熱処理装置
【課題】搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異を低減することを目的とする。
【解決手段】連続式熱処理装置の搬送ローラ2の幅方向における被処理物5aと炉内断熱壁8の炉内側の壁との間の位置に円形の伝熱板3を搭載し、被処理物5の上下にあるヒータから受熱した輻射熱を、被処理物に二次輻射させることで、搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異を低減することができる。
【解決手段】連続式熱処理装置の搬送ローラ2の幅方向における被処理物5aと炉内断熱壁8の炉内側の壁との間の位置に円形の伝熱板3を搭載し、被処理物5の上下にあるヒータから受熱した輻射熱を、被処理物に二次輻射させることで、搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異を低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉体内部に搬送される被処理物への熱処理を行う熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続式熱処理装置は、化学反応を伴う合成、不純物の除去、結晶構造の改善、粒子の成長などを目的に、比較的高温で長時間の熱処理を行うもので、被処理物の上部および下部に列設したヒータからの輻射熱で被処理物を加熱する熱処理装置である。このため、被処理物の場所ごとに温度の差異無く、効率良く加熱することが求められている。
【0003】
しかし、連続式熱処理装置は、搬送方向と直交する幅方向の両端部の温度が相対的に低くなる。即ち、炉体の幅方向で温度差異が発生する。これは、安全上の問題からヒータ発熱部を炉壁一杯まで設けられず、ヒータ発熱部端部からの輻射熱が炉壁方向に流れやすいことや、被処理物の蛇行を考慮し、被処理物の搬送領域を確保し、被処理物の幅に対して装置の幅に余裕を持たせなければならないといった理由によるものである。搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異は、即品質のバラつきに結びつくことから、温度差異を一定の範囲内に収めるべく、効率良く加熱できる性能が求められている。
【0004】
従来の、熱処理装置における搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異を低減する方法としては、装置に供給される雰囲気ガス温度を均一にする方法が用いられてきた。その一例として、装置の天井から導入したガスを炉内の上部空間に滞留させて予熱したうえで、穴明き板を介して被処理物に供給する方法がある。
【0005】
図16は従来の熱処理装置の構成を示す図である。図16は搬送方向に垂直な概略断面図であり、被処理物5の搬送方向(図16の紙面垂直方向)に垂直な面で熱処理装置1を切断した断面を示している。被処理物5は、搬送ローラ2によって炉内を搬送されながら熱処理される。
【0006】
図16に示すように、熱処理装置1の内部において、搬送ローラ2の上部空間には多数のガス流通孔が全面にわたり形成された穴あき天井板15が水平に配置されており、搬送ローラ2の上部空間を穴あき天井板15より上方の天井室16と、穴あき天井板15より下方の炉室17に区画している。また、熱処理装置1の天井壁を貫通してガス供給管18が設けられており、その下端が天井室16に連通されている。このため雰囲気ガスは一旦この天井室16に滞留され、炉内温度によって予熱されたうえで穴あき天井板15のガス流通孔を介して炉室17内に供給される。このように、予熱により、雰囲気ガスが被処理物5に接触する際の場所ごとの温度差異を低減することにより、効率良く被処理物5を加熱していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−223563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の構成では、炉室18へ供給された雰囲気ガスの熱が炉壁に奪われることにより、炉中央部の被処理物の温度と比較し炉端部の被処理物の温度が低下しやすい、という問題は解決されない。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の熱処理装置は、内部空間で被処理物を熱処理する炉体と、前記炉体の内部に前記被処理物の搬送方向に直交して列設される複数個の搬送ローラと、前記搬送ローラと平行に前記被処理物の上下に列設される複数個のヒータと、前記被処理物の搬送領域の外側の前記内部空間において前記搬送ローラに設けられる伝熱板とを有することを特徴とする。
【0011】
また、前記伝熱板が円盤状で、前記搬送ローラの回転と共に回転することが好ましい。
また、互いに隣接する前記搬送ローラに設けられる前記伝熱板の、前記搬送ローラの長さ方向における設置位置が前記伝熱板の厚み以上にずれることが好ましい。
【0012】
また、前記搬送ローラ半径をR、隣接する前記搬送ローラの中心同士のピッチをPとした場合、前記伝熱板の半径が、Rより大きく、かつ、P−R未満であることが好ましい。
また、前記被処理物の高さをA、前記伝熱板の前記被処理物の設置位置からの高さをCとすると、前記伝熱板の大きさが、0.57A≦C≦2.08Aの範囲であり、かつ前記伝熱板の厚みをDとすると、10[mm]≦D≦54[mm]であり、かつ前記被処理物から前記伝熱板までの間隔をBとすると、0<B≦50[mm]であることが好ましい。
【0013】
また、前記伝熱板は、前記搬送ローラの長さ方向と平行な方向に突出する受熱部を前記伝熱板の縁にさらに備え、前記伝熱板と前記受熱部を合わせた前記被処理物からの高さをCとすると、0.57A≦C≦2.08Aであり、かつ前記受熱部の突出方向の長さをEとすると、25.5[mm]≦E≦60[mm]であり、かつ前記伝熱板の厚みをDとすると、10[mm]≦D<Eであることが好ましい。
【0014】
また、前記伝熱板は第1の伝熱板と前記第1の伝熱板に前記受熱部をさらに備える第2の伝熱板とからなり、前記第2の伝熱板は前記搬送ローラの1本おきに配置され、前記第2の伝熱板の配置されない前記搬送ローラには、前記第2の伝熱板と同一の半径を持つ前記第1の伝熱板が配置されても良い。
【0015】
また、前記伝熱板の前記受熱部の厚みは、10[mm]以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱処理装置によれば、搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)本発明の熱処理装置の内部を示す断面図(b)本発明の熱処理装置の内部を示す断面図
【図2】(a)伝熱板の構成を示す図(b)本発明の熱処理装置の内部を示す上面図
【図3】伝熱板の効果を説明する図
【図4】(a)本発明の伝熱板の縁に受熱部を備える熱処理装置の内部を示す断面図(b)本発明の伝熱板の縁に受熱部を備える熱処理装置の内部を示す断面図
【図5】(a)受熱部を備える伝熱板の構成を示す図(b)本発明の伝熱板の縁に受熱部を備える熱処理装置の内部を示す上面図
【図6】(a)受熱部を備える伝熱板の構成を示す要部拡大図(b)受熱部を備える伝熱板の構成を示す斜視図
【図7】(a)放熱板を設けない場合の炉内の位置と温度の関係を示す図(b)放熱板を設けた場合の炉内の位置と温度の関係を示す図(c)受熱部を備える放熱板を設けた場合の炉内の位置と温度の関係を示す図
【図8】(a)内外の伝熱板に受熱部を設けた場合の温度差を示す図(b)内側の伝熱板のみに受熱部を設けた場合の温度差を示す図
【図9】伝熱板の高さと温度差異の関係を示す図
【図10】伝熱板の厚みと温度差異の関係を示す図
【図11】被処理物と伝熱板との間隔と温度差異の関係を示す図
【図12】(a)受熱部長さと温度差異の関係を示す図(b)受熱部長さと温度差異の関係を示す図(c)受熱部長さと温度差異の関係を示す図
【図13】温度差異が抑制される受熱部長さと被処理物高さとの関係を示す図
【図14】受熱部厚みと温度差異の関係を示す図
【図15】(a)3重に配列される伝熱板を示す図(b)矩形の伝熱板を示す図(c)連続的に形成される伝熱板を示す図
【図16】従来の熱処理装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の実施の形態について、図1〜15を参照しながら説明する。
初めに、本発明の装置の全体構成について説明する。図1(a)は、本発明の熱処理装置の内部を示す断面図であり、搬送方向に垂直な断面図である。図1(b)は、本発明の熱処理装置の内部を示す断面図であり、図1(a)のA−A断面図で、搬送方向に水平で鉛直な断面図である。図2(a)は、伝熱板の構成を示す図であり、図1(b)の破線部の拡大図で、伝熱板の大きさの範囲を定義するためのものである。図2(b)は、本発明の熱処理装置の内部を示す上面図である。なお、図1(a)中の矢印は、上部ヒータ6および下部ヒータ7からの輻射熱の流れと、伝熱板3を介して被処理物5の側面に二次輻射されるまでの流れを示したものである。
(装置の全体構成について)
この熱処理装置1は、搬送ローラ2と、搬送ローラ2の左右に配置された伝熱板3と、被処理物5と、上部ヒータ6と、下部ヒータ7と、装置全体を覆う断熱壁8と、ガス供給管9と、ガス噴出口10と、ガス排気管11と、ガス吸込口12とからなる。なお、図1(b)と図2(b)中の符号で、Dcは被処理物5の搬送方向を示している。
(装置の動作について)
