説明

熱伝導性シリコーン接着剤組成物及び熱伝導性シリコーンエラストマー成形品

【課題】高熱伝導性シリコーンゴムを得るために、熱伝導性充填剤を多量に含有しても取扱性及び成形性がよく、かつ金属、ガラス、有機樹脂との良好な接着性を与える熱伝導性シリコーン接着剤組成物、及び該組成物を硬化させることにより得られるシリコーンエラストマー成形品を提供する。
【解決手段】25℃での粘度が100mPa・s以下であって、一分子中に珪素原子と結合する水素原子を2〜10個含有し、更にアルキレン基を介して珪素原子と結合するアルコキシ基及び/又はエポキシ基を少なくとも1個含有し、ポリシロキサンの重合度が15以下であり、かつポリシロキサンの骨格が環状構造を含む液状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有した熱伝導性シリコーン接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取扱性及び成形性がよく、熱エージングによっても硬さ変化が少なく、かつ金属、ガラス、有機樹脂に対して良好な接着性を与える熱伝導性シリコーン接着剤組成物、及び該熱伝導性シリコーン接着剤組成物を硬化して得られる熱伝導性シリコーンエラストマー成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パワートランジスタ、サイリスタ等の発熱性部品は、熱の発生により特性が低下するので、設置の際ヒートシンクを取り付けることにより熱を放散し、機器の金属製のシャーシに熱を逃がす対策が図られている。この時、電気絶縁性と熱伝導性を向上させるため発熱性部品とヒートシンクの間にシリコーンゴムに熱伝導性充填剤を配合した放熱絶縁性シートが用いられる。この放熱絶縁性材料としては、特開昭47−32400号公報(特許文献1)に、シリコーンゴム等の合成ゴム100重量部に酸化ベリリウム、酸化アルミニウム、水和酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛から選ばれる少なくとも1種以上の金属酸化物を100〜800重量部配合した絶縁性組成物が開示されている。
【0003】
また、絶縁性を必要としない場所に用いられる放熱材料として、特開昭56−100849号公報(特許文献2)には、付加硬化型シリコーンゴム組成物に、シリカ及び銀、金、珪素等の熱伝導性粉末を60〜500重量部配合した組成物が開示されている。しかし、これらの熱伝導性材料は熱伝導率が1.5W/m・K以下のものしか得られず、熱伝導性を向上させるため熱伝導性充填剤を多量に高充填すると流動性が低下し、成形加工性が非常に悪くなるという問題があった。
【0004】
そこで、これを解決する方法として特開平1−69661号公報(特許文献3)には、平均粒径5μm以下のアルミナ粒子10〜30重量%と、残部が単一粒子の平均粒径10μm以上でありかつカッティングエッジを有しない形状である球状コランダム粒子からなるアルミナを充填する高熱伝導性ゴム・プラスチック組成物が開示されている。また、特開平4−328163号公報(特許文献4)には、平均重合度6,000〜12,000のガム状のオルガノポリシロキサンと平均重合度200〜2,000のオイル状のオルガノポリシロキサンを併用したベースポリマーと該ベースポリマー成分100重量部当り、球状酸化アルミニウム粉末500〜1,200重量部を配合してなる熱伝導性シリコーンゴム組成物が開示されている。
【0005】
しかし、これらの方法を用いてもベースポリマー成分100質量部当り酸化アルミニウム粉末1,000質量部以上(酸化アルミニウム70体積%以上)の高充填を行うとすると、粒子の組み合わせ及びシリコーンベースの粘度調整だけでは成形加工性の向上には不十分である。そこで、成形加工性の向上を達成する手段として、特開2000−256558号公報(特許文献5)では、ウェッターとして加水分解性基含有メチルポリシロキサンを0.1〜50体積%含有してなる熱伝導性シリコーンゴム組成物が開示されている。この方法により、熱伝導性シリコーンゴム組成物の成形加工性の向上は図られたものの、基体との接着性は不十分であった。
【0006】
また、特開2008−239719号公報(特許文献6)では、熱エージングによる硬さ変化が小さいシリコーンエラストマーを与えるシリコーンエラストマー組成物が開示されているが、アルミニウム被着体への接着試験の記載はあるものの、有機樹脂への接着性が不十分な問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭47−32400号公報
【特許文献2】特開昭56−100849号公報
【特許文献3】特開平1−69661号公報
【特許文献4】特開平4−328163号公報
【特許文献5】特開2000−256558号公報
【特許文献6】特開2008−239719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高熱伝導性シリコーンゴムを得るために、熱伝導性充填剤を多量に含有しても取扱性及び成形性がよく、かつ金属、ガラス、有機樹脂との良好な接着性を与える熱伝導性シリコーン接着剤組成物、及び該組成物を硬化させることにより得られるシリコーンエラストマー成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、常温又は加熱することによって硬化し、かつ金属、ガラス、有機樹脂に自己接着性を与えるために、25℃での粘度が100mPa・s以下であって、一分子中に珪素原子と結合する水素原子を2〜10個含有し、更にアルキレン基を介して珪素原子と結合するアルコキシ基及び/又はエポキシ基を少なくとも1個含有し、ポリシロキサンの重合度が15以下であり、かつポリシロキサンの骨格が環状構造を含む液状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有した熱伝導性シリコーン接着剤組成物が、保存安定性に優れると共に、熱伝導性充填剤を多量に含有しても取扱性及び成形性がよく、かつ金属、ガラス、有機樹脂との接着性が良好な硬化物を与えることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記に示す熱伝導性シリコーン接着剤組成物及び熱伝導性シリコーンエラストマー成形品を提供する。
〔請求項1〕
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有し、25℃での粘度が0.05〜1,000Pa・sのオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)25℃での粘度が100mPa・s以下であって、一分子中に珪素原子と結合する水素原子を2〜10個含有し、かつアルキレン基を介して珪素原子と結合するアルコキシ基及び/又はエポキシ基を少なくとも1個含有し、ポリシロキサンの重合度が15以下であり、かつポリシロキサンの骨格が環状構造を含む液状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.01〜30質量部、
(C)熱伝導性充填剤:5〜4,000質量部、
(D)ヒドロシリル化反応用触媒:本組成物の硬化を促進する量
を含有してなり、かつ(A)成分のアルケニル基と(B)成分のSiH基とのモル比が、SiH基/アルケニル基=0.2〜5.0であることを特徴とする熱伝導性シリコーン接着剤組成物。
〔請求項2〕
更に、(E)下記一般式(1)で表されるシリル基を一分子中に少なくとも1個含有し、25℃での粘度が0.01〜30Pa・sであり、かつポリシロキサンの骨格が環状構造でないオルガノポリシロキサンを含有することを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物。
−SiR1a23-a (1)
(但し、R1は非置換又は置換の一価炭化水素基であり、R2は炭素数1〜8のアルコキシ基又はアシロキシ基であり、aは0、1又は2である。)
〔請求項3〕
(B)成分が、下記一般式
【化1】


