説明

熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置及び流動層の流動方法

【課題】
熱流体を送気させる流動層の壁面に接触する粒子の数量を増やし、これによって熱伝達を行う粒子が流動層に接触する機会及び接触している時間を適度に増大させ、熱伝効率の向上を図る流動層装置及び流動層の流動方法を提供する。
【解決手段】
本願に係る熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置は、加熱手段100と、この加熱手段により加熱される固体粒子70と、この固体粒子を搬送させるための気体を送る送気手段200と、該気体により搬送される該固体粒子70とこれを搬送する該気体の周囲に設けた外郭(ライザー部10)と、この外郭を重力方向に狭くなるように傾斜させて構成しさらにこの外郭に伝熱手段20−1を介在させて設けた及び/または該外郭内に伝熱手段20−2を傾斜させて設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば熱伝効率の向上を図る流動層装置及び流動層の流動方法に係り、特に熱流体を送気させる流動層が所定の傾斜を静的もしくは動的に持つことで、熱伝達を担う粒子が流動層の壁面に接触する量及び機会を増やし、熱伝効率の向上を図る流動装置及び流動層の流動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンその他燃焼機関から排出される熱を回収する技術として、流動層が注目されている。図8は、従来技術による流動層装置1を示す図であり、図9は、従来技術による循環式流動層装置2を示す図である。これらの図に示すように、流動層装置に係る流動層の壁面に伝熱面20−1或いは内部に伝熱面20−2を配置し、流動層内に固体粒子70を混入させ、粒子の存在により熱伝達率の向上を図ろうとしている。この場合、伝熱面における熱伝達率に対しては、壁面に沿って流動層内の固体粒子が流下する「ダウンフロー」(以下、「壁面下降流」ともいう。)と呼ばれる現象が支配的な効果を及ぼす。
【0003】
一方、コンパクトな熱交換システムとして、熱伝達率の向上が可能な固気混相流を用いた流動層の利用が実用化され、たとえば、下記特許文献1乃至2に記述されるような流動層装置の思想が開示されてきた。
【0004】
特許文献1は、流動層内の傾斜壁により固体粒子の浮上や拡散を抑制し、少ない設置面積でコンパクトに設備を構成し、燃焼効率を向上させる技術思想を開示している。しかし、特許文献1に開示される傾斜壁は、流動化媒体及び/又は未燃焼物からなる固体粒子の該流動層からの浮上を抑制するためのものであり、傾斜壁自体が熱交換と関係しているわけではない。
【0005】
特許文献2は、循環機能を持つ流動装置において、その下部及び上部にそれぞれ斜設された入側斜管及び出側斜管に係る横断面形状を矩形とし、かつ、矩形断面を所定の数値範囲とする技術思想を開示している。しかし、特許文献2に開示される入側斜管及び出側斜管は、予備還元炉の操業について効率性向上及び逆流ガス発生抑止をなそうとするものであり、斜管が熱交換と関係しているわけではない。
【0006】
特許文献3は、流動層乾燥機に係る乾燥室を下り勾配に傾斜させ乾燥物を自然に流動化させる技術思想を開示している。しかし、特許文献3に開示された思想では、粒子が流動化したとしても壁面に接触する機会を増やすことは困難であるため、ダウンフローから最適な熱伝達率が実現しているわけではない。
【特許文献1】特開平10−089649号公報
【特許文献2】特開平05−331516号公報
【特許文献3】特開平10−54525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、固気混相流を用いた流動層において、循環機能の有無に拘らず、粒子を用いて熱伝達率を向上させるという思想は、上記特許文献等を初め、種々開示されている。しかし、これらのいずれも、ダウンフローの原理を有効に活用しきれておらず、熱伝達を最適に行っていないと考えられる。
【0008】
すなわち、熱回収では、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されることで、熱伝達率を向上させることができるものと考えられるが、従来技術のように垂直な壁面だとこの接触時間が十分に確保されないことから、結果的に伝熱効率が最適なものになっていなかったものと推定される。
【0009】
本願は、こうした従来技術の問題点を解決するもので、熱流体を送気させる流動層において、壁面に接触する粒子の数量を増やし、これによって熱伝達を行う粒子が流動層に接触する機会及び接触している時間を適度に増大させ、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進される、熱伝効率の向上を図る流動層装置及び流動層の流動方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を達成するために、本願に係る熱伝達率を向上させる機能を備える流動層装置は、加熱手段と、この加熱手段により加熱される固体粒子と、この固体粒子を搬送させるための気体を送る送気手段と、前記気体により搬送される前記固体粒子及びこれを搬送する前記気体の周囲に設けた外郭と、この外郭を重力方向に狭くなるように傾斜させて構成しさらにこの外郭に伝熱手段を介在させて設けた及び/または前記外郭内に伝熱手段を傾斜させて設けたことを特徴とする。本発明では、外郭及び/もしくは伝熱手段を斜めにするという着想を単に着想にとどまらせることなく、後述の実験データによりその効果を実証し、しかも傾斜させた伝熱手段(たとえば伝熱板)の最適設置箇所を割り出したものである。
【0011】
ここで、加熱手段とは、物体の温度を上昇させるための加熱機能を果たす装置、機械、器具、システム等をいい、例えば、主位的には、主機(エンジンやボイラー等)の排熱(排気ガスから直接に、あるいは排熱回収熱交換器や排ガスエコノマイザーから得る。)、過給機の排熱(インタークーラー等から得る。)、或いは発電機の排熱等を再利用することによって実現されるものをいうが、従位的には、重油等の化石燃料燃焼を熱源とするもの、自然エネルギーを利用するもの、ヒートポンプ等によるものをいい、これら総てを含み、かつ、これらに限定されない概念である。また、船舶に係るエンジンからの排熱を回収する排熱回収熱交換器或いは排ガスエコノマイザーを用いるものであってもよい。
【0012】
固体粒子とは、熱を回収し、送気手段により外郭を流動するものであり、石灰石粒子(例えば、好適には、粒径:0.18〜0.35mm)、活性炭、生石灰及び酸化鉄を含み、伝熱効率が高いことが好ましい。さらに、固体粒子が脱硫効果を有し、脱硫作用を複数回繰り返し行うことができる多孔質、及び/或いは、脱硫効果が無くなってしまった固体粒子を都度交換できる仕組みがより好ましい。
【0013】
外郭とは、固体粒子が飛散しないようにするシェルを指し、本願ではここを傾斜させる構成を有している。外郭はたとえば、固体粒子及び固体粒子を搬送するための気体が通過或いは堆積する内部を形成するように板状物質で折曲もしくは湾曲させたものでもよく、具体的には、固体粒子を気体により上方へ搬送させるためのライザー部を含む。また、外郭の形状に限定はなく、筐体形、筐体斜形、円筒形、円柱形、斜円柱形、多角柱形、多角斜柱形、円錐形、円斜錐形、多角錐形、多角斜錐形を含む。
【0014】
送気手段とは、外郭内において固体粒子を搬送するための気体を供給する機能を備える機械、装置、器具を含む概念であり、ブロワーやタービン駆動のコンプレッサー、船舶に予め装備されている空気圧供給源、機関の排気ガスを加圧したもの等を含む。エンジンや過給器のように発熱と圧力発生を同時に行うものでもよい。なお、その送気量の変動が少ないものが好ましい。
【0015】
