説明

熱可塑性樹脂からの熱成形フィルム部品の製造方法

少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または他の方法で被覆された熱成形フィルム部品の製造方法であって、少なくとも下記処理工程:
−片面もしくは両面が少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆され、かつ、少なくとも1種類の熱可塑性樹脂でできているフラットフィルム片であって、サイズ並びに印刷、金属化および/またはコーティングに関して製造される熱成形部品に一致する少なくとも1つのフィルムセクションを含むフラットフィルム片を提供する工程;
−このフィルム片を、フィルム片のエッジセクションのみがフレーム上に存在する規定配置でフレーム上に載置する工程;
−このようにフレーム上に存在するフィルム片を加熱ゾーンに導入し、かつ、少なくともこのフィルムセクションをそこで所定の温度に加熱する工程;並びに
−このように加熱されたフィルム片を成形ゾーンに迅速に導入し、そこにすぐに直接20barよりも高い圧力手段圧力のもとで流体圧力手段を加え、平衡に成形して5秒未満の時間内で所望の熱成形部品を生じる工程;
を包含し、そのような加熱をフィルムセクション全体またはフィルムセクションの主要部分の少なくとも片側がビカー軟化温度B/50の10〜65℃上のフィルム表面温度を有するように行うことを特徴とする、少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または他の方法で被覆された熱成形フィルム部品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種類の熱可塑性樹脂、好ましくはポリカーボネート(PC)またはポリメチルメタクリレートまたはポリ(メタ)アクリレート(PMMA)の、少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆された熱成形フィルム部品の製造方法に関する。
【0002】
使用に依存して、本発明によって得られる熱成形フィルム部品または熱成形部品は、典型的には、所定のレイアウトに従うグラフィック、機能的、かつ/または、装飾的デザインを有し、様々な色のセクションと、要すれば更に1以上の透明セクションとを有する。これらの熱成形部品は、例えば、ランプカバーとして、照明看板として、ハウジング部品として、発光プッシュボタンもしくはスイッチボタンとして、ディスプレイ装置として、はかり、調度品および/もしくは計器のディスプレイパネルとして、および最も様々な性質の目盛盤および信号ディスプレイとして用いられうる。使用のある重要な分野は、計器のディスプレイパネルまたはディスプレイエレメント、はかりおよび自動車のダッシュボード上のディスプレイ;ここで、例えば運転速度表示装置またはタコメーターのディスプレイパネル、に関する。これらのタコメーターディスプレイパネルは当業者に「タコスクリーン(tacho screens)」とも呼ばれる。本発明の制限を意図するわけではないが、以下にそのようなタコスクリーンの製造を用いて本発明による方法を説明する。
【0003】
通常比較的単純な成形物品を生じるプラスチックのシートまたはフィルムのベーシックな成形プロセスは熱成形である。これにおいて、フラットな出発材料を、柔軟かつ可塑性になるような高い付形温度に加熱し、この状態において、比較的低い付形力の作用のもとで金型の輪郭において成形する。これらの付形力は、例えば、真空の適用(真空法)によって、約4〜6barまでの圧力手段圧力のもとで流体圧力手段を加えること(圧縮空気法)によって、または、両方の手段の組み合わせによって、適用される。PMMAフィルム(この場合、Plexiglas(登録商標)XT(ROEHM GMBH製))に関しては、付形温度160〜170℃が製造業者によって述べられている。PCフィルム(この場合、Makrofol(登録商標)(BAYER AG製))の熱成形に関しては、フィルムを予め80℃以上の加熱オーブンにおいて少なくとも8時間状態調節して溶媒残留物を除去しなければならない。次に、状態調節フィルムを220℃よりも高い付形温度に加熱する(例えば、ラジエーター表面温度600℃のトップヒーティングとラジエーター表面温度400℃のボトムヒーティングとの間に15〜20秒間保持する。)。事前状態調節なしには、付形温度への加熱中および次の熱成形中に溶媒残留物がふくれを生じうる。熱成形中に比較的低い付形力しか使用しないので、成形用材料は非常に軟らかく、かつ、可塑性でなければならない。比較的単純な成形物品、例えばハウジングおよびコンテナ、は、典型的には、このようにして得られる。グラフィックデザインの完成成形物品への精密複製および/またはフラットな出発フィルムのエッジのシャープな構造体の完成成形物品への忠実かつ正確なキャスティングは不可能である。
【0004】
対照的に、本発明は、少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆された熱成形フィルム部品の製造方法であって、少なくとも下記処理工程:
−片面または両面が少なくとも部分的に印刷されたかまたは金属化され、かつ/または、他の方法で被覆され、かつ、少なくとも1種類の熱可塑性樹脂、特に好ましい態様ではポリカーボネート(PC)またはポリメチルメタクリレートまたはポリ(メタ)アクリレート(PMMA)でつくられているフラットフィルム片であって、サイズおよび印刷、金属化および/またはコーティングが製造される熱成形部品に一致する少なくとも1つのフィルムセクションを含むフラットフィルム片を提供する工程;
−このフィルム片を、フィルム片のエッジセクションのみがフレーム上に存在する規定の配置でフレーム上に載置する工程;
−このようにフレーム上に保持されたフィルム片を加熱ゾーンに導入し、そこで少なくともこのフィルムセクションを所定の温度に加熱する工程;並びに
−次に、このようにして加熱されるフィルム片を成形ゾーンに迅速に導入し、そこですぐに直接、20barよりも高い圧力手段圧力のもとで流体圧力手段を加え、平衡に成形して5秒以下の時間内に所望の熱成形部品を生じる工程
を包含する、少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆された熱成形フィルム部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0005】
このタイプの同様のプロセスは文献EP 0 371 425 B1に開示されている。当業者の間では、このプロセスは、更に、プラスチックのフィルムの「高圧成形または高圧付形」または「非常に高圧のプロセス」または「高圧成形によるフィルムの常温成形」またはHPFプロセス(高圧成形に由来)ともよばれている。このプロセスによって、例えば、層厚125μmの透明PCフィルム(BAYER AG製のMakrofol(登録商標))であって、軟化温度約150℃のものを90〜120℃の範囲の作業温度に加熱し、次に150barの圧縮空気を用いて成形する。この作業温度はフィルム全体に関連する。
【0006】
文献DE 41 13 568 C1は、このHPFプロセスによるプラスチックのフィルムの高圧成形用デバイスを記述している。そのような自動操作装置は、少なくとも下記のものを備える:
−可動フレーム状パレットの連続ラインであって、コンベアによって装置の様々な作業ステーションを通過して段階的に導かれる連続ライン;
−成形されるフラットフィルム片を、それぞれ1つのパレット上に規定の配置で配置する供給ステーション;
−それぞれのフィルム片を所定の温度に加熱する加熱ステーション;
−金型を有する付形ステーションであって、その金型キャビティにおいてフィルム片を成形する付形ステーション;
−取り出しステーション(removal station)であって、付形ステーション中で成形された熱成形フィルム片を、これを保持するパレットから取り外し、収集コンテナに入れる取り出しステーション;および
−加圧下に保持された流体圧力手段用ソース、特に圧縮空気、であって、金型内に配置されたフィルム片に加え、かつ、成形する流体圧力手段用ソース。
【0007】
そこに詳細に記述されている加熱ステーションは、3つの加熱場を備え、これらは共通面内で隣り合って整列され、パレットのラインの動く軌道上に所定の距離で配置されている。それぞれの加熱場は、多数の赤外線表面ヒーターを有し、それらのいくつかは独立して作動されうる。好ましくは、エッジの赤外線表面ヒーターは独立して作動される。パイロットヒーター(pilot heater)は、周囲温度および表面温度の記録用センサーを備える。パイロットヒーターの表面温度は、狭い範囲内で一定に保たれる。パイロットヒーターは、加熱面を同様に所定の温度に保持するために、独立して活性化される赤外線表面ヒーターの制御用シグナルを伝える。
【0008】
段階的供給中、加熱されるフィルム片は、これらの加熱場から所定の距離において所定の時間とどまり、想定作業温度に加熱される。エッジの赤外線表面ヒーターであって、温度がより高いヒーターを用いて、フィルム片のエッジセクションも中央セクションと同じ温度を呈し、フィルム片全体が均一の特定の所定の作業温度を有することが確実にされる。
【0009】
プラスチックのフィルムのこの既知の高圧成形のある特性は、特定のフィルム材料のプラスチックの軟化温度よりも低い作業温度において成形が行われることである。例えば、そこで使用されるビスフェノールAベースのポリカーボネート材料(BAYER AG製のMakrolon(登録商標))の軟化温度は約150℃であり、高圧成形は加熱フィルム全体の作業温度約120℃において行われる。
【0010】
実際的経験は、しばしばある復元力がそのような条件下で熱成形されるフィルム部品にも起こることを示す。従って、このようにして製造される熱成形フィルム部品は、しばしば寸法安定製品を提供するために更に別の透明プラスチックが裏面に射出成形される。これらのプロセスは、更に当業者にインサート成形とも呼ばれる。裏面における射出成形またはインサート成形に関して、印刷熱成形フィルム部品を、印刷がダイ側を向くように射出成形用金型に置き、裏面に、例えば厚さ0.5〜3.0mmの熱可塑性樹脂の層を、射出成形する。例えば、ニードル弁ゲートを有するホットランナー金型が特に好適である。熱可塑性樹脂、例えばPC、PCとアクリロニトリル/ブタジエン/スチレンコポリマー(ABS)との混合物およびPMMA材料、が裏面の射出成形に好適である。裏面の射出成形に使用される溶融材料は、温度約220℃〜300℃で印刷フィルムに合う。ここで装飾に対するダメージを避けるために、フィルムを射出チャネルの領域に保護エレメントと共に提供してもよい(この関連で、例えば、DE 103 12 610 A1参照。)。
【0011】
文献EP 1 023 150 B1は、特に、成形物品の製造方法に関する。この方法において、フラットな、任意に着色されていてもよいフィルム、例えばPCでつくられているフィルム、を金型キャビティに配置する。溶融プラスチックを、例えばPCのように、このフィルム上に配置する。プラスチックの溶融物と接触しているフィルムが既に柔軟かつ可塑性になっているので、穏やかなガスの圧力を金型キャビティ中に構築し、これが溶融プラスチックの重みを受けるフィルムのたるみを避けるためにフィルムとプラスチックの溶融物の重量を支持する。次に、タップ(swage)またはパンチ(punch)を用いてフィルムとプラスチックの溶融物との組み合わせを金型キャビティに送り込み、フィルムを金型キャビティの壁体にとどめる。冷却後に、任意に薄肉であってもよい成形物品が得られ、そのアウター層は任意に着色されていてもよいフィルムを備える。
【0012】
このタイプの代わりの方法(文献US 6 506 334 B1参照。)によると、フィルム片は、下側の金型の金型キャビティをカバーする。別のプラスチック片であって、あらかじめ適合するように切断されており、かつ、特定の温度に加熱されているプラスチック片をこのフィルム片の上に置く。この温度は、通常、プラスチック片を製造するプラスチックの溶融温度であるか、または、それよりも更に高い温度である。プラスチック片は、赤外線加熱、対流加熱、高周波数加熱または別の加熱手段を用いてこの温度に加熱されうる。次に、任意に着色されていてもよいフィルムと熱いプラスチック片との二層配置をパンチまたは上部金型を用いて金型キャビティに押し込む。これらの最後に言及した方法は圧縮成形ともよばれる。
【0013】
言及されている方法、例えばインサート成形、圧縮成形およびこのタイプの別の方法、は、多層の、任意に薄肉であってもよい付形物品であって、その上で装飾フィルムがアウター層を成形する付形物品を供給するが、装飾それ自体は、付形物品塊内にあり、従って、磨耗から保護される。溶融プラスチック組成物との接触が装飾層上の装飾を損ないうる。
【0014】
±0.1mmのオーダーの高い複製精度は、典型的には、圧縮成形で得られない。なぜなら、成形中にフィルム全体が既に柔軟かつ可塑性であるからである。少なくとも2つの作業工程を要求する手順が必要とされる。しかしながら、関連産業は、追加のプラスチックの背面射出成形の作業工程を避けるために、このタイプの熱成形単層寸法安定フィルム部品をますます要求している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
これに基づいて、本発明の目的は、少なくとも1種類の熱可塑性樹脂の、特に好ましい態様においてはポリカーボネート(PC)またはポリメチルメタクリレートまたはポリ(メタ)アクリレート(PMMA)の、単層熱成形寸法安定性フィルム部品であって、実質的に内部ストレスおよび復元力がなく、もとのグラフィック、機能的かつ/または装飾的デザインの非常に正確なポジショニングが変化しない、好ましくは高圧成形後に±0.1mmのオーダーの、フィルム部品が得られる一般的なタイプの方法(EP 0 371 425 B1参照。)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または他の方法で被覆された熱成形フィルム部品の製造方法であって、少なくとも下記処理工程:
