説明

熱可塑性エラストマー組成物を用いた弾性バンド

【課題】 熱可塑性エラストマー製で、柔軟性、引張強さ、引張永久歪み、耐熱性の各種性能のバランスがとれた弾性バンド、特にスイミング用ゴーグルのバンドを提供する。
【解決手段】 下記ブロック共重合体(a)と下記ブロック共重合体(b)を含有し、(a):(b)の質量比が2:98〜98:2であり、かつ硬さ(JIS K6253に準拠、Aタイプ)が1〜90度である熱可塑性エラストマー組成物からなる弾性バンド。
(a)スチレンを主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる数平均分子量が130,000〜600,000のブロック共重合体、
(b)α−メチルスチレンを主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる数平均分子量が70,000〜600,000のブロック共重合体、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性とゴム弾性に富み、引張永久歪みが小さく、かつ機械的強度および耐熱性に優れ、特にスポーツ用品 、安全器具、玩具等に利用できる、熱可塑性エラストマー組成物からなる弾性バンド、なかでもゴーグルの弾性バンドに使用される弾性バンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種のスポーツ用品 、安全器具、玩具などに使用されるゴーグルの弾性バンドの素材には、柔軟性、ゴム弾性、耐熱性、引張永久低歪みの各種性能に優れたシリコーンゴムが多用されてきた。その中で比較的耐熱性や引張永久低歪みが必要でない用途には、最近の環境対応および加工エネルギー低減の目的から、スチレン系熱可塑性エラストマーの水素添加ブロック共重合体を主体とする熱可塑性エラストマーを使用する例も多く見られるようになってきた(例えば特開2003‐20382号公報)。
しかしながら、従来のこのような熱可塑性エラストマーでは、特にシリコーンゴムのような柔軟性、引張強さ、引張永久歪みおよび耐熱性をバランスよく付与することができなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2003‐20382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の不足部分を解消するためになされたものであり、柔軟性、引張強さ、引張永久歪み、耐熱性の各種性能のバランスがとれた弾性バンド、特にゴーグルに用いられる弾性バンドを、リサイクル等の環境対応が容易で、かつ加工エネルギーが抑えられる熱可塑性エラストマーによって得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、下記ブロック共重合体(a)と下記ブロック共重合体(b)を含有し、(a):(b)の質量比が2:98〜98:2であり、かつ硬さ(JIS K6253に準拠、Aタイプ)が1〜90度である熱可塑性エラストマー組成物からなる弾性バンドによって達成される。
(a)スチレンを主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる数平均分子量が130,000〜600,000のブロック共重合体、
(b)α−メチルスチレンを主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる数平均分子量が70,000〜600,000のブロック共重合体、
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、熱可塑性エラストマーで柔軟性、引張強さ、引張永久歪み、耐熱性の各種性能のバランスがとれた弾性バンドを得ることができるため、環境対応及び低コストで加工ができる熱可塑性エラストマー製の弾性バンドの用途が拡がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明では、前記した熱可塑性エラストマー組成物を用いることが重要である。以下に、本発明に用いる熱可塑性エラストマー組成物の各成分について説明する。
【0008】
本発明において、ブロック共重合体(a)とブロック共重合体(b)を併用することが必須である。これによって柔軟性、引張強度、引張り永久歪み、耐熱性とをバランスよく付与することができる。前記ブロック共重合体(a)とブロック共重合体(b)の質量比率は、2:98〜98:2であることが必要であり、好ましくは高温環境下での圧縮永久歪みを高度に抑える観点から50:50〜98:2である。
【0009】
次に、本発明の弾性バンドを構成する組成物の必須成分であるブロック共重合体(a)とブロック共重合体(b)について説明する。
【0010】
[ブロック共重合体(a)]
まず、ブロック共重合体(a)成分のスチレンを主体とする重合体ブロックは、スチレンを主体とするモノマーから得られる重合体ブロックであり、スチレン単独、あるいはこれに少量のα−メチルスチレン、o−、m−またはp−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレンビニルナフタレン、ビニルアントラセン等の芳香族ビニルモノマー、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン化合物を初めとする他の共重合可能モノマーがランダム状やテーパード状等に共重合されていてもよい。
