説明

熱効率のよい誘電体共振器支持体

様々な例示的な実施形態は、誘電体共振器内の中央のパックによって発生する熱を、支持体が熱効率よく急速に伝達することを可能にする、誘電体共振器で使用するための温度補償構造体に関する。温度補償構造体は、パックから支持体へと熱を伝達するように形状づけられた延在部を有してもよく、それにより、加熱することなく誘電体共振器の高電力動作が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示される実施形態は、一般に誘電体共振器の動作中に熱を伝達するための熱効率のよい構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体共振器は、一般にマイクロ波帯において、狭い範囲の周波数で共振を示す電子構成部品である。共振器は、たとえば、無線周波数の通信機器に使用される。所望の動作を実現するために、多くの共振器は、誘電率が高く誘電正接が低い、空洞内の中央の位置に配置された「パック」を備える。
【0003】
パックと空洞の組合せは、空洞内の電磁放射に境界条件を課す。空洞は少なくとも1つの導体壁を有し、これは金属製材料から製造してもよい。パックの縦軸は、空洞内の電磁界に対して実質的に垂直に配置してもよく、それにより電磁界の共振を制御する。
【0004】
パックがセラミックなどの誘電体材料で作られているとき、空洞は横電場(TE)モードで共振することがある。したがって、電磁界の伝搬方向に電界が存在することはできない。多くのTEモードを使用してもよいが、誘電体共振器は、マイクロ波の周波数を必要とする用途にTE011モードを使用してもよい。例示的な場合としてTE011モードを使用すると、電界は、パック内で最大値に達し、パックの中心軸に沿ってアジマス成分を有し、パックから離れると空洞内で全体的に減少し、任意の導体空洞壁に沿って完全に消失することになる。磁界もパック内で最大値に達することになるが、アジマス成分はない。
【0005】
誘電体共振器は電磁界を蓄えることになるが、やはり著しい量の熱を生成することがある。パックを他の対象物に結合することにより、加熱を打ち消すことができる。2つの固体が接触すると、熱い方の固体から冷たい方の固体に熱が流れる。この流れは瞬間的なものではないので、接触している2つの表面の間の界面で温度降下が生じる。界面を横切るこの温度降下と平均熱流との比が、「接触熱抵抗」として知られている。この抵抗を最小化すると、熱が急速に流れる。
【0006】
したがって、誘電体共振器は、パックから支持体に、かつ共振器から外に熱が伝達されるよう、熱伝達のための「支持体」を使用してもよい。設計者は、支持体の熱を伝達する能力を示すパラメータであるその熱伝導率によって支持体の材料の特性を決定することになる。遺憾ながら、熱伝導率が非常に高く導電率が非常に低い材料は、こうした支持体に使用するにはしばしば手が出ないほど高価である。結果として、現在の実装形態では、特に高電力の用途において外部環境へ効果的に熱を放射することができず、それにより、加熱が原因で共振器が正常動作しなくなり、または故障することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、誘電体共振器向けの熱効率がよく費用対効果の大きい支持体が必要とされる。具体的には、相対的に接触熱抵抗が低く、急速な熱伝導を可能にするが、共振器の動作を妨げることのない電気特性をも有する支持体が必要とされる。従来の技法では、発生した熱をゆっくり排出することしかできず、したがってそれらの技法は、中央のパックに急速な温度スパイクを生成することのある高電力動作において使用される誘電体共振器には適していない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
熱効率がよく費用対効果の大きい誘電体共振器の支持体についての目下の必要性に照らして、様々な例示的な実施形態の概要を提示する。以下の概要では何らかの簡略化および省略を行うことがあり、この概要は、様々な例示的な実施形態のうちのいくつかの態様を明らかにし紹介するものであって、本発明の範囲を限定するものではない。発明性のある概念を当業者が作成し使用できるようにするのに適切な、好ましい例示的な実施形態の詳細な説明が後の節に続く。
【0009】
