説明

熱可塑性ポリウレタン・エラストマーの製造法

【課題】 改善された均一性と熔融特性を有する熱可塑性ポリウレタンエラストマーの連続製造法。
【解決手段】 本発明は、1種または数種の有機イソシアネート(A)、および(B1)((A)の有機イソシアネート基に関し)1〜85当量%の平均少なくとも1.8個のチェレヴィチノフ活性水素原子をもち平均分子量Mnが450〜10000の1種またはそれ以上の化合物;(B2)((A)の有機イソシアネート基に関し)15〜99当量%の平均少なくとも1.8個のチェレヴィチノフ活性水素原子をもち分子量が60〜400の1種またはそれ以上の連鎖伸長剤から成るチェレヴィチノフ活性水素原子を含む混合物(B)、さらに(TPUの全量に関し)0〜20重量%の他の助剤および添加剤(C)を、最高5秒間以内で反応器の中で均一に混合し、この際反応器に入れる前に成分(A)と(B)の温度差が20℃より小さくなるようにして、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの均一性と熔融特性を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性ポリウレタンエラストマーの製造法、それによって得られる製品およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は良好なエラストマー特性をもち容易に加工できるから極めて広く使用されている。その成分を適当に選ぶことにより極めて広範囲の機械的性質をつくり出すことができる。TPU、その性質および応用に関する総説は例えば非特許文献1,非特許文献2:非特許文献3に記載されている。製造法に関する総説は非特許文献4に記載されている。
【0003】
TPUは一般に線形重合体、例えばポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオール、有機ジイソシアネートおよび短鎖の一般に二官能性のアルコール(連鎖伸長剤)からつくられる。TPUはバッチ式または連続法で製造することができる。
【0004】
或る場合には連続押出し法が公知である。この方法では原料をスクリュー反応器に計量して加え、その中で縮重合させた後に均一の粒状の形に変える(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
【0005】
押出し法は比較的簡単であるが、反応器の中で原料は大規模に付加重合が起こる条件においてだけでしか混合されず、このことは不均一な従って望ましくない制御不可能な二次反応が起こり得ることを意味している。
【0006】
特許文献6および特許文献7には、原料をノズルの中に供給し、これを混合した後押出し機に入れることによる押出し法の改良が提案されている。しかし付加重合反応は押出し機の中だけで起こるから、この方法で得られる製品はやはり不均一性をもち、それは特にフィルムのような押出し製品で明らかになる。
【0007】
従来法においては、付加重合が起こらない温度で混合区域において原料を先ず混合した後、所望の反応温度の反応区域で互いに反応させる製造法も公知である。この混合および反応区域は静止型混合機(static mixer)として設計されている(特許文献8、特許文献9、特許文献10)。
【特許文献1】米国特許A3 642 964号
【特許文献2】ドイツ特許C23 02 564号
【特許文献3】ドイツ特許C25 49 371号
【特許文献4】ドイツ特許A32 30 009号
【特許文献5】ヨーロッパ特許A31 142号
【特許文献6】ヨーロッパ特許A554 718号
【特許文献7】ヨーロッパ特許A554 719号
【特許文献8】ドイツ特許A28 23 762号
【特許文献9】ヨーロッパ特許A747 409号
【特許文献10】ヨーロッパ特許A747 408号
【非特許文献1】Kunststoffe誌、68巻(1978年)819頁、Kautschuk,Gummi
【非特許文献2】Kunststoffe誌、35巻(1982年)569頁;G.Becker,D.Braun
【非特許文献3】Kunststoffe Handbuch、第7巻、“Polyurethane”、Munich,Vienna、Carl Hanser Verlag 1983年発行
【非特許文献4】Plastikverarbeiter誌、40巻(1989年)
【発明の開示】
【0008】
本発明においては、TPUを製造するのに使用される原料の温度の差を混合工程の前でできるだけ小さくすることにより、改善された均一性と改善された熔融特性をもったTPUを製造し得ることが見出された。
【0009】
従って本発明に従えば、
1種またはそれ以上の有機イソシアネート(A)、および
(B1)(A)の有機イソシアネート基に関し1〜85当量%の平均少なくとも1.8個のチェレヴィチノフ(Zerevitinoff)活性水素原子をもち平均分子量Mnが450〜10000の1種またはそれ以上の化合物、