この熱処理装置1は、被処理物5を一方向に回転する搬送ローラ2の上に乗せて搬送し、この内部空間で被処理物5を熱処理する装置である。本実施の形態では、図1(b)に示すように、水平方向(図1(b)の紙面左右方向)に沿って複数個設置された搬送ローラ2の回転によって、被処理物5が水平方向に搬送される。すなわち、並置された複数個の搬送ローラ2の上方が被処理物5の搬送路となり、図1(b)に矢印で示す搬送方向Dcに沿って、図1(b)では紙面の左から右へ向かって、図1(a)では紙面の手前から奥に向かって搬送される。被処理物5は図1(b)に示す搬送方向Dcに沿って列をなして並べられており、それらを連続的に搬送することで、被処理物5を連続的に熱処理することができる。被処理物5は、お互いの衝突を避けるために一定の間隔を空けて並べることも、隙間なく並べることも可能である。
(被処理物5の搬送方法について)
図1(a)を用いて、被処理物5の搬送方法について説明する。被処理物5は図1(a)の紙面手前から奥に向かって搬送され、ここでは、搬送方向と直交する横方向(図1(a)の紙面左右方向)に3個の被処理物5が並置されている場合を示している。以下の説明では、中央部の被処理物5と端部の被処理物5aとが並置されるとする。このように横方向(搬送方向に垂直で水平な方向)に3個の被処理物5を並置して、それらを同時に搬送することで、熱処理も3個同時に行うことができる。前述したように、被処理物5は搬送方向に沿っても列をなして並べられているので、ここでは3本の列をなす被処理物5が同時に連続して搬送される。なお、無論、横方向に並置する被処理物5の個数はこれに限定されるものではない。横方向に並置する数が増えるほど生産性が向上するが、装置の設置スペースが増大し、搬送の難易度や、横方向に均一な熱処理を行う難易度も高くなる。図1(a)において、横方向に3個並置された被処理物5同士の隙間は、例えば、それぞれ水平距離20[mm]とし、また、被処理物5と炉内壁面との隙間は、左右とも水平距離170[mm]とする。なお、無論、隙間の寸法はこれに限定されるものではないが、隙間を多くとるほど装置の設置スペースが増大するので、適正な隙間を設定することが望ましい。
(熱処理装置1の断熱壁8について)
続いて、熱処理装置1の断熱壁8について説明する。図1(a)に示すように、熱処理装置1の上部、下部および水平方向に対向する側壁として断熱壁8がそれぞれ設けられている。これにより、熱処理装置1の周囲全体が断熱壁8に覆い被さった構造となっている。
(熱処理装置1のゾーン構成について)
続いて、熱処理装置1のゾーン構成について説明する。熱処理装置1は、その炉体内部空間を搬送方向Dcに沿って熱処理プロセスに応じた複数のゾーン(処理空間)に分割されている。図1(b)には、それらのうちの1つのゾーンの断面を示している。各ゾーンはゾーン隔壁13で仕切られており、ゾーン隔壁13には、被処理物5が通過可能な通過口14が設けられている。
(寸法について)
ここでは、断熱材8内部の寸法は、鉛直方向の高さHを600[mm]、各ゾーンの搬送方向Dcに沿った長さLをそれぞれ1500[mm]とする場合を例に説明する。また搬送方向Dcに直交する水平方向の横幅Wを2400[mm]とする。なお、無論、寸法はこれに限定されるものではなく、被処理物5の処理量に応じて適切な大きさに設定する。
(被処理物5の形状について)
続いて、被処理物5の形状について説明する。形状は特に限定されるものではなく、例えば角型ないし円筒状の箱型容器や、フチのない板状のもの等を用いることもできる。
(搬送ローラ2について)
続いて、搬送ローラ2について説明する。搬送ローラ2には、被処理物5の荷重に耐えうる強度を持つように材質と太さを選定する。また、被処理物5の落下が生じないように、被処理物5の搬送方向Dcに沿った長さよりも充分に短いピッチで並べる。搬送ローラ2が太すぎるか、または並べるピッチが短すぎると、下部ヒータ7からの輻射伝熱を阻害するため、適正なローラの太さとピッチを設定することが望ましい。
(搬送ローラ2と被処理物5の材質について)
続いて、搬送ローラ2と被処理物5の材質について説明する。ここでは、搬送ローラ2と被処理物5の材質に、アルミナ質のセラミックスを用いるが、無論、使用温度における耐熱性と強度を満足するものであれば、例えばジルコニア質のセラミックスや、SUSやインコネルといった金属製のもの等を用いることもできる。但し、被処理物5の腐食性が高い場合は、熱処理中に飛散した被処理物5によって、搬送ローラ2や断熱壁8の表面が腐食して剥離し、被処理物5内に不純物として混入する恐れがあるため、耐食性を有する材質を用いることが望ましい。
(加熱器について)
続いて、熱処理装置1の内部の温度分布を熱処理プロセスに応じた温度分布に制御する加熱器について説明する。加熱器として、被処理物5の搬送路を挟んで上下方向に、上部ヒータ6および下部ヒータ7をそれぞれ複数個ずつ設ける。これら上部ヒータ6および下部ヒータ7からの輻射熱によって、被処理物5を昇温する。ここでは、搬送ローラ2の上方に円筒状の上部ヒータ6が搬送方向Dcに沿って4個配置されており、同様に搬送ローラ14の下方に円筒状の下部ヒータ7が搬送方向Dcに沿って4個配置されている場合を例に説明する。また、上部ヒータ6および下部ヒータ7は、幅方向が搬送方向Dcに直交する横方向(図1(a)の紙面左右方向)と平行になるように配置されている。このように、搬送ローラ2の上方と下方にそれぞれヒータを配置することによって、片方にのみヒータを配置する場合に比べて被処理物5の上下方向(表面と裏面)において、被処理物が均一に加熱される。ここでは、上部ヒータ6および下部ヒータ7として同形状のものを用いたが、上下の温度分布制御が複雑になる場合には異なる形状であってもよい。また、上部ヒータ6と下部ヒータ7は、それぞれ断熱壁8に埋め込んでもよい。これらを埋め込んだ場合は、熱効率は落ちるが、熱処理装置1の容積を小型化することが可能である。また、ここでは、上部ヒータ6および下部ヒータ7の種類として、円筒状のセラミック自体を発熱体とした電気式のヒータを用いるが、加熱器(上部ヒータ6、下部ヒータ7)の種類はこれに限定されるものではなく、例えばパネル型をした電気式のヒータや、オイル循環式やガス燃焼式のヒータ、またマイクロ波や電磁波、レーザー等を用いたヒータなど、種々のヒータを用いることができる。
(伝熱板について)
続いて、搬送ローラ2の両端に搭載する伝熱板3について説明する。搬送ローラ2は被処理物5の搬送方向に沿って配列され、常時一方向に等速回転することで、被処理物5を搬送する。伝熱板3は搬送ローラ2の長さ方向である幅方向における被処理物5と炉内断熱壁8の炉内側の壁との間の位置に搭載される。先述の通り、上部ヒータ6および下部ヒータ7等の発熱体は安全上の観点から炉壁一杯まで設けることができず、発熱体端部からの輻射熱は断熱壁8の方向に流れやすく、これが搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異の原因となっているが、この伝熱板3を搬送ローラ2の両端に搭載することで、発熱体端部からの輻射熱が断熱壁8の方向へ流れる前に伝熱板3の縁で受熱し、その側面を伝って被処理物5の両端部の側面に二次輻射することが可能になる。その結果、搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異を低減することができる。但し、図2(a)に示すように、搬送ローラ2の半径をR、隣接する搬送ローラ2の中心同士の距離をPとすると、伝熱板3の半径は、Rよりも大きく、P−Rよりも小さい必要がある。これにより、伝熱板3と隣接する搬送ローラ2とが干渉することがない。また、図2(b)にあるように、伝熱板3は、お互いが干渉することの無きよう、交互に配列することが望ましい。つまり、隣接する伝熱板3の、搬送ローラ2の長さ方向における設置位置が伝熱板3の厚み以上にずれて設置されることが望ましい。なお、伝熱板3の外側より、上部ヒータ6および下部ヒータ7から受けた輻射熱を、断熱壁8の方向に逃がすことを抑制するよう、伝熱板3の内側には黒体塗料を塗布するないし、伝熱板3を熱伝導率の異なる2種類の物質を重ね合わせ、内側に熱伝導率の低い材料を設けることが望ましい。
(伝熱板3を回転させることの効果について)
続いて、伝熱板3を回転させることの効果について説明する。図3は、伝熱板の効果を説明する図であり、伝熱板3を回転させることで、上部ヒータ6および下部ヒータ7からの二次輻射熱を、被処理物5の断熱壁8側の両端部の側面に、効率良く伝える概念を示した図である。
【0019】
図3に示すように、まず、上部ヒータ6および下部ヒータ7からの輻射熱は伝熱板3の縁で受熱され、伝熱板3の中心に向かって伝熱されると共に、被処理物5の両端部の側面に二次輻射される。さらに、搬送ローラ2が回転することで、伝熱板3の縁で受けた熱が伝熱板3の中心に向かって流れることと同時に、上部ヒータ6ないし下部ヒータ7近傍の位置で受けた輻射熱が、伝熱板3が回転することによって、上部ヒータ6ないし下部ヒータ7からの距離が空いても、この輻射熱が伝熱板3の縁ないしその近傍に残る。これを図3のサイクルのように繰り返すことにより、伝熱板3全体に輻射熱が残存され、被処理物5の断熱壁8側の両端部の側面に効率良く二次輻射させることを可能にする。
(伝熱板の縁に設ける受熱部の効果について)
上記構成に加え、伝熱板3の縁に受熱部4を設けることもできる。
【0020】
図4(a)は、本発明の伝熱板の縁に受熱部を備える熱処理装置の内部を示す断面図であり、伝熱板3の縁に受熱部4を有することを特徴とする熱処理装置1の内部を示した搬送方向に垂直な断面図である。図4(b)は、本発明の伝熱板の縁に受熱部を備える熱処理装置の内部を示す断面図であり、図4(a)のA−A断面図であり、伝熱板3の縁に受熱部4を有することを特徴とする熱処理装置1の内部を示した搬送方向に水平で鉛直な断面図である。図5(a)は、受熱部を備える伝熱板の構成を示す図であり、図4(b)の破線部の拡大図で、伝熱板3の大きさの範囲を定義するためのものである。図5(b)は、本発明の伝熱板の縁に受熱部を備える熱処理装置の内部を示す上面図であり、伝熱板3の縁に受熱部4を有することを特徴とする熱処理装置1の内部を示した上面図である。なお、図4(a)中の矢印は、上部ヒータ6および下部ヒータ7からの輻射熱の流れと、伝熱板3を介して被処理物5の側面に二次輻射されるまでの流れを示したものである。