様々な例示的な実施形態では、通信装置における熱伝達のためのシステムには、この通信装置が稼働しているときに熱を発生させる誘電体共振器が含まれ得る。さらに誘電体共振器には、上面、および少なくとも1つの導体壁によって画定された空洞内に配置された底面を有するパックであって、この少なくとも1つの導体壁に接触しないパックが含まれ得る。誘電体共振器にはまた、温度補償構造体の上面をパックの下面に接触させることにより、発生した熱を誘電体共振器から外に伝達する上面および下面を有する温度補償構造体が含まれ得る。熱伝達を最大にするために、温度補償構造体の上面およびパックの底面は、実質的に表面積が等しくてもよい。最後に、共振器には、伝達された熱を温度補償構造体の下面から受ける支持体が温度補償構造体の下に含まれ得る。この支持体は、導体壁に接触してもよく、パック内の水平軸に垂直な垂直軸を有してもよい。
【0010】
様々な例示的な実施形態では、熱伝達の熱効率がよい誘電体フィルタは、複数の誘電体共振器と、この複数の誘電体共振器の間の開口とを備えてもよい。誘電体共振器のそれぞれは、少なくとも1つの導体壁によって画定された空洞と、上面、およびこの空洞内に配置された底面を有するパックとを備えてもよい。パックのどの部分も、少なくとも1つの導体壁と接触しなくてよい。上面および下面を有する温度補償構造体は、温度補償構造体の上面をパックの下面に接触させることにより、発生した熱を誘電体フィルタから外に伝達することができる。温度補償構造体の上面およびパックの底面は、実質的に表面積が等しくてもよい。温度補償構造体の下にある支持体は、伝達された熱を温度補償構造体の下面から受けることができる。この支持体は、導体壁に接触してもよく、パック内の水平軸に垂直な垂直軸を有してもよい。
【0011】
したがって、様々な例示的な実施形態により、誘電体共振器から発生した熱を取り除くための改良された方式が実現する。これらの実施形態により、パックが支持体に熱を急速に伝達することができるようになり、パックが過熱するのを防止する。これらの実施形態により、熱効率のよいやり方で安価な材料を使用することができるようにもなり、それにより通信システムの総合コストが低減する。
【0012】
様々な例示的な実施形態をよりよく理解するために、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】例示的な誘電体フィルタの斜視図である。
【図2】第1の例示的な誘電体共振器の側面図である。
【図3】第2の例示的な誘電体共振器の側面図である。
【図4】第3の例示的な誘電体共振器の側面図である。
【図5】第4の例示的な誘電体共振器の側面図である。
【図6】第5の例示的な誘電体共振器の側面図である。
【図7】例示的な誘電体共振器と2つの従来型の誘電体共振器との比較試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に各図面を参照すると、同じ番号は同じ構成部品またはステップを指し、様々な例示的な実施形態の幅広い態様が開示される。
【0015】
図1は、例示的な誘電体フィルタ100の斜視図である。図1に示すように、フィルタ100は、第1の誘電体共振器110および第2の誘電体共振器120を備える。開口130は、第1の誘電体共振器110を第2の誘電体共振器120に連結する。第1の誘電体共振器110および第2の誘電体共振器120についての例示的な構造を、図2〜6を参照して以下で詳細に説明する。例示的なフィルタ100は2つだけの誘電体共振器を有するが、当業者なら、フィルタ100への適用可能な環境に応じてフィルタ100が任意の数の誘電体共振器を有するように設計することができる。
【0016】
図1には、第1の誘電体共振器110および第2の誘電体共振器120が六角形のプリズムとして示してある。したがって、第1の誘電体共振器110および第2の誘電体共振器120は、8つの面を有する準正多面体である。各面のうちの2つは六角形であるが、各面のうちの6つは長方形である。しかし、当業者なら、他の形状を有する誘電体共振器を使用するようにフィルタ100を設計できることが明らかになるはずである。代替の形には、たとえば球、楕円、円筒、円錐、リング、および立方体が含まれる。誘電体共振器はまた、六角形のプリズム以外の多面体の形状を有することもできる。
【0017】