ブロック共重合体(a)成分のスチレンを主体とする重合体ブロックの数平均分子量は2,500〜75,000の範囲、特に5,000〜50,000の範囲内にあるのが好ましい。
【0011】
ブロック共重合体(a)成分の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックに用いられる共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、イソプレン、1,3−ブタジエンまたはこれらの混合物が好ましい。共役ジエン化合物は、単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0012】
更に、ブロック共重合体(a)成分の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックには、本発明の目的を損なわない範囲内で、通常は30質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲内で、共役ジエン化合物以外の他のアニオン重合性の単量体が共重合されていてもよい。該共重合可能な他の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、1−ビニルナフタレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。芳香族ビニル化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を共重合する場合の形態は、ランダム、テーパード状等のいずれでもよい。
【0013】
ブロック共重合体(a)における共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックのミクロ構造は特に限定されない。例えば、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックがポリイソプレンからなるブロックである場合には、その1,4結合量が70%以上であることが望ましい。また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックがポリブタジエンからなるブロックである場合には、その1,4結合量が40〜80%であることが望ましい。
ブロック共重合体(a)における共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックの数平均分子量としては、10,000〜450,000の範囲内、特に30,000〜350,000の範囲が好ましい。
【0014】
ブロック共重合体(a)におけるスチレンを主体とする重合体ブロックの含有率は5〜50質量%が好ましい。スチレンを主体とする重合体ブロックの含有率がこの範囲を逸脱すると、ブロック共重合体(a)を含有する熱可塑性エラストマー組成物に充分なゴム弾性を付与することができず好ましくない。
【0015】
またブロック共重合体(a)の数平均分子量は130,000〜600,000の範囲である。分子量がこの範囲より小さい場合には、機械的強度が不十分となるとともに、例えば40〜80℃の高温環境下に放置した際に応力変形が生じ易くなるなど、引張り性能が著しく低下するとともに圧縮永久歪みが著しく悪化する。具体的には、弾性バンドが破断しやすく、また弾性バンドがスイミング用ゴーグルである場合には、濡れた水着を乾燥させる目的で、暖房器具の側に置いておくと歪みを生じることとなる。一方、前記範囲を越えて数平均分子量が大きい場合には成形加工性が不十分となる。好適には170,000〜500,000の範囲である。
【0016】
また、ブロック共重合体(a)の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックのジエンに基づく炭素−炭素二重結合部分の50%以上が水素添加されていることが必要で、好ましくは少なくとも70%が水素添加されている場合であり、より好適には90%以上である。水素添加量が50%未満では機械的強度や耐候性が劣り好ましくない。
【0017】
ブロック共重合体(a)における、スチレンを主体とする重合体ブロック(P)と共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックおよびその水素添加物ブロック(Q)の結合様式は、線状、分岐状、放射状、あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよい。例えば、重合体ブロック(P)をPで、重合体ブロック(Q)をQで表したとき、P−Q型ジブロック共重合体、P−Q−P型トリブロック共重合体、P−Q−P−Q型テトラブロック共重合体、(P−Q)nM型共重合体(Mはカップリング剤残基を表し、nは3以上の整数を表す)等が挙げられる。これらのブロック共重合体の結合様式は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、P−Q−P型トリブロック共重合体、又はP−Q−P型トリブロック共重合体とP−Q型ジブロック共重合体の混合物が好ましい。