(式中、Xはメトキシ基又はエトキシ基であり、nは2又は3であり、mは1〜6の整数である。)
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンから選ばれるものである請求項1又は2記載の接着剤組成物。
〔請求項4〕
(C)成分が、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、結晶性シリカ、酸化亜鉛、酸化珪素、炭化珪素、窒化珪素、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ベリリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、カーボンブラック、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、ステンレススチールの群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項記載の熱伝導性シリコーン接着剤組成物。
〔請求項5〕
請求項1〜4のいずれか1項記載の熱伝導性シリコーン接着剤組成物を硬化させて得られ、該硬化物の熱伝導率が0.5W/m・K以上である熱伝導性シリコーンエラストマー成形品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱伝導性シリコーン接着剤組成物は、金属、ガラス、有機樹脂に対して良好な接着性を有し、かつ熱エージングによる硬さ変化が少ない熱伝導性シリコーンエラストマー成形品を与えるので、例えば発熱素子を搭載した電子部品、振動や高温下に曝される車載用電子部品等に用いた場合には、電子部品の性能信頼性を確保することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳述すると、本発明の熱伝導性シリコーン接着剤組成物は、常温又は加熱することによって硬化し、かつ金属、ガラス、有機樹脂等に自己接着性を与えるために、一分子中に珪素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有し、更にアルキレン基を介して珪素原子と結合するアルコキシ基及び/又はエポキシ基を少なくとも1個含有し、25℃での粘度が100mPa・s以下である液状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、かつ液状オルガノハイドロジェンポリシロキサンの重合度が15以下で、珪素原子と結合する水素原子の数が10以下であり、かつポリシロキサンの骨格が環状構造を有する液状オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有することを特徴とするものである。
【0013】
この場合、本発明の熱伝導性シリコーン接着剤組成物としては、
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有し、25℃での粘度が0.05〜1,000Pa・sのオルガノポリシロキサン、
(B)25℃での粘度が100mPa・s以下であって、一分子中に珪素原子と結合する水素原子を2〜10個含有し、かつアルキレン基を介して珪素原子と結合するアルコキシ基及び/又はエポキシ基を少なくとも1個含有し、ポリシロキサンの重合度が15以下であり、かつポリシロキサンの骨格が環状構造を含む液状オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)熱伝導性充填剤、
(D)ヒドロシリル化反応用触媒
を含有してなるものである。
【0014】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、上記シリコーン接着剤組成物の主剤(ベースポリマー)であり、珪素原子に結合したアルケニル基を一分子中に平均して少なくとも2個、好ましくはそれぞれの分子につき少なくとも2個(通常2〜50個)、より好ましくは2〜20個程度含有し、25℃における粘度が0.05〜1,000Pa・sであり、より好ましくは0.1〜500Pa・sの範囲であるオルガノポリシロキサンである。なお、本発明において、粘度値は回転粘度計による測定値である(以下、同じ)。
【0015】
(A)成分の分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状構造、一部分岐を有する直鎖状構造、分岐鎖状構造、環状構造、分岐を有する環状構造が挙げられるが、通常、実質的に直鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましく、具体的には、分子鎖が主にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。また、(A)成分は単一のシロキサン単位からなる重合体であっても、2種以上のシロキサン単位からなる共重合体であってもよい。更に、(A)成分中の珪素原子に結合したアルケニル基の位置は特に制限されず、該アルケニル基は分子鎖末端の珪素原子及び分子鎖非末端(分子鎖途中)の珪素原子のどちらか一方にのみ結合していてもよいし、これら両者に結合していてもよい。
【0016】
