説明

熱交換装置及びその使用

【課題】製作が容易であり且つ保守をそれほど必要としない熱交換装置を提供する。
【解決手段】本発明は、長手方向Lに沿って延びる下水管中に長手方向Lに沿って導入される熱交換壁付きの熱交換装置であって、‐下水に接触するよう設計された第1の壁部分を有し、‐第1の壁部分から間隔を置いて配置されていて、下水管に接触するよう設計された第2の壁部分を有し、第1の壁部分と第2の壁部分は、熱交換室が第1の壁部分と第2の壁部分との間に形成されるよう少なくとも幾つかの部分に関して互いに間隔を置いた状態で配置され、‐第1の壁部分と第2の壁部分を連結する第3の壁部分を有し、第3の壁部分は、少なくとも幾つかの部分が熱交換媒体を流通させることができる第1の供給ラインを形成し、熱交換室は、第1の連結領域を経て第1の供給ラインに流体結合され、‐第1の壁部分と第2の壁部分を連結する第4の壁部分を有し、第4の壁部分は、少なくとも幾つかの部分が熱交換媒体を流通させることができる第2の供給ラインを形成し、熱交換室は、第2の連結領域を経て第2の供給ラインに流体結合されていることを特徴とする熱交換装置に関する。本発明は更に、熱交換装置の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換装置及び熱交換器組立体を形成するための熱交換装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
後で下水管内に設置された熱交換装置による下水からのエネルギー回収は、先行技術において知られており、この場合、公知の熱交換装置は、複数個の要素から組み立てられ、それには、熱交換装置を製造するのに多大な組み立て労力が必要である。さらに、腐食しがちな複数の場所又は下水からの物質が熱交換装置上に堆積する場合のある複数の場所が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、製作が容易であり且つ保守をそれほど必要としない熱交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、独立形式の請求項の内容によって達成され、好ましい実施形態は、従属形式の請求項の内容である。
【0005】
熱交換装置
本発明の一観点は、長手方向Lに沿って延びる下水管中に長手方向Lに沿って導入される熱交換壁付きの熱交換装置であって、
‐下水に接触するよう設計された第1の壁部分を有し、
‐第1の壁部分から間隔を置いて配置されていて、下水管に接触するよう設計された第2の壁部分を有し、第1の壁部分と第2の壁部分は、熱交換室が第1の壁部分と第2の壁部分との間に形成されるよう少なくとも幾つかの部分に関して互いに間隔を置いた状態で配置され、
‐第1の壁部分と第2の壁部分を連結する第3の壁部分を有し、第3の壁部分は、少なくとも幾つかの部分が熱交換媒体を流通させることができる第1の供給ラインを形成し、
熱交換室は、第1の連結領域を経て第1の供給ラインに流体結合され、
‐第1の壁部分と第2の壁部分を連結する第4の壁部分を有し、第4の壁部分は、少なくとも幾つかの部分が熱交換媒体を流通させることができる第2の供給ラインを形成し、
熱交換室は、第2の連結領域を経て第2の供給ラインに流体結合されていることを特徴とする熱交換装置に関する。
【0006】
有利には、本発明の熱交換装置は、簡単に製造できる。というのは、第1及び第2の供給ラインは、熱交換壁によって、即ち、熱交換壁の第3及び第4の壁部分によって形成されるからである。かくして、供給ラインを熱交換装置の他の要素に連結するための追加の組み立て作業を軽減することができる。さらに有利には、本発明の熱交換装置は、材料を節約した仕方で、特にコンパクトに形成できると共に滑らかな表面を備えることができ、その結果、下水管内での組み立て作業中の外傷の恐れが軽減されると共に特に熱交換装置のクリーニングが容易になる。
【0007】
本発明の熱交換装置は、長手方向Lに沿って下水管中に導入可能であるように設計され、この場合、下水管は、実質的に長手方向Lに沿って延び、下水管内の下水は、実質的に長手方向Lに沿って流れる。下水管が円筒形断面を有する場合、長手方向Lは、筒体軸線に平行である。第1及び第2の供給ラインも又、実質的に長手方向Lに沿って延びる。
【0008】
さらに、本発明の熱交換装置は、下水が熱交換壁の第1の壁部分と接触関係をなし、即ち、少なくとも熱的接触関係をなすよう設計され、熱交換壁は、好ましくは、熱伝導性の硬質材料、特に耐食性ステンレス鋼で作られる。熱的接触は、下水から熱交換器壁への熱エネルギーの伝達又はその逆の関係を示している。熱的接触に加えて、この接触は、特に、下水による熱交換壁の直接的な湿潤を含む場合がある。