(B2)(A)の有機イソシアネート基に関し15〜99当量%の平均少なくとも1.8個のチェレヴィチノフ活性水素原子をもち分子量が60〜400の1種またはそれ以上の連鎖伸長剤から成るチェレヴィチノフ活性水素原子を含む混合物(B)、および、
TPUの全量に関し0〜20重量%の他の助剤および添加剤(C)を最高5秒間以内で反応器の中で均一に予備混合し、この際反応器に入れる前に成分(A)と(B)の温度差が20℃より小さくなるようにする熱可塑性ポリウレタンエラストマーの連続製造法が提供される。
【0010】
使用できる有機イソシアネート(A)は脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族および複素環式のポリイソシアネートまたはこれらのポリイソシアネートの混合物を含んでいる(HOUBEN−WYLE“Methoden der organischen Chemie”、E20巻、Makromolekulare Stoffe”,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York、1987年発行、1587〜1593頁、またはJustus Liebigs Annalen der Chemie誌、562巻、75〜136頁参照のこと)。
【0011】
個別的な例には次のものを挙げることができる。脂肪族ジイソシアネート、例えばエチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、例えばイソフォロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1−メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネートおよび1−メチル2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、並びに対応する異性体混合物、4,4’−ジイソシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’−シクロヘキサンジイソシアネートおよび2,2’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、並びに対応する異性体混合物、また芳香族ジイソシアネート、例えば2,4−トルイレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネートと2,6−トルイレンジイソシアネートとの混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物、ウレタン変性液体4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートまたは2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナートジフェニリエタン−(1,2)および1,5−ナフチレンジイソシアネートヲ挙げることができるが、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート含量が96重量%より多いジフェニルメタンジイソシアネート混合物、特に4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび1,5−ナフチレンジイソシアネートが好適に使用され
る。上記ジイソシアネートは別々に使用されるかまたはお互いの混合物として使用することができる。また最高15モル%(全ジイソシアネート含量から計算し)のポリイソシアネートと一緒に使用するできるが、ポリイソシアネートの最高添加量はなお熱可塑的に加工できる生成物を生じるのに十分な量だけにしなければならない。ポリイソシアネートの例にはトリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネートおよびポリフェニル−ポリメチレン−ポリイソシアネートがある。
【0012】
本発明方法に使用されるチェレヴィチノフ活性化合物(B1)は、チェレヴィチノフ活性水素原子を少なくとも平均1.8〜3個有し、平均分子量Mnが450〜10000の化合物である。
【0013】
この場合、アミノ基、チオール基またはカルボキシル基の他に、特に2〜3個、好ましくは2個のヒドロキシル基を有し、平均分子量Mnが特に600〜4500の化合物、例えばヒドロキシル基を含むポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートおよびポリエステルアミドの化合物が含まれる。
【0014】