(A)成分の25℃における粘度は、0.05〜1,000Pa・sであるが、好ましくは0.1〜500Pa・sである。上記粘度が低すぎると、得られる接着剤組成物の硬化物の物理的特性と接着性とが十分満足するものとなりにくい場合があり、上記粘度が高すぎると、得られる接着剤組成物は著しく流動性に欠けたものとなりやすく、作業性が劣ったものとなることがある。
【0017】
(A)成分としては、例えば、下記平均組成式(2)
3b4cSiO(4-b-c)/2 (2)
(式中、R3は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基を表し、R4は独立にアルケニル基を表し、bは、通常0.7〜2.2、好ましくは1.8〜2.1、より好ましくは1.95〜2.0の正数であり、cは、通常0.0001〜0.2、好ましくは0.0005〜0.1、より好ましくは0.01〜0.05の正数であり、但し、b+cは、通常0.8〜2.3、好ましくは1.9〜2.2、より好ましくは1.98〜2.05の正数である。)
で表され、珪素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個含有し、25℃における粘度が0.05〜1,000Pa・s、好ましくは0.1〜500Pa・sであるオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0018】
上記R3としては、例えば、炭素数1〜10の、脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基が挙げられる。該R3の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの炭化水素基中の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全てが塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;シアノ基等によって置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、フェニル基又はこれら両者の組み合わせが好ましい。R3がメチル基、フェニル基又はこれら両者の組み合わせである(A)成分は、合成が容易であり、化学的安定性が良好である。また、(A)成分として、特に耐溶剤性が良好なオルガノポリシロキサンを用いようとする場合には、R3は更にメチル基、フェニル基又はこれら両者の組み合わせと3,3,3−トリフルオロプロピル基との組み合わせであることが好ましい。
【0019】
上記R4としては、例えば、炭素数2〜8のアルケニル基が挙げられる。該R4の具体例としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。これらの中でもビニル基が好ましい。R4がビニル基である(A)成分は、合成が容易であり、化学的安定性が良好である。
【0020】
(A)成分の具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらのオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよく、また重合度の異なる1種又は2種以上を併用してもよい。
【0021】
(B)成分は、25℃での粘度が100mPa・s以下であって、一分子中に珪素原子と結合する水素原子を2〜10個、好ましくは2〜7個、特に好ましくは2〜4個含有し、更にアルキレン基を介して珪素原子と結合するアルコキシ基及び/又はエポキシ基を少なくとも1個、好ましくは、ケイ素原子と結合するアルコキシ基としては2〜12個、特に好ましくは2〜6個、エポキシ基としては、1〜4個、特に好ましくは1又は2個含有し、ポリシロキサンの重合度が15以下であり、かつポリシロキサンの骨格が環状構造を含む液状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、常温又は加熱することによって硬化し、更に金属、ガラス、有機樹脂等に自己接着性を与えるための架橋剤及び/又は接着付与剤として作用する。
【0022】
(B)成分の25℃における粘度は、100mPa・s以下であり、好ましくは1〜100mPa・sである。25℃における粘度が高すぎると接着性が不十分となることがある。
【0023】
(B)成分として、上記した構造を満足させるものであれば特に制限されないが、ポリシロキサンの重合度は4〜15、特に4〜8であることが好ましい。ポリシロキサンの重合度が15より大きいと接着性が不十分となることがある。また、ポリシロキサンの環状構造は、珪素原子数3〜8の環状構造が好ましく、特に珪素原子数4のものが好ましい。環状シロキサン構造を有しないと作業性、接着性、耐熱性が不十分となる。
なお、この重合度(又は分子中の珪素原子数)は、GC/MS(ガスクロマトグラフィ/質量分析法)分析、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析によるポリスチレン換算の数平均値等により求めることができる。
【0024】
アルコキシ基を有するものとして、具体的には、下記に示すオルガノハイドロジェンポリシロキサンを例示することができる。
【化2】