各実施形態では、少なくとも1つの金属壁が、第1の誘電体共振器110および第2の誘電体共振器120の空間を全体的に囲むことができる。したがって、適切な刺激により、囲まれた空間が共振するようにでき、第1の誘電体共振器110および第2の誘電体共振器120が電磁的な発振源になることができる。開口130は、これらの発振において同調器として働くことができ、それによりフィルタ100は適切な周波数範囲内で電磁信号を発生させることができるようになる。
【0018】
誘電体共振器の動作が所定の範囲の周波数内で生じることがあるとき、同調する必要性が特に切実である。高電力誘電体共振器は、タワーから受信機へのビデオ、オーディオ、他のマルチメディアの無線放送などの用途で広く使用することができる。米国での現在の実装形態では、このような技術では、716〜722MHzの周波数スペクトル上の信号を伝送することができる。したがって、このスペクトル範囲内で、カプラが正確な同調を必要とすることがある。
【0019】
図2には、第1の例示的な誘電体共振器200の側面図が示してある。共振器200には、パック210、温度補償構造体220、および支持体230が含まれ得る。
【0020】
当業者には明らかになるように、パック210は、セラミックまたは他の適切な材料から作製してもよい。パック210の総合的な物理寸法、およびその材料の誘電率により、誘電体共振器200の共振周波数を決定することができる。一般に、パック210は、例示的なセラミック化合物BaCeTi15やBaNb15など、誘電率が大きく誘電正接が低い材料から作製してもよい。
【0021】
パック210の誘電正接が低くても、どんな誘電体材料も、電磁エネルギーを損失する材料の傾向を示すパラメータである損失正接を有する。したがって、誘電体共振器200が動作している間、その電磁エネルギーの一部分が熱に変わることになる。この熱が十分な速度で外部環境に放射されない場合、誘電体共振器200の温度が過度に上昇することがある。このような加熱により、誘電体共振器200の動作が損なわれることがあり、または誘電体共振器200を損傷することさえある。
【0022】
したがって、誘電体共振器200は温度補償構造体220を備えてもよく、この温度補償構造体が、発生した熱をパック210から受け、この受けた熱を支持体230に伝達する。温度補償構造体220は、この熱伝達を実現するようパック210と接触していてもよい。したがって、温度補償構造体220は、適切な誘電率を有する熱伝導性の接着剤によってパック210に接着してもよい。あるいは、温度補償構造体220は、当業者には明らかである他の機械的手段(たとえば、クランプ、ねじ、ボルトなど)を用いてパック210に取り付けてもよい。温度補償構造体220は、支持体230と一体化してもよく、または何らかの方法で、支持体230に取り付けられた別々の構成部品を構成してもよい。
【0023】
図示した実施形態では、支持体230は円筒形であり、パック210の隣接面に接触する内面を有する。パック210の隣接面は、温度補償構造体220および支持体230に近接しているパック210の表面であり、パック210の遠心面は、温度補償構造体220および支持体230から離れている。
【0024】
図2には、温度補償構造体220および支持体230の上にあるものとしてパック210が示してあるが、代替実施形態では、温度補償構造体220および支持体230をパック210の上にすることもできる。他の代替実施形態では、温度補償構造体220および支持体230は、パック210の左または右に配置することもできる。さらに他の代替実施形態では、温度補償構造体220および支持体230は、パック210の前または後に配置することもできる。一般に、パック210に面している温度補償構造体220および支持体230の表面は「内」面と呼ばれることがあるが、それというのもこのような表面が空洞の中心に向いているからである。逆に言えば、パック210から離れる表面は「外」面と呼ばれることがあるが、それというのもこのような表面が空洞の導体壁を指しているからである。
【0025】
さらに、誘電体共振器200は、その空洞内の様々な位置に配置された複数の支持体を有してもよい。たとえば、第2の支持体は、支持体230に対してパック210の反対側に配置してもよい。この例では、パック210は、上部支持体と底部支持体の中間にあってもよい。
【0026】