−フラットフィルム片であって、片面または両面が少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または他の方法で被覆されており、かつ、少なくとも1種類の熱可塑性樹脂でできており、かつ、サイズ並びに印刷、金属化および/またはコーティングに関して製造される熱成形部品に一致する少なくとも1つのフィルムセクションを含むフラットフィルム片を提供する工程;
−このフィルム片を、フィルム片のエッジセクションのみがフレーム上に存在する規定の配置でフレーム上に載置する工程;
−このようにしてフレーム上に存在するフィルム片を加熱ゾーンに導入し、少なくともこのフィルムセクションをそこで所定の温度まで加熱する工程;並びに
−次に、このようにして加熱されたフィルム片を成形ゾーンに迅速に導入し、そこにすぐに直接20barよりも高い流体圧力手段を加え、平衡に成形して5秒未満の時間内に所望の熱成形部品を得る工程
を包含する、少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または他の方法で被覆された熱成形フィルム部品の製造方法から出発して、本発明による上記問題の解決方法は、
そのような加熱を、フィルムセクション全体の少なくとも片側またはフィルムセクションの主要部分の少なくとも片側がビカー軟化温度B/50よりも10〜65℃、好ましくは15〜65℃、特に好ましくは20〜65℃、より特に好ましくは25〜60℃高いフィルム表面温度を有するように行う
ことを特徴とする。
【0017】
熱可塑性樹脂のビカー軟化温度B/50は、ISO 306(50N;50℃/時間)によるビカー軟化温度B/50である。
【0018】
好ましくは、個々のフィルム片セグメント、好ましくはフィルムセクションの個々のセグメント、を更に、このフィルム表面温度を少なくとも3℃越え、10℃よりも多く超えない高い温度まで加熱してもよく、本発明による方法の他の条件のもと、このフィルム温度で成形する。
【0019】
先行技術による方法と比較して、本発明による方法は、復元力および内部ストレスが最小化されるかまたは実質的に内部ストレスおよび復元力がない熱成形フィルム部品がこの方法によって得られるという利点を提供する。更に、好ましくは±0.1mmのオーダーの高い複製精度が本発明によって製造される熱成形フィルム部品において達成される。これは、意外なことに、本発明による個々の処理工程の組み合わせによって、上記ビカー軟化温度B/50の範囲内のフィルム表面温度への加熱に起因してフィルムが可塑性フロー特性を得ず、かつ、次の成形操作において複製精度を損なわずに達成される。
【0020】
本発明によると、フィルムセクション全体またはフィルムセクションの主要部分のいずれかが対応フィルム表面温度に加熱される。本明細書中の発明との関連で、フィルムセクションの主要部分は、フィルムセクションの少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%、より特に好ましくは少なくとも90%を意味していると理解され、これは、サイズ並びに印刷、金属化および/またはコーティングに関して製造される熱成形部品と一致する。
【0021】
本発明との関連で、フィルム片の成形ゾーンへの迅速な導入は、特定の想定フィルム表面温度に加熱した後に、フィルム片を10秒未満、好ましくは5秒未満、特に好ましくは2秒未満、より特に好ましくは1秒未満、の時間内に成形ゾーンに移すことを意味すると理解される。
【0022】
厚さ100μm〜2,000μm、好ましくは厚さ125〜750μm、特に好ましくは厚さ125〜600μm、かつ、より特に好ましくは厚さ200〜500μmのフィルム片が典型的に本発明による方法において用いられる。
【0023】
熱可塑性樹脂は、好ましくは、エチレン性不飽和モノマーのポリマーおよび/または二官能性反応性化合物の重縮合物および/または二官能性反応性化合物の重付加生成物から選択される少なくとも1種類の熱可塑性樹脂、好ましくはエチレン性不飽和モノマーのポリマーおよび/または二官能性反応性化合物の重縮合物から選択される少なくとも1種類の熱可塑性樹脂である。ある使用に関して、透明熱可塑性樹脂を用いることが有利であり、従って好ましい。
【0024】
特に好適な熱可塑性樹脂は、ジフェノールベースのポリカーボネートもしくはコポリカーボネート、ポリ−もしくはコポリアクリレートおよびポリ−もしくはコポリメタクリレート、例えば、一例として好ましくは、ポリメチルメタクリレートもしくはポリ(メタ)アクリレート(PMMA)、スチレンを有するポリ−もしくはコポリマー、例えば、一例として好ましくは、ポリスチレンもしくはポリスチレン/アクリロニトリル(SAN)、熱可塑性ポリウレタン、およびポリオレフィン、例えば、一例として好ましくは、ポリプロピレンタイプもしくは環状オレフィンベースのポリオレフィン(例えば、Hoechst製のTOPAS(登録商標))、テレフタル酸の重縮合物もしくは共重縮合物、例えば、一例として好ましくは、ポリ−もしくはコポリエチレンテレフタレート(PETもしくはCoPET)、グリコール変性PET(PETG)、グリコール変性ポリ−もしくはコポリシクロヘキサン−ジメチレンテレフタレート(PCTG)またはポリ−もしくはコポリブチレンテレフタレート(PBTもしくはCoPBT)または上記のものの混合物である。言うまでもなく、他の上記熱可塑性樹脂を添加しないポリオレフィン、例えばポリプロピレン、は本発明の方法にあまり好ましくない。
【0025】
好ましい熱可塑性樹脂は、ポリカーボネートもしくはコポリカーボネート、ポリ−もしくはコポリアクリレート、ポリ−もしくはコポリメタクリレートまたはこれらの熱可塑性樹脂の少なくとも1種類を含むブレンドである。特に平均分子量Mが500〜100,000、好ましくは10,000〜80,000、特に好ましくは15,000〜40,000のポリカーボネートもしくはコポリカーボネート、またはそれらと平均分子量Mが10,000〜200,000、好ましくは26,000〜120,000のテレフタル酸の重縮合物もしくは共重縮合物、もしくは平均分子量Mが30,000〜300,000、特に好ましくは80,000〜250,000の重縮合物もしくは共重縮合物およびポリ−もしくはコポリメタクリレートの少なくとも一種類とのブレンドが特に好ましい。
【0026】
本発明の好ましい態様において、テレフタル酸の好適な重縮合物もしくは共重縮合物は、ポリアルキレンテレフタレートである。好適なポリアルキレンテレフタレートは、例えば、芳香族ジカルボン酸またはそれらの反応性誘導体(例えばジメチルエステルまたは無水物)と、脂肪族、脂環式または芳香脂肪族ジオールとからの反応生成物およびこれらの反応生成物の混合物である。
【0027】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸(またはその反応性誘導体)とC原子を2〜10個有する脂肪族または脂環式ジオールとから、既知の方法によって製造されうる(Kunststoff−Handbuch,第VIII巻,695頁以降,Karl−Hanser−Verlag,ミュンヘン1973年)。
【0028】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分に対して少なくとも80mol%、好ましくは90mol%のテレフタル酸基と、ジオール成分に対して少なくとも80mol%、好ましくは少なくとも90mol%のエチレングリコール基および/またはブタン−1,4−ジオール基および/または1,4−シクロヘキサンジメタノール基と、を含む。
【0029】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、テレフタル酸基に加えて、20mol%以下の、C原子を8〜14個有する他の芳香族ジカルボン酸の基またはC原子を4〜12個有する脂肪族ジカルボン酸の基、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸またはセバシン酸、アゼライン酸またはシクロヘキサン二酢酸の基、を含みうる。
【0030】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、エチレングリコール基および/またはブタン−1,4−ジオール基に加えて、80mol%以下の、C原子を3〜12個有する他の脂肪族ジオールまたはC原子を6〜21個有する脂環式ジオールの基、例えばプロパン−1,3−ジオール、2−エチルプロパン−1,3−ジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、3−メチルペンタン−2,4−ジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオールおよび2−エチルヘキサン−1,6−ジオール、2,2−ジエチルプロパン−1,3−ジオール、ヘキサン−2,5−ジオール、1,4−ジ−(β−ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル−シクロブタン、2,2−ビス−(3−β−ヒドロキシエトキシフェニル)−プロパンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパンの基、を含みうる(DE−OS 24 07 674、24 07 776、27 15 932参照。)。
【0031】
ポリアルキレンテレフタレートは、例えばDE−OS 19 00 270およびUS−PS 3 692 744に記述されているように、比較的少量の3−もしくは4−価アルコールまたは3−もしくは4−価カルボン酸の組み込みによって分枝されうる。好ましい分枝剤の例は、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタンおよび−プロパンおよびペンタエリトリトールである。
【0032】
好ましくは、酸成分に対して1mol%以下の分枝剤が使用される。
【0033】
単にテレフタル酸およびその反応性誘導体(例えばジアルキルエステル)とエチレングリコールおよび/またはブタン−1,4−ジオールおよび/または1,4−シクロヘキサンジメタノール基とのみから製造されたポリアルキレンテレフタレートおよびこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物が特に好ましい。
【0034】
更に、少なくとも2種類の上記酸成分および/または少なくとも2種類の上記アルコール成分から製造されるコポリエステルも好ましいポリアルキレンテレフタレートであり、特に好ましいコポリエステルはポリ(エチレングリコール/ブタン−1,4−ジオール)テレフタレートである。
【0035】
1成分として好ましく使用されるポリアルキレンテレフタレートは、好ましくは固有粘度が約0.4〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.3dl/gである(それぞれフェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1重量部)中で25℃において測定される。)。
【0036】
本発明の特に好ましい態様において、少なくとも1種類のポリカーボネートまたはコポリカーボネートと少なくとも1種類のテレフタル酸の重縮合物または共重縮合物とのブレンドは、少なくとも1種類のポリカーボネートもしくはコポリカーボネートとポリ−もしくはコポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリ−もしくはコポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとのブレンドである。ポリカーボネートもしくはコポリカーボネートとポリ−もしくはコポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリ−もしくはコポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとのそのようなブレンドは、好ましくは、ポリカーボネートもしくはコポリカーボネート1〜90wt.%とポリ−もしくはコポリブチレンテレフタレートまたはグリコール−変性ポリ−もしくはコポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート99〜10wt.%とのブレンド、好ましくはポリカーボネート1〜90wt.%とポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート99〜10wt.%とのブレンドであり、含量は合計で100wt.%である。そのようなポリカーボネートもしくはコポリカーボネートとポリ−もしくはコポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリ−もしくはコポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとのブレンドは、特に好ましくは、ポリカーボネートもしくはコポリカーボネート20〜85wt.%とポリもしくはコポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリ−もしくはコポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート80〜15wt.%とのブレンド、好ましくはポリカーボネート20〜85wt.%とポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート80〜15wt.%とのブレンドであり、含量は合計100wt.%である。そのようなポリカーボネートもしくはコポリカーボネートとポリ−もしくはコポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリ−もしくはコポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとのブレンドは、より特に好ましくは、ポリカーボネートもしくはコポリカーボネート35〜80wt.%とポリ−もしくはコポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリ−もしくはコポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート65〜20wt.%とのブレンド、好ましくはポリカーボネート35〜80wt.%とポリブチレンテレフタレートまたはグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート65〜20wt.%とのブレンドであり、含量の合計は100wt.%である。より特に好ましい態様において、ブレンドは、ポリカーボネートとグリコール変性ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートとの上記組成におけるブレンドである。