(式中、Xはメトキシ基又はエトキシ基であり、mは1〜6の整数、好ましくは1〜3の整数、特に好ましくは2又は3であり、nは2又は3である。)
【0025】
エポキシ基を有するものとして、具体的には、下記に示すオルガノハイドロジェンポリシロキサンを例示することができる。
【化3】


(式中、mは1〜6の整数、好ましくは1〜3の整数、特に好ましくは2又は3である。)
【0026】
(B)成分は、1種の成分のみを使用してもよいし、また2種以上の成分を併用してもよい。
【0027】
本発明において、(B)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01〜30質量部であり、特に0.1〜20質量部であることが好ましい。0.01質量部より少ないと実用に耐え得るだけの接着効果が得られず、30質量部より多いと耐熱後の硬化物の物理的特性が損なわれる。
【0028】
本発明においては、熱伝導性シリコーン接着剤組成物全体に含まれる脂肪族不飽和基1個に対して(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの珪素原子に結合した水素原子が0.2〜5個、特に0.4〜2個となる範囲で使用する。添加量が上記値に満たないと硬化が不十分であったり、また硬化しても硬化物の物理特性に劣り、上記値を超えると硬化が不十分であったり、また硬化しても硬化物の物理特性が耐熱後に変動する。
【0029】
(C)成分の熱伝導性充填剤は、本発明組成物の熱伝導性を高めるための成分であり、無機粉末及び/又は金属粉末であることが好ましく、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、結晶性シリカ、酸化亜鉛、酸化珪素、炭化珪素、窒化珪素、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ベリリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、カーボンブラック等から選択される無機粉末の1種以上、あるいはアルミニウム、金、銀、銅、鉄、ニッケル、ステンレススチール等から選択される金属粉末の1種以上を用いることができ、各種粉末を組み合わせて用いることもできる。
【0030】
(C)成分の平均粒径としては特に限定されないが、好ましくは50μm以下、通常0.1〜50μm、好ましくは0.2〜30μm、より好ましくは0.2〜20μmである。平均粒径が50μmを超えると外観や分散性が悪くなるおそれがあり、特に液状シリコーンゴムの場合、放置しておくと熱伝導性充填剤が沈降するおそれがある。また、0.1μmを下回ると充填性が著しく悪くなり、粘度が高くなるとともに取扱性が悪くなるおそれがある。なお、平均粒径は、例えば、レーザー光回折法による粒度分布測定における累積重量平均値(D50)、又はメジアン径等として求めることができる。
【0031】
また、熱伝導性充填剤の形状は、丸みを帯びた球状に近いものであることが好ましい。形状が丸みを帯びているものほど高充填しても粘度の上昇を抑えることができる。このような球状の安価な熱伝導性充填剤としては、昭和電工株式会社製の球状アルミナASシリーズ、株式会社アドマテックス製の高純度球状アルミナAOシリーズ等が挙げられる。更に、粒径の大きい熱伝導性充填剤粉末と粒径の小さい熱伝導性充填剤粉末を最密充填理論分布曲線に従う比率で組み合わせることが、充填効率の向上、低粘度化及び高熱伝導化のために好ましい。
【0032】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して5〜4,000質量部であり、好ましくは100〜3,500質量部であり、より好ましくは500〜3,000質量部であり、更に好ましくは1,000〜2,500質量部である。(C)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られるシリコーンゴムの熱伝導性が不十分となり、一方、上記範囲の上限を超えると、シリコーン接着剤組成物への配合が難しくなり、該組成物の粘度が高くなり、成形加工性が悪くなってしまう。
【0033】
(D)成分は、本発明組成物の硬化を促進するためのヒドロシリル化反応用触媒であり、白金族金属系触媒であることが好ましい。白金族金属系触媒としては、例えば白金系触媒、ロジウム系触媒、イリジウム系触媒、パラジウム系触媒、ルテニウム系触媒が例示でき、好ましくは白金系触媒である。このような(D)成分として、具体的には、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、四塩化白金、アルコール変性塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体、これらの白金系触媒を含むメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等の熱可塑性有機樹脂粉末等の白金系触媒;式:[Rh(O2CCH322、Rh(O2CCH33、Rh2(C81524、Rh(C5723、Rh(C572)(CO)2、Rh(CO)[Ph3P](C572)、RhX’3[(R52S]3、(R63P)2Rh(CO)X’、(R63P)2Rh(CO)H、Rh2X’24、HpRhq(En)rCls、又はRh[O(CO)R53-t(OH)tで表されるロジウム系触媒(式中、X’は水素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、Yはメチル基、エチル基等のアルキル基、CO、C814又は0.5C812であり、R5はアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基であり、R6はアルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、又はアリールオキシ基であり、Enはオレフィンであり、pは0又は1であり、qは1又は2であり、rは1〜4の整数であり、sは2、3又は4であり、tは0又は1である。);式:Ir(OOCCH33、Ir(C5723、[Ir(Z)(En)22、又は[Ir(Z)(Dien)]2で表されるイリジウム系触媒(式中、Zは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はアルコキシ基であり、Enはオレフィンであり、Dienはシクロオクタジエンである。)が例示できる。