2つの対象物のサイズが異なるときには、熱広がり抵抗によって熱の伝達が妨げられることがある。したがって、熱を効率よく伝達するために、パック210と温度補償構造体220の隣接部分は、実質的に表面積が等しくてもよい。隣接した表面積が同様なので、パック210から温度補償構造体220に流れる熱に対する熱広がり抵抗は最小となり得る。
【0027】
支持体230は、受けた熱をこの支持体230が伝達するよう、温度補償構造体220に結合してもよい。支持体230は円筒形状でもよく、その内面が温度補償構造体220の外面に接触している。あるいは、前述の通り、温度補償構造体220および支持体230は単一ユニットでもよい。支持体230の垂直軸240は、パック210の水平軸250に対して垂直でもよい。
【0028】
温度補償構造体220および支持体230は両方とも、十分な熱伝導性を有しており、パック210から外部環境へと熱を伝達することができる。熱伝導率kは、材料が熱を伝導する能力であり、通常、所与の温度(ケルビン)において、ある距離(メートル)にわたって伝達される電力(ワット)で示される。
【0029】
したがって、温度補償構造体220および支持体230用の材料は、パック210が放射する熱エネルギーの量に応じて選択してもよい。前述の通り、通常の実装形態ではセラミックを使用してもよい。熱伝導率が相対的に高く、導電率が相対的に低い他の適切な材料が、当業者には明らかになろう。たとえば、炭素の同素体である純粋なダイヤモンドは、2320W/mKの熱伝導率を有し、非常に高価であるが、温度補償構造体220および支持体230向けに使用することができる。酸化ベリリウム(BeO)および窒化アルミニウム(AlN)は、他の適切な、ただし高価な例である。
【0030】
アルミナ(Al)は、他のセラミックに比べて、誘電損失が低く、熱伝導率が高い。さらに、アルミナは、従来のセラミックに対して正の誘電温度係数を有する。したがって、アルミナは、誘電体共振器200向けの有効な支持体材料になり得る。やはり、当業者には明らかになるように、温度補償構造体220および支持体230向けに、他の材料も使用することもできる。
【0031】
図3は、第2の例示的な誘電体共振器300の側面図を示す。共振器300は、パック310、温度補償構造体320、および支持体330を備える。温度補償構造体220とは異なり、温度補償構造体320は、支持体330上に配置された、またはそれと一体に形成された延在部340を有してもよい。支持体330は円筒表面を有してもよく、支持体330の垂直軸350はパック310の水平軸360に対して垂直でもよい。前述の通り、共振器300の空洞内の様々な位置に配置された複数の支持体が存在してもよい。
【0032】
支持体330が円筒である例示的な場合では、延在部340は、温度補償構造体320と支持体330の間の接触表面積を最大化するように、支持体330の周りで3次元的に押し出してもよい。したがって、延在部340は、温度補償構造体320の底面での最大幅から円錐状に徐々に先細になってもよく、支持体330の垂直軸350が円錐の中心軸となる。図3の2次元投影では、この円錐面の各ナップはそれぞれ、支持体330の左側または右側のいずれかにおいて三角形として見える。
【0033】
導体壁が共振器300用の空洞の外面を画定するので、2つのナップは完全な円錐形を形成することはできない。したがって、延在部340によって画定された2つのナップは、完全な円錐形を画定するように単一点で交わることができない。さらに、このナップは、導体壁の上の何らかの点で終了し、ごく部分的に支持体330の長さ方向に沿って延在してもよい。どちらの場合でも、延在部340は先端を切り取った円錐形を有してもよく、その結果、フラストコニカル形状の表面として説明することができる。当業者には明らかなように、ゼロに近いガウスの曲率を有する、実質的に平坦な他の表面を使用してもよい。
【0034】
それにより、延在部340は、温度補償構造体320と支持体330の間の熱界面の表面積を増大させることがある。表面積は同様なので、温度補償構造体320から支持体330に流れる熱に対する熱広がり抵抗は最小となる。延在部340でのナップにより、周囲を囲む温度補償構造体320から支持体330へ内側に熱が流れるようになり、熱効率を増大させる。
【0035】