【0037】
好ましい態様において、好適なポリカーボネートまたはコポリカーボネートは、特に、芳香族ポリカーボネートまたはコポリカーボネートである。
【0038】
既知の方法で、ポリカーボネートまたはコポリカーボネートは、直鎖であっても分枝されていてもよい。
【0039】
これらのポリカーボネートの製造は、既知の方法で、ジフェノールと、炭酸誘導体と、要すれば連鎖停止剤と、要すれば分枝剤とから行われる。ポリカーボネートの製造の詳細は、多くの特許明細書に約40年にわたって開示されている。単に一例として、Schnell,“Chemistry and Physics of Polycarbonates”,Polymer Reviews,第9巻,Interscience Publishers,ニューヨーク,ロンドン,シドニー1964年、D.Freitag,U.Grigo,P.R.Mueller,H.Nouvertne,BAYER AG,“Polycarbonates”in Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,第11巻,第二版,1988年,648〜718頁、および最後にDrs.U.Grigo,K.Kirchner and P.R.Mueller“Polycarbonate”in Becker/Braun,Kunststoff−Handbuch,第3/1巻,Polycarbonate,Polyacetale,Polyester,Celluloseester,Carl Hanser Verlag Munich,ウィーン1992年,117〜299頁参照。
【0040】
好適なジフェノールは、例えば、一般式(I)
HO−Z−OH (I)
(式中、
Zは、C原子を6〜34個有する芳香族基であって、1以上の任意に置換されていてもよい芳香核および脂肪族または脂環式基またはアルキルアリールまたはヘテロ原子をブリッジメンバーとしてを含んでいてもよいものである。)
のジヒドロキシアリール化合物である。
【0041】
好適なジヒドロキシアリール化合物の例は、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシジフェニル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アリール、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホキシド、1,1’−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン、およびそれらの核アルキル化および核ハロゲン化化合物である。
【0042】
これらおよび別の好適なジヒドロキシアリール化合物は、例えば、DE−A 3 832 396、FR−A 1 561 518、H.Schnell,Chemistry and Physics of Polycarbonates,Interscience Publishers,ニューヨーク,1964年,p.28以降;p.102以降、およびD.G.Legrand,J.T.Bendler,Handbook of Polycarbonate Science and Technology,Marcel Dekker New York 2000,p.72以降に記述されている。
【0043】
好ましいジヒドロキシアリール化合物は、例えば、レソルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ジフェニル−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(1−ナフチル)−エタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2−ナフチル)−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−プロパン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロ−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−ブタン、2,4−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−シクロヘキサン、1,3−ビス−[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−ジイソプロピル−ベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−ジイソプロピル−ベンゼン、1,3−ビス−[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホンおよび2,2’,3,3’−テトラヒドロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ−[1H−インデン]−5,5’−ジオールまたは式(Ia)
【化1】

(式中、
およびRは、互いに独立して、水素、ハロゲン、好ましくは塩素または臭素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アリール、好ましくはフェニル、およびC〜C12−アラルキル、好ましくはフェニル−C〜C−アルキル、特にベンジルであり、
mは、4〜7の整数、好ましくは4または5であり、
およびRは、それぞれのXに関して個々に選択され、互いに独立して、水素またはC〜C−アルキルであり、かつ、
Xは、炭素であり、
但し、少なくとも1つの原子Xにおいて、RおよびRは、同時にアルキルである。)
のジヒドロキシジフェニルシクロアルカンである。
【0044】
好ましくは、式(Ia)において、RおよびRは、1または2個の原子Xにおいて同時にアルキルであり、特に、1つの原子Xのみにおいて同時にアルキルである。
【0045】
式(Ia)における基RおよびRに関して好ましいアルキル基はメチルである。ジフェニル置換C原子(C−1)に対してα位のX原子は、好ましくは、ジアルキル置換ではなく、対照的に、C−1に対してβ位のアルキル二置換が好ましい。
【0046】
特に好ましい式(Ia)のジヒドロキシジフェニルシクロアルカンは、脂環式基中に環C原子Xを5個有するジヒドロキシジフェニルシクロアルカンおよび6個有するジヒドロキシジフェニルシクロアルカン(式(Ia)中、m=4または5)、例えば式(Ib)〜(Id)
【化2】

【化3】

のジフェノールである。
【0047】
より特に好ましい式(Ia)のジヒドロキシジフェニルシクロアルカンは、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン(式(Ia−1)、式中、RおよびRはHである。)である。
【0048】
そのようなポリカーボネートは、EP−A 359 953に従って、式(Ia)のジヒドロキシジフェニルシクロアルカンから製造される。
【0049】
特に好ましいジヒドロキシアリール化合物は、レソルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ジフェニル−メタン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニル−エタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(1−ナフチル)−エタン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2−ナフチル)−エタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3−ジイソプロピル−ベンゼンおよび1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−4−ジイソプロピル−ベンゼンである。
【0050】
より特に好ましいジヒドロキシアリール化合物は、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンおよび1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサンである。
【0051】
1種類のジヒドロキシアリール化合物を使用してホモポリカーボネートを生成するかまたは様々なジヒドロキシアリール化合物を使用してコポリカーボネートを生成することが可能である。
【0052】
式(I)または(Ia)の1種類のジヒドロキシアリール化合物を使用してホモポリカーボネートを生成するかまたは式(I)および/または(Ia)の数種類のジヒドロキシアリール化合物を使用してコポリカーボネートを生成することが可能である。この関連で、様々なジヒドロキシアリール化合物が互いにランダムに結合されてもブロックで結合されてもよい。式(I)および(Ia)のジヒドロキシアリール化合物からのコポリカーボネートの場合、式(Ia)のジヒドロキシアリール化合物 対 別の任意に共使用される式(I)のジヒドロキシアリール化合物のモル比は、好ましくは(Ia)99mol%対(I)1mol%〜(Ia)2mol%対(I)98mol%、好ましくは(Ia)99mol%対(I)1mol%〜(Ia)10mol%対(I)90mol%、特に(Ia)99mol%対(I)1mol%〜(Ia)30mol%対(I)70mol%である。
【0053】
より特に好ましいコポリカーボネートは、式(Ia)および(I)のジヒドロキシアリール化合物として1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンを使用して製造される。
【0054】
式(Ia)のジヒドロキシアリール化合物を使用して製造されるポリ−またはコポリカーボネートは、通常、ジヒドロキシアリール化合物としての2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンベースのポリ−ポリカーボネートよりも高いガラス転移温度Tおよび高いビカー軟化温度B/50を有する。
【0055】
好適な炭酸誘導体は、例えば、一般式(II)

(式中、
R、R’およびR’’は、互いに独立して、同一であるかまたは異なっており、水素、直鎖もしくは分枝C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールであり、Rは更に−COO−R’’’であってもよく、R’’’は、水素、直鎖もしくは分枝C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールである。)
のジアリールカーボネートである。
【0056】
好ましいジアリールカーボネートは、例えば、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルフェニルカーボネートおよびジ−(メチルフェニル)カーボネート、4−エチルフェニルフェニルカーボネート、ジ−(4−エチルフェニル)カーボネート、4−n−プロピルフェニルフェニルカーボネート、ジ−(4−n−プロピルフェニル)カーボネート、4−iso−プロピルフェニルフェニルカーボネート、ジ−(4−iso−プロピルフェニル)カーボネート、4−n−ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ−(4−n−ブチルフェニル)カーボネート、4−iso−ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ−(4−iso−ブチルフェニル)カーボネート、4−tert−ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ−(4−tert−ブチルフェニル)カーボネート、4−n−ペンチルフェニルフェニルカーボネート、ジ−(4−n−フェニルフェニル)カーボネート、4−n−ヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジ−(4−n−ヘキシルフェニル)カーボネート、4−iso−オクチルフェニルフェニルカーボネート、ジ−(4−iso−オクチルフェニル)カーボネート、4−n−ノニルフェニルフェニルカーボネート、ジ−(4−n−ノニルフェニル)カーボネート、4−シクロヘキシルフェニルフェニルカーボネート、ジ−(4−シクロヘキシルフェニル)カーボネート、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニルフェニルカーボネート、ジ−[4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル]カーボネート、ビフェニル−4−イルフェニルカーボネート、ジ(ビフェニル−4−イル)カーボネート、4−(1−ナフチル)−フェニルフェニルカーボネート、4−(2−ナフチル)−フェニルフェニルカーボネート、ジ−[4−(1−ナフチル)−フェニル]カーボネート、ジ−[4−(2−ナフチル)−フェニル]カーボネート、4−フェノキシフェニルフェニルカーボネート、ジ−(4−フェノキシフェニル)カーボネート、3−ペンタデシルフェニルフェニルカーボネート、ジ−(3−ペンタデシルフェニル)カーボネート、4−トリチルフェニルフェニルカーボネート、ジ−(4−トリチルフェニル)カーボネート、メチル−サリチレートフェニルカーボネート、ジ−(メチル−サリチレート)カーボネート、エチル−サリチレートフェニルカーボネート、ジ−(エチル−サリチレート)カーボネート、n−プロピル−サリチレートフェニルカーボネート、ジ−(n−プロピル−サリチレート)カーボネート、iso−プロピル−サリチレートフェニルカーボネート、ジ−(iso−プロピル−サリチレート)カーボネート、n−ブチル−サリチレートフェニルカーボネート、ジ−(n−ブチル−サリチレート)カーボネート、iso−ブチル−サリチレートフェニルカーボネート、ジ−(iso−ブチル−サリチレート)カーボネート、tert−ブチル−サリチレートフェニルカーボネート、ジ−(tert−ブチル−サリチレート)カーボネート、ジ−(フェニル−サリチレート)カーボネートおよびジ−(ベンジル−サリチレート)カーボネートである。