伝熱手段とは、温度の高い物体から低い物体へ効率的に熱を移動させる機能を備える機械、装置、器具を含み、例えば、スパイラル式熱交換器、プレート式熱交換器、二重菅式熱交換器、多重円菅式熱交換器、渦巻管式熱交換器、渦巻板式熱交換器、タンクコイル式熱交換器、タンクジャケット式熱交換器、直接接触液式熱交換器、その他の相変化も含めた熱交換器を含むが、これらに限定されることはない。外郭の壁面に介在させることができる寸法、形状及び重量であり、或いは、外郭の内部に設置することができる寸法、形状及び重量であることが好ましい。また、伝熱手段の材質に特に限定はないが、固体粒子との間の熱交換性能の高いものが好ましい。
【0016】
「この外郭を重力方向に狭くなるように傾斜させて構成する」とは、外郭がたとえば略多角柱形で形成されるとき、これを縦断面視した際の左側の側面(以下、「第一の側面」ともいう。)及び/または、右側の側面(以下、「第二の側面」ともいう。)と水平面とによって形成される外角が90°以下になるようにすること、或いは、外郭の下部に係る内角が90°以上になるような構造に形成すること、又はその両方を示す。なお、外角及び内角の値に限定はない。
【0017】
「外郭内に伝熱手段を傾斜させて設けた」とは、伝熱手段を、角度を持たせて(つまり、鉛直方向と並行とはならないように)付設したことを示し、角度の値及び傾斜の向きに限定はない。
【0018】
こうした構成を備えることにより、加熱手段により熱を持つ気体が排出され、固体粒子により気体の熱が回収され、送気手段により固体粒子が搬送されて外郭内を流動する。このとき外郭が重力方向に狭くなるように傾斜させるように構成されることで、外郭に介在或いは添設させた伝熱手段に沿って固体粒子を重力の作用により落下させることができる。また、外郭内に伝熱手段を傾斜させて設けることで、傾斜を持った伝熱手段に沿って固体粒子を落下させることができる。これらの落下の際に伝熱手段と固体粒子との接触が増加する。こうして、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるから、熱回収を向上させることになる。なお、伝熱手段の位置、大きさ、範囲及びその数に限定はない。
【0019】
また、本願に係る熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置は、前記外郭を重力方向に狭くなるように傾斜させて構成しさらにこの外郭に伝熱手段を介在させて設けた及び/または前記外郭内に伝熱手段を傾斜させて設けた構成は、少なくとも前記外郭の下部において採用したことを特徴とする。
【0020】
ここで、「外郭の下部」とは、外郭を上部、中央部及び下部として略三分割した場合の「下部」、或いは、外郭を上部及び下部として略二分割した場合の「下部」を示し、その範囲や寸法に限定はない。また、この分割については、二分割、三分割に限られることはなく、実質的に「下部」といえる箇所を実現するものであればよい。
【0021】
この場合に、固体粒子の形状、寸法又は重量その他の性質の差異によって最適な勾配が異なる。また、送気手段から供給される気体の圧力の差異により、固体粒子を搬送させるのに最適な勾配が異なる。こうした最適な勾配を持たせた上記構成を備えることで、固体粒子の性質や送気手段からの気体圧力の差異に影響されることなく一定以上のダウンフローによる固体粒子を、より多く伝熱手段に沿って落下させることができる。なお、伝熱手段の位置、大きさ及び範囲及びその数は、いわゆる下部の領域を逸脱しないものであれば限定はない。
【0022】
また、本願に係る熱伝達率を向上させる機能を備える流動層装置は、加熱手段と、この加熱手段により加熱される固体粒子と、この固体粒子を搬送させるための気体を送る送気手段と、前記気体により搬送される前記固体粒子及びこれを搬送する前記気体の周囲に設けた外郭と、この外郭を揺動させて構成しさらにこの外郭に伝熱手段を介在させて設けた及び/または前記外郭内に伝熱手段を揺動させて設けたことを特徴とする。
【0023】
ここで、「この外郭を揺動させて構成」するとは、外郭のみを揺動させる構成、流動層装置自体を揺動させる構成及び流動層装置が設置されている本体が揺動する構成(例えば、流動層装置が船舶に設置されている場合等)のうち少なくとも1つの構成を含み、複数の構成を組み合せてもよい。揺動の形態に限定はなく、周期動、上下動、回転動、摺動を含む。また、揺動を発生させる源にも限定はなく、船舶内の振動、浮体の揺れ、車両の揺れなどや、動力(電気、ガス、重油・軽油、自然エネルギー等によるものであってよい)によって意図的に発生させたものでもよい。なお、揺動の度合い(振幅や周期等)に限定はないが、揺動を発生させるために消費するエネルギー量は小さいほど好ましい。
【0024】
また、「外郭内に伝熱手段を揺動させて設けた」とは、伝熱手段自体を揺動させる構成であることを示す。揺動の形態に限定はなく、周期動、上下動、回転動、摺動を含む。また、揺動を発生させる源にも限定はなく、船舶内の振動、浮体の揺れ、車両の揺れなどや、動力(電気、ガス、重油・軽油、自然エネルギー等によるものであってよい)によって意図的に発生させたものでもよい。なお、揺動の度合い(振幅や周期等)に限定はないが、揺動を発生させるために消費するエネルギー量は小さいほど好ましい。
【0025】
こうした構成を備えることにより、加熱手段により熱を持つ気体が排出され、固体粒子によりこれらの気体に係る熱を回収し、送気手段により固体粒子を搬送して外郭内を流動させる。その際に、外郭が揺動するように構成されることで、外郭に介在する伝熱手段が揺動の都度傾斜を持つため、或いは、外郭内に伝熱手段を揺動させて設けることで伝熱手段が揺動の都度傾斜を持つため、伝熱手段に沿って落下する固体粒子と伝熱手段との接触の機会を増大させる。こうして、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるから、熱回収を向上させることになる。なお、伝熱手段の位置、大きさ、範囲及びその数に限定はない。
【0026】
また、本願に係る熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置は、前記外郭を揺動させて構成しさらにこの外郭に伝熱手段を介在させて設けた及び/または前記外郭内に伝熱手段を揺動させて設けた構成は、少なくとも前記外郭の下部において採用したことを特徴とする。
【0027】
この場合に、固体粒子の形状、寸法もしくは重量その他の性質の差異によって最適な勾配が異なる。また、送気手段から供給される気体の圧力の差異により、固体粒子を搬送させるのに最適な勾配が異なる。こうした最適な勾配を持たせた上記構成を備えることで、固体粒子の性質や送気手段からの気体圧力の差異に影響されることなく一定以上のダウンフローによる固体粒子を、より多く伝熱手段に沿って落下させ、これと熱交換を伴う接触の機会を増大させる。こうして、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるから、熱回収を向上させることになる。なお、伝熱手段の位置、大きさ、範囲及びその数は、いわゆる下部の領域を逸脱しないものであれば限定はない。
【0028】
また、本願に係る熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置は、前記気体の通過量を前記外郭の内断面積で除した空塔速度(m/s)を略1.0から略4.0の間に設定したことを特徴とする。
【0029】
この場合、固体粒子が外郭の上端まで浮上する程度の空塔速度を有することが好ましく、空塔速度を持たせるためのエネルギー消費量が少ないほどよいため、好適には略1.0〜略4.0が良く、さらに好適には2m/s〜3.6m/sとする。
【0030】
こうした構成を備えることにより、空塔速度が略1m/s〜略4m/sと、実験上流動層装置内での気体の浮上具合が最適化されるので、外郭の上端まで固体粒子を浮上させる作用を最適化することができる。
【0031】
また、本願に係る熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置は、前記外郭を閉ループ状に構成し、前記固体粒子を循環させたことを特徴とする。
【0032】
この場合、一例として、外郭のうち、少なくともライザー部、ダウンカマー部及びバルブが所定の配管及び継手その他連結機器もしくは素材で結合されて1つの閉じたループを形成し、固体粒子を循環させることができる流動層装置を構成する。
