説明

熱分解反応器材料および方法

一態様において、本発明は、炭化水素供給原料を熱分解するための反応器装置であって、この装置が、酸化物形態での耐火性材料を含む反応器コンポーネントを含み、この耐火性材料が、少なくとも20600Cの融点を有し、酸素分圧10”15バール、炭化ジルコニウムの炭素分圧より上の炭素分圧、および同じ温度で酸化ジルコニウム相転移を有する気体に、酸素分圧10”15バールでのジルコニウム三重点の温度より下の温度で曝露された場合、およびii)酸素分圧10”15バールを有する気体に、酸素分圧10”15バールでのジルコニウム三重点より上の温度で曝露された場合、酸化物形態のままである装置を含む。一部の実施形態において、反応器は、再生式熱分解反応器装置を含み、他の実施形態においてそれは、逆流再生式反応器装置を含む。他の態様において、本発明は、熱分解反応器系を用いて炭化水素供給原料を熱分解するための方法であって、炭化水素供給原料を熱分解するための熱分解反応器系の加熱領域に、上の耐火性材料を含む装置を提供するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との関係
本出願は、その全体が本明細書に参照により組み込まれている、1)2009年5月18日に出願された、「Pyrolysis Reactor Materials and Methods」という表題の、米国非仮出願シリアル番号第12/467,832号、2)2009年10月8日に出願された、「Pyrolysis Reactor Materials and Methods」という表題の、米国非仮出願シリアル番号第12/567,002号、および3)2010年4月23日に出願された、「Pyrolysis Reactor Materials and Methods」という表題の、PCT/US2010/032202の優先権を主張するものである。本出願は、USSN12/467,832の一部継続出願であるUSSN12/567,002の一部継続出願である。また、本出願は、12/467,832の一部継続出願であるPCT/US2010/032202の一部継続出願である。
本発明は、例えば炭化水素を熱分解またはクラッキングするために使用することができるような再生式熱分解反応器に有用な最新の材料、方法および装置に関連する。一つの非限定的な例では、本発明は、過酷性の高い、再生式熱分解反応器での、炭化水素供給原料をクラッキングするための使用に適した、最新の耐火性およびセラミック材料、装置ならびに方法に関する。特に、本発明は、コーキングおよび炭化物に対する貫入抵抗性および炭化物に対する耐食性のある熱分解反応器装置およびこれを用いた熱分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過酷性の高い炭化水素のクラッキングプロセスおよび機器の経済的な運用は、多数の競合する運用上および技術上の難題を克服することが必要とされる。高温およびプロセス応力は、従来の耐火性セラミクスを含めた、もっとも従来的装置の長期に渡る生存能力を上回る可能性がある。コンポーネントの物理的および熱的性能の考察に加えて、コンポーネントの化学的不活性および結晶安定性もまた重要な検討材料である。熱分解温度は、炭化水素供給原料からの炭素の存在および酸素の潜在的存在と合わせて、中途でのセラミック腐蝕を回避するための特別なセラミック冶金の難題を提示している。
従来型スチームクラッカーは、揮発性炭化水素、例えばエタン、プロパン、ナフサ、および軽油などをクラッキングするための一般的ツールである。他の過酷性のより高い、熱反応器または熱分解反応器もまた、従来のスチームクラッカーで適切に実施することができる、より高い温度で行われるいくつかのプロセスを含めて、炭化水素をクラッキングすること、および/または熱プロセスを実施するために有用である。従来のクラッキング機器およびプロセスと比較して、より高い温度で反応(例えば、>1500℃)およびプロセスが行われることにより、強い加熱および物理的応力条件に耐えるためのより複雑な、高価な、および特殊化された機器が通常必要となる。溶融温度、反応環境の非不活性さ、コンポーネントの強度、および堅牢性などの特性の限界が、一般的に多くのプロセスに対する限界を規定する。
【0003】
反応器材料に対する物理的温度限界に加えて、より低い温度で相対的に不活性な多くの従来技術のセラミック反応器材料は、より高い温度で、化学的分解、セラミック腐蝕、および/または結晶変化が起こりやすく、例えばプロセスの間の許容できないレベルの混入物の生成などによる、中途での分解および/またはプロセス妨害をもたらす。高温再生式熱分解反応器は、炭化水素を変換またはクラッキングすることが可能であると、当技術分野では一般的に知られているにもかかわらず、これらは、広範囲に及ぶ商業的使用を達成していない。これは多くに、それほど厳しくない基準の代替法、例えば水蒸気クラッキングなどと比較して、これらの反応器が商業的に経済的な規模にまで、または有用な寿命を有するように規模を増大させることに成功していないという事実によるものである。
【0004】
例えば、「Wulff」のプロセスは、アセチレン生成のためのより卓越した従来技術のプロセスのうちの1つを表す。Wulffは、好ましくは加熱交換媒体として、Hascheタイルのスタック(US2,319,679を参照)を含めた、環状の、再生式炉を開示している。しかし、このような材料は、強度、靭性、および/または化学的不活性が不十分であることが実証され、大規模な商業化を促進するための、特定の望ましい反応器コンポーネント、例えば反応器の流体管としての使用などに適していない。従来技術の再生式熱分解反応器系は通常、ベッド充填材としてアルミナを使用してきた。これら反応器系の商業的実施形態は、メタン供給物の高変換率の達成に十分な温度で作動していなかった。この1つの理由は、純粋なアルミナは、2050℃の融点を有し、実用的なアルミナは、不純物の影響が原因で、より低い融点を有することになるからである。実用的な最大使用温度は、通常実際の融点より200から300度低く、これを不純物が原因による低下と合わせて考慮すると、アルミナは、高温での熱分解反応器の使用(例えば、>1500℃、または>1600℃、または2000℃まで)に不適切となる。いくつかの「Wulff」の方法は、様々な耐火性材料の使用を開示しているにもかかわらず、メタンクラッキングに商業的に有用なプロセスまたは他の極めて高い温度でのプロセスは、このような材料を利用してこれまで達成されていない。上述の実用的な障害により、技術の大規模な実施が妨げられてきた。高温で材料が利用可能なこと、高い応力での用途は、大規模な、商業的、高生産性の、熱反応器を設計および運用する上でもっとも重大な問題の1つである。
多くのセラミクスは、中程度に高い温度において、いくらか不活性であるか、または化学的に安定する傾向にあるが、多くのセラミクスは、高温で化学的におよび/または構造的に不安定となり、不本意に短い時間内で、揮発し、化学相が変化し、浸炭し、分解し、および/または腐蝕する傾向にある。代表的な化学的および/または熱的に不安定であるセラミクスとして、これらに限らないが、特定のシリカ、アルミナ、ホウ化物、炭化物、および窒化物が挙げられる。このようなセラミクスの多くはまた、高温および/または関連するプロセス温度範囲全域で結晶構造の変化が生じることが知られている。このような変化はまた、容量の変化による応力破断を結果として生じる可能性があり、これがさらに、材料の強度または熱性能特性を低下させる可能性がある。
【0005】
例えばジルコニアは、特定の耐火性セラミクスに一般的に使用される結晶性の材料である。しかし、ジルコニアは、その原子が積み重なる方式(多形型転移)により、中程度の高温と極めて高い高温の間で結晶の変化が生じる。ジルコニアは、室温と約1200℃の間で単斜の結晶構造を有する。約1200℃より上で、ジルコニアは、正方の結晶構造へと変換する。さらにより高い温度、例えば2370℃より上などで、ジルコニアは、正方から立方の構造に変化し、2715℃で溶融する。これら変形は、結晶状態間での容積測定の縮みおよび増大を伴い、グレイン境界に沿って破断または切断が結果として生じる。多結晶のジルコニアでは、この正方−単斜の移行および切断が、進行性の強度の低下および潜在的不全を生じる。イットリア(Y23)およびいくつかの他の金属酸化物などの安定剤を、この結晶構造内に時々組み込むことによって、結晶のシフトを停止または防止することができ、より広範な温度スペクトル全域で結晶構造をより安定させることができる。しかし、このような組み込みは、切望しない熱力学的変化、例えば酸化物相から炭化物相への変化を防止するには十分となり得ない。
【0006】
特定の安定剤は、より揮発性があり、他の安定剤と比べて、高温での進行性の損失の影響を受けやすいことがわかった。より揮発性の高い安定剤は、より損失抵抗性の高い安定剤よりも、望ましくない場合がしばしばある。例えば、カルシア(CaO)および苦土(MgO)安定剤は、多くの望ましい性能特性を初期に達成する安定化セラミックを提供することが可能であるが、時間の経過と共にカルシアおよび苦土安定剤は、他の揮発性の低い安定剤と比べて、損失を受けやすい可能性がある。
【0007】
高温炭化水素熱分解に特定された、同様の、最近認識された問題は、セラミックコンポーネント内での炭化に関連する。この炭化により、セラミック酸化ジルコニウム内で炭化物−酸化物変換の化学反応を生じる可能性があり、この化学反応により、本明細書中で「セラミック腐蝕」の一種であると考えられている進行性のコンポーネント分解も引き起こされる。この高温の炭化水素関連腐蝕メカニズムは、セラミクスを用いた高温炭化水素熱分解についての懸案事項として、これまでは確認、理解、または認識されていなかった。炭化は、加熱により活性化されるプロセスであり、このプロセスでは、熱分解するにつれて、炭素を遊離する別の材料、例えば炭化水素などの存在下、セラミックまたは金属などの材料は、その融点より下の温度に加熱される。遊離した炭素は、曝露された表面およびセラミック結晶マトリックスの表面付近内部に浸透する可能性があり、コークスとして空間的領域に残るか、またはより高い温度でセラミックと反応することによって炭化セラミックを形成する。このような炭素による浸透は、時間の経過と共に、セラミック材料(例えば商業的な炭化水素熱分解反応器での長期使用に本来なら必要とされるものなど)の機械的および化学的特性に不利な影響を与える可能性がある。厳しい温度および周期的な温度変化が原因のセラミックコンポーネントの不安定さおよび進行性の損失はまた炭化の一因となり得る。問題は、セラミックマトリックス細孔内での炭素浸潤およびコーキング、ならびに付随する、切望しない炭化物酸化物の相互作用の化学反応を含み、コークス増大が原因のミクロ破断を含めた、セラミックマトリックスの進行性の腐蝕および分解が結果として生じる。このような問題は、過酷性の高い、炭化水素供給原料の熱分解において特に興味深い(例えば、>1500℃)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
熱分解技術は、炭素の浸透、炭化、および/または酸化物−炭化物の腐蝕に耐えるまたはこれを回避するセラミック組成物を必要とする。所望の材料は、特に炭化水素熱分解に関して、大規模な、商業的用途に要求される、必要な構造的完全性、結晶安定性、相対的に高い熱伝達能力、および化学的不活性を同時に提供および維持すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、炭化水素供給原料の熱分解に関し、一態様において、熱分解反応器内で炭化水素供給原料を熱分解するのに有用な本発明の材料を含み、好ましくは一部の実施形態において再生式熱分解反応器、およびさらなる他の実施形態において、逆流タイプの再生式反応器に関する。本発明の装置は、炭素の堆積、炭化物−酸化物相互作用、ならびに付随するセラミックの腐蝕およびコンポーネント分解に抵抗性がある。別の態様では、本発明は、安定剤の損失に抵抗性があり、広範な温度範囲の全域で結晶構造のシフトに対して抵抗性がある、安定化ジルコニア耐火性セラミックを提供する。開示された安定化ジルコニアセラミックは、炭化物−酸化物相互作用腐蝕に耐え、これによって、セラミック腐蝕が原因の進行性の性能劣化に耐える。一実施形態において本発明は、1200℃以上および時には1500℃以上、または一部の実施形態において2000℃以上の温度において、炭化水素供給原料を熱分解するのに有用な炭化物−酸化物耐食性再生式熱分解反応器装置を含む。
一部の実施形態において、本発明は、炭化水素供給原料を熱分解するための反応器装置であって、この装置が、酸化物の形態での耐火性材料を含む反応器コンポーネントを含み、この耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、i)およびii)のうちの少なくとも1つに対して:i)酸素分圧10-15バール、炭化ジルコニウムの炭素分圧より上の炭素分圧、および同じ温度で酸化ジルコニウム相転移を有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点の温度より下の温度で曝露された場合、およびii)酸素分圧10-15バールを有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点より上の温度で曝露された場合、酸化物形態のままである、反応器装置に関する。
【0010】
他の実施形態において、本発明は、炭化水素供給原料を熱分解するための反応器装置であって、この装置が、酸化物形態での耐火性材料を含む反応器コンポーネントを含み、この耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、炭素分圧10-11バール(1×10-11)、酸素分圧10-15バールを有する気体に、温度2050℃で曝露された場合、酸化物形態のままである、反応器装置を含む。他の多くの実施形態において、反応器装置は、再生式熱分解反応器装置を含む。様々な他の実施形態において、再生式熱分解反応器は、逆流再生式反応器装置を含む。多くの反応器実施形態は、反応器を加熱するために遅延燃焼プロセスを利用する。多くの実施形態において、耐火性材料は、2010℃以上の融点を有し、他の実施形態において、2160℃以上の融点を有する。
他の態様において、本発明は、第1の反応器と、流れが第1の反応器と連通している第2の反応器とを含む炭化水素供給原料を熱分解するための、再生式、耐火性、耐食性の熱分解反応器系であって、第1の反応器および第2の反応器のうちの少なくとも1つが、酸化物形態での耐火性材料を含み、この耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、炭素分圧10-11バールを有する気体混合物に、基準酸素分圧10-15バールおよび温度2050℃に曝露された場合、酸化物形態のままである、熱分解反応器系を含む。
さらなる他の態様において、本発明は、熱分解された炭化水素供給原料の存在下、耐火性材料の炭化物−酸化物セラミック腐蝕を軽減するための方法であって、炭化水素供給原料を熱分解するための熱分解反応器系の加熱領域に、酸化物形態での耐火性材料を含む装置を提供するステップを含み、この耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、炭素分圧10-11バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、温度2050℃で曝露された場合、酸化物形態のままである方法を含む。他の実施形態において、本発明は、耐火性材料の蒸気圧力が、2000℃で10-7バール以下の装置を含む。
【0011】
本発明の様々な他の態様は、熱分解反応器系を用いて炭化水素供給原料を熱分解するための方法であって、(a)炭化水素供給原料を熱分解するための熱分解反応器系の加熱領域に、酸化物形態での耐火性材料を含む装置を提供するステップであって、この耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、炭素分圧10-11バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、温度2050℃で曝露された場合、酸化物形態のままであるステップと、(b)加熱領域を、1200℃以上の温度に、または時には1500℃以上に加熱するステップと、(c)炭化水素供給原料を加熱領域へ導入するステップと、(d)加熱領域からの熱を用いて炭化水素供給原料を熱分解するステップとを含む方法を含む。
【0012】
一部の実施形態において、本発明は、イットリア安定化セラミックを含み、耐火性材料の総質量に対して、少なくとも21質量%のイットリアを含む耐火性材料を含み得る。しかし、炭素濃度および部分的圧力にもよっては、50質量%未満のイットリア濃度を有するこのような実施形態の寿命は、いくつかの用途に対しては受け入れ難いほど短いこともある。他の実施形態において、耐火性材料は、基本的にセラミック材料(例えば、ジルコニア)およびイットリアからなり得るが、やはり少量の他の添加剤、例えば製造および処理用の添加剤などが存在する。多くの用途において、本発明の材料は、炭化水素供給原料を熱分解するために使用される熱分解反応器の使用に適していてもよい。多くの実施形態において、耐火性材料はまた、耐火性材料の容量に対して、多孔度2〜28容量%、または5〜28容量%を有することができる。本発明のある態様では、耐火性材料は、単一モードまたは通常のグレインサイズ分布を含むが、他の実施形態において、耐火性材料は、マルチモードのグレイン分布を含む。
さらなる他の実施形態において、耐火性材料を提供するステップ(a)は、耐火性材料の総質量に対して、少なくとも50質量%のイットリア、または少なくとも80質量%のイットリア、または少なくとも90質量%のイットリア、または実質的にすべてのイットリアを含む耐火性材料を提供するステップを含む。イットリアの質量パーセントとは、純粋なイットリウムおよび/またはその中にイットリウムを含む化合物、例えばイットリア酸化物など(熱力学の相安定性など本発明の追加の必要条件および融点を満たすもの)の質量パーセントを含む。イットリアは、単に一つの代表的な、適切な化合物にすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1(a)】本発明の代表的な用途に従い、逆流熱分解反応器系を再生することにおける、主要なプロセスのステップの単純化された、図表による例示である。
【図1(b)】本発明の代表的な用途に従い、逆流熱分解反応器系を再生することにおける、別の主要なプロセスのステップの単純化された、図表による例示である。
【図2】本発明の一用途の実施形態を全般的に例示した、別の単純化されたプロセス流れ図である。
【図3】対応する規準化された耐熱衝撃性を例示するためにさらに本明細書中に記載されている、1〜5に類別された様々なセラミック試料の応力クラッキングの写真の例を提供している。
【図4】2000℃でのイットリウム−酸素−炭素系に対する代表的な相安定性の図を提供している。
【図5】2000℃でのジルコニウム−酸素−炭素系に対する相安定性の図の図解を提供している。