【0057】
特に好ましいジアリール化合物は、ジフェニルカーボネート、4−tert−ブチルフェニルフェニルカーボネート、ジ−(4−tert−ブチルフェニル)カーボネート、ジフェニル−4−イルフェニルカーボネート、ジ−(ビフェニル−4−イル)カーボネート、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニルフェニルカーボネート、ジ−[4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェニル]カーボネートおよびジ−(メチルサリチレート)カーボネートである。
【0058】
ジフェニルカーボネートがより特に好ましい。
【0059】
1種類のジアリールカーボネートを使用することも様々なジアリールカーボネートを使用することも可能である。
【0060】
末端基を制御するかまたは変性するために、例えば、一種類以上のモノヒドロキシアリール化合物であって、使用されるジアリールカーボネートの製造に使用されなかったモノヒドロキシアリール化合物を更に連鎖停止剤として使用してもよい。この関連で、これらは、一般式(III)
【化4】

(式中、
は、直鎖もしくは分枝C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリール、C〜C34−アリールまたは−COO−Rであり、Rは、水素、直鎖もしくは分枝C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールであり、かつ、
、Rは、互いに独立して、同一であるかまたは異なっており、水素、直鎖もしくは分枝C〜C34−アルキル、C〜C34−アルキルアリールまたはC〜C34−アリールである。)
のモノヒドロキシアリール化合物であってもよい。
【0061】
そのようなモノヒドロキシアリール化合物は、例えば、1−、2−または3−メチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、4−エチルフェノール、4−n−プロピルフェノール、4−iso−プロピルフェノール、4−n−ブチルフェノール、4−イソブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、4−n−ペンチルフェノール、4−n−ヘキシルフェノール、4−iso−オクチルフェノール、4−n−ノニルフェノール、3−ペンタデシルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、4−(1−メチル−1−フェニルエチル)−フェノール、4−フェニルフェノール、4−フェノキシフェノール、4−(1−ナフチル)−フェノール、4−(2−ナフチル)−フェノール、4−トリチルフェノール、メチルサリチレート、エチルサリチレート、n−プロピルサリチレート、iso−プロピルサリチレートn−ブチルサリチレート、iso−ブチルサリチレート、tert−ブチルサリチレート、フェニルサリチレートおよびベンジルサリチレートである。
【0062】
4−tert−ブチルフェノール、4−iso−オクチルフェノールおよび3−ペンタデシルフェノールが好ましい。
【0063】
好適な分枝剤は、3以上の官能基を有する化合物、好ましくは3以上のヒドロキシル基を有する化合物である。
【0064】
3以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する好適な化合物は、例えば、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス−(4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノールおよびテトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタンである。
【0065】
3以上の官能基を有する別の好適な化合物は、例えば、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸(三塩化物)、シアヌル酸三塩化物および3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0066】
好ましい分枝剤は、3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールおよび1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンである。
【0067】
ポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)および耐衝撃性改良PMMA(im−PMMA)およびPMMAまたはim−PMMAのブレンドの両方がポリメチル(メタ)アクリレートとして用いられうる。それらは、Roehm GmbHから商標名Plexiglasのもとで得られる。ポリメチル(メタ)アクリレートは、メタクリル酸およびその誘導体、例えばエステル、のポリマー、およびアクリル酸およびその誘導体のポリマー、および上記2種類の成分の混合物の両方を意味すると理解される。
【0068】
メチルメタクリレートモノマー含量少なくとも80wt.%、好ましくは少なくとも90wt.%、かつ要すれば別のビニル共重合性モノマー、例えばアクリル酸またはメタクリル酸のC−〜C−アルキルエステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレートおよびシクロヘキシルメタクリレート、更にスチレンおよびスチレン誘導体、例えばα−メチルスチレンまたはp−メチルスチレン、0wt.%〜20wt.%、好ましくは0wt.%〜10wt.%のポリメチル(メタ)アクリレートプラスチックが好ましい。別のモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸無水物、アクリル酸のヒドロキシエステルまたはメタクリル酸のヒドロキシエステルである。
【0069】
これらの熱可塑性樹脂は、更に、充填剤を、要すれば好ましくは30wt.%以下の量で含みうる。そのような充填剤は当業者に既知である。例えば、無機充填剤、例えば無機顔料、を用いてもよい。
【0070】
好適な無機顔料としては、例えば、酸化物、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化亜鉛および酸化クロム(III)、硫化物、例えば硫化亜鉛および硫化カドミウム、および塩、例えば硫酸バリウム、セレン化カドミウム、ウルトラマリンおよびチタン酸ニッケルクロム(nickel chromium titanate)が挙げられる。カーボネート、例えば炭酸カルシウムおよび炭酸バリウム、およびカーボンブラックが本発明との関連で同様に顔料として好適である。より特に好ましい着色顔料は硫酸バリウムである。これらの顔料は、本発明の組成物中に、組成物の重量に対して0.1〜30wt.%、好ましくは2〜15wt.%の量で組み込まれる。
【0071】
これらの熱可塑性樹脂は、更に、充填剤として、散乱顔料であって、当業者によく知られており、例えばWO−A 2007/045380に記述されているものを含みうる。
【0072】
これらの充填剤は、好ましくは、平均粒径0.01μm〜50μmで用いられる。
【0073】
少なくとも1種類の熱可塑性樹脂のフィルム片であって、本発明によって成形されるフィルム片は、少なくとも2種類の異なる熱可塑性樹脂の多層共押出フィルムであってもよい。この関連で、フィルムは、好ましくは:
(1)ビカー軟化温度B/50(TVicat1)の熱可塑性樹脂の少なくとも1つの上部層および
(2)熱可塑性樹脂の下の、ビカー軟化温度B/50(TVicat1)よりも高いビカー軟化温度B/50(TVicat2)の少なくとも1つの層
を備える積層を有する少なくとも2つの層の共押出フィルムである。
【0074】
多層共押出フィルムは、特に好ましくは少なくとも3層の、好ましくは:
(1)ビカー軟化温度B/50(TVicat1)の少なくとも1つの上部および下部の熱可塑性樹脂の層および
(2)ビカー軟化温度B/50(TVicat1)よりも高いビカー軟化温度B/50(TVicat2)の、好ましくは間の、少なくとも1つの熱可塑性樹脂の層
を備える積層を有する三層の共押出フィルムである。
【0075】
本発明による方法において、ビカー軟化温度B/50(TVicat1)の熱可塑性樹脂の共押出フィルムのサイドのフィルムセクションは、有利には、上記フィルム表面温度まで加熱される。サイドのフィルムセクションが加熱される温度は、好ましくはTVicat1とTVicat2との間である。
【0076】
上記共押出フィルムの代わりに、使用されるフィルムは、多層ラミネートコンポジットフィルム(以降、略してラミネートフィルムともいう。)であって、TVicat1およびTVicat2を有する少なくとも2種類の異なる熱可塑性樹脂の少なくとも2つの層が互いに積層されているものであってもよい。
【0077】
特に好ましい態様において、TVicat2の熱可塑性樹脂は、ポリカーボネートまたはコポリカーボネートであり、TVicat1の熱可塑性樹脂はポリ−もしくはコポリアクリレートまたはポリ−もしくはコポリメタクリレート、例えばポリメチルメタクリレートもしくはポリ(メタ)アクリレート、または少なくとも一種類のポリカーボネートもしくはコポリカーボネートと、テレフタル酸の少なくとも1種類の重縮合物もしくは共重縮合物と、のブレンドである。既に上で言及したポリ−もしくはコポリアクリレートまたはポリ−もしくはコポリメタクリレート、例えばポリメチルメタクリレートまたはポリ(メタ)アクリレート、または少なくとも1種類のポリカーボネートもしくはコポリカーボネートと、テレフタル酸の少なくとも1種類の重縮合物もしくは共重縮合物と、のブレンドがこれに可能である。TVicat2の熱可塑性樹脂に関する特に好ましいブレンドは、既に上で言及した組成物におけるポリカーボネートもしくはコポリカーボネートと重縮合物もしくは共重縮合物テレフタレートとのブレンドである。
【0078】
本発明による方法におけるそのような共押出フィルムまたはラミネートフィルムの使用は、上部層のビカー軟化温度よりも高い対応温度への比較的長い加熱でも、ビカー軟化温度が高い下のまたは中間の層のために、フィルム全体が可塑性にならず、かつ、フィルムそれ自体の重量のもとでの目に見えるたるみのリスクがより容易に避けられるかまたは低減されるという更なる利点を提供する。特に、少なくとも3層の共押出フィルムまたはラミネートフィルムを用いると、そのような共押出フィルムまたはラミネートフィルムのコアは、熱可塑性樹脂の間のビカー軟化温度B/50(TVicat2)の層という意味で、本発明による方法を行う場合、ビカー軟化温度(TVicat2)未満の温度において有利に残る。
【0079】
本発明による方法のより特に好ましい態様において、少なくとも以下の処理工程:
−片面または両面が少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または他の方法で被覆されており、かつ、ポリカーボネート(PC)、好ましくはジヒドロキシアリール化合物として2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)ベースのポリカーボネート、でつくられているフラットフィルム片であって、サイズ並びに印刷、金属化および/またはコーティングに関して製造される熱成形部品に一致する少なくとも1つのフィルムセクションを含むフラットフィルム片を提供する工程;
−このフィルム片を、フィルム片のエッジセクションのみがフレーム上に存在する規定の配置でフレーム上に載置する工程;
−フレーム上にこのように存在するフィルム片を加熱ゾーンに導入し、少なくともこのフィルムセクションをそこで所定の温度に加熱する工程;並びに
−次に、このように加熱されたフィルム片を迅速に成形ゾーンに導入し、そこですぐに直接20barよりも大きい流体圧手段を加え、5秒未満の時間内で平衡に成形して所望の熱成形部品を生じる工程
を包含する、少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または他の方法で被覆された熱成形フィルム部品の製造方法であって、
そのような加熱を、フィルムセクション全体の少なくとも片側またはフィルムセクションの主要部分の少なくとも片側がビカー軟化温度B/50より20〜65℃、好ましくは30〜60℃、特に好ましくは35〜60℃高い範囲、より特に好ましくは180〜200℃のフィルム表面温度を有するように行う
ことを特徴とする、少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または他の方法で被覆された熱成形フィルム部品の製造方法である。
【0080】
本発明との関連で、フィルムセクション全体の片側のみまたはフィルムセクションの主要部分の片側のみを上記範囲内のフィルム表面温度に加熱することが十分である。他の、フィルムセクション全体の反対側またはフィルムセクションの主要部分の反対側を低いフィルム表面温度、例えば最高で約10℃低いフィルム表面温度、に維持してもよい。
【0081】
好ましくは、本発明による方法において、そのような加熱は、フィルムセクション全体の両側またはフィルムセクションの主要部分の両側がビカー軟化温度B/50よりも10〜65℃高い範囲のフィルム表面温度を有するように行われる。
【0082】
表面加熱を用いて、例えば温風を用いてまたは放射ヒーターを用いて、この加熱を行うと、言及された範囲内のフィルム表面温度に到達しても、フィルム片のコア領域はこのフィルム表面温度よりも低いコア領域温度を有し、このコア領域温度は、このフィルム表面温度よりも好ましくは最高でも約30℃、好ましくは最高でも20℃低い。
【0083】
コア領域は、好ましくはフィルム断面の約60〜80%を構成するか、または3層共押出フィルムの場合、好ましくは中間層の領域を構成する。
【0084】