【0033】
ここで、ライザー部とは、固体粒子が気体に搬送され流動する原理を利用して熱伝達を行う機能を有するものであり、伝熱手段(例えば、壁面に介在させたり、内部に付設したりすることができる伝熱面や発熱板を含む。)をこれに介在もしくは添設させ或いは内包することができるものであってよい。なお、ライザー部の材質、形状及び寸法に限定はない。したがって、ライザー部を重力方向に狭くなるように傾斜させて構成したり、揺動させる構成であってもよい。
【0034】
ダウンカマー部とは、ライザー部を上昇し、ダウンフローしなかった固体粒子を所定の配管を介して回収し、ダウンカマー部の下端からバルブに搬送することができる機能を備えた装置、機械、器具を示し、内部の気体と固体粒子を回転させて気体と固体粒子とを分離し、固体粒子をダウンカマー部下端の中央に集約することができるサイクロン機能を有することが好ましい。なお、ダウンカマー部が伝熱手段(例えば、壁面に介在させたり、内部に付設したりすることができる伝熱面や発熱板を含む。)を備えてもよく、ダウンカマー部の材質、形状及び寸法に限定はない。したがって、ダウンカマー部を重力方向に狭くなるように傾斜させて構成したり、揺動させる構成であってもよい。
【0035】
バルブとは、ダウンカマー部から固体粒子群を回収し、固体粒子群が堆積することなく再びライザー部に搬送されることができる機能を備えた装置、機械、器具を示し、例えば、ループシールバルブ及びニューマチックバルブを含む。なお、バルブの材質、形状及び寸法に限定はない。
【0036】
こうした構成を備えることにより、ライザー部にてダウンフローしなかった固体粒子をダウンカマー部により回収し、ダウンカマー部ではサイクロン機能により固体粒子群を集約してバルブに搬送し、バルブに堆積した固体粒子群を液体のように流動化させることにより、ライザー部を流動させる固体粒子が不足することなく、一度熱回収に利用した固体粒子を再利用して循環させることができる。
【0037】
また、本願に係る熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置は、前記固体粒子が前記気体によって上方に搬送される前記外郭のライザー部において、このライザー部を重力方向に狭くなるように構成しさらにこのライザー部に伝熱手段を介在させて設けた及び/または前記ライザー部内に前記伝熱手段を傾斜させて設けたことを特徴とする。
【0038】
こうした構成を備えることにより、外郭のライザー部を、断面視で第一の側面及び/または第二の側面と水平面とによって形成される外角が90°未満にし、或いは、ライザー部の下部に係る内角が90°を超える角度になるような構造に形成し、又はその両方により、ダウンフローによる固体粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるから、熱回収率を向上させることになる。
【0039】
また、本願に係る熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置は、前記固体粒子が前記気体によって下方に搬送される前記外郭のダウンカマー部において、このダウンカマー部を重力方向に狭くなるように構成しさらにこのダウンカマー部に伝熱手段を介在させて設けた及び/または前記ダウンカマー部内に伝熱手段を傾斜させて設けたことを特徴とする。
【0040】
こうした構成を備えることにより、外郭のダウンカマー部を、断面視で第一の側面及び/または第二の側面と水平面とによって形成される外角が90°未満にし、或いは、ダウンカマー部の下部に係る内角が90°を超える角度になるような構造に形成し、又はその両方により、ダウンカマー部に設置した伝熱手段に、サイクロン機能により回転して落下する固体粒子をより多く接触させて、固体粒子と伝熱手段との熱交換の機会を増大させる。こうして、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるから、熱回収を向上させることになる。
【0041】
また、本願に係る熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置は、前記加熱手段及び前記送気手段として船舶の主機関から排気される背圧のかかった排気ガスを用い、前記伝熱手段で前記排気ガスからの排熱回収を行ったことを特徴とする。
【0042】
ここで、船舶の主機関とは、ディーゼルエンジンその他船舶に係る駆動機関や熱エネルギーが発生する装置を含むが、排気ガスを供出するあらゆる機関、機構、装置、システムであってもよい。
【0043】
こうした構成を備えることにより、本願に係る流動層装置を船舶に搭載することで、船舶から排出される熱を持った有圧の排気ガスを流動層装置に送気し、排気ガスによって固体粒子は搬送されて流動し、その過程で外郭のライザー部及び/またはダウンカマー部に係る傾斜を静的もしくは動的に備えた伝熱手段に接触して、より向上された熱交換を行うので、効率の良い熱伝達を行うことができる。
【0044】
また、本願に係る熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置は、前記固体粒子として脱硫剤を用い、前記排気ガス中の硫黄成分の除去も行ったことを特徴とする。
【0045】
加熱手段により発生する排気ガスの中には、硫黄成分を含むものもあり、このまま大気中に解放することは環境汚染にもなり得る。したがって、大気中に解放する前に硫黄成分を回収できる固体粒子を用いることがより好ましい。
【0046】
ここで、脱硫剤には、水酸化脱硫が普及しており、水素を利用して各種の石油留分を精製することで、高温・高圧下で石油留分を水素と一緒にアルミナを担体とするモリブデンとコバルトやニッケルの硫化物を使った触媒上に通すことにより、硫黄、窒素、酸素及び金属等の不純物を含む化合物などを分解したりするものが含まれる。なお、本出願人が行ったスクリーニング試験によれば、脱硫剤として、酸化鉄が最も良い脱硫性能を示し、生石灰が比較的良好な脱硫性能を示すことが確認されることから、好適にはこれらを用いるのが良いが、これらに限定されることなく各種の脱硫剤を含んでよい。
【0047】
こうした構成を備えることにより、固体粒子は熱回収を行いながら排気ガスが有する硫黄成分をも回収することができるため、脱硫した排気ガスを安心して大気中に解放することができる。
【0048】
また、本願に係る熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層の流動方法は、加熱手段により加熱される固体粒子を、流体搬送手段より供給される流体により搬送させ、傾斜させて設けた伝熱手段の伝熱面に対して固体粒子が該伝熱面上を重力の作用により落下流動するように構成して伝熱を行ったことを特徴とする。
【0049】
ここで、流体搬送手段とは、気体(例えば、空気や排気ガスその他の気体を含み、これらに限定されない。)或いは液体(例えば、清水や海水その他の液体を含み、これらに限定されない。)に係る流体の流動性質を利用して固体粒子を搬送させるものであり、上記記載の送気手段もその一部に含まれるものである。
【0050】
こうした構成を備えることにより、固体粒子は加熱手段によって加熱された後及び/または加熱されつつ、流体搬送手段に係る流体により、その下方から圧力をうけて重力に逆らって上昇するが、一方で、流体搬送手段に係る流体から受ける圧力が固体粒子に係る重力よりも小さくなると、固体粒子は重力の作用により自然落下を始める。このとき、伝熱手段の伝熱面を所定の角度で傾斜させて設けることで、固体粒子を伝熱手段に沿って落下させる。こうして、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進される。したがって、熱交換、熱回収効率を増大、向上させることができる。
【0051】