【0034】
(D)成分の含有量は、シリコーン接着剤組成物の硬化有効量(硬化を促進する量)であれば特に限定されないが、(A)成分100万質量部に対して(D)成分中の金属原子が0.01〜1,000質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜500質量部である。
【0035】
また、本発明の組成物には、(E)下記一般式(1)で表されるシリル基を一分子中に少なくとも1個含有し、25℃での粘度が0.01〜30Pa・sであり、かつポリシロキサンの骨格が環状構造でないオルガノポリシロキサンを配合することが好ましい。(E)成分を配合することにより、(C)成分の熱伝導性充填剤を多量に配合しても、取扱性及び成形性がよく、かつ金属、ガラス及び有機樹脂に自己接着性を与えるという効果がより向上する。
−SiR1a23-a (1)
(但し、R1は非置換又は置換の一価炭化水素基であり、R2は炭素数1〜8のアルコキシ基又はアシロキシ基であり、aは0、1又は2、好ましくは0又は1、特に好ましくは0である。)
【0036】
(E)成分の分子構造は、骨格が環状構造でなければ特に限定されず、例えば、直鎖状構造、一部分岐を有する直鎖状構造、分岐鎖状構造が挙げられるが、通常、実質的に直鎖状のオルガノポリシロキサンであることが好ましく、具体的には、分子鎖が主にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、側鎖に式(1)で表されるシリル基が導入された直鎖状のジオルガノポリシロキサン、分子鎖片末端が式(1)で表されるシリル基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサン、特に好ましくは分子鎖両末端が式(1)で表されるシリル基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0037】
上記式(1)中のR1は、非置換又は置換の一価炭化水素基であり、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの炭化水素基中の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部が塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;シアノ基等によって置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、メチル基、フェニル基又はこれら両者の組み合わせが好ましい。上記オルガノポリシロキサンの置換基がメチル基、フェニル基又はこれら両者の組み合わせである(E)成分は、合成が容易であり、化学的安定性が良好である。また、(E)成分として特に耐溶剤性が良好なオルガノポリシロキサンを用いようとする場合には、更にメチル基、フェニル基又はこれら両者の組み合わせと3,3,3−トリフルオロプロピル基との組み合わせであることが好ましい。
【0039】
また、必要に応じて脂肪族不飽和結合を含有してもよく、例えば炭素数2〜8のアルケニル基を用いることができる。具体例としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基等が挙げられる。これらの中でも合成が容易であり、化学的安定性が良好であるビニル基が好ましい。
【0040】
上記式(1)中のR2は、炭素数1〜8のメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基又はアセトキシ基等のアシロキシ基であり、これらの中でも合成が容易であるメトキシ基、エトキシ基又はこれらの両者の組み合わせが好ましい。
【0041】
(E)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、上記式(1)以外の珪素原子の置換基としては、非置換又は置換の一価炭化水素基であり、上述したR1で説明したものと同様のものが挙げられる。これらの中でも、合成の面からメチル基、フェニル基、ビニル基、又はこれら2種又は3種の組み合わせが好ましい。
【0042】
(E)成分の25℃における粘度は0.01〜30Pa・sであり、好ましくは0.02〜10Pa・sである。上記粘度が低すぎると接着性向上効果が不十分となることがあり、高すぎると作業性が低下することがある。
【0043】
(E)成分の具体例としては、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメトキシメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメトキシビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメトキシビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメトキシビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメトキシビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメトキシビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジビニルメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖片末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン等が挙げられる。これらのオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよく、また重合度の異なる1種又は2種以上を併用してもよい。