フィルム表面温度に関する前記記述は、下記明細書および特許請求の範囲における下記フィルム表面温度に関する情報にもあてはまる。
【0085】
上記範囲よりも低いフィルム表面温度(ポリカーボネートを使用する本発明による方法のより特に好ましい態様において180℃未満)へしか加熱を行わないと、単層フィルム部品の寸法安定性を損なう復元力およびストレスが熱成形フィルム部品内に起こり続けうる。他方、フィルムセクション全体を上記範囲よりも十分に高いフィルム表面温度(ポリカーボネートを使用する本発明によるより特に好ましい態様において200℃以上)に加熱すると、複製精度を脅かす局所フロープロセスが起こりうる。
【0086】
好ましくは、ポリカーボネートを使用する本発明による方法のより特に好ましい態様において、フィルムセクション全体またはフィルムセクションの主要部分を185℃〜195℃の範囲のフィルム表面温度に加熱する。ここでは約190℃のフィルム表面温度が特に好ましい。約190℃のフィルム表面温度が典型的な市販のPCフィルム、好ましくはビスフェノールAベースのPCフィルム、に十分であり、良好な結果をもたらす。
【0087】
ポリメチルメタクリレートまたはポリ(メタ)アクリレート(PMMA)のフィルム片を使用する本発明による方法の更により特に好ましい態様の場合、ビカー軟化温度B/50よりも20〜65℃、好ましくは25〜50℃高い範囲のフィルム表面温度、より特に好ましくは130〜150℃が想定される。PMMAフィルム片をこの場合130℃未満のフィルム表面温度にしか加熱しないと、PMMAの単層フィルム部品の寸法安定性を損なう復元力およびストレスが熱成形フィルム部品に生じ続けうる。他方、フィルムセクション全体を150℃よりも十分高いフィルム表面温度に加熱すると、複製精度を脅かす局所フロープロセスがすぐに起こりうる。PMMA材料のフィルムセクションは、好ましくは135℃〜145℃の範囲のフィルム表面温度に加熱される。ここでは約140℃のフィルム表面温度が特に好ましい。約140℃のフィルム表面温度が典型的な常套のPMMAフィルムに十分であり、良好な結果をもたらす。
【0088】
本発明による方法の有利な態様および別の開発は、下位請求項から現れ、かつ/または、上記および下記に記述されている。
【0089】
本願願書に名前が挙げられている発明者は、上記目的を達成するために幅広い調査および実験を行った。これらの間に下記のことがわかった。既知のHPFプロセスによって熱成形されるフィルム部品に起こる復元力は、押出によるフィルムの製造中および次のカレンダリング中に生じる内部ストレスベースであり、これは軟化温度未満で行われる後の高圧成形中に十分低減も相殺もされない。発明者は、フレーム上に保持されたフラットな、非印刷300μm厚PCフィルム(BAYER MATERIALSCIENCE AG製のMakrolon(登録商標)からのMakrofol(登録商標))を145℃のビカー軟化温度B/50よりも高い温度に徐々に加熱した。熱探知カメラを用いるフィルム表面温度によってフィルム温度を測定した。それぞれランニング方向および横断方向の領域の増加が長手方向の直線熱膨張係数(約70×10−6−1)に従って起こる。約170℃のフィルム表面温度において、予めフラットなフィルムが目に見えてうねる。これは恐らく予め製造プロセスによって生じた凍結機械的応力を放出し、フィルムを変形するためである。更なる加熱中、この波形は消える。約190℃のフィルム表面温度に到達すると、フィルムはフラットにのび、明らかにフレーム上でストレスフリーになる。フィルム全体は未だプラスチックフローを示さず、フレームによって支持されていない中央が目に見えてたるまない。この状態は少なくとも約4〜5秒間変わらずに維持される。しかしながら、フィルムを約190℃のこのフィルム表面温度で約10秒以上保持すると、フィルムはそれ自体の重量のもとでフレームによって支持されていない中央が目に見えてたるみ始める。コア領域も明らかにこの温度に加熱され、可塑性になり始める。放射ヒーターを用いる迅速な加熱中に約220℃のフィルム表面温度に到達すると、フィルムはフレームによって支持されていない中央が目に見えてたるみ始める。フロー転移領域(flow transition region)に明らかに到達し、もとのフィルムの構造および形態がもはや保持されない程度に引裂強さが低減する。フロー転移領域の温度において、機械的強度(例えばフィルム材料の剪断弾性率Gによって決定される。)は迅速に低下し、非常に高圧の成形または高圧成形またはHPFプロセスは、フィルム材料の十分な強度の不足のために、もはや可能でない。
【0090】
このことから以下のことになる。既知の高圧成形またはHPFプロセスは、明らかに、予め仮定されるよりもかなり高いフィルム温度において、すなわち特定のフィルム材料のビカー軟化温度B/50よりも十分高いフィルム表面温度において、行われうる。本発明によって想定されるフィルム表面温度におけるフィルムの滞留時間をできるだけ短くすること、すなわち、一旦本発明によって想定されるフィルム表面温度に到達すると、フィルムを10秒未満、好ましくは5秒未満、特に好ましくは2秒未満の時間内で成形ゾーンに入れ、そこですぐに急激に成形を行うことが好都合であるようである。結果として、放射ヒーターを備える加熱ゾーンにおける加熱中、想定フィルム表面温度を超えるフィルムセクションの加熱を妨げ、フィルムのコア領域を本発明によって想定されるこのフィルム表面温度よりも低いコア領域温度のままにする。このことは、次の成形中のフィルム表面におけるあらゆるグラフィック、機能的かつ/または装飾的デザインの複製精度を改良する。
【0091】
本発明による方法を、これらの結果に基づいて開発した。本発明による方法のより特に好ましい態様において、市販のPCのフィルム、例えば、さまざまなMakrofol(登録商標)系のもの、好ましくは、ジヒドロキシアリール化合物として2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(ビスフェノールA)ベースのもの、を好ましくはビカー軟化温度B/50よりも20〜65℃、好ましくは30〜60℃、特に好ましくは35〜60℃上の範囲、より特に好ましくは180℃〜200℃のフィルム表面温度に加熱する。個々のフィルム片セグメントを、このフィルム表面温度を少なくとも3℃超え、10℃よりも多く超えない上昇温度に更に加熱し、かつ、HPFプロセスの条件下でこのフィルム温度で成形することも可能である。
【0092】
復元力がない寸法安定熱成形フィルム部品がこの手段によって得られる。これらの製品は、更に強化されない単層形態でまたは背面に射出成形された成形物品の形態で、例えばディスプレイおよび計器カバーとして、使用される。
【0093】
同様にして、本発明による方法の別の特に特に好ましい態様において、市販のPMMAのフィルム、例えば様々なタイプのPlexiglas(登録商標)フィルムおよび他のPMMA系のものからのフィルム、をビカー軟化温度B/50よりも20〜65℃、好ましくは25〜50℃上の範囲のフィルム表面温度、より特に好ましくは130℃〜150℃に加熱する。個々のフィルム片セグメントを、このフィルム表面温度を少なくとも3℃超え、10℃よりも多く超えない上昇温度に更に加熱し、このフィルム温度でHPFプロセスの条件下において成形することも可能である。復元力がない寸法安定熱成形フィルム部品がこの方法によって得られる。これらの製品は、更に強化されない単層形態または背面に射出成形された成形物品の形態で、例えばディスプレイおよび計器カバーとして、使用されうる。
【0094】
本発明による方法を下記により詳細に説明する。
【0095】
既知の市販のPCフィルムが熱成形フィルム部品の本発明による製造用のポリカーボネート(PC)として可能である。これらは典型的には、炭酸と芳香族ジヒドロキシ成分、特にビスフェノールAベースのものおよびそれらの誘導体ベースのもの、とのポリエステルである。ここでは、(BAYER MATERIALSCIENCE AG製のMakrolon(登録商標)の)選択Makrofol(登録商標)フィルムが特に好適である。ビスフェノールAベースのMakrolon(登録商標)のガラス転移温度は145℃であり、ビカー軟化温度B/50(50N;50℃/時間;ISO 306に従う。)は約144〜146℃であり、0.45MPaの荷重の下での加熱撓み温度(ISO 75−1、−2に従う。)は約137℃である。Makrofol(登録商標)フィルムMakrofol(登録商標)DE(この場合、好ましくは片側がマットである。)およびディフューザーフィルムMakrofol(登録商標)BLが本発明による方法のより特に好ましい態様における使用に特に好適である。
【0096】
これらのフィルムは、典型的には、100μm〜2,000μmの厚さで、好ましくは125μm〜750μmの厚さで、特に好ましくは125〜600μmの厚さで、より特に好ましくは200〜500μmの厚さで用いられる。
【0097】
既知の市販のPMMAのフィルムおよび変性PMMAのフィルム、特に耐衝撃性改良PMMA系[ポリ(メタ)アクリレート]のもの、が本発明による方法の別のより特に好ましい形態における熱成形フィルム部品の本発明による製造用のポリメチルメタクリレートまたはポリ(メタ)アクリレート(PMMA)として可能である。押出ロールPlexiglas(登録商標)フィルム(ドイツ国ダルムシュタッドのRoehm GmbH & Co.KGの商標)であって、商標名Plexiglas(登録商標)XT(XTは押出を表す。)のもとで市販されているものがここで特に好適である。Plexiglas(登録商標)XTのガラス転移温度は110℃であり、ビカー軟化温度B/50(ISO 306による)は103℃であり、かつ、0.45MPaの負荷のもとでの加熱撓み温度B(ISO 75 HDT/Bによる。)は100℃である。Plexiglas(登録商標)フィルムPlexiglas(登録商標)フィルム99524およびPlexiglas(登録商標)フィルム99526が本発明による方法における使用に特に好適である。
【0098】
メチルメタクリレート80〜99.9wt.%および別のコモノマー0.1〜20wt.%を含有するポリ(メタ)アクリレートが、例えば耐衝撃性改良PMMAのPMMAフィルムに可能である。好適なコモノマーは、例えば、メタクリル酸のエステル(例えば、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート)、アクリル酸のエステル(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート)またはスチレンおよびスチレン誘導体、例えばα−メチルスチレンもしくはp−メチルスチレン、である。ポリメタクリレートプラスチック用の耐衝撃性改良剤は、十分に既知である。架橋シングル−またはマルチ−シェルエマルジョンポリマーであって、例えば架橋ポリブチルアセテートを含有するもの、がポリ(メタ)アクリレート用の耐衝撃性改良剤として用いられうる。そのような耐衝撃性改良PMMAフィルムもまた市販されている。
【0099】
これらのPMMAフィルムもまた、典型的には、100μm〜2,000μmの厚さの範囲で、好ましくは125μm〜600μmの厚さの範囲で、特に好ましくは200μm〜500μmの厚さの範囲で用いられる。
【0100】
寸法安定熱成形フィルム部品が本発明による方法によって単層フィルムから既に得られるので、上記タイプの単層フィルムが好ましく用いられる。ここで、「単層」は、単にフィルムまたはフィルムボディに関するだけであり、適用される他の材料の追加の層や付着物は含まない。「単層」は、更に、上記多層共押出フィルムであって、このプロセスにおいて1つの層として製造され、用いられる多層押出フィルム、およびラミネートフィルムであって、このプロセスにおいて同様に「単層」という意味で完全フィルムとして用いられるフィルムも含む。従って、「単層フィルム」は、印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆されていてもよい。ここで、他の方法での被覆は、更に、これに限定するわけではないが、例えば接着および/またはラミネーションによる少なくとも1つの別の層の適用も含む。少なくとも1つのそのような接着および/またはラミネーションによって適用される別の層は更に非熱可塑性材料の層であってもよい。これらの単層フィルムは、本発明による高圧成形が高いフィルム表面温度において行われる前に少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または他の方法で被覆されている。更に、高いフィルム表面温度における本発明による高圧成形を行う前に、これらのフィルムは、例えば変形性保護層、例えば変形性耐引掻き性コーティング、または変形性触覚効果層(deformable haptic effect layer)、例えば変形性の手触りが柔らかいコーティング(EP−A 1647399参照)、で被覆されていてもよい。
【0101】
本発明によって得られる3次元成形熱成形部品は、例えば、グラフィック、機能的かつ/または装飾的デザインであって、所定のレイアウトに従い、典型的に透明フィルムの背面にバックグラウンド(background)として、例えば印刷、金属化および/または別のコーティングとして、適用され、フィルム層を通じて知覚されうるグラフィック、機能的かつ/または装飾的デザインを備える。従って、好ましくは、透明フィルム材料が用いられる。透明フィルムは、更に、この印刷、金属化および/または別のコーティングに対向する表面に、表面艶消しまたは拡散ラッカー層を備えてもよい。
【0102】
