説明

熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体の製造方法

【課題】本発明の課題は、微小粒子や粗大粒子がなく、主にスラッシュ成形用に適した熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】以下の工程を含む中心粒子径が10〜500μmであり、粒子径分布Cvが20〜55である熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D)の製造方法。
工程1:熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)を含有する中心粒子径が1〜100μmである熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G)を製造した後、熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G)と水又は分散剤を含有する水溶液を含むスラリー(J)を製造する工程。
工程2:(J)に、(A)との溶解性パラメーター(SP値)の差が3以下である有機溶媒(B)を添加し、10〜[(B)の沸点]℃の温度において周速0.1〜10m/sで攪拌することにより、(G)を(D)に造粒する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉末を造粒して所望の粒子径の熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スラッシュ成形法は、複雑な形状(アンダーカット、深絞り等)の製品が容易に成形できること、肉厚が均一にできること、材料の歩留まり率が良いこと等の利点から、近年、自動車の内装材等を中心にした用途に広く利用されている。
【0003】
スラッシュ成形法には主に軟質のポリ塩化ビニル粉末が使用されていたが、近年ポリウレタン樹脂も使用されている。ポリウレタン樹脂は有機溶媒中で合成するため高コストで、環境的にも問題があったが、最近、水性媒体中でウレタン樹脂粉末を作る方法が提案されている。(特許文献1〜4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−97712号公報
【特許文献2】特開平8−120041号公報
【特許文献3】特開平12−313733号公報
【特許文献4】WO98−51748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1の方法は、ウレタン樹脂粉体形成成分を水中に分散するときに、分散媒の水中に乳化剤を含有させかつ高剪断力の分散機で分散するため、生成した分散体の粒子径が数μmの微小粒子から数mm程度の粗大粒子まで生成する。この分散体から得られる樹脂粉体をそのままスラッシュ成形用途に使用すると、粉体流動性が悪く成形物表面にピンホール等が発生するため、スラッシュ成形用途に適した粒度分布に分級する必要があり、非常にロスが大きく収率が低く、また手間のかかる方法であった。
また、特許文献2、3および4の方法は、前記特許文献1と比べて、粒度分布は狭く、粉体流動性は改善されているが、少量ではあるが、数μmの微小粒子と数百μmの粗大粒子が発生し、スラッシュ成形用途に適した粒度分布に分級する必要がある。
本発明の課題は、前記の問題点が改善された、微小粒子や粗大粒子がなく、主にスラッシュ成形用に適した熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、以下の工程を含む中心粒子径が10〜500μmであり、粒子径分布Cvが20〜55である熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D)の製造方法である。
工程1
熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)を含有する中心粒子径が1〜100μmである熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G)を製造した後、熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G)と水又は分散剤を含有する水溶液を含むスラリー(J)を製造する工程。
工程2
スラリー(J)に、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)との溶解性パラメーター(SP値)の差が3以下である有機溶媒(B)を添加し、10〜[有機溶媒(B)の沸点]℃の温度において周速0.1〜10m/sで攪拌することにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G)を熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D)に造粒する工程。
【発明の効果】
【0007】
本発明により製造された熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体は、中心粒子径が10〜500μmであり、特にスラッシュ成形用途に適し、かつ粒子径分布Cvが20〜55であり、シャープな粒度分布を有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
工程1について
熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)は、高分子ジオール、ジイソシアネート、必要に応じて低分子ジオール、低分子ジアミン等を反応してなる樹脂である。(A)の数平均分子量は、通常5,000〜50,000、好ましくは10,000〜30,000である。
熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の分子量の測定条件を以下に示す。
機種 : HLC−8220GPC[東ソー(株)製]
溶離液 : DMF
カラム : Guardcolumn α、TSKgel α−M
カラム温度 : 40℃
流速 : 1ml/min
検量線試料 : ポリスチレン
【0009】