【0009】
特に剛性の第2の壁部分は、下水側とは反対側の熱交換装置の側部に設けられる。第2の壁部分は、第3及び第4の壁部分によって直接的に且つ/或いは間接的に第1の壁部分に連結される。第1の壁部分と第2の壁部分は、互いに間隔を置いた仕方で配置され、その結果、これらの間には熱交換室が形成されるようになっている。好ましくは、第1の壁部分と第2の壁部分との間の離隔距離は、約1mm〜約10mmであり、好ましくは約2mm〜約7mmであり、特に約5mmである。
【0010】
熱交換室には第1の連結領域及び第1の供給ラインを経て熱交換媒体(流体、例えば水)が装填されるのが良く、この熱交換室は、第2の連結領域及び第2の供給ラインを介して排水されるのが良い。すなわち、熱交換室は、第1及び第2の供給ラインによって外部に流体結合可能であり、これとは別に、外部に対して、特に下水に対して実質的に流体密又は水密である。
【0011】
本発明の目的上、「実質的に」という用語は、標的方向からのずれ又は偏差、特に、製造精度の範囲内且つ/或いは必要な精度の範囲内のずれ又は偏差を意味するのが良く、その結果、標的方向に関して存在するのと同様な作用効果が維持される。したがって、方向が示される場合、「実質的に」という用語は、標的方向から約20°以下、約10°以下、約5°以下、好ましくは約1°以下のずれを含む場合がある。「実質的に」という用語は、「同一」という用語を含み、即ち、「標的方向からのずれなし」という表現内容を含む。
【0012】
この場合、熱交換装置の断面形態は、これが問題の下水管の関連の断面に適合されるよう設計されていることが理解される。基礎排水溝を経て下水管の自由端部にさらす必要なく熱交換装置を下水管内に導入するため、個々の熱交換装置の寸法形状は熱交換装置を、下水管に設けられた導管マンホールを通り、次に下水管の長手方向Lに沿って又はその反対側で熱交換装置を端位置に至らせることができるようなものである。
【0013】
好ましくは、第3の壁部分及び第4の壁部分は、熱交換装置の互いに反対側の端領域に配置される。換言すると、第3の壁部分は、第4の壁部分から幅方向Bに沿って間隔を置いた仕方で配置され、幅方向Bは、長手方向Lに実質的に垂直である。有利には、次に、熱交換壁を鏡像対称関係をなして形成し、幅方向Bは、鏡面に垂直である。
【0014】
好ましくは、第3の壁部分及び/又は前記第4の壁部分は、実質的に、開口した筒体表面として形成される。筒体表面の円形断面を多角形断面で近似させても良いことが理解される。
【0015】
好ましくは、第1の連結領域は、第1の連結開口部を有し、第2の連結領域は、第2の連結開口部を有する。この場合、第1及び/又は第2の連結開口部は、円形、長円形、長方形、スロット状又は別の形態を有して良い。
【0016】
好ましくは、第1の連結開口部は、長手方向Lにおいて第2の連結開口部から間隔を置いた仕方で配置される。有利には、流路は、この配置構成により長く作られ、その結果、熱交換室を通って流れる熱交換媒体は、長い時間熱交換室内にとどまり、それにより下水との熱的接触が長期にわたるようになる。
【0017】
好ましくは、第1の連結領域は、複数個の第1の連結開口部を有し、第2の連結領域は、複数個の第2の連結開口部を有する。好ましくは、第1の連結開口部の各々は、第2の連結開口部の各々にそれぞれ、特に正確に1つずつ割り当てられている(関連づけられている)。
【0018】
好ましくは、第1の連結開口部の個数は、第2の連結開口部の個数に等しい。
【0019】
好ましくは、第1の連結開口部の各々は、長手方向Lに沿って、第2の連結開口部の各々からそれぞれ間隔を置いた仕方で配置される。それにより、熱交換媒体は、考えられる最も長い経路にわたり長手方向Lに沿って熱交換室を通って流れることができ、それにより、熱交換媒体が下水と熱的接触状態にある時間が長くなるので有利である。
【0020】
好ましくは、第1の壁部分及び/又は第2の壁部分は、実質的に、開口した筒体表面として形成される。
【0021】
好ましくは、第1の壁部分と第2の壁部分との間には少なくとも1つのスペーサ手段が配置される。
【0022】
好ましくは、少なくとも1つのスペーサ手段は、第1の連結開口部から第2の関連の連結開口部に流れた流体が長手方向Lに対して横方向に蛇行して流れるよう配置される。
【0023】