【0021】
なお、図4,図5では、交互に形成される伝熱板3のうち、内側の伝熱板3にのみ受熱部4を設ける構成を例示しているが、外側の伝熱板3aにも受熱部4を設ける構成としても良く、外側の伝熱板3aにのみ受熱部4を設ける構成としても良い。
【0022】
また図6(a)は、受熱部を備える伝熱板の構成を示す要部拡大図であり、伝熱板3の最適な形状、大きさ、設置位置を定義するためのパラメータを説明する図である。図6(b)は、受熱部を備える伝熱板の構成を示す斜視図であり、伝熱板3の外周円状に付ける受熱部4の模式図である。伝熱板3の設置位置は、以下の6種類の項目をパラメータとして設定する。被処理物5の高さをA、被処理物5と伝熱板3の間隔をB、被処理物5の設置位置から伝熱板3と受熱部4を合わせた高さをC、伝熱板3の厚みをD、受熱部4の幅方向の長さをE、受熱部4の厚みをFとした。なお、以後特に断りのない限り、被処理物5の高さAは被処理物高さAと、被処理物5と伝熱板3の間隔を間隔Bと、伝熱板3と受熱部4を合わせた高さCは伝熱板高さCと、伝熱板3の厚みDは伝熱板厚みDと、受熱部4の幅方向の長さEは受熱部長さEと、受熱部4の厚みFは受熱部厚みFと略す。上部ヒータ6および下部ヒータ7からの輻射熱を効率良く被処理物5の端部に伝えるためには、まず伝熱板3が上部ヒータ6および下部ヒータ7から受熱できる量を増やさなければならない。このため、図6(a),図6(b)に示すように、伝熱板3の外周円上に受熱部4を付けることで、受熱面積を大きくし、受熱できる量を増やすことができる。
【0023】
続いて、伝熱板3の回転効果について、具体的な検証結果に基づいて説明する。
図1(a)において、まず、高さ100[mm]の被処理物5を熱処理装置1の搬送方向と直交する横方向(図1(a)の紙面左右方向)に3個並置し、被処理物5同士および、被処理物5と伝熱板3の間隔が20[mm]となるように伝熱板3を配置し、上部ヒータ6および下部ヒータ7を800[℃]の設定にして常温から12時間加熱する条件で実施した。図7(a)は放熱板を設けない場合の炉内の位置と温度の関係を示す図、図7(b)は放熱板を設けた場合の炉内の位置と温度の関係を示す図、図7(c)は受熱部を備える放熱板を設けた場合の炉内の位置と温度の関係を示す図であり、それぞれ後述する検証(1)〜(3)における搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物5と両端部の被処理物5aとの温度差異を比較した検証データである。なお、以後特に断りのない限り、搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物5および両端部の被処理物5aは、被処理物5と略す。また、搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物5と両端部の被処理物5aとの温度差異は、幅方向の温度差異と略す。
【0024】
ここでの説明は、(1)伝熱板を設けない場合、(2)受熱部4を有さず、高さ100[mm]、厚み50[mm]の回転式の円形伝熱板3を搬送ローラ2の上面の、被処理物5を搬送する搬送ローラ2の幅方向における両端部の被処理物5aと、炉内断熱壁8の炉内側の壁との間の位置に搭載する構造の場合、(3)厚み20[mm]、幅80[mm]の受熱部4を有し、伝熱板3の被処理物5の設置位置からの高さ80[mm]、厚み50[mm]、つまり受熱部4と合わせた高さが100[mm]の回転式の伝熱板3を、全ての搬送ローラ2に対して、搬送ローラ2の上面の、被処理物5を搬送する搬送ローラ2の幅方向における炉端部の被処理物5aと、炉内断熱壁8の炉内側の壁との間の位置に搭載する構造の場合、の3種類について被処理物5の温度差異を検証した結果である。なお、ヒータ温度800[℃]の設定に対し、幅方向の温度差異を0.6[%]以内に収めるべく、幅方向の温度差異の目標を5[℃]以内とおいた。その結果、図7に示すように、被処理物5の温度差異は、(1)が6.6[℃]であることに対し、(2)では4.0[℃]、(3)では3.6[℃]となった。以上より、伝熱板3を設け、回転することにより温度差異を低減することができ、さらに、受熱部4を設けて受熱面積を確保することにより、より温度差異の低減効果が向上することを確認することができた。
【0025】
図8(a)は内外の伝熱板に受熱部を設けた場合の温度差を示す図、図8(b)は内側の伝熱板のみに受熱部を設けた場合の温度差を示す図であり、伝熱板3を搬送ローラ2に搭載する際、炉体に交互に配列するにあたって、外側の伝熱板3aの受熱部4の有無による、搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物5と両端部の被処理物5aとの温度差異を比較した検証データである。検証は、内側の伝熱板3と外側の伝熱板3aの両方に半径100[mm]の受熱部4を設けた場合と、外側の伝熱板3aには受熱部4を有しない場合とにおいて比較を行った。
【0026】
図8(a)、図8(b)に示すように、内外の伝熱板3,3aの両方に受熱部4を設けた場合と、内側の伝熱板3にのみ受熱部4を設けた場合とでは、炉内の温度分布を一定に保つ効果に差異はみられなかった。前述の通り、伝熱板3は、お互いが干渉することの無きよう、炉体の内、外2列交互に配列されることが望ましいが、図8の検証結果から、外側の伝熱板3aの受熱部4の有無は幅方向の温度差異には殆ど影響ないことが分かった。つまり炉体外側の伝熱板3aは、搬送ローラ2からの輻射熱が断熱壁8より放出されることを抑えられれば十分温度差異は低減でき、かつ自らを搭載するスペースを削減するため、伝熱板3の縁に受熱部4を設けなくても構わない。
(伝熱板の最適な形状、大きさ、設置位置について)
続いて、受熱部4の付いた伝熱板3の最適な形状、大きさ、設置位置について説明する。まず、伝熱板高さCの最適範囲を検証する。検証にあたっては、伝熱板高さCと被処理物高さAの比率を変更して、幅方向の温度差異との相関を整理する。
【0027】
図9は、伝熱板の高さと温度差異の関係を示す図であり、伝熱板3の高さを変更したときの、被処理物高さAに対する伝熱板高さCの比と、搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物5と両端部の被処理物5aとの温度差異の関係を検証したデータである。熱処理装置1に投入する被処理物高さAを10、50、100[mm]の3段階に変更し、これに合わせて伝熱板高さCを変更させた伝熱板3を搬送ローラ2に備え、上部ヒータ6および下部ヒータ7を800[℃]の設定にして常温から12時間加熱する条件で実施した。このとき、伝熱板高さCは被処理物高さAの0.25倍から2.50倍まで変化させた。また、間隔B=20[mm]、伝熱板厚みD=10[mm]、受熱部長さE=50[mm]、受熱部厚みF=0.2Cで一定とした。その結果、被処理物高さAの絶対値に関係なく、伝熱板高さCが被処理物高さAの0.57倍未満、または2.08倍を超える場合は、幅方向の温度差異が5[℃]を上回ることが判明した。以上より、幅方向の温度差異を5[℃]以内に収める場合には、被処理物高さAの最適範囲は0.57A≦C≦2.08Aとすることが好ましいことがわかった。これは、被処理物高さAに対し伝熱板高さCが著しく小さい場合、受熱部長さDが短いと、上部ヒータ6および下部ヒータ7からの輻射熱を十分受熱できないためと考えられる。反対に、被処理物高さAに対し伝熱板高さCが著しく大きい場合、受熱部4で受けた熱が被処理物5に二次輻射される前に、伝熱板3より放出されやすくなるためと考えられる。
【0028】
続いて、伝熱板厚みDの最適範囲を検証する。検証にあたっては、伝熱板高さCを一定にして、伝熱板厚みDに対する被処理物5の温度差異との相関を整理した。
図10は、伝熱板の厚みと温度差異の関係を示す図であり、伝熱板厚みDに対する、搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異との関係をまとめた検証データである。伝熱板高さCの最適範囲の検証に準じ、熱処理装置1に投入する被処理物高さAを10、50、100[mm]の3段階に変更し、これに合わせて伝熱板3を搬送ローラ2に搭載し、上部ヒータ6および下部ヒータ7を800[℃]の設定にして、常温から12時間加熱する条件で実施した。またこのとき、伝熱板高さC=0.5A、受熱部長さE=3.0D、受熱部厚みF=0.2Cで一定とした。その結果、D<10[mm]では幅方向の温度差異が5[℃]を上回ること、一方、D>54[mm]では幅方向の温度差異を低減できる効果が小さくなることが判明した。以上より、幅方向の温度差異を5[℃]以内に収める場合には、伝熱板厚みD[mm]の最適範囲は10≦D≦54とすることが好ましいことがわかる。
【0029】
続いて、間隔Bの最適範囲を検証する。検証にあたっては、被処理物高さAを変更して、間隔Bに対する幅方向の温度差異との相関を整理した。