高分子ジオールとしては、グリコールとジカルボン酸の組み合わせからなるポリエステルジオール、ラクトンモノマーより合成されるポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオールが挙げられる。
高分子ジオールは耐熱性、耐光性の観点からエーテル結合を含まないものが好ましい。特にエチレングリコールと炭素数6〜15の脂肪族ジカルボン酸からなるポリエステルジオール、炭素数が4〜10の脂肪族ジオールと炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸もしくは炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸からなるポリエステルジオールが好ましい。これらの中でも、ポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンイソフタレートが好ましい。
【0010】
ジイソシアネートとしては、(i)炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)2〜18の脂肪族ジイソシアネート[エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート等];(ii)炭素数4〜15の脂環族ジイソシアート[イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロへキセン等];(iii)炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート[m−および/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等];芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、1,3−及び/又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−及び/又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、粗製MDI、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−及びp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート等;(v)これらのジイソシアネートの変性物(カーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ウレア基等を有するジイソシアネート変性物);およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち好ましいものは脂肪族ジイソシアネートまたは脂環族ジイソシアネートであり、特に好ましいものはHDI、IPDI、水添MDIである。
【0011】
低分子ジオールとしては、例えば[エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、炭素数4〜24の1,2−アルカンジオール(ドデカン−1,2−ジオール等)など];環状基を有するジオール類[1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、m−またはp−キシリレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物など]等およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
【0012】
ジアミンとしては、炭素数6〜18の脂環族ジアミン[4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等];炭素数2〜12の脂肪族ジアミン[エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等];炭素数8〜15の芳香脂肪族ジアミン[キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジアミン等]およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち好ましいものは脂環族ジアミンおよび脂肪族ジアミンであり、特に好ましいものはイソホロンジアミンおよびヘキサメチレンジアミンである。
【0013】
熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G)の中心粒子径は、1〜100μm、好ましくは5〜70μm、さらに好ましくは10〜50μmである。
中心粒子径が100μmを超える範囲の原料微粉体を使用すると製造された熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体の粒度分布が広くなり粉体流動性に劣り、1μm未満の範囲の原料を使用すると、製造時の粉体流動性、粉末飛散等の観点より適さない。
【0014】
熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G)は、例えば以下の製造方法で得られるものが挙げられる。
高分子ジオールとジイソシアネートを反応させてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを製造し、次いで水および分散安定剤存在下で、該イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとブロックされた鎖伸長剤(例えばケチミン化合物)とを反応させる方法で(G)を製造する方法。具体的には、例えば、特開平8−120041号公報等に記載されたものを使用することができる。(G)の中心粒子径は分散安定剤の量、分散機の回転数等によって1〜100μmにコントロールすることができる。
【0015】
工程1において、有機溶媒(L)を使用してポリウレタン樹脂微粉体(G)を製造した後、有機溶媒(L)を除去する。有機溶媒(L)を除去する方法としては、公知の方法(脱溶媒等)により除去することができる。
除去方法としては、例えば、攪拌下で減圧もしくは常圧で加熱し除去する方法等が挙げられる。
【0016】
熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の熱軟化温度は、特に限定されないが、好ましくは100℃〜200℃、さらに好ましくは120〜180℃である。熱軟化温度が上記範囲内とすることで、耐熱性および、熱溶融性に優れた熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体を得ることができる。
【0017】
上記原料の熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G)を水又は分散剤を含有する水溶液(E)中に分散し、スラリー化する。
分散剤としては、水溶性高分子(メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸塩類、ポリビニルピロリドン、ジイソブチレンとマレイン酸との共重合体のNa塩など)、無機粉末(炭酸カルシウム粉末、リン酸カルシウム粉末、ハイドロキシアパタイト粉末、シリカ粉末など)、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど)などが挙げられる。分散剤の使用量は、(E)の重量基準で、好ましくは10重量%以下、より好ましくは0.001〜8重量%、さらに好ましくは0.01〜5重量%である。上記範囲であると樹脂物性に影響を及ぼさない。
【0018】
原料の熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G)は、水又は分散剤を含有する水溶液(E)に対して好ましくは15〜50重量%、さらに好ましくは20〜40重量%添加する。上記範囲であると粒子同士の衝突頻度が高く、均一な混合ができ、目的粒径を得ることができる。
【0019】
スラリー化の方法としては、熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G)が凝集しないように、(G)を水又は分散剤を含有する水溶液(E)に攪拌下で投入することが好ましい。
分散する温度は、5〜40℃が好ましく、攪拌条件は周速0.1〜10m/sで行うことが好ましい。
【0020】
工程2について上記スラリー化工程の後、該スラリー(J)に有機溶媒(B)を添加する。
有機溶媒(B)は、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)との溶解性パラメーター(SP値)の差が3以下、好ましくは1以下である
(A)と(B)のSP値の差が3を超えると造粒は起こらない。
SP値は、Fedors法によって計算される。
なお、SP値は、次式で表せる。
SP値(δ)=(ΔH/V)1/2
但し、式中、ΔHはモル蒸発熱(cal)を、Vはモル体積(cm3)を表す。
また、ΔH及びVは、「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE FEBRUARY,1974,Vol.14,No.2,ROBERT F.FEDORS.(151〜153頁)」及び「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE JUNE,1974,Vol.14,No.6,ROBERT F.FEDORS.(472頁)」に記載の原子団のモル蒸発熱の合計(ΔH)とモル体積の合計(V)を用いることができる。
この数値が近いもの同士はお互いに混ざりやすく(相溶性が高い)、この数値が離れているものは混ざりにくいことを表す指標である。
【0021】
熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)のSP値は好ましくは8〜12である。
(A)とのSP値の差が3以下である有機溶媒(B)としては例えば、ケトン類、アルコール類、エーテル類、エステル類およびこれらの2種以上の併用などが挙げられる。好ましくは、炭素数3〜9のケトン、炭素数が4〜8のエーテル、及び炭素数が3〜6のエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種およびこれらの2種以上の併用である。
【0022】
炭素数3〜9のケトンは、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(以下MEK)、メチルイソブチルケトン(以下MIBK)、ジエチルケトン等が挙げられる。炭素数が4〜8のエーテルは、例えば、テトラヒドロフラン(以下THF)等が挙げられる。炭素数3〜6のエステルは、例えば酢酸メチル、酢酸エチル等が挙げられる。好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸メチルである。
【0023】
有機溶媒(B)の添加量は、上記スラリー(J)に対して好ましくは2〜50重量%、さらに好ましくは5〜30重量%である。2〜50重量%であると、粒子同士の接着強度が強く、かつ粒度分布も狭くなる。
【0024】
有機溶媒(B)の添加方法は、特に限定されず、スラリー(J)に対して一度に仕込んでも、分割して仕込んでもよい。また、造粒途中で滴下してもよい。
スラリー(J)に対して有機溶媒(B)を添加し攪拌することにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D)を造粒することができる。
【0025】
造粒時の周速は0.1〜10m/s、好ましくは0.5〜5m/sで攪拌する。周速が0.1m/s未満であれば粒子間の凝集力がせん断力よりも非常に大きく粒子が粗大化する。周速が10m/sを超えれば、せん断力が非常に強く、粒子同士が凝集しないため、造粒できない。
攪拌羽根は、特に限定されないが、攪拌効率のよい羽根が好ましい。例えば、パドル翼、リボン翼、らせん翼、錨型翼等が挙げられる。
【0026】
造粒温度は10〜[有機溶媒(B)の沸点]℃、好ましくは50〜[有機溶媒(B)の沸点−10]℃の温度において、造粒する。
造粒温度が10℃未満であると粒子は合一せず造粒できない。温度が有機溶媒(B)の沸点を超えると有機溶媒(B)が揮発して、目的の粒子径および粒度分布を得ることができない。
【0027】
造粒の終点は、粒子径を測定しながら得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D)の中心粒子径が10〜500μmのうち所望の粒径になったところで決定する。
【0028】