また、本願に係る熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層の流動方法は、加熱手段により加熱される固体粒子を、流体搬送手段より供給される流体により搬送させ、揺動させて設けた伝熱手段の伝熱面に対して固体粒子が該伝熱面上を重力の作用により落下流動するように構成して伝熱を行ったことを特徴とする。
【0052】
こうした構成を備えることにより、固体粒子は加熱手段によって加熱された後及び/または加熱されつつ、流体搬送手段に係る流体により、その下方から圧力をうけて重力に逆らって上昇するが、一方で、流体搬送手段に係る流体から受ける圧力が固体粒子に係る重力よりも小さくなった場合、固体粒子は自然落下を始める。このとき、伝熱手段の伝熱面を揺動させて設けることで、伝熱手段が揺動の都度傾斜を持つため、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触することができ、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより、総合的な伝熱が促進される。したがって、熱交換、熱回収効率を増大、向上させることができる。
【0053】
また、本願に係る熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層の流動方法は、前記加熱手段と前記流体搬送手段を有圧の熱流体としたことを特徴とする。
【0054】
こうした構成を備えることにより、加熱手段と流体搬送手段とから排出される流体が、熱を発する有圧の気体(例えば、主機(エンジン)の排気ガス等)或いは液体(例えば、熱湯等)である場合、固体粒子はかかる流体から熱回収を行い、熱伝達率の向上を実現させることができる。
【発明の効果】
【0055】
本願によれば、流動層装置の外郭を重力方向に狭くなるように傾斜させることで、外郭に介在した/添設させた伝熱手段に沿って落下する固体粒子と伝熱手段との接触・熱交換の機会を増大させることができる。また、外郭内に伝熱手段を傾斜させて設けることで、傾斜を持った伝熱手段に沿って落下する固体粒子の数量を増大させて、固体粒子と伝熱手段との接触・熱交換の機会を増大させることができる。すなわち、固体粒子が伝熱手段の表面を転がる状態であったり、滑って下降していく状態であったり、或いは一度伝熱手段上に落下した固体粒子がリバウンドする状況等が形成される。こうして、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、熱伝達率の向上を実現することができる。
【0056】
また、本願によれば、流動層装置の外郭を揺動させて構成することで、外郭に介在する伝熱手段が揺動の都度傾斜を持つため、伝熱手段に沿って落下する固体粒子と伝熱手段との接触・熱交換の機会を増大させることができる。また、外郭内に伝熱手段を揺動させて設けることで、伝熱手段が揺動の都度傾斜を持ち、伝熱手段に沿って落下する固体粒子と伝熱手段との接触・熱交換の機会を増大させることができる。すなわち、外郭或いは外郭内に伝熱手段を傾斜させて設けることなく、伝熱手段に傾斜を動的にもたらすことができる。また、揺動によって伝熱手段が左右或いは多方向に揺れる効果を利用することで、固体粒子が伝熱手段の表面を転がる状態であったり、滑って下降していく状態であったり、或いは一度伝熱手段上に落下した固体粒子がリバウンドする状況等が形成される。こうして、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、熱伝達率の向上を実現することができる。
【0057】
さらに、本願によれば、傾斜させた外郭の下部に伝熱手段を介在させ、及び/または外郭内の下部に伝熱手段を傾斜させて設けることで、固体粒子の性質の差異及び送気手段からの気体圧力の差異に影響されることなく、ダウンフローによる固体粒子を、より多く伝熱手段に沿って落下させることができる。すなわち、ダウンフローによる固体粒子は外郭の下部まで落下することで、外郭の下部には固体粒子が滞留する。したがって、伝熱手段を少なくとも外郭の下部において設けることで、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、より一層熱伝達率の向上を実現させることができる。また、外郭の下部で効率の良い熱回収が実現すれば、上部或いは中部に伝熱手段を設ける必要がなくなることから、その分の経費を節約することができる。
【0058】
また、本願によれば、揺動させた外郭の下部に伝熱手段を介在させ、及び/または外郭内の下部に伝熱手段を揺動させて設けることで、上記記載同様、固体粒子の性質の差異に影響されることなく、ダウンフローによる固体粒子を、より多く伝熱手段に沿って落下させることができる。すなわち、ダウンフローによる固体粒子は外郭の下部まで落下することで、外郭の下部には固体粒子が滞留する。また、揺動によって伝熱手段が左右或いは多方向に揺れる効果を利用することができる。したがって、伝熱手段を少なくとも外郭の下部において採用することで、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、一層熱伝達率の向上を実現させることができる。また、外郭の下部で効率の良い熱回収が実現すれば、上部或いは中部に伝熱手段を設ける必要がなくなるため、その分の経費を節約することができる。
【0059】
さらに、本願によれば、空塔速度を略1m/s〜略4m/sになるように送気させることで、外郭の上端まで固体粒子を浮上させることができる。すなわち、固体粒子を上端まで浮上させることにより、伝達手段に沿って落下する固体粒子の数も増加し、伝熱手段を外郭に設けることで、熱伝達率の向上を実現させることができる。さらに、固体粒子を上端まで浮上させることで、循環流動層としても活用することができる。
【0060】
また、本願によれば、外郭を閉ループ状に構成し、固体粒子を循環させることで、一度熱回収に利用した固体粒子を再利用して循環させることができる。すなわち、固体粒子が有する熱を閉ループの過程で再び回収することができるため、より効率の良いエネルギー回生効果を実現させることができる。
【0061】
さらに、本願によれば、外郭としてライザー部を用いることができ、外郭のライザー部を、断面視で第一の側面及び/または第二の側面と水平面とによって形成される外角が90°未満にし、或いは、ライザー部の下部に係る内角が90°を超える角度になるような構造に形成し、又はその両方により、ダウンフローする固体粒子を、より多く伝熱手段に沿って落下させることができる。すなわち、ライザー部を設けて循環流動層を形成することができるところ、ライザー部内壁面近傍に浮遊し、循環せずにダウンフローした固体粒子において、固体粒子が伝熱手段の表面を転がる状態であったり、滑って下降していく状態であったり、或いは一度伝熱手段上に落下した固体粒子がリバウンドする状況等が形成される。こうして、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、熱伝達率の向上を実現させることができる。このとき、さらに好適には、傾斜角度を下方から上方に向かい少ない角度、すなわち空気の自然拡散に合った広がり(たとえば片側5〜6°)で拡大する。この場合には、摩擦抵抗が減る現象を踏まえた適度な広がり角を選定することになり、摩擦抵抗の低減で送気手段の使用エネルギーが低減できる。
【0062】
また、本願によれば、外郭としてダウンカマー部を用いることができ、外郭のダウンカマー部を、断面視で第一の側面及び/または第二の側面と水平面とによって形成される外角が90°未満にし、或いは、ダウンカマー部の下部に係る内角を90°を超える角度になるような構造に形成し、又はその両方により、ダウンカマー部に設置した伝熱手段に、サイクロン機能により回転して落下する固体粒子を接触させることができる。すなわち、ダウンカマー部を設けて循環流動層を形成することができ、ライザー部でダウンフローしなかった固体粒子を回収し、かつ、残熱を有する固体粒子がダウンカマー部の壁面に介在した伝熱手段或いはダウンカマー部の内部に設けられた伝熱手段に接触する機会が増加する。こうして、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、極めて効率よく熱伝達率の向上を実現させることができる。