適当なポリエーテルチオールは、アルキレン基の炭素数が2〜4の1種またはそれ以上のアルキレンオキシドを、結合した活性水素原子を2個含む反応開始化合物と反応させることによって製造することができる。アルキレンオキシドとしては例えば次の化合物を挙げることができる:1,2−プロピレンオキシド、エピクロロヒドリンおよび1,2−ブチレンオキシド、および2,3−ブチレンオキシド。エチレンオキシド、プロピレンオキシド、および1,2−プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの混合物が好適に使用される。アルキレンオキシドは別々に使用するか、相前後して交互に使用するか、或いは混合物として使用することができる。反応開始化合物としては例えば次のものを挙げることができる:水、アミノアルコール、例えばN−メチルジエタノールアミンのようなN−アルキルジエタノールアミン、およびジオール、例えばエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオール。随時これらの反応開始化合物の混合物も使用することができる。また適当なポリエテロールはテトラヒドロフランのヒドロキシル基含有重合生成物である。二官能性ポリエーテルに関し0〜30重量%の割合で三官能性のポリエーテルを使用することもできるが、その最大量はなお熱可塑的に加工できる生成物が生じるような量である。実質的に線形のポリエーテルジオールは好ましくは平均分子量Mnが450〜6000である。これらの化合物は別々に或いは混合物の形で使用することができる。
【0015】
適当なポリエステルジオールは例えば炭素数2〜12、好ましくは4〜6のジカルボン酸と多価アルコールとからつくることができる。ジカルボン酸として適当なものは例えば次のものである:脂肪族ジカルボン酸、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバチン酸、または芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸。ジカルボン酸は別々に或いは混合物として、例えばコハク酸、グルタル酸およびアジピン酸の混合物の形で使用することができる。ポリエステルジオールをつくるためには、ジカルボン酸の代わりに対応するジカルボン酸誘導体、例えばアルコール基の炭素数が2〜4のカルボン酸のジエステル、カルボン酸無水物またはカルボン酸塩化物を使用することが有利な場合がある。多価アルコールの例は炭素数2〜10、好ましくは2〜6のグリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジメチル−1,3−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオールまたはジプロピレングリコールである。必要とされる性質に依存して、多価アルコールは別々に或いはお互いの混合物として使用することができる。またカルボン酸と上記ジオール、特に炭素数4〜6のもの、例えば1,4−ブタンジオールまたは1,6−ブタンジオールとのエステル、ω−ヒドキシカプロン酸のようなω−ヒドロキシカルボ
ン酸の縮合生成物、またはラクトン、例えば随時置換基をもったω−カプロラクトンの重合生成物も適している。ポリエステルジオールとしては次のものが好適に使用される:エタンジオールポリアジペート、1,4−ブタンジオールポリアジペート、エタンジオール−1,4−ブタンジオール−ポリアジペート、1,6−ヘキサンジオール−ネオペンチルグリコール−ポリアジペート、1,6−ヘキサンジオール−1,4−ブタンジオール−ポリアジペートおよびポリカプロラクトン。ポリエステルジオールは平均分子量Mnが450〜6000であることが好ましく、別々にまたはお互いの混合物として使用することができる。
【0016】
チェレヴィチノフ活性化合物(B2)はいわゆる連鎖伸長剤であり、平均1.8〜3.0のチェレヴィチノフ活性水素原子を有し、分子量は60〜400である。これらの化合物はアミノ基、チオール基またはカルボキシル基をもつ化合物の他に、2〜3個の、好ましくは2個のヒドロキシル基をもつ化合物を含んでいる。
【0017】
炭素数2〜14のジオール、例えばエタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールおよびジプロピレングリコールを連鎖伸長剤として使用することが好ましい。しかしテレフタル酸と炭素数2〜4のグリコールとのジエステル、例えばテレフタル酸ビス−エチレングリコールまたはテレフタル酸ビス−1,4−ブタンジオール、ヒドロキノンのヒドロキシアルキレンエーテル、例えば1,4−ジ−(β−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノン、エトキシル化されたビスフェノール、例えば1,4−ジ−(β−ヒドロキシエチル)−ビスフェノールA、(環式)脂肪族ジアミン、例えばイソフォロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、N−メチルプロピレン−1,3−ジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、および芳香族ジアミン、例えば2,4−トルイレンジアミン、2,6−トルイレンジアミン、3,5−ジエチル−2,4−トルイレンジアミン、または3,5−ジエチル−2,6−トルイレンジアミン、または1級モノ、ジ、トリまたはテトラアルキル置換4,4’−ジアミノジフェニルメタンも適している。エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ジ−(β−ヒドロキシエチル)−ヒドロキノン、または1,4−ジ−(β−ヒドロキシエチル)−ビスフェノールAは連鎖伸長剤として特に好適に使用される。上記の連鎖伸長剤の混合物も使用できる。この他に少量のチオールを用いることもできる。