換言すると、好ましくは1つ又は2つ以上のウェブが流路を一層長くすると同時に熱交換室を安定化するために第1の壁部分と第2の壁部分との間で熱交換室内に互いに間隔を置いた仕方で配置されるのが良い。この場合、一方において、ウェブは、熱交換室内において第1の壁部分と第2の壁部分との間の所定の離隔距離を保証すると共にねじり剛性を高めるようスペーサ手段として機能し、その結果、有利には、熱交換壁の材料は、低い材料強度を備えることができるようになる。他方、ウェブは、シケイン(chicane)として機能し、その結果、第1の連結開口部から第2のこれと関連した連結開口部経路まで流路に沿って流れる熱交換媒体が幅方向Bに沿って、即ち、長手方向Lに対して横方向に蛇行して流れるようになる。
【0024】
好ましくは、第1の壁部分、第2の壁部分、第3の壁部分及び第4の壁部分は、互いに一体に形成される。特に、4つの壁部分は、金属板、例えばステンレス鋼板で作られる。好都合には、熱交換壁は、金属板を例えばCNC圧延機によって長手方向L回りに圧延し又は曲げることによって形成可能である。有利には、熱交換室及び供給ラインは、一プロセスステップで形成でき、個々の要素は、適当な相対位置で互いに既に連結されている。
【0025】
好ましくは、熱交換装置は、少なくとも1つの保護要素を更に有し、保護要素は、一方の端領域が熱交換壁に固定され、一方の端領域と反対側の端領域は、下水管に接触するよう設計される。
【0026】
保護要素は、好ましくは、水に対して不透過性のプレートとして形成され、従って、下水中に同伴されている固形物は、有利には、熱交換壁と下水管の内壁との間には集まらず、或いは、第3の供給ライン上に付着することがない。さらに好ましくは、保護要素は、篩分けプレート又は格子として形成されるのが良く、その結果、所定の最大粒径を持つ粒子は、篩分けプレート又は格子を通過することができないようになる。有利には、下水管内には下水のスペースが設けられ、下水中に同伴されている固形物は、このスペース内に集まることができない。特に好ましくは、保護要素は、耐食性材料、例えばステンレス鋼又はプラスチックで作られ、特に、その2つの互いに反対側の端部が例えば溶接により熱交換回路に固定される。
【0027】
好ましくは、熱交換装置は、第3の供給ラインを更に有する。第3の供給ラインは、チケルマン(Tichelmann)原理に従って熱交換媒体の循環を可能にするために必要である。第3の供給ラインは、好ましくは、例えば溶接、ねじ止め等によって熱交換壁に固定される。
【0028】
好ましくは、第3の供給ラインは、第3の壁部分又は第4の壁部分に設けられる。
【0029】
好ましくは、第3の供給ラインは、保護要素と熱交換壁との間に配置される。この場合、保護要素は、水に対して不透過性のプレートとして形成されるのが良く、それにより、保護要素は、有利には、下水中に同伴されている腐食性化学物質が第3の供給ラインを攻撃するのを阻止する。
【0030】
有利には、熱交換装置は、その端領域に、1つ又は2つ以上の別の熱交換装置の耐圧性且つ耐張力性連結を可能にする連結構造体を有する。熱交換装置、特に熱交換壁の端領域は、好ましくは、2つの同様な熱交換装置相互間の固定連結を達成するためにクランプ、プラグ及び/又はボルト止め又はねじ止め連結具を有するのが良い。
【0031】
好ましくは、熱交換装置の第1及び第2の供給ラインは、別の熱交換装置の第1及び第2の供給ラインにそれぞれ連結される。この場合、相互に連結された熱交換装置の第1及び第2の供給ラインは、前方送りライン又は前進管及び戻り送りライン又は戻り管の一セグメントを形成する。この場合、耐圧力性は、前方送りライン及び戻り送りライン中に生じている圧力が個々の熱交換装置相互間の連結部を弛めることができないよう設計されている。したがって、熱交換装置相互間の耐張力性は、修理又は交換を行う場合、例えば導管マンホールの方向において個々の相互連結熱交換装置を下水管内に引き込むことができる可能性が得られ、この場合、これらが互いに弛まないようにするために提供されると有利である。
【0032】
好ましくは、第1の供給ライン及び/又は第2の供給ライン及び/又は第3の供給ラインの端領域のところに受口及び/又は管継手が形成される。有利には、受口又は管継手によって、対応関係をなす供給ライン相互間の油圧連結部を一方において形成することができ、他方において、固定状態の機械的連結部を形成することができる。
【0033】
使用
本発明の一観点は、熱交換器組立体を形成するよう本発明の少なくとも1つの熱交換装置の使用であって、