図11は、被処理物と伝熱板との間隔と温度差異の関係を示す図であり、被処理物5と伝熱板3の間隔Bに対する、搬送方向と直交する炉中央部の被処理物5と炉端部の被処理物5aとの温度差異との関係をまとめた検証データである。伝熱板高さCの最適範囲の検証に準じ、熱処理装置1に投入する被処理物高さAを10、50、100[mm]の3段階に変更し、これに合わせ伝熱板3を搬送ローラ2に搭載し、上部ヒータ6および下部ヒータ7を800[℃]の設定にして、常温から12時間加熱する条件で実施した。またこのとき、伝熱板高さC=0.5A、伝熱板厚み=10[mm]、受熱部長さE=50[mm]、受熱部厚みF=0.2Cで一定とした。その結果、B>50[mm]では幅方向の温度差異が5[℃]を上回ること、一方、伝熱板3は搬送が困難にならない範囲において、可能な限り被処理物5より近付ける方が望ましいことが判明した。以上より、幅方向の温度差異を5[℃]以内に収める場合には、間隔B[mm]の最適範囲は0<B≦50とすることが好ましいことがわかる。なお先述の通り、被処理物5の蛇行を考慮し、被処理物5と断熱壁8の内壁面との距離は予め余裕を持たせて設定する必要があるが、本発明の伝熱板3であれば、被処理物5の蛇行の水準を確認した上で伝熱板3の搭載位置を修正することが可能である。
【0030】
続いて、受熱部長さEの最適範囲を検証する。検証にあたっては、伝熱板高さCと、被処理物高さAの比率を変更して、受熱部長さEに対する幅方向の温度差異との相関を整理した。
【0031】
図12(a)〜図12(c)は、受熱部長さと温度差異の関係を示す図であり、伝熱板高さCと受熱部長さEに対する、搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物5と両端部の被処理物5aとの温度差異との関係をまとめた検証データである。伝熱板高さCの最適範囲の検証に準じ、熱処理装置1に投入する被処理物高さAを10、50、100[mm]の3段階に変更し、これに合わせて伝熱板高さCと受熱部長さEを変更させた伝熱板3を搬送ローラ2に備え、上部ヒータ6および下部ヒータ7を800[℃]の設定にして常温から12時間加熱する条件で実施した。このとき、伝熱板高さCは被処理物高さAの0.5倍から2.0倍まで、受熱部長さEは12[mm]から80[mm]まで変更させた。また、間隔B=20[mm]、伝熱板厚みD=10[mm]、受熱部厚みF=0.2Cで一定とした。その結果、被処理物高さA,伝熱板高さCを一定とすると、受熱部長さEは長いほど幅方向の温度差異は小さくなること、および受熱部長さEを増やしたときの効果はE>60[mm]では小さくなることが判明した(図12の破線)。また例えば、被処理物5の温度差異を管理目標の5[℃]以内に収めるためには、被処理物高さA、受熱部長さEを一定とすると、伝熱板高さCが被処理物高さAの0.5倍(図12の黒丸の点)ないし被処理物高さAの2.0倍(図12の黒四角の点)の場合は、被処理物高さAの1.0倍、1.25倍ないし1.5倍(図12の白三角、白四角なし白丸の点)の場合と比較して、受熱部4を長く設ける必要があることも判明した(図12の一点鎖線)。これは、伝熱板高さCと被処理物高さAの割合に対する被処理物5の温度差異との相関と同様、伝熱板高さCが著しく小さい場合、受熱部長さEが短いと、上部ヒータ6および下部ヒータ7からの輻射熱を十分受熱できないためと考えられる。反対に、伝熱板高さCが著しく大きい場合、受熱部4で受けた熱が被処理物5に二次輻射される前に、伝熱板3より放出されやすくなるためと考えられる。またこのことは、被処理物高さAが変わっても同一の傾向を得られることが判明した。
【0032】
図13は、温度差異が抑制される受熱部長さと被処理物高さとの関係を示す図であり、搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物5と両端部の被処理物5aとの温度差異を管理目標以内に収めるために、最低限必要な受熱部4の幅方向の長さEをまとめた検証データである。図12では、被処理物高さA=10、50、100[mm]いずれの場合も、幅方向の温度差異を5[℃]以内に抑えるために必要な受熱部長さEは、伝熱板高さCが被処理物高さAの1.25倍(図9の白四角の点)の場合であることが判明し、かつその数値は24〜27[mm]で略一定となった。これを踏まえて、伝熱板高さAを1、30、70[mm]に変更して追加検証しても、図13に示すように、受熱部長さEは一定となり、同様の結果を得られた。そして、そのときに必要な受熱部長さEもまた、24〜27[mm]で略一定、平均するとE=25.5[mm]となる。図12および図13の検証結果をまとめると、幅方向の温度差異を5[℃]以内にするために必要な受熱部長さEは、25.5≦E≦60で表せる。但し、伝熱板厚みD<受熱部長さEを満たすことを要し、図10の結果を考慮すると、10[mm]≦D<Eとすることが好ましい。
(伝熱板の望ましい形態)
続いて、当発明を実用化するために望ましい形態として、受熱部厚みFの最適範囲を検証する。
【0033】
図14は、受熱部厚みと温度差異の関係を示す図であり、伝熱板高さCに対し、受熱部厚みFを変更したときの搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物5と両端部の被処理物5aとの温度差異との関係をまとめた検証データである。検証は、被処理物高さA=100[mm]、間隔B=20[mm]、伝熱板高さC=100[mm]、伝熱板厚みD=10[mm]、受熱部長さE=100[mm]で一定とし、受熱部厚みFを10[mm]から100[mm]まで増やした伝熱板3を搬送ローラ2に搭載し、上部ヒータ6および下部ヒータ7を800[℃]の設定にして、常温から12時間加熱する条件で実施した。その結果、図14に示すように、受熱部厚みFは少なくとも10[mm]あれば温度差異を3.5[℃]以内に抑えることができ、受熱部4を設けない場合に温度差異が6.5[℃]となることに対して十分な効果を発揮できることがわかる。つまり、受熱部4は10[mm]の厚みがあれば良い。
【0034】
図15(a)は3重に配列される伝熱板を示す図、図15(b)は矩形の伝熱板を示す図、図15(c)は連続的に形成される伝熱板を示す図である。
以上の説明では、円形の伝熱板3を搬送ローラ2に備え付けたが、楕円形や矩形の伝熱板3としても、隣接する搬送ローラ2あるいは伝熱板3と干渉しないようにさえすれば、ある程度の温度差異の低減効果を得ることができる(図15(a),図15(b))。また、内外2重に交互に配列したが、3重以上に配列してもかまわない(図15(a))。
【0035】
また、搬送ローラ2毎に両端に伝熱板3を設けているが、搬送ローラ2が回転しても影響を受けない構成で、複数の搬送ローラ2にわたって連続的に形成される1または複数の伝熱板3を設けても、ある程度の温度差異の低減効果を得ることができる(図15(c))。その場合の伝熱板3の形状も矩形や楕円等任意である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の熱処理装置によれば、搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物と両端部の被処理物との温度差異を低減することができ、炉体内部に搬送される被処理物への熱処理を行う熱処理装置等に有用である。
【符号の説明】
【0037】
1 熱処理装置
2 搬送ローラ
3 伝熱板
3a 炉体外側の伝熱板
4 受熱部
5 被処理物
5a 被処理物
6 上部ヒータ
7 下部ヒータ
8 断熱壁
9 ガス供給管
10 ガス噴出口
11 ガス排気管
12 ガス吸込口
13 ゾーン隔壁
14 通過口
15 穴あき天井板
16 天井室
17 炉室
18 ガス供給管
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉体内部に搬送される被処理物への熱処理を行う熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続式熱処理装置は、化学反応を伴う合成、不純物の除去、結晶構造の改善、粒子の成長などを目的に、比較的高温で長時間の熱処理を行うもので、被処理物の上部および下部に列設したヒータからの輻射熱で被処理物を加熱する熱処理装置である。このため、被処理物の場所ごとに温度の差異無く、効率良く加熱することが求められている。
【0003】
しかし、連続式熱処理装置は、搬送方向と直交する幅方向の両端部の温度が相対的に低くなる。即ち、炉体の幅方向で温度差異が発生する。これは、安全上の問題からヒータ発熱部を炉壁一杯まで設けられず、ヒータ発熱部端部からの輻射熱が炉壁方向に流れやすいことや、被処理物の蛇行を考慮し、被処理物の搬送領域を確保し、被処理物の幅に対して装置の幅に余裕を持たせなければならないといった理由によるものである。搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異は、即品質のバラつきに結びつくことから、温度差異を一定の範囲内に収めるべく、効率良く加熱できる性能が求められている。
【0004】
従来の、熱処理装置における搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異を低減する方法としては、装置に供給される雰囲気ガス温度を均一にする方法が用いられてきた。その一例として、装置の天井から導入したガスを炉内の上部空間に滞留させて予熱したうえで、穴明き板を介して被処理物に供給する方法がある。
【0005】
図16は従来の熱処理装置の構成を示す図である。図16は搬送方向に垂直な概略断面図であり、被処理物5の搬送方向(図16の紙面垂直方向)に垂直な面で熱処理装置1を切断した断面を示している。被処理物5は、搬送ローラ2によって炉内を搬送されながら熱処理される。
【0006】