本発明による方法は、計器およびそこに提供される表示装置用に自動車のダッシュボード上に提供される固定目盛り、目盛分割および表示手段、および別の記号、イメージおよび絵文字であって必要とされる場合に入射光もしくは通過して輝く光によって点灯され、このようにして視覚的に知覚可能な表示をもたらすものの製造に特に好適である。これらの計器としては、乗物速度表示装置、またはタコメーターが挙げられ、その表示エレメントはしばしば速度を表示する番号が割り当てられている目盛り等級付けマークを有する浮き出した環状配置を有する。中央に配置される回転針は、そのときの乗物の速度のもとで特定の目盛り等級付けマークの方向を向き、このようにして割り当て番号を用いてそのときの乗物の速度(km/時間またはmph)を表示する。この環状の目盛盤のような配置のために、タコスクリーンに関してもここで言及する。エンジンの回転速度を表示するための表示エレメントは同じように構成される。ここでは1分あたりの数×100の表示が典型的に与えられる。浮き出した半円の環構造を有する同様の構成の表示手段が、タンクレベルおよび機関部の油圧を表す役割を果たす。浮き出した環状構造の代わりに、これらの表示エレメントは環状フラットセグメント上に載置されていてもよく、これらは(160°以上の大きなテーパー角の)テーパー形態の主面から離れている。加えて、浮き出した金属化バーおよび別の装飾エレメントがしばしば想定される。本発明によって製造される一例としての製品は、組み合わせ計器が想定され、ナビゲーションディスプレイ用中央透明セクション、この右側のタコスクリーンおよびこの左側の回転数ディスプレイを有する。
【0103】
これらの表示エレメントに属する目盛り等級付けマーク、数字、文字、記号、画像、絵文字などを、最初にフラットなフィルムの片面に適用する(これは例えば多段階スクリーン印刷プロセスにおいて、かつ/または、コーティングであって、いくつかの逐次工程において、それぞれ液体層において適用されるコーティングの適用によってもたらされる。)。例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、転写印刷またはデジタル印刷がこの代わりの適用に利用可能である。所定のレイアウトに従うこの印刷は、好ましくはスクリーン印刷によって適用される。多段階スクリーン印刷プロセスにおいて、多くの場合、後で見えるようになる目盛り等級付けマーク、数字、文字、記号、画像、絵文字などがネガティブ印刷でブランクのままにされる黒色層を最初に適用し、これらのブランクの領域を後の印刷工程で異なる色の層で裏打ちする。
【0104】
ポリカーボネートまたはポリエステル−ポリウレタンベースの着色ラッカーは、しばしば、これらの着色層の適用に役立つ。ここで想定される非常に高い圧力のプロセスの条件、および、適切であれば次のインサート成形に明確に耐えるプラスチックの印刷フィルム用の耐熱性の高い可撓性印刷インクは、例えば、文献DE 198 32 570 C2に開示されている。文献DE 101 51 281 A1は、PMMAフィルムのスクリーン印刷に特に好適であり、かつ、非常に高圧の成形および可能であれば次のインサート成形の条件に耐える着色ラッカーを開示している。これらの使用に特に好適な液体スクリーン印刷プロセスは、例えば、ドイツ国91781ワイセンブルクのPROELL KGによって商業的に取引されている。
【0105】
金属の厚い層および金属化を同様にスクリーン印刷法によって適用してもよい。一方で金属光沢を付与し、他方で光に対して透明である層厚5nm〜250nm、特に15nm〜60nmの金属の薄い層を、物理蒸着法(PVD)もしくは化学蒸着法(CVD)を用いるか、または、これらの方法の好適な組み合わせを用いて適用してもよい。ある機能(例えば電気的接触)を生じるのに望ましくないかまたはあるグラフィックもしくは装飾的デザインパターンに望ましくない金属層の過剰セクションをレーザー処理によって除去してもよい。ここで好適な金属としては、例えば、アルミニウム、チタン、クロム、銅、金、銀、モリブデン、インジウムおよびイリジウム、および合金、例えばインジウム、錫もしくは銅の合金、好ましくはインジウム−錫合金、特に好ましくはインジウム−錫−銅合金が挙げられる(例えばUS−A 2008/0020210参照。)。
【0106】
1種類以上のエレクトロルミネッセント化合物の少なくとも1つの別の層を更に金属層に適用してもよい。そのようなエレクトロルミネッセント化合物は当業者に既知である(例えば、EP−A 1 647 399参照。)。例えば、銀または銅でドープされた硫化亜鉛がエレクトロルミネッセント化合物として用いられうる。
【0107】
あらゆる液晶ディスプレイのディスプレイが後で見える透明セクションもまた成形されるフィルム片に残りうる。多くの場合、艶消し非反射面を完成品に付与する無色構造化ラッカーを、着色層に対向する他の面に適用する。意図される使用に想定される熱成形部品の特定の配置に依存して、構造化ラッカー層は、−見る人の視界に一致して−熱成形部品の正面にあり、グラフィックデザインの着色層は熱成形部品の裏面にある。
【0108】
本発明による方法の好ましい態様は、タコスクリーンおよび/または回転計スクリーン(revolution counter screens)であって、上記のグラフィック、機能的かつ要すれば装飾的態様を有するものの製造に関する。そのようなタコスクリーンまたは回転計スクリーンの製造に関して、タコスクリーンまたは回転計スクリーン用に所定のレイアウトに従って印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆された透明フィルム片を提供し、本発明に従って熱成形する。
【0109】
片面に上記の多層グラフィック、機能的かつ/または装飾的デザインが提供されており、かつ、他方の面に無色構造化ラッカーの層を有するフラットフィルムを、本発明による方法を用いて成形して、永久的に3次元成形された寸法安定熱成形部品を生じる。ここで、そのような熱成形部品の顧客は、完成熱成形部品におけるグラフィック、機能的、かつ/または装飾的デザインの非常に正確な位置決めを要求する。もともとフラットなフィルム上のこのデザインと完成熱成形部品上の対応デザインとの間のずれは、好ましくは±0.1mm以下である。
【0110】
上記少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆されたフィルムを、本発明による方法において所定のサイズに切断された個々のフィルム片の形態で用いる。そのような好ましくは方形の、比較的小さなフィルム片に、例えば長さ160mm〜450mmかつ幅160mm〜305mmの寸法、が想定される。この領域のフィルム片は、市販の装置(例えばドイツ国82377ペンツベルクのHDVF KUNSTSTOFFMASCHINEN GMBH)を用いて特に容易に加工されて、ここで意図されている熱成形フィルム片を生じうる。より大きなフィルム片は、典型的には、長さが最大1,200mm以下であり、かつ、幅が最大700mm以下である。
【0111】
完成熱成形部品のサイズおよび利用可能な製造マシーンに依存して、マルチプルユース作業手順(multiple−use working procedure)が想定される。高品質タコスクリーンおよび同様のディスプレイカバーに関して、ワンユース(one−use)フィルムサイズが好ましく使用される。なぜなら、ワンユース作業手順で高い複製精度が達成されるからである。
【0112】
本発明による方法に関して、フラットフィルム片を、規定の配置でフレーム状支持体、フレーム状パレットなど(これは、以下、略してフレームという。)に載置する。クロスピース(crosspiece)の幅が50mm〜100mmのフレームが特に好適である。フィルム片のエッジセクションは、フレームを生じるこれらのクロスピース上に典型的には幅20mm〜30mmで存在する。クロスピースから突き出し、かつ、フィルム片のエッジセクションにつくられる伸長孔と係合する円形位置決めピンが所定の配置を確実にする。伸長孔は、本発明によって想定されるフィルム表面温度への加熱中、フィルム片の面積の増加を考慮する。
【0113】
そのようなフレーム上に保持されているフィルム片を加熱ゾーンに導入し、そこでフィルム表面温度に加熱する。常套かつ既知の加熱手段、例えば、熱源として温風または加熱液体もしくは温浴を用いる対流加熱、または放射化熱、例えば赤外線放射もしくは石英ヒーターを用いるもの、がこの加熱に想定されうる。非接触加熱用加熱手段が本発明との関連で好ましく、赤外線放射を用いる放射化熱が特に好ましい。高周波数加熱はあまり望ましくない。なぜなら、この場合、コア領域も表面温度に加熱されるからである。互いに所定の距離で配置され、かつ、互いに整列された同じ面積の2つの水平に整列された加熱場を有する加熱ゾーンが好ましく想定される。フレーム上に保持されているフィルム片を、2つの加熱場の間の中央に2つの加熱場から同じ距離で所定の時間保持する。それぞれの加熱場は、典型的には、互いに整列されたフレームとフィルム片の配置よりも面積が大きい。例えば、寸法486mm×455mmの加熱場が寸法450mm×250mmのフィルム片に関して想定されるので、フレーム上に存在しないフレーム内のフィルムセクションのエッジ領域もまた確実に想定フィルム表面温度に加熱される。
【0114】
それぞれの加熱場が、多数の隣接赤外線表面ヒーターまたは石英ヒーターであって、個々に活性化されるものを備える。好ましく想定されるフィルムセクション上の個々のフィルム片セグメントの選択加熱(これは、下記により詳細に説明する。)を行うことができるように、可能な限り小さいフォーマットの赤外線表面ヒーターまたは石英ヒーターが好ましく使用される。ここでは、例えば、入力125Wで表面温度約300℃を呈する寸法60mm×60mmの固体セラミックヒーターが特に好適である。このタイプの赤外線表面ヒーターは、例えば、ドイツ国58708メンデンのFRIEDRICH FREEK GMBHによって市販されている。
【0115】
一方の加熱面と、反対側に位置する他方の加熱面と、の間の距離は、典型的には約50mm〜100mmが想定される。この結果として、赤外線表面ヒーターまたは石英ヒーターに隣接する特定の隣接エッジ領域から放射熱の発生が達成される。表面ヒーターの効果の限界を最小化し、均一温度分布をフィルム表面上に達成する。
【0116】
フィルム供給方向に7列のこのタイプの固体セラミックヒーターの配置および横断方向に6列のこのタイプの固体セラミックヒーターの配置を有する加熱場が本発明による方法に特に好適であり、かつ、好ましく想定される。
【0117】
平均加熱場表面温度を約300℃に保持する。従って、フィルム表面温度の大雑把な制御は、加熱ゾーンにおける所定のフィルム片の滞留時間によって行われる。加熱されるフィルム片は典型的には、層厚に依存してそのような加熱ゾーン中に約4秒〜12秒間保持される。例えば、周囲温度(約20℃)の厚さ300μmのPCフィルム片は、上記タイプの加熱ゾーン中で約6秒の時間内で本発明によって想定されるフィルム表面温度約190℃まで加熱される。
【0118】
このタイプのそれぞれの赤外線表面ヒーターまたは石英ヒーターは、個々に活性化されうる。活性化は電気入力による。高い入力は所定の赤外線表面ヒーターまたは石英ヒーターに高い表面温度を生じる。従って、それぞれ特定の赤外線表面ヒーターまたは石英ヒーターに割り当てられる個々のフィルム片セグメントの表面における温度分布の細かい制御もまた、個々の赤外線表面ヒーターまたは石英ヒーターの入力を制御することによってなされる。この細かい制御の効果は平均表面温度が低ければ低いほど良好である。従って、フィルム片の加熱は、互いに整列している2つの加熱場によって画定され、それぞれ平均加熱場表面温度が約300℃であるような加熱ゾーン中で本発明に従って行われる。
【0119】
最適な結果を達成するために、本発明による方法は、フィルムセクションにおけるフィルム表面温度の比較的正確な制御および監視を必要とする。従って、本発明による方法の更に好ましい態様によると、加熱ゾーン中で加熱されたフィルムセクションの表面温度の記録が想定される。
【0120】
本発明による方法のこの更に好ましい態様は、個々に活性化される多数の赤外線表面ヒーターまたは石英ヒーターで構成される少なくとも1つの加熱場から所定の距離において所定の時間にわたって加熱するために、フィルム片が加熱ゾーン中に保持され、かつ、加熱ゾーンから成形ゾーンまでの途中で、このように加熱されるフィルム片が温度測定ステーションを通過し、温度測定ステーション中で、熱探知カメラを用いてフィルム表面上の温度分布をスキャンし、見えるようにし、かつ/または他の方法で示すことを特徴とする。
【0121】
更に、
−温度分布からわかるフィルムセクション上の温度差を最小化し、
−主要フィルムセクションの少なくとも片側を特定のフィルム材料に関する上記範囲のフィルム表面温度まで加熱し、
−要すれば、このフィルム表面温度を少なくとも3℃超え、10℃よりも大きく超えない高い温度に個々の選択フィルム片セグメントを加熱する
ためにそれぞれ個々の赤外線表面ヒーターまたは石英ヒーターを個々に活性化するための選択的加熱を行ってもよい。
【0122】
下記利点が本発明による方法のこの態様で達成される:
【0123】
このタイプのセラミック赤外線ヒーターは2.5〜10μmの波長領域の放射熱を放出する。フィルムの加熱は、この波長領域の吸収能および反射特性に依存する。特に、印刷、金属化および/または他のコーティングであって、ここで検討中のフィルムセクション上にあり、かつ、後の意図される使用を決定する印刷、金属化および/または他のコーティングがこの吸収能およびこれらの反射特性に影響を及ぼす。暗色から黒色のコーティングセクションは、そこでの熱の吸収を増大させる。フィルムセクションにおける透明ウィンドウまたは明色コーティングセクションは熱の吸収を低減させる。金属コーティング、ここでは例えばAl、TiまたはCr、が特に熱の吸収を大きく低減させる。従って、所定の配置において所定の赤外線表面ヒーターで達成されるフィルム表面温度もまたフィルムセクションの印刷、金属化および/または他の方法のコーティングの性質およびサイズに依存する。従って、フィルム温度の正確な制御および監視のために、フィルム表面の温度を記録し、かつ、示すことが望ましい。これは、この好ましい作業手順で達成される。
【0124】
所定の熱成形部品、例えばタコが右側に配置され、回転計が左側に配置され、かつ、ナビゲーションディスプレイが中央に配置される計器カバー、に関して、フィルムセクションの様々なセグメントを様々な程度に成形しなければならない。典型的には、程度の高い幾何学的成形は、特定のフィルム片セグメントの高い可撓化を要求し、これは問題となっているフィルム片セグメント、この例においては、例えば、タコおよび回転計の部分的な外部領域、の局所的に高い加熱で達成される。ほとんど成形を行わない中央領域、例えばナビゲーションディスプレイ、において、収縮特性を低い加熱によって低減させ、それによって、ディスプレイ全体の許容度を改良する。エッジのシャープな輪郭の的確なキャスティングおよび/または細かいエンボスおよび彫刻の正確に合う複製(これは任意に小さな突破口と共に提供されてもよい。)は、所定のフィルム片セグメントの、周囲のフィルム材料と比較して高い可撓化によって可能にされる。従って、個々のフィルム片セグメントの局所的に異なる程度の成形は、更に、個々のフィルム片セグメントの局所的に異なる加熱も要求し、これは個々のフィルム片セグメントの表面温度の記録およびこれらのフィルム片セグメントを精密に加熱する赤外線表面ヒーターの対応活性化によって確実にされる。