【図6】一連の温度に渡り、酸素分圧10-15バールでの計算した炭素分圧の図解を提供している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、最新の耐火性タイプセラミクスおよびこの使用に関する。様々な態様において、本発明は、高温(例えば、>1500℃)の化学反応、変換、クラッキング、および/または、例えばこれだけに限らないが炭化水素供給物などの供給物の熱変化を実施するための熱分解反応器およびプロセスを用いて使用するための特定の用途を有する、材料、コンポーネント、装置、およびプロセスを含む。本発明の態様として、これまでに知られている既知のセラミクスと比較して、高温安定性が改善され、コンポーネントの推定寿命がより長くなり、および/または1つもしくは複数のこのような特性の推定寿命を超え得る性能特性が持続されるセラミックコンポーネントおよびこれらを用いた装置が挙げられるが、これらに限らない。「熱分解」という用語は、本明細書で使用する場合、例えば炎燃焼炉などにより直接的に、または例えば加熱された媒体からの発熱反応、燃焼、または熱伝達などにより間接的に生成または使用されるかどうかに関わらず、炭化水素供給原料に分子の変換、反応、改質、分解、またはクラッキングを起こして中間物流または生成物流にするための、熱または熱のエネルギーの実質的にいかなる使用をも含むと定義することができ、1つまたは複数の他のプロセス、例えば、これらだけに限らないが触媒作用、水素付加、エステル化、酸化、還元などによる補足を含んでもよく、希釈剤、溶媒など、および/または揮散剤を含んでもよいと定義することができる。
【0015】
本発明は、炭化およびセラミック腐蝕の問題に抵抗する、またはこれを回避するセラミックまたは耐火性材料組成物を提供する。本発明の材料はまた、結晶の安定性を維持し、高温へのより長い曝露、大幅な温度スイングの周期、および供給原料および反応材料の周期的流れが原因の応力の周期に耐えることができる。本発明の態様は、高温熱分解プロセスの強化された大規模な商業化を促進する特定の有用性を有し得る。代表的な適切なプロセスとして、メタンまたは他の炭化水素供給物、例えば粗製のものまたは石炭からアセチレンまたはオレフィンへの高温熱分解反応器変換、石炭気体化プロセス、syn−gasプロセス、スチームクラッカーなどを挙げることができるが、これらに限らない。代表的な装置として、熱分解反応器、逆流反応器、再生式反応器などを挙げることができるが、これらに限らない。他の代表的反応器として、遅延燃焼反応器、気体化反応器、合成ガス反応器、ならびに水蒸気クラッキング反応器および炉などを挙げることができるが、これらに限らない。他の代表的な本発明のコンポーネントとして、これらに限らないが、高温(例えば、>1500℃)での改善された機械的強度および耐熱衝撃性から恩恵を受ける、技術的に設計された、さもなければ特別に設計された形状、機能、構成、複雑さ、または不規則な配置を特徴とする反応器コンポーネントおよび装置を挙げることができる。このような改善はまた、これに関連する改善されたプロセスをもたらすこともできる。
【0016】
一態様において、本発明は、炭化、熱力学的化学変化、安定剤の進行性の損失、炭素浸透、および炭化物−酸化物セラミック腐蝕に特に抵抗性のある安定化セラミック組成物を提供し、これにより、高温および/または反応性の高い環境への曝露下で結晶構造を保つ。耐食性および粒内の安定化の維持から恩恵を受ける代表的特性として、以前の技術のこのような総合した特性と比較した場合、特定の性能特性、例えばこれらだけに限らないが、曲げ強度または破断係数(MOR)、規準化された耐熱衝撃性、および高温での化学的安定性などを挙げることができる。このような改善は、許容できないコンポーネントの寿命が原因で、これまでは技術的および/または経済的に不利な立場に置かれていたプロセスおよび装置の大規模な商業化を促進することができる。
一つの形態では、本発明の材料には、イットリア濃度に続く濃度で他の安定化化合物または元素も存在し得るが、イットリア(Y23および/またはイットリウム含有化合物を含む)により主に安定化された、安定化ジルコニアセラミック材料が含まれる。イットリアは、存在する安定化ジルコニア組成物の総質量に対して、少なくとも21質量%、および多くの実施形態において、少なくとも25質量%、および多くの他の実施形態において、少なくとも28質量%、または少なくとも30質量%のイットリアの量で存在する。多くの実施形態において、ジルコニアの少なくとも一部分は、十分に安定化しており、他の実施形態において、存在する実質的にすべてのジルコニアが十分に安定化している。一般的に、安定剤の進行性の損失および進行性の炭化物−酸化物セラミック腐蝕という不利益なリスクを回避するために、十分に安定化したジルコニアが好ましいものとなり得る。ジルコニアおよび安定化ジルコニア実施形態に関連する追加の材料は、2009年5月18日に出願された、「Pyrolysis Reactor Materials and Methods」という表題の親特許出願、シリアル番号米国第12/467,832号の中に見出される。
【0017】
本発明は、1500℃を超える温度で、炭化水素供給原料を熱分解するための分解反応器装置内で使用するのに適した耐火性材料を提供し、これらの温度は、活性のある、炭素が豊富な環境において炭化およびセラミック腐蝕に対して抵抗性があり、またはこれを回避する。炭化および炭化物−酸化物セラミック腐蝕の不利益な影響を回避するという所望の機能を達成するため、本発明によるセラミック組成物は、適切に高い融点を有する熱力学的に安定した酸化物、例えば、イットリウム酸化物(イットリア)などを利用する。ある高い温度で、炭素豊富な熱分解環境において、十分に安定化したジルコニア(例えば、少なくとも14質量%または少なくとも18質量%または少なくとも21質量%の安定剤)では、商業的使用の許容可能な期間に対して炭化およびセラミック腐蝕を防止する目的を十分に達成しない可能性がある。酸化物安定した、耐火性材料のさらに増加した量が、このような目的を達成するために必要である。本発明の材料は、少なくとも50質量%の熱力学的に安定した酸化物材料、(例えば、これだけに限らないがイットリア)を含み、多くの実施形態は、少なくとも80質量%のこのような材料を含み、さらなる他の実施形態は、少なくとも90質量%のこのような材料を含む一方で、さらなる他の実施形態は、実質的にすべてこのような安定した酸化物材料で構成され、またはさらにはこのような安定した酸化物材料から実質的に成る。
【0018】
新しく特定された問題のプロセスであるいわゆる炭化物−酸化物腐蝕は、酸化物から炭化物へのジルコニア化合物の移行の間、次いで時には、酸化物へ戻る間の、付随する切望しない炭素沈殿および付随する切望しない形態学的構造および結晶構造の変化と共に観察された影響について記載している。このような構造的変化はまたミクロの破断を促進させ、これが構造的に弱点につながり、さらなる炭素浸透および腐蝕のための経路の増加をもたらす。例えば、高温(例えば、>1500℃)および高い炭素分圧で、酸化ジルコニウム(ZrO2)は、固形炭素と接触するか、または炭素含有気体中にある場合、中間相としてオキシ炭化ジルコニウムZr(Cxy)を介して、炭化ジルコニウム(ZrC)に還元し得る。ZrCが、中程度の高温(>500℃)で、酸素含有気体を含有する酸化雰囲気内に曝露された場合、ZrCは、中間相としてZr(Cxy)を介して、変換されてZrO2に戻る。原子の酸素は、ZrC結晶格子の中間部の空孔において、炭素に取って代わり、中間体Zr(Cxy)を形成する。Zr(Cxy)の酸化を継続することにより、ZrC/ZrO2界面において炭素沈殿が生じる。このようなZrCの酸化による炭素の維持は、プロセスの流れからの炭素のさらなる堆積および積み重ねを引き起こし、さらに、周期性の酸化物−炭化物−酸化物移行問題を悪化させ、多孔度を増加させる。変質した結晶構造には、機械的強度および耐熱衝撃性の劣化が生じる。
【0019】
酸化物という用語は、追加の明細書なしに本明細書中で使用される場合、第一に酸素と分子的に組み合わせられ、具体的には、炭素と第一に組み合わせられない1つまたは複数の元素を意味するとされる。炭化物という用語は、追加の明細書なしに本明細書中で使用される場合、炭素と分子的に組み合わせられるが、酸素との分子的組合せもまた含み得る1つまたは複数の元素を意味するとされる。よって、オキシ炭化ジルコニウムZr(Cxy)などの材料は、この用途の目的に対して、炭化物であると一般的に考えられる。具体的に、酸化物は、本発明において別途示されていない限り、約10モルパーセント未満の炭素、より好ましくは5モルパーセント未満の炭素およびさらにより好ましくは1モルパーセント未満の炭素を有する耐火性材料である。炭化物は、本発明において別途示されていない限り、約10モルパーセントを超える炭素を有する耐火性材料である。
【0020】
問題をさらに説明すると、逆流反応器条件において、材料は、酸化/浸炭気体の無数の繰り返しの対象となる。これら条件下で、ジルコニアは、その形態学的な形を徐々に変化させ、「キイチゴ様」グレイン形態となることが観察された。キイチゴ様グレイン構造は、炭化物−酸化物セラミック腐蝕の、目に見える徴候であり、試験材料の走査電子顕微鏡による(SEM)試験によって判定することができる。キイチゴ様グレイン構造は、周期性の移行により引き起こされると考えられ、表面積の増加につながり、これが次に、炭素のさらなる積み重ねをもたらし、次によりさらなる周期性腐蝕への移行をもたらす。腐蝕が一度開始してしまうと、この作用が許容できないレベルの材料劣化を引き起こすまで、このプロセスが促進される可能性がある。
【0021】
一態様において、本発明は、炭化水素供給原料を熱分解するための反応器装置であって、この装置が、酸化物形態での耐火性材料を含む反応器コンポーネントを含み、この耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、炭素分圧10-11バール(1×10-11)、酸素分圧10-15バールを有する気体に、温度2050℃で曝露された場合、酸化物形態のままである装置を含む。他の多くの実施形態において、反応器装置は、再生式熱分解反応器装置を含む。様々な他の実施形態において、再生式熱分解反応器は、逆流再生式反応器装置を含む。多くの反応器実施形態は、反応器を加熱するための遅延燃焼プロセスを利用してもよい。多くの実施形態において、耐火性材料は、2010℃以上の融点を有し、さらなる他の実施形態において、2160℃以上の融点を有する。炭素および酸素の分圧を測定するために使用される気体は、述べられた温度で炭素種および酸素種の両方を含む基準気体(または気体混合物)である。このような温度で述べられた炭素および酸素の分圧を含む実質的にあらゆる気体は、酸化物安定性を求めるために使用することができる。多くの態様において、基準気体は、2050℃で、例えば10-11バール、(任意の試験方法または既知の物理的特性で測定)の炭素分圧および例えば10-15バールの酸素分圧を有すると特定された実験室の気体試料であってよい。セラミックまたは耐火性材料試料がこの基準気体に曝露された場合、試料材料は、酸化物形態のままである。要求されている融点と関連してこのような必要条件を満たす材料は、本発明に従い、炭化および/またはセラミック腐蝕を防止するために許容可能となり得る。
他の実施形態において、耐火性材料は、炭素分圧10-10バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、1800℃〜2100℃の全域に渡る温度で曝露された場合、酸化物形態のままである。
【0022】
本発明の耐火性材料は、上記に述べた難題を克服する。ZrO2とは異なり、より熱力学的に安定した酸化物は、炭化物−酸化物移相問題を回避できることがわかった。例えば、イットリウム酸化物またはイットリア(Y23)は、炭素含有気体の存在下、熱力学的に安定しており、イットリア炭化物(YC)を形成しない。切望しない化合物イットリウム炭化物(YC)は、Y23からではなく、金属イットリウム(Y)から形成される。安定した酸化物形態(例えば、Y23)は、ジルコニアと比較して、炭素または炭素含有気体に対して相対的に不活性(例えば、熱力学的に安定している)であるため、より安定した酸化物形態(例えば、Y23)が、炭化物から酸化物へ不利益な移行を抑制するようにみえる。驚くことに、安定したセラミック酸化物(イットリアまたは別の適切なセラミック酸化物に関わらず)の十分なレベルにおいて、炭化物−酸化物腐蝕メカニズムが、阻止またはさらに防止できることがわかった。多くの実施形態において、好ましい濃度の安定した酸化物は、セラミック材料の総質量に対して、少なくとも50質量%であると判定されている。他の適切な、および時にはより好ましいレベルの安定した酸化物形態は、このような質量%レベルでのこのような適切な酸化物の混合物を含めて、少なくとも70質量%、80質量%、90質量%、95質量%、99質量%、実質的に100%、または100質量%であってよい。安定した酸化物が作用するメカニズムは、依然として完全に理解されておらず、ある推測および不確定の対象であるが、本発明の方法および材料配合物は、炭化および炭化物−酸化物腐蝕メカニズムを阻害または回避することに成功したと判定されている。
【0023】
高濃度の適切な酸化物、例えばイットリアなどに加えて、高濃度のカルシア(CaO)、苦土(MgO)、および/またはセリア(CeO2)もまた、このような腐蝕に対する限定されたいくらかの耐食性を提供し得る。しかし、多くの高温炭化水素用途に対して、カルシアおよび苦土安定剤は、イットリアより揮発性があり、したがって組成物内のこのような他の安定剤材料の存在は、排除されることはないが、安定化させる酸化物成分としても、イットリアと比べて潜在的に価値が低いことがわかった。多くの実施形態において、安定した酸化物耐火性材料は、2000℃で10-7バール未満である蒸気圧力を有する。さらに、適切な酸化物は、熱力学的安定性に加えて、1500℃を超えて2000℃までの熱分解温度で、長い期間の間、実用的用途に対して、2060℃以上の融点を有するべきであることがわかった。適切な酸化物はまた好ましくは2110℃以上、または2160℃、または好ましくは2300℃以上の融点を有することができる。
一部の実施形態において、耐火性材料は、Al、Si、Mg、Ca、Y、Fe、Mn、Ni、Co、Cr、Ti、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Sc、La、およびCe、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される1つまたは複数の「第2の酸化物」さらに含み得る。第2の酸化物は、例えば不純物として、または汚染を介して、または焼結、アニーリングもしくは他の製造プロセスの結果として、単に偶然に存在するだけでもよい。第2の酸化物はまた、例えば特定の特性または使用、例えば製造中の加工性などを改善するために目的をもって加えることができるか;または熱処理および存在する他の材料からの副生成物として、生成するおよび堆積させることもできる。安定化ジルコニアの形成されたコンポーネント中の第2の酸化物の量は、形成された安定化ジルコニアコンポーネントの質量に対して、通常、ほぼ存在しないから5質量%まで、または0.001質量%存在するから10質量%まで、または一部の実施形態において、0.01質量%から5質量%、または通常さらに他の実施形態において、0.1から3質量%の範囲であってよい。
【0024】
本発明によると、炭化水素供給原料の高温熱分解中のセラミック材料の炭化を回避するために満たされるべき2つの材料の特徴が存在する。第1に、材料は、高い融点を有するべきである。第2に、材料は、高い炭素活量を有する熱分解気体混合物に曝露された場合、酸化物形態のままでいることへの熱力学的優先性を有しているべきである。
【0025】
高温再生式熱分解反応器のための満足な耐火性材料は、従来の技術の多くの元では好ましい材料であった純粋なアルミナ(2050℃)の融点より高い融点を有しているべきである。不純物および実用的使用限界が原因で、アルミナは、1500℃より上の温度において、商業的熱分解に適していなかった。反応器の高温域での使用に対して満足な材料は、2060℃以上の融点を有する。より好ましい材料は、2110℃より上の融点を有し、さらにより好ましい材料は、2160℃より上の融点を有する。
炭化および炭化物−酸化物腐蝕に耐える耐火性材料の能力を定義する別の特徴は、熱分解条件下で酸化物形態の材料が安定している程度である。すべての熱分解条件下で安定している酸化物形態を有する材料は、炭化物−酸化物腐蝕のないことが判明している。非限定的な代表的材料は、純粋なイットリアである。ほとんどの熱分解条件下で安定した酸化物形態を有する材料は、炭化物−酸化物腐蝕に耐食性があることが判明している。高イットリアジルコニアは、この分類に入る。非限定的な例は、高イットリアジルコニア、例えば21質量%を超えるイットリア、または28質量%を超えるイットリア、または40質量%を超えるイットリア、または50質量%を超えるイットリア、または70質量%を超える、または80質量%、または90質量%または実質的にすべてイットリアなどである。熱分解条件の大部分で安定した炭化物形態を有する材料は、受け入れ難いほど急速な炭化および炭化物−酸化物腐蝕の対象となる可能性があり、よって炭化水素熱分解反応器の高温域での使用に適していないこともある。非限定的な例として、不安定化したおよび低イットリアジルコニア(例えば、<11.4質量%のイットリア)は、この分類に入る。熱力学的安定性の詳細な記載が、以下に続く。
【0026】
相安定性の図を、安定した固形種の範囲の境界を計算することにより作成した。これらの境界を、環境変数、例えば酸素種および炭素種の活量または分圧などの関数としてプロットする。ここで、「活量」という用語は、混合物中の種の有効濃度を指す。炭素に対して、種Cは、気体相種として標準的に見なされるか、または測定されることできはないが、炭化水素混合物中のその気体相濃度(または気体法則「活量」)は、熱力学平衡手順を介して他の気体相(例えば炭化水素)種との関係で計算することができる。この気体相炭素(Cなど)の活量(または分圧)を本明細書中で使用することによって、耐火性材料の酸化物および炭化物に対する安定性の環境を定義する。「分圧」という用語は、気体混合物中のガス状の種に起因する、総圧力の有効な画分である。言い換えると、気体混合物中、この中の単一の気体の分圧とは、これが単独で、この容量を占めていたなら、このような気体が有することになるような圧力である。分圧は、ガス状種に対する活量を数値的に概算することに注意されたい。実際の図は、HSC Chemistry[Version.5.11、Outokumpu Research Oy、Finland(2002)]として知られた市販のソフトウエアを用いて作成されたが、基礎をなす計算は、熱力学分野の当業者であれば行うことができる。この種の計算は、2つの固形種の間、それに加えて環境種との間の平衡を表現する質量作用方程式を記録することを含む。次いでこれら2つの固形種の活量を、1に設定することによって、これらの共存を示し、これら2つの固形種の間の範囲境界を、環境変数、例えば炭素分圧または酸素分圧などの関数として、数学的に定義する代数方程式へと、質量作用方程式を変換する。次いで同様の計算を、固相のすべてのペアに対して反復することによって、相安定性の図を描くことができる。
【0027】
例示的例として、図4は、2000℃でのY−O−C系に対する相安定性の図を描いている。y軸にプロットした炭素分圧は、1〜10-50の範囲に及び、x軸にプロットした酸素分圧は、1〜10-50の範囲に及ぶ。図4において、炭化物、酸化物または金属イットリウム相が安定している支配系は、炭素および酸素分圧により定義される。同様に、図5は、2000℃でZr−O−C系に対する相安定性図を描いている。図5において、炭化物、酸化物、または金属ジルコニウム相が安定している支配系は、炭素および酸素分圧により定義される。
【0028】