【0063】
さらに、本願によれば、加熱手段及び送気手段として船舶の主機関から排気される背圧のかかった排気ガスを用い、伝熱手段で排気ガスからの排熱回収を行うことができる。すなわち、排気ガスに係る排熱を固体粒子が熱回収し、かかる固体粒子が伝熱手段に接触することで排熱回収することができるため、排気ガスからの排熱を利用して熱伝達の向上を実現させることができる。また、大気中に高温ガスを放出することを防げるため、温暖化防止の対策にも繋がる。さらに、回収した排熱は再び船舶の運用(例えば、洗浄用水、調理用水及びバラスト水の加熱を含む。)として再利用することができるため、船舶駆動の省エネ化にも通ずる。
【0064】
また、本願によれば、固体粒子として脱硫剤を用い、排気ガス中の硫黄成分の除去も行うことができる。すなわち、固体粒子は熱回収を行いながら排気ガスが有する硫黄成分をも回収することができるため、脱硫した排気ガスを安心して大気中に解放し、環境汚染を未然に防ぐことができる。また別途、脱硫装置や脱硫手段を設ける必要がなく、構成の簡素化とコストの低減が図れる。
【0065】
さらに、本願に係る流動層の流動方法によれば、流体により加熱された固体粒子から熱伝達を行うため、伝熱手段の伝熱面を所定の角度で傾斜させて設けることで、固体粒子を伝熱手段に沿って落下させることができる。すなわち、物体の自由落下の原理を利用して、その落下地点に傾斜を持った伝熱手段の伝熱面を設けることで、より多くの落下する固体粒子が伝熱面に接触する機会が増加する。このように、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、熱伝達率の向上を実現させることができる。
【0066】
また、本願に係る流動層の流動方法によれば、伝熱手段の伝熱面を揺動させて設けることで、伝熱手段が揺動の都度傾斜を持つため、固体粒子を、傾斜を持った伝熱手段に沿って落下させることができる。すなわち、外郭或いは外郭内に伝熱手段を傾斜させて設けることなく、伝熱手段に傾斜をもたらせることができる。また、揺動によって伝熱手段が左右或いは多方向に揺れる効果を利用することで、接触する固体粒子の数量、接触する機会が増加する。このように、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、熱伝達率の向上を実現させることができる。
【0067】
さらに、本願に係る流動層の流動方法によれば、加熱手段と流体搬送手段とから排出される流体が、熱を発する有圧の気体(例えば、主機(エンジン)の排気ガス等)或いは液体(例えば、熱湯等)である場合、固体粒子はかかる流体から熱回収を行い、熱伝達率の向上を実現させることができる。すなわち、燃焼機関(例えば、プラントの燃焼装置及び船舶のエンジンを含む。)においては有圧の熱流体を発するため、固体粒子が熱回収を行うことができれば、かかる燃焼機関にも本願に係る技術思想を応用することができる。
【0068】
特に船舶の場合、動力機関として高効率なディーゼルエンジン(低質油)を利用している場合には、排気ガス性状の悪さ(すす(スート)やSOx等)が際立つ。一方では、船舶は装置の設置スペースの制限や波浪による船体の揺動といった制約があるため、省エネ対策が困難となっている。したがって本願は、スート対策やSOx対策としてコンパクトで信頼性が高く、揺動にも強い、船舶における省エネ対策として顕著な効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0070】
本発明の一実施形態に係る流動層装置及び循環式流動層装置における構成は、ライザー部及び/またはダウンカマー部において、従来技術とその構成を異にする。具体的には、ライザー部及びダウンカマー部の形状は筐体形、筐体斜形、円柱形、円筒形、斜円柱形、多角柱形、多角斜柱形、円錐形、円斜錐形、多角錐形、多角斜錐形のいずれでもよいが、直立状態で第一の側面及び/または第二の側面が重力方向に狭くなるように傾斜させて構成し(側面と水平面とによって形成される外角が90°未満になるように構成し)、側面に略平行となるように伝熱面を介在もしくは添設させる。または、直立状態の断面視で、第一の内壁面及び/または第二の内壁面に傾斜を設けて構成し(内壁面と水平面とによって形成される内角が90°を超える角度になるように構成し)、内壁面に平行に伝熱面を介在もしくは添設させる。さらに、ライザー部及びダウンカマー部の内部に傾斜を有する伝熱面を付設できる構成とする。伝熱面はライザー部及び/またはダウンカマー部を三分割したとき、上部、中央部及び下部のいずれにも設けることができる。このとき、さらに好適には、傾斜角度を下方から上方に向かい少ない角度、すなわち空気の自然拡散に合った広がり(たとえば片側5〜6°)で拡大することにより、摩擦抵抗が減る現象を踏まえ、適度な広がり角を選定することにより、摩擦抵抗の低減で送気手段の使用エネルギーが低減できる。
【0071】
また、上記構成の有無に関わらず、ライザー部及び/またはダウンカマー部を揺動させる構成でもよい(揺動の方向、振幅及び周期に限定はないものとする。)。ここで、揺動とは、振幅動、上下動、回転動、摺動を問わず、固体粒子が伝熱手段(たとえば伝熱板)に角度をもって衝突することを動的に可能にする作用・動作総てを含む概念をいう。また、ライザー部及び/またはダウンカマー部のみを揺動させる構成、ライザー部及び/またはダウンカマー部を含む流動層装置及び循環式流動層装置を揺動させる構成、及び流動層装置及び/または循環式流動層装置を搭載した本体(例えば、プラントや船舶等)を揺動させる構成のうち少なくとも1つの構成を含めばよく、複数の構成の組合せでもよい。
【0072】
次に、本願に係るライザー部及び/またはダウンカマー部を含む流動層装置及び/または循環式流動層装置の動作原理について、説明する。
【0073】
図1は、流動層装置及び/または循環式流動層装置におけるライザー部の内壁面の状態を表す状態図である。同図(a)は、ライザー部を正立させたときの状態を示すところ、重力(自然落下)の影響により固体粒子70が内壁面に接触するタイミングがまばらである。したがって、熱伝達率の向上は困難と想定される。一方、同図(b)は、ライザー部を傾斜させて設けた構成或いはライザー部の内部に傾斜させて設けた伝熱面の表面の状態を示すところ、固体粒子70に係る自然落下の過程でこれらの傾斜が障害となり、固体粒子70が傾斜面に沿って滑って下降していく状態であったり、或いは一度伝熱手段上に落下した固体粒子がリバウンドする状況等が形成される。また、落下せずに壁面に付着する固体粒子もある。固気混相流の熱伝達においては、粒子と壁面との接触頻度が重要であることが推定されるところ、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ接触(程良く付着)するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されることになるから、傾斜壁による熱伝達率の向上が期待される。
【0074】
この場合、傾斜を持った伝熱手段の表面等に付着した固体粒子が堆積しない構成、例えば、伝熱手段の表面の摩擦力を低下させる加工を施したり、摩擦力を低減させる部材を塗布したりすることが好ましい。しかしたとえ固体粒子が堆積したとしても、固体粒子同士が熱伝達を行い、最終的に伝熱手段に熱伝達される構成であればよい。このようにすることにより、外郭を重力方向に狭く傾斜させることは、流動層装置における熱伝達率の向上を実現させるものである。
【0075】
図2は、本発明の一実施形態に係る流動層装置及び/または循環式流動層装置の熱伝達率に関するグラフである。同図(a)は、流動層装置及び/または循環式流動層装置におけるライザー部の空塔速度と熱伝達率との関係を示すグラフである。同図において、正立させたライザー部を、断面視にて第一の外壁面及び/または第二の外壁面が重力方向に狭くなるように傾斜させたライザー部(以下、「傾斜させたライザー部」ともいう。)及び揺動させたライザー部のそれぞれの上部、中央部及び下部における空塔速度Ug(m/s)と熱伝達率h(W/m2k)の値を示す。なお、ライザー部各部には計測用の発熱板を介在させている。