【0018】
いわゆる連鎖終結剤としてイソシアネートに関し一官能性の化合物をTPUに関し最大2重量%の量で使用することができる。適当な化合物は例えばモノアミン、例えばブチルおよびジブチルアミン、オクチルアミン、ステアリルアミン、N−メチルステアリルアミン、ピロリジン、ピペリジンまたはシクロヘキシルアミン、モノアルコール、例えばブタノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、種々のアミルアルコール、シクロヘキサノールおよびエチレングリコールモノメチルエーテルである。
【0019】
イソシアネートト反応させる物質は、熱可塑的に加工し得るポリウレタンエラストマーを製造しようとする場合には、その平均の官能性が2を越えないように選ばなければならない。これよりも高い官能性の化合物を使用する場合には、一官能性の化合物によって全体としての官能性を低下させなければならない。
【0020】
(B)中の成分(B1)および(B2)の相対的な量は、(A)中のイソシアネートト化合物の和対(B)中のチェレヴィチノフ活性水素原子の和の比が0.9:1〜1.2:1、好ましくは0.95:1〜1.1:1になるように選ぶことがことが好ましい。
【0021】
本発明による熱可塑性ポリウレタンエラストマーは助剤および添加剤(C)としてTPUの全量に関し通常の助剤および添加剤を最高20重量%含んでいることができる。典型的な助剤および添加剤は触媒、顔料、着色剤、燃焼遅延剤、老化および天候の効果に対する安定剤、可塑剤、潤滑剤および型抜き剤、黴およびバクテリア駆除剤、および充填剤並びにこれらの混合物である。
【0022】
本発明による適当な触媒は、従来法から公知の通常の第3級アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルフォリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)−エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等、および特に有機金属化合物、例えばチタネート、鉄化合物または錫化合物、例えば錫ジアセテート、錫ジオトエート、錫ジラウレート、または脂肪族カルボン酸のジアルキル錫塩、例えばジブチル錫ジアセテートまたはジブチル錫ジラウレート等である。好適な触媒は有機金属化合物、特にチタネート、鉄または錫の化合物である。本発明のTPU中の触媒の全量はTPUの全量に関し約0〜5重量%、好ましくは約0〜2重量%である。
【0023】
他の添加剤の例は潤滑剤、例えば脂肪酸、その金属石鹸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルアミド、およびシリコーン化合物、ブロッキング防止剤、阻止剤、加水分解、光、熱および変色防止用の安定剤、燃焼遅延剤、着色剤、顔料、無機および/または有機充填剤および補強剤である。補強剤は特に繊維性の補強剤、例えば従来法によって製造できる無機繊維であり、またサイジング剤を被覆されていることができる。上記の助剤および添加剤に関するもっと詳細なデータは専門の文献、例えばJ.H.SaundersおよびK.C.Frisch著、“High Polymers”、XVI巻、Polyurethane,第1部および第2部、Verlag Interscience Publishers 1962年および1964年発行の単行本、R.GaechterおよびMueller著、Taschenbuch fuer Kunststoff−Additive(MunichのHanser Verlag 1990年発行)、またはドイツ特許A29 01 774号から得ることができる。
【0024】
成分(A)および(B)を反応器の中で最大5秒間の間均一に混合する。少量の逆混合(back−mixing)を用い十分な混合を行なうことが好ましい。本発明において均一な十分な混合とは、混合物中における成分(A)および(B)並びに反応生成の濃度分布の相対的標準偏差が5%よりも小さいことを意味する。本発明において少量の逆混合とは、反応器中の滞在時間が一連の10個以上の理想的な撹拌槽(カスケード型撹拌槽)の滞在時間に相当することを意味する。
【0025】
反応器の中に連続的に成分(A)および(B)を導入する前に、これを互いに別々に、好ましくは熱交換器の中で最高60〜220℃の温度、好ましくは90〜190℃の温度に加熱しなければならない。本発明に従えば、反応器に導入する前の二つの成分(A)および(B)の温度差が20℃よりも小さいことが重要である。成分(A)と(B)との間の温度差は好ましくは10℃より、特に5℃よりも小さい。