【0018】
また、本発明に用いるブロック共重合体(a)には、本発明の目的を損なわない範囲内で、メタクリル酸メチルで代表される他の単量体を主体とする重合体ブロック(Z)を共重合させてもよい。この場合、ブロック共重合体の好適な構造としては、P−Q−Z型トリブロック共重合体、P−Q−Z−P型テトラブロック共重合体、P−Q−P−Z型テトラブロック共重合体等のP−Q−P型トリブロック共重合体を基本としてそれにZの重合体ブロックを挿入或いは付加した構造が挙げられる。
【0019】
ブロック共重合体(a)は、本発明の目的を損なわない限り、分子鎖中に又は分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基等の官能基を含有していてもよい。
【0020】
[ブロック共重合体(b)]
ブロック共重合体(b)としては、α−メチルスチレンを主体とする重合体ブロック(X)と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(Y)とを有するブロック共重合体の水素添加物が用いられる。
【0021】
ブロック共重合体(b)を構成する重合体ブロック(X)は、α−メチルスチレン、すなわちイソプロペニルベンゼンを主体とするモノマーから得られる重合体ブロックである。該重合体ブロック(X)中のα−メチルスチレン単位の含有量は、得られる熱可塑性重合体組成物の耐熱性及び機械的強度の観点から50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
【0022】
重合体ブロック(X)には、本発明の目的を損なわない範囲内、すなわち50質量%未満の範囲内でα−メチルスチレン以外の単量体を共重合していてもよく、共重合できる単量体としては、一般的にアニオン重合可能な単量体であれば限定はない。例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、1−ビニルナフタレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等の芳香族ビニル化合物;1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン化合物が好ましく、特にスチレン、p−メチルスチレンが好適である。重合体ブロック(X)に上記他の単量体を共重合する場合の形態は、ランダム、テーパード状等のいずれでもよい。
【0023】
重合体ブロック(X)の数平均分子量は1,000〜50,000の範囲が好ましく、2,000〜40,000の範囲がより好ましく、3,000〜35,000の範囲がさらに好ましい。重合体ブロック(X)の数平均分子量が1,000未満の場合には、得られる熱可塑性重合体組成物の高温下での圧縮永久歪みが劣り、一方、数平均分子量が50,000を越える場合には、ブロック共重合体(b)の溶融粘度が高くなり過ぎ、他の成分との溶融混合が難しくなり、加工性が劣る。
【0024】
なお、本発明でいう数平均分子量とは、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の分子量である。
カラム:商品名:TSKgel G4000H xl、東ソー株式会社製(カラム温度:40℃)
移動相:テトラヒドロフラン(流速:1ml/min)
検出器:示差屈折計(なお、多波長検出器(検出波長:254nm)をさらに連結させた。)
標準物質:TSK標準ポリスチレン 東ソー株式会社製
試料濃度:0.06質量%
【0025】
ブロック共重合体(b)における重合体ブロック(X)の含有量は、5〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、20〜50質量%が更に好ましく、25〜40質量%が特に好ましい。重合体ブロック(X)の含有量が5質量%未満の場合には、得られる熱可塑性重合体組成物の力学的強度が劣り、また高温下での良好な圧縮永久歪みが得られず、耐熱性が劣る傾向となり、一方、70質量%を超える場合には、ブロック共重合体(b)の溶融粘度が高くなり過ぎ、他の成分との溶融混合が難しくなるばかりか、熱可塑性重合体組成物とした場合に、柔軟性が乏しくなり、また後述のゴム用軟化剤を併用する場合、ブリードアウトが生じる傾向となる。
【0026】
ブロック共重合体(b)を構成する重合体ブロック(Y)は、共役ジエン化合物を主体とするモノマーから合成される。該共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。共役ジエン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、1,3−ブタジエン、イソプレン、又は1,3−ブタジエンとイソプレンの混合物が好ましい。2種以上を併用する場合の形態は、ランダム、テーパード状等のいずれでもよい。
【0027】