このようにして得られる本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D)の中心粒子径が10〜500μmで、且つ粒子径分布Cvが20〜55であり、広い粒子径範囲において粒子径分布がシャープであるという特徴を有する。
本製造法では粒子径分布Cvが20未満の熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D)を製造することはできず、Cvが55を超えると数μmの微小粒子と数百μmの粗大粒子が発生し、分級する必要がある。
【0029】
本発明の方法により得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D)の樹脂粒子の中心粒子径は10〜500μmであるが、本発明の効果を充分に発揮するためには、好ましい中心粒子径dは、10μm≦d≦300μm、さらに好ましくは100μm≦d≦300μmである。
【0030】
なお、ここでいう中心粒子径d、および粒子径分布Cvはレーザー回折式粒子径分布測定装置等により測定することができる。得られる相対累積体積平均粒子径分布曲線において、dは累積量が50%のときの粒子径:d50に相当し、Cvは、標準偏差SD、およびd50により、下式のように定義される。
Cv=100×SD/d50
【0031】
工程(2)により熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D)のスラリーが得られる。該スラリーから、公知の方法(濾別、乾燥等)により分散媒および有機溶媒(B)を除去することにより(D)を単離することができる。
濾別方法としては、例えばプレスフィルター、スパクラーフィルター、遠心分離器等の設備を使用し濾別する方法が挙げられる。脱水後の含水率は通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。含水率が50重量%より多くなると乾燥時間が長くなり、また得られた粉末が凝集しやすくなる。乾燥方法としては、例えば循風乾燥機、スプレードライヤー、流動層式乾燥機等の公知の設備を用いて行うことができる。乾燥時の粉体の温度は通常80℃以下、好ましくは60℃以下である。乾燥時の温度が80℃より高くなると粉体が融着する問題が発生する。
【0032】
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D)は、粒子径分布が極めてシャープであるため、高い粉体流動性、均一な塗膜形成性等の優れた性能示す。
【0033】
本発明の製造方法で得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D)には、必要に応じて公知の添加剤(顔料、染料、離型剤、滑剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、カップリング剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、難燃剤など)を含有させてもよい。これらの添加剤の使用量は、(D)に対する質量基準で通常0〜40質量%の範囲で、その使用目的および効果を考慮して適宜選択される。添加剤は、造粒前の段階で予め分散媒中に含有させておいてもよいし、分散後に添加してもよい。また、得られる(D)に添加して粉体混合してもよい。
【0034】
本発明の方法で得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体は、中心粒子径が10〜500μmであり、粒子径分布Cvが20〜55であり、良好な粉体流動性を有し、芯地用接着剤、スエード調塗料、ホットメルト接着剤、粉体塗料、スラシュ成形用材料、各種充填剤、スペーサー、トナー等に好適に用いることができるが、特にスラシュ成形用材料に好適である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の記載において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0036】
製造例1
ジアミンのMEKケチミン化物の製造(K−1)
ヘキサメチレンジアミンと過剰のMEK(ジアミンに対して4倍モル量)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧にて未反応のMEKを除去してMEKケチミン化物を得た。
【0037】
製造例2
数平均分子量(以下Mnと記す)が900のポリエチレンフタレート(テレフタル酸/イソフタル酸=50/50)(A1−1)の製造
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽中に、テレフタル酸393部、イソフタル酸393部、エチレングリコール606部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた後、5〜20mmHgの減圧下で反応させ、所定の軟化点でポリエチレンフタレートジオール(A1−1)を取り出した。回収されたエチレングリコールは245部であった。得られたポリエチレンフタレートジオールの水酸基価を測定し、Mnを計算した結果900であった。
Mnが2500のポリエチレンフタレートジオール(A1−2)の製造
同様の製造方法で減圧時間の調整により、Mnが2500のポリエチレンフタレートジオール(A1−2)を得た。回収エチレングリコールは270部であった。
【0038】
製造例3
プレポリマー溶液(U−1)の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、ポリエチレンフタレートジオール(A1−2)(304部)、Mnが1000のポリブチレンアジペート(1214部)、1−オクタノール(27.6部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して溶融させ、60℃まで冷却した。続いて、ヘキサメチレンジイソシアネート(313.2部)を投入し、85℃で6時間反応させた。次いで、60℃に冷却した後、テトラヒドロフラン(317部)、及び安定剤(2.7部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製 イルガノックス1010]、カーボンブラック(1部)を加え、均一に混合してプレポリマー溶液(U−1)を得た。得られたプレポリマー溶液のNCO含量は、0.8%であった。