図16に示すように、熱処理装置1の内部において、搬送ローラ2の上部空間には多数のガス流通孔が全面にわたり形成された穴あき天井板15が水平に配置されており、搬送ローラ2の上部空間を穴あき天井板15より上方の天井室16と、穴あき天井板15より下方の炉室17に区画している。また、熱処理装置1の天井壁を貫通してガス供給管18が設けられており、その下端が天井室16に連通されている。このため雰囲気ガスは一旦この天井室16に滞留され、炉内温度によって予熱されたうえで穴あき天井板15のガス流通孔を介して炉室17内に供給される。このように、予熱により、雰囲気ガスが被処理物5に接触する際の場所ごとの温度差異を低減することにより、効率良く被処理物5を加熱していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−223563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の構成では、炉室18へ供給された雰囲気ガスの熱が炉壁に奪われることにより、炉中央部の被処理物の温度と比較し炉端部の被処理物の温度が低下しやすい、という問題は解決されない。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の熱処理装置は、内部空間で被処理物を熱処理する炉体と、前記炉体の内部に前記被処理物の搬送方向に直交して列設される複数個の搬送ローラと、前記搬送ローラと平行に前記被処理物の上下に列設される複数個のヒータと、前記被処理物の搬送領域の外側の前記内部空間において前記搬送ローラに設けられる伝熱板とを有することを特徴とする。
【0011】
また、前記伝熱板が円盤状で、前記搬送ローラの回転と共に回転することが好ましい。
また、互いに隣接する前記搬送ローラに設けられる前記伝熱板の、前記搬送ローラの長さ方向における設置位置が前記伝熱板の厚み以上にずれることが好ましい。
【0012】
また、前記搬送ローラ半径をR、隣接する前記搬送ローラの中心同士のピッチをPとした場合、前記伝熱板の半径が、Rより大きく、かつ、P−R未満であることが好ましい。
また、前記被処理物の高さをA、前記伝熱板の前記被処理物の設置位置からの高さをCとすると、前記伝熱板の大きさが、0.57A≦C≦2.08Aの範囲であり、かつ前記伝熱板の厚みをDとすると、10[mm]≦D≦54[mm]であり、かつ前記被処理物から前記伝熱板までの間隔をBとすると、0<B≦50[mm]であることが好ましい。
【0013】
また、前記伝熱板は、前記搬送ローラの長さ方向と平行な方向に突出する受熱部を前記伝熱板の縁にさらに備え、前記伝熱板と前記受熱部を合わせた前記被処理物からの高さをCとすると、0.57A≦C≦2.08Aであり、かつ前記受熱部の突出方向の長さをEとすると、25.5[mm]≦E≦60[mm]であり、かつ前記伝熱板の厚みをDとすると、10[mm]≦D<Eであることが好ましい。
【0014】
また、前記伝熱板は第1の伝熱板と前記第1の伝熱板に前記受熱部をさらに備える第2の伝熱板とからなり、前記第2の伝熱板は前記搬送ローラの1本おきに配置され、前記第2の伝熱板の配置されない前記搬送ローラには、前記第2の伝熱板と同一の半径を持つ前記第1の伝熱板が配置されても良い。
【0015】
また、前記伝熱板の前記受熱部の厚みは、10[mm]以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱処理装置によれば、搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)本発明の熱処理装置の内部を示す断面図(b)本発明の熱処理装置の内部を示す断面図
【図2】(a)伝熱板の構成を示す図(b)本発明の熱処理装置の内部を示す上面図
【図3】伝熱板の効果を説明する図
【図4】(a)本発明の伝熱板の縁に受熱部を備える熱処理装置の内部を示す断面図(b)本発明の伝熱板の縁に受熱部を備える熱処理装置の内部を示す断面図
【図5】(a)受熱部を備える伝熱板の構成を示す図(b)本発明の伝熱板の縁に受熱部を備える熱処理装置の内部を示す上面図
【図6】(a)受熱部を備える伝熱板の構成を示す要部拡大図(b)受熱部を備える伝熱板の構成を示す斜視図
【図7】(a)放熱板を設けない場合の炉内の位置と温度の関係を示す図(b)放熱板を設けた場合の炉内の位置と温度の関係を示す図(c)受熱部を備える放熱板を設けた場合の炉内の位置と温度の関係を示す図
【図8】(a)内外の伝熱板に受熱部を設けた場合の温度差を示す図(b)内側の伝熱板のみに受熱部を設けた場合の温度差を示す図
【図9】伝熱板の高さと温度差異の関係を示す図
【図10】伝熱板の厚みと温度差異の関係を示す図
【図11】被処理物と伝熱板との間隔と温度差異の関係を示す図
【図12】(a)受熱部長さと温度差異の関係を示す図(b)受熱部長さと温度差異の関係を示す図(c)受熱部長さと温度差異の関係を示す図
【図13】温度差異が抑制される受熱部長さと被処理物高さとの関係を示す図
【図14】受熱部厚みと温度差異の関係を示す図
【図15】(a)3重に配列される伝熱板を示す図(b)矩形の伝熱板を示す図(c)連続的に形成される伝熱板を示す図
【図16】従来の熱処理装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の実施の形態について、図1〜15を参照しながら説明する。
初めに、本発明の装置の全体構成について説明する。図1(a)は、本発明の熱処理装置の内部を示す断面図であり、搬送方向に垂直な断面図である。図1(b)は、本発明の熱処理装置の内部を示す断面図であり、図1(a)のA−A断面図で、搬送方向に水平で鉛直な断面図である。図2(a)は、伝熱板の構成を示す図であり、図1(b)の破線部の拡大図で、伝熱板の大きさの範囲を定義するためのものである。図2(b)は、本発明の熱処理装置の内部を示す上面図である。なお、図1(a)中の矢印は、上部ヒータ6および下部ヒータ7からの輻射熱の流れと、伝熱板3を介して被処理物5の側面に二次輻射されるまでの流れを示したものである。
(装置の全体構成について)
この熱処理装置1は、搬送ローラ2と、搬送ローラ2の左右に配置された伝熱板3と、被処理物5と、上部ヒータ6と、下部ヒータ7と、装置全体を覆う断熱壁8と、ガス供給管9と、ガス噴出口10と、ガス排気管11と、ガス吸込口12とからなる。なお、図1(b)と図2(b)中の符号で、Dcは被処理物5の搬送方向を示している。
(装置の動作について)
この熱処理装置1は、被処理物5を一方向に回転する搬送ローラ2の上に乗せて搬送し、この内部空間で被処理物5を熱処理する装置である。本実施の形態では、図1(b)に示すように、水平方向(図1(b)の紙面左右方向)に沿って複数個設置された搬送ローラ2の回転によって、被処理物5が水平方向に搬送される。すなわち、並置された複数個の搬送ローラ2の上方が被処理物5の搬送路となり、図1(b)に矢印で示す搬送方向Dcに沿って、図1(b)では紙面の左から右へ向かって、図1(a)では紙面の手前から奥に向かって搬送される。被処理物5は図1(b)に示す搬送方向Dcに沿って列をなして並べられており、それらを連続的に搬送することで、被処理物5を連続的に熱処理することができる。被処理物5は、お互いの衝突を避けるために一定の間隔を空けて並べることも、隙間なく並べることも可能である。
(被処理物5の搬送方法について)
図1(a)を用いて、被処理物5の搬送方法について説明する。被処理物5は図1(a)の紙面手前から奥に向かって搬送され、ここでは、搬送方向と直交する横方向(図1(a)の紙面左右方向)に3個の被処理物5が並置されている場合を示している。以下の説明では、中央部の被処理物5と端部の被処理物5aとが並置されるとする。このように横方向(搬送方向に垂直で水平な方向)に3個の被処理物5を並置して、それらを同時に搬送することで、熱処理も3個同時に行うことができる。前述したように、被処理物5は搬送方向に沿っても列をなして並べられているので、ここでは3本の列をなす被処理物5が同時に連続して搬送される。なお、無論、横方向に並置する被処理物5の個数はこれに限定されるものではない。横方向に並置する数が増えるほど生産性が向上するが、装置の設置スペースが増大し、搬送の難易度や、横方向に均一な熱処理を行う難易度も高くなる。図1(a)において、横方向に3個並置された被処理物5同士の隙間は、例えば、それぞれ水平距離20[mm]とし、また、被処理物5と炉内壁面との隙間は、左右とも水平距離170[mm]とする。なお、無論、隙間の寸法はこれに限定されるものではないが、隙間を多くとるほど装置の設置スペースが増大するので、適正な隙間を設定することが望ましい。
(熱処理装置1の断熱壁8について)
続いて、熱処理装置1の断熱壁8について説明する。図1(a)に示すように、熱処理装置1の上部、下部および水平方向に対向する側壁として断熱壁8がそれぞれ設けられている。これにより、熱処理装置1の周囲全体が断熱壁8に覆い被さった構造となっている。
(熱処理装置1のゾーン構成について)
続いて、熱処理装置1のゾーン構成について説明する。熱処理装置1は、その炉体内部空間を搬送方向Dcに沿って熱処理プロセスに応じた複数のゾーン(処理空間)に分割されている。図1(b)には、それらのうちの1つのゾーンの断面を示している。各ゾーンはゾーン隔壁13で仕切られており、ゾーン隔壁13には、被処理物5が通過可能な通過口14が設けられている。
(寸法について)
ここでは、断熱材8内部の寸法は、鉛直方向の高さHを600[mm]、各ゾーンの搬送方向Dcに沿った長さLをそれぞれ1500[mm]とする場合を例に説明する。また搬送方向Dcに直交する水平方向の横幅Wを2400[mm]とする。なお、無論、寸法はこれに限定されるものではなく、被処理物5の処理量に応じて適切な大きさに設定する。
(被処理物5の形状について)
続いて、被処理物5の形状について説明する。形状は特に限定されるものではなく、例えば角型ないし円筒状の箱型容器や、フチのない板状のもの等を用いることもできる。
(搬送ローラ2について)
続いて、搬送ローラ2について説明する。搬送ローラ2には、被処理物5の荷重に耐えうる強度を持つように材質と太さを選定する。また、被処理物5の落下が生じないように、被処理物5の搬送方向Dcに沿った長さよりも充分に短いピッチで並べる。搬送ローラ2が太すぎるか、または並べるピッチが短すぎると、下部ヒータ7からの輻射伝熱を阻害するため、適正なローラの太さとピッチを設定することが望ましい。