‐後で、熱交換装置を既存の下水管中に導入し、
‐第1の供給ラインを前方送りラインに連結し、
‐第2の供給ラインを戻り送りラインに連結し、
‐前方送りライン及び戻り送りラインをヒートポンプに流体結合することを特徴とする使用に関する。
【0034】
好ましくは、剛性熱交換装置の長手方向又は幅方向広がりは、これをそれぞれの下水管の地上導管マンホールを通って導入することができるよう選択されるのが良い。導管マンホールの通常の正味の幅によれば、この場合、好ましくは、約80cm、特に好ましくは62.5cmの長手方向又は幅方向広がりを越えるべきではない。かくして、有利には、基礎排水溝を介して下水管への接近を行う必要なく、個々の熱交換装置を下水管中に後で導入する可能性が得られる。というのは、存在する多くの導管マンホールを通って個々の熱交換装置を下水管中に導入することができるからである。したがって、導管マンホール中に1つ又は2つ以上の熱交換装置を導入し、その後、これらを下水管中に布設することが容易に可能である。好ましくは、所用の効率を達成するため、複数個の個々の熱交換装置を下水管中に導入して互いに連結する。
【0035】
熱交換装置の外径が好ましくは、下水管の内径に一致しているので、熱交換装置は、直接、実質的に隙間なしで下水管の内壁に載る。熱交換装置を下水管内に固定位置で配置するため、更に好ましくは、熱交換装置と下水管の内壁との間の少なくとも幾つかの部分に接着剤が配置される。変形例として、1つ又は2つ以上或いは全ての熱交換装置を締結手段、例えばねじ、アンカ、クランプ連結部等によって下水管の内壁に固定しても良い。
【0036】
提案している熱交換装置の使用は、下水管に達するための掘り返しが通常可能ではない市街の中央領域では最適である。しかしながら、正確に言えば、市街中央領域には、熱交換装置を下水管中に導入することができるようにする十分に多くの導管マンホールが存在する。
【0037】
この場合、公知の仕方で、個々の熱交換装置の第1及び第2の供給ラインを前方送りライン及び戻り送りラインに連結して低温の熱交換媒体がヒートポンプから前方送りラインを経て上述の熱交換装置を通り、最終的に加熱状態で戻り送りラインを経てヒートポンプに戻って流れることができるようになっていることが理解される。熱交換室の形態並びに熱交換媒体の前方送り、戻り送り及び分配のためのライン(第3の供給ライン)の設計のため、熱交換装置の効率を最適化するためにチケルマン(Tichelmann)システムを採用することができれば有利である。
【0038】
本発明の観点の上述の説明は、それぞれの観点には限定されない。これとは異なり、それぞれの観点の説明は、類似的本発明の別の観点に当てはまる。特に、熱交換装置に関する説明は、その使用、熱交換器組立体及びその好ましい実施形態又は変形例に当てはまる。
【0039】
添付の図面に基づいて以下において本発明の好ましい実施形態を例示的に説明する。説明する実施形態の個々の要素は、それぞれの実施形態には限定されない。これとは異なり、実施形態の要素を恣意的に組み合わせることができ、それにより新たな実施形態を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】熱交換装置の好ましい実施形態の断面図である。
【図2】図1に示された断面の詳細図である。
【図3】2つの熱交換装置を互いに連結する連結構造体を示す図である。
【図4】熱交換器組立体の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、下水管5内に位置した熱交換装置3の断面図である。熱交換装置3は、第1の壁部分13、第2の壁部分15、第3の壁部分17及び第4の壁部分19を備えた熱交換壁11を有している。
【0042】
第2の壁部分15は、下水管5の内壁7に向くと共に少なくとも幾つかの部分が平らに内壁13に当接している。好ましくは、第2の壁部分15は、実質的に隙間なく下水管7の内壁7に当接するために幅方向Bに沿って所定の曲率半径Rを有している。残りの隙間には少なくとも幾つかの部分に関して接着剤が充填されるのが良い。接着剤は、熱交換装置3を地面から断熱するために熱絶縁性であるのが良い。変形例として、接着剤は、熱交換装置3によって地熱を追加的に用いるために熱絶縁性であっても良い。好ましくは、接着剤は、熱交換装置3の支持体としての役目を果たすことができる。さらに好ましくは、熱交換装置3は又、下水管5の内壁7に直接当接するのが良い。
【0043】
