説明

熱伝導性シリコーン組成物及び熱伝導性シリコーン成形体

【課題】基材の長尺フィルム上に離型処理を施すことなくコーティングによる連続成形方法を用いて成形した場合に、内部添加離型剤の含有量が微量であるにもかかわらず、コーティング開始後時間が経ってから塗布されても剥離性が悪化しない成形体を与える熱伝導性シリコーン組成物及び該組成物の硬化物からなる熱伝導性シリコーン成形体を提供する。
【解決手段】a.有機基がアルケニル基及び非置換アルキル基のみからなるオルガノポリシロキサン、b.熱伝導性充填剤、c.オルガノハイドロジェンポリシロキサン、d.白金族金属系付加反応触媒、e.非置換アルキル基以外の非置換又は置換一価炭化水素基(変性基)を一定の変性率で有する脂肪族不飽和結合不含有オルガノポリシロキサン、並びにf.e成分中のものと同一種類の変性基をe成分での変性率未満の変性率で有する脂肪族不飽和結合不含有オルガノポリシロキサン、を含有する熱伝導性シリコーン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シリコーン組成物、及び該組成物の硬化物からなる熱伝導性シリコーン成形体に関し、特に発熱性電子部品の冷却のために、該電子部品とヒートシンク、回路基板などの熱放散部材との間に介装する熱伝達材料として有効な熱伝導性シリコーン組成物、及び該組成物の硬化物からなる熱伝導性シリコーン成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピューター、デジタルビデオディスク、携帯電話等の電子機器に使用されるCPU、ドライバIC、メモリー等のLSIチップは、高性能化・高速化・小型化・高集積化に伴い、それ自身が大量の熱を発生するようになった。その熱によるチップの温度上昇はチップの動作不良、破壊を引き起こす。そのため、動作中のチップの温度上昇を抑制するための熱放散方法及びそれに使用する熱放散部材が多く提案されている。
【0003】
従来、電子機器等においては、動作中のチップの温度上昇を抑えるために、アルミニウムや銅等の熱伝導率の高い金属板を用いたヒートシンクが使用されている。このヒートシンクは、そのチップが発生する熱を伝導し、その熱を外気との温度差によって表面から放出する。
【0004】
このとき、チップから発生する熱をヒートシンクに伝えるために、柔軟性を有する成形体やグリースをチップとヒートシンクとの間に介装させることで、該成形体又はグリースを介してチップからヒートシンクへの熱伝導の効率を向上させることができる。
【0005】
柔軟性を有する成形体はグリースに比べて取り扱い性に優れており、特に、熱伝導性シリコーンゴム等で形成された低硬度の熱伝導性成形体(即ち、熱伝導性シリコーンゴム成形体)は様々な分野に用いられている。成形体は軟らかければ軟らかいほど、チップ及びヒートシンクへの密着がよく、より良好な放熱特性を示す。成形体は多くの場合、シート形状で提供されている。
【0006】
このようなシート形状の成形体を製造する方法としては、金型等の冶具とプレス機を用いて熱伝導性材料を加熱硬化させて成形を行うプレス成形法と、長尺フィルム上に液状の熱伝導性材料を吐出しナイフコーターやコンマコーターなどを用いて一定厚さにコーティングした後に加熱などにより硬化させる連続成形法が挙げられる。
【0007】
比較的薄いシート形状の成形体を大量に成形する場合、バッチ処理となるプレス成形法よりも、コーティングによる連続成形法の方が効率が良い。そのため、成形コストはコーティングによる連続成形法で成形したほうがプレス成形法で成形した場合よりも有利となる。
【0008】
提供されるシート形状の成形体は、使用時には、成形するのに用いたフィルムから容易に剥離できる必要がある。剥離を容易にするための代表的な手法としては、フィルム上に界面活性剤などの離型剤を塗布する方法と、組成物中に架橋に取り込まれない無官能のポリマー成分を内部添加離型剤として添加する方法がある。
【0009】
フィルム上に界面活性剤などの離型剤を塗布して離型処理を施す場合、シート形状の成形体を成形するより前に、フィルム上に離型剤を塗布する工程が必要となり、コストアップとなってしまう。そのため、組成物中に内部添加離型剤を添加する手法がよく用いられている。
【0010】
内部添加離型剤としては、無官能のポリマー成分がよく用いられる。無官能のポリマー成分として、ベースポリマーであるオルガノシロキサンと完全に相溶するポリマーを用いた場合、離型効果を得るためには内部添加離型剤を多量に添加する必要があり、そのようにして得られたシート状成形体はオイルブリードを起こし易いという問題点がある。そのため、添加量が微量でも十分な離型効果を得るために、ベースポリマーであるオルガノポリシロキサンに溶解しない無官能のポリマーが好ましいとされている。
【0011】
ベースポリマーであるオルガノポリシロキサンに溶解しない無官能ポリマーを微量添加した液状組成物を長尺フィルム上に吐出し、連続的にコーティングした場合、コーティング開始時のシート状成形体では、基材の長尺フィルムとの剥離は良好である。しかし、コーティング成形をそのまま継続し、コーター手前の材料液貯め部分に長時間滞留した液状材料が基材の長尺フィルム上にコーティングされるようになると、成形されたシート状成形体と基材の長尺フィルムとの剥離が悪化し、最後にはシート状成形体が長尺フィルムに貼りついてしまうという問題点があった。
【特許文献1】特開2005−035264号公報
【特許文献2】特開2005−206733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題に鑑み、基材の長尺フィルム上に離型処理を施すことなくコーティングによる連続成形方法を用いて成形した場合に、内部添加離型剤の含有量が微量であるにもかかわらず、コーティング開始後時間が経ってから塗布されても剥離性が悪化しない成形体を与える熱伝導性シリコーン組成物および該組成物の硬化物からなる熱伝導性シリコーン成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち、本発明は、