【0076】
実験装置及び実験方法は以下のとおりである。
・ ライザー部側面の3箇所に、厚さ:0.1mmのステンレス発熱板(寸法:126mm×324mmまたは126mm×424mm)を内壁面に貼付した同一寸法のベークライト製側壁を設置し、ステンレス発熱板を通電加熱して、その表面温度を外径:1mmのT型シース熱電対で計測すると共に、分散板から766mm上方のライザー中央部の固気混相流温度を計測して熱伝達率を求めた。
・ 固体粒子は、粒径0.18〜0.35mmの石灰石粒子(充填量:40kg)とした。
・ ライザー部の傾斜は、傾斜角=15°として構成した。
・ ライザー部の揺動は、実験装置に揺動台を搭載し、揺動に係る横揺れ振幅=±15°、周期=6sの横揺れ運動として構成した。
【0077】
同図に示すとおり、ライザー部の中央部及び上部では、正立させたライザー部より、揺動させたライザー部及び傾斜させたライザー部のほうが、熱伝達率が数倍大きいことが確認できる。このことから、熱伝達率の増大は壁面下降流による固体粒子の発熱板へ程よく付着することに起因すると考えられる。また、空塔速度の増大に伴い壁面下降流が増大することによると考えられる。
【0078】
一方、ライザー部の下部での熱伝達率は、Ug≦2.21(m/s)では中央部及び上部に比べて遥かに大きい。これは下部の粒子容積分率が中央部及び上部に比べて高いためであると考えられる。しかし、Ug>2.21(m/s)では熱伝達率は急激に減少する。これは、空塔速度の増大に伴って下部の粒子容積分率が急減するため、下部に介在する発熱板に程よく付着する粒子量が減少するからであると考えられる。
【0079】
また、同図では同時に、横揺れ状態及び傾斜状態における各部熱伝達率を示すところ、横揺れ時の中央部及び上部では正立時と比べると顕著に増大することが確認できる。これは、横揺れ運動によりライザー部の側面の壁面下降流が周期的に変動し、粒子流下量も大幅に増加するためと考えられる。一方、下部の熱伝達率は、空塔速度が小さいUg≦2.21(m/s)を除いて正立時の熱伝達率よりも大きい。これは流下量が増加した石灰石粒子が下部に滞留するため、正立状態に比べると粒子容積分率が増大するためであると考えられる。さらに、傾斜状態における熱伝達率はいずれも正立時、横揺れ時よりも遥かに大きい。これは、発熱板が傾斜したライザー部の側面の下側となるため、壁面下降流が発熱板に接触する度合いが高まるからであると考えられる。
【0080】
同図(b)は、流動層装置及び/または循環式流動層装置におけるライザー部の粒子容積分率と熱伝達率との関係を示すグラフである。図中の実線は、正立状態のライザー部の上部及び下部の熱伝達データの整理式を指標するものである。これにより、ライザー部の中央部及び上部での熱伝達は内壁面に沿って流下する粒子が壁面と接触することにより促進されることが認識できる。一方、壁面下降流によってライザー部の下部に滞留する粒子が直接発熱板に接触することにより熱伝達が促進され、伝熱促進のメカニズムも中央部及び上部とは異なるものと考えられる。
【0081】
ライザー部の上部の熱伝達率に注目すると、横揺れ時の熱伝達(整理式を破線で示す。)は、正立状態と比べると(粒子容積率が同じでも)増大していることが確認される。これは、横揺れ運動により内壁面に付着する固体粒子の数量が増大し、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、(粒子容積分率が同じでも)熱伝達率が増大することによるものと考えられる。また、壁面下降流により上部を流下する粒子は、引き続き中央部も流下するため、中央部の熱伝達率は(粒子容積分率が同じでも)上部に比較すると熱伝達率が大きくなっているものと考えられる。さらに、上部と同様、横揺れ運動により内壁面に付着する固体粒子の数量が増大し、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、正立状態に比べると横揺れ時の熱伝達率の方が大きくなると考えられる。
【0082】
一方、下部における横揺れ時の熱伝達率は、実線で示す正立状態の整理式に対応する場合とほとんど一致しており、下部においては正立状態と横揺れ時で熱伝達率の実態は変わらないと考えられる。ただし、横揺れにより粒子容積分率が増大するため、横揺れ時の熱伝達率は正立状態のものより増大するものと考えられる。
【0083】
次に、本願に係るライザー部及び/またはダウンカマー部を含む流動層装置及び/または循環式流動層装置の構成について、説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る流動層装置3及び4の構成を示す図である。同図(a)の流動層装置3は、ライザー部10、分散板30、伝熱面20−1を備えて形成され、ライザー部10の内部を固体粒子70が流動する仕組みになっている。固体粒子70は、分散板30を介して加熱部100、送気部200を有した燃焼機関(例えば、プラントの燃焼装置及び船舶のエンジン等)から供給される高温ガス(例えば、二酸化硫黄(SO2)をはじめとするSOx類を含む排気ガス等)の流れによって上昇し、ライザー部10内を流動する。このとき、ライザー部10を、断面視で第一の側面を重力方向に狭くなるように傾斜させて構成すること(第一の側面と水平面とによって形成される外角が90°未満になるようにすること)で、第一の内壁面付近に浮遊する固体粒子70は、ダウンフローにより第一の内壁面に沿って滑ったり転がったりリバウンドしたりしながら下降する。したがって、伝熱面20−1が介在する第一の内壁面に固体粒子70が接触する機会が増加し、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、熱伝達率を向上させることができる。なお、図示はしないが、伝熱面20−1をライザー部10の下部の内壁面に介在させることで、ライザー部10の下部に滞留する固体粒子70が伝熱面20−1に接触するため、さらに熱伝達率を向上させることができる。また、分散板30の下部から空気を供給し、ライザー部10から燃料ガスを吹き込んだり可燃材を入れることにより、ライザー部10内で燃焼による発熱が同時に行われるような方式にしてもよい。
【0084】
同図(b)の流動層装置4は、ライザー部10の内部に伝熱面20−2を1又は複数個設ける構成を有している。このとき、ライザー部10を、断面視で第一の側面及び第二の側面が重力方向に狭くなるように傾斜させて構成し(第一の側面と水平面とによって形成される外角及び第二の側面と水平面とによって形成される外角が90°未満になるようにすること)、かつ、内部に伝熱面20−2を傾斜させて設けることで、第一の内壁面、第二の内壁面及び伝熱面20−2付近に浮遊する固体粒子70は、ダウンフローにより第一の内壁面、第二の内壁面及び伝熱面20−2に沿って滑ったり転がったりリバウンドしたりしながら下降する。したがって、伝熱面20−1が介在する第一の内壁面、第二の内壁面及び伝熱面20−2に固体粒子70が接触する機会が増加し、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、熱伝達率を向上させることができる。なお、図示はしないが、伝熱面20−1をライザー部10の下部の内壁面に介在させるか、或いは伝熱面20−2をライザー部の下部に設けることで、ライザー部10の下部に滞留する固体粒子70が伝熱面20−1或いは伝熱面20−2に接触するため、さらに熱伝達率を向上させることができる。
【0085】