【0039】
製造例4
プレポリマー溶液(U−2)の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、数平均分子量(以下Mnと記す。)が1000のポリブチレンアジペート(497.9部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(124.5部)、ペンタエリスリトール テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート][チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; イルガノックス1010]( 1.12部)、体積平均粒径9.2μmのカオリン(90.7部)を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら110℃に加熱して溶融させ、60℃まで冷却した。続いて、1−オクタノール(9.7部)、ヘキサメチレンジイソシアネート(153.4部)テトラヒドロフラン(125部)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(直鎖及び側鎖ドデシル)-4-メチルフェノール[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製; チヌビン571]( 2.22部)、TMXDIのポリカルボジイミド(C−1)[Mn15,000、末端基:メトキシ基、性状:70%メチルエチルケトン(以下、MEK)溶液、日清紡績(株)社製;Carbodilite V−09B](2.15部)を投入し、85℃で6時間反応させプレポリマー溶液(U−2)を得た。(U−2)のNCO含量は、2.05%であった。
【0040】
製造例5
分散媒(Y−1)の製造
分散剤としてジイソブチレンとマレイン酸との共重合体のNa塩を含む分散剤[三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8]20部を水980部に溶解させ25℃に温調して、分散媒(Y−1)を得た。
【0041】
実施例1
熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G−1)の製造
反応容器に、製造例3で得たプレポリマー溶液(U−1)100部と製造例1で得たMEKケチミン化合物(K−1)5.6部を投入し、そこに製造例5で得た分散媒(Y−1)340重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて9000rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させ、熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G−1)を含むスラリー(G−1−1)を作成した。
(G−1)の平均粒子径は22μm、Cv=70、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A−1)のSP値11.2、熱軟化温度141℃であった。
【0042】
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−1)の製造
上記にて作成した(G−1−1)180部に溶媒(B−1)であるMEK(沸点78℃、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A−1)とのSP値の差2.2)を20部添加し、周速0.5m/sの攪拌下で、70℃まで昇温して1時間継続した後、減圧下で溶剤を留去し、濾別、洗浄、乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−1)を得た。得られた(D−1)は平均粒子径が155μm、Cv=25であった。
【0043】
実施例2
熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G−2)の製造
反応容器に、製造例3で得たプレポリマー溶液(U−1)100部と製造例1で得たMEKケチミン化物(K−1)5.6部を投入し、そこに製造例5で得た分散媒(Y−1)340重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて7000rpmの回転数で2分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、減圧下、60℃に加熱し、溶媒を除去した。溶媒除去後、濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G−2)を製造した。
(G−2)の平均粒子径は55μm、Cv=68、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A−2)のSP値11.2、熱軟化温度142℃であった。
【0044】
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−2)の製造
上記にて作成した(G−2)65部を、製造例5で得た分散媒(Y−1)140部に、攪拌下で分散し、スラリーを作成した。このスラリーに溶媒(B−1)であるTHF(沸点66℃、ポリウレタン樹脂(A−2)とのSP値の差2.1)を15部添加し、周速1.0m/sの攪拌下で、65℃まで昇温して3時間継続した後、減圧下で溶剤を留去し、濾別、洗浄、乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−2)を得た。得られた(D−2)は平均粒子径が137μm、Cv=27であった。
【0045】
実施例3
熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G−3)の製造