更に、重合体ブロック(Y)は、本発明の目的を損なわない範囲内で、通常は30質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲内で、共役ジエン化合物以外の他のアニオン重合性の単量体を共重合していてもよい。該共重合可能な他の単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、ジフェニルエチレン、1−ビニルナフタレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等の芳香族ビニル化合物が挙げられる。芳香族ビニル化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を共重合する場合の形態は、ランダム、テーパード状等のいずれでもよい。
【0028】
ブロック共重合体(b)における重合体ブロック(Y)の含有量は、30〜95質量%が好ましく、40〜90質量%がより好ましく、50〜80質量%が更に好ましく、60〜75質量%が特に好ましい。重合体ブロック(Y)の含有量が30質量%未満では、ブロック共重合体(b)の溶融粘度が高くなり過ぎ、他の成分との溶融混合が困難となる傾向となり、一方、95質量%を超えると、熱可塑性エラストマー組成物とした場合に高温下での圧縮永久歪みが劣る。
【0029】
重合体ブロック(Y)の数平均分子量は、10,000〜350,000が好ましく、20,000〜320,000の範囲がより好ましく、30,000〜300,000の範囲がさらに好ましい。重合体ブロック(Y)の数平均分子量が10,000未満の場合には、得られる熱可塑性重合体組成物の耐熱性に劣り、一方、数平均分子量が350,000を越える場合には、ブロック共重合体の溶融粘度が高くなり過ぎ、他の成分との混合が困難となって加工性が劣る。
【0030】
ブロック共重合体(b)における重合体ブロック(X)と重合体ブロック(Y)の結合様式は、線状、分岐状、放射状、あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよい。例えば、重合体ブロック(X)をXで、重合体ブロック(Y)をYで表したとき、X−Y型ジブロック共重合体、X−Y−X型トリブロック共重合体、X−Y−X−Y型テトラブロック共重合体、(X−Y)nM型共重合体(Mはカップリング剤残基を表し、nは3以上の整数を表す)等が挙げられる。これらのブロック共重合体の結合様式は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、X−Y−X型トリブロック共重合体、又はX−Y−X型トリブロック共重合体とX−Y型ジブロック共重合体の混合物が好ましい。
【0031】
また、本発明に用いるブロック共重合体(b)には、本発明の目的を損なわない範囲内で、メタクリル酸メチルで代表される他の単量体からなる重合体ブロック(Z)を共重合させてもよい。この場合、ブロック共重合体の結合様式としては、X−Y−Z型トリブロック共重合体、X−Y−Z−X型テトラブロック共重合体、X−Y−X−Z型テトラブロック共重合体等のX−Y−X型トリブロック共重合体を基本としてそれにZの重合体ブロックを挿入或いは付加した構造が挙げられる。
【0032】
更に、ブロック共重合体(b)は、耐熱性、耐候性の向上等の観点から水素添加されていることが必要である。水素添加の割合は、特に限定されるものではないが、ブロック共重合体(b)中の共役ジエン単位に基づく炭素−炭素二重結合の30%以上が水素添加されているのが好ましく、50%以上が水素添加されているのがより好ましく、80%以上が水素添加されているのが更に好ましく、90%以上が水素添加されているのが特に好ましい。
【0033】
ブロック共重合体(b)は、本発明の目的を損なわない限り、分子鎖中に、又は分子末端に、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基等の官能基を含有していてもよい。
【0034】
本発明に使用する熱可塑性エラストマー組成物には、上記の成分の他に、ポリオレフィン系樹脂やパラフィン系オイルを混合すると更によい。
【0035】
[ポリオレフィン系樹脂]
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレンまたはプロピレンを主体とする共重合体、ポリエチレン又はエチレンを主体とする共重合体が挙げられ、ホモタイプのポリプロピレン、プロピレンと他の少量のα−オレフィンとのブロックタイプのポリプロピレン、ランダムタイプのポリプロピレン、あるいは高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体などの中から選ばれた1種または2種以上が好ましく用いられる。
【0036】
ポリオレフィン系樹脂の使用量は、ブロック共重合体(a)とブロック共重合体(b)の合計質量100部に対し0〜100質量部が好ましく、より好ましくは2〜50質量部である。100質量部を越えると柔軟性が低下し、またゴム弾性や引張り永久歪みが劣り好ましくない。本発明においてポリオレフィン系樹脂は必須ではないが、ポリオレフィン系樹脂を使用することで、強度、切断時伸び率、その他の特性が向上するので好適である。
【0037】
[パラフィン系オイル]