図4は、本発明の別の一実施形態に係る循環式流動層装置5の構成を示す図である。同図に示すとおり、循環式流動層装置5は、図3の流動層装置3及び4に係る構成に加え、固気分離部40、ダウンカマー部50、バルブ60(例えば、ループシールバルブ或いはニューマチックバルブ等)、粒子供給装置80及び粒子回収装置90をさらに備えて構成される。このとき、ライザー部10を、断面視で第一の側面を重力方向に狭くなるように傾斜させて構成すること(第一の側面と水平面とによって形成される外角が90°未満になるようにすること)で、第一の内壁面付近に浮遊する固体粒子70は、ダウンフローにより第一の内壁面に沿って滑ったり転がったりリバウンドしたりしながら下降する。したがって、伝熱面20−1が介在する第一の内壁面に固体粒子70が接触する時間が増加し、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、熱伝達率を向上させることができる。なお、図示はしないが、伝熱面20−1をライザー部10の下部の内壁面に介在させることで、ライザー部10の下部に滞留する固体粒子70が伝熱面20−1に接触するため、より熱伝達率を向上させることができる。また、ライザー部10の内部の下部に伝熱面を傾斜させて設ければ、一層伝熱率を向上させることができる。
【0086】
また図5は、本発明のまた別の一実施形態に係る循環式流動層装置6を示す図である。同図に示すとおり、ライザー部10を、断面視で第一の側面及び第二の側面が重力方向に狭くなるように傾斜させて構成すること(第一の側面と水平面とによって形成される外角及び第二の側面と水平面とによって形成される外角が90°未満になるようにすること)で、第一の内壁面及び第二の内壁面付近に浮遊する固体粒子70は、ダウンフローにより第一の内壁面及び第二の内壁面に沿って滑ったり転がったりリバウンドしたりしながら下降する。したがって、伝熱面20−1が介在する第一の内壁面及び第二の内壁面に固体粒子70が接触する時間が増加し、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、熱伝達率を向上させることができる。なお、図示はしないが、伝熱面20−1をライザー部10の下部の内壁面に介在させることで、ライザー部10の下部に滞留する固体粒子70が伝熱面20−1に接触するため、より熱伝達率を向上させることができる。また、ライザー部10の内部の下部に伝熱面を傾斜させて設ければ、一層熱伝達率を向上させることができる。
【0087】
一方、図4及び図5に係る循環式流動層装置5及び6で、ダウンフローせずに上昇した固体粒子70は、所定の配管等を介して搬送され、固気分離器40で気体及び微小の粒子と分別される。そして、固体粒子70は、サイクロン機能によってダウンカマー部50の下部中央に集約される。このとき、図6において、本発明の一実施形態に係る循環式流動層装置7を示すところ、ダウンカマー部50を、断面視で第一の側面及び第二の側面が重力方向に狭くなるように傾斜させて構成されること(第一の側面と水平面とによって形成される外角及び第二の側面と水平面とによって形成される外角が90°未満になるようにすること)により、第一の内壁面及び第二の内壁面に沿って滑ったり転がったりリバウンドしたりしながら下降する。したがって、伝熱面20−3が介在する第一の内壁面及び第二の内壁面に固体粒子70が接触する機会が増加し、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、熱伝達率を向上させることができる。なお、図示はしないが、伝熱面20−3をダウンカマー部50の下部の内壁面に介在させることで、ダウンカマー部50の下部に滞留する固体粒子70が伝熱面20−3に接触するため、さらに熱伝達率を向上させることができる。また、ダウンカマー部50の内部の下部に伝熱面を傾斜させて設ければ、より一層伝熱率を向上させることができる。
【0088】
また、循環式流動層装置5、6及び7に係る粒子供給装置80にて、不足した固体粒子70を供給することができ、粒子回収装置90にてその効用を終えた固体粒子70(例えば、複数回循環を繰り返して熱回収効果や脱硫効果が著しく低減してしまった粒子等)を回収することができる。一方さらに、ダウンカマー部50で集約した固体粒子70は、バルブ60に堆積せずに流動が可能な状態にし、再びライザー部10に搬送される。またさらに、内壁面に介在させた伝熱面20−1及び20−3は、熱媒体(例えば、清水等の伝熱効果を有するものを含む。)の入口と出口を設けることで、熱伝達された熱媒体を他の用途(例えば、洗浄用水及び調理用水等)に利用することができる。
【0089】
また、上記に記載した実施形態における個体粒子70を、酸化鉄の粒子や生石灰の粒子とすることにより、高温ガスや燃焼ガス中に含まれるSOx等の硫黄成分の脱硫を同時に行うことができる。
【0090】
図7は、本発明のさらに別の一実施形態に係る循環式流動層装置を揺動させる構成にした状態を示す概念図である。ここで、揺動とは、振幅動、上下動、回転動、摺動を問わず、固体粒子が伝熱手段(たとえば伝熱板)に角度をもって衝突することを動的に可能にする作用・動作総てを含む概念をいう。同図に示されるように、揺動により周期的に傾斜面が形成される流動層となるため、上記で説明した傾斜による熱伝達効率の向上が動的にもたらされることとなる。また、循環式流動層装置を船舶等に搭載した場合には、船舶は波浪の影響により所定の周期で揺れるため、揺動のための動力を特に別途設ける必要なく、ライザー部及びダウンカマー部は都度傾斜を動的に構成する。この場合、図示はしないが、固体粒子70は傾斜した内壁面に沿って滑ったり転がったりリバウンドしたりしながら下降する。したがって、伝熱面が介在する第一の内壁面及び第二の内壁面に固体粒子70が接触する機会が増加し、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、熱伝達率を向上させることができる。
【0091】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【0092】
また、上述した実施例は、本発明に係る技術思想を具現化するための実施形態の一例を示したにすぎないものであり、他の実施形態でも本発明に係る技術思想を適用することが可能である。たとえば、上記では、揺動が自発的にもたらされる産業的応用の例として船舶の燃焼機関(例えば、船舶のボイラーやエンジン等)を取り上げて説明したが、本願は船舶に限定されることなく、たとえば、海洋に設けた浮体、車両等であっても、同じように、そこから供給される高温ガスや燃焼ガスから熱を回収しながらライザー部10内を流動させることで、本願の技術的思想を適用して本願による効果を奏することが可能である。
【0093】
さらにまた、本発明を用いて生産される装置、方法、システムが、その2次的生産品に搭載されて商品化された場合であっても、本発明の価値は何ら減ずるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
上述したように、本願に係る流動層装置若しくは循環式流動層装置の外郭(ライザー部及び/またはダウンカマー部を含む。)を重力方向に狭くなるように傾斜させることで、外郭に介在した伝熱手段(伝熱面、発熱板を含む。)に沿って固体粒子を落下させることができる。また、外郭内に伝熱手段を傾斜させて設けることで、傾斜を持った伝熱手段に沿って固体粒子を落下させることができる。すなわち、固体粒子が伝熱手段の表面を転がる状態であったり、滑って下降していく状態であったり、或いは一度伝熱手段上に落下した固体粒子がリバウンドしたりする状況が形成される。したがって、接触する固体粒子の数量、固体粒子が伝熱手段に接触する機会が増加し、粒子の持っている熱量が程よく壁面に伝達される時間だけ、接触するようにし、伝熱し終えた粒子が次から次と変わっていくことにより総合的な伝熱が促進されるため、熱伝達率の向上を実現させることができる。
【0095】
特に船舶の場合、動力機関として高効率なディーゼルエンジン(低質油)を利用しているため、排気ガス性状の悪さ(すす(スート)やSOx等)が際立つが、その一方では、船舶は装置の設置スペースの制限や波浪による船体の揺動といった制約があるため、省エネ対策が困難となっている。よって本願は、スート対策やSOx対策がなされたコンパクトで信頼性が高く、かつ揺動を有効活用した船舶での省エネ対策として顕著な効果を発揮する。さらに本願では環境保全や汚染の抑制を行う効果を発揮し得る。排熱の熱回収は地球の温暖化を、脱硫は空気汚染を防止するため、これらの要素は今後ますます重要性が高いものといえる。
【0096】