反応容器に、製造例3で得たプレポリマー溶液(U−1)100部と製造例1で得たMEKケチミン化合物(K−1)5.6部を投入し、そこに製造例5で得た分散媒(Y−1)500重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて12000rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させ、熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体を含有するスラリー(G−3−1)を製造した。
(G−3)の平均粒子径は7μm、Cv=91、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A−3)のSP値11.2、熱軟化温度137℃であった。
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−3)の製造
上記にて作成した(G−3−1)180部に、さらに溶媒(B−1)であるMEK(沸点78℃、ポリウレタン樹脂(A−2)とのSP値の差2.2)を10部添加し、周速6.5m/sの攪拌下で、75℃まで昇温して1時間継続した後、減圧下で溶剤を留去し、濾別、洗浄、乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−3)を得た。得られた(D−3)は平均粒子径が103μm、Cv=34であった。
【0046】
実施例4
熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G−4)の製造
反応容器に、製造例3で得たプレポリマー溶液(U−1)100部と製造例1で得たMEKケチミン化合物(K−1)5.6部を投入し、そこに製造例5で得た分散媒(Y−1)340重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて2000rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、減圧下、60℃に加熱し、溶媒を除去した。溶媒除去後、濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G−4)を製造した。
(G−4)の平均粒子径は98μm、Cv=82、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A−4)のSP値11.2、熱軟化温度145℃であった。
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−4)の製造
上記にて作成した(G−4)75部を、製造例5で得た分散媒(Y−1)90部に、攪拌下で分散し、スラリーを作成した。このスラリーに溶媒(B−1)である酢酸メチル(沸点57℃、ポリウレタン樹脂(A−2)とのSP値の差1.6)を45部添加し、周速9.7m/sの攪拌下で、50℃まで昇温して3時間継続した後、減圧下で溶剤を留去し、濾別、洗浄、乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−4)を得た。得られた(D−4)は平均粒子径が430μm、Cv=53であった。
【0047】
実施例5
熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G−5)の製造
反応容器に、製造例4で得たプレポリマー溶液(U−2)120部と製造例1で得たMEKケチミン化合物(K−1)6.2部を投入し、そこに製造例5で得た分散媒(Y−1)400重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて10000rpmの回転数で3分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら60℃で10時間反応させた。反応終了後、減圧下、70℃に加熱し、溶媒を除去した。溶媒除去後、濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G−5)を製造した。
(G−5)の平均粒子径は3μm、Cv=120、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A−5)SP値10.7、熱軟化温度125℃であった。
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−5)の製造
上記にて作成した(G−5)50部を、製造例5で得た分散媒(Y−1)150部に、攪拌下で分散し、スラリーを作成した。このスラリーに溶媒(B−1)であるアセトン(沸点56℃、ポリウレタン樹脂(A−2)とのSP値の差1.6)を11部添加し、周速3.7m/sの攪拌下で、40℃まで昇温して3時間継続した後、減圧下で溶剤を留去し、濾別、洗浄、乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−5)を得た。得られた(D−5)は平均粒子径が18μm、Cv=49であった。
【0048】
実施例6
熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G−6)の製造
反応容器に、製造例4で得たプレポリマー溶液(U−2)120部と製造例1で得たMEKケチミン化合物(K−1)6.2部を投入し、そこに製造例5で得た分散媒(Y−1)210重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて9000rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら55℃で8時間反応させ、熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G−6)を含むスラリー(G−6−1)を作成した。
(G−6)の平均粒子径は37μm、Cv=69、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A−6)のSP値10.7、熱軟化温度130℃であった。
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−6)の製造