【0044】
(E)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01〜100質量部の範囲が好ましく、0.1〜50質量部の範囲がより好ましく、1〜30質量部の範囲が更に好ましい。(E)成分の配合量が上記範囲の下限未満であると流動性が著しく劣る場合があり、上記範囲の上限を超えると目的とする機械的強度が得られない場合がある。
【0045】
更に、本発明のシリコーン接着剤組成物には、必要に応じて、本発明組成物を損なわない範囲で、硬さ調整剤として、(B)成分とは異なる一分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンなどの架橋剤、アセチレンアルコール系化合物、アルケニル基含有シロキサンオリゴマーなどの硬化遅延剤(硬化反応抑制剤)、酸化セリウムなどの耐熱向上剤、着色のために有機系、無機系の各種着色顔料などを適時混合してもよい。
【0046】
本発明のシリコーン接着剤組成物は、上記各成分を公知の方法によって均一に混合することにより調製できる。
【0047】
得られたシリコーン接着剤組成物は、常温又は加熱することにより硬化して熱伝導性シリコーンエラストマー成形品とすることができる。硬化条件は、成形物の形状や成形方法等により適宜選択すればよく、該組成物は、常温で硬化しても、加熱により硬化してもよい。本発明のシリコーン接着剤組成物を加熱により硬化させる場合は、60〜200℃、特に80〜180℃で1〜120分間、特に5〜60分間とすることが好ましい。また、必要に応じ、150〜230℃で10分〜4時間程度二次加硫をしてもよい。
【0048】
ここで、本発明のシリコーン接着剤組成物の成形方法は特に限定されないが、例えば厚さ2mmとなるように50μmのPETフィルム等の間に挟み込んで、150℃で60分間加熱することにより硬化させたり、同様な方法でプレス成形することもできる。
【0049】
本発明のシリコーン接着剤組成物は、アルミニウム、マグネシウム、鉄、ニッケル、銅等の金属、フロートガラス、強化ガラス等のガラス、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アクリル、エポキシ等の有機樹脂などに対して良好な接着性を与えるものである。
【0050】
本発明のシリコーン接着剤組成物の硬化物は特に限定はされないが、例えば細線加熱法(京都電子工業株式会社製の迅速熱伝導率計QTM−500)により測定した熱伝導率が0.5W/m・K以上、特に1.0〜6.0W/m・Kのものであることが好ましい。熱伝導率が上記値よりも小さいと、期待される放熱特性が得られない場合がある。
【実施例】
【0051】
以下、実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の特性は25℃における値である。
また、シリコーンエラストマーの硬さ、引張強さ、切断時伸び、引張せん断接着力、熱伝導率の測定及び熱エージング試験は次のようにして評価し、結果を表1に示した。
【0052】
[硬さの測定]
シリコーンエラストマー組成物を150℃で10分間プレス加硫し、更に150℃のオーブン中で50分間加熱した。得られた厚さ2mmのシリコーンエラストマーシートを3枚重ね、JIS K 6253に規定されるタイプAデュロメータにより硬さを測定した。
【0053】
[引張強さ、切断時伸びの測定]
シリコーンエラストマー組成物を150℃で10分間プレス加硫し、更に150℃のオーブン中で50分間加熱した。得られた厚さ2mmのシリコーンエラストマーシートの引張強さ、切断時伸びを、JIS K 6251に従って測定した。
【0054】
[引張せん断接着力の測定]
厚み1.0mmのアルミニウム(JIS H 4000 A1050P)板、厚み5.0mmのガラス板、及び厚み2.0mmのPPS(ポリフェニレンサルファイド、サスティールPPS GS−40、東ソー(株)製)板の間に、シリコーンエラストマー組成物を、厚さが2.0mm、接着面積が25mm×10mmとなるように挟み込んだ状態で、150℃で1時間加熱し、該組成物を硬化させて接着試験片を作製した。得られた試験片の引張せん断接着力を、JIS K 6850に従って測定した。
【0055】
[熱伝導率の測定]
シリコーンエラストマー組成物を150℃で10分間プレス硬化し、更に150℃のオーブン中で50分間オーブン加熱した。得られた50mm×100mm×20mmのシリコーンエラストマー硬化物の熱伝導率を、細線加熱法(ホットワイヤ法)により京都電子工業株式会社製の迅速熱伝導率計QTM−500により測定した。
【0056】
[熱エージング試験]
上記硬さの測定で得られたシリコーンエラストマーシートを150℃のオーブン中で168時間加熱したのち、硬さを前述の方法により測定した。硬さ変化率は次式により算出した。
硬さ変化率(%)=(HB−HA)/HA×100
HA:初期の硬さ
HB:熱エージング後の硬さ
【0057】
[実施例1]
特殊機化工業株式会社製のT.K.ハイビスミックスにより、粘度が400mPa・sである分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.185mol/100g)80.0質量部、平均粒径が11μmである丸み状アルミナ粉末(昭和電工株式会社製;AS−40)600.0質量部、下記式(i):
【化4】