図4は、第3の例示的な誘電体共振器400の側面図を示す。共振器400は、パック410、温度補償構造体420、および支持体430を備える。支持体430は円筒表面を有してもよく、支持体430の垂直軸450はパック410の水平軸460に対して垂直でもよい。前述の通り、共振器400の空洞内の様々な位置に配置された複数の支持体が存在してもよい。
【0036】
温度補償構造体220とは異なり、温度補償構造体420は、支持体430上に配置されてもよく、またはそれと一体に形成されてもよい湾曲した延在部440を有する。この延在部440は、負のガウスの曲率を有してもよく、外側または真っ直ぐにではなく内側に湾曲している。したがって、延在部440は、双曲面を有するものとして説明できる。
【0037】
延在部440は、温度補償構造体420と支持体430の間の接触表面積が最大になるよう、支持体430の周りで3次元的に押し出してもよい。延在部440の双曲面は、支持体430の少なくとも一部分に沿って配置してもよく、双曲面の中心軸は、支持体430の垂直軸450である。延在部440は負の曲率を有してもよいので、延在部440は、パック410が凸面状である場合にはより効率的に熱を伝達する。逆に言えば、延在部440は、パック410が凹面状である場合には正の曲率を有することもできる。
【0038】
図5は、第4の例示的な誘電体共振器500の側面図を示す。共振器500は、パック510、温度補償構造体520、および支持体530を備える。支持体530は円筒表面を有してもよく、支持体530の垂直軸550はパック510の水平軸560に対して垂直でもよい。前述の通り、共振器500の空洞内の様々な位置に配置された複数の支持体が存在してもよい。
【0039】
温度補償構造体520は、パック510と温度補償構造体520の間の接触表面積が最大になるよう、パック510の周りで3次元的に押し出される延在部540を有してもよい。延在部540は、温度補償構造体520の上面での最大幅から円錐状に徐々に先細になってもよく、パック510の水平軸560が円錐の中心軸に対して垂直になるはずである。図5の2次元投影では、この円錐面の各ナップはそれぞれ、パック510の左側または右側のいずれかにおいて三角形として見える。
【0040】
2つのナップは、パック510の遠心面を越えて延在することができないので、完全な円錐を形成することができない。さらに、このナップは、パック510の遠心面の下の何らかの点で終了してもよい。どちらの場合でも、延在部540は先端を切り取った円錐形を有してもよく、その結果、フラストコニカル形状の表面として説明することができる。当業者には明らかになるように、他の形状を使用してもよい。
【0041】
他の例として、延在部540は、円錐パターンを使用することなくパック510と温度補償構造体520の間の接触表面積が最大になるよう、510の周りで3次元的に押し出してもよい。延在部540は、パック510の周りにコップのような構造体を形成して、パック510の隣接面とパック510の任意の側壁の両方から放射される熱を吸収してもよい。したがって、熱はパック510の左側とパック510の右側の両方から温度補償構造体520に流れることができる。隣接した表面積は、平坦である単一の隣接面を使用するときよりも大きいことがあるので、第4の例示的な誘電体共振器500が熱伝達を改善した可能性がある。
【0042】
図6は、第5の例示的な誘電体共振器600の側面図を示す。共振器600は、パック610、温度補償構造体620、および支持体630を備える。支持体630は円筒表面を有してもよく、支持体630の垂直軸650はパック610の水平軸660に対して垂直でもよい。前述の通り、共振器600の空洞内の様々な位置に配置された複数の支持体が存在してもよい。
【0043】
温度補償構造体620は、パック610の隣接面に配置された、湾曲した延在部640を有してもよい。したがって、パック610の隣接面から温度補償構造体620の内面に熱が流れることになる。隣接した表面積は、平坦である単一の隣接面を使用するときよりも、湾曲した延在部640とパック610の間で大きいので、第5の例示的な誘電体共振器600は、第1の例示的な誘電体共振器200よりも熱伝達を速くすることができる。
【0044】
湾曲した延在部640は、負のガウスの曲率を有してもよい。したがって、延在部640は、パック610の少なくとも一部分に沿って配置された双曲面を有し、双曲面の中心軸は、パック610の水平軸660に対して垂直でもよい。延在部640の双曲面はまた、パック610の遠心面に向かう方向に狭くなってもよい。