上記にて作成したスラリー(G−6−1)200部を、製造例5で得た分散媒(Y−1)150部に、攪拌下で分散し、スラリーを作成した。このスラリーに溶媒(B−1)であるMEK(沸点78℃、ポリウレタン樹脂(A−2)とのSP値の差1.7)を33部添加し、周速2.0m/sの攪拌下で、66℃まで昇温して2時間継続した後、減圧下で溶剤を留去し、濾別、洗浄、乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−6)を得た。得られた(D−6)は平均粒子径が152μm、Cv=29であった。
【0049】
実施例7
熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G−7)の製造
反応容器に、製造例4で得たプレポリマー溶液(U−2)120部と製造例1で得たMEKケチミン化合物(K−1)6.2部を投入し、そこに製造例5で得た分散媒(Y−1)200重量部を加え、ヤマト科学(株)製ウルトラディスパーサーを用いて2500rpmの回転数で1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、減圧下、55℃に加熱し、溶媒を除去した。溶媒除去後、濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G−7)を製造した。
(G−7)の平均粒子径は76μm、Cv=110、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A−7)のSP値10.7、熱軟化温度145℃であった。
熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−7)の製造
上記にて作成した(G−7)50部を、製造例5で得た分散媒(Y−1)150部に、攪拌下で分散し、スラリーを作成した。このスラリーに溶媒(B−1)であるテトラヒドロフラン(沸点66℃、ポリウレタン樹脂(A−2)とのSP値の差2.4)を23部添加し、周速1.5m/sの攪拌下で、40℃まで昇温して3時間継続した後、減圧下で溶剤を留去し、濾別、洗浄、乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−7)を得た。得られた(D−7)は平均粒子径が190μm、Cv=38であった。
【0050】
比較例1
撹拌棒、冷却管、窒素導入管及び温度計をセットした4つ口フラスコに、アセトン60部、イソホロンジアミン(以下IPDA)60部を投入して、窒素下で40℃で12時間反応した。このときの反応率は、65%であった。更に、ジ−n−ブチルアミン14.0部を加え、混合して鎖伸長剤溶液(K−2)を得た。
分散剤としてポリビニルアルコール[(株)クラレ製PVA−235]15部を水985部に溶解させ25℃に温調して、分散媒(Y−2)を得た。
撹拌棒および温度計をセットした4つ口フラスコに、数平均分子量2,000のポリカプロラクトンジオール[「プラクセルL220AL」、(株)ダイセル製]2,000部を投入し、3mmHgの減圧下で110℃に加熱して1時間脱水を行った。続いてイソホロンジイソシアネート(以下IPDI)457部を投入し、110℃で10時間反応を行い、イソシアネート含量が3.6%のイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを得た。これを樹脂前駆体(A−1−1)とする。
樹脂前駆体(A−1−1)50部および酢酸エチル12.5部を混合し55℃に温調して、分散相(X−1)を調製した。
ビーカー内に(Y−2)180部を投入した。次に(X−1)62.5部に(B1−1)を混合後すぐにビーカーに入れた後、ウルトラディスパーザー[ヤマト科学(株)製]を使用して回転数9000rpmで1分間混合し、分散物を得た。得られた分散物を実施例1と同様に処理して熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−8)を得た。得られた(D−8)は平均粒子径が181μm、Cv=210であった。
【0051】
比較例2
比較例1と同様に作成した樹脂前駆体(A−1−1)50部、酢酸エチル12.5部およびタルク5部を混合し55℃に温調して、分散相(X−2)を調製した。
撹拌装置を備えたタンク内で(X−2)67.5部と比較例1と同様に作成した(B1−1)6.6部混合した。ギアポンプを用いて、該混合液と比較例1と同様に作成した分散媒(Y−2)を液比203.5:300の割合で定量的に直径1cm、エレメント数15のスタティックミキサー(ノリタケカンパニー製)に供給した。このときの送液速度はスタティックミキサー内の混合時間が0.3秒になるように調整した。スタティックミキサーで混合された該混合分散液を、実施例1と同様に処理して熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−9)を得た。得られた(D−9)は平均粒子径が145μm、Cv=246であった。
【0052】
比較例3
実施例2にて作成した(G−2)57部を、製造例5で得た分散媒(Y−1)150部に、攪拌下で分散し、スラリーを作成した。このスラリーに溶媒(B−1)であるMIBK(沸点118℃、ポリウレタン樹脂(A−3)とのSP値の差2.5)を23部添加し、周速0.05m/sの攪拌下で、90℃まで昇温して3時間継続した後、減圧下で溶剤を留去し、濾別、洗浄、乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−10)を得た。得られた(D−10)は平均粒子径が715μm、Cv=145であった。
【0053】
比較例4
実施例6にて作成した(G−6−1)を減圧下、80℃に加熱し、溶媒を除去した。溶媒除去後、濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G−6−2)を製造した。得られた(G−6−2)50部を、製造例5で得た分散媒(Y−1)150部に、攪拌下で分散し、スラリーを作成した。このスラリーに溶媒(B−1)であるTHF(沸点66℃、ポリウレタン樹脂(A−6)とのSP値の差2.4)を40部添加し、周速12.0m/sの攪拌下で、63℃まで昇温して3時間継続した後、減圧下で溶剤を留去し、濾別、洗浄、乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−11)を得た。得られた(D−11)は造粒せず、平均粒子径およびCvに変化はなかった。
【0054】
比較例5