図4を参照されたい。イットリウム酸化物(Y23)が、炭素分圧pC(g)=1.0×10-11バールおよび酸素分圧pO2(g)=1.0×10-15バールを有する熱分解気体混合物に曝露されたと仮定して、図4の熱力学的相安定性の図は、Y23(酸化物相)が安定した相のままであることを教示している。しかし、図5に反映されているように、酸化ジルコニウム(ZrO2)が、炭素分圧pC2(g)=1.0×10-11バールおよび酸素分圧pO2(g)=1.0×10-15バールを有する同じ熱分解気体混合物に曝露された場合、図5の熱力学的相安定性の図は、ZrCは安定した相であるため、ZrO2がZrCへと変換することを示している。一度炭化ジルコニウム(ZrC)が形成されると、ジルコニア(ZrO2)セラミックは、炭化および炭化物−酸化物腐蝕の対象となる。
イットリウムの炭化物相と酸化物相の両相の共存のための境界条件を以下の方程式で計算する。
23+4C(g)=2YC2+1.5O2(g) [1]
同様に、ジルコニウムの炭化物相と酸化物相の両相の共存のための境界条件を以下の方程式で計算する。
ZrO2+C(g)=ZrC+O2(g) [2]
例示的な例として、表Aは、典型的な炭化水素熱分解条件である、1600℃〜2200℃の範囲の温度および酸素分圧10-15バールで計算した炭素分圧値を要約している。
【0029】
表A: Y-O-CおよびZr-O-C相安定性の図に対する、pO2(g)=1.0×10-15バールでのpC(g)値(バール)
【表1】

【0030】
例えば、2000℃およびpO2(g)=1.0×10-15バールで、イットリウム炭化物(YC2)は、2.26×10-9バールを超える炭素分圧で安定し、イットリウム酸化物(Y23)は、2.26×10-9バールより低い炭素分圧で安定している。pC2(g)=2.26×10-9バールにおいて、YC2およびY23は両方とも共存する。同様に、2000℃およびpO2(g)=1.0×10-15バールで、炭化ジルコニウム(ZrC)は、2.53×10-12バールを超える炭素分圧で安定し、酸化ジルコニウム(ZrO2)は、2.53×10-12バールより低い炭素分圧で安定している。pC2(g)=2.53×10-12バールで、ZrCおよびZrO2は両方とも共存する.したがって、pO2(g)=1.0×10-15バールおよび2000℃で、2.53×10-12バールおよび2.26×10-9バールの範囲のpC2(g)を有する熱分解気体混合物の条件下で、Y23およびZrCは両方とも安定している。
これらの点は、様々な安定した相が示された図6において図示されている。図6の線[1]は、表Aの特定のイットリア相および条件により定義された炭化物/酸化物の共存の条件を表している。この線は、イットリウム炭化物(YC2)相とイットリウム酸化物(Y23)相との間の熱力学平衡に対する炭素圧力(pC(g))を表している。図6の線[2]は、表Aの特定のジルコニウム相および条件により定義された炭化物/酸化物の共存に対する条件を表している。この線は、炭化ジルコニウム(ZrC)相と酸化ジルコニウム(ZrO2)相との間の熱力学平衡に対する炭素圧力(pC(g))を表している。本発明による適切な耐火性材料は、炭化物の形成に対してジルコニアより安定している。このような材料は、2050℃およびpO2(g)=10-15バールという条件で、pC(g)=10-11を超える、炭化物相と酸化物相との間の熱力学平衡に対して、炭素圧力[pC(g)]を有することにより定義される。本明細書は、2050℃およびpO2(g)=10-15バールの条件で、このpC(g)=10-11バールより上の炭化物/酸化物平衡線を有する材料のセットについて記載している。このような材料は、線[1]または[2]と同様の完全な平衡線ではあるが、2050℃での特定のpC(g)値が、10-11バールを超えるような位置でこれを有することになる。好ましい材料は、さらにより安定しており、炭化物相および酸化物相の間の熱力学平衡に対して、pO2(g)=10-15バールおよび温度1800℃〜2100℃の条件で、pC(g)=10-10バールを超える炭素圧力[pC(g)]を有する。
【0031】
理解されているように、「三重点」という用語は、本明細書で使用される場合、金属、金属炭化物および金属酸化物に対する三重点を具体的に指す。この図において、ジルコニウム三重点は、酸素分圧10-15バールにおいて、Zr、ZrC、およびZrO2がすべて互いに平衡状態にある温度および組成物の条件を表す。これら3つの相(Zr、ZrC、およびZrO2)に対して、三重点は、pO2(g)、pC(g)および温度の特定の組合せで起こる。この三重点を支配する熱力学の本質は、一つの自由度しか存在しないようになっている。変数pO2(g)、pC(g)および温度のうちの1つだけを、独断的に設定することができ(制限内で)、他の2つの変数が次に材料の熱力学により定義される。よって、例えば、図6では、pO2(g)値10-15バールが固定されることが選択され、三重点(pC(g)および温度)を定義する他の2つのパラメーターは、ジルコニウムの熱力学の結果である。この図の中で、これら2つの他のパラメーターは、10-12バールよりわずかに上で、温度が2060℃付近のpC(g)である。三重点の正確な位置は、科学者が熱力学および相挙動をより正確に測定することで継続して改良されていることを当業者であれば理解している。特定の切望しない相転移を回避することができることによって、材料が良い働きをすることを発明者が発見したので、本発明のある実施形態は、平衡および三重点の位置に関連して与えられた特性を有する材料を記載しているのはごく自然のことである。
【0032】
その結果、本発明による適切な耐火性材料は、pO2(g)値10-15バールでのジルコニウムの酸化物相より安定した酸化物相を有する材料を含む。このような耐火性材料は、ZrC、およびZrO2が平衡状態であるpC(g)より高いpC(g)で、酸化物形態のままである。交代に、このような耐火性材料は、ZrCおよびZrO2の間で相転移が起こるpC(g)より高いpC(g)で酸化物形態のままである。材料は、ZrC/ZrO2相境界が存在する任意の温度に対する酸化物安定性のこの熱力学的基準を満たすのであれば、本発明に対して適している。このような温度は通常、熱力学的安定性基準に適用される、10-15バールの同じpO2(g)値において定義される三重点の温度より下の温度である。
【0033】
他の実施形態において、本発明による適切な耐火性材料は、ジルコニアが安定した酸化物相を有さない温度およびpC(g)値において、安定した酸化物相を有する。このような耐火性材料は、ジルコニウム三重点よりも上の温度で、熱力学的に安定した酸化物相を形成する。例えば、このような耐火性材料は、10-15バールのpO2(g)値および10-15バールのpO2(g)値において、ジルコニウム三重点の温度より上の温度を有する気体に曝露された場合、酸化物相を形成する。別の実施形態において、このような耐火性材料は、10-15バールのpO2(g)値、10-15バールのpO2(g)値でジルコニウム三重点よりも上の温度、およびその同じ温度で相転移がZrとZrCの間に起こるpC(g)より高いpC(g)を有する気体に曝露された場合、酸化物相を形成する。
さらに、本発明による適切な耐火性材料はまた、酸化物形態での材料、および10-11バールを超える炭素分圧を有する熱分解気体混合物に、2050℃およびpO2(g)=10-15バールの条件で曝露された場合、酸化物形態のままである、熱力学的優先性も有する材料も含み得る。好ましくは、材料は、10-10バールを超える炭素分圧(pO2(g)=10-15バールおよび温度1800℃〜2100℃の条件で)で酸化物形態のままである。このような耐火性材料の非限定的な例は、イットリア(イットリウム酸化物、Y23)である。
【0034】
耐火性材料の融点は、2060℃以上であることも好ましく、この2060℃以上とは何年もの商業的経験により不十分と実証された、純粋なアルミナ(2050℃)の融点よりも約10℃高い。2060℃以上の融点を有する適切な耐火性材料が特に好ましい。これは、ずっとより高い温度で炭化水素供給原料を処理することが可能になるからである。よって、炭化水素供給原料を熱分解するための再生式熱分解反応器装置であって、逆流再生式熱分解反応器を含む装置は、i)およびii)を有する材料で構成される:i)2060℃以上の融点、ii)10-11バールを超える炭素分圧を有する基準気体に曝露された場合、酸化物形態でいることの熱力学的優先性。多くの実施形態において、好ましい反応器は、再生式反応器であり、他の実施形態において、反応器は逆流反応器である一方、さらに他の実施形態において、反応器は、遅延燃焼逆流再生式熱分解反応器である。
【実施例】
【0035】
(例1)
イットリアセラミック組成物を、50質量%の第1のgrit Amperit849.054Y23粉末(H.C.Starck)、30質量%の第2のgrit Y23粉末(平均粒度1μm、99.9%、Alfa Aesar製)および20質量%の第3のgrit GradeCY23粉末(H.C.Starck)を混合することにより調製した。約30質量%の追加の有機結合剤を、セラミック粉末と混合することによって、形成プロセスの間に素地強度を得た。この粉末を約3/4”(直径)×1.0”(厚さ)の大きさのハニカム形状(300cpsi)へと押し出した。次いで、押し出されたハニカム素地を、1600℃で4時間、空気中で焼結し、1900℃で4時間、アルゴン中でアニールすることによって、焼いたセラミック体を形成する。生成したイットリアセラミック体はまた、主に第1のgrit Amperit849.054Y23粉末由来の約15容量%多孔度を構成した。この残留する多孔性は、耐熱衝撃性をもたらす。生成されたイットリアハニカム試料を、逆流反応器内で、約24時間試験したが、この中で熱分解気体混合物は、炭素分圧約1.0×10-11バールを有する。試験した試料は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して顕微鏡によって調べたところ、炭化物−酸化物セラミック腐蝕の徴候は示さなかった。
【0036】
本明細書中の考察の大部分は、焼結後のコンポーネントおよび材料の大きさおよび濃度に関連するが、「グレイン」および「粒子」という用語は、本明細書中では交換可能なように使用される。焼結後に形成され、観察可能となる「グレイン」は、焼結前に混合され、合わせられた粒子混合物に由来する(これらの一部はまた、いくつかのグレインを含み得るが)。グレインの大きさまたは粒度とは、マルチモードのグレイン分布を構成するマトリックスの個々のグレインの有効な直径または幾何学的大きさを指す。グレインまたは粒子は、個々に定義できる実質的に均質な、ジルコニアまたはイットリアの単位またはセラミック材料またはコンポーネント全体を形成する他の粒状の材料である。グレインまたは粒子は、グレインの境界で一緒に焼結および結合することによって、形成されたセラミックコンポーネントを作り出す。統合化散乱法(Microtrac(登録商標)3500)を用いた動的光散乱およびレーザー光回析解析を使用することによって、平均粒度および粒度分布を求めることができる。Microtrac(登録商標)装置は、0.024〜2800μmの範囲の粒度を測定することができ、優れた装置間の一致、試料間の一致、装置内の再現性および粒子分布幅を提供する。
【0037】
「D50」またはレーザー光回折法により測定された平均粒度は、D50または平均直径として表された一種の平均粒度である。D50平均粒度は、粒度分布測定装置を用いて求められた値であり、粒度分布の特定のピークの統合された容量に寄与している最小および最大の大きさを求めた後の50%容量または質量分率値である粒子試料の切断直径を表す。同様にD90、D10、D99は、粒度分布のそれぞれ90、10および99%容量または質量分率に相当する。平均(D50)または任意の他の粒度切断値は、顕微鏡法、例えば光学顕微鏡法(OM)、走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)などにより測定することができる。顕微鏡法により測定した平均粒度値はまた、本分野で知られた方法により、D50値へと変換することができる。別法として、第1のグレインの粒度分布は、当技術分野で知られている篩およびメッシュによる分類方法で求めることもできる。
【0038】
粒子は、実質的に任意の形状とすることができる。多くの実施形態において、好ましい形状は、実質的に球状または寸法において非球状よりさらに球状であるような粒子形状であってよい。ある非限定的な許容可能な例として、球状、長円体、多面体、ゆがんだ球状、ゆがんだ長円体、ゆがんだ多面体の形状、角のある形、四角形、四面体、四角形、細長い形などが挙げられる。より小さいグレイン粒子の形状は、相対的により大きい粒子の形状より一般的に重要性が低い可能性がある。球状のグレインは、粉末処理および製作の間に密接な充填、密度、最適な多孔度、および流動性を提供するのに特に有利となり得る。第1のグレインの好ましい球状の形状は、2.5未満、または好ましくは2.0未満、または好ましくは1.5未満のアスペクト比により特徴づけることができる。極めて不規則な表面形状を有するグレインと比較して、一般的によりスムースな表面を有するグレインもまた好ましいものとなり得る。
球状の形状とは、その空間の固定された点から距離Rの位置にある(Rは、球の半径と呼ばれる正の実数である)、3次元空間(R3)のすべて点のセットである左右対称の幾何学的物体を指す。形状のアスペクト比とは、そのもっとも長い軸とそのもっとも短い軸との比率である。左右対称の物体のアスペクト比は、2つの測定値(例えば長さと直径)の比率によっても表現することができる。アスペクト比は、顕微鏡法、例えば光学顕微鏡(OM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、および透過型電子顕微鏡(TEM)などを、画像分析法ソフトウエア(2次元の形状が投影される)と組み合わせて測定することができる。
【0039】
一部の実施形態において、本発明の材料、コンポーネント、および反応器系は、0.01μmから2000μmまでの範囲のD50グレインサイズを有するイットリア安定化ジルコニアグレインを含み得るが、他の実施形態では、反応器系は、0.01μmから800μmの範囲のD50グレインサイズ、他の実施形態では、5μmから800μmの範囲のD50グレインサイズを有するイットリア安定化ジルコニアグレインサイズを含み得る。本発明の組成物はまた、他のグレインサイズを含んでもよく、これらの多くのは、少なくとも0.01μm、または少なくとも0.125μm、または少なくとも0.2μm、または少なくとも1μm、または少なくとも2μm、または少なくとも5μm、または少なくとも10μmの最小グレインサイズを有することになる。存在する他のグレインサイズに対する上限は、400μmまで、または200μmまで、または100μmまで、または50μmまで、または40μmまで、または20μmまで、または10μmまで、または5μmまで、または2μmまで、または1μmまでのグレインサイズを含み得る。グレインサイズの上述のリストは、単に代表的なものであり、完全なものではない。グレインサイズの他の同様の範囲は、本発明の組成物に有用である。サイズの好みは、調製される特定のコンポーネントおよびその意図される使用、温度範囲、および応力条件により求めることができる。例えば、寸法的により大きい、重たいコンポーネントは、より大きい範囲を含むより広範な範囲内でのグレインサイズを利用できる一方で、より複雑なまたはデリケートなコンポーネント、例えば薄い壁のあるハニカムモノリスまたは他の相対的にデリケートなまたは高い応力コンポーネントなどは、相対的により小さいグレインサイズ範囲から特に恩恵を受けることができる。
【0040】
これまで述べてきた通り、炭化および炭化物−酸化物セラミック腐蝕を制御するのに有用な最小イットリア濃度に加えて、最近になって、セラミック腐蝕を制御する上で多孔性も重要な役割を果たし得ることがわかった。多孔性は、機械的応力と熱応力の両応力の集中の散逸も可能にする一方で(特に亀裂伝播の阻止に対して)、マトリックス粒子の中で小さい規模のマトリックス柔軟性を促進する。多孔性は、本発明のセラミック材料の高い強度および耐熱衝撃性に関して重要な役割を果たすが、多孔性のマイナス面は、過大な多孔性、特に、細孔がセラミック体の外部表面に接続している開放気孔率は、セラミック構造内での炭素のコーキングおよび浸潤を可能にすることができ、これが次にセラミック体内部での局所的なセラミック腐蝕または炭素堆積をもたらし得る。驚くことに、過大な多孔性と過少な多孔性との間で、バランスを取るべきであることがわかった。本発明によると、多くの適切な耐火性材料は、5容量%未満、および他の実施形態において2容量%未満、または1容量%未満の多孔度を有する、またはさらに一部の実施形態においては、実質的に多孔度を持たない、極めて密度の高い材料を含み得る。このような密度の高い物体は、炭素浸透または炭化に対する抵抗性の改善から恩恵を受け得る。
【0041】
他の適切な実施形態は、わずかに多孔性である、またはいくらか多孔性であるセラミック体、好ましくは実質的に均一なサイズのおよび均等に分布した細孔を有するセラミック体であることによる、これまでに開示された機械的強度および耐熱衝撃性の利点をうまく利用するようなある多孔性を含んでもよい。一部の実施形態において、本発明の材料または組成物は、例えば、この範囲での様々な組合せを含め、少なくとも2容量%、またはいくつかの様々な実施形態において、少なくとも5容量%、または少なくとも8容量%、または少なくとも10容量%、または少なくとも15容量%、または少なくとも20容量%、または時には少なくとも25容量%、またはさらに28容量%までの最小多孔度の値を有する。しかし、より重要なことに、セラミック腐蝕問題を防止するという観点から、本発明の材料または組成物は、本発明の材料のかさ容積に対して、例えば10容量%まで、または15容量%まで、または20容量%まで、または25容量%まで、またはおそらく一部の実施形態において、さらに28容量%までなどの最大多孔度値を有する。本明細書で使用される多孔度範囲0〜28容量%は、炭化および炭化物−酸化物セラミック腐蝕を防止するという限定された目的で定義されているが、他の性能特性、例えばこれらだけに限らないが強度および耐熱衝撃性などを考慮に入れた後で、所望の、より特定された狭い多孔度範囲が定義される。多孔性の実施形態に対して、適切な多孔度範囲は、2〜28容量%であってよい。
【0042】
本発明による、十分に密度の高いまたは極めて密度の高い耐火性材料は、炭素浸透を制限しおよび熱による歪曲に強いという利点に恵まれることができる。このような実施形態、特に酸化物形態のものはまた、酸化物形態のままでいるための持続した純度および安定性に恵まれることができる。他の実施形態では、定義された多孔度の特徴は、亀裂形成を阻害し、亀裂伝播を阻止することにより、熱応力亀裂抵抗が改善されること、同時にマトリックス構造の一部の弾性変形を促進させ、これにより、応力のかかる、高温、周期的な熱用途における使用寿命が強化されることに起因し得る。多孔性はまた、通常の多孔性の低い、高密度の、高い強度のセラミクス、例えば一般的な耐火性および工業用の等級のセラミクスなどと比較して、熱吸収および散逸の改善のための高い表面積を提供する。多孔度の他の様々な機能のうちのいくつかとして、これらに限らないが、熱伝達のための表面積の増加、耐熱衝撃性の増加、亀裂伝播の軽減、曲げ強度の改善などが挙げられる。もっとも適切な密度または多孔度範囲を選択することは、セラミック腐蝕を制御することを含めた、これらおよび他の様々な性能目的を考慮し、バランスを取ることによって、ある特定の材料またはコンポーネントに対してもっとも望ましい多孔度を確定することにかかっている。形成されたセラミックコンポーネントのセラミックマトリックスの多孔度は、1500℃で少なくとも10分間の間素地を焼結後、20℃などの周辺温度で測定する。動作温度に長時間曝露後、およびアニーリング後、または1500℃より上、例えば1800℃までまたはさらに2000℃までの動作温度で、所望の多孔度の範囲を保持するのが好ましい。多孔度は、組成物全体に渡り、実質的に均一に分散しているのが好ましい。