パラフィン系オイルとしては、パラフィン系のプロセスオイル、流動パラフィン等が挙げられる。これらは1種または2種以上が用いられる。オイルの重量平均分子量は300〜2000の範囲が好ましい。この範囲であれば成形品におけるオイルのブリードが極めて少ない。パラフィン系オイルの好適配合量は、ブロック共重合体(a)と下記ブロック共重合体(b)の合計質量100部に対して1〜500質量部であり、より好適には50〜300質量部、更に好適には80〜200質量部である。本発明においてパラフィン系オイルは必須ではないが、使用することで、柔軟性、流動性、その他の特性が向上するため好適である。500質量部を超えると機械的強度や引張り永久歪みが著しく低下するため好ましくない。
【0038】
[その他の添加成分]
なお、本発明に使用する熱可塑性エラストマー組成物は、上記の成分の他に、用途に応じてスチレン系樹脂やポリフェニレンエーテル樹脂などの他の樹脂、あるいは増量を目的として炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム等の無機充填剤等を混合することができる。更には、ガラス繊維、カーボン繊維のような無機繊維あるいは合成繊維で代表される有機繊維あるいは繊維状物の混合も可能である。この他、各種のブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、結晶核剤、発泡剤、着色剤等を含有することも可能である。
【0039】
ここで、酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジtert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジtert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、3,9ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ−5,5−ウンデカンなどのフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。このうちフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。
酸化防止剤は、上記ブロック共重合体(a)とブロック共重合体(b)の合計質量100部に対して、3質量部以下が好ましく、より好ましくは1質量部以下である。
【0040】
また必要に応じて、本発明に使用する熱可塑性エラストマー組成物をパーオキシドおよび架橋助剤の存在下に、架橋することも可能である。
パーオキシドとしては、例えば、ジクミルパーオキシド、ジtert−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、過酸化水素等を挙げることができる。
架橋助剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート又はビニルスチアレートのような多官能ビニルモノマーを配合することができる。
【0041】
本発明に使用する熱可塑性エラストマー組成物は、硬さ(JIS Aタイプで測定)1〜90度になるように調整されなければならない。更に10〜60度に調整されることによって、更に好適に前記目的が高度に達成される。硬さは、主として、ポリオレフィン系樹脂とパラフィン系オイルの配合量により調節することができ、すなわち、ポリオレフィン系樹脂の配合量を増やす、あるいはパラフィン系オイルの配合量を減らすことにより一般的に硬さの値は高くなり、逆に、ポリオレフィン系樹脂の配合量を減らす、あるいはパラフィン系オイルの配合量を増やすことにより硬さの値は低くなる。硬さが1度未満の場合には締め付け力が低すぎて弾性バンドには適さず、逆に90度を越える場合にはゴム弾性が低下し締め付け力が高すぎ、これまた弾性バンドには適さない。
【0042】
本発明に使用する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法としては、通常の樹脂組成物の製造あるいはゴム組成物の製造に際して用いられる方法が採用でき、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて各成分を均一に混合することにより製造できる。加工機の設定温度は150℃〜300℃の中から任意に選ぶことができ、その製造方法になんら制限はない。
【0043】
本発明の弾性バンドは、前記の熱可塑性エラストマー組成物を、従来公知の方法、例えば熱プレス、射出成形、押出成形、カレンダー成形することにより得られる。さらに、押出成形やカレンダー成形したシートやフィルムを圧縮成形によって細部を加工する2工程による成形方法を用いてもよい。2色成形やインサート成形等の2種材料による複合射出成形、あるいは多層押出成形によって、本発明に用いる熱可塑性エラストマー組成物とプロピレン系樹脂等の硬質樹脂を一体的に成形することもできる。
【0044】
このようにして得られる弾性バンドの形状は、好適には、厚み0.1〜30mm、特に0.5〜5mm、幅1〜500mm、特に5〜100mm、長さ5mm〜2000mm、特に50〜1000mmの帯状であるが、細部の形状や帯の断面形状は任意であり、帯の一部分が二股あるいはそれ以上の複数に枝分かれする形状、複数の帯が端部や途中で重なる形状などが挙げられる。さらに弾性バンドの途中あるいは末端部に留具、例えばホック、面ファスナー、引っ掛け具等が取り付けられていても良い。
【0045】