実施例6にて作成した(G−6−1)を減圧下、80℃に加熱し、溶媒を除去した。溶媒除去後、濾別及び乾燥を行い、熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G−6−2)を製造した。得られた(G−6−2)120部を、製造例5で得た分散媒(Y−1)170部に、攪拌下で分散し、スラリーを作成した。このスラリーに溶媒(B−1)であるメタノール(沸点66℃、ポリウレタン樹脂(A−6)とのSP値の差3.1)を45部添加し、周速0.5m/sの攪拌下で、60℃まで昇温して3時間継続した後、減圧下で溶剤を留去し、濾別、洗浄、乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−12)を得た。得られた(D−12)は造粒せず、平均粒子径およびCvに変化はなかった。
【0055】
比較例6
実施例6にて作成した(G−6−1)375部に溶媒(B−1)であるMEK(沸点78℃、ポリウレタン樹脂(A−6)とのSP値の差1.7)を23部添加し、周速1.0m/sの攪拌下で、5℃で3時間継続した後、濾別、洗浄、乾燥を行って熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D−13)を得た。得られた(D−13)は造粒せず、平均粒子径およびCvに変化はなかった。
【0056】
下記の表1に、実施例1〜7、比較例1〜6について、樹脂微粉体(G)のSP値、熱軟化温度、有機溶媒(B)のSP値、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)とのSP値の差、添加量、造粒条件として攪拌の周速、温度を記載した。
【0057】
【表1】

【0058】
下記の表2に、実施例1〜7、比較例1〜6について、樹脂微粉体(G)の平均粒子径、Cv、樹脂粉体(D)の平均粒子径、Cvを記載した。
【0059】
【表2】

【0060】
平均粒子径および粒子径分布Cvは、レーザー回折式粒子径分布測定装置[日機装(株)製]で測定した。
【0061】
熱軟化温度は、フローテスターCFT−500[島津(株)製]を用いて下記条件で等速昇温し、樹脂が軟化を始める温度を熱軟化温度とした。
荷重 : 5kg
ダイ : 0.5mmΦ−1mm
昇温速度 : 5℃/min
【0062】
本発明の製造方法で得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D)は、中心粒子径が10〜500μmであり、比較例の方法により得られたポリウレタン樹脂粉体より、シャープな粒度分布を有することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の製造方法で得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体を含有する熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体組成物から成形される成形物、例えば表皮は、自動車内装材、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等の表皮として好適に使用される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、中心粒子径が10〜500μmであり粒子径分布Cvが20〜55である熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D)の製造方法。
工程1
熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)を含有する中心粒子径が1〜100μmである熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G)を製造した後、熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G)と水又は分散剤を含有する水溶液を含むスラリー(J)を製造する工程。
工程2
スラリー(J)に、熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)との溶解性パラメーター(SP値)の差が3以下である有機溶媒(B)を添加し、10〜[有機溶媒(B)の沸点]℃の温度において周速0.1〜10m/sで攪拌することにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂微粉体(G)を熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D)に造粒する工程。
【請求項2】
工程1において、有機溶媒(L)を使用してポリウレタン樹脂微粉体(G)を製造した後、有機溶媒(L)を除去してから工程2に移る請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
熱可塑性ポリウレタン樹脂(A)の熱軟化温度が100〜200℃である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
有機溶媒(B)が、炭素数3〜9のケトン、炭素数が4〜8のエーテル、及び炭素数3〜6のエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
有機溶媒(B)がアセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、及びテトラヒドロフランからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法で得た熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体(D)に添加剤を添加することを特徴とする熱可塑性ポリウレタン樹脂粉体組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−208128(P2011−208128A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48988(P2011−48988)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】