(a)ケイ素原子に結合したアルケニル基を有し、その他のケイ素原子に結合した有機基は全て非置換のアルキル基であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(b)熱伝導性充填剤:200〜5,000質量部、
(c)ケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(a)成分中のアルケニル基1モル当たり、(c)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量が0.1〜5.0モルとなる量、
(d)白金族金属系付加反応触媒:有効量、
(e)非置換のアルキル基以外のケイ素原子に結合した非置換または置換の一価炭化水素基を一定の変性率で有し、ケイ素原子に結合した一価脂肪族不飽和炭化水素基を有さないオルガノポリシロキサン:0.1〜20質量部、および
(f)非置換のアルキル基以外のケイ素原子に結合した非置換または置換の一価炭化水素基であって(e)成分中に存在するものと同一種類の一価炭化水素基を(e)成分における変性率よりも低い変性率で有し、ケイ素原子に結合した一価脂肪族不飽和炭化水素基を有さないオルガノポリシロキサン:0.1〜20質量部
を含有する熱伝導性シリコーン組成物を提供する。
また、本発明は、該組成物の硬化物からなる熱伝導性シリコーン成形体を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、基材の長尺フィルム上に離型処理を施すことなくコーティングによる連続成形方法を用いて成形した場合に、内部添加離型剤の含有量が微量であるにもかかわらず、コーティング開始後時間が経ってから塗布されても剥離性が悪化しない成形体を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明において、粘度は25℃において回転粘度計により測定した値である。
【0016】
[(a)成分]
(a)成分は、ケイ素原子に結合したアルケニル基を有し、その他のケイ素原子に結合した有機基は全て非置換のアルキル基であるオルガノポリシロキサンである。(a)成分のオルガノポリシロキサンは、直鎖状でも環状でもよく、どちらの場合にもその分子内に分枝状の構造を含んでいてよいが、硬化物の機械的強度等の物性の点などから、通常は、実質的に直鎖状であることが好ましく、具体的には主鎖が主にジオルガノシロキサン単位からなる直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。前記アルケニル基の位置には特に制限はない。(a)成分が直鎖状の場合、該アルケニル基は分子鎖の末端および末端でない部分のどちらか一方にのみ存在していてもよいし、その両方に存在していてもよい。なお、直鎖状ジオルガノポリシロキサンの両末端はトリオルガノシロキシ基で封鎖されているのが通常である。(a)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。2種以上のオルガノポリシロキサンを併用する場合、それらの粘度は互いに異なっていてもよい。
【0017】
上記アルキル基としては、例えば、炭素原子数が好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10、更により好ましくは1〜6の非置換のアルキル基が挙げられる。上記アルキル基は、全てが同一であっても、異なっていてもよい。上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等の非置換のアルキル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素原子数1〜3の非置換のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。特に、上記アルキル基全体の80モル%以上がメチル基であることが好ましい。得られる組成物および成形体に耐溶剤性などの特殊な特性が要求されない限り、コスト、入手のしやすさ、化学的安定性、環境負荷などの理由により、上記アルキル基の全てについてメチル基が選ばれることが多い。
【0018】
上記アルケニル基としては、例えば、炭素原子数が好ましくは2〜8、より好ましくは2〜5のアルケニル基が挙げられる。上記アルケニル基は、全てが同一であっても、異なっていてもよい。上記アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられ、中でもビニル基、アリル基等の低級アルケニル基が好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0019】
(a)成分の具体例としては、下記一般式(1)〜(3):
X-Si(R1)2-[OSi(R1)2]a-[OSi(R1)(X)]b-X (1)
X-Si(R1)2-[OSi(R1)2]a-[OSi(R1)(X)]c-R1 (2)
R1-Si(R1)2-[OSi(R1)2]a-[OSi(R1)(X)]d-R1 (3)
(式中、Rは同一または異種の炭素原子数が好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10、更により好ましくは1〜6の非置換のアルキル基であり、Xは同一または異種の炭素原子数が好ましくは2〜8、より好ましくは2〜5のアルケニル基であり、aおよびbは0または正数であり、cおよびdは正数である)
で表されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0020】
