホール電極11bを被熱交換体2よりも高温に加熱し、複数の貫通孔11hにイオン風201を通過させることにより、高温のイオン風が生成される。このようにして生成された高温のイオン風201を被熱交換体2に放出し、被熱交換体2の表面近傍の空気との間で熱交換を行うことで、効率的に被熱交換体2を加熱できる。このように、この発明の熱交換装置を加熱装置に利用することにより、狭いスペースで効率の高い加熱装置が実現可能となる。
【0107】
また、薄膜電極9に対するホール電極11bの相対的な位置や傾き等を制御する制御部を設けることにより、被熱交換体2上の任意の領域に高温のイオン風201を集中して放出されるように制御することもできるため、効果的な加熱が可能となる。なお、ホール電極11bの形状はメッシュ状に限らず、イオン風201が貫通孔11hを通過することによりホール電極11bから熱を受容できるのであれば、どのような形状であってもよい。
【0108】
この発明は上述した各実施形態および変形例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についてもこの発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
この発明の熱交換装置は、電極間距離を狭くしても安定的にイオン風201を放出することが可能であるため、装置を小型化できる。また狭いスペースで効率的に冷却することが必要であり、かつファンの風切騒音を抑制することが必要な、液晶テレビ、ノートパソコン等の冷却装置や、効率よく温風を発生するファンヒーター、焼却炉で発生し廃熱となる高温気体を熱源として暖房に利用するような廃熱利用暖房システムのような用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0110】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,1h:熱交換装置
2:被熱交換体
3,3a:ヒートシンク
4,4a,4b:電子放出素子
5:第2電圧印加部
6:アース
7:電極基板
8:電子加速層
9,9b:薄膜電極
10:第1電圧印加部
11,11a,11b,11s:ホール電極
11h:貫通孔
12:絶縁体微粒子
13:導電体微粒子
14a:第1フード
14b:第2フード
15:送風管
16:メッシュ構造
16b:開口部
17a:第1ファン
17b:第2ファン
18:エアフィルタ
19:フレキシブル基材
20:基板薄膜電極
21:第3電圧印加部
22:放熱面
100:薄膜電極と被熱交換体またはヒートシンクとの間の距離
101:薄膜電極とホール電極との間の距離
102:ホール電極と被熱交換体またはヒートシンクとの間の距離
103:薄膜電極の電子放出面のサイズ
104,104a,104b:ホール電極のサイズ
105:ヒートシンクのサイズ
201:イオン風
202a,202b:空気流
301:冷却装置
302:加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極基板と薄膜電極とそれらの間に挟まれた電子加速層とを有する電子放出素子と、
前記薄膜電極から離れて前記薄膜電極に対向し、少なくとも1つの貫通孔を有するホール電極とを備え、
前記電子放出素子と前記ホール電極とを空気中に設置して、前記電極基板と前記薄膜電極との間に第1電圧を印加し、前記薄膜電極と前記ホール電極との間に第2電圧を印加したとき、
前記第1電圧によって、前記電極基板で生成された電子が前記電子加速層で加速されて前記薄膜電極から空気中に放出され負イオンを生成し、前記第2電圧によって前記負イオンを含むイオン風が生成されて前記貫通孔を通過して被熱交換体へ放出されるように構成された熱交換装置。
【請求項2】
前記ホール電極は、前記薄膜電極の電子放出面のサイズよりも小さいサイズを有するように構成された請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
前記ホール電極は、リング状、パンチングメタル状またはメッシュ状のいずれか1つの形状を有する請求項1または2に記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記薄膜電極と前記ホール電極との間に絶縁性の第1フードをさらに備え、
前記第1フードは、前記薄膜電極から前記ホール電極に近づくに従って先細りになった内面を有するように構成される請求項1ないし3のいずれか1つに記載の熱交換装置。
【請求項5】
前記ホール電極と前記被熱交換体との間に絶縁性の第2フードをさらに備え、
前記第2フードは、前記ホール電極から前記被熱交換体に近づくに従って末広がりになった内面を有するように構成される請求項4に記載の熱交換装置。
【請求項6】
前記薄膜電極および前記ホール電極間に発生する電界の電界強度は、1kV/m以上である請求項1ないし5のいずれか1つに記載の熱交換装置。
【請求項7】
前記薄膜電極と前記ホール電極との間の距離は、10μm〜50cmである請求項1ないし6のいずれか1つに記載の熱交換装置。
【請求項8】
前記電子加速層は、絶縁体微粒子とその隙間に点在する導電体微粒子から形成される請求項1ないし7のいずれか1つに記載の熱交換装置。
【請求項9】
前記絶縁体微粒子は、SiO2、Al23およびTiO2のうちの少なくとも1つか、または有機ポリマーを含む請求項8に記載の熱交換装置。
【請求項10】
前記絶縁体微粒子の平均径は、10〜1000nmである請求項8または9に記載の熱交換装置。
【請求項11】
前記薄膜電極は、金、炭素、ニッケル、チタン、タングステンおよびアルミニウムのうちの少なくとも1つを有する請求項1ないし10のいずれか1つに記載の熱交換装置。
【請求項12】
前記薄膜電極と前記被熱交換体との間に前記イオン風の方向を横切る方向に空気流を形成する第1ファンをさらに備えた請求項1ないし11のいずれか1つに記載の熱交換装置。
【請求項13】
前記電子放出素子は、前記電極基板の表面から前記薄膜電極の表面まで貫通して空気流を通す複数の開口部を有する請求項1ないし12のいずれか1つに記載の熱交換装置。
【請求項14】
前記電極基板に対向し前記電極基板から前記薄膜電極の方向に前記開口部を通過する空気流を形成する第2ファンをさらに備えた請求項13に記載の熱交換装置。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1つに記載の熱交換装置と、前記ホール電極に対向し前記被熱交換体に接触するヒートシンクとを備え、
前記ヒートシンクは、前記ホール電極に対向する放熱面に凹凸を有し、前記放熱面に前記ホール電極から前記イオン風が放出されるように構成された冷却装置。
【請求項16】
請求項1ないし14のいずれか1つに記載の熱交換装置と、前記ホール電極を前記被熱交換体よりも高温に加熱する加熱部とを備え、
前記加熱部によって加熱された前記ホール電極の貫通孔に前記イオン風を通過させることにより前記被熱交換体よりも高温のイオン風を生成し、前記高温のイオン風が前記被熱交換体に放出されるように構成された加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−77750(P2013−77750A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217647(P2011−217647)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】