【0043】
最大多孔度をこのような値に制限することは、本発明の材料またはコンポーネント内での元素炭素または炭素化合物の遊走を阻害する程度にまで(例えば、炭素および炭素化合物への限定された有効な浸透性)、他の細孔空間との細孔空間の相互接続性を、実際にではないとしても、効果的に制限する傾向にあることが最近になってわかった。この制限された浸透性は、炭化水素供給原料の高温熱分解中の、本発明の材料の細孔およびマトリックスの間への炭素侵入を軽減または制限するのに役立ち、これによって炭化物−酸化物セラミック腐蝕の可能性を軽減または制限する。炭素は、炭化水素熱分解中に本発明の材料またはコンポーネントの表面細孔およびおそらく一部の表面付近の細孔に依然として侵入し得るが、制限された多孔度は、炭素または炭素化合物への効果的な浸透性が欠けることにより、炭素がより深く浸透する、または材料またはコンポーネント全体に渡り散逸するのを妨げることになる。しかし、酸化物形態の適切な耐火性材料は、熱分解条件での濃縮した炭素の存在下でさえも、炭化物または他の形態への変化に熱力学的抵抗性を有するべきである。本発明の材料またはコンポーネントに対する最適なまたは許容可能な多孔度の範囲は、所望の最終のコンポーネント性能特性によるが、最小多孔度の値の1つまたは複数および最大多孔度の値の1つまたは複数、または明示により列挙されていない、最小および最大の間の値の任意のセット(例えば、実質的に0容量%〜28容量%の間)により定義された範囲内である。
【0044】
耐火性材料内および2060℃以上の融点を有するこのような材料における酸化物形態の存在により、炭化およびセラミック腐蝕を制御することが望ましいのに加えて、本発明のセラミック材料の全体の性能特徴はまた、少なくとも一部は、様々な他の本発明の材料の特徴の1つまたは複数、例えばこれらだけに限らないが、粒度および配列、または一部の実施形態においては、マルチモードの粒度および分布、材料の選択、安定化の程度、使用された製造法および技法、実際の多孔度、およびこれらの組合せなどにも起因し得る。しかし、多孔性と相当のイットリア濃度の組合せは、当業界でこれまでに知られていなかった、MOR曲げ強度、耐熱衝撃性、およびコンポーネント推定寿命の、別の点では改善された組合せを独特に維持する。これら他の性能パラメーターおよび特徴の効力および機能は、本発明と矛盾しない程度まで、それぞれの全体が本明細書に参照により組み込まれている、熱分解系のためのメタン供給原料に主に関連した、「Methane Conversion to Higher Hydrocarbons」という表題の、2006年12月21日に出願された、米国特許出願、シリアル番号第11/643,541号を含めた、以前の特許出願に記載されてきた。
【0045】
本発明の組成物、コンポーネント、および本発明の反応器の優れた耐熱衝撃性、相対的な化学的不活性、保存された結晶構造、改善された曲げ強度、および高温能力は、特に従来技術の耐火性および熱のコンポーネントおよび反応器と比較して、温度1500℃およびこれより高い温度、例えば1700℃まで、1800℃までの温度で、または一部の実施形態において、2000℃までの温度で、周期的な熱条件下で、結晶の安定性および構造的健全性を提供する。このような特質および特性は、従来の耐火物に取って代わることができ、またこれまでは経済的または技術的に達成可能ではなかった相対的に大規模な商業的用途においてプロセスの使用を促進することができるコンポーネントおよび反応器を促進することができる。特に、熱の安定した、形成されたセラミックコンポーネント、反応器、およびプロセスは、精製、石油化学、化学的処理、および他の高温用途において特定の用途を見出すことができる。本開示に従い提供された、改善された特性の組合せにより、商業的使用期間を1年超、例えば一部の用途ではさらに約10年まで促進することができると考えられている。
【0046】
粒子またはグレインは、単結晶または多結晶のいずれかとすることができる。多結晶のグレインは、定位が変わる、多くのより小さい結晶からできている。様々な種類のグレインを利用することができ、グレインとして挙げられるのは、凝集および焼結、溶解および粉砕されたもの、ならびに球状化したものなどであるが、これらに限らない。一つの形態では、グレインは、微細な粉末と、有機結合剤とからなる懸濁液をスプレー乾燥し、およびそれに続いて焼結することによって生成される、凝集されたおよび焼結された粉末である。別の形態において、グレインは、溶解および粉砕されるが、これは、アーク炉内で溶解し、冷たいブロックを粉砕することによって生成される。開示のさらに別の形態では、グレインを、例えばプラズマ炎光を用いて凝集物を微粒化するなど、球状化することにより、実質的に球状の形状の粒子を作り上げる。
【0047】
一つの形態において、本発明の材料およびコンポーネントは、例えば、これらだけに限らないが、従来のセラミック粉末製造および処理技法、例えば、混合、粉砕、圧縮または押出加工、焼結および冷却などの製造技法により、適切なセラミック粉末および結合剤粉末を必要な容量比率で、出発物質として使用して調製することができる。一般的に当技術分野で知られているように、例えば様々な製造、特性の調整、および処理用の添加剤および薬剤を包含することにより、特定のプロセスステップを、制御または調整することによって、所望の多孔度範囲および性能特性を得ることができる。例えば、2つ以上のモードの粉末、酸化物、保存剤および/または安定剤を、ボールミル内で、有機物の液体、例えばエタノールまたはヘプタンなどの存在下、粉末を互いに実質的に分散させるのに十分な時間、粉砕してもよい。過剰な結合剤粉末および液体を取り出し、製粉された粉末を、乾燥させ、ダイまたは型に中に配置し、圧縮し、押し出し、形成し、鋳造または他の方法で所望の形状に形成することができる。次いで生成した「素地」を少なくとも1500℃の温度、通常約1800℃までの温度で少なくとも10分間、しばしば、通常約10分間から約2時間の範囲の時間の間、および一部の用途ではさらに4時間までの時間の間焼結する。焼結作業は、酸化雰囲気、還元性の雰囲気、または不活性雰囲気、および大気圧または真空下で実施することができる。例えば、酸化雰囲気は大気または酸素、不活性雰囲気はアルゴン、還元性の雰囲気は水素とすることもできる。焼結雰囲気、温度、および窯環境ではまた、所望する通りまたは所望されずに、混入物またはセラミックコンポーネントの所望の/許可された成分として、第2の酸化物(これまでに本明細書中で考察してきた通り)をコンポーネントへ導入することができる。その後、焼結体を、通常周囲条件へと冷ます。冷却速度をまた制御することによって、特定のコンポーネントにおける結晶サイズおよび性能特性の所望のセットを得ることができる。
【0048】
一部の実施形態において、本発明は、単一モードまたは「単一モードの」グレインサイズ分布、または基本的に非モード的に規定された広範なグレインサイズ分布、または実質的に単一のグレインサイズ分布、またはこれらの組合せを有するセラミック組成物を含む。他の実施形態では、本発明は、マルチモードの(例えば、二峰性、三峰性など)グレイン分布、および/またはモードの定義を欠く実施形態を有するセラミック組成物を含む。しかし、セラミックジルコニア組成物、および酸化物−炭化物セラミック腐蝕に耐食性のある装置を調製する目的のためには、安定剤の種類(例えば、イットリア)、その最小濃度、および好ましくは制御された多孔度範囲も関連する検討材料であるのと比較して、特定のグレイン構造は、さほど関連した検討材料ではない。
【0049】
本発明は、単一モードのまたはマルチモードのグレイン分布に限定されず、本明細書中に教示された方法を介して、炭化に抵抗性のある実質的にいかなる適切なグレイン分布をも含み、また他の様々な望ましい性能特性、例えばこれらだけに限らないが強度、耐熱衝撃性、低い蒸気化、多孔性なども示す材料も含むことが好ましい。一部の実施形態において、材料の有利な物理的な性能特性および/または特徴(例えば、曲げ強度および耐熱衝撃性)は、セラミックグレインの密接な充填により部分的に強化または実現することができる。例えばマルチモードの実施形態において、二峰性のグレイン分布の1つのモードは、5〜2000μm、または5〜800μmの範囲のD50第1のグレイン粒度を含むことができ、保存剤コンポーネントを含むグレイン分布の第2のグレインモードは、少なくとも約0.01μmから、第1のグレインのD50グレインサイズの4分の1(1/4)以下の範囲のD50粒度を含むことができる。第2のグレインは、第1のグレイン内で実質的に均等に分散している。他の代表的な実施形態では、第2のグレインは、0.01から100μmの範囲のD50サイズ値を含み得る。他の実施形態では、例えば、第2のモードグレインは、0.05〜44μmの範囲のD50サイズ値を含み得るが、さらに他の実施形態では、第2のモードグレインは、0.05〜5μmの範囲のD50サイズ値を含む。例えば、一実施形態において、第1のグレインモードは、20〜200μmの範囲のD50サイズを含み得るが、対応する第2のグレインモードは、0.05〜5.0μmの範囲であってよい。さらに他の実施形態では、第2のグレインモードは、対応する第1のグレインモードのD50サイズの8分の1以下のD50平均サイズ直径を含み得る。一部の実施形態において、微細なモードグレインのD50サイズは、第1のモードグレインのD50サイズの10分の1を超えることはできないが(例えば第1のグレインモードよりも一桁以下小さい)、他の実施形態において第2のグレインモードのD50サイズは一般的に、第1のグレインモードのD50サイズよりも約2桁未満小さい(例えば、第2のグレインは、時には第1のグレインのD50直径よりも約100分の1以下小さい)。
【0050】
さらに他の様々な代表的実施形態に関して、安定化ジルコニアの第2のグレインのD50下限は、直径0.01または0.05または0.5または1または5μmであってよい。多くの実施形態に対する第2のグレインの安定化ジルコニアグレインについての実用的なD50下限は約0.1μmであってよい。このような小さいグレインは、少なくとも0.1μmのグレインのようには、均等に分布していない可能性があり、ほぼ同じサイズのグレインと一緒に溶融し、合体し合う傾向にあるという事実から、0.1μmより小さいグレインは、多くの用途において有用性が限定されてしまう傾向になり得る。直径が少なくとも約0.1μmである、安定化ジルコニアおよび安定剤グレインは、焼結中または焼結後にサイズが通常変化しないのに対して、ナノ粒子は、合わさることにより大きな粒子になる傾向になり得る。このようなモードが目的をもって挿入され、第3のまたは他のモードとして、または第2の酸化物として、粗い、第2のグレインモードと混合される場合を除いて、少なくともこれらの理由から、本発明の多くの実施形態の第2のグレインモードは、ナノ粒子D50サイズの粒を含むことはできない。通常、ジルコニアまたは安定剤のナノ粒子モードは、このようなグレインが十分に存在し、互いに合わさることによって、焼結後に第2のグレインモードを提供し、これによって、焼結後少なくとも0.01μm、より好ましくは焼結後に少なくとも0.1μmのモードグレインを提供する場合にのみ、マルチモード構造の第2のグレインモードと一般的に考えられてもよい。保存剤コンポーネント粒子を含めた、第2のグレインモードのD50上限は、直径500または100または44または20または15または10または5または1μmであってよい。第1のグレインの安定化ジルコニアのD50下限は、直径5または20または25または30または40または100μmであってよい。第1のグレインの安定化ジルコニアのD50上限は、直径800または500または200または100または50μmであってよい。しかし、その中の保存剤コンポーネント粒子に対する限界を含めた、第2のグレインモードに対するより低いサイズの限界は、第2のグレインモードに関連する他の粒度限界および範囲に対するサイズ限界と一致し、少なくとも0.01μm、時には好ましくは少なくとも0.1μmのD50直径である。上で参照した「第1の」および「第2の」グレインサイズは、単に、二峰性の実施形態の代表的なものにすぎない。多数のモードおよび非モード的に定義されたグレイン分布もまた本発明の範囲内である。これら他のモードまたはグレイン分布の種類において、適切なグレイン分布サイズは、代表的な「第1の」および「第2の」グレインの実施形態に関して考察された、列挙されたグレインサイズ範囲の実質的にいずれかの中にある。
【0051】
マルチモードの(二峰性の)グレイン分布の非限定的な例として、1〜20質量%の第2のグレイン粒子と80〜99質量%の第1のグレイン粒子を挙げることができる。別の非限定的な例は、1〜50質量%の第2のグレイン粒子と50〜99質量%の第1のグレイン粒子とを含むグレイン分布である。さらに別の非限定的な例は、1〜80質量%の第2のグレイン粒子と20〜99質量%の第1のグレイン粒子とを含むグレイン分布である。二峰性のグレイン分布のさらに別の適切な、非限定的な例として、20〜30質量%の第1のグレイン、例えばこれだけに限らないがD50粒度30μmと、70〜80質量%の第2のグレイン、例えばこれだけに限らないがD50粒度0.3μmなどが挙げられる。二峰性のグレイン分布の別の適切な、非限定的な例として、30〜40質量%の第1のグレイン、例えばこれだけに限らないが、D50粒度30μmと、60〜70質量%の第2のグレイン、例えばこれだけに限らないが、D50粒度0.3μmなどが挙げられる。二峰性のグレイン分布の別の適切な、非限定的な例として、50〜70質量%の第1のグレイン、例えばこれだけに限らないがD50粒度30μmと、30〜50質量%の第2のグレイン、例えばこれだけに限らないが、D50粒度0.3μmなどが挙げられる。二峰性のグレイン分布の別の適切な、非限定的な例として、85〜99質量%の第1のグレイン、例えばこれだけに限らないが、D50粒度30μmと、1〜15質量%の第2のグレイン、例えばこれだけに限らないがD50粒度0.3μmなどが挙げられる。二峰性のグレイン分布のさらに別の適切な、非限定的な例として、94〜99質量%の第1のグレイン、例えばこれだけに限らないが、D50粒度30μmと、1〜6質量%の第2のグレイン、例えばこれだけに限らないが、D50粒度0.3μmなどが挙げられる。
【0052】
他の材料特性が、本発の明一部の実施形態に対して、特に、熱分解反応器内の一部の耐火性材料およびセラミクスの過酷性の高い性能および大規模熱処理の用途に対するこれらの対応する適合性、すなわち、耐熱衝撃性および機械的曲げ強度(破断係数、「MOR」)に関して顕著な重要性を有しているものとこれまでに確認されている。他の特性、例えばこれらだけに限らないが、高温での結晶/化学的な安定性および靭性などもまた有利であり、ある用途に対して適切なセラミック材料またはコンポーネントを選択する際に考慮されるべきである。セラミックコンポーネントの有用な生涯に渡り、これらおよび他の特性を保持または維持することもまた通常望ましい可能性もある。コンポーネントにおけるこのような特性の寿命を維持することに関して、要素の1つは高温での結晶の/化学的な安定性である。適切に作り上げられたコンポーネントは、例えば安定剤の損失により、および/または炭化物−酸化物腐蝕などにより、時期尚早に分解しないこと、または結晶の変化を起こさないことにより、適切な寿命に渡りその耐熱衝撃性および機械的曲げ強度を保持すべきである。本発明は、本発明の保存剤および/またはセラミック耐食性の特徴を欠く材料におけるこのような特性の1つまたは複数有用な期間と比較して、結晶安定性、耐熱衝撃性、および機械的曲げ強度、ならびにおそらく他の関連した特性を長期間に渡り維持または保存するために機能する特定の特徴を取り込んでいる。
【0053】
上に参照した2つの性能特性(耐熱衝撃性および機械的曲げ強度)に関して、セラミックコンポーネントの耐熱衝撃性は,不具合または過剰な損害なしで材料が耐えることができる温度の最大変化として定義することができる。耐熱衝撃性は、評価パラメーターであるが、材料特性ではない。耐熱衝撃性の記載は、熱サイクルの種類、コンポーネント形状および強度、ならびに材料特性または要素に依存し得る。様々な仮定に依存する単純化された数学的表現を使用することによって、1セットの条件下での材料性能を表現することができる。別法として、数値的な分析法、例えば有限要素および応力歪み分析法などを用いて、さらに非常に複雑な分析を実施することもできる。しかし、材料の性能比較の目的のためには、定性的なまたは直接の比較による分析法もまた有用であり、より実用的である。耐熱衝撃性を、例えばASTMC1525で図示されているように、急速な水クエンチ実験を用いて評価することもできる。熱衝撃による損害は、通常急速な加熱の間または急速な冷却の間の熱応力および物理的応力の積み重ねから生じる。
【0054】
例えば、ASTMC1525耐熱衝撃性試験方法は、高い温度(例えば、1100℃)から、室温の水槽への、試験検体の急速なクエンチ(例えば、1”×1”×1/8”二乗、または2.54cm×2.54cm×0.32cm二乗)という実験原理に基づき構築されている。水でクエンチ後、検体を乾燥させ、染料を侵入させることによって、開口亀裂と閉鎖亀裂の両方を調べる。例えば、Zyglo(登録商標)水洗性染料浸透剤を使用することができる。ジルコニア試料は、通常白色または黄色なので、ピンクの染料により、亀裂の鮮明な描写が得られ、背景またはグレイン境界から亀裂を区別するのに役立つ。各検体における単位面積当たりの累積性または合計の亀裂の長さを求めるための方法は、当技術分野では知られており、すべての亀裂の長さをスキャニングソフトウエアで電子工学的に合計し、技術者により目視で確認してこれを裏付けることにより求めることができる。電子のスキャナーの分解能または倍率は、一般的に重大ではなく、例えば、50×の低いものから、1000×まで高いものまである。試験者は、実際の亀裂と、単なるグレイン境界とを区別することができるだけでよい。任意の特定されたパラメーターと同様に、求めた値は、十分に大きい領域に渡り求めることによって、全体の試料の統計的に健全な提示を提供すべきである。単位面積当たりの亀裂の全長は、まとめると統計的に健全な領域を表す、いくつかのより小さい領域を合計および平均することによって、このような領域に渡り求めることができる。全部のコンポーネントを試験することもでき、または1つもしくは複数の領域を評価することもできる。試験されたまたは関連する領域(複数可)または全部のコンポーネントを、本明細書中の試験目的に対して「コンポーネント」と考えることができる。
【0055】
試験検体内に観察された亀裂の傾向を利用して、ある特定の領域またはコンポーネントに対する耐熱衝撃性を規準化し、例えば、以下に要約されているように、1(もっとも抵抗性がない)から5(もっとも抵抗性がある)まで定性的に得点をつけることができる。
1:開口亀裂および多くの閉鎖亀裂。
2:多くの閉鎖亀裂。
3:いくらかの閉鎖亀裂。
4:わずかな閉鎖亀裂。
5:亀裂なし
【0056】
急速にクエンチされたジルコニア検体またはコンポーネント内の様々な程度のクラッキングの形およびこれらの対応する定性的な、規準化された耐熱衝撃性(NTSR)値1から5を図3において例示している。評点1は、もっとも受け入れがたく、評点5はもっとも受け入れ可能である。本明細書中に開示した本発明の組成物は、通常、規準化されたNTSR評点3、4、および5を生じることになる。耐熱衝撃性試験検体で観察された亀裂の傾向を定量化するため、試料に侵入した染料を光学的にスキャンし、画像分析法コンピュータソフトウエアプログラムの対象とした。例えば、試験検体の単位面積当たりの亀裂の全長は、表2に報告されているように、市販の画像分析法ソフトウエア、例えば、Clemex Vision PEを使用することによって、および図3の例示的画像と全般的に対応させて測定することができる。(検体の亀裂の全長を同様に測定するための他の画像分析法ソフトウエアアプリケーションもまた利用可能である)