上記Rとしては、例えば、上記において(a)成分中のケイ素原子に結合した非置換のアルキル基として具体的に例示した非置換のアルキル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素原子数1〜3の非置換のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。特に、Rの80モル%以上がメチル基であることが好ましい。また、Rは全てが同一であっても、異なっていてもよい。得られる組成物および成形体に耐溶剤性などの特殊な特性が要求されない限り、コスト、入手のしやすさ、化学的安定性、環境負荷などの理由により、全てのRについてメチル基が選ばれることが多い。
【0021】
上記Xとしては、例えば、上記において(a)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基として具体的に例示したアルケニル基が挙げられ、中でもビニル基、アリル基等の低級アルケニル基が好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0022】
上記aは0または正数であるが、好ましくは10≦a≦10,000を満たす正数であり、より好ましくは50≦a≦2,000を満たす正数であり、更により好ましくは100≦a≦1,000を満たす正数である。上記bは0または正数であるが、好ましくは0≦b/(a+b)≦0.5を満たす数であり、更により好ましくは0≦b/(a+b)≦0.1を満たす数である。上記cは正数であるが、好ましくは0<c/(a+c)≦0.5を満たす正数であり、更により好ましくは0<c/(a+c)≦0.1を満たす正数である。上記dは正数であるが、好ましくは0<d/(a+d)≦0.5を満たす正数であり、更により好ましくは0<d/(a+d)≦0.1を満たす正数である。
【0023】
[(b)成分]
(b)成分は熱伝導性充填剤である。(b)成分の平均粒径は、好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.5〜50μm、更により好ましくは0.5〜30μmである。なお、本発明において、平均粒径は、例えば、レーザー回折法等により体積基準の累積平均径として求めることができる。(b)成分の熱伝導性充填剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上の熱伝導性充填剤を混合して用いる場合、それらの平均粒径は異なっていてもよい。
【0024】
(b)成分としては、一般に熱伝導性充填剤とされる物質を用いることができ、その具体例としては、非磁性の銅、アルミニウム等の金属;アルミナ、シリカ、マグネシア、ベンガラ、ベリリア、チタニア、ジルコニア等の酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物;炭化ケイ素等の炭化物;人工ダイヤモンドなどが挙げられる。
【0025】
(b)成分の使用量は、(a)成分100質量部に対して、通常、200〜5,000質量部、好ましくは300〜1500質量部である。該使用量が多すぎると、得られる組成物は、作業性が悪くなりやすく、成形が困難となりやすい。該使用量が少なすぎると、所望の熱伝導性を有するシリコーン成形体を得にくい。
【0026】
[(c)成分]
(c)成分は、ケイ素原子に結合した水素原子(即ち、Si−H基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、好ましくはSi−H基を分子内に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、より好ましくはSi−H基を分子内に3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。(c)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状でも環状でもよく、どちらの場合にもその分子内に分枝状の構造を含んでいてよい。前記Si−H基の位置には特に制限はない。(c)成分が直鎖状の場合、該Si−H基は分子鎖の末端および末端でない部分のどちらか一方にのみ存在していてもよいし、その両方に存在していてもよい。(c)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
(c)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、ケイ素原子結合有機基としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含有しない非置換または置換の、炭素原子数が好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10、更により好ましくは1〜6の1価炭化水素基が挙げられる。上記ケイ素原子結合有機基は、全てが同一であっても、異なっていてもよい。上記ケイ素原子結合有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基;およびこれらの炭化水素基の一個以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の非置換または置換の炭素原子数1〜3のアルキル基およびフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基が好ましい。上記ケイ素原子結合有機基は、(a)成分のケイ素原子に結合した非置換のアルキル基と同一種類であることが望ましい。
【0028】
(c)成分の具体例としては、下記一般式(4)〜(6):
R2-Si(R2)2-[OSi(R2)2]e-[OSi(R2)(H)]f-OSi(R2)2-R2 (4)
R2-Si(R2)2-[OSi(R2)2]e-[OSi(R2)(H)]g-OSi(R2)2-H (5)
H-Si(R2)2-[OSi(R2)2]e-[OSi(R2)(H)]h-OSi(R2)2-H (6)