【0125】
最後に、様々な個々の赤外線表面ヒーターにおける適切な活性化および異なる加熱温度の調節によって、フィルムセクション上の印刷パターンまたはレイアウトの「シフティング」が達成されうる。通常の均一フィルム表面温度よりもやや高い温度に加熱されたそのようなフィルム片セグメントにおいて、通常の均一フィルム表面温度にしか加熱されていないフィルム片セグメントと比較して大きな長手伸長を行う。より伸長されるサイド(高温へのヒーターであるので。)は印刷パターンまたはレイアウトをサイドであって、より冷たいため、あまり伸長されていないサイドにシフトさせる。このようにして、圧に関連する位置のずれ0.1mm〜1.5mmは成形プロセス中に未だ修正されうる。この手段は、更に、個々のフィルム片セグメントを通常の均一フィルム表面温度よりも高い温度に加熱する赤外線表面ヒーターを標的化された方法で活性化ことができるように、加熱フィルムセクションの表面における温度分布の的確な知識も要求する。
【0126】
本発明による方法の別の態様によると、個々のフィルム片セグメントの通常の均一フィルム表面温度よりも明らかに高い温度への加熱は、従って、フィルム材料の高い可撓化を達成する選択フィルム片セグメントにおいて行われる。特に、もともとフラットなフィルムの特に高い度合いの成形を行うフィルム片セグメントがここで選択される。
【0127】
この高い可撓化は、更に、エッジのシャープな輪郭の的確なキャスティングおよび/または特に細かく分けられたエンボスおよび/もしくは彫刻の精密に合う複製および圧力に関連する位置のずれの修正にも望ましい。この場合、フィルム片セグメントであって、エッジのシャープな輪郭の的確なキャスティング、正確に合う複製、特に細かく分けられたエンボスおよび/もしくは彫刻の正確に合う複製、および圧力に関連した位置のずれの修正を達成するフィルム片セグメントを、高い温度への加熱のために選択する。
【0128】
ここで可能なビカー軟化温度B/50よりも10〜65℃高い範囲の温度、ポリメチルメタクリレートまたはポリ(メタ)アクリレート(PMMA)の熱成形部品に関して約140℃、ポリカーボネート(PC)の熱成形部品に関して約190℃の範囲の特に好ましい態様を考慮して、0℃〜400℃の温度範囲にデザインされており、8μm〜14μmの波長範囲の放射熱を記録し、評価する赤外線輝線カメラが典型的に熱探知カメラとして可能である。ラインセンサーであって、例えば128または256の測定エレメントを有するラインセンサーを用いて放射熱を記録する。適切な評価回路および評価ソフトウェアを有するこのタイプの赤外線輝線カメラは市販されている。本発明との関連で、ドイツ国01217ドレスデンのDIAS INFRARED GMBHによって商標名INFRALINE(登録商標)のもとで市販されている赤外線カメラがここで特に好適であることが証明された。
【0129】
赤外線カメラINFRALINE(登録商標)は、固定物品および移動物品における温度分布の、非接触、定量的かつほぼ距離に無関係な記録に役立つ。それは産業環境における安定使用のために開発され、マシーンおよび設備上での自動化されたプロセス監視および制御および測定データの処理に関するシステムの解決策に用いられうる。
【0130】
このカメラは、必要なアセンブリの操作用のカメラヘッドを備える。一般的に、監視されるプロセスまたは監視される物体に近い位置に取り付けられるので、カメラは操作エレメントを有さない。制御、監視および測定値の転送のためにデータインターフェースをカメラに組み込む。プログラミングおよび測定値のデータ獲得はPCとの組み合わせで行われる。
【0131】
MICROSOFT INC.によって供給される既知の可視化ソフトウェアPYROSOFT(登録商標)(これはMS Windowsオペレーティングシステムを有するPC上で作動する。)が測定データの表示および評価に好都合に使用される。測定される温度は、着色コードおよび/または数値データによって1/10°Kの精度で示される。
【0132】
このようにしてもたらされる実際の加熱フィルム表面、好ましくはフィルム下部、の「本当の」温度分布に関する情報によって、赤外線表面ヒーターであって、フィルム片セグメントを、−例えばそこに配置されている印刷、金属化および/または他のコーティングの特性のために−想定フィルム表面温度に到達しない限り加熱するか、または他の選択フィルム片セグメントを加熱し、それによってフィルム材料の可撓化の増加を達成し、従って、通常の均一フィルム表面温度よりも高い温度まで加熱する赤外線表面ヒーターを、標的化した方法で高い電気入力で活性化する。
【0133】
上記2つの加熱場の場合、それらのそれぞれが互いに整列した42個の赤外線表面ヒーターから作り上げられており、このPYROSOFT(登録商標)ソフトウェアは、例えばモニター上のウィンドウまたはフィールドが互いに整列した赤外線表面ヒーターのそれぞれの対に割り当てられるようにプログラムされ、かつ、評価される。従って、フィルム片全体は42個のフィルム片セグメントに分割され、特定のフィルム片セグメントは実質的に特定の割り当てられた対の赤外線表面ヒーターによって加熱される。モニター上の特定のウィンドウにおけるカラーコードおよび/または対応の温度数値は、割り当てフィルム片セグメントの表面温度を示し、修正が必要とされる場合、特定のフィルム片セグメントに割り当てられる赤外線表面ヒーターのこの対の1つの赤外線表面ヒーターもしくは2つの赤外線表面ヒーターに供給される電力を変更しうる。
【0134】
製造される熱成形フィルム片の性質および特性に依存して、本発明によって想定されるフィルムセクションの選択加熱を、選択フィルム片セグメントまたはいくつかの選択フィルム片セグメントが特定のフィルム材料に関してフィルム表面温度を少なくとも3℃超え、10℃よりも多く超えない上昇温度に加熱されるように行ってもよい。
【0135】
本発明との関連で、全フィルム片セグメントの20%以下が特定のフィルム材料に関して想定されるフィルム表面温度を少なくとも3℃超え、10℃よりも多く超えない上昇温度に加熱されることが典型的に想定される。
【0136】
所定のタイプの全ての熱成形部品の製造に関する製造プロセス全体の間に処理工程「フィルム表面上の温度分布の測定および評価」を行うことは必要ではない。多くの場合、これらの熱成形部品の一定の均一な品質を確実にし、保証するために、製造を始めるときにこの処理工程を行い、次に規則的な間隔で繰り返すかまたは所定の数の熱成形部品の製造後に繰り返すと十分である。
【0137】
結果として、本発明との関連で、多数の同一タイプの熱成形フィルム部品の製造に関する本発明による方法の態様であって、このタイプの全ての熱成形フィルム部品のいくつかの製造中にのみフィルム表面上の温度分布の測定および評価の処理工程を行い、このタイプの熱成形フィルム部品の残りの部分の製造中にこの処理工程を行わない多数の同一タイプの熱成形フィルム部品の製造に関する本発明による方法の態様もまた想定される。多くの場合、この処理工程を、所定のタイプの熱成形フィルム部品全体の少なくとも20%の製造中に行いさえすれば十分である。
【0138】
本発明によって想定されるフィルム表面温度に到達した後、フィルム片の顕著な冷却を行わずにフィルム片を加熱ゾーンから成形ゾーンに迅速に移す。好ましくは、特定の想定フィルム表面温度への加熱後に、フィルム片を2秒未満の時間内で成形ゾーンにすぐに移し、そこですぐにかつ急激に成形する。ここで2つの目的が遂行され、達成される。一方では、圧力手段の高い圧力のもとで行われるこの急激な成形中に、フィルムセクションの少なくとも片側が本発明によって想定されるフィルム表面温度を本質的に未だ有するべきである。他方では、この急激な成形中にフィルムセクションのコア領域がこのフィルム表面温度よりも低いコア領域温度を有すると有利である。好ましくは、この急激な成形中、コア領域温度は、特定のフィルム表面温度よりも少なくとも10℃低い。更により好ましくは、特定の想定フィルム表面温度への加熱後に、フィルム片をすぐに成形ゾーンに5秒未満、特に好ましくは2秒未満、より特に好ましくは1秒未満の時間内で移し、そこですぐに急激に成形する。急激な成形中の複製精度の改良はこのようにして達成されうる。
【0139】
加熱フィルム片が加熱ゾーンから成形ゾーンまでの途中で温度測定ステーションを通過し、この手順の間、熱探知カメラを用いてフィルム表面の温度分布をスキャンし、見えるようにし、かつ/または他の方法で示しても、特定の想定フィルム表面温度への加熱後、フィルム片を成形ゾーンにすぐに、好ましくは5秒未満、特に好ましくは2秒未満、より特に好ましくは1秒未満の時間内で移し、そこですぐに急激に成形する。
【0140】
成形ゾーン中で、このように加熱されるフィルム片に既知の高圧成形を行う。このために、文献EP 0 371 425 81で開示されている手段が適用され、そこに記述されているデバイスが使用されうる。この明示参照を用い、ここで関連しているこの文献の内容−これは本発明による方法の理解および実施に有用である−を本明細書の構成にすることも意図している。
【0141】
更に、このようにして加熱されるフィルム片の高圧成形もまた、成形ステーションにおいて金型を用いて行われる(ステーションおよび金型は文献DE 41 13 568 C1に記述されている。)。この明示参照を用いて、ここで関連するこの言及される最後の文献の内容−これは本発明による方法の理解および実施に有用である−を本明細書の構成にすることも意図している。
【0142】
文献DE 41 13 568 C1に記載の構成に対応するプレスが成形ゾーンに想定されうる。加熱フィルム片を保持するフレームを開放金型に挿入し、下の金型部分(lower mold half)に正確な適合で固定する。下の金型テーブル(lower mold table)を金型が密閉されるまで上昇させる。流体圧力手段、典型的には圧縮空気、を成形されるフィルム片上に位置する金型キャビティに入れる。成形は、典型的には、20〜300barの圧力手段圧力のもとで急激に行われる。成形は、好ましくは、フィルム片に接触する温度約60〜80℃の加熱圧縮空気を用いて行われる。次に金型キャビティ中の圧力を放出し、下の金型テーブルを下げ、金型を開放し、成形フィルムを金型から取り外し、はがし、冷却された成形フィルム片を保持し続けるフレームを下の金型部分から取り外し、開始位置に戻す。所望の熱成形部品を得るために成形フィルム片をそこでフレームから手動で取り外すかまたは自動で取り外し、必要とされるサイズに切断する。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】図1は、側面図を用いる、本発明による方法を行うデバイスの一態様である。
【図2】図2は、タコスクリーンと回転計用の目盛盤とを有する組み合わせ計器用の、基本的にもとのサイズであり、個々の記号およびエレメントの様々な色が文字で示されている、本発明によって製造されるPC熱成形部品である。
【図3】図3は、本発明による方法によって製造される回転計または「回転計スクリーン」用の、基本的にもとのサイズであり、個々の記号およびエレメントの様々な色が文字で示されているPMMA目盛盤である。
【実施例】
【0144】
下記実施例および比較例は、これらに限定されるわけではないが、本発明の更なる説明に役立つ。
【0145】
図1のデバイスにおいて、取り付けおよび取り外しゾーン10、加熱ゾーン20、温度測定ステーション30および付形ゾーン40がそれぞれそれ自体既知の形態で構成されている。レール2上をガイドされるスライド3は、方形フレーム4を、取り付けおよび取り外しゾーン10から加熱ゾーン20および温度測定ステーション30を通って成形ゾーン40に移動させ、戻す。高い加速および高い供給速度用にデザインされたステッピングモーター−図示せず−は、スライド3を駆動する役割を果たす。例えば、スライド3を1,400mm/秒の速度で動かしうる。
【0146】
取り付けおよび取り外しゾーン10において、フラットな、印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆された、成形されるフィルム片5を、手動でまたは自動的にフレーム4上に規定配置で載置する。フィルム片5は、エッジセクションだけがフレーム4上に支持される。
【0147】
加熱ゾーン20は、上部加熱場21および下部加熱場22によって画定される。これら2つの加熱場21および22は、同じ面積で構成され、水平に整列され、かつ、互いに約100mmの距離で互いにアラインメント(alignment)で配置される。それぞれの加熱場21、22は、例えば、42個の赤外線表面ヒーター23を有し、それらはそれぞれ寸法が60×60mmであり、かつ、それぞれ独立して活性化されうる。
【0148】
温度測定ステーション30中には熱探知カメラ31があり、これは放射熱32を記録し、評価する。放射熱32は図1中に図式で示されており、加熱フィルム片5の下側から放たれている。このようにして得られる温度分布はモニター−図示せず−上に示され、互いに整列したそれぞれの対の赤外線ヒーター23’/23’’をモニター上の特定の場に割り当てることが可能である。フィルム片の上側の表面の温度分布は、カラーコードおよび/または数値によって示されうる。
【0149】
成形ゾーン40は、文献DE 41 13 568 C1に記述されているように、ダイ42を有するプレス41を備えうる。圧縮空気を提供する圧縮空気コンテナ43がこの金型42に接続されている。スライド3によって開放金型42に挿入されるフレーム4は、金型42に正確に合うように配置される。プレス41を用いて金型42を密閉し、フレーム4上に保持されているフィルム片5に、例えば160barの、圧力手段圧力のもとで加熱圧縮空気をすぐに直接入れ、平衡に急激に金型42の輪郭上で成形する。この形成中、フレーム4上に保持されるフィルム片5のフィルムセクションの少なくとも片側が本発明によって想定されるフィルム表面温度を有する。