【0057】
表2. 1から5にランクされた、規準化された耐熱衝撃性(NTSR)指数または評点の具体例
【表2】

【0058】
本発明の耐火性グレードの安定化ジルコニアについては、本発明の材料の試験検体を1100℃から室温の水槽へのクエンチした後の単位面積当たりの亀裂の全長が5cm/cm2以下であることを好ましくも実証しており、すなわち、これは好ましいことに少なくとも4のNTSRを有する。さらにより好ましくは、本発明の耐火性グレードの安定化ジルコニアは、耐火性グレードの安定化ジルコニアの試験検体を1100℃から室温の水槽へとクエンチした後の単位面積当たりの亀裂の全長は、より好ましいことに1cm/cm2以下であり、すなわち、より好ましいことにNTSR5を有することを実証している。しかし、要求が甘い用途に対しては、本発明のコンポーネントは、5cm/cm2を超える亀裂の長さを実証し得るが、20cm/cm2以下、よって対応するNTSR3以上を有するのが好ましい。意図した用途により、許容可能な亀裂長さの範囲を決定する。よって、本発明による材料として、本明細書中に記載されている、耐熱衝撃性の評点4または5を有するものが挙げられる。
ASTM C 1525−04に記述の通り、耐熱衝撃性は、温度範囲の全域に渡り加熱した試験検体の急速なクエンチにより生じる曲げ強度(MOR)の低下を測定することにより評価することができる。本発明の安定化ジルコニアの目的のため、耐熱衝撃性の定量的な測定に関して、温度間隔は、判定された量の平均の曲げ強度の低下、例えば少なくとも30%などにより求めることができる。しかし、この試験は、セラミック体の中の定常状態温度差または結合された物体間の熱増大のミスマッチの結果発生する熱の応力を判定しない。さらに、試験は、これを数回反復しない限り、反復性または周期性の衝撃に対するセラミック材料の抵抗性を定量的に判定する能力だけに限定されてしまう。よって、試験を反復することによって、例えば再生式反応器において生じ得るような周期性の温度衝撃の影響を分析することが好ましい。
【0059】
本発明に対する別のセラミック性能特性は曲げ強度であり、この曲げ強度は、ASTM F417に例示されている3点曲げ試験により測定することができる。小さい棒の断面が正方形の試験検体を加圧試験機械の2つの円柱状の支持体の上に置く。これを、2つの支持体上に置いた棒の反対側の面に、ミッドスパンで力を加えることによって曲げる。曲げ力は、検体が壊れるまで、規定の一定の速度で第3のシリンダー(他の2つと同じ)により加えられる。棒の破壊、検体の寸法、および試験の長さを用いて曲げ強度を計算する。
セラミック材料が加熱されるにつれて、加熱により引き起こされる焼結作用が原因で細孔が縮む結果、その密度は通常増加する。焼結により、その中の一部のセラミック結晶または成分が溶融する、または高温による他の溶解または縮みが生じる可能性があり、その結果かさ容積がわずかなに低下するが、成分強度は増加する。よって、セラミックが加熱されるにつれて、そのMORまたは機械的曲げ強度は、通常また対応して、わずかに増加し得る。しかし、熱いセラミックが、例えば水クエンチなどを介して相対的に急速な冷却の対象となった場合、応力破断が導入され、これによって、機械的曲げ強度の減退または低下が起き得る。マルチモードのグレインおよび焼結後に残っている多孔性の組合せにより、改善された強度、熱応力の散逸および取扱適性、および周期的熱応力弾性をもたらす格子型の構造が生じる。セラミック耐食性特徴は、これら望ましい特性の劣化を防止し、よってコンポーネントの寿命を延長する。
【0060】
MORおよび熱衝撃特性値は、別途述べられていない限り、焼結後に求められた特性値を指す。ASTM1505は、MOR測定のためのプロセスについて記載している。1500℃を超える、例えば1600℃を超えるまたは少なくとも1800℃などのアニーリング温度へ焼結されたコンポーネントを限定された期間の間曝露することによって、本明細書中に記載されているコンポーネント特性をさらに改良することができる。このようなさらなる熱処理またはアニーリングは、本来の焼結後のこのような特性と比較して本発明のコンポーネントおよび反応器の強度および耐熱衝撃性を全般的にさらに改善することができる。例えば商業的に使用されている温度を超える温度、例えば代表的な温度である少なくとも1800℃で、焼結されたコンポーネントにこのような「アニーリング」を2時間施した後、形成された本発明によるセラミックコンポーネントは、コンポーネントの形成された容量に対して、周辺温度での保持された多孔度が5〜45容量%の範囲であることを実証することになる。このようなコンポーネントはまた、少なくとも6kpsi、好ましくは少なくとも10kpsiの曲げ強度(MOR)を実証し、少なくとも4、好ましくは少なくとも5の耐熱衝撃性評点を提供する。本発明による材料および反応器コンポーネントに対して使用されるジルコニアセラミックのMOR曲げ強度は、少なくとも1500℃への最初の焼結後、およびそれに続く周辺温度へのクエンチ後、約6kpsi(41.3MPa)以上であるべきである。またMORは、焼結されたコンポーネントがさらなる熱条件、例えば作動状態への再加熱およびクエンチ(例えば、アニール)などに曝された場合、約6kpsi(41.3MPa)以上であるのが好ましい。例えば、この熱条件は、コンポーネントを、例えば1500℃〜1800℃またはおそらくさらに2000℃までの範囲の温度へと再加熱することを伴う可能性がある。驚くことに、本発明のコンポーネントの多くは、さらなる熱処理後のMORが少なくとも6kpsi(41.3MPa)であることを定期的に実証している。規準化された耐熱衝撃性評点4と、このようなMOR強度の組合せは、反応器コンポーネントの所望のライフサイクル渡り、高温熱分解化学反応プロセスの長時間の商業的利用を提供するために必要とされる広範な反応器温度スペクトルの全域で必要な最小のMORおよび衝撃抵抗特性であると本明細書中で認識されている。本発明の耐食性コンポーネントは、受容の範囲内でコンポーネントのこれら特性を延ばすために機能し、コンポーネントおよびプロセスの有用な寿命をこれに対応して延長する。所望する場合、長い期間のMOR変化の影響を評価することによって、商業的適合性、例えば1ケ月の周期的処理(アニーリング)などの後のMORを求めることもできる。しかし本発明のコンポーネントおよび装置は、当技術分野でこれまで利用可能であったレベルを超えて、関連するコンポーネントおよび装置に対する寿命期間を提供することが予想される。
【0061】
一態様において、本発明は、耐火性材料を含み、このような材料は、一態様において、再生式熱分解反応器装置、例えば炭化水素供給原料(例えば、石油液体、気体、または石炭)を熱分解するために有用なコンポーネントなどでの使用の用途を有する。他の態様において、本発明は、炭化水素供給物以外の様々な供給原料を、高温で、例えばこられだけに限らないが、他の高温化学プロセス、高温反応で、例えばこれらだけに限らないが固体、液体、または気体に関わらず、様々な酸化可能な、可燃性、燃焼性、または他の熱反応性の材料を用いて、熱分解さもなければ熱処理に利用することができる。本発明の材料は、高温(>1500℃)で有用であるが、これらはまた、様々なより低い温度の用途においても有用となり得る。「炭化水素供給原料」という用語は、本明細書で使用する場合、ほぼあらゆる炭化水素系供給物を含むと大まかに定義され、また実質的に炭素系供給物、例えばグラファイトまたはコークスなども含み得る。本発明での使用のための特定の適応性を有し得る代表的な炭化水素熱分解供給原料は通常、これらに限らないが、1つまたは複数の炭化水素、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ナフサ、軽油、凝縮物、灯油、暖房用オイル、ディーゼル、水素化分解生成物、Fischer−Tropsch液体、アルコール、蒸留物、芳香族、重質軽油、蒸気分解した軽油および残渣、粗製油、粗製油画分、大気のパイプスチル残油、残油を含めた真空パイプスチル流、精製装置からの重い、非純粋の炭化水素流、真空軽油、低硫黄の蝋状残基、重い蝋、石炭、グラファイト、コークス、タール、大気の残渣、重い残渣炭化水素供給物、およびこれらの組合せを含む。供給流に含有される切望しない画分、固形および非揮発性物質は、揮発可能な画分を反応器へ供給する前に、1つまたは複数の分別法により除去してもよい。希釈剤または他の添加剤、例えばこれらだけに限らないが水蒸気、水、メタン、および水素などもまた供給流内に含まれていてもよい。
【0062】
本発明は、これらだけに限らないが、それぞれの全体が本明細書中に参照により含まれている様々な、以前の特許出願で開示されたコンポーネント、装置、反応器、および方法の使用を含み、これらの特許出願は、(i)2005年12月23日に出願された、「Controlled Combustion for Regenerative Reactors」という表題の米国出願シリアル番号第60/753,961号、(ii)2006年12月15日に出願された、「Controlled Combustion for Regenerative Reactors」という表題の米国出願シリアル番号第11/639,691号(iii)2006年12月21日に出願された「Methane Conversion to Higher Hydrocarbons」という表題の米国出願シリアル番号第11/643,541号、(iv)2008年5月13日に出願された、「Pyrolysis Reactor Conversion of Hydrocarbon Feedstocks Into Higher Value Hydrocarbons」という表題の米国特許出願シリアル番号第12/119,762号、および2009年5月18日に出願された「Pyrolysis Reactor Materials and Methods」という表題の米国特許出願シリアル番号第12/467,832号を含む。これら特許出願は、遅延燃焼および制御された加熱位置決めプロセスを含めた、逆流再生式熱分解反応器で炭化水素供給物を熱分解するための様々な装置および方法を教示および開示している。
【0063】
本明細書中に開示されている本発明は、これらだけに限らないが、耐火性の用途、ならびにこれら以前の出願において開示された熱分解および熱の反応器を用いた使用に適していてもよい。本発明のコンポーネントは、このような装置およびプロセスの商業化を可能にするために必要な強度、耐熱衝撃性、および化学的安定性を提供することによって、少なくとも1500℃の温度、およびさらに一部の実施形態では1600℃を超える、さらに他の実施形態では少なくとも1700℃を超える、およびさらに他の実施形態では、2000℃を超える温度で作動する。本発明の材料、コンポーネント、装置、およびプロセスにより、有用であり、商業的に望ましい規模およびライフサイクルで動作可能な、大規模な、周期的な、高温、反応器系が可能となる。
【0064】
本発明の材料およびコンポーネントは、例えば1つまたは複数の熱分解反応器、例えば、これだけに限らないが、高温の化学反応を実施するのに有用な再生式反応器ベッドまたはコアを有するような反応器において提供されてもよい。本発明のセラミックコンポーネントはまた、反応器系の中の1つもしくは複数の反応器実施形態、コンポーネント、または領域の構成で使用されてもよく、実質的にいかなる適切な幾何学、形態または形状、例えばこれらだけに限らないが球、ビーズ、ハニカム材料、試験管、パイプ、U字管、流体混合器、ノズル、押出モノリス、レンガ、タイル、反応器トレイ、トレイコンポーネント、および高温に曝露される他の耐火性コンポーネントなどであってよい。反応器として使用されるこのようなコンポーネントは、設計によって、コンポーネントの機能の一部として流体が通過する「空隙容量」とみなす、またはこう呼ぶことができる流路、導管、または他の空間を含むことができる。このような空隙容量は、本明細書中に記載されているセラミック材料の「多孔性」の一部と考えられないことは理解されている。本明細書中で特定されたセラミック多孔性は、具体的には、流れを担持していないマトリックスまたはコンポーネントの部分に対するものであり、コンポーネントの壁または固形部分としばしばと呼ばれる。同様に、材料またはコンポーネントの容量の参照は、その中の多孔性を含めたセラミックマトリックス容量について言及しており、主要な流体伝導経路または空隙容量について言及しているわけではない。本発明の材料の持続する強度および相対的な不活性な特性は、当技術分野でこれまでに利用可能なものより広い範囲のコンポーネント配置および機能を提供することができ、これもまたプロセスの改善につながる。
【0065】
一態様において、本発明は、炭化水素供給原料を熱分解するための反応器装置であって、酸化物形態での耐火性材料を含む反応器コンポーネントを含み、この耐火性材料が、2060℃以上の融点有し、炭素分圧10-11バール、酸素分圧10-15バールを有する気体(例えば、述べられた条件で炭素および酸素を含有する基準気体混合物)に、温度2050℃で曝露された場合酸化物形態のままである装置を含む。一部の実施形態においてこの耐火性材料は、2160℃以上の融点を有する。
一部の好ましい実施形態において、耐火性材料は、炭素分圧10-10バール、酸素分圧10-15バールを有する気体(例えば、基準気体混合物)に、1800℃〜2100℃の全範囲に渡る温度で曝露された場合、酸化物形態のままである。一部の実施形態において耐火性材料は、2160℃以上の融点を有する。
【0066】
本発明によると、一部の実施形態において、1250℃から2250℃への加熱の間、耐火性材料の結晶構造は、立方体であり、他の実施形態において、2250℃から1250℃への冷却の間、耐火性材料の結晶構造は、立方体である。多くの好ましい実施形態において、耐火性材料の蒸気圧力は、2000℃で10-7バール未満である。
他の態様において、本発明は、本発明の材料から作られるまたはこれを含む装置を含み、このような装置は、高温炭化水素熱分解系および方法を用いた用途を有するのが好ましい。一部の実施形態において、反応器コンポーネントは、流路、反応流体混合器、および反応ヒートシンク部材のうちの少なくとも1つを含む。他の時には好ましい実施形態において、反応器コンポーネントは、モノリスを介して、熱分解反応体および熱分解生成物のうちの少なくとも1つを伝導するためのモノリス内に流路を有するハニカムモノリスを含む。
時には、本発明の耐火性材料が、他の好ましい用途の必要条件、例えば機械的強度および耐熱衝撃性などを満たすことが好ましいものとなり得る。一部の実施形態において、反応器コンポーネントは、反応器コンポーネントを1100℃から水槽へ温度50℃までクエンチした後の単位面積当たりの亀裂の全長が30cm/cm2以下であることを実証し、他の実施形態では、クエンチ後の単位面積当たりの亀裂の全長が5cm/cm2以下であることを実証している、耐熱衝撃性評点を含む。他の実施形態または用途は、反応器コンポーネントが1000℃〜2000℃の範囲の温度で、13.8MPa以上の破断係数機械的曲げ強度を含むことが好ましいこともある。
【0067】
一部の実施形態において、本発明の耐火性材料は、耐火性材料の総質量に対して、少なくとも50質量%のイットリウム酸化物(イットリア)を含み得る。他の実施形態では、耐火性材料は、少なくとも70質量%のイットリア、少なくとも75質量%のイットリア、少なくとも80質量%のイットリア、少なくとも90質量%のイットリア、少なくとも95質量%のイットリア、少なくとも99質量%のイットリアを含んでもよく、またはイットリアから実質的になる、例えば実質的に100%イットリアであってもよい。多くの好ましい実施形態によると、耐火性材料は、有毒である可能性のあるセラミクス、酸化物(化合物および元素を含む)、例えばこれだけに限らないが、放射性物質、癌原物質、または他の潜在的に危険な物質、例えばベリリウムおよびトリウムなどを含まない。有毒な材料は、例えば、空気中での8時間平均曝露限度が<2μg/m3であるような材料を含み得る。
【0068】
多くの態様において、本発明の耐火性材料は、実質的に単一モードのグレイン構造、または広く分布したグレイン構造を含み、他の実施形態では、本発明の材料は、マルチモードのグレイン分布を含み得る。一部の実施形態において、耐火性材料は、(i)と(ii)とを含み得る:(i)5〜2000μmの範囲のD50グレインサイズを有する第1のグレインモードを、耐火性材料の総質量に対して、少なくとも20質量%、(ii)0.01μmから、第1のグレインモードのD50グレインサイズの4分の1以下の範囲のD50グレインサイズを有する第2のグレインモードを耐火性材料の総質量に対して、少なくとも1質量%。
多くの態様において、本発明の材料は、イットリア、イットリウム含有化合物、およびこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含み得る。他の実施形態において、材料は、イットリア、別のイットリウム含有化合物、ジルコニウム含有化合物、およびこれらの組合せのうちの1つまたは複数を含み得る。イットリアを一部の実施形態において使用することができるが、本発明の耐火性材料は、イットリアが存在するかしないかに関わらず、融点および酸化物安定性についての本発明の必要条件を満たす他の酸化物化合物を含む。一部の実施形態は、純度または純正含有量の高い耐火性材料を含み得るが、他の実施形態では、意図的にまたは偶然のいずれかにより、他の元素または化合物を含んでもよい。例えば、一部の実施形態は、Al、Si、Mg、Ca、Fe、Mn、Ni、Co、Cr、Ti、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Sc、La、およびCeからなる群から選択される元素ならびにこれらの混合物を含む、耐火性材料の質量に対して0.001質量%〜5質量%の化合物をさらに含んでもよい。一部の代表的熱分解反応器用途において、反応器装置は第1の反応器と、流れが第1の反応器と連通している第2の反応器とを含んでもよく、第1の反応器および第2の反応器のうちの少なくとも1つは、耐火性材料を含む。
【0069】
さらなる他の態様において、本発明は、炭化水素供給原料を熱分解するための、耐火性−腐蝕−抵抗性のある熱分解反応器系であって、第1の反応器と、流れが第1の反応器と連通している第2の反応器とを含み、第1の反応器および第2の反応器のうちの少なくとも1つが、酸化物形態での耐火性材料を含み、この耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、炭素分圧10-11バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、2050℃の温度で曝露された場合、酸化物形態のままである、熱分解反応器系を含む。一部の実施形態において、反応器系の耐火性材料は、密度が高くてもよく、他の実施形態において、材料は、20℃で、耐火性材料の容量に対して2〜28容量%の範囲の多孔度を含み得る。さらなる他の実施形態において、反応器系は、(i)と(ii)をさらに含む:(i)第1の反応器は、第1の反応器全体に渡り第1の反応体を搬送するための第1の経路と、第1の反応器全体に渡り第2の反応体を搬送するための第2の経路とをさらに含み、第1の反応体が、第2の反応体と発熱反応することによって、熱を発生させる、(ii)炭化水素供給原料を熱分解するために、第2の反応器内で、1200℃以上の温度に、または時には1500℃以上、または時には1700℃以上、または時には2000℃以上に加熱することで、第2の反応器を加熱し、この第2の反応器が、耐火性材料を含む。一部の実施形態において、反応器系は、逆流再生式反応器系を含み、他の実施形態では、遅延燃焼逆流再生式反応器系を含んでもよい。