(搬送ローラ2と被処理物5の材質について)
続いて、搬送ローラ2と被処理物5の材質について説明する。ここでは、搬送ローラ2と被処理物5の材質に、アルミナ質のセラミックスを用いるが、無論、使用温度における耐熱性と強度を満足するものであれば、例えばジルコニア質のセラミックスや、SUSやインコネルといった金属製のもの等を用いることもできる。但し、被処理物5の腐食性が高い場合は、熱処理中に飛散した被処理物5によって、搬送ローラ2や断熱壁8の表面が腐食して剥離し、被処理物5内に不純物として混入する恐れがあるため、耐食性を有する材質を用いることが望ましい。
(加熱器について)
続いて、熱処理装置1の内部の温度分布を熱処理プロセスに応じた温度分布に制御する加熱器について説明する。加熱器として、被処理物5の搬送路を挟んで上下方向に、上部ヒータ6および下部ヒータ7をそれぞれ複数個ずつ設ける。これら上部ヒータ6および下部ヒータ7からの輻射熱によって、被処理物5を昇温する。ここでは、搬送ローラ2の上方に円筒状の上部ヒータ6が搬送方向Dcに沿って4個配置されており、同様に搬送ローラ14の下方に円筒状の下部ヒータ7が搬送方向Dcに沿って4個配置されている場合を例に説明する。また、上部ヒータ6および下部ヒータ7は、幅方向が搬送方向Dcに直交する横方向(図1(a)の紙面左右方向)と平行になるように配置されている。このように、搬送ローラ2の上方と下方にそれぞれヒータを配置することによって、片方にのみヒータを配置する場合に比べて被処理物5の上下方向(表面と裏面)において、被処理物が均一に加熱される。ここでは、上部ヒータ6および下部ヒータ7として同形状のものを用いたが、上下の温度分布制御が複雑になる場合には異なる形状であってもよい。また、上部ヒータ6と下部ヒータ7は、それぞれ断熱壁8に埋め込んでもよい。これらを埋め込んだ場合は、熱効率は落ちるが、熱処理装置1の容積を小型化することが可能である。また、ここでは、上部ヒータ6および下部ヒータ7の種類として、円筒状のセラミック自体を発熱体とした電気式のヒータを用いるが、加熱器(上部ヒータ6、下部ヒータ7)の種類はこれに限定されるものではなく、例えばパネル型をした電気式のヒータや、オイル循環式やガス燃焼式のヒータ、またマイクロ波や電磁波、レーザー等を用いたヒータなど、種々のヒータを用いることができる。
(伝熱板について)
続いて、搬送ローラ2の両端に搭載する伝熱板3について説明する。搬送ローラ2は被処理物5の搬送方向に沿って配列され、常時一方向に等速回転することで、被処理物5を搬送する。伝熱板3は搬送ローラ2の長さ方向である幅方向における被処理物5と炉内断熱壁8の炉内側の壁との間の位置に搭載される。先述の通り、上部ヒータ6および下部ヒータ7等の発熱体は安全上の観点から炉壁一杯まで設けることができず、発熱体端部からの輻射熱は断熱壁8の方向に流れやすく、これが搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異の原因となっているが、この伝熱板3を搬送ローラ2の両端に搭載することで、発熱体端部からの輻射熱が断熱壁8の方向へ流れる前に伝熱板3の縁で受熱し、その側面を伝って被処理物5の両端部の側面に二次輻射することが可能になる。その結果、搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異を低減することができる。但し、図2(a)に示すように、搬送ローラ2の半径をR、隣接する搬送ローラ2の中心同士の距離をPとすると、伝熱板3の半径は、Rよりも大きく、P−Rよりも小さい必要がある。これにより、伝熱板3と隣接する搬送ローラ2とが干渉することがない。また、図2(b)にあるように、伝熱板3は、お互いが干渉することの無きよう、交互に配列することが望ましい。つまり、隣接する伝熱板3の、搬送ローラ2の長さ方向における設置位置が伝熱板3の厚み以上にずれて設置されることが望ましい。なお、伝熱板3の外側より、上部ヒータ6および下部ヒータ7から受けた輻射熱を、断熱壁8の方向に逃がすことを抑制するよう、伝熱板3の内側には黒体塗料を塗布するないし、伝熱板3を熱伝導率の異なる2種類の物質を重ね合わせ、内側に熱伝導率の低い材料を設けることが望ましい。
(伝熱板3を回転させることの効果について)
続いて、伝熱板3を回転させることの効果について説明する。図3は、伝熱板の効果を説明する図であり、伝熱板3を回転させることで、上部ヒータ6および下部ヒータ7からの二次輻射熱を、被処理物5の断熱壁8側の両端部の側面に、効率良く伝える概念を示した図である。
【0019】
図3に示すように、まず、上部ヒータ6および下部ヒータ7からの輻射熱は伝熱板3の縁で受熱され、伝熱板3の中心に向かって伝熱されると共に、被処理物5の両端部の側面に二次輻射される。さらに、搬送ローラ2が回転することで、伝熱板3の縁で受けた熱が伝熱板3の中心に向かって流れることと同時に、上部ヒータ6ないし下部ヒータ7近傍の位置で受けた輻射熱が、伝熱板3が回転することによって、上部ヒータ6ないし下部ヒータ7からの距離が空いても、この輻射熱が伝熱板3の縁ないしその近傍に残る。これを図3のサイクルのように繰り返すことにより、伝熱板3全体に輻射熱が残存され、被処理物5の断熱壁8側の両端部の側面に効率良く二次輻射させることを可能にする。
(伝熱板の縁に設ける受熱部の効果について)
上記構成に加え、伝熱板3の縁に受熱部4を設けることもできる。
【0020】
図4(a)は、本発明の伝熱板の縁に受熱部を備える熱処理装置の内部を示す断面図であり、伝熱板3の縁に受熱部4を有することを特徴とする熱処理装置1の内部を示した搬送方向に垂直な断面図である。図4(b)は、本発明の伝熱板の縁に受熱部を備える熱処理装置の内部を示す断面図であり、図4(a)のA−A断面図であり、伝熱板3の縁に受熱部4を有することを特徴とする熱処理装置1の内部を示した搬送方向に水平で鉛直な断面図である。図5(a)は、受熱部を備える伝熱板の構成を示す図であり、図4(b)の破線部の拡大図で、伝熱板3の大きさの範囲を定義するためのものである。図5(b)は、本発明の伝熱板の縁に受熱部を備える熱処理装置の内部を示す上面図であり、伝熱板3の縁に受熱部4を有することを特徴とする熱処理装置1の内部を示した上面図である。なお、図4(a)中の矢印は、上部ヒータ6および下部ヒータ7からの輻射熱の流れと、伝熱板3を介して被処理物5の側面に二次輻射されるまでの流れを示したものである。
【0021】
なお、図4,図5では、交互に形成される伝熱板3のうち、内側の伝熱板3にのみ受熱部4を設ける構成を例示しているが、外側の伝熱板3aにも受熱部4を設ける構成としても良く、外側の伝熱板3aにのみ受熱部4を設ける構成としても良い。
【0022】
また図6(a)は、受熱部を備える伝熱板の構成を示す要部拡大図であり、伝熱板3の最適な形状、大きさ、設置位置を定義するためのパラメータを説明する図である。図6(b)は、受熱部を備える伝熱板の構成を示す斜視図であり、伝熱板3の外周円状に付ける受熱部4の模式図である。伝熱板3の設置位置は、以下の6種類の項目をパラメータとして設定する。被処理物5の高さをA、被処理物5と伝熱板3の間隔をB、被処理物5の設置位置から伝熱板3と受熱部4を合わせた高さをC、伝熱板3の厚みをD、受熱部4の幅方向の長さをE、受熱部4の厚みをFとした。なお、以後特に断りのない限り、被処理物5の高さAは被処理物高さAと、被処理物5と伝熱板3の間隔を間隔Bと、伝熱板3と受熱部4を合わせた高さCは伝熱板高さCと、伝熱板3の厚みDは伝熱板厚みDと、受熱部4の幅方向の長さEは受熱部長さEと、受熱部4の厚みFは受熱部厚みFと略す。上部ヒータ6および下部ヒータ7からの輻射熱を効率良く被処理物5の端部に伝えるためには、まず伝熱板3が上部ヒータ6および下部ヒータ7から受熱できる量を増やさなければならない。このため、図6(a),図6(b)に示すように、伝熱板3の外周円上に受熱部4を付けることで、受熱面積を大きくし、受熱できる量を増やすことができる。
【0023】
続いて、伝熱板3の回転効果について、具体的な検証結果に基づいて説明する。
図1(a)において、まず、高さ100[mm]の被処理物5を熱処理装置1の搬送方向と直交する横方向(図1(a)の紙面左右方向)に3個並置し、被処理物5同士および、被処理物5と伝熱板3の間隔が20[mm]となるように伝熱板3を配置し、上部ヒータ6および下部ヒータ7を800[℃]の設定にして常温から12時間加熱する条件で実施した。図7(a)は放熱板を設けない場合の炉内の位置と温度の関係を示す図、図7(b)は放熱板を設けた場合の炉内の位置と温度の関係を示す図、図7(c)は受熱部を備える放熱板を設けた場合の炉内の位置と温度の関係を示す図であり、それぞれ後述する検証(1)〜(3)における搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物5と両端部の被処理物5aとの温度差異を比較した検証データである。なお、以後特に断りのない限り、搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物5および両端部の被処理物5aは、被処理物5と略す。また、搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物5と両端部の被処理物5aとの温度差異は、幅方向の温度差異と略す。
【0024】