【0026】
この方法で得られる混合物を次に任意の反応器、好ましくは押出し機または反応管中でTPUに変える。
【0027】
本発明に従えば、付加重合は断熱した、好ましくは加熱可能な静止型の混合機(static mixer)中で行なうことが好ましい。この方法は、可動部材をもたず、実質的に逆混合なしで均一な十分な混合を可能な最短時間で行なうことができるという利点をもっている。本発明に従って使用できる静止型混合機はChem.−Ing.Techn.誌、52巻、4号、285〜291頁、およびDuesseldorfのVDI−Ve
rlag 1993年発行、“Mischen von Kunststoff und
Kautschukprodukuten”に記載されている。
【0028】
ドイツ特許C23 28 795号記載の静止型混合機が好適に使用される。この静止型混合機は長さ対直径の比が8:1〜16:1、特に10:1〜14:1であることが好ましい。この静止型混合機の滞在時間は5秒より、好ましくは2.5秒よりも短い。この静止型混合機はステンレス鋼、好ましくはV4Aからつくられていることが好ましい。
【0029】
他の好適な具体化例においては、本発明方法は二重シャフト押出し機中で行なわれ、この押出し機のシャフトは同じ方向に回転することが好ましい。この場合、押出し機の最初の部分はイソシアネートト成分(A)を加熱するのにも使用することができる。
【0030】
本発明方法で製造されたTPUは、例えばシートまたはブロックの形での重合体の焼きなまし、裁断機または混練機中における破砕または粒状化、熔融を伴う脱ガスおよび粒状化等の方法により随時さらに加工することができる。重合体は連続的な脱ガスおよび押出し物の製造システムの中に取り込むことが好ましい。この装置は例えば多重スクリュー機であることができ、それは可能ならば捏和要素を全く或いは僅かしか取り付けられていないものである。
【0031】
また本発明方法によれば、本発明方法を用いて得られる熱可塑性ポリウレタンエラストマーが提供される。本発明方法により製造された成形用組成物が高度の均一性と改善された融点特性をもっていることは驚くべきことと言えよう。
【0032】
本発明によって得られる熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、フィルムおよび容易に熔融する同時押出し製品、例えば積層品、カレンダー掛け製品、高温熔融接着剤、および粉末スラッシュ(powder−slush)同時押出し製品を製造するのに好適に使用される。
【実施例】
【0033】
実施例1
MDI 1630g/時間、および200ppmの錫ジオクトエートを含むポリブタンジオールアジペート(平均分子量Mn=800)とブタンジオールとの重量比6.9:1の混合物2685g/時間を互いに別々に静止型混合機の中に計量して加える。MDIおよびポリオール/ブタンジオール混合物はそれぞれ140±10℃の温度をもっていた。成分の予備混合は直径6mm、長さ6cmの全体的な加熱を行なう静止型混合機(Sulzer AG、SMX型)の中で剪断速度500s-1で行なった。反応は端に混合要素を取り付けた反応管の中で行なった。
【0034】
この方法を用い、静止型混合機の中で圧力上昇が観測されることなく90分よりも長い時間に亙りTPUを製造することができた。
【0035】
実施例2
この試験は実施例1と同じように行なったが、反応流の温度が160±5℃であることが異なっていた。静止型混合機の中で圧力上昇が観測されることなく90分よりも長い時間に亙りTPUを製造することができた。
【0036】
実施例3(対照例)
ZSK83型の反応押出し工場において次のような温度設定を行なった。ハウジング1〜4:120℃、ハウジング5〜9:温度勾配なし、ハウジング10〜13:120℃、ヘッド200℃。実施例1と同じ組成物を使用し、回転速度は300rpm、処理量60
0kg/時間であった。MDIをハウジング1に導入した。
【0037】
ハウジング5の入口におけるMDIの温度は約90℃であった。温度140℃のポリオール/ブタンジオールをハウジング5の中に計量して加えた。
【0038】
実施例1および2、並びに対照例3の結果を表1に掲げる。再結晶温度はDSC法によりPerkin ElmerのDSC7型熱量計を用いて決定した。対照例で得られた生成物はDSCの測定中高い温度においてピークの極大をもっていた。
【0039】
本発明の実施例に従ってつくられたTPUの熔融流動係数MFIは温度が190℃から200℃に増加した際わずかに2倍しか増加しなかったが、対照例ではこの値は5倍に増加した。本発明に従ってつくられたTPUの熔融流動係数MFIの低温依存性(200℃のMFI対190℃のMFIの比)および高いMFIの値は熔融特性が改善されてたことを示している。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例4(対照例)