【0045】
延在部640は、凹面の曲率を有してもよく、パック610の遠心面に延在してもよい。この代替実施形態では、パック610は、半球または楕円の隣接面を有してもよく、それにより均一に熱を放射する。この場合、延在部640の凹面の曲率は、パック610の凸面の隣接面にマッチしてもよく、熱がパック610から急速に流れることができるようになる。
【0046】
図7は、例示的な誘電体共振器と2つの従来型の誘電体共振器との比較試験結果700を示す。図7は、電気試験結果700からのシミュレーションおよび測定値をグラフ形式で示す。グラフのx軸は、ミリ秒での時間を示し、0〜70msの範囲にある。グラフのy軸は摂氏での温度を示し、35℃から85℃の範囲にある。これらの温度は、誘電体共振器を画定する空洞内のパックの中心で測定される。
【0047】
第1の例710は、第1の従来の誘電体共振器についての温度曲線を示す。この例では、パックとその対応する支持体との間の接触表面積は、約1.08平方インチでもよい。誘電体共振器の動作により、10ms以内でパックが約60℃〜80℃を超えて暖まる。温度が20℃上昇すると、パックが損傷することがあり、または共振器の動作が妨げられることがある。
【0048】
第2の例720は、第2の従来の誘電体共振器についての温度曲線を示す。この例では、パックとその対応する支持体との間の接触表面積は、約2.65平方インチでもよい。接触表面積がより大きいので、パックとその支持体の間でより急速な熱伝導が生じることが当業者には考えつくはずである。それにもかかわらず、やはりこの誘電体共振器の動作により、パックの温度がほぼ80℃にまで上昇することになる。このような急速な加熱により、共振器の周波数性能が変化することがある。
【0049】
第3の例730は、図2に関して本明細書において開示される一実施形態による温度補償構造体を有する例示的な誘電体共振器についての温度曲線を示す。接触面積は約5.34平方インチであり、例710または例720のいずれかの場合よりも著しく大きい。温度上昇が依然として生じている間も、パックの温度が75℃を超えて上がることは決してない。したがって、例示的な誘電体共振器は、例710および例720の従来の共振器よりもはるかに有効になり得る。
【0050】
前述の各実施形態を様々な組合せで使用してもよいことが、当業者には明らかになるはずである。たとえば、図3の延在部340を図5の延在部540に追加してもよい。あるいは、図4の延在部440を図6の延在部640に追加してもよい。接触面積を増やすための他の適切な構成および修正が当業者には明らかになろう。
【0051】
様々な例示的な実施形態を、具体的にその例示的な一定の態様に関して詳細に説明してきたが、本発明は、他の実施形態が可能であり、その詳細は、様々な自明の点において修正が可能であることを理解されたい。当業者には容易に分かるように、本発明の精神および範囲内を維持しながら、変更形態および修正形態を実施することができる。したがって、前述の開示、説明、および図は、例示のみを目的としており、本発明を少しも限定するものではなく、本発明は特許請求の範囲によってのみ定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置における熱伝達のためのシステムであって、
前記通信装置が稼働しているときに熱を発生させる誘電体共振器であって、少なくとも1つの導体壁によって画定された空洞内に配置された遠心面および隣接面を有するパックを備え、前記パックが前記少なくとも1つの導体壁に接触しない誘電体共振器と、
内面を前記パックの前記隣接面に接触させることにより、前記発生した熱を前記誘電体共振器から外に伝達する前記内面および外面を有する温度補償構造体であって、前記温度補償構造体の前記内面および前記パックの前記隣接面が実質的に等しい面積を有する温度補償構造体と、
前記温度補償構造体の前記外面からの前記伝達された熱を受ける、前記温度補償構造体に隣接する支持体であって、前記少なくとも1つの導体壁に接触し、前記パック内の水平軸に対して垂直な垂直軸を有する支持体とを備えるシステム。
【請求項2】