熱交換装置3の第1の壁部分13は、下水9に接触し、即ち、少なくとも幾つかの部分が下水9に熱的に接触し又は下水9によって湿潤されるよう設計されている。第1の壁部分13は、第2の壁部分15から間隔を置いた仕方で配置され、それにより、熱交換室21が第1の壁部分13と第2の壁部分15との間に形成されている。
【0044】
熱交換壁11の少なくとも第1の壁部分13は、硬質熱伝導性材料で作られており、従って、熱エネルギーの交換が第1の壁部分13を経て下水9と熱交換室21中の熱交換媒体23との間で起こるようになっている。
【0045】
下水9の熱エネルギーを熱交換媒体23に伝達してこれを利用するために、下水9と熱交換媒体23との間には温度勾配が存在しなければならない。換言すると、これら2つの間には熱平衡が存在してはならず、熱交換媒体23の温度は、下水9の温度よりも低くなければならない。この理由で、熱交換装置3の作動中、低温熱交換媒体23が前方送りライン25とも呼ばれている第1の供給ライン25から第1の連結領域29を経て熱交換室21内に連続的に供給される。熱交換室21内では、熱交換媒体23は、戻り送りライン27とも呼ぶことができる第2の供給ライン27中に加熱状態で第2の連結領域31を経て供給されるようにするために下水9の温度に応じて昇温する。熱エネルギーを戻り送りライン27を経て熱交換媒体23中に貯えられている熱エネルギーの消費者に輸送されるのが良い。
【0046】
図1に示されている実施形態では、第1の供給ライン25は、幾つかの部分に関して、即ち、第1の連結領域29を除き、熱交換壁11の第3の壁部分17によって形成され、第3の壁部分17は、第1の壁部分13と第2の壁部分15を互いに連結している。第3の壁部分17は、第1の連結領域29への移行領域を除き実質的に円筒形又は管状に形成され、第3の壁部分17は、第1の壁部分13及び第2の壁部分15への連続的連結部を有するために筒体形状又は管形状から逸れる必要がある。
【0047】
第1の供給ライン25との類推によって、第2の供給ライン27は、幅方向Bに関して反対側に位置した熱交換装置3の端部に形成されている。すなわち、第2の供給ライン27は、第2の連結領域31を除き、熱交換壁11の第4の壁部分19によって形成されている。この場合、第4の壁部分19は又、第1の壁部分13と第2の壁部分15を互いに連結し、その結果、4つの壁部分13,15,17,19が、長手方向L周りに周方向の閉じられた熱交換壁11を形成している。第3の壁部分17との類推により、第4の壁部分19も又、第2の連結領域31への移行領域を除き、円筒形又は管状に形成されている。
【0048】
好ましくは、熱交換壁11は、特に金属板、例えばステンレス鋼板から4つの壁部分13,15,17,19と一体に形成される。熱交換壁11は、金属板を圧延することにより又は長手方向Lに沿って曲げることにより形成されるのが良い。有利には、熱交換壁11の個々の部分の所用の曲率半径は、CNC圧延機を用いて金属板を圧延することにより寸法的に安定するよう形成されるのが良い。それにより、熱交換室21及び供給ライン25,27を一プロセスステップで形成することができ、この場合、個々の要素は、互いに対して適当な相対位置に既に存在している。
【0049】
第1の供給ライン25を熱交換室21に流体結合するため、第1の連結領域29は、少なくとも1つの第1の連結開口部33を有している。同様に、第2の連結領域31は、熱交換室21を第2の供給ライン27に流体結合するために少なくとも1つの第2の連結開口部35を有している。
【0050】
所望の流速及び予想温度勾配に応じて、第1の連結開口部33の数、第2の連結開口部35の数及び互いに対するこれらの幾何学的配置を選択するのが良い。
【0051】
好ましい実施形態では、第1の連結領域29は、第1の連結開口部33を1つしか備えておらず、第2の連結領域31は、第2の連結開口部35を1つしか備えていない。この場合、第1の連結開口部33と第2の連結開口部35は、好ましくは、長手方向Lにおいて互いに間隔を置いた仕方で配置される。流路は、この配置構成により長くなっており、その結果、熱交換媒体23は、長期間にわたり下水9と間接的熱的接触状態にある。熱交換室21内では、1つ又は2つ以上のウェブ(図示せず)が第1の壁部分13と第2の壁部分15との間で互いに間隔を置いた仕方で配置され又はこれらに連結されるのが良く、その目的は、流路を一段と長くすることにある。連結部は、好ましくは、溶接によって形成されるのが良い。この場合、一方において、ウェブは、熱交換室21内において第1の壁部分13と第2の壁部分15との間の離隔距離を定めるスペーサ手段として、他方、第1の連結開口部33から第2のこれと関連した連結開口部経路35まで実質的に長手方向Lに沿って流れる熱交換媒体23が幅方向Bに沿って、即ち、長手方向Lに対して横方向に蛇行して流れるようにシケインとして機能する。