この試験は実施例1と同様に行なったが、入口におけるMDIの温度は60℃であり、ポリオール/ブタンジオール混合物の温度は140℃であった。約10〜15分後、静止型混合機の圧力は既に50バールよりも高い値に上昇し、従って実験を中止しなければならなかった。
【0042】
原料成分の温度差を工業的に通常使用される80℃にした場合、混合が悪いために著しい不均一性が観測された。これによって交叉結合反応または微結晶の未成熟な沈積を原因とする静止型混合機中での融着が生じる。
【0043】
実施例5
HDI 1194g/時間、およびポリテトラヒドロフラン(平均分子量Mn=1000)とブタンジオールとの重量比11.5:1の混合物3800g/時間を別々に静止型混合機の中に計量して加える。HDIおよびポリオール/ブタンジオール混合物の温度はそれぞれ90±10℃であった。直径6mm、長さ6cm、剪断速度500s-1の全体的な加熱を行なう静止型混合機(Sulzer AG、SMX型)を使用して混合を行なった。反応は端の所の押出し機中で行なった。
【0044】
実施例6(対照例)
この試験は実施例5と同様に行なったが、HDIは温度23℃で反応器に導入し、ポリ
オール混合物は温度80℃で導入した。
【0045】
実施例5と対照例6の結果を表2に掲げる。この表は本発明方法で製造されたTPUが改善された熔融特性をもっていることを示している。本発明によって製造された生成物に対する一つの測定の中で熔融流動係数MFIの個々の値のばらつきが少ないことは高度の均一性を示すものと考えることができる。
【0046】
【表2】

【0047】
実施例7〜10
TPU組成物
ポリブチレンアジペート、Mn=840g/モル 1.0モル
1,4−ブタンジオール 1.3モル
MDI 2.3モル
錫ジオクトエート(ポリブチレンアジペートに関し) 200ppm
ロキサミド(Loxamide)(TPUの全量に関し) 0.2重量%
これらの成分をZSK83型の押出し機の中に計量して加え、この押出し機を300rpmの速度、処理量600kg/時間で操作する。押出し機のハウジングの温度による温度設定を表3に掲げる。実施例7〜9においてはMDIを第1のハウジングの中に計量して加え、ポリブチレンアジペートおよび1,4−ブタンジオールからなるポリオール混合物を押出し機の第5のハウジングの中に計量して加える。実施例7におけるMDIの温度は約60℃、実施例8においては約120℃、実施例9では約130℃である。実施例10においては、MDIを130℃に、ポリオール混合物を140℃に加熱し、次いで両方の反応流を第1のハウジングに供給した。毎回触媒をポリオール混合物に加え、ロキサミドをイソシアネートトと混合した。
【0048】
【表3】

【0049】
押出し吹き込み成形工場を使用して得られた生成物からフィルムをつくった。単一シャフト押出し機30/25D型Plasticorder PL 2000−6(Brabender Co.)の中で粒状物を熔融し(添加速度3kg/時間、温度185〜205℃)、フィルム吹き込みヘッドを通して管状のフィルムをつくった。この製品の100%モジュラスをDIN 53504/NSIに従って決定した。結果を表4に掲げる。
【0050】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種またはそれ以上のポリイソシアネート(A)、および
(B1)(A)のイソシアネート基に関し1〜85当量%の平均少なくとも1.8個のチェレヴィチノフ(Zerewitinoff)活性水素原子をもち
【数1】

(B2)(A)のイソシアネート基に関し15〜99当量%の平均少なくとも1.8個のチェレヴィチノフ活性水素原子をもち分子量が60〜400の1種またはそれ以上の連鎖伸長剤から成るチェレヴィチノフ活性水素原子を含む混合物(B)、および、
TPUの全量に関し0〜20重量%の他の助剤および添加剤(C)を、最高5秒間以内で反応器の中で均一に予備混合し、
この際
反応器に入れる前に成分(A)と(B)の温度差が20℃より小さくなるようにし、
成分(A)と(B)を、これらを連続して反応器に入れる前に、互いに別個に60〜220℃まで加温し、
成分(A)と(B)の混合を長さ対直径の比が8:1〜16:1であるか、または、二重シャフト押出し機である静止型混合機中でおこなう
ことを特徴とする熱可塑性ポリウレタンエラストマーの連続製造法。

【公開番号】特開2008−260960(P2008−260960A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202137(P2008−202137)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【分割の表示】特願2000−539077(P2000−539077)の分割
【原出願日】平成10年12月1日(1998.12.1)
【出願人】(591063187)バイエル アクチェンゲゼルシャフト (67)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen,Germany
【Fターム(参考)】