【0070】
多くの実施形態において、反応器系は、第1の反応器および第2の反応器の中間に反応体混合器のセクションを含むことによって、第1の反応体の少なくとも一部分と、第2の反応体の少なくとも一部分とを合わせてもよく、この反応体混合器セクションは、耐火性材料を含む。一部の実施形態において、混合器の耐火性材料は、イットリアおよび/または別のイットリウム含有化合物を含み、この耐火性材料は、0.01μm〜2000μmの範囲のD50グレインサイズを有するグレイン構造を含む。
【0071】
さらに他の態様において、本発明は、熱分解された炭化水素供給原料の存在下で、耐火性材料の炭化物−酸化物セラミック腐蝕を軽減するための方法であって、炭化水素供給原料を熱分解するための熱分解反応器系の加熱領域に、酸化物形態での耐火性材料を含む装置を提供するステップを含み、この耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、炭素分圧10-11バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、温度2050℃で曝露された場合、酸化物形態のままである方法を含む。多くの実施形態において、耐火性材料は、少なくとも2160℃の融点を有する。一部の実施形態において、耐火性材料は、炭素分圧10-10バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、1800℃〜2100℃の全範囲に渡る温度で曝露された場合、酸化物形態のままである熱力学的優先性を有する。さらに他の時には好ましい実施形態において、耐火性材料の結晶構造は、1250℃から2200℃への加熱中、立方体であってよく、他の実施形態においてこの材料は、このような冷却中、立方体であってよい。立方体の形態が、時には好ましいこともあるが、他の構造、例えば正方晶なども本発明に従い許容可能となり得る。多くの他の実施形態において、耐火性材料の蒸気圧力は、2000℃で10-7バール未満、または時には2000℃で10-8バール未満である。
さらに他の態様において、本発明は、熱分解反応器系を用いて炭化水素供給原料を熱分解するための方法であって、(a)炭化水素供給原料を熱分解するための熱分解反応器系の加熱領域に、酸化物形態での耐火性材料を含む装置を提供するステップであって、この耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、炭素分圧10-11バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、2050℃の温度で曝露された場合、酸化物形態のままであるステップを含む方法を含む。他の実施形態において、本方法は、(b)加熱領域を、少なくとも1200℃の温度に、または一部の実施形態において少なくとも1500℃に、または一部の実施形態において少なくとも1700℃に加熱するステップと、(c)炭化水素供給原料を加熱領域へ導入するステップと;(d)加熱領域からの熱を用いて炭化水素供給原料を熱分解するステップとをさらに含み得る。
【0072】
多くの実施形態において、熱分解反応器装置は、1200℃以上、または他の実施形態では1500℃以上、または他の実施形態では1700℃以上、およびさらなる他の実施形態では2000℃以上の温度に加熱し、さらなる他の実施形態では、2000℃以下の温度、およびこれらの組合せに加熱する。本発明の他の態様において、本発明の方法は、反応器の加熱領域を、1200℃以上、または他の実施形態では1500℃以上、または他の実施形態では1700℃以上、他の実施形態では2000℃以上の温度に加熱するステップを含み、さらなる他の実施形態では、2000℃以下の温度およびこれらの組合せへ加熱するステップを含む。
他の実施形態において、本方法は、加熱領域を、1500℃〜2000℃の範囲の温度に加熱するステップを含み得る。本方法の多くの実施形態において、耐火性材料は、炭素分圧10-10バール、酸素分圧10-15バールを有する気体(例えば、炭素および酸素を含む基準気体混合物)に、1800℃〜2100℃の全範囲に渡る温度で曝露された場合、酸化物形態のままである(例えば、そのままでいる熱力学的優先性を有する)。一部の実施形態において、耐火性材料は、2容量%〜28容量%の多孔度を有する。さらなる他の実施形態において、本方法は、遅延燃焼による加熱領域を加熱するステップを含み得る。本発明の方法の一部の実施形態はまた、(i)〜(iii)のステップをさらに含み得る:(i)反応器系全体に渡り第1の方向に少なくとも1つの反応体を流動させるステップと、(ii)反応器系内の少なくとも1つの反応体を反応させることによって、加熱領域を加熱するステップと、(iii)加熱領域全体に渡り炭化水素供給原料を流動させることによって、炭化水素供給原料の少なくとも一部分を熱分解し、分解された炭化水素生成物を生成するステップ。
【0073】
一部の実施形態によると、耐火性材料を提供するステップは、耐火性材料の総質量に対して、少なくとも50質量%イットリアを含む耐火性材料を提供するステップを含む。本発明の方法の他の実施形態において、耐火性材料を提供するステップは、耐火性材料の総質量に対して、少なくとも80質量%イットリアを含む耐火性材料を提供するステップを含む。他の実施形態において、耐火性材料を提供するステップは、耐火性材料の総質量に対して、少なくとも90質量%イットリアを含む耐火性材料を提供するステップを含む。本方法の他の実施形態によると、耐火性材料は、0.01〜2000μmの範囲のD50グレインサイズを含む。本方法のさらなる他の実施形態によると、耐火性材料の蒸気圧力は、2000℃で10-7バール未満である。
【0074】
本発明の耐火性材料は、炭化水素供給原料を熱分解するための熱分解反応器内で、1200℃以上、または1500℃以上、または1600℃以上、または1700℃以上、または2000℃以上、または2000℃まで、およびこれらの中間の範囲の組合せの温度で使用することができる。耐火性材料は、多種多様な耐火性コンポーネントのいずれか、例えば、これらだけに限らないが、球、ビーズ、ハニカム材料、試験管、パイプ、U字管、流体混合器、ノズル、押出モノリス、レンガ、タイル、触媒トレイ、反応器トレイ、トレイコンポーネント、バルブ、および/または他の耐火性コンポーネントのために使用することができる。このリストは、熱分解反応器と共に使用される一般的なコンポーネントのほんの代表的な一部でしかなく、このような本発明の材料はまた、他の種類の熱分解反応器、供給物、およびプロセスと共に有用となり得る。
【0075】
一態様において、本発明は、セラミック耐火性材料、例えば炭素含有供給原料、例えば炭化水素供給原料などの熱分解に使用するための熱分解反応器において有用となり得るものなどを含む。多くの実施形態では、反応器は、再生式反応器であり、他の実施形態では、逆流タイプの再生式反応器である。再生式反応器は、周期的に加熱され、次いで温度が低下し、次いで再加熱されることによってこのプロセスを繰り返す、実質的に任意の反応器である。反応器全体に渡り流動する方向は、重大ではない。逆流再生式反応器は、流体がその中を、ある時間の間、反応器のすべてまたは選択された部分全体に渡り1つの方向に流動し、反応する、さもなければその中で処理される熱分解反応器または反応器系である。次いで流れの方向は逆転し、他の材料が、反対の方向から反応器全体に渡り供給され、元の流れと反対の方向の後方に残っている任意の第1の材料または反応生成物に取って変わる。次いでサイクルは反復される。これにより、反応器ベッドまたは反応器媒体のコンポーネントは、反応器全体に渡り各方向に流動する材料に曝露される。例えば、熱は、1つの方向に流動している反応体により反応器に生成されるか、または加えられ、その熱を使用することによって、熱分解する、さもなければ反応器内の生成物を生成する反応を促進することができる。次いで、生成物の流動中に熱の大部分は取り除かれるが、これは元の反応体の流動方向と反対方向で行われることが多い。熱分解反応器系は、1つもしくは複数の熱いまたは加熱領域または反応域と、好ましくは反応プロセスをクエンチするために、反応した生成物から熱を吸収するのに役立つ、より低い温度のクエンチ域とを含む。反応生成物を冷却後、反応器全体に渡り流れの方向を逆転させることによって、加熱したクエンチ域を冷却し、クエンチ域全体に渡り、材料の新しい供給物を供給することによってクエンチ域の熱を吸収し、その熱を反応域に戻し、この反応域内で再生された熱を保存し、これを反応域および反応体材料を予熱するために再利用することができる。予熱された反応体の反応後、反応器は、「再生」され、これで反応器系全体に渡り流動している炭化水素反応体材料(いかなる希釈剤または同時供給物をも含む)を熱分解する準備が整う。
【0076】
反応器系に移送されたまたは流れ込んだ供給原料の少なくとも一部分は、一般的に、(i)反応域内で熱分解される(例えば、分解される)ことによって、熱分解生成物(例えば、オレフィン、芳香族および/またはアセチレン)を形成し、(ii)この(i)からの分解された反応生成物を、クエンチ域内でクエンチすることによって所望の熱分解生成ステップで反応を中止し、これにより、熱分解生成物を生じる。反応が適時にクエンチおよび中止されなかった場合、反応は、この分子をコークス、元素のコンポーネント、または他のあまり望ましくない反応生成物コンポーネントへと継続して分解する可能性がある。
【0077】
例えば、別個の流路を介して、2つ以上の反応体を、別々に、しかし同時に反応器系に導入することによって、これらが互いに結合されるまで所望の反応器域内で反応体の遅延反応または燃焼を促進することによって、その指定域内で互いに反応させることができる。これにより、熱バブルを、反応器系内に制御可能なようにおよび反復して位置させることができる。一部の実施形態において、逆流再生式反応器は、2つの域または反応器を含むと記載され得る:(1)熱回復域(第1)/反応器、例えばクエンチ用など;および(2)改質域(第2)/反応器、例えば熱分解反応および改質用など(第1のおよび第2の反応器は、必ずしも別個のコンポーネントである必要はなく、代わりに、単に共通の反応器または反応器系の異なるセクションであってもよい。第1の反応器および第2の反応器という用語は、ただ単に単純化および考察を補助するために使用されている)。一部の実施形態において、第1と第2反応器の中間に反応体混合器を提供することによって、別々に導入された反応体の混合および反応させる助けとなることができる。炭化水素蒸気のアセチレンへの改質を促進するために、触媒を必要としないのが好ましいので、ほとんどの好ましい実施形態において、触媒は反応器ベッド内に存在しない。しかし、特定の範囲の改質性能を達成するために、反応器系内の触媒の存在により恩恵を受ける一部の用途が存在してもよく、このような実施形態は、本発明の範囲内である。
【0078】
多くの熱分解反応に対して要求される高温は、反応器系の中央に、または反応器系の反応器のうちの1つ、例えば充填されたまたはモノリシック構造のベッド系などの中に高温の熱バブルを作り出すことによって達成することができる。この熱バブルは、2ステッププロセスを介して作り出すことができ、このプロセスでは、熱は、(1)後発性または遅延の、in−situ燃焼を介して反応器ベッドに加えられ、次いで(2)in−situ吸熱改質を介してベッドから取り除かれる。本発明の利点は、本発明の安定化ジルコニアを含み、このような条件に長期間耐えることができる反応器領域(複数可)において、高温バブル(例えば、≧1200℃、または≧1500℃)を一貫して管理および閉じ込める能力にある。本発明の装置およびプロセスは、実質的に持続的に作動する、大規模な、周期性の、商業的な再生式反応器系の運用を可能にする。
【0079】
本発明による基本的な2ステップ非対称的サイクルの再生式反応器系の、ある一般的な実施形態は、2つの域/反応器;第1の反応器または復熱装置/クエンチ域(7)および第2の反応器または反応/改質域(1)を含む反応器系を例示している図1aおよび1bにおいて描かれている。一部の実施形態において、少なくとも最高温度の反応器(一般的に第2の反応器ではあるが、他の実施形態では反応器(7)と(1)の両方、つまり反応域(1)と復熱装置域(7)の両方)は、本発明の耐火性材料を用いて作り上げたコンポーネントを含む。本発明の材料は、例えば、高温化学反応を実施するために有用な、1つまたは複数の再生式反応器ベッドの中に提供することができる。本発明の耐火性材料は、反応器系の中の1つもしくは複数の実施形態、コンポーネントまたは領域の構築に使用することができ、実質的にいかなる形態または形状、例えば、これらだけに限らないが、球、ビーズ、ハニカム材料、試験管、パイプ、U字管、流体混合器、ノズル、押出モノリス、レンガ、タイル、触媒トレイ、反応器トレイ、トレイコンポーネント、バルブおよび/または高温に曝露される他の耐火性コンポーネントのうちの少なくとも1つであってよい。一部の実施形態は、ハニカムモノリス、反応器ベッド、反応器導管、および反応体混合器のうちの少なくとも1つの製作に使用される本発明の耐火性材料を含み得る。さらに、一部の実施形態、例えばコストの制御などのために所望する場合、反応器系はまた、もっとも厳しい温度に曝露されない反応器の他の反応器領域において、本発明の材料に加えて他の耐火性材料、例えばガラスまたはセラミックビーズまたは球、金属ビーズまたは球、セラミクス(ジルコニアを含み)、セラミックまたは金属ハニカム材料、セラミック試験管、押出モノリスなどを含むこともできるが、ただしこの場合、これらは、完全性、機能性を維持し、反応器のそのそれぞれの領域に対する関連温度への長期曝露に持ちこたえる能力があるものとする。
【0080】
図1(b)に例示された再生ステップの間、燃料および空気は、第1の反応器(7)の第1の末端(19)から別々に導かれ、次いでそれが第2の末端(11)を出る時、または混合器(示されていない)を含んでいてもよい、場合による混合領域(13)に入る時に混合されてもよい。燃料および空気混合物は、第1の反応器(7)を冷却し、例えばグラフ(6)に例示されているような温度勾配プロファイルを作ることができる。混合したコンポーネントは、好ましくは発熱反応し(例えば、燃焼または焼付け)、熱い反応生成物は、第2の反応器(1)の第2の末端(5)へと継続して運ばれ、好ましくは第2の反応器(1)を介して、第2の反応器の第1の末端(3)から出る。熱い反応生成物は、第2の反応器(1)を介して、例えばグラフ(8)に例示されているような、温度勾配を作ることができる。次いで工程は逆転し(図1(a)に例示された通り)、1つまたは複数の熱分解反応供給物材料(15)が、第2の反応器(1)の全体に渡り供給されることによって、供給物の熱分解が可能となり、次いで場合による混合器を介しておよび第1の反応器(7)のクエンチを介してこれが冷却される。代表的な温度プロファイルをグラフ(2)および(4)に例示する。
【0081】
図2は、例えば炭化水素供給物を熱分解するための一部の用途において適切となり得る、別の単純化された、代表的な、反応器系を例示している。代表的な反応器は、その全体が本明細書中に組み込まれている、2007年6月4日に出願された米国仮特許出願S/N第60/933,044号でより詳細に記載されている。図2の反応器系は、2つの反応体が互いに混合および反応する反応器系内の指定域に反応体が到達するまで、これら反応体のそれぞれの搬送を互いから分離する多種多様なより具体的な反応器設計のいずれかの例示である。このようなプロセスおよび装置は、例えば熱分解域を加熱するのに必要な熱を提供する燃料およびオキシダントなどの反応体の発熱反応または燃焼を遅延させるのに特に有用である。本発明の反応器系は、極度な温度、例えば1200℃、もしくは1400℃、もしくは1500℃を超える、またはさらに1700℃を超える温度などの対象となり得る反応器のすべて領域において、本発明の材料コンポーネントを利用することができる。一部の用途において、本発明の材料は、例えば1700℃を超える温度を有する用途において有用であってよく、一部の他の用途では、材料は、1800℃を超える温度、例えば2000℃までまたは2200℃までなどの温度の存在下で有用であってよい。
【0082】
図2は、加熱または「再生」熱サイクルで作動している代表的な反応器系を描写している。例示された反応器系は、系内に2つの反応器または域を含む。加熱サイクルでは、復熱装置反応器(27)は、別個の、実質的に単離した流路または経路(28)および(33)を介して、反応器全体に渡り、反応体が近位の反応器コア、例えば混合器(44)の中または付近に到着するまで、混合なしで、または反応もしく燃焼の発生なしで、反応体(30)および(32)のそれぞれを別々に搬送する働きをする。混合器(44)の中または付近で反応体を合わせた後、発熱反応の熱が発生し、これにより反応器系を、好ましくは少なくとも1500℃に加熱し、さらに一実施形態では、反応体が第2の反応器(21)内に運び込まれ、反応器(21)全体に渡って動くにつれて、特に第2の反応器(21)を加熱する。図2はまた、2つの反応気体のうちの1つを反応器(27)の末端(29)周囲の所望の位置に分散するための気体分配器(31)の1つの実施形態を例示しており、その一方で別個の分配器(30)は、第1の反応器(27)に他の反応体を別個に搬送している。反応サイクルの第2の相または逆相において(図2には例示されていないが、図1(a)に全般的に例示されている)、炭化水素供給原料は、その中の炭化水素供給物を熱分解するために、加熱された第2の反応器(21)(改質器)に流れ込まれる。加熱された第2の反応器(21)は、再生加熱および揮発した炭化水素の再編成または熱分解のほとんどがこの中で起こる反応器である。
【0083】
反応器系に例示されている図2の第1の反応器(27)および第2の反応器(21)、または図1(a)および1(b)のそれぞれ(7)および(1)は、別々に区別可能な反応器であると表され、および特定されているが、本発明の範囲内で、第1の反応器および第2の反応器は、共通した単一の反応器系または施設へと製造、提供することができる、さもなければ組み合わせまたは統合させることができ、これにより反応器系は、反応器系内の反応器と反応器サイクルの両方の実質的に全範囲を統合する単に単一の反応器施設を含むものとして記載することができることを理解されたい。「第1の反応器」および「第2の反応器」という用語は、単純化された解説目的のために利用され、単に、反応器系内のそれぞれの域を指すだけのもので、これにより、再生、再編成、クエンチ、などのステップのそれぞれが行われ、別個の反応器またはコンポーネントを2つの反応器に対して実際に利用する必要はない。多くの実施形態は、復熱装置反応器が本明細書中に記載されている導管および経路、好ましくは高温クエンチに適合する本発明の材料から形成された導管および経路を含む、反応器系を含むことになる。改質器反応器もまた、本発明の材料を用いて作り上げるのが好ましい。反応体混合器(44)は、第1と第2の反応器の中間に提供されることによって、優れた化学量論的反応およびさらに加熱を促進することができる。他の実施形態は、復熱装置ベッドと異なって配置される改質器反応器ベッドを含み得る。一部の他の実施形態では、この改質器ベッドは、復熱装置ベッドを含む本発明の材料とは異なる本発明の材料を含み得る。揮発した炭化水素熱分解技術の所定の実験法および知識を使用することによって、効果的な改質器/第2の反応器設計を判定することができる。
【0084】