上記のような本発明の弾性バンドは、柔軟性、引張強度、引張り永久歪み等の各種性能のバランスに優れるために、例えば、乗馬様揺動運動機器の手綱バンド、携帯オーディオ機器の保持バンド等の家電製品、腰部固定バンド、首部固定バンド等の健康器具または医療器具、保護マスクバンド、保護ゴーグルバンド等の工業用品、ランニング用ゴーグルバンド、スイミング用ゴーグルバンド、ダイビング用水中眼鏡バンド、スキー用ゴーグルバンド、フィットネス用具等のスポーツ用品、各種履物の固定バンド、各種日用品または各種玩具などに使用される伸縮部材や結束バンド等に好適に使用できる。特に、顔面に装着するゴーグルバンド、特にスイミング用のゴーグルバンドに好適である。
【0046】
本発明をより具体的かつ詳細に説明するために以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、熱可塑性エラストマー組成物を用いて成形した弾性バンド(スイミング用ゴーグルバンド)の性能評価は、以下に示す方法によって行った。
【0047】
[スイミング用ゴーグルの製造方法]
二軸押出機(口径46mm、L/D=46)を使用して、表1に示す配合に従って、各構成成分を混合し200℃で溶融混練し、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。これらの熱可塑性エラストマー組成物を用いて、射出成形機(200℃)で、厚さ2mm×φ120の円盤状シート、および厚み1.5mm、幅12mm、長さの500mmの帯状成形体、更に厚み12.5mm、直径29mmの圧縮永久歪み測定用円柱状成形体をそれぞれ別々に作製した。円盤状シート及び円柱状成形体は1点のサイドゲートを持つ金型、帯状成形体は両端に2点のピンポイントゲートを持つ金型を各々使用した。硬さ、引張強度、引張永久歪みは、円盤状シートを用いて測定した。ウエルド部引張強さは、帯状成形体を用いて成形時に樹脂が合流する中央部分の強度を測定した。また、円柱状成形体を用いて圧縮永久歪みを測定した。実製品を模した試験として、スイミング用ゴーグルのバンド部に前記厚み1.5mm、幅12mm、長さの500mmの帯状成形体を用いて、装着感等の官能評価を実施した。
【0048】
なお、表1の実施例1〜2で用いたブロック共重合体(a)、ブロック共重合体(b)、ポリオレフィン系樹脂、パラフィン系オイルのそれぞれは、以下のものを使用した。また、表1の比較例1〜6では、前記4種以外に、本発明の範囲外(数平均分子量が範囲から外れる)となるブロック共重合体をブロック共重合体(c)として以下のものを使用した。
【0049】
[ブロック共重合体(a)の製造]
窒素置換した攪拌装置付き耐圧容器に、スチレン81gおよびシクロヘキサン1,100gを仕込んだ。この溶液に、sec−ブチルリチウム(1.3M、シクロヘキサン溶液)2.4mlを加え、50℃で1時間重合させた。次いで、この反応混合物にイソプレン/ブタジエン=50/50(質量比)を189gを加え、50℃で1時間重合を行った。その後、この反応混合物にさらにジクロロジメチルシラン(0.5M、トルエン溶液)3.1mlを加えて50℃で1時間攪拌することにより、ポリスチレン−ポリイソプレン/ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体を含む反応混合液を得た。この反応混合物にオクチル酸ニッケル/トリエチルアルミニウムからなる水素添加触媒を添加して、水素圧力0.8MPaで、80℃で5時間の水素添加反応を行い、ポリスチレン−ポリイソプレン/ポリブタジエン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(数平均分子量290,000)を得た。
【0050】
[ブロック共重合体(b)の製造]
窒素置換した攪拌装置付き耐圧容器に、α−メチルスチレン90.9g、シクロヘキサン138g、メチルシクロヘキサン15.2gおよびテトラヒドロフラン3.1gを仕込んだ。この混合液にsec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)9.4mlを添加し、−10℃で3時間重合させた。重合開始3時間後のポリα−メチルスチレン(重合体ブロックX)の数平均分子量をGPCにより測定したところ、ポリスチレン換算で6,600であり、α−メチルスチレンの重合転化率は89%であった。
次いで、この反応混合液にブタジエン23gを添加し、−10℃で30分間攪拌して、ブロックb1の重合を行った後、シクロヘキサン930gを加えた。この時点でのα−メチルスチレンの重合転化率は89%であり、ポリブタジエンブロック(y1)の数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は3,700であり、H−NMR測定から求めた1,4−結合量は19モル%であった。
【0051】
次に、この反応液にさらにブタジエン141.3gを加え、50℃で2時間重合反応を行った。この時点のサンプリングで得られたブロック共重合体(構造:X−y1−y2)のポリブタジエンブロック(y2)の数平均分子量(GPC測定、ポリスチレン換算)は29,800であり、H−NMR測定から求めた1,4−結合量は60モル%であった。