(式中、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一または異種の非置換もしくは置換の、炭素原子数が好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10、更により好ましくは1〜6の1価炭化水素基であり、e、gおよびhは0又は正数であり、fは正数である)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
【0029】
上記Rとしては、例えば、上記において(c)成分中のケイ素原子結合有機基として具体的に例示した1価炭化水素基が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の非置換または置換の炭素原子数1〜3のアルキル基およびフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基が好ましい。また、Rは全てが同一であっても、異なっていてもよい。RはRと同一種類であることが望ましい。
【0030】
上記eは0又は正数であるが、好ましくは0〜500の数であり、より好ましくは5〜100の正数である。上記fは正数であるが、好ましくは1〜100の正数であり、より好ましくは2〜50の正数である。上記gは0又は正数であるが、好ましくは0〜100の数であり、より好ましくは1〜50の正数である。上記hは0又は正数であるが、好ましくは0〜100の数であり、より好ましくは0〜50の数である。
【0031】
(c)成分の使用量は、(a)成分中のアルケニル基1モル当たり、(c)成分中のSi−H基の量が、通常、0.1〜5.0モルとなる量、好ましくは0.3〜3モルとなる量、より好ましくは0.5〜2モルとなる量である。(c)成分の使用量が上記下限未満では該組成物の硬化が不十分となりやすく、得られる硬化物を成形体として取り扱うことができない場合があり、該使用量が上記上限を超えると、該組成物の硬化物からなる成形体は、加熱成形時に発泡して成形体中にボイドができて、熱伝導性が悪化する場合がある。
【0032】
[(d)成分]
(d)成分の白金族金属系付加反応触媒は、(a)成分中のアルケニル基と、(c)成分中のSi−H基との付加反応(ヒドロシリル化反応)を促進させる作用を有する。(d)成分としては、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として周知の触媒が挙げられる。その具体例としては、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属;H2PtCl4・nH2O、H2PtCl6・nH2O、NaHPtCl6・nH2O、KHPtCl6・nH2O、Na2PtCl6・nH2O、K2PtCl4・nH2O、PtCl4・nH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・nH2O(式中、nは0〜6の整数であり、好ましくは0または6である)等の塩化白金、塩化白金酸および塩化白金酸塩、アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号参照)、塩化白金酸とオレフィンとの錯体(米国特許第3,159,601号、第3,159,662号、第3,775,452号参照);白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィン錯体;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸または塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサンとの錯体などが挙げられる。(d)成分の白金族金属系付加反応触媒は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
(d)成分の使用量は、白金族金属系付加反応触媒としての有効量でよいが、希望する硬化速度に応じて適宜増減することができる。具体的には、該使用量は、(a)成分に対して白金族金属に換算して質量基準で好ましくは0.1〜1000ppm、より好ましくは0.5〜200ppm、更により好ましくは1.0〜100ppmである。
【0034】
[(e)成分]
(e)成分は、非置換のアルキル基以外のケイ素原子に結合した非置換または置換の一価炭化水素基(以下、「非置換のアルキル基以外のケイ素原子に結合した非置換または置換の一価炭化水素基」を「変性基」という場合がある。)を一定の変性率で有し、ケイ素原子に結合した一価脂肪族不飽和炭化水素基(例えば、アルケニル基、アルキニル基等)を有さないオルガノポリシロキサンである。(e)成分は、(f)成分とともに、内部添加離型剤として用いられる。(e)成分のオルガノポリシロキサンは、直鎖状でも環状でもよく、どちらの場合にもその分子内に分枝状の構造を含んでいてよい。前記変性基の位置には特に制限はない。(e)成分が直鎖状の場合、該変性基は分子鎖の末端および末端でない部分のどちらか一方にのみ存在していてもよいし、その両方に存在していてもよい。(e)成分は、変性基を有するので、(a)成分とは均一に相溶しにくい。(e)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書において、「変性率」とは、オルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合した全有機基に対する変性基の割合をいう。
【0035】