【0052】
さらに好ましい実施形態では、第1の連結領域29は、複数個の第1の連結開口部33を有するのが良く、第2の連結領域31は、複数個の第2の連結開口部35を有するのが良い。好ましくは、第1の連結開口部33の各々は、第2の連結開口部35の各々にそれぞれ関連づけられている。特に好ましくは、第1の連結開口部33の個数は、第2の連結開口部35の個数に正確に一致する。さらに好ましくは、第1の連結開口部33の各々は、長手方向Lに沿って、第2の連結開口部35の各々からそれぞれ間隔を置いた仕方で配置される。上述したように、2つの連結開口部33,35相互間の流路は、1つ又は2つ以上のウェブ又はスペーサ(間隔保持)手段(図示せず)が第1の壁部分13と第2の壁部分15との間に互いに間隔を置いた仕方で配置され又はこれらに連結されているという点で延長されるのが良く、その結果、第1の連結開口部33から第2の対応の連結開口部35まで流れる熱交換媒体23は、幅方向Bに沿って蛇行して流れるようになっている。
【0053】
さらに、図1に示された熱交換装置3の実施形態は、2つの保護要素37を有している。保護要素37は、その端領域39aが例えば長手方向Lに沿って連続した溶接シームによって熱交換壁11に固定されている。特に、固定は、第3又は第4の壁部分17,19で行われるのが良い。固定された端領域と反対側の保護要素の自由端領域39bは、下水管5の内壁7に当接し、好ましくは、これに固定されるのが良い。好ましくは、保護要素37は、ランオフ(流出)面を形成し、その結果、有利には、下水中に同伴されている固体粒子は、熱交換壁11と下水管5の内壁7との間の狭い領域に集まることができないようになっている。好ましくは、保護要素37と熱交換壁11と内壁7との間には、第3の供給ライン41を配置することができる自由空間が形成されている。第3の供給ライン41は、チケルマン(Tichelmann)原理に従って熱交換媒体23の循環を可能にするのに必要であり、この場合、第3の供給ラインは、好ましくは、例えば溶接、ねじ止め等によって熱交換壁11に固定される。
【0054】
図2は、第1の壁部分13、第2の壁部分15及び第4の壁部分19を有する図1に示された熱交換装置3の詳細図である。この場合、第1の壁部分13と第2の壁部分15との間の距離は、実質的に一定であり、第1の壁部分13及び第2の壁部分15は、実質的に、筒体の部分表面として形成され、これら筒体部分表面の筒体軸線は、実質的に互いに一致している。換言すると、第1の壁部分13の曲率半径は、第2の壁部分15の曲率半径よりも小さく、曲率円の中心は、互いに一致している。有利には、個々の壁部分のこれら単純な幾何学的形態を、特に簡単な仕方で生じさせることができる。これらを生じさせるための製造労力の増大を必要とするのは連結領域29,31だけである。なお、図1に示されている特徴部と同一の図2の特徴部は、同一の参照符号で示されている。
【0055】
図3は、幾つかの熱交換装置を互いに連結して熱交換器組立体を形成することができるようにするために熱交換装置3への1つ又は2つ以上の別の熱交換装置の耐圧性且つ耐張力性の連結を可能にするための連結構造体43を示している。特に、第1の供給ライン25は、受口又はソケット45を有し、熱交換装置3の第1の供給ライン25を気密(耐圧性)且つ流体密状態で別の熱交換装置3の供給ラインの受口45に連結することができるようになっている。受口コネクタ47の代替手段として、熱交換装置3の受口45を気密(耐圧性)且つ流体密状態で別の熱交換装置3の相補受口(図示せず)に連結しても良いことは言うまでもない。確実な耐圧性連結部を得るために、受口45及び/又は受口コネクタ47及び/又は相補受口は、密封リング49を挿入することができる周方向凹部又は溝48を有するのが良い。同様に、第2の供給ライン27及び第3の供給ライン41も又、受口を有するのが良い。
【0056】
第3の壁部分17及び/又は第4の壁部分19が円筒形の形状又は管の形状から逸脱して耐圧性連結が保証されない場合、受口本体を第3の壁部分17により形成された第1の供給ライン25の端領域及び/又は第4の壁部分19により形成された第2の供給ライン27の端領域のところに配置されるのが良く、特に、溶接又は収縮によって固定されるのが良い。変形例として、受口45は、第1又は第2の供給ライン25,27の端領域の機械加工又は切断により形成されても良い。