【0150】
この成形後に、金型42を開き、スライド3が成形フィルム片または熱成形部品を有するフレーム4を取り付けおよび取り外しゾーン10に戻す。熱成形部品をフレーム4から自動的にまたは手動で外し、そこでデバイス1から取り出す。
【0151】
成形PCフィルムの実施例および比較例
【0152】
図2に示される熱成形部品は、長さ360mmであり、かつ、高さ105mmである。タコスクリーンおよび回転計スクリーンはそれぞれ直径113mmである。スクリーンのシートは黒であり、数字はグレーの地に対して白であり、回転計スクリーンの数字「5」と「6」の間のエッジストリップセグメントは赤である。2つのスクリーンの間に配置される絵文字は半透明であり、それぞれ、それぞれに割り当てられている背面照明が点くと見えるようになる。シートの面から銀色の隆起エッジへの、最初に段付の、次に円錐状の立ち上がりであって、シートの面より約12mm上で途切れる立ち上がりが印象的な形状である。この銀色の隆起エッジにおいて、数字を指し示す白色マーキングが非常に細い黒色エッジストリップによって区切られている。
【0153】
片面が細かく艶消し加工された厚さ375μmのPCフィルム(BAYER MATERIALSCIENCE AG製のMakrofol(登録商標)OE)であって、非艶消し表面上に多段階スクリーン印刷法で上記高い耐熱性かつ可撓性の着色ラッカーで印刷されたPCフィルムを出発材料として提供した。Al青銅サスペンジョンを用いて銀色のリングを適用した。
【0154】
このようにして印刷されたフラットフィルム片を加熱ゾーン中で事前の状態調節なしに下記表1に示されるフィルム表面温度に加熱した。加熱ゾーン中での滞留時間が、到達するフィルム表面温度を支配する。フィルムの下側で熱探知カメラを用いてフィルム表面温度を測定した。本発明による実施例3において、隆起エッジを成形するフィルム片セグメントを、フィルム表面温度を約5℃超える高い温度に加熱した。このために、これらの選択フィルム片セグメントに割り当てられる赤外線表面ヒーター対を高い電気入力で活性化した。
【0155】
特定のフィルム表面温度に到達した後、フィルムをすぐにかつ迅速に(1秒未満の時間内で)成形ゾーンに移し、そこですぐにかつ急激に成形した。この成形のために、特定のフィルム表面温度を有し続けるフィルム片に圧縮空気圧力160barのもとで約70℃の熱い圧縮空気を送った。フィルム表面温度到達から所定のフィルム片の成形の終了までの高温相は5秒も続かなかった。
【0156】
結果を表1に示す。
【0157】
PMMAフィルム成形に関する実施例および比較例
【0158】
図3に示される回転計スクリーンの直径は100mmである。シートは黒であり、数字を含む文字は白であり、かつ、数字40と60との間のエッジストリップセグメントは赤である。中央の開口のまわりに集まる絵文字は半透明であり、それぞれ、それぞれに割り当てられている背面照明を点けると見えるようになる。シートの面より5mm上で途切れる銀色の円錐状に立ち上がる隆起エッジが印象的な形状である。この銀色の隆起エッジにおいて、数字を指し示す白色マーキングは非常に細い黒色エッジストリップによって区切られている。
【0159】
厚さ250μmのガラス透明PMMAフィルム(Roehm GmbH & Co.KG製のPlexiglas(登録商標)フィルム“Clear 99524”)であって、図3に記載の回転計の目盛盤のグラフィックデザインに従っていくつかの段階で耐熱性でかつ可撓性の着色ラッカーが片面に印刷されたPMMAフィルムを出発材料として提供する。
【0160】
Al青銅サスペンジョンを用いて銀色のリングを適用した。「艶消し効果」または必要とされる触覚を達成するために、反対面、後の正面、に構造化ラッカー層を適用した。加えて、ハードコートコーティングをこの後の正面に塗布した。後の正面は、熱成形部品の表面の耐引掻き性の更なる改良の効果を有した。
【0161】
結果を表2に示す。
【0162】
【表1】




【0163】
【表2】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆された熱成形フィルム部品の製造方法であって少なくとも下記処理工程:
−片面または両面が少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆され、かつ、少なくとも一種類の熱可塑性樹脂でつくられたフラットフィルム片であって、かつ、サイズ並びに印刷、金属化および/またはコーティングが製造される熱成形部品と一致する少なくとも1つのフィルムセクションを含むフラットフィルム片を提供する工程;
−このフィルム片を、フィルム片のエッジセクションのみがフレーム上に存在する規定の配置でフレーム上に載置する工程;
−このようにフレーム上に存在するフィルム片を加熱ゾーンに導入し、そこで少なくとも該フィルムセクションを所定の温度に加熱する工程;並びに
−次にこのようにして加熱されたフィルム片を迅速に成形ゾーンに導入し、そこにすぐに直接20barよりも高い圧力手段圧力のもとで流体圧力手段を加え、平衡に成形して5秒未満の時間内で所望の熱成形部品を生じる工程
を包含し、そのような加熱を、フィルムセクション全体の少なくとも片側またはフィルムセクションの主要部分の少なくとも片側のフィルム表面温度がビカー軟化温度B/50よりも10〜65℃高くなるように行うことを特徴とする、少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆された熱成形フィルム部品の製造方法。
【請求項2】
該熱可塑性樹脂が、ジフェノールベースのポリカーボネートもしくはコポリカーボネート、ポリ−もしくはコポリアクリレート、ポリ−もしくはコポリメタクリレート、スチレンのポリ−もしくはコポリマー、熱可塑性ポリウレタン、ポリオレフィン、テレフタル酸の重縮合物もしくは共重縮合物、またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆された熱成形フィルム部品の製造方法であって、少なくとも下記処理工程:
−片面または両面が少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆され、かつ、ポリカーボネートでつくられたフラットフィルム片であって、サイズ並びにプリンティング、金属化および/またはコーティングが該製造される熱成形部品と一致する少なくとも1つのフィルムセクションを含むフラットフィルム片を提供する工程;
−このフィルム片を、フィルム片のエッジセクションのみがフレーム上に存在する、規定の配置でフレーム上に載置する工程;
−このようにフレーム上に存在するフィルム片を加熱ゾーンに導入し、そこで少なくとも該フィルムセクションを所定の温度に加熱する工程;並びに
−このように加熱されたフィルム片を迅速に成形ゾーンに導入し、かつ、そこですぐに直接20barよりも高い圧力手段圧力のもとで流体圧力手段を加え、平衡に成形して所望の熱成形部品を5秒未満の時間内で生じる工程;
を包含し、そのような加熱を、フィルムセクション全体の少なくとも片側またはフィルムセクションの主要部分の少なくとも片側のフィルム表面温度が180℃〜200℃の範囲になるように行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆された熱成形フィルム部品の製造方法。
【請求項4】
所定の時間にわたって個々に活性化される多数の赤外線表面ヒーターで構成される少なくとも1つの加熱場から所定の距離において加熱するために該フィルム片を加熱ゾーンに保持し;かつ
加熱ゾーンから成形ゾーンまでの途中で、このように加熱されたフィルム片が、熱探知カメラを用いてフィルム表面上の温度分布をスキャンし、見えるようにし、かつ/または、別の方法で示す温度測定ステーションを通過し;
選択加熱であって、
それぞれ個々の赤外線表面ヒーターを個々に活性化させ、そのようにして
−温度分布からわかるフィルムセクション上の温度差を最小化させ、かつ、
−主要フィルムセクションの少なくとも片側を180℃〜200℃のフィルム表面温度に加熱させ、かつ、
−要すれば個々の選択フィルム片セグメントをこのフィルム表面温度を少なくとも3℃を超え、10℃よりも多く超えない高い温度に加熱させる、
選択加熱を行う
ことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
フィルムセクション全体の少なくとも片側またはフィルムセクションの主要部分の少なくとも片側を185℃〜195℃のフィルム表面温度に加熱することを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆された熱成形フィルム部品の製造方法であって、少なくとも下記処理工程:
−片面または両面が少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆され、かつ、ポリメチルメタクリレートでつくられたフラットフィルム片であって、サイズ並びに印刷、金属化および/またはコーティングが製造される熱成形部品に一致する少なくとも1つのフィルムセクションを含むフラットフィルム片を提供する工程;
−このフィルム片を、フィルム片のエッジセクションのみがフレーム上に存在する規定の配置でフレーム上に載置する工程;
−このようにフレーム上に存在するフィルム片を加熱ゾーンに導入し、そこで少なくともフィルムセクションを所定の温度に加熱する工程;並びに
−次に、このようにして加熱されたフィルム片を成形ゾーンに迅速に導入し、そこですぐに直接20barよりも高い圧力手段圧力のもとで流体圧力手段を加え、平衡に成形して5秒未満の時間内で所望の熱成形部品を生じる工程
を包含し、フィルムセクション全体の少なくとも片側またはフィルムセクションの主要部分の少なくとも片側のフィルム表面温度が130℃〜150℃の範囲になるようにそのような加熱を行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の少なくとも部分的に印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆された熱成形フィルム部品の製造方法。
【請求項7】
該フィルム片を、所定の時間にわたって加熱するために、個々に活性化される多数の赤外線表面ヒーターで構成される少なくとも1つの加熱場から所定の距離の加熱ゾーンに保持し;かつ
加熱ゾーンから成形ゾーンまでの途中で、このように加熱されたフィルム片が、熱探知カメラを用いてフィルム表面上の温度分布をスキャンし、見えるようにし、かつ/または他の方法で示す温度測定ステーションを通過し;かつ
選択加熱であって、
それぞれ個々の赤外線表面ヒーターを個々に活性化させ、そのようにして
−温度分布でわかるフィルムセクションの温度差を最小化させ、かつ
−主要フィルムセクションの少なくとも片側を特定のフィルム材料に関する上記範囲のフィルム表面温度に加熱させ、かつ
−要すれば個々の選択フィルム片セグメントをこのフィルム表面温度を少なくとも3℃超え、10℃よりも多く超えない高い温度に加熱させる、
選択加熱を行う
ことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
フィルム材料の高い軟化を達成するフィルム片セグメントを選択することを特徴とする、請求項4または7に記載の方法。
【請求項9】
もともとフラットなフィルムの特に高い成形度を行うかまたはエッジのシャープな輪郭の的確なキャスティング、正確に合う複製、特に細かく分かれたエンボスおよび/または彫刻に正確に合う複製、および圧力に関連する位置のずれの修正を行うフィルム片セグメントを選択することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
同じタイプの多数の熱成形フィルム部品を製造し、かつ、
フィルム表面上の温度分布の測定および評価の処理工程をこのタイプの全ての熱成形フィルム部品のいくつかの製造中に行い;この処理工程をこのタイプの熱成形フィルム部品の残りの部分の製造中に行わない
ことを特徴とする、請求項4および7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
フレーム上に存在するフィルム片を、加熱ゾーンであって、互いに所定の距離で平行に配置され、互いに整列される同じ面積の2つの水平に整列される加熱場を有し、想定される特定のフィルム表面温度に加熱するための加熱ゾーンに導入し、フィルム片をこれらの2つの加熱場の間にほぼ中央に配置し、所定の時間保持することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
特定の想定フィルム表面温度への加熱後にフィルム片を5秒未満、好ましくは2秒未満の時間内で成形ゾーンに移すことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
所定のレイアウトに従って印刷され、金属化され、かつ/または、他の方法で被覆された透明フィルム片を加工することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
所定のレイアウトに従って印刷され、金属化され、かつ/または他の方法で被覆された単層フィルム片を加工することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
該成形されるフィルム片が少なくとも2種類の異種熱可塑性樹脂の多層共押出フィルムまたはラミネートフィルムであることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−540272(P2010−540272A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526210(P2010−526210)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/008182
【国際公開番号】WO2009/043539
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】