続いて、この重合反応溶液に、ジクロロジメチルシラン(0.5Mトルエン溶液)12.2mlを加え、50℃にて1時間攪拌し、ポリα−メチルスチレン−ポリブタジエン−ポリα−メチルスチレントリブロック共重合体を得た。このときのカップリング効率を、カップリング体(ポリα−メチルスチレン−ポリブタジエン−ポリα−メチルスチレントリブロック共重合体:X−y1−y2−M−y2−y1−X;式中Mはカップリング剤残基(−Si(Me)−)を表す、数平均分子量81,000)と、未反応ブロック共重合体(ポリα−メチルスチレン−ポリブタジエンブロック共重合体:X−y1−y2、数平均分子量41,000)のGPCにおけるUV吸収の面積比から算出すると94質量%であった(カップリング体と未反応ブロック共重合体全体の数平均分子量78,600)。また、H-NMR解析の結果、ポリα−メチルスチレン−ポリブタジエン−ポリα−メチルスチレントリブロック共重合体中のポリα−メチルスチレンブロックの含有量は33質量%であり、ポリブタジエンブロック(重合体ブロックY)全体(すなわち、ブロックy1およびブロックy2)の1,4−結合量は56モル%であった。
【0052】
上記で得られた重合反応溶液中に、オクチル酸ニッケルおよびトリエチルアルミニウムから形成されるZiegler系水素添加触媒を水素雰囲気下に添加し、水素圧力0.8MPa、80℃で5時間の水素添加反応を行ない、α−メチルスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物(以下、これをブロック共重合体(b)と略称する)を得た。得られたブロック共重合体(b)をGPC測定した結果、主成分はMt(ピークトップ分子量)=81,000、Mn(数平均分子量)=78,700、Mw(重量平均分子量)=79,500、Mw/Mn=1.01であるポリα−メチルスチレン−ポリブタジエン−ポリα−メチルスチレントリブロック共重合体の水添物(カップリング体)であり、GPCにおけるUV(254nm)吸収の面積比から、カップリング体は94質量%含まれることが判明した。また、H-NMR測定により、ブロックy1およびブロックy2から構成されるポリブタジエンブロック(重合体ブロックY)の水素添加率は99モル%であった。
【0053】
[ブロック共重合体(c)の製造]
前記ブロック共重合体(a)の製造において、sec−ブチルリチウム(1.3M、シクロヘキサン溶液)の添加量を7.6mlに、またジクロロジメチルシラン(0.5M、トルエン溶液)の添加量を9.9mlに変更して、前記ブロック共重合体(a)の製造と同様にして反応を行い、ブロック共重合体(c)を得た(得られたブロック共重合体の数平均分子量は92,000である)。
【0054】
[ポリオレフィン系樹脂]
製品名:グランドポリプロJ106G
製造会社名:(株)グランドポリマー
種類:ホモタイプのポリプロピレン
【0055】
[パラフィン系オイル]
製品名:ダイアナプロセスオイルPW90
製造会社名:出光石油化学(株)
種類:パラフィン系オイル、重量平均分子量:540
【0056】
[弾性バンドを構成する樹脂組成物の物性値および弾性バンドの性能の測定方法]
I)硬さ
表1に示す熱可塑性エラストマー組成物を用いて、前述の通り射出成形機で作製した円盤シート状シートでJIS K6253準拠の方法によるタイプAデュロメータ硬度を測定した。なお、射出成形機は日精樹脂工業社製FE120を用いた。
【0057】
II)引張強さ
表1に示す熱可塑性エラストマー組成物を用いて、前述のとおり射出成形機で作製した円盤シート状シートでJIS K6251準拠の方法による引張強さを測定した。なお、前記同様に射出成形機は日精樹脂工業社製FE120を用いた。
【0058】
III)引張永久歪み
表1に示す熱可塑性エラストマー組成物を用いて、前述のとおり射出成形機で作製した円盤シート状シートでJIS K6273準拠の方法による23℃における引張永久歪みを測定した。なお、前記同様に射出成形機は日精樹脂工業社製FE120を用いた。
【0059】
IV)ウエルド部引張強さ
表1に示す熱可塑性エラストマー組成物を用いて、前述のとおり射出成形機で作製した帯状成形体の成形時に樹脂が合流する中央部分でJIS K6251準拠の方法による引張強さを測定した。なお、前記同様に射出成形機は日精樹脂工業社製FE120を用いた。
【0060】
V)圧縮永久歪み
表1に示す熱可塑性エラストマー組成物を用いて、前述のとおり射出成形機で作製した圧縮永久歪み測定用円柱状成形体でJIS K6262準拠の方法による50℃、22時間の引張永久歪みを測定した。なお、前記同様に射出成形機は日精樹脂工業社製FE120を用いた。
【0061】
VI)スイミングゴーグル装着試験
表1に示す熱可塑性エラストマー組成物を用いて、前述のとおり射出成形機で作製した帯状成形体で、次のスイミングゴーグルへの装着試験を実施した。
(1)弾性バンドを装着したスイミングゴーグルの締め付け感
顔面にゴーグルを装着して顔面や頭部への締め付け感を官能評価
○は、締め付け感がソフトかつゴーグルの密着性良好。
×は、締め付け感が強すぎる、またはゴーグルが密着しない。
(2)弾性バンドを装着したスイミングゴーグルの繰り返し装着感
顔面へのゴーグル着脱を20回繰り返して、装着感の変化を官能評価
○は、着脱を繰り返しても締め付け感およびゴーグルの密着性が一定。
×は、締め付け感またはゴーグルの密着性が一定でなく変化する。