したがって、本願の技術思想は船舶にその適用範囲を限定されることなく、海洋に設けた浮体、車両等であってもよく、また、燃焼機関を有するプラント、発電所及び製造業に係る工場にも利用可能性が高く、省エネ効果、環境保全対策といった現代及び将来のニーズに合致し、各種産業全般に対して大きな有益性をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態に係る流動層装置及び/または循環式流動層装置におけるライザー部の内壁面の状態を表す状態図であり、同図(a)は、ライザー部を正立させたときの状態を示し、同図(b)は、ライザー部を傾斜させて設けた構成或いはライザー部の内部に傾斜させて設けた伝熱面の表面の状態を示す。
【図2】本発明の一実施形態に係る流動層装置及び/または循環式流動層装置の熱伝達率に関するグラフであり、同図(a)は、流動層装置及び/または循環式流動層装置におけるライザー部の空塔速度と熱伝達率との関係を示すグラフを示し、同図(b)は、流動層装置及び/または循環式流動層装置におけるライザー部の粒子容積分率と熱伝達率との関係を示すグラフを示す。
【図3】本発明の一実施形態に係る流動層装置3及び4を示す図であり、同図(a)ではライザー部10の内部を固体粒子70が流動する仕組みを示し、同図(b)の流動層装置4は、ライザー部10の内部に伝熱面20−2を1又は複数個設ける構成を示す。
【図4】本発明の一実施形態に係る循環式流動層装置5を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る循環式流動層装置6を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る循環式流動層装置7を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る循環式流動層装置を揺動させる構成にした状態を示す概念図である。
【図8】従来技術による流動層装置を示す図である。
【図9】従来技術による循環式流動層装置を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
7…船舶、10…ライザー部(外郭)、20−1…伝熱面(伝熱手段)、20−2…伝熱面(伝熱手段)、30…分散板、40…固気分離部、50…ダウンカマー部(外郭)、60…バルブ、70…固体粒子、80…粒子供給装置、90…粒子回収装置、100…加熱部(加熱手段)、200…送気部(送気手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段と、この加熱手段により加熱される固体粒子と、この固体粒子を搬送させるための気体を送る送気手段と、前記気体により搬送される前記固体粒子及びこれを搬送する前記気体の周囲に設けた外郭と、この外郭を重力方向に狭くなるように傾斜させて構成しさらにこの外郭に伝熱手段を介在させて設けた及び/または前記外郭内に伝熱手段を傾斜させて設けたことを特徴とする熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置。
【請求項2】
前記外郭を重力方向に狭くなるように傾斜させて構成しさらにこの外郭に伝熱手段を介在させて設けた及び/または前記外郭内に伝熱手段を傾斜させて設けた構成は、少なくとも前記外郭の下部において採用したことを特徴とする請求項1記載の熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置。
【請求項3】
加熱手段と、この加熱手段により加熱される固体粒子と、この固体粒子を搬送させるための気体を送る送気手段と、前記気体により搬送される前記固体粒子及びこれを搬送する前記気体の周囲に設けた外郭と、この外郭を揺動させて構成しさらにこの外郭に伝熱手段を介在させて設けた及び/または前記外郭内に伝熱手段を揺動させて設けたことを特徴とする熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置。
【請求項4】
前記外郭を揺動させて構成しさらにこの外郭に伝熱手段を介在させて設けた及び/または前記外郭内に伝熱手段を揺動させて設けた構成は、少なくとも前記外郭の下部において採用したことを特徴とする請求項3記載の熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置。
【請求項5】
前記気体の通過量を前記外郭の内断面積で除した空塔速度(m/s)を略1.0から略4.0の間に設定したことを特徴とする請求項1及至4のうちの1項記載の熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置。
【請求項6】
前記外郭を閉ループ状に構成し、前記固体粒子を循環させたことを特徴とする請求項1及至5のうちの1項記載の熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置。
【請求項7】
前記固体粒子が前記気体によって上方に搬送される前記外郭のライザー部において、このライザー部を重力方向に狭くなるように構成しさらにこのライザー部に伝熱手段を介在させて設けた及び/または前記ライザー部内に前記伝熱手段を傾斜させて設けたことを特徴とする請求項6記載の熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置。
【請求項8】
前記固体粒子が前記気体によって下方に搬送される前記外郭のダウンカマー部において、このダウンカマー部を重力方向に狭くなるように構成しさらにこのダウンカマー部に伝熱手段を介在させて設けた及び/または前記ダウンカマー部内に伝熱手段を傾斜させて設けたことを特徴とする請求項6記載の熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置。
【請求項9】
前記加熱手段及び前記送気手段として船舶の主機関から排気される背圧のかかった排気ガスを用い、前記伝熱手段で前記排気ガスからの排熱回収をおこなったことを特徴とする請求項6乃至8記載のうちの1項記載の熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置。
【請求項10】
前記固体粒子として脱硫剤を用い、前記排気ガス中の硫黄成分の除去も行ったことを特徴とする請求項9記載の熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層装置。
【請求項11】
加熱手段により加熱される固体粒子を、流体搬送手段より供給される流体により搬送させ、傾斜させて設けた伝熱手段の伝熱面に対して固体粒子が該伝熱面上を重力の作用により落下流動するように構成して伝熱をおこなったことを特徴とする熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層の流動方法。
【請求項12】
加熱手段により加熱される固体粒子を、流体搬送手段より供給される流体により搬送させ、揺動させて設けた伝熱手段の伝熱面に対して固体粒子が該伝熱面上を重力の作用により落下流動するように構成して伝熱をおこなったことを特徴とする熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層の流動方法。
【請求項13】
前記加熱手段と前記流体搬送手段を有圧の熱流体としたことを特徴とする請求項11もしくは12記載の熱伝達率を向上させる機能を備えた流動層の流動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−60203(P2010−60203A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226331(P2008−226331)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発/環境調和型高性能ハイブリッド熱交換器による高効率舶用排熱回収システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【Fターム(参考)】