(e)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、上記変性基としては、例えば、非置換のアルキル基以外の、脂肪族不飽和結合を含有しない非置換または置換の、炭素原子数が好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10、更により好ましくは1〜6の1価炭化水素基が挙げられる。上記変性基は、全てが同一であっても、異なっていてもよい。該変性基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基;これらの炭化水素基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロフェニル基、フルオロフェニル基;およびクロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等の置換アルキル基等が挙げられる。これらの中でも、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の置換アルキル基、及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基が好ましい。コスト、化学的安定性、環境負荷などの理由により非置換のフェニル基が変性基としてよく用いられる。(e)成分における変性率は、好ましくは5〜100モル%、より好ましくは7〜50モル%、更により好ましくは10〜25モル%である。
【0036】
(e)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、上記変性基以外のケイ素原子結合有機基としては、例えば、炭素原子数が好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10、更により好ましくは1〜6の非置換のアルキル基が挙げられる。上記アルキル基は、全てが同一であっても、異なっていてもよい。上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素原子数1〜3の非置換のアルキル基が好ましい。
【0037】
(e)成分の具体例としては、下記一般式(7):
R3-Si(R3)2-[OSi(R3)2]i-R3 (7)
(式中、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一または異種の非置換もしくは置換の、炭素原子数が好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10、更により好ましくは1〜6の1価炭化水素基であり、iは正数であり、ただし、Rの一部または全てが変性基である。)
で表されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。これらのオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記Rとしては、例えば、上記において(e)成分中の変性基として具体的に例示した1価炭化水素基および(e)成分中の非置換のアルキル基として具体的に例示したアルキル基が挙げられる。これらの中でも、変性基としてはクロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の置換アルキル基、及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基が好ましく、非置換のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素原子数1〜3の非置換のアルキル基が好ましい。変性基としては、コスト、化学的安定性、環境負荷などの理由により非置換のフェニル基がよく用いられる。全R中の変性基の割合は好ましくは5〜100モル%、より好ましくは7〜50モル%、更により好ましくは10〜25モル%である。
【0039】
(e)成分の粘度は、好ましくは1〜100,000mPa・s、より好ましくは10〜10,000mPa・s、さらにより好ましくは100〜5,000mPa・sである。
【0040】
(e)成分の使用量は、(a)成分100質量部に対して、通常、0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜15質量部、より好ましくは1〜10質量部である。該使用量が20質量部より多い場合、得られる組成物の成形後に大量のブリードが発生しやすい。該使用量が0.1質量部より少ない場合、所望の剥離性を得にくい。
【0041】
[(f)成分]
(f)成分は、非置換のアルキル基以外のケイ素原子に結合した非置換または置換の一価炭化水素基であって(e)成分中に存在するものと同一種類の一価炭化水素基、即ち、(e)成分中に存在するものと同一種類の変性基を(e)成分における変性率よりも低い変性率で有し、ケイ素原子に結合した一価脂肪族不飽和炭化水素基を有さないオルガノポリシロキサンである。(f)成分は、(e)成分とともに、内部添加離型剤として用いられる。(f)成分のオルガノポリシロキサンは、直鎖状でも環状でもよく、どちらの場合にもその分子内に分枝状の構造を含んでいてよい。前記変性基の位置には特に制限はない。(f)成分が直鎖状の場合、該変性基は分子鎖の末端および末端でない部分のどちらか一方にのみ存在していてもよいし、その両方に存在していてもよい。(f)成分は、変性基を有するので、(a)成分とは均一に相溶しにくい。ただし、(f)成分における変性率は(e)成分における変性率よりも低いので、(f)成分の(a)成分に対する相溶性は、(e)成分の(a)成分に対する相溶性よりも高い。(f)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0042】