で表されるジメチルシロキサン15.0質量部、粘度が900mPa・sである分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン5.0質量部を室温で15分混合し、更に−0.09MPa以下の減圧下、150℃で2時間熱処理混合してシリコーンベースを調製した。
【0058】
次に、冷却して室温になった上記ベースに、下記式(ii):
【化5】


で表されるハイドロジェンポリシロキサン2.0質量部、下記式(iii):
【化6】


で表されるハイドロジェンポリシロキサン0.35質量部(上記ベース中のジメチルポリシロキサンに含まれているビニル基1.0molに対して、本成分に含まれている珪素原子結合水素原子の合計量が1.0molとなる量)、及び硬化反応抑制剤として、エチニルシクロヘキサノール0.1質量部を混合し、最後に、白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(上記ベースコンパウンド中のジメチルポリシロキサン100万質量部に対して本触媒中の白金金属が30質量部となる量)0.2質量部を室温で15分混合してシリコーンエラストマー組成物を調製した。
【0059】
[実施例2]
実施例1において、平均粒径が11μmである丸み状アルミナ粉末(昭和電工株式会社製;AS−40)の配合量を800.0質量部とした以外は、同様にしてシリコーンエラストマー組成物を調製した。
【0060】
[実施例3]
実施例1において、平均粒径が11μmである丸み状アルミナ粉末(昭和電工株式会社製;AS−40)の配合量を400.0質量部とした以外は、同様にしてシリコーンエラストマー組成物を調製した。
【0061】
[実施例4]
実施例1において、シリコーンベースの調製を室温で15分混合し、更に−0.09MPa以下の減圧下、150℃で2時間混合する代わりに、−0.09MPa以下の減圧下、室温で2時間混合した以外は、同様にしてシリコーンエラストマー組成物を調製した。
【0062】
[実施例5]
実施例1において、下記式(ii):
【化7】