本発明の好ましい実施形態において、第1の反応体、例えば炭化水素燃料などは、1つまたは複数の指定された経路または導管の下方へと導かれる一方、第2の反応体、例えば酸素含有気体などは、反応器を介して、1つまたは複数の他の指定された経路の下方へと同時に導かれる。反対の方向へ流動する間、好ましくは経路の第1および第2のセットの両方を、同時に利用することによって、復熱装置反応器を介して、熱分解されたおよび恐らく拡張した生成物の容量を搬送する。一実施形態において経路は、1つまたは複数のハニカムモノリスタイプの構造に含まれている。「ハニカムモノリス」という用語は、これに限らないが、反応業界で一般的に知られているような押出しセラミック構造、例えば、経路の枠組みを介して流体を搬送することが可能な、例えば触媒式コンバーターなどを含むと大まかに定義される。「ハニカム」という用語はまた、断面形状に関わらず、複数の実質的に平行な流路または経路を含み、構造または形状をいかなる特定の幾何学的形状に限定することを意図していない任意の経路の枠組みを指すように、本明細書中では大まかに使用される。一般的に左右対称の断面形状が好ましいものとなり得るが、経路はそれぞれ一般的にいかなる断面形状を有していてもよい。各モノリスは、特定のモノリスおよびその中に利用されている反応器のサイズに応じて、単一の経路、少数の経路、または複数の経路、例えば、数十、数百、またはさらには数千の経路を含んでいてもよい。例えば、一実施形態において、導管は、わずかミリメートル、または約1ミリメートル、または数ミリメートルの直径および一部の管内ではさらに数センチメートルの直径を有することができる。反応器は、単一、少数の、またはさらに多数のモノリスを含むことができる。モノリスは、モノリスのセルまたはグループへとさらに配置することができ、この場合、各セルまたはセルのグループは、2つの同時に搬送された材料のうちの一方を導くために設けられ、別のセルのグループが他方の材料を搬送する。好ましいモノリス配置は、伝導の間必要な生成物接触時間および熱伝達を提供しながら、反応体または生成物の移動中に低圧損失または低圧損を提供することになる。配置はまた、モノリスを抜け出た後、例えば反応域内または付近などにおいて、好ましくは搬送された材料の十分な混合を提供する。流れの導管を提供することに加えて、経路はまた、第1と第2の反応体の間の直交流または混合を防止し、混合が許されるまで、大多数の反応体を互いに効果的に分離したまま維持するための効果的な材料単離バリア(例えば導管壁などの機能)を促進する。本発明の一部の好ましい実施形態では、反応器は、1つまたは複数の押出ハニカムモノリスから構成される。
【0085】
一部の実施形態において、本発明の材料およびコンポーネントは、反応体を搬送するために使用される第1の反応器の容量に対して、約50ft-1〜約3000ft-1、より好ましくは約100ft-1〜2500ft-1、さらにより好ましくは約200ft-1〜2000ft-1の範囲の単位容量当たりの平均浸水面積を有する導管充填材を提供するのが好ましい。このようなぬれ面積の値は、第1のおよび第2の反応体の両方に対する経路に適用され、相対的に薄い壁が、反応体と本発明の材料の間の優れた熱伝達を促進するために経路を分離している。「薄い壁」という用語は、これを通ってコンポーネントの固形部分の中を熱が移動すべき距離を指す。よって、球状の充填ベッドに対しては、単に球直径を指すことになる。ハニカムモノリス構造を含む反応器ベッドに対して、関連する寸法は、単に流路を分離する壁の厚さである。本発明による一部のハニカムモノリスの代表的な壁の厚さは、2.5mm未満、しばしば1.0mm未満であり、さらに下では壁の最小の厚さは、おそらく約0.1mm以上である。これら相対的に薄い壁は、これまで本明細書中および関連特許出願において考察してきた本発明の材料の強度および耐熱衝撃性特性を可能にする。耐久性のある、安定した、耐食性および耐熱性の材料は、薄いが、強度のある反応器経路または壁コンポーネントの使用を可能にするのに理想的である。相対的に高い密度はまた、導管または経路壁を介した反応体の直交流を軽減するのに役立つ。多数の相対的に小さい反応体経路または導管により促進される単位容量値当たりの相対的に高い表面積は、反応器全体に渡る温度の相対的に急速な変化、例えば図1(a)、および1(b)などの代表的な温度勾配プロファイルグラフにおける相対的に急な勾配により一般的に例示されるものなどを達成するのを補助するために、多くの実施形態に対して好まれる可能性が高い。急速な温度変化は、反応の相対的に急速なおよび一貫した加熱およびクエンチさせることによって、反応が、継続し、コークスを作り出すのを防止するために好ましい。安定化ジルコニアの相対的に高い熱安定性、高い耐熱衝撃性、および高い熱伝達能力はまた、熱の衝撃劣化による材料の不具合を生じることなく、これら所望の急速な温度変化を可能にする。規定のジルコニアは、このような劣化およびセラミック腐蝕に極めて抵抗性がある。
【0086】
一部の実施形態において、反応器は、媒体経路および他の高温曝露コンポーネント、ならびに高い容積測定の熱伝達係数(例えば、0.02cal/cm3s℃以上、好ましくは約0.05cal/cm3s℃を超える、およびもっとも好ましくは0.10cal/cm3s℃超える)を、対応する、流れに対する低い抵抗性(低圧損)と共に含む充填を提供し、再生の間遭遇する最高温度と一致した作動温度範囲を有し、熱衝撃に対する高い抵抗性を有し、および高い塊状熱容量(例えば、少なくとも約0.10cal/cm3℃、および好ましくは約0.20cal/cm3℃を超える)を有することになる。高い表面積値と同様に、これら相対的に高い容積測定の熱伝達係数値、高い強度(MOR)、および本発明の安定化ジルコニアにより提供される他の特性はまた、例えば図1(a)、1(b)、および6などのような、代表的温度勾配プロファイルグラフにおける相対的に急な勾配により一般的に例示されているような、反応器全体に渡る相対的に急速な温度変化を達成するのを補助するために、多くの実施形態に対して好まれる可能性が高い。急速な温度変化は、相対的に急速なおよび一貫した、反応のクエンチを可能にすることによって、反応が、過剰に長びいて、コークスまたは炭素が蓄積するのを防止する。
【0087】
一部の実施形態は、記載したおよびしばしば好ましいハニカムモノリス、例えばこれによって、経路導管/流路が実質的に直線的および管状となるようなもの以外の、使用のための本発明の材料およびコンポーネントを使用してもよい。他の代替の実施形態は、以前に記述されたモノリスと比べて、コンポーネント全体に渡り、より蛇行性の経路(例えば回旋状の、複雑な、曲がりくねったおよび/またはねじれていて、しかも直線的または管状ではない)、例えば、これらだけに限らないが入り組んだ、変化に富んだ流路、導管、チューブ、溝、および/または反応器の一部分(複数可)を介して経路を有する空隙構造などを含むことができ、気体への実質的に効果的な浸透性がなく、および/または反応体気体間の直交流を防止し、復熱装置(27)を軸方向に通過しながら、第1のおよび第2の反応体気体が互いに実質的に分離したまま維持されるのに適した他の手段を有する、例えばセグメントの外側表面に沿ってまたはサブセグメント内などのバリア部分を含むことができる。このような実施形態に対して、複雑な流路は、効果的な流路の延長、表面積の増加、および熱伝達の改善を生むことができる。このような設計は、反応器全体に渡り相対的に短い軸長を有する反応器実施形態に対して好ましいものとなり得る。軸方向に長い反応器の長さにより、圧力低下が反応器全体に渡り増加し得る。しかしこのような実施形態に対して、多孔性および/または浸透性の媒体は、例えば、少なくとも1つの充填されたベッド、タイル配列、浸透性の固形媒体、実質的にハニカム−タイプの構造、線維性の配列、およびメッシュ−タイプの格子構造を含み得る。ジルコニアマトリックスによって、反応体および生成された気体との優れた熱交換を促進するための高い表面積が得られることがしばしば好ましいものとなり得る。
【0088】
典型的な条件は、0.001〜1.0秒の滞留時間を含み、および通常、例えば約5〜50psia(34〜345kPa)の圧力を含み得る。一部の実施形態において、反応器条件は、例えば15psia(103kPa)未満などの減圧であってよい。この考察の目的のため、「滞留時間」という用語は、通常約1200℃を超える温度に曝露された時間を指す。例えば多くの有用な反応器において、このような温度、およびより好ましくは1500℃を超える温度での滞留時間は、好ましくは約0.005秒未満、例えば0.001〜0.010秒の範囲内、しかしより好ましくは0.001〜約0.005秒の範囲内などである。しかし、反応器ベッド系内での合計時間は、クエンチプロセスおよび反応器経路の長さに応じて、例えば0.030秒以上程度により延長し得る。分解された熱分解生成物は、例えばライン49および/または51を介することによって反応器系から取り除き、分解された生成物の様々なコンポーネント生成物を回収するための他のプロセスに移送することができる。反応器系はまた、追加の供給ライン(示されていない)例えば燃料および酸化剤供給物など、剥離剤供給物、排気ラインなどを含み得る。
【0089】
再生式熱分解反応器系は、炭化水素供給原料を、1200℃を超える、好ましくは1500℃を超える、より好ましくは1700℃を超える温度まで加熱してもよい。一部の反応では、供給物を例えば0.1秒未満などの非常に短い期間の間、1800℃を超える、またはさらにある場合には、2000℃を超える温度に加熱するのがさらに好ましいものとなり得る。代表的な好ましいプロセスは、反応器内の供給流を、例えば1500℃〜2000℃、または1500℃〜1900℃、および時々好ましくは1600℃〜1700℃などの温度で熱分解することができる。代表的な滞留時間は好ましくは、例えば0.1秒未満、および好ましくは5ミリ秒未満など、短くてもよい。一部の態様では、分離した蒸気相の変換またはクラッキングは、水素、水素化物、他の炭化水素、および/または他の希釈剤または剥離剤の存在下で実施することができる。蒸気画分をより高い値の炭化水素、例えばアセチレンなどへと変換するためには通常、高い再編成温度を必要とし、過去においてこれが商業化および効率への重大なバリアであった。
【0090】
好ましい一実施形態において、導管または経路を提供する反応器コンポーネントは、作動する宇宙速度条件での、図1に例示された温度プロファイル(4)および(8)を作り出すのに必要な熱伝達能力を提供する安定化ジルコニア材料を含む。十分な熱伝達速度は、約500℃より下、より好ましくは約100℃より下、および最も好ましくは約50℃より下で、熱伝達パラメーターΔTHTを特徴とする。パラメーターΔTHTは、本明細書で使用する場合、ベッドの容積測定の熱伝達係数hvへの回復のために必要な、ベッドの平均容積測定の熱伝達速度の比率である。回復に十分な容積測定の熱伝達速度(例えばcal/cm3sec)を、気体流速(例えばgm/sec)と気体熱容量(例えばca./gm℃)の積として計算し、所望する両端間の温度変化(いかなる反応を除外、例えば℃)を計算し、次いでこの量を、気体によって妨害された復熱装置域(27)の容量(例えばcm3)で割る。経路(28)におけるΔTHTを、気体(30)と、気体(32)を有する経路(33)と、全気体を有する総復熱装置域(27)とを用いて計算する。ベッドの容積測定の熱伝達係数、hvは通常、領域ベースの係数(例えばcal/cm2s℃)と熱伝達に対する具体的な表面積(av、例えばcm2/cm3)(充填のぬれ面積としばしばと呼ばれる)の積として計算する。
【0091】
典型的な条件は、0.001〜1.0秒の滞留時間を含み、通常例えば、約5〜50psia(34〜345kPa)の圧力を含み得る。一部の実施形態において、反応器の条件は、例えば約13〜約25psia(90〜172kPa)付近の気圧、他の実施形態において、減圧、例えば15psia(103kPa)未満などであってよい。分解された熱分解生成物は、反応器系から取り除き、分解された生成物の様々な成分生成物の回収のための他のプロセスに移送することもできる。分解される炭化水素供給物に加えて、反応器系はまた、追加の供給物、例えば燃料、酸化剤、水蒸気、水素、または他の炭化水素共反応体、または他の同時供給物などを含み得る。一部の態様では、炭化水素供給物の変換またはクラッキングは、水素、水素化物、他の炭化水素および/または他の希釈剤または剥離剤の存在下で実施することができる。
【0092】
別の実施形態において、本発明の技法は、以下に関する:
1.以下の反応器コンポーネントを含む、炭化水素供給原料を熱分解するための反応器装置:
反応器コンポーネントが、酸化物形態での耐火性材料を含み、この耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、i)およびii)のうちの少なくとも1つに対して:
i)酸素分圧10-15バール、炭化ジルコニウムの炭素分圧より上の炭素分圧および同じ温度で酸化ジルコニウム相転移を有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点の温度より下の温度で曝露された場合、
ii)酸素分圧10-15バールを有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点より上の温度で曝露された場合、
酸化物形態を維持する。
2.酸素分圧10-15バール、炭化ジルコニウムの炭素分圧より上の炭素分圧、および同じ温度でジルコニウム相転移を有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点より上の温度で曝露された場合、耐火性材料が酸化物形態を維持する、段落1の装置。
3.炭素分圧10-11バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、2050℃の温度で曝露された場合、耐火性材料が酸化物形態を維持する、段落1の装置。
4.反応器装置が、熱分解反応器装置を含む、前の段落のいずれかの装置。
5.熱分解反応器装置が、逆流再生式反応器装置を含む、段落4の装置。
【0093】
6.耐火性材料が、2160℃以上の融点を有する、前の段落のいずれかの装置。
7.炭素分圧10-10バール、酸素分圧10-15バールを有する基準熱分解気体混合物に、1800℃〜2100℃の全範囲に渡る温度で曝露された場合、耐火性材料が酸化物形態を維持する、段落1の装置。
8.耐火性材料の結晶構造が、1250℃から2250℃への加熱中、立方体である、前の段落のいずれかの装置。
9.耐火性材料の結晶の構造が、2250℃から1250℃への冷却中、立方体である、前の段落のいずれかの装置。
10.耐火性材料の蒸気圧力が、2000℃で、10-7バール未満である、前の段落のいずれかの装置。
【0094】
11.反応器コンポーネントが、流路、反応流体混合器、および反応ヒートシンク部材のうちの少なくとも1つを含む、前の段落のいずれかの装置。
12.反応器コンポーネントが、モノリスを介して、熱分解反応体および熱分解生成物のうちの少なくとも1つを導くための流路をモノリス内に有するハニカムモノリスを含む、前の段落のいずれかの装置。
13.反応器コンポーネントを、1100℃から温度50℃の水槽へとクエンチ後、単位面積当たりの亀裂の全長が30cm/cm2以下であることを実証する耐熱衝撃性評点を、反応器コンポーネントが有する、前の段落のいずれかの装置。
14.反応器コンポーネントが、1000℃〜2000℃の範囲の温度で機械的曲げ強度の破断係数13.8MPa以上を含む、前の段落のいずれかの装置。
15.耐火性材料が、20℃で、耐火性材料の容量に対して、2〜28容量%の範囲の多孔度を有する、前の段落のいずれかの装置。
【0095】
16.耐火性材料の総質量に対して、少なくとも50質量%のイットリウム酸化物(イットリア)を含む、前の段落のいずれかの装置。
17.耐火性材料の総質量に対して、少なくとも80質量%のイットリアを含む、前の段落のいずれかの装置。
18.耐火性材料が、少なくとも、イットリアを含む第1のグレインモードと、イットリアを含む第2のグレインモードとを含む、前の段落のいずれかの装置。
19.耐火性材料として、有毒なセラミクスの酸化物は実質的に除外される、前の段落のいずれかの装置。
20.有毒なセラミクスの酸化物がベリリウムとトリウムとを含む、段落19の装置。
【0096】
21.耐火性材料が、(i)と(ii)を含む、前の段落のいずれかの装置:
(i)5〜2000μmの範囲のD50グレインサイズを有する第1のグレインモードを、耐火性材料の総質量に対して少なくとも20質量%、
(ii)0.01μmから、第1のグレインモードのD50グレインサイズの4分の1以下の範囲のD50グレインサイズを有する第2のグレインモードを、耐火性材料の総質量に対して少なくとも1質量%。
22.耐火性材料が、イットリア、イットリウム含有化合物、およびこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、段落1の装置。
23.耐火性材料が、イットリア、別のイットリウム含有化合物、ジルコニウム含有化合物、およびこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、段落1の装置。
24.耐火性材料が、Al、Si、Mg、Ca、Fe、Mn、Ni、Co、Cr、Ti、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Sc、La、およびCe、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される元素を含む化合物を、耐火性材料の質量に対して、0.001質量%〜5質量%さらに含む、段落23の装置。
25.1200℃以上の温度で、炭化水素供給原料を熱分解するための熱分解反応器において使用される、前の段落のいずれかの装置。
【0097】
26.1500℃以上の温度で炭化水素供給原料を熱分解するための熱分解反応器において使用される、前の段落のいずれかの装置。
27.2000℃以上の温度で炭化水素供給原料を熱分解するための熱分解反応器において使用される前の段落のいずれかの装置。
28.反応器コンポーネントが、ハニカムモノリス、反応器ベッド、反応器導管、および反応体混合器のうちの少なくとも1つを含む、前の段落のいずれかの装置。
29.再生式熱分解反応器が、遅延燃焼反応器、気体化反応器、合成ガス反応器、水蒸気クラッキング反応器、および燃焼炉のうちの少なくとも1つを含む、前の段落のいずれかの装置。
30.第1の反応器と、第1の反応器と流体連通している第2の反応器をさらに含み、第1の反応器および第2の反応器のうちの少なくとも1つが、耐火性材料を含む、前の段落のいずれかの装置。
【0098】
31.第1の反応器と、第1の反応器と流体連通している第2の反応器と
を含む、炭化水素供給原料を熱分解するための、再生式、耐火性耐食性、熱分解反応器システムであって、
第1の反応器および第2の反応器のうちの少なくとも1つが、酸化物形態での耐火性材料を含み、この耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、i)およびii)のうちの少なくとも1つに対して:
i)酸素分圧10-15バール、炭化ジルコニウムの炭素分圧より上の炭素分圧、および同じ温度で酸化ジルコニウム相転移を有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点の温度より下の温度で曝露された場合、
ii)酸素分圧10-15バールを有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点より上の温度で曝露された場合、
酸化物形態を維持する反応器システム。