(f)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、上記変性基としては、例えば、非置換のアルキル基以外の、脂肪族不飽和結合を含有しない非置換または置換の、炭素原子数が好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10、更により好ましくは1〜6の1価炭化水素基が挙げられる。上記変性基は、全てが同一であっても、異なっていてもよい。該変性基の具体例としては、上記において(e)成分中の変性基として具体的に例示した1価炭化水素基が挙げられる。これらの中でも、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の置換アルキル基、及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基が好ましい。コスト、化学的安定性、環境負荷などの理由により非置換のフェニル基が変性基としてよく用いられる。(f)成分における変性率は、好ましくは1〜20モル%、好ましくは1〜10モル%、より好ましくは1〜5モル%であり、ただし、(f)成分における変性率は(e)成分における変性率よりも低い。
【0043】
(e)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、上記変性基以外のケイ素原子結合有機基としては、例えば、炭素原子数が好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10、更により好ましくは1〜6の非置換のアルキル基が挙げられる。上記アルキル基は、全てが同一であっても、異なっていてもよい。上記アルキル基の具体例としては、例えば、上記において(e)成分中の非置換のアルキル基として具体的に例示したアルキル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素原子数1〜3の非置換のアルキル基が好ましい。
【0044】
(f)成分の具体例としては、下記一般式(8):
R4-Si(R4)2-[OSi(R4)2]j-R4 (8)
(式中、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一または異種の非置換もしくは置換の、炭素原子数が好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10、更により好ましくは1〜6の1価炭化水素基であり、jは正数であり、ただし、Rの一部は(e)成分中に存在するものと同一種類の変性基であり、かつ、(f)成分における変性率は(e)成分における変性率よりも低い。)
で表されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。これらのオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記Rとしては、例えば、上記において(e)成分中の変性基として具体的に例示した1価炭化水素基および(e)成分中の非置換のアルキル基として具体的に例示したアルキル基が挙げられる。これらの中でも、変性基としてはクロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の置換アルキル基、及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基が好ましく、非置換のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素原子数1〜3の非置換のアルキル基が好ましい。変性基としては、コスト、化学的安定性、環境負荷などの理由により非置換のフェニル基がよく用いられる。全R中の変性基の割合は好ましくは1〜20モル%、より好ましくは1〜10モル%、更により好ましくは1〜5モル%であり、ただし、(f)成分における変性率は(e)成分における変性率よりも低い。
【0046】
(f)成分の粘度は、好ましくは1〜100,000mPa・s、より好ましくは10〜10,000mPa・s、さらにより好ましくは100〜5,000mPa・sである。
【0047】
(f)成分の使用量は、(a)成分100質量部に対して、通常、0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜15質量部、より好ましくは1〜10質量部である。該使用量が20質量部より多い場合、得られる組成物の成形後に大量のブリードが発生しやすい。該使用量が0.1質量部より少ない場合、所望の剥離性を得にくい。
【0048】
[その他の成分]
本発明のシリコーン組成物には、これらの成分の他に、必要に応じて、例えば、熱伝導性充填剤の表面処理剤、硬化速度を調整するための反応抑制剤(例えば、エチニルシクロヘキサノール)、着色のための顔料・染料、難燃性付与剤等の、本発明組成物および成形体の機能を向上させるためのさまざまな添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0049】
[組成物の製造方法]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、上記成分を常法に準じて混合することにより製造することができる。
【0050】
[成形体の製造方法]
本発明の熱伝導性シリコーン成形体は、本発明の組成物を公知の方法により硬化・成形することにより製造することができる。該成形体の形状は特に制限されず、用途に応じて適宜選択することができるが、シート状が好ましい。該組成物をシート状に硬化・成形するためには、公知の付加反応硬化型シリコーンゴム組成物をシート状に硬化・成形する場合と同様の条件を採用することができる。該組成物は常温でもシート状に硬化・成形することは十分にできるが、必要に応じて加熱してもよい。上記の方法により、シートとして取り扱うことができる弾性の成形体が得られる。
【0051】
本発明のシリコーン組成物を連続成形法により長尺フィルム上にコーティングし、その後、常温で、または加熱せしめて硬化させることにより得られた成形体は、コーティング開始時に塗布された組成物に由来する部分とコーティング開始後しばらく経ってから塗布された組成物に由来する部分との間で比較して、剥離性における差異が小さく、良好な剥離性を示す。