(3)弾性バンドのスイミングゴーグル留め具に装着した部分の変形
弾性バンドをゴーグル留め具に装着した状態で50℃の恒温槽に7日間放置し弾性バンドを留め具から外した後の変形有無を観察
○は、弾性バンドの留め具装着部分に折れ皺などが見られず変形が小さい。
×は、弾性バンドの留め具装着部分が大きく変形している。
【0062】
実施例1および2
熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性は目標の硬さに調整できたため良好であり、引張強さ、ウエルド部引張強さは高い値を示した。常温での引張永久歪み及び高温時の圧縮永久歪みも低く抑えられており良好であった。また、スイミングゴーグルへの装着試験では締め付け感はソフトで良好であり、かつ繰り返し装着した後の装着感の変化や留め具装着部分の変形も殆どなく良好であった。
【0063】
比較例1
熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性、常温の引張永久歪みは良好であったものの、引張強さとウエルド部引張り強さが低く、高温での圧縮永久歪みが大きい結果であった。また、スイミングゴーグルへの装着試験でも、締め付け感や繰り返し装着感変化は良好であったものの、高温放置後の留め具部分の変形が目立った。
【0064】
比較例2および3
熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性、高温の圧縮永久歪みは良好であったものの、引張強さとウエルド部引張り強さが低く、常温の引張永久歪みが大きい結果であった。また、スイミングゴーグルへの装着試験でも、締め付け感は良好で高温放置後の留め具部分の変形は少なかったものの、繰り返し装着感では着脱を繰り返すごとに締め付けが緩くなり変化が目立った。
【0065】
比較例4
熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性、常温の引張永久歪み、高温の圧縮永久歪みは良好であったものの、引張強さとウエルド部引張り強さが低い結果であった。ただし、スイミングゴーグルへの装着試験では締め付け感はソフトで良好であり、かつ繰り返し装着した後の装着感の変化や留め具装着部分の変形も殆どなく良好であった。しかし、スイミングゴーグルとしては、本比較例品は、子供がゴーグルのバンド部を引っ張りあって遊んだりすると、バンド部の引張り強度が低いことからバンド部が破断して、事故を招く可能性があることから、商品価値の低いものであった。
【0066】
比較例5および6
熱可塑性エラストマー組成物の柔軟性、常温の引張永久歪みは良好で、引張強さとウエルド部引張り強さが高かったが、高温での圧縮永久歪みが大きい結果であった。また、スイミングゴーグルへの装着試験でも、締め付け感や繰り返し装着感変化は良好であったものの、高温放置後の留め具部分の変形が目立った。
【0067】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記ブロック共重合体(a)と下記ブロック共重合体(b)を含有し、(a):(b)の質量比が2:98〜98:2であり、かつ硬さ(JIS K6253に準拠、Aタイプ)が1〜90度である熱可塑性エラストマー組成物からなる弾性バンド。
(a)スチレンを主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる数平均分子量が130,000〜600,000のブロック共重合体、
(b)α−メチルスチレンを主体とする重合体ブロックと共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる数平均分子量が70,000〜600,000のブロック共重合体、
【請求項2】
熱可塑性エラストマー組成物を構成する(a)と(b)の質量比が50:50〜98:2であり、かつ同組成物の硬さ(JIS K6253に準拠、Aタイプ)が10〜60度である請求項1記載の弾性バンド。
【請求項3】
熱可塑性エラストマー組成物に、ポリオレフィン系樹脂が、ブロック共重合体(a)と(b)の合計質量に対して1〜100質量%の範囲で添加されている請求項1または2に記載の弾性バンド。
【請求項4】
熱可塑性エラストマー組成物に、パラフィン系オイルが、ブロック共重合体(a)と(b)の合計質量に対して1〜500質量%の範囲で添加されている請求項1〜3のいずれかに記載の弾性バンド。
【請求項5】
弾性バンドが、家電製品、健康器具、工業用品、スポーツ用品、または玩具に使用される伸縮部材である請求項1〜4のいずれかに記載の弾性バンド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の弾性バンドが用いられているゴーグル。
【請求項7】
ゴーグルがスイミング用ゴーグルである請求項6に記載のゴーグル。

【公開番号】特開2010−126612(P2010−126612A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301825(P2008−301825)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000104906)クラレプラスチックス株式会社 (52)
【Fターム(参考)】