【0057】
図4は、熱交換装置3が下水管5内に位置した状態の熱交換器組立体1の概略ブロック図である。前方送りライン51、戻り送りライン53及び第3の供給ライン又は分配ライン41が示されている。前方送りライン51は、第3の供給ライン41を経て第1の供給ライン25に連結されており、戻り送りライン53は、熱交換装置3の第2の供給ライン27に連結されている。好ましくは、前方送りライン51及び戻り送りライン53は、通常、地上に配置されていて、ヒートポンプ57を備えた熱交換器システム55に連結されるために、導管マンホール(図示せず)を通って下水管から引き出されている。
【0058】
熱交換媒体23は、チケルマン原理に従って対応のラインを通って送り進められる。この場合、低温熱交換媒体23は、ヒートポンプ57から第3の供給ライン41を経てヒートポンプ57から見て最も遠くに位置するラインシステムの箇所に送られ、ここから、前方送りライン51によって個々の熱交換装置3の第1の供給ライン25に分配される。次に、低温熱交換媒体23は、個々の熱交換装置3の熱交換室21を通って流れ、最終的に、加熱状態で第2の供給ライン27及び戻り送りライン53を経てヒートポンプ57に戻る。
【0059】
図4に示されているように、熱交換媒体23は、熱交換室21を通って蛇行して流れ、熱交換室21は、長方形スペーサ手段又はウェブ若しくはシケイン59によって熱交換媒体23の流路を延長している。
【符号の説明】
【0060】
1 熱交換器組立体
3 熱交換装置
5 下水管
7 内壁
9 下水
13 熱交換壁
15 第2の壁部分
17 第3の壁部分
19 第4の壁部分
21 熱交換室
23 熱交換媒体
25 第1の供給ライン
27 第2の供給ライン
29 第1の連結領域
31 第2の連結領域
33 第1の連結開口部
35 第2の連結開口部
37 保護要素
39a,39b 保護要素37の端領域
41 第3の供給ライン
43 連結構造体
45 受口又はソケット
47 受口コネクタ
48 溝
49 密封リング
51 前方送りライン
53 戻り送りライン
55 熱交換器システム
57 ヒートポンプ
59 ウェブ又はシケイン又はスペーサ手段
B 幅方向
L 長手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向Lに沿って延びる下水管(5)中に前記長手方向Lに沿って導入される熱交換壁(43)付きの熱交換装置(3)であって、
‐下水(9)に接触するよう設計された第1の壁部分(13)を有し、
‐前記第1の壁部分(13)から間隔を置いて配置されていて、前記下水管(5)に接触するよう設計された第2の壁部分(15)を有し、前記第1の壁部分(13)と前記第2の壁部分(15)は、熱交換室(21)が前記第1の壁部分(13)と前記第2の壁部分(15)との間に形成されるよう少なくとも幾つかの部分に関して互いに間隔を置いた状態で配置され、
‐前記第1の壁部分(13)と前記第2の壁部分(15)を連結する第3の壁部分(17)を有し、前記第3の壁部分は、少なくとも幾つかの部分が熱交換媒体(23)を流通させることができる第1の供給ライン(25)を形成し、
前記熱交換室(21)は、第1の連結領域(29)を経て前記第1の供給ライン(25)に流体結合され、
‐前記第1の壁部分(13)と前記第2の壁部分(15)を連結する第4の壁部分(19)を有し、前記第4の壁部分は、少なくとも幾つかの部分が熱交換媒体(23)を流通させることができる第2の供給ライン(27)を形成し、
前記熱交換室(21)は、第2の連結領域(31)を経て前記第2の供給ライン(27)に流体結合されている、熱交換装置。
【請求項2】
前記第3の壁部分(17)及び前記第4の壁部分(19)は、前記熱交換装置(3)の互いに反対側の端領域に配置されている、請求項1記載の熱交換装置(3)。
【請求項3】
前記第3の壁部分(17)及び/又は前記第4の壁部分(19)は、実質的に、開口した筒体表面として形成されている、請求項1又は2記載の熱交換装置(3)。
【請求項4】
前記第1の連結領域(29)は、第1の連結開口部(33)を有し、前記第2の連結領域(31)は、第2の連結開口部(35)を有する、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の熱交換装置(3)。
【請求項5】