前記温度補償構造体が、前記支持体の少なくとも一部分に沿ってフラストコニカル形状の表面を画定する錐台として形状づけられた延在部を備え、前記錐台の中心軸が前記支持体の前記垂直軸であり、前記フラストコニカル形状の表面が、前記少なくとも1つの導体壁に向かう方向に前記支持体の前記垂直軸に沿って先細になっている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記温度補償構造体が、前記支持体の少なくとも一部分に沿って配置された双曲面を有する湾曲延在部を備え、前記湾曲延在部の中心軸が前記支持体の前記垂直軸であり、前記双曲面が、前記少なくとも1つの導体壁に向かう方向に前記支持体の前記垂直軸に沿って狭くなっている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記温度補償構造体が、前記パックの少なくとも一部分に沿ってフラストコニカル形状の表面を画定する錐台として形状づけられた延在部を備え、前記錐台の中心軸が前記パックの前記水平軸に対して垂直であり、前記フラストコニカル形状の表面が、前記パックの上面に向かう方向に先細になっている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記温度補償構造体が、前記パックの少なくとも一部分に沿って配置された双曲面を有する湾曲延在部を備え、前記湾曲延在部の中心軸が前記パックの前記水平軸に対して垂直であり、前記双曲面が、前記パックの前記上面に向かう方向に狭くなっている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
複数の支持体および温度補償構造体をさらに備え、各温度補償構造体の前記内面が前記パックから熱を受け、各温度補償構造体の前記外面が前記受けた熱をそれぞれの支持体に伝達する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
熱伝達の熱効率がよい誘電体フィルタであって、
複数の誘電体共振器と、
前記複数の誘電体共振器の間の開口とを備え、各誘電体共振器が、
少なくとも1つの導体壁によって画定された空洞と、
前記空洞内に配置された遠心面および隣接面を有するパックであって、前記少なくとも1つの導体壁に接触していないパックと、
内面を前記パックの前記隣接面に接触させることにより、前記発生した熱を前記誘電体フィルタから外に伝達する前記内面および外面を有する温度補償構造体であって、前記温度補償構造体の前記内面および前記パックの前記隣接面が実質的に等しい面積を有する温度補償構造体と、
前記温度補償構造体の前記外面からの前記伝達された熱を受ける、前記温度補償構造体の下にある支持体であって、前記少なくとも1つの導体壁に接触し、前記パック内の水平軸に対して垂直な垂直軸を有する支持体を含む誘電体フィルタ。
【請求項8】
各温度補償構造体が、前記支持体の少なくとも一部分に沿ってフラストコニカル形状の表面を画定する錐台として形状づけられた延在部を備え、前記錐台の中心軸が前記支持体の前記垂直軸であり、前記フラストコニカル形状の表面が、前記少なくとも1つの導体壁に向かう方向に前記支持体の前記垂直軸に沿って先細になっている、請求項7に記載の誘電体フィルタ。
【請求項9】
前記温度補償構造体が、前記支持体の少なくとも一部分に沿って配置された双曲面を有する湾曲延在部を備え、前記湾曲延在部の中心軸が前記支持体の前記垂直軸であり、前記双曲面が、前記少なくとも1つの導体壁に向かう方向に前記支持体の前記垂直軸に沿って狭くなっている、請求項7に記載の誘電体フィルタ。
【請求項10】
複数の支持体および温度補償構造体をさらに備え、各温度補償構造体の前記内面が前記パックから熱を受け、各温度補償構造体の前記外面が前記受けた熱をそれぞれの支持体に伝達する、請求項7に記載の誘電体フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−509812(P2013−509812A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536896(P2012−536896)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/053660
【国際公開番号】WO2011/053515
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(391030332)アルカテル−ルーセント (1,149)
【Fターム(参考)】