32.耐火性材料が、炭素分圧10-11バール、基準酸素分圧10-15バールを有する気体に、2050℃の温度で曝露された場合、酸化物形態を維持する、段落31の反応器システム。
33.耐火性材料が、20℃で、耐火性材料の容量に対して、2〜28容量%の範囲の多孔度を有する、段落31および32の反応器システム。
34.反応器システムが、(i)と(ii)をさらに含む、段落31、32および33の反応器系:
(i)第1の反応器全体に渡り第1の反応体を搬送するための第1の経路と、第1の反応器全体に渡り第2の反応体を搬送するための第2の経路とをさらに含む第1の反応器であって、第1の反応体が、第2の反応体と発熱反応を起こすことによって、熱を発生させる第1の反応器、
(ii)第2の反応器内で炭化水素供給原料を熱分解するために、少なくとも1500℃の温度に加熱することによって加熱され、耐火性材料を含む、第2の反応器。
35.反応器系が逆流再生式反応器系を含む、段落31から34のいずれかの反応器システム。
【0099】
36.第1の反応器と第2の反応器中間に、第1の反応体の少なくとも一部分と、第2の反応体の少なくとも一部分とを合わせるための反応体混合器セクションをさらに含み、この反応体混合器セクションが、耐火性材料を含む、段落31から35のいずれかの反応器システム。
37.耐火性材料が、イットリアおよび/または別のイットリウム含有化合物を含み、耐火性材料が、0.01μm〜2000μmの範囲のD50グレインサイズを有するグレイン構造を含む、段落31から36のいずれかの反応器システム。
38.熱分解された炭化水素供給原料の存在下で耐火性材料の炭化物−酸化物セラミック腐蝕を軽減するための方法であって、炭化水素供給原料を熱分解するための熱分解反応器システムの加熱領域に、酸化物形態での耐火性材料を含む装置であって、この耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、i)およびii)のうちの少なくとも1つに対して:
i)酸素分圧10-15バール、炭化ジルコニウムの炭素分圧より上の炭素分圧および同じ温度で酸化ジルコニウム相転移を有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点の温度より下の温度で曝露された場合、
ii)酸素分圧10-15バールを有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点より上の温度で曝露された場合、
酸化物形態を維持する装置を提供するステップを含む方法。
39.耐火性材料が、炭素分圧10-11バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、2050℃の温度で曝露された場合、酸化物形態を維持する、段落38の方法。
40.耐火性材料が、2160℃以上の融点を有する、段落38から39のいずれかの方法。
【0100】
41.耐火性材料が、炭素分圧10-10バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、1800℃〜2100℃の全範囲に渡る温度で曝露された場合、酸化物形態を維持する、段落38の方法。
42.耐火性材料の結晶の構造が、1250℃から2200℃への加熱中、立方体である、段落38〜41のいずれかの方法。
43.耐火性材料の蒸気圧が、2000℃で10-7バール未満である、段落38から42のいずれかの方法。
44.熱分解反応器システムを用いて、炭化水素供給原料を熱分解するための方法であって、
(a)炭化水素供給原料を熱分解するための熱分解反応器システムの加熱領域に、酸化物形態での耐火性材料を含む装置を提供するステップを含み、この耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、i)およびii)のうちの少なくとも1つに対して:
i)酸素分圧10-15バール、炭化ジルコニウムの炭素分圧より上の炭素分圧および同じ温度で酸化ジルコニウム相転移を有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点の温度より下の温度で曝露された場合、
ii)酸素分圧10-15バールを有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点の上の温度で曝露された場合、
酸化物形態を維持するステップを含む方法。
45.耐火性材料が、炭素分圧10-11バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、2050℃の温度で曝露された場合、酸化物形態を維持する、段落44の方法。
【0101】
46.(b)加熱領域を1200℃以上の温度に加熱するステップと、
(c)炭化水素供給原料を加熱領域に導入するステップと、
(d)加熱領域からの熱を用いて、炭化水素供給原料を熱分解するステップと
をさらに含む、段落44から45のいずれかの方法。
47.加熱領域を、1500℃〜2000℃の範囲の温度に加熱するステップをさらに含む、段落44から46のいずれかの方法。
48.耐火性材料が、炭素分圧10-10バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、1800℃〜2100℃の全範囲に渡る温度で曝露された場合、酸化物形態を維持する、段落44の方法。
49.耐火性材料が、2容量%〜28容量%の多孔度を有する、段落44から49のいずれかの方法。
50.加熱領域を遅延燃焼により加熱するステップをさらに含む、段落44から49のいずれかの方法。
【0102】
51.
(i)反応器システム全体に渡り少なくとも1つの反応体を第1の方向に流動させるステップと、
(ii)反応器システム内で少なくとも1つの反応体を反応させることによって、加熱領域を加熱するステップと、
(iii)加熱領域全体に渡り炭化水素供給原料を流動させることによって、炭化水素供給原料の少なくとも一部分を熱分解し、分解された炭化水素生成物を生成するステップと
をさらに含む、段落44から50のいずれかの方法。
52.耐火性材料を提供するステップ(a)が、耐火性材料の総質量に対して、少なくとも50質量%のイットリアを含む耐火性材料を提供するステップを含む、段落44から51のいずれかの方法。
53.耐火性材料を提供するステップ(a)が、耐火性材料の総質量に対して、少なくとも80質量%のイットリアを含む耐火性材料を提供するステップを含む、段落44から52のいずれかの方法。
54.耐火性材料を提供するステップ(a)が、耐火性材料の総質量に対して、少なくとも90質量%のイットリアを含む耐火性材料を提供するステップを含む、段落44から53のいずれかの方法。
55.耐火性材料が、0.01〜2000μmの範囲のD50グレインサイズを含む、段落44から54のいずれかの方法。
56.耐火性材料の蒸気圧力が、2000℃で10-7バール以下である、段落44の方法。
【0103】
本発明は、特定の実施形態に対して記載および例示されてきたが、本発明は、開示した特徴に限定されず、特許請求の範囲内のすべて等価体に及ぶことを理解されたい。他に述べられていない場合、すべてパーセンテージ、部、比率などは、質量による。他に述べられていない限り、化合物またはコンポーネントについての言及は、化合物またはコンポーネントそれ自体と、他の元素、化合物、またはコンポーネント、例えば化合物の混合物などとの組合せを含む。さらに、量、濃度、または他の値またはパラメーターがより高い好ましい値およびより低い好ましい値のリストとして与えられた場合、範囲が別々に開示しているかどうかに関わらず、これは、より高い好ましい値とより低い好ましい値の任意のペアから形成されるすべての範囲を具体的に開示していると理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素供給原料を熱分解するための反応器装置であって、前記の装置が、酸化物形態での耐火性材料を含む反応器コンポーネントを含み、前記耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、i)およびii)のうちの少なくとも1つに対して:
i)酸素分圧10-15バール、炭化ジルコニウムの炭素分圧より上の炭素分圧および同じ温度で酸化ジルコニウム相転移を有する気体に、酸素分圧10-15バールでジルコニウム三重点の温度より下の温度で曝露された場合、
ii)酸素分圧10-15バールを有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点より上の温度で曝露された場合、
酸化物形態を維持する装置。
【請求項2】
耐火性材料が、酸素分圧10-15バール、炭化ジルコニウムの炭素分圧より上の炭素分圧および同じ温度でジルコニウム相転移を有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点より上の温度で曝露された場合、酸化物形態である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
耐火性材料が、炭素分圧10-11バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、2050℃の温度で曝露された場合、酸化物形態を維持する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
反応器装置が、熱分解反応器装置を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
熱分解反応器装置が、逆流再生式反応器装置を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
耐火性材料が、2160℃以上の融点を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
耐火性材料が、炭素分圧10-10バール、酸素分圧10-15バールを有する基準熱分解気体混合物に、1800℃〜2100℃の全範囲に渡る温度で曝露された場合、酸化物形態を維持する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
耐火性材料の結晶構造が、1250℃への2250℃で加熱中、立方体である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
耐火性材料の蒸気圧力が、2000℃で、10-7バール未満である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
耐火性材料の総質量に対して、少なくとも80質量%のイットリアを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
耐火性材料が、少なくとも、イットリアを含む第1のグレインモードと、イットリアを含む第2のグレインモードとを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
耐火性材料として、有毒なセラミクスの酸化物は実質的に除外される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
耐火性材料が、イットリア、別のイットリウム含有化合物、ジルコニウム含有化合物、およびこれらの組合せのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
耐火性材料が、Al、Si、Mg、Ca、Fe、Mn、Ni、Co、Cr、Ti、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Sc、La、およびCe、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される元素を含む化合物を、耐火性材料の質量に対して0.001質量%〜5質量%さらに含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
反応器コンポーネントが、ハニカムモノリス、反応器ベッド、反応器導管、および反応体混合器のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
第1の反応器と、第1の反応器と流体連通している第2の反応器とを含む、炭化水素供給原料を熱分解するための、再生式、耐火性耐食性、熱分解反応器システムであって、第1の反応器および第2の反応器のうちの少なくとも1つが、酸化物形態での耐火性材料を含み、前記耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、i)およびii)のうちの少なくとも1つに対して:
i)酸素分圧10-15バール、炭化ジルコニウムの炭素分圧より上の炭素分圧、および同じ温度での酸化ジルコニウム相転移を有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点の温度より下の温度で曝露された場合、
ii)酸素分圧10-15バールを有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点より上の温度で曝露された場合、
酸化物形態を維持する、熱分解反応器システム。
【請求項17】
耐火性材料が、炭素分圧10-11バール、基準酸素分圧10-15バールを有する気体に、温度2050℃で曝露された場合、酸化物形態を維持する、請求項16に記載の反応器システム。
【請求項18】
(i)第1の反応器全体に渡り第1の反応体を搬送するための第1の経路と、第1の反応器全体に渡り第2の反応体を搬送するための第2の経路とをさらに含む第1の反応器であって、第1の反応体が第2の反応体と発熱反応を起こすことによって、熱を発生させる第1の反応器と、
(ii)第2の反応器内で炭化水素供給原料を熱分解するために、少なくとも1500℃の温度に加熱することによって加熱され、耐火性材料を含む第2の反応器と
をさらに含む、請求項16に記載の反応器システム。
【請求項19】
第1の反応器と第2の反応器との中間に、少なくとも一部分の第1の反応体と、少なくとも一部分の第2の反応体とを合わせるための反応体混合器セクションをさらに含み、前記反応体混合器セクションが、耐火性材料を含む、請求項16に記載の反応器システム。
【請求項20】
熱分解された炭化水素供給原料の存在下で、耐火性材料の炭化物−酸化物セラミック腐蝕を軽減するための方法であって、炭化水素供給原料を熱分解するための熱分解反応器システムの加熱領域に、酸化物形態での耐火性材料を含む装置を提供するステップであって、前記耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、i)およびii)のうちの少なくとも1つに対して:
i)酸素分圧10-15バール、炭化ジルコニウムの炭素分圧より上の炭素分圧および同じ温度で酸化ジルコニウム相転移を有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点の温度より下の温度で曝露された場合、
ii)酸素分圧10-15バールを有する気体に、酸素分圧10-15バールでのジルコニウム三重点より上の温度で曝露された場合、
酸化物形態を維持するステップを含む方法。
【請求項21】
耐火性材料が、炭素分圧10-11バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、2050℃の温度で曝露された場合、酸化物形態を維持する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
耐火性材料が、炭素分圧10-10バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、1800℃〜2100℃の全範囲に渡る温度で曝露された場合、酸化物形態を維持する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
耐火性材料の結晶構造が、1250℃から2200℃への加熱中、立方体である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
耐火性材料の蒸気圧が、2000℃で10-7バール未満である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
熱分解反応器システムを用いて炭化水素供給原料を熱分解するための方法であって、
(a)炭化水素供給原料を熱分解するための熱分解反応器システムの加熱領域に、酸化物形態での耐火性材料を含む装置を提供するステップであって、前記耐火性材料が、2060℃以上の融点を有し、i)およびii)のうちの少なくとも1つに対して:
i)酸素分圧10-15バール、炭化ジルコニウムの炭素分圧より上の炭素分圧および同じ温度で酸化ジルコニウム相転移を有する気体に、酸素分圧10-15バールのジルコニウム三重点の温度より下の温度で曝露された場合、
ii)酸素分圧10-15バールを有する気体に、酸素分圧10-15バールのジルコニウム三重点より上の温度で曝露された場合、
酸化物形態を維持するステップを含む方法。
【請求項26】
耐火性材料が、炭素分圧10-11バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、2050℃の温度で曝露された場合、酸化物形態を維持する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
(b)加熱領域を1200℃以上の温度に加熱するステップと、
(c)炭化水素供給原料を加熱領域に導入するステップと、
(d)加熱領域からの熱を用いて炭化水素供給原料を熱分解するステップと
をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
耐火性材料が、炭素分圧10-10バール、酸素分圧10-15バールを有する気体に、1800℃〜2100℃の全範囲に渡る温度で曝露された場合、酸化物形態を維持する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
(i)反応器システム全体に渡り少なくとも1つの反応体を第1の方向に流動させるステップと、
(ii)反応器システム内の少なくとも1つの反応体を反応させることによって、加熱領域を加熱するステップと、
(iii)加熱領域全体に渡り炭化水素供給原料を流動させることによって、炭化水素供給原料の少なくとも一部分を熱分解し、分解された炭化水素生成物を生成するステップと
をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
耐火性材料を提供するステップ(a)が、耐火性材料の総質量に対して、少なくとも80質量%のイットリアを含む耐火性材料を提供するステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
耐火性材料を提供するステップ(a)が、耐火性材料の総質量に対して、少なくとも90質量%のイットリアを含む耐火性材料を提供するステップを含む、請求項25に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−527514(P2012−527514A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511873(P2012−511873)
【出願日】平成22年5月3日(2010.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/033423
【国際公開番号】WO2010/135073
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】