前記第1の連結開口部(33)は、前記長手方向Lにおいて前記第2の連結開口部(35)から間隔を置いた仕方で配置されている、請求項4記載の熱交換装置(3)。
【請求項6】
前記第1の連結領域(29)は、複数個の第1の連結開口部(33)を有し、前記第2の連結領域(31)は、複数個の第2の連結開口部(35)を有する、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の熱交換装置(3)。
【請求項7】
前記第1の連結開口部(33)の個数は、前記第2の連結開口部(35)の個数に等しい、請求項6記載の熱交換装置(3)。
【請求項8】
前記第1の連結開口部(33)の各々は、前記長手方向Lに沿って、前記第2の連結開口部(35)の各々からそれぞれ間隔を置いた仕方で配置されている、請求項7記載の熱交換装置(3)。
【請求項9】
前記第1の壁部分(13)及び/又は前記第2の壁部分(15)は、実質的に、開口した筒体表面として形成されている、請求項1〜8のうちいずれか一に記載の熱交換装置(3)。
【請求項10】
前記第1の壁部分(13)と前記第2の壁部分(15)との間には少なくとも1つのスペーサ手段(59)が配置されている、請求項1〜9のうちいずれか一に記載の熱交換装置(3)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのスペーサ手段(59)は、前記第1の連結開口部(33)から前記第2の関連の連結開口部(35)に流れた流体が前記長手方向Lに対して横方向に蛇行して流れるよう配置されている、請求項10記載の熱交換装置(3)。
【請求項12】
前記第1の壁部分(13)、前記第2の壁部分(15)、前記第3の壁部分(17)及び前記第4の壁部分(19)は、互いに一体に形成されている、請求項1〜11のうちいずれか一に記載の熱交換装置(3)。
【請求項13】
少なくとも1つの保護要素(37)を更に有し、前記保護要素(37)は、一方の端領域(39a)が前記熱交換壁(11)に固定され、前記一方の端領域(39a)と反対側の端領域(39b)は、前記下水管(5)に接触するよう設計されている、請求項1〜12のうちいずれか一に記載の熱交換装置(3)。
【請求項14】
第3の供給ライン(41)を更に有する、請求項1〜13のうちいずれか一に記載の熱交換装置(3)。
【請求項15】
前記第3の供給ライン(41)は、前記第3の壁部分(17)又は前記第4の壁部分(19)に設けられている、請求項14記載の熱交換装置(3)。
【請求項16】
前記第3の供給ライン(41)は、前記保護要素(37)と前記熱交換壁(11)との間に配置されている、請求項14又は15記載の熱交換装置(3)。
【請求項17】
前記熱交換装置(3)は、その端領域に、1つ又は2つ以上の別の熱交換装置(3)の耐圧性且つ耐張力性連結を可能にする連結構造体(43)を有する、請求項1〜16のうちいずれか一に記載の熱交換装置(3)。
【請求項18】
前記第1の供給ライン(25)及び/又は前記第2の供給ライン(27)及び/又は前記第3の供給ライン(41)の端領域のところに受口(45)が形成されている、請求項1〜17のうちいずれか一に記載の熱交換装置(3)。
【請求項19】
熱交換器組立体(1)を形成するよう請求項1〜18のうちいずれか一に記載の少なくとも1つの熱交換装置(3)の使用であって、
‐後で、前記熱交換装置(3)を既存の下水管(5)中に導入し、
‐前記第1の供給ライン(25)を前方送りライン(51)に連結し、
‐前記第2の供給ライン(27)を戻り送りライン(53)に連結し、
‐前記前方送りライン(51)及び前記戻り送りライン(53)をヒートポンプ(57)に流体結合する、使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−500456(P2013−500456A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521988(P2012−521988)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004017
【国際公開番号】WO2011/012195
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(512022929)ウーリヒ カナルテクニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【Fターム(参考)】