ここでの説明は、(1)伝熱板を設けない場合、(2)受熱部4を有さず、高さ100[mm]、厚み50[mm]の回転式の円形伝熱板3を搬送ローラ2の上面の、被処理物5を搬送する搬送ローラ2の幅方向における両端部の被処理物5aと、炉内断熱壁8の炉内側の壁との間の位置に搭載する構造の場合、(3)厚み20[mm]、幅80[mm]の受熱部4を有し、伝熱板3の被処理物5の設置位置からの高さ80[mm]、厚み50[mm]、つまり受熱部4と合わせた高さが100[mm]の回転式の伝熱板3を、全ての搬送ローラ2に対して、搬送ローラ2の上面の、被処理物5を搬送する搬送ローラ2の幅方向における炉端部の被処理物5aと、炉内断熱壁8の炉内側の壁との間の位置に搭載する構造の場合、の3種類について被処理物5の温度差異を検証した結果である。なお、ヒータ温度800[℃]の設定に対し、幅方向の温度差異を0.6[%]以内に収めるべく、幅方向の温度差異の目標を5[℃]以内とおいた。その結果、図7に示すように、被処理物5の温度差異は、(1)が6.6[℃]であることに対し、(2)では4.0[℃]、(3)では3.6[℃]となった。以上より、伝熱板3を設け、回転することにより温度差異を低減することができ、さらに、受熱部4を設けて受熱面積を確保することにより、より温度差異の低減効果が向上することを確認することができた。
【0025】
図8(a)は内外の伝熱板に受熱部を設けた場合の温度差を示す図、図8(b)は内側の伝熱板のみに受熱部を設けた場合の温度差を示す図であり、伝熱板3を搬送ローラ2に搭載する際、炉体に交互に配列するにあたって、外側の伝熱板3aの受熱部4の有無による、搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物5と両端部の被処理物5aとの温度差異を比較した検証データである。検証は、内側の伝熱板3と外側の伝熱板3aの両方に半径100[mm]の受熱部4を設けた場合と、外側の伝熱板3aには受熱部4を有しない場合とにおいて比較を行った。
【0026】
図8(a)、図8(b)に示すように、内外の伝熱板3,3aの両方に受熱部4を設けた場合と、内側の伝熱板3にのみ受熱部4を設けた場合とでは、炉内の温度分布を一定に保つ効果に差異はみられなかった。前述の通り、伝熱板3は、お互いが干渉することの無きよう、炉体の内、外2列交互に配列されることが望ましいが、図8の検証結果から、外側の伝熱板3aの受熱部4の有無は幅方向の温度差異には殆ど影響ないことが分かった。つまり炉体外側の伝熱板3aは、搬送ローラ2からの輻射熱が断熱壁8より放出されることを抑えられれば十分温度差異は低減でき、かつ自らを搭載するスペースを削減するため、伝熱板3の縁に受熱部4を設けなくても構わない。
(伝熱板の最適な形状、大きさ、設置位置について)
続いて、受熱部4の付いた伝熱板3の最適な形状、大きさ、設置位置について説明する。まず、伝熱板高さCの最適範囲を検証する。検証にあたっては、伝熱板高さCと被処理物高さAの比率を変更して、幅方向の温度差異との相関を整理する。
【0027】
図9は、伝熱板の高さと温度差異の関係を示す図であり、伝熱板3の高さを変更したときの、被処理物高さAに対する伝熱板高さCの比と、搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物5と両端部の被処理物5aとの温度差異の関係を検証したデータである。熱処理装置1に投入する被処理物高さAを10、50、100[mm]の3段階に変更し、これに合わせて伝熱板高さCを変更させた伝熱板3を搬送ローラ2に備え、上部ヒータ6および下部ヒータ7を800[℃]の設定にして常温から12時間加熱する条件で実施した。このとき、伝熱板高さCは被処理物高さAの0.25倍から2.50倍まで変化させた。また、間隔B=20[mm]、伝熱板厚みD=10[mm]、受熱部長さE=50[mm]、受熱部厚みF=0.2Cで一定とした。その結果、被処理物高さAの絶対値に関係なく、伝熱板高さCが被処理物高さAの0.57倍未満、または2.08倍を超える場合は、幅方向の温度差異が5[℃]を上回ることが判明した。以上より、幅方向の温度差異を5[℃]以内に収める場合には、被処理物高さAの最適範囲は0.57A≦C≦2.08Aとすることが好ましいことがわかった。これは、被処理物高さAに対し伝熱板高さCが著しく小さい場合、受熱部長さDが短いと、上部ヒータ6および下部ヒータ7からの輻射熱を十分受熱できないためと考えられる。反対に、被処理物高さAに対し伝熱板高さCが著しく大きい場合、受熱部4で受けた熱が被処理物5に二次輻射される前に、伝熱板3より放出されやすくなるためと考えられる。
【0028】
続いて、伝熱板厚みDの最適範囲を検証する。検証にあたっては、伝熱板高さCを一定にして、伝熱板厚みDに対する被処理物5の温度差異との相関を整理した。
図10は、伝熱板の厚みと温度差異の関係を示す図であり、伝熱板厚みDに対する、搬送方向と直交する幅方向の中央部と両端部との温度差異との関係をまとめた検証データである。伝熱板高さCの最適範囲の検証に準じ、熱処理装置1に投入する被処理物高さAを10、50、100[mm]の3段階に変更し、これに合わせて伝熱板3を搬送ローラ2に搭載し、上部ヒータ6および下部ヒータ7を800[℃]の設定にして、常温から12時間加熱する条件で実施した。またこのとき、伝熱板高さC=0.5A、受熱部長さE=3.0D、受熱部厚みF=0.2Cで一定とした。その結果、D<10[mm]では幅方向の温度差異が5[℃]を上回ること、一方、D>54[mm]では幅方向の温度差異を低減できる効果が小さくなることが判明した。以上より、幅方向の温度差異を5[℃]以内に収める場合には、伝熱板厚みD[mm]の最適範囲は10≦D≦54とすることが好ましいことがわかる。
【0029】
続いて、間隔Bの最適範囲を検証する。検証にあたっては、被処理物高さAを変更して、間隔Bに対する幅方向の温度差異との相関を整理した。
図11は、被処理物と伝熱板との間隔と温度差異の関係を示す図であり、被処理物5と伝熱板3の間隔Bに対する、搬送方向と直交する炉中央部の被処理物5と炉端部の被処理物5aとの温度差異との関係をまとめた検証データである。伝熱板高さCの最適範囲の検証に準じ、熱処理装置1に投入する被処理物高さAを10、50、100[mm]の3段階に変更し、これに合わせ伝熱板3を搬送ローラ2に搭載し、上部ヒータ6および下部ヒータ7を800[℃]の設定にして、常温から12時間加熱する条件で実施した。またこのとき、伝熱板高さC=0.5A、伝熱板厚み=10[mm]、受熱部長さE=50[mm]、受熱部厚みF=0.2Cで一定とした。その結果、B>50[mm]では幅方向の温度差異が5[℃]を上回ること、一方、伝熱板3は搬送が困難にならない範囲において、可能な限り被処理物5より近付ける方が望ましいことが判明した。以上より、幅方向の温度差異を5[℃]以内に収める場合には、間隔B[mm]の最適範囲は0<B≦50とすることが好ましいことがわかる。なお先述の通り、被処理物5の蛇行を考慮し、被処理物5と断熱壁8の内壁面との距離は予め余裕を持たせて設定する必要があるが、本発明の伝熱板3であれば、被処理物5の蛇行の水準を確認した上で伝熱板3の搭載位置を修正することが可能である。
【0030】
続いて、受熱部長さEの最適範囲を検証する。検証にあたっては、伝熱板高さCと、被処理物高さAの比率を変更して、受熱部長さEに対する幅方向の温度差異との相関を整理した。
【0031】
図12(a)〜図12(c)は、受熱部長さと温度差異の関係を示す図であり、伝熱板高さCと受熱部長さEに対する、搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物5と両端部の被処理物5aとの温度差異との関係をまとめた検証データである。伝熱板高さCの最適範囲の検証に準じ、熱処理装置1に投入する被処理物高さAを10、50、100[mm]の3段階に変更し、これに合わせて伝熱板高さCと受熱部長さEを変更させた伝熱板3を搬送ローラ2に備え、上部ヒータ6および下部ヒータ7を800[℃]の設定にして常温から12時間加熱する条件で実施した。このとき、伝熱板高さCは被処理物高さAの0.5倍から2.0倍まで、受熱部長さEは12[mm]から80[mm]まで変更させた。また、間隔B=20[mm]、伝熱板厚みD=10[mm]、受熱部厚みF=0.2Cで一定とした。その結果、被処理物高さA,伝熱板高さCを一定とすると、受熱部長さEは長いほど幅方向の温度差異は小さくなること、および受熱部長さEを増やしたときの効果はE>60[mm]では小さくなることが判明した(図12の破線)。また例えば、被処理物5の温度差異を管理目標の5[℃]以内に収めるためには、被処理物高さA、受熱部長さEを一定とすると、伝熱板高さCが被処理物高さAの0.5倍(図12の黒丸の点)ないし被処理物高さAの2.0倍(図12の黒四角の点)の場合は、被処理物高さAの1.0倍、1.25倍ないし1.5倍(図12の白三角、白四角なし白丸の点)の場合と比較して、受熱部4を長く設ける必要があることも判明した(図12の一点鎖線)。これは、伝熱板高さCと被処理物高さAの割合に対する被処理物5の温度差異との相関と同様、伝熱板高さCが著しく小さい場合、受熱部長さEが短いと、上部ヒータ6および下部ヒータ7からの輻射熱を十分受熱できないためと考えられる。反対に、伝熱板高さCが著しく大きい場合、受熱部4で受けた熱が被処理物5に二次輻射される前に、伝熱板3より放出されやすくなるためと考えられる。またこのことは、被処理物高さAが変わっても同一の傾向を得られることが判明した。
【0032】