【0052】
[用途]
本発明の熱伝導性シリコーン成形体は、例えば、電子部品の熱伝達材料として好適に用いることができる。これにより、該電子部品を効果的に冷却することができる。この場合、該成形体の形状は、上記のとおり、シート状とすることができる。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例および比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。なお、「Me」はメチル基を表す。
【0054】
[実施例1]
両末端がビニル基で封鎖され、25℃で600mPa・sの粘度を有するジメチルポリシロキサン100gと、4μmの平均粒径を有するアルミナ(商品名:AL−24、昭和電工(株)製)400gとを、品川式万能攪拌機((株)品川工業所製)に仕込み、60分間混合させて、均一な液状ベース500gを得た。この液状ベース500gに、メチルフェニルシリコーンオイルKF54(商品名、信越化学工業(株)製、フェニル基の含有量:全シロキサン単位に対してジフェニルシロキサン単位として25モル%)2.0gと、メチルフェニルシリコーンオイルKF50−300cs(商品名、信越化学工業(株)製、フェニル基の含有量:全シロキサン単位に対してジフェニルシロキサン単位として5モル%)2.0gと、塩化白金酸2質量%2−エチルヘキサノール溶液0.1gと、エチニルシクロヘキサノール−50質量%トルエン溶液0.2gとを添加して均一に混合した。更に下記一般式(9):
Me-Si(Me)2-[OSi(Me)2]27-[OSi(Me)(H)]2-OSi(Me)2-Me (9)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを16g添加し、均一に混合して、組成物aを得た。
【0055】
調製した組成物aを、(株)ヒラノテクシード製マルチコーターを用いて、PETフィルム上に厚さ0.5mmとなるように塗布した。すべての組成物aを塗布し終えるまで、組成物aの塗布を連続的に行った。塗布した組成物aを120℃で10分間加熱することにより硬化させて、シート状成形体をPETフィルム上で形成させた。
【0056】
[比較例1]
実施例1で得た液状ベース500gに、塩化白金酸2質量%2−エチルヘキサノール溶液0.1gとエチニルシクロヘキサノール−50質量%トルエン溶液0.2gとを添加して均一に混合した。更に実施例1で用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサンを16g添加し、均一に混合して、組成物bを得た。
【0057】
調製した組成物bを、実施例1と同様にして、PETフィルム上で硬化させて、シート状成形体をPETフィルム上で形成させた。
【0058】
[比較例2]
実施例1で得た液状ベース500gに、KF54 4.0gと、塩化白金酸2質量%2−エチルヘキサノール溶液0.1gと、エチニルシクロヘキサノール−50質量%トルエン溶液0.2gとを添加して均一に混合した。更に実施例1で用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサンを16g添加し、均一に混合して、組成物cを得た。
【0059】
調製した組成物cを、実施例1と同様にして、PETフィルム上で硬化させて、シート状成形体をPETフィルム上で形成させた。
【0060】
[比較例3]
実施例1で得た液状ベース500gに、KF50−300cs 4.0gと、塩化白金酸2質量%2−エチルヘキサノール溶液0.1gと、エチニルシクロヘキサノール−50質量%トルエン溶液0.2gとを添加して均一に混合した。更に実施例1で用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサンを16g添加し、均一に混合して、組成物dを得た。
【0061】
調製した組成物dを、実施例1と同様にして、PETフィルム上で硬化させて、シート状成形体をPETフィルム上で形成させた。
【0062】
[比較例4]
実施例1で得た液状ベース500gに、ジメチルシリコーンオイルKF96−300cs(商品名、信越化学工業(株)製)4.0gと、塩化白金酸2質量%2−エチルヘキサノール溶液0.1gと、エチニルシクロヘキサノール−50質量%トルエン溶液0.2gとを添加して均一に混合した。更に実施例1で用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサンを16g添加し、均一に混合して、組成物eを得た。
【0063】
調製した組成物eを、実施例1と同様にして、PETフィルム上で硬化させて、シート状成形体をPETフィルム上で形成させた。
【0064】
[比較例5]
実施例1で得た液状ベース500gに、KF96−300cs 50gと、塩化白金酸2質量%2−エチルヘキサノール溶液0.1gと、エチニルシクロヘキサノール−50質量%トルエン溶液0.2gとを添加して均一に混合した。更に実施例1で用いたオルガノハイドロジェンポリシロキサンを16g添加し、均一に混合して、組成物fを得た。
【0065】
調製した組成物fを、実施例1と同様にして、PETフィルム上で硬化させて、シート状成形体をPETフィルム上で形成させた。
【0066】
[比較例6]
界面活性剤(商品名:ママレモン、メーカー名:ライオン(株)、塗布量30mg/m)を表面に塗布したPETフィルムを用意した。比較例1で得た組成物bを、(株)ヒラノテクシード製マルチコーターを用いて、このPETフィルム上に厚さ0.5mmとなるように連続的に塗布し、120℃で10分間加熱することにより硬化させて、シート状成形体をPETフィルム上で形成させた。
【0067】
組成物a〜fにおける各成分の使用量を表1に示す。
【0068】
【表1】


塩化白金酸2質量%2−エチルヘキサノール溶液
**エチニルシクロヘキサノール−50質量%トルエン溶液
【0069】