で表されるハイドロジェンポリシロキサンを用いず、下記式(iii):
【化8】


で表されるハイドロジェンポリシロキサンのみ(実施例1ベース中のジメチルポリシロキサンに含まれているビニル基1.0molに対して、本成分に含まれている珪素原子結合水素原子が1.0molとなる量)を用いた以外は、同様にしてシリコーンエラストマー組成物を調製した。
【0063】
[実施例6]
実施例1において、下記式(iii):
【化9】


で表されるハイドロジェンポリシロキサンを用いず、下記式(ii):
【化10】


で表されるハイドロジェンポリシロキサンのみ(実施例1ベース中のジメチルポリシロキサンに含まれているビニル基1.0molに対して、本成分に含まれている珪素原子結合水素原子が1.0molとなる量)を用いた以外は、同様にしてシリコーンエラストマー組成物を調製した。
【0064】
[比較例1]
実施例1において、下記式(ii):
【化11】


で表されるハイドロジェンポリシロキサン、並びに、下記式(iii):
【化12】


で表されるハイドロジェンポリシロキサンを用いず、粘度が5.0mPa・sであり、一分子中に平均3個の珪素原子結合水素原子を有する分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサンコポリマー(実施例1ベース中のジメチルポリシロキサンに含まれているビニル基1.0molに対して、本成分に含まれている珪素原子結合水素原子の合計量が1.0molとなる量)に置き換えた以外は、同様にしてシリコーンエラストマー組成物を調製した。
【0065】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有し、25℃での粘度が0.05〜1,000Pa・sのオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)25℃での粘度が100mPa・s以下であって、一分子中に珪素原子と結合する水素原子を2〜10個含有し、かつアルキレン基を介して珪素原子と結合するアルコキシ基及び/又はエポキシ基を少なくとも1個含有し、ポリシロキサンの重合度が15以下であり、かつポリシロキサンの骨格が環状構造を含む液状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.01〜30質量部、
(C)熱伝導性充填剤:5〜4,000質量部、
(D)ヒドロシリル化反応用触媒:本組成物の硬化を促進する量
を含有してなり、かつ(A)成分のアルケニル基と(B)成分のSiH基とのモル比が、SiH基/アルケニル基=0.2〜5.0であることを特徴とする熱伝導性シリコーン接着剤組成物。
【請求項2】
更に、(E)下記一般式(1)で表されるシリル基を一分子中に少なくとも1個含有し、25℃での粘度が0.01〜30Pa・sであり、かつポリシロキサンの骨格が環状構造でないオルガノポリシロキサンを含有することを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物。
−SiR1a23-a (1)
(但し、R1は非置換又は置換の一価炭化水素基であり、R2は炭素数1〜8のアルコキシ基又はアシロキシ基であり、aは0、1又は2である。)
【請求項3】
(B)成分が、下記一般式
【化1】


(式中、Xはメトキシ基又はエトキシ基であり、nは2又は3であり、mは1〜6の整数である。)
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンから選ばれるものである請求項1又は2記載の接着剤組成物。
【請求項4】
(C)成分が、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、結晶性シリカ、酸化亜鉛、酸化珪素、炭化珪素、窒化珪素、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ベリリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、カーボンブラック、金、銀、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、ステンレススチールの群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項記載の熱伝導性シリコーン接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の熱伝導性シリコーン接着剤組成物を硬化させて得られ、該硬化物の熱伝導率が0.5W/m・K以上である熱伝導性シリコーンエラストマー成形品。

【公開番号】特開2012−67153(P2012−67153A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211010(P2010−211010)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】