図13は、温度差異が抑制される受熱部長さと被処理物高さとの関係を示す図であり、搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物5と両端部の被処理物5aとの温度差異を管理目標以内に収めるために、最低限必要な受熱部4の幅方向の長さEをまとめた検証データである。図12では、被処理物高さA=10、50、100[mm]いずれの場合も、幅方向の温度差異を5[℃]以内に抑えるために必要な受熱部長さEは、伝熱板高さCが被処理物高さAの1.25倍(図9の白四角の点)の場合であることが判明し、かつその数値は24〜27[mm]で略一定となった。これを踏まえて、伝熱板高さAを1、30、70[mm]に変更して追加検証しても、図13に示すように、受熱部長さEは一定となり、同様の結果を得られた。そして、そのときに必要な受熱部長さEもまた、24〜27[mm]で略一定、平均するとE=25.5[mm]となる。図12および図13の検証結果をまとめると、幅方向の温度差異を5[℃]以内にするために必要な受熱部長さEは、25.5≦E≦60で表せる。但し、伝熱板厚みD<受熱部長さEを満たすことを要し、図10の結果を考慮すると、10[mm]≦D<Eとすることが好ましい。
(伝熱板の望ましい形態)
続いて、当発明を実用化するために望ましい形態として、受熱部厚みFの最適範囲を検証する。
【0033】
図14は、受熱部厚みと温度差異の関係を示す図であり、伝熱板高さCに対し、受熱部厚みFを変更したときの搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物5と両端部の被処理物5aとの温度差異との関係をまとめた検証データである。検証は、被処理物高さA=100[mm]、間隔B=20[mm]、伝熱板高さC=100[mm]、伝熱板厚みD=10[mm]、受熱部長さE=100[mm]で一定とし、受熱部厚みFを10[mm]から100[mm]まで増やした伝熱板3を搬送ローラ2に搭載し、上部ヒータ6および下部ヒータ7を800[℃]の設定にして、常温から12時間加熱する条件で実施した。その結果、図14に示すように、受熱部厚みFは少なくとも10[mm]あれば温度差異を3.5[℃]以内に抑えることができ、受熱部4を設けない場合に温度差異が6.5[℃]となることに対して十分な効果を発揮できることがわかる。つまり、受熱部4は10[mm]の厚みがあれば良い。
【0034】
図15(a)は3重に配列される伝熱板を示す図、図15(b)は矩形の伝熱板を示す図、図15(c)は連続的に形成される伝熱板を示す図である。
以上の説明では、円形の伝熱板3を搬送ローラ2に備え付けたが、楕円形や矩形の伝熱板3としても、隣接する搬送ローラ2あるいは伝熱板3と干渉しないようにさえすれば、ある程度の温度差異の低減効果を得ることができる(図15(a),図15(b))。また、内外2重に交互に配列したが、3重以上に配列してもかまわない(図15(a))。
【0035】
また、搬送ローラ2毎に両端に伝熱板3を設けているが、搬送ローラ2が回転しても影響を受けない構成で、複数の搬送ローラ2にわたって連続的に形成される1または複数の伝熱板3を設けても、ある程度の温度差異の低減効果を得ることができる(図15(c))。その場合の伝熱板3の形状も矩形や楕円等任意である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の熱処理装置によれば、搬送方向と直交する幅方向の中央部の被処理物と両端部の被処理物との温度差異を低減することができ、炉体内部に搬送される被処理物への熱処理を行う熱処理装置等に有用である。
【符号の説明】
【0037】
1 熱処理装置
2 搬送ローラ
3 伝熱板
3a 炉体外側の伝熱板
4 受熱部
5 被処理物
5a 被処理物
6 上部ヒータ
7 下部ヒータ
8 断熱壁
9 ガス供給管
10 ガス噴出口
11 ガス排気管
12 ガス吸込口
13 ゾーン隔壁
14 通過口
15 穴あき天井板
16 天井室
17 炉室
18 ガス供給管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間で被処理物を熱処理する炉体と、
前記炉体の内部に前記被処理物の搬送方向に直交して列設される複数個の搬送ローラと、
前記搬送ローラと平行に前記被処理物の上下に列設される複数個のヒータと、
前記被処理物の搬送領域の外側の前記内部空間において前記搬送ローラに設けられる伝熱板と
を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記伝熱板が円盤状で、前記搬送ローラの回転と共に回転することを特徴とする請求項1記載の熱処理装置。
【請求項3】
互いに隣接する前記搬送ローラに設けられる前記伝熱板の、前記搬送ローラの長さ方向における設置位置が前記伝熱板の厚み以上にずれることを特徴とする請求項2記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記搬送ローラ半径をR、隣接する前記搬送ローラの中心同士のピッチをPとした場合、前記伝熱板の半径が、Rより大きく、かつ、P−R未満であることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記被処理物の高さをA、前記伝熱板の前記被処理物の設置位置からの高さをCとすると、前記伝熱板の大きさが、0.57A≦C≦2.08Aの範囲であり、
かつ前記伝熱板の厚みをDとすると、10[mm]≦D≦54[mm]であり、
かつ前記被処理物から前記伝熱板までの間隔をBとすると、0<B≦50[mm]であることを特徴とする請求項4記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記伝熱板は、前記搬送ローラの長さ方向と平行な方向に突出する受熱部を前記伝熱板の縁にさらに備え、
前記伝熱板と前記受熱部を合わせた前記被処理物からの高さをCとすると、0.57A≦C≦2.08Aであり、
かつ前記受熱部の突出方向の長さをEとすると、25.5[mm]≦E≦60[mm]であり、
かつ前記伝熱板の厚みをDとすると、10[mm]≦D<Eであることを特徴とする請求項5記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記伝熱板は第1の伝熱板と前記第1の伝熱板に前記受熱部をさらに備える第2の伝熱板とからなり、
前記第2の伝熱板は前記搬送ローラの1本おきに配置され、前記第2の伝熱板の配置されない前記搬送ローラには、前記第2の伝熱板と同一の半径を持つ前記第1の伝熱板が配置されることを特徴とする請求項6記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記伝熱板の前記受熱部の厚みは、10[mm]以上であることを特徴とする請求項6または請求項7のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項1】
内部空間で被処理物を熱処理する炉体と、
前記炉体の内部に前記被処理物の搬送方向に直交して列設される複数個の搬送ローラと、
前記搬送ローラと平行に前記被処理物の上下に列設される複数個のヒータと、
前記被処理物の搬送領域の外側の前記内部空間において前記搬送ローラに設けられる伝熱板と
を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記伝熱板が円盤状で、前記搬送ローラの回転と共に回転することを特徴とする請求項1記載の熱処理装置。
【請求項3】
互いに隣接する前記搬送ローラに設けられる前記伝熱板の、前記搬送ローラの長さ方向における設置位置が前記伝熱板の厚み以上にずれることを特徴とする請求項2記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記搬送ローラ半径をR、隣接する前記搬送ローラの中心同士のピッチをPとした場合、前記伝熱板の半径が、Rより大きく、かつ、P−R未満であることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記被処理物の高さをA、前記伝熱板の前記被処理物の設置位置からの高さをCとすると、前記伝熱板の大きさが、0.57A≦C≦2.08Aの範囲であり、
かつ前記伝熱板の厚みをDとすると、10[mm]≦D≦54[mm]であり、
かつ前記被処理物から前記伝熱板までの間隔をBとすると、0<B≦50[mm]であることを特徴とする請求項4記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記伝熱板は、前記搬送ローラの長さ方向と平行な方向に突出する受熱部を前記伝熱板の縁にさらに備え、
前記伝熱板と前記受熱部を合わせた前記被処理物からの高さをCとすると、0.57A≦C≦2.08Aであり、
かつ前記受熱部の突出方向の長さをEとすると、25.5[mm]≦E≦60[mm]であり、
かつ前記伝熱板の厚みをDとすると、10[mm]≦D<Eであることを特徴とする請求項5記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記伝熱板は第1の伝熱板と前記第1の伝熱板に前記受熱部をさらに備える第2の伝熱板とからなり、
前記第2の伝熱板は前記搬送ローラの1本おきに配置され、前記第2の伝熱板の配置されない前記搬送ローラには、前記第2の伝熱板と同一の半径を持つ前記第1の伝熱板が配置されることを特徴とする請求項6記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記伝熱板の前記受熱部の厚みは、10[mm]以上であることを特徴とする請求項6または請求項7のいずれかに記載の熱処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−229821(P2012−229821A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96659(P2011−96659)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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