[評価]
下記のとおりに、剥離性およびブリードを観察した。結果を表2に示す。なお、表中、「基材フィルムの前処理」とは、比較例6で行ったPETフィルム表面への界面活性剤の塗布をいう。
【0070】
<剥離性>
実施例1及び比較例1〜6にて形成させたシート状成形体をPETフィルムから剥離させて、該シート状成形体の状態を観察した。シート状成形体をPETフィルムから剥離させた際にシート状成形体が変形しなかった、または、変形が小さく、張力がない状態でシート状成形体の形状が復元した場合、剥離性は良好であると評価した(表2では「剥離良好」と示す)。シート状成形体をPETフィルムから剥離させた際にシートの変形が大きく、張力がない状態でもシートの形状が復元しなかった場合、剥離性は不良であると評価した(表2では「剥離重い」と示す)。シート状成形体をPETフィルムから剥離させようとしてもシート状成形体の一部または全部がPETフィルムに付着したままで剥離できなかった場合、剥離性は非常に不良であると評価した(表2では「貼付」と示す)。
【0071】
上記の評価は、組成物の連続的塗布の開始直後に塗布された組成物に由来するシート状成形体および組成物の連続的塗布の終了直前に塗布された組成物に由来するシート状成形体の両方について行った。結果は、表2において、それぞれ「剥離性(初期)」および「剥離性(終了直前)」という見出しを設けた欄に示した。
【0072】
<ブリード>
シート状成形体のブリードの有無を確認した。具体的には、実施例1及び比較例1〜6にて形成させたシート状成形体を室温で168時間放置した後、該シート状成形体表面を目視で観察することにより、ブリードの有無を確認した。質量が増加しなかった場合、ブリードはないと評価した(表2では「無し」と示す)。質量が増加した場合、ブリードはあると評価した(表2では「有り」と示す)。
【0073】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ケイ素原子に結合したアルケニル基を有し、その他のケイ素原子に結合した有機基は全て非置換のアルキル基であるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(b)熱伝導性充填剤:200〜5,000質量部、
(c)ケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(a)成分中のアルケニル基1モル当たり、(c)成分中のケイ素原子に結合した水素原子の量が0.1〜5.0モルとなる量、
(d)白金族金属系付加反応触媒:有効量、
(e)非置換のアルキル基以外のケイ素原子に結合した非置換または置換の一価炭化水素基を一定の変性率で有し、ケイ素原子に結合した一価脂肪族不飽和炭化水素基を有さないオルガノポリシロキサン:0.1〜20質量部、および
(f)非置換のアルキル基以外のケイ素原子に結合した非置換または置換の一価炭化水素基であって(e)成分中に存在するものと同一種類の一価炭化水素基を(e)成分における変性率よりも低い変性率で有し、ケイ素原子に結合した一価脂肪族不飽和炭化水素基を有さないオルガノポリシロキサン:0.1〜20質量部
を含有する熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項2】
(a)成分中の非置換のアルキル基がメチル基である請求項1に係る組成物。
【請求項3】
(b)成分の熱伝導性充填剤が、金属、酸化物、窒化物、炭化物及び人工ダイヤモンドからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に係る組成物。
【請求項4】
(e)成分中の非置換のアルキル基以外のケイ素原子に結合した非置換または置換の一価炭化水素基が、置換アルキル基ならびに非置換および置換のアリール基およびアラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか一項に係る組成物。
【請求項5】
(e)成分中の非置換のアルキル基以外のケイ素原子に結合した非置換または置換の一価炭化水素基が、炭素原子数1〜3の置換アルキル基ならびに非置換および置換のフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか一項に係る組成物。
【請求項6】
(e)成分中の非置換のアルキル基以外のケイ素原子に結合した非置換または置換の一価炭化水素基が、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基および非置換のフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか一項に係る組成物。
【請求項7】
(e)成分における変性率が5〜100モル%であり、(f)成分における変性率が1〜20モル%であり、ただし、(f)成分における変性率は(e)成分における変性率よりも低い請求項1〜6のいずれか一項に係る組成物。
【請求項8】
(e)成分における変性率が7〜50モル%であり、(f)成分における変性率が1〜10モル%であり、ただし、(f)成分における変性率は(e)成分における変性率よりも低い請求項1〜6のいずれか一項に係る組成物。
【請求項9】
(e)成分における変性率が10〜25モル%であり、(f)成分における変性率が1〜5モル%である請求項1〜6のいずれか一項に係る組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物の硬化物からなる熱伝導性シリコーン成形体。

【公開番号】特開2008−38102(P2008−38102A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217